賃上げ・設備投資促進税制:所得拡大促進税制の改組

2018年(平成30年)4月1日~2021年3月31日までの開始事業年度より(通常、2019年3月期末の企業より適用)、これまでの所得拡大促進税制は2018年(平成30年)3月31日の適用期限をもって終了し、賃上げ・設備投資促進税制に改組となりました。当制度の適用要件は、大企業と中小企業とは異なる内容となっています。
1.賃上げ・設備投資促進税制:大企業の場合
大企業において、十分な賃上げや国内設備投資を行った場合には、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができることになります。又、更に人材投資を増加させた企業に対しては、税額控除割合が上乗せとなります。なお、これまでの基準事業年度、継続雇用者の定義及び適用要件が変わった点に留意する必要があります。

対象法人・対象期間青色申告の大法人で、2018年4月1日~2021年3月31日までの期間に開始する各事業年度
但し、設立初年度は対象外
適用3要件と税額控除①賃金要件(2要件):
(イ) 雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額
(ロ)(継続雇用者給与等支給額 - 継続雇用者比較給与等支給額)÷ 継続雇用者比較給与等支給額 ≧ 賃上げ率3%
②投資要件:
(ハ) 国内設備投資額 ≧ 減価償却費総額 X 90%

税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)X 15% = 税額控除額
上乗せ要件
(適用第4要件)と税額控除
③教育費要件:
(ニ) (教育訓練費 - 比較教育訓練費)÷ 比較教育訓練 ≧ 
20%
教育訓練費要件を満たし上乗せ税額控除率(20%)を適用する場合には、申告書に明細書(教育訓練等の実施時期、実施内容、受講者及び支払証明)を添付する必要があります。

税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)X 20% = 税額控除額
国内雇用者の範囲国内雇用者とは、 役員、役員の特殊関係者及び使用人兼務役員を除く使用人で国内事業所に勤務し賃金台帳に記載されている雇用者(従って、 雇用保険の一般被保険者でない雇用者も含む)
役員の特殊関係者役員の特殊関係者とは、次に掲げる者をいいます。
① 役員の親族 (配偶者、6親等以内の血族、及び3親等以内の姻族)
② 役員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
③ 上記以外の者で役員から生計の支援を受けているもの
④ 上記の者と生計を一にするこれらの者の親族
継続雇用者の範囲継続雇用者とは、適用年度(当期)およびその前年度の両方において給与等の支給(24ヵ月間継続)を受けた国内雇用者であり、継続雇用者に係る金額は、雇用保険法における一般被保険者に該当する者に対して支給したものに限ります(年齢は65歳未満の国内雇用者)が、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する継続雇用制度の対象である者に対して支給したものを除く、ということになっています。
具体的に継続雇用者とは、
①前期及び当期の全ての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者であること
②前期及び当期の全ての期間において雇用保険の一般被保険者であること(加入手続きの有無は関係ありません。又、一般被保険者とは、年齢65歳未満の雇用者です)
③前期及び当期の全ての又は一部の期間において高年齢再雇用者制度の対象となっていないこと
従って、一定の週20時間以上のパート・アルバイトで雇用保険法の適用要件を満たす一般被保険者は含まれます。
つまり、 第1に、雇用保険法における一般被保険者に該当する者に対して支給したものに限られますので、
(イ) 正社員、及び
(ロ)パート・アルバイトのうち週所定労働時間が20時間以上で継続して31日以上の雇用が見込まれ一般被保険者になっている者
ということになりますが、 但し、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する継続雇用制度の対象である者に対して支給したものを除くとされていますので、定年が65歳未満の会社で、65歳未満で定年退職した者を対象とする継続雇用制度を採用している会社の場合、定年以降の継続雇用制度の対象者に支給した金額は控除しなければなりません(この対象者の定年後の給与額は、 通常引下げられることとなり会社にとって不利とならない配慮により含めない処置となっています)。
給与等の範囲給料、 賃金、 賞与等で賃金台帳に記載された支給額(非課税とされる通勤手当等の額も含む)のみを対象としますが、 合理的な方法により継続して給与等の支給額を計算している場合には、 これも認められます。 退職金等は対象外です。
雇用者給与等支給額・比較雇用者給与等支給額雇用者給与等支給額とは、適用年度(当期)の損金算入される国内雇用者に対する給与等支給額。 なお、 控除すべきものとして、 国等から支給を受けた助成金や出向先法人から受けた出向者分の給与負担金受給額、 等は控除します。
なお、 出向先法人では、 その賃金台帳に出向者を記載している時には、 その給与負担金は含まれます。
比較雇用者給与等支給額とは、比較用年度(前期)の損金算入される国内雇用者に対する給与等支給額。 前期の事業月数が12ヵ月未満の時には、年換算に調整計算を行います。
継続雇用者給与等支給額・継続雇用者比較給与等支給額継続雇用者給与等支給額とは、適用年度(当期)における国内の継続雇用者に対する給与等支給額をいいます。
継続雇用者比較給与等支給額とは、比較年度(前期)における国内の継続雇用者に対する給与等支給額をいいます。
国内設備投資額とは国内で当期中取得(取得又は製作もしくは建設)の減価償却資産(有形固定資産、無形固定資産及び生物)で当期末に有する取得価額の合計額をいう。原則、国内資産に対する資本的支出の金額も含む。又、少額減価償却資産及び一括償却資産の金額も含む。なお、圧縮記帳が適用している場合には、適用前の実際の取得金額を含める。
減価償却費総額とは全減価償却資産の損金経理した減価償却費の総額(過年度分の減価償却超過額の当期認容額を除き、特別償却準備金の積立額を含む)をいう。なお、当期の減価償却費総額の対象は、法人が有する全ての減価償却資産であることから、国外で保有する資産に対する減価償却費も含まれます。
教育訓練とは国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を取得させ、又は向上させる次の費用(外部支払)をいう。
①法人が教育訓練等を自ら行う場合の社外講師謝金等の費用
②他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合のその委託費
③他の者が行う教育訓練等に参加させる場合のその参加に要する費用(授業料、受講料、受験手数料、等)
なお、従業員の資格取得費に要する費用のうち教育訓練費の対象は以下のとおりです。
対象*業務遂行に必要となる資格取得費
*資格取得後の法定更新講習会への参加費用(更新料等は除く)
対象外*従業員が自己研鑽等の目的で資格を取得した場合の受験料等
*福利厚生の一環として支払った報奨金
*資格取得のために企業側が用意した教材費
比較教育訓練費とは前期及び前々の教育訓練費の年平均額をいう。
税額控除額の上限税額控除の上限は、法人税額の20%

適用要件等を整理しますと、
(1) 要件
* 給与等支給総額の対前年度増加
* 継続雇用者給与等支給額:対前年度増加率3%以上
* 国内設備投資額:当期の減価償却費総額の90%以上
(2) 税額控除
* 給与等支給総額の対前年度増加額の15%の税額控除
* 追加要件:教育訓練費増加要件(当期の教育訓練費:対前期・前々期の教育訓練費の平均増加率20%以上を満たす場合には、控除率を5%上乗せ(合計20%の税額控除)

2.賃上げ・設備投資促進税制:中小企業の場合
中小企業において、十分な賃上げを行った場合には、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができることになります。又、更に人材投資を増加させた企業に対しては、税額控除割合が上乗せとなります。なお、大企業と同様に適用要件等が変更になっています。

対象法人・対象期間青色申告の中小企業者等で、2018年4月1日~2021年3月31日までの期間に開始する各事業年度
但し、設立初年度は対象外
中小企業者等中小企業者等とは、青色申告法人のうち、中小企業者又は農業協同組合等をいいます。
中小企業者とは、次に掲げる法人をいいます。
① 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
 ただし、同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます) に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人、 及び2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人を除きます。
② 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
適用2要件と税額控除額①賃金要件(2要件):
(イ) 雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額
(ロ)(継続雇用者給与等支給額 - 継続雇用者比較給与等支給額)÷ 継続雇用者比較給与等支給額 ≧ 賃上げ率1.5%

税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)X 15% = 税額控除額
上乗せ要件
(適用3要件)と税額控除額
要件(3要件):
(イ) 雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額
(ロ)(継続雇用者給与等支給額 - 継続雇用者比較給与等支給額)÷ 継続雇用者比較給与等支給額 ≧ 賃上げ率2.5%
(ハ) 次のいずれかの要件を満たす場合
Ⅰ 教育費要件:
(教育訓練費 - 前期教育訓練費<中小企業比較教育訓練費>)÷ 前期教育訓練費 ≧ 10%の場合、又は
Ⅱ その事業年度終了日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされた場合

税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)X 25% = 税額控除額
国内雇用者の範囲大企業と同じ
役員の特殊関係者大企業と同じ
継続雇用者の範囲大企業と同じ
給与等の範囲大企業と同じ
雇用者給与等支給額・比較雇用者給与等支給額大企業と同じ
継続雇用給与等支給額及び継続雇用比較給与等支給額大企業と同じ
教育訓練とは大企業と同じ
中小企業比較教育訓練費とは当期開始前の前1年以内に開始した各事業年度の教育訓練費(前期の教育訓練)をいう。
税額控除額の上限税額控除の上限は、法人税額の20%

適用要件等を整理しますと、
(1) 要件
*給与等支給総額の対前年度増加
*継続雇用者給与等支給額:対前年度増加率1.5%以上
(2) 税額控除
  *給与等支給総額の対前年度増加額の15%の税額控除
  *追加要件:継続雇用者給与等支給額:対前年度増加率2.5%以上であり、かつ、教育訓練費増加要件(当期の教育訓練費:対前期の教育訓練費の増加率10%以上、又は中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明を満たす場合には、控除率を10%上乗せ(合計25%の税額控除)

以上

2019年4月14日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

新たな定款認証制度の平成30年11月30日から導入

新たに第13条の4が新設された公証人法施行規則が平成30年11月30日から施行され、株式会社、一般社団法人及び一般財団法人の定款認証の方式が変わっています。公証人に定款認証を受けるときに、「実質的支配者となるべき者の申告書」を提出し、暴力団員等に該当するか否かを申告しなければならなくなりました。確認の結果、暴力団員等に該当した場合には、原則として、公証人は定款認証を拒むことになります。
1.改正の趣旨
法人の実質的支配者を把握することにより、法人の透明性を高め、暴力団員等による法人の不正使用、マネーロンダリングやテロ資金供与等を防止することを目的とするものであり、国内外からの要請に基づくものです。特に、平成31年に行われるFATF(資金洗浄に関する金融活動作業部会)による第4次対日相互審査に対応するもので、仮に、この改正が行われなければ金融機関間での海外送金が制限される可能性がありました。経済活動に対する国際的な信用を向上させるためにも必要なことでした。
2.施行時期
平成30年11月30日以降の申請からの適用となっています。
3.対象となる法人
株式会社、一般社団法人及び一般財団法人のみが適用対象ですので、特定目的会社や税理士法人等の定款認証手続きは、従来通りです。
4.実質的支配者とは
その法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある者として主務省令で定める者(犯罪による収益の移転防止に関する法律4条1項4号)となっており、株式会社の場合における具体的な該当事由として、認定する手順は次の通りです。
(1)議決権の直接保有及び間接保有が50%超となる自然人となるべき者の存否
直接保有:自然人が発起人となり、出資して株式を保有すること。
間接保有:自然人の支配法人(当該自然人が50%超の議決権を保有する法人)が発起人となり、出資して株式を保有すること。
保有議決権数の認定:直接保有及び間接保有の合計数による。
上場企業等及びその子会社は、自然人とみなされます。
(イ)該当者ありのケース
該当者1名が実質的支配者(1号該当)
但し、この者が事業経営を実質的に支配する意思又は能力(実質支配意思等)がないことが明らかな場合には実質的支配者非該当(その場合には、他の者につき(3)で判定する)
(ロ)該当者なしのケース
下記(2)で認定
(2)上記(1)による実質的支配者が存在しない場合には、
議決権の直接保有及び間接保有が25%超となる自然人となるべき者の存否
(イ)該当者ありのケース
該当者全員が実質的支配者(1号該当)
但し、このうち実質支配意思等がないことが明らかな者は実質的支配者非該当(全員非該当となると(3)で判定する)、また、実質支配意思等のある25%超保有者がいても、他に実質支配意思等がない議決権50%超保有者がいるときは(3)で判定する
(ロ)該当者なしのケース
下記(3)で認定
(3)上記(1)及び(2)のいずれにも該当する者がいない場合には、
出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力を有する自然人となるべき者の存否
(イ)該当者ありのケース
該当者全員が実質的支配者(2号該当)
(ロ)該当者なしのケース
下記(4)で認定
(4)上記(1)、(2)及び(3)のいずれにも該当する者がいない場合には、
設立する株式会社の代表権を持つ取締役が実質的支配者(4号該当)
5.認証手続きの概要
(1)定款認証申請前の手続き
① 定款案の公証人への送付と検討依頼
従来通り、メール、ファックス等で定款案を送付する。
② 「実質的支配者となるべき者の申告書」の送付
「実質的支配者となるべき者の申告書」(日本公証人連合会のホームページから書式をダウンロードできます)を作成し、署名押印又は記名押印を付して、公証人に送付する。当申告書には、次の資料を添付します。
Ⅰ 実質的支配者となるべき者の本人特定事項等が明らかになる資料
* 自然人の場合:運転免許証・旅券・マイナンバーカード・在留カード等の写し等(印鑑証明書もOK)
* 法人の場合:全部事項証明書及び印鑑証明書の原本、又は写し(代表者印を印鑑証明書の欄外等に押捺する) 
Ⅱ 実質的支配者該当性の根拠資料
* 定款のみが根拠資料のときは、添付資料不要
* 定款以外の根拠資料があるときは、その原本又は写し
* 根拠資料なしのときは、申告書の実質的支配者該当性の根拠資料欄の「なし」を〇で囲むこと
Ⅲ 申告書及び添付書類の送付方法
公証人への送付は、持参、郵送、ファックス又はメールのいずれの方法で構いません。
以上から、公証人はデータベースより申告書記載の実質的支配者となるべき者が暴力団員等に該当するか否かをチェックし、該当しないと判断された場合には、そのまま認証手続きを行います。逆に、暴力団員等に該当する疑いを払拭できない場合には、必要に応じて関係機関に照会する等の手続きを経て最終結論を出します。その結果、法人の設立行為に違法性があると認められれば、定款認証は拒否されることになります。
(2)定款認証申請時の手続き
従来の申請内容と実質的に変わりはありません。
(3)定款認証文
定款の認証文には、実質的支配者となるべき者の申告があったこと等も記載されることになります。なお、希望があれば「申告受理証明書」が交付手数料なしで交付してもらいます。

以上

2019年3月26日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成31年度(2019年度)税制改正大綱:法人税

平成30年12月14日に自民、公明党は2019年度(平成31年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の法人税に関する概要となります。

1.イノベーション促進のための研究開発税制の見直し
総額型について、研究開発を行う一定のベンチャー企業(設立後10年以内の法人のうち、当期において翌期繰越欠損金額を有するものとされています。スタートアップ企業が想定されています)の控除税額の上限が、当期の法人税額の40%(現行:25%)に引上げられます。税額控除率及び税額控除上限の上乗せ措置について、適用期限が2年延長されます。
オープン・イノベーション型(特別試験研究費に係る税額控除)について、対象に一般の民間企業(所定の要件を満たす研究開発型ベンチャー企業を含む)への一定の委託研究が追加されます。研究開発型ベンチャー企業への委託研究及び同企業との共同研究に係る税額控除率は25%とします。また、控除税額の上限が当期の法人税額の10%(現行:5%)に引上げられます。
高水準型は廃止され、試験研究費が高い水準の企業に対する税額控除率の割増措置を総額型に創設することによって、総額型に統合されます。
(1)総額型
⓵ 税額控除率

総額型(6%~14%)中小企業技術基盤強化税制(12%~17%)
増減試験研究費割合>8%の場合:
9.9%+(増減試験研究費割合-8%)X0.3
増減試験研究費割合>8%の場合:
12%+(増減試験研究費割合-8%)X0.3
増減試験研究費割合≦8%の場合:
9.9%+(8%-増減試験研究費割合)X0.175
増減試験研究費割合≦8%の場合:
12%
高水準型の廃止に伴う上乗せ措置
試験研究費割合>10%の場合:
上記税額控除率X{(試験研究費割合-10%)X0.5}

⓶ 控除上限額

総額型(25%~35%)中小企業技術基盤強化税制(25%~35%)
試験研究費割合≦10%の場合:
法人税額の25%
増減試験研究費割合≦8%の場合:
法人税額の25%
増減試験研究費割合>8%の場合:
法人税額の35%
試験研究費割合>10%の場合:
法人税額の25%+法人税額X{(試験研究費割合-10%)X2}
試験研究費割合>10%の場合:
法人税額の25%+法人税額X{(試験研究費割合-10%)X2

(2)オープン・イノベーション型の税額控除率

(2)オープン・イノベーション型の税額控除率
研究開発型ベンチャー企業との共同研究・一定の要件を満たす委託研究の費用の25%
上記以外の共同研究・委託研究・企業間における一定の要件を満たす委託研究等の費用の20%

2.中小企業等の支援

中小企業者の法人税率の軽減特例(年800万円以下の所得に対して15%)適用期限が平成33年3月31日までの2年延長
中小企業投資促進税制適用期限が平成33年3月31日までの2年延長
中小企業経営強化税制は、特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行う適用期限が平成33年3月31日までの2年延長
商業・サービス等活性化税制は、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等が確認することを適用要件に追加されます。平成31年4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されますが、一定の経過措置有り。適用期限が平成33年3月31日までの2年延長

防災・減災設備の特別償却制度を創設:
中小企業等経営強化法の改正を前提に、中小企業における防災・減災設備の特別償却制度を創設されます。
青色申告書を提出する特定中小企業者のうち、同法の事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画の認定を受けたものが、同法の施行日から平成33年3月31日までの間に、これらの計画に係る特定事業継続力強化設備等(一定の機械装置、器具備品、建物附属設備)の取得等して、その事業用に供した場合、その取得価額の20%の特別償却ができる。

対象設備具体例最低投資額(取得価額)
機械装置自家発電機、排水ポンプ等1台・1基が100万円以上
器具備品制震・免震ラック、衛星電話等1台・1基が100万円以上
建物附属設備止水板、防火シャッター、排煙設備等1件が160万円以上

租税特別措置法上の中小企業にかかる「みなし大企業」の範囲について適正化が図られ、例え資本金が1憶円以下であっても、以下の様に大規模法人の支配下にある孫会社も中小企業特例の適用対象外とされます。
① 大法人(資本金5憶円以上の法人、相互会社等)の100%子会社
② 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている法人

3.法人事業税(所得割及び収入割に限る)の税率改正
法人事業税の標準税率を次のとおり、平成31年10月1日以後に開始事業年度から適用となりますが、同日以後に改正予定でありました税率(下記の現行と記載)の再度の変更となっていますので留意すべきかと思います。

 項目 標準税率 
平成31年9月30日以前開始事業年度平成31年10月1日以後開始事業年度
当初
(現行)
改正
① 外形標準課税対象の普通法人(資本金1億円超)の所得割資本金1億円超法人については、 後述記載を参照
軽減税率適用法人年400万円以下の所得
年400万円超年800万円以下の所得
年800万円超の所得
② 上記①以外の普通法人(資本金1億円以下) の所得割
軽減税率適用法人年400万円以下の所得3.4%5.0%3.5%
年400万円超年800万円以下の所得5.1% 7.3% 5.3%
年800万円超の所得6.7% 9.6%7.0%
③ 特別法人の所得割
軽減税率適用法人年400万円以下の所得3.4% 5.0% 3.5%
年400万円超の所得4.6% 6.6% 4.9%
(特定の共同組合等の年10億円超の所得)(5.885%) (7.9%)(5.7%)
④ 収入金額課税法人(電気供給業、 ガス供給業及び保険業)の収入割0.9% 1.3% 1.0%

上記の税率は、不均一課税対象法人(中小法人)に適用される標準税率を示しています。
不均一課税(標準課税)対象となる中小法人の範囲は、各都道府県条例によって決められております。
例えば、神奈川県の場合には、以下に該当する法人には標準税率が適用され、それ以外の大法人となる場合には、超過税率の適用となります。
① 法人事業税:資本金の額が2億円以下で、かつ、所得金額が年1憶55万円以下の法人
② 法人県民税法人税割:資本金の額が2億円以下で、かつ、法人税額が年4千万円以下の法人
東京都の場合には、以下に該当する法人には標準税率が適用されます。
① 法人事業税:資本金の額が1億円以下で、かつ、所得金額が年2,500万円以下、かつ、年収入金額が2億円以下の法人
② 法人県民税法人税割:資本金の額が1億円以下で、かつ、法人税額が年1千万円以下の法人
軽減税率不適用法人: 3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人のうち、 資本金1,000万円以上である場合

資本金1億円超の普通法人に対する法人事業税と外形標準課税:
資本金の額又は出資金の額が1億円超の普通法人に対しては、原則として、外形標準課税制度が適用となっています。
資本金の1億円超の普通法人の法人事業税の標準税率は以下のようになっています。

課税項目区分 平成27年4月1日以後開始平成28年4月1日以後開始平成31年10月1日以後開始 
当初
(現行)
改正
外形標準課税付加価値割0.72%1.2% 1.2%
資本割0.3% 0.5% 0.5%
所得割年400万円以下の所得1.6% 0.3% 1.9% 0.4%
年400万円超800万円以下の所得2.3% 0.5%2.7%0.7%
年800万円超の所得3.1% 0.7% 3.6% 1.0%

注1: 上記の税率は、不均一課税対象法人(中小法人)に適用される標準税率を示していますガ、所得割の制限税率(超過税率)については、標準税率の1.7倍(現行:1.2倍)に引上げられます。
注2: 3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人(軽減税率不適用法人)の所得割に係る税率については、 軽減税率の適用はありません(税率は、年800万円超の所得の場合と同じです)。
注 3: 「所得割」に標準税率ではなく超過税率を採用しているのは、全8都府県(東京都、大阪府、京都府、神奈川県、宮城県、静岡県、愛知県、兵庫県)となっています。 各税条例で超過税率が決められます。

4.特別法人事業税の創設( 地方法人特別税及び地方法人特別譲与税の廃止)
⓵ 平成31年10月1日以後(消費税率引上げ時)に開始する事業年度から地方法人特別税は廃止し、 法人事業税(所得割又は収入割)の納税義務者に対し特別法人事業税(国税)を課します。 特別法人事業税は、法人事業税と合わせて都道府県に申告納付します。
⓶ 地方法人特別譲与税も廃止し特別法人事業譲渡税となります。

課税項目区分
(地方法人特別税)
 平成27年4月1日以後開始平成28年4月1日以後開始平成31年10月1日以後開始
付加価値割額、 資本割額及び所得割額の合算額によって法人事業税を課税される法人の所得割額に対する税率資本金等の1億円以下の普通法人43.2%37%
資本金等の1億円超の普通法人93.5%414.2%260%
所得割額によって法人事業税を課税される法人の所得割額に対する税率43.2%34.5%
収入割額によって法人事業税を課税される法人の収入割額に対する税率43.2%30%

その他地方税率の参考:
(1) 法人住民税法人税割の税率

項目平成26年10月1日から平成31年9月30日までに開始 平成31年10月1日以後開始 
標準税率制限税率標準税率制限税率
道府県民税法人割3.2% 4.2% 1.0% 2.0%
市町村民税法人割9.7% 12.1%6.0%8.4%
合計12.9%16.3%7.0% 10.4%

(2) 地方法人税(国税)の税率の改正

納税義務者法人税を納める義務のある法人(人格のない社団等を含む)
税額の計算各課税事業年度の基準法人税額 X 地方法人税率 = 地方法人税額
申告及び納付申告及び納付は、 国(税務署)に対して行う。 申告書の提出期限は、 法人税の申告書と同一となります。
税率平成31年9月30日までに開始 平成31年10月1日以後開始
4.4% 10.3%

5.仮想通貨の評価方法等
(1)事業年度末の仮想通貨のうち、活発な市場が存在する仮想通貨については、時価評価により評価損益を計上する。
(2)仮想通貨の譲渡時の譲渡損益は、譲渡契約時の事業年度に計上する。
(3)仮想通貨の算出方法は、移動平均法又は総平均法による原価法とし、法定算出方法は移動平均法による原価法とする。
(4)未決済の仮想通貨の信用取引等については、事業年度末に決済したものとして損益相当額を計上する。
上記改正は、平成31年4月1日以後に終了する事業年度より適用する(時価評価に関して経過措置有り)。

6.法人設立届出書
定款等の写し以外の書類の添付を要しなくなります。

7.公益法人等又は協同組合等の貸倒引当金の特例の廃止
特例は適用期限の到来時に廃止となります。経過措置として、平成31年4月1日から平成35年3月31日までの間の各開始事業年度における貸倒引当金の繰入限度額は、現行法による割増率(10%)に対して1年ごとに5分の1ずつ縮小した率による割増となります。

8.組織再編税制
株式交換等の後で、完全子会社化された会社が完全親会社を被合併法人として逆さ合併を行う場合は、支配関係継続要件等の適格要件について、その合併の直前の時までの関係により判定することになります。
合併、分割及び株式交換にかかる適格要件や旧株譲渡損益繰延要件のうち、対価にかかる要件について、三角合併等で対価となる合併法人等の親会社の株式に、合併法人等の発行済株式の全部を間接に保有する法人の株式が加えられます。

以上

2019年2月10日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成30年度(2018年) 個人確定申告

個人並びに個人事業者の方の平成30年度確定申告の時期がきました。 以下に、 平成30年度分の確定申告の提出期限及び確定申告の対象となる人(任意ではなく申告しなければならない人)、 等に関しまして概要を纏めてみました。 なお、 確定申告の対象者は前年度と変更はありませんが、 税金の申告は、 本人自ら課税金額や税額を計算し、 その税額を申告納付する制度「申告納税制度」を採用していますので、 期限後申告・納付となりますと延滞税等がかかりますので注意してください。

1. 平成30年度確定申告の提出・納付期限

所得の種類平成30年度申告期間・納付期限 口座振替による納税日(振替日)
所得税平成31年2月18日(月) から3月15日 (還付対象者の方は1月から申告可)4月22日(月)
(新規の利用者の方は「預貯金口座振替依頼書」を申告期限までに要提出)
消費税平成31年1月 から4月1日4月24(水)
贈与税平成31年2月1日 から3月15日非該当

(1) 申告書の提出方法には、 ①持参(所轄税務署等の所定の提出場所)、 ②郵送、 ③電子申告(e-Tax利用によりデータ送信、この利用には事前準備が必要となりますが、 所得税では一定の第三者作成の提出書類を省略可の恩典があります)、の方法があります。
(2) 納税方法には、 ①持参(所轄税務署)、 ②金融機関から納付書を付けて納付、 ③ダイレクト納付(e-Taxの利用で、 かつ、 事前にダイレクト納付利用届出書の所轄税務署に要提出)、 ④④インターネットバンキング・クレジットカードによる電子納税、⑤口座振替(上記を参照) の方法があります。
(3) 平成25年度から25年間には、 復興特別所得税として各年分の所得税額に2.1%の税率を掛けて計算した税額が発生することに留意してください。
(4) 平成28年分以降の確定申告にあたり、 マイナンバー(個人番号)の記載が必要となります。 申告書を提出する際には、 申告者のご本人の本人確認書類(番号確認書類及び身元確認書類)の提示又は写しの添付が必要です。 具体的な本人確認書類とは、
① マイナンバーカード(個人番号カード)
② 通知カード又は個人番号付の住民票の場合には、 身元確認書類として顔写真付きの運転免許証、 等の点、 又は顔写真付きでない場合には、 2点の確認書類(保険証、 年金手帳、 等)

2. 平成30年度確定申告が必要となる対象者の方
A. 所得税
1. 給与所得者(サラリーマンの方)
⓵ 給与の年間収入金額が2,000万円超となる方(年末調整対象外の方)
⓶ 給与(年末調整済)を1箇所から受けていて、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円超となる方 (給与収入額が2,000万円以下で、 給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合には申告の必要はありません)
⓷ 給与(源泉徴収済)を2箇所以上から受けていて、 年末調整されなかった給与の収入金額と、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円超となる方。
但し、 給与所得の収入金額から、 一定の所得控除の金額(雑損控除、 医療費控除、 寄付金控除及び基礎控除の項目を除く)の差引金額が150万円以下で、 かつ、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下となる方は、 申告不要となります。
2. 上記の給与所得者以外の方、 又は個人事業者で納付税額が発生する方
事業所得や不動産所得等がある方で、 各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
3. 源泉徴収の適用を受けない給与等の支払を受ける方
⓵ 家事使用人等の方で給与から源泉所得税を徴収されていない方: 常時2人以下の家事使用人だけを雇用している使用人等には源泉徴収の義務が無いことから、 その使用人等から給与を受給されていた方
⓶ 在日外国公館から給与等の支払を受けた方
⓷ 国外から給与、 退職金等の支払を受けた方
4. 同族会社の役員やその親族等で、 その会社から給与以外に利子、 家賃、 使用料等の支払を受けている方は、 その利子、 家賃、 使用料等は全て申告の対象  
5. 災害減免法の適用を受け給与に対して源泉徴収の猶予や源泉徴収税額の還付を受けていた方
6. 上記以外の方で納付税額がある方
各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
注1: 公的年金等に係る所得の確定申告不要制度
その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、 かつ、 その雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、 所得税の確定申告書の提出は必要ありません(申告されれば還付となる場合もありますので、 その場合には申告される方が有利となる場合もあります)。 なお、国外源泉で国内源泉税の対象とならない国外年金収入等がある場合には、この確定申告不要制度の適用対象外となります。
この所得税の申告不要となる場合であっても、 住民税の申告が必要となることもありますので注意が必要です。

公的年金等の受給者で所得税の申告不要な者でも、住民税の申告が以下のような場合には必要となります(主に住民税の減額になるケース有り)。
 ⓵ 年金や給与の源泉徴収票に記載されていない所得控除(扶養控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料, 寄附金等)のある方は、住民税の申告で住民税が減少する可能性があります。
 ⓶ 上記①の控除を追加したい方で、公的年金等が105万円(65歳以上の方は155万円)を超えている場合、或いは、超えていない場合でも公的年金等以外の所得金額がある場合。
 ⓷ 日本年金機構等に扶養親族等申告書を提出しているが、その内容に変更がある場合等。

注2: 確定申告不要(任意)となる方で申告すれば税金が戻ってくる方(還付申告者)
確定申告の総件数は2,000万件以上になるようですが、 この内の約半数近くが還付申告のものとなっているようです。 収め過ぎた税金を戻すためには確定申告書の提出が必要となります。 以下の様な場合には、 還付されるかもしれませんので調べてみてはどうでしょうか。
1. サラリーマンで年末調整を受けた方で次の年末調整では取扱わない項目があった方
 ⓵ 一定金額以上の医療費(医療費控除: 限度額200万円)
生計を一にする家族の支払医療費が、 以下の金額以上になっている場合が対象:
所得が200万円以上: 支払医療費 – 保険給付金等 – 10万円 = 医療費控除額
所得が200万円未満: 支払医療費 – 保険給付金等 – 所得金額 × 5% = 医療費控除額
 ⓶ 災害(地震、 台風等)や盗難により住宅や家財に被害を受けた場合(雑損控除)
災害の場合には、 災害減免法により所得税の軽減・減免を受けられることもあります。
 ⓷ 特定の寄付をされた方(寄付金控除や政党等寄付金特別控除)
 ⓸ 初めて住宅ローン控除を受ける方(住宅借入金等特別控除)
 ⓹ 年末調整時に提出ができなかった、 或いは洩れている控除項目がある方
生命保険料控除、 地震保険料控除、 配偶者特別控除、 各種の扶養者控除等
 ⓺ 中途退職され再就職しなかった方
退職までの給与収入に対する源泉徴収税額が年税額として過大となっているケースが殆どです。 又、 退職金に対して20%源泉になっている場合も可能性がありますし、退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になっている方。
2. 上場株式等に係る配当所得(申告分離課税選択)と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算
3. 予定納税されたが確定申告不要となった方
4. 所得が少ない状況で配当や原稿料収入等からの源泉徴収税額が、 本来の納付すべき税額よりも多額となっている方
5. 外国税額控除の適用がある方
6. 申告の要件となっている項目がある方
 ⓵ その年の翌年以降に純損失又は雑損失の繰越控除を受けるため、 ② その年分の純損失の金額について純損失の繰戻しによる還付を受けるため、 ③ 居住用財産の買換又は特定居住用財産の譲渡損失及び繰越控除を受けるため、 等には確定申告の提出が必要となります。

B. 贈与税
ご存知かと思いますが、 下記に示す様に年間に受けた贈与額が110万円以下ならば非課税範囲のために贈与税の申告等は必要ありません。
1. 年間合計で110万円超の財産贈与(個人からの土地、 建物、 現金、 預貯金、 株式、 債権等の財産の贈与)を受けた方(暦年課税で下記の②の選択者を除く)
2. 相続時精算課税制度(60歳以上の父や母の直系卑属からの贈与者ごとに累積で特別控除額2,500万円)の選択者で財産贈与を受けた方(20歳以上の推定相続人の子、 並びに孫に限る)
3. 住宅取得等資金の非課税制度(下記に限度額)を適用し、 父母や祖父母等の直系尊属から自己の居住用家屋の取得等のために住宅資金贈与を受けた方(20歳以上で合計所得金額が2,000万円以下であり、 かつ、 一定の居住条件を満たしている方)

消費税率が8%適用となる取得等の契約を平成33年12月までに締結された場合の非課税限度額は以下のようになります。

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間良質な住宅用家屋(耐震等住宅)左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
平成28年1月~平成32年3月1,200万円 700万円
平成32年4月~平成33年3月1,000万円500万円
平成33年4月~平成33年12月800万円300万円
なお、 東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、 以下のようになります。
現在~平成33年12月
1,500万円1,000万円

4. 配偶者控除の特例(控除額2,000万円)を適用し、 配偶者から居住用不動産又はその取得資金の贈与を受けた方(婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与に限る)
5. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度、等
平成25年4月1日から平成31年3月31日までの期間に直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 この制度適用のためには、 受贈者は教育資金非課税申告書を金融機関等を経由して税務署に提出する必要がありますが、 申込時に対応されていると思いますので特に問題となることはないでしょう。

C. 消費税
個人事業者で下記に該当する方は納税義務者(課税事業者)として申告する必要があります。
1. 基準期間となる前々年度(平成28年度)の課税売上高が1,000万円超の事業者の方
2. 特定期間となる前年(平成29年度)の1月1日から6ケ月間の課税売上高が1,000万円超で、 かつ、 同期間の給与等支払総額が1,000万円超の事業者の方
3. 免税事業者となる方が、 課税事業者となることを選択(消費税課税事業者選択届出書を提出)している方(簡易課税選択者も含む)
納税義務者の判定上の留意事項:
(1) 基準期間の課税売上高は、 消費税込の金額となり、 事業用資産(住宅用として貸付けていた建物等)の譲渡の対価金額も含まれます
(2) 被相続人(亡くなられた方)の事業を相続により承継した相続人には、 被相続人が提出していた各種の届出書の効力は及ばないので、 新たに提出する必要があります。
(3) 新規開業又は相続により事業を承継したときに、 消費税課税事業者選択届出書を提出した場合の適用開始時期は、 当該課税期間か翌課税期間かを選択できます。
(4) 消費税課税事業者選択届出書を提出されている場合には、 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、 その効力が消滅することはありません。

以上が、所得税、贈与税、消費税に関する確定申告の対象者の概要です。 

2019年2月9日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成31年度(2019年度)税制改正大綱:贈与税・相続税(資産課税)

平成30年12月14日に自民、公明党は2019年度(平成31年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の贈与税・相続税に関する概要となります。

1.個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設等
(1)個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度の創設
「承継計画」に記載された「認定相続人」が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、相続等により「特定事業用資産」を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納税が猶予されます。

認定相続人承継計画に記載された後継者で、中小企業の経営承継円滑化法に規定する認定を受けた者。
特定事業用資産被相続人の個人事業(不動産貸付事業等を除く)に供されていた以下の事業用資産で青色申告決算書(貸借対照表)に計上されているもの:
① 土地(面積400㎡までの部分まで)
② 建物(床面積800㎡までの部分まで)
③ その他減価償却資産(固定資産税又は営業用の自動車税若しくは軽自動車税の課税対象になっているものその他準ずるもの)
承継計画認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて作成された特定事業用資産の承継前後の経営見通し等が記載された計画書で、平成31年4月1日から平成36年3月31日までに都道府県に提出されたもの。
猶予税額の計算計算方法は、法人組織における非上場株式等についての相続税の納税猶予制度特例と同様。
猶予税額の免除① 全額免除
イ 認定相続人が、その死亡時まで特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合
ロ 認定相続人が一定の身体障害等に該当した場合
ハ 認定相続人に破産手続開始決定があった場合
二 相続税の申告期限から5年経過後に、次の後継者に特定事業用資産を贈与し、その後継者が当該贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合
② 一部免除
イ 同族関係者以外の者へ特定事業用資産を一括して贈与する場合
ロ 民事再生計画の認可決定等があった場合
二 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特定事業用資産の一部譲渡又は特定事業用資産に係る事業の廃止の場合
猶予税額・利子税の納付① 認定相続人が、特定事業用資産に係る事業の廃止の場合等には、猶予税額の全額を納付する
② 認定相続人が、特定事業用資産の譲渡等をした場合には、その譲渡等の部分に対応する猶予税額を納付する
上記の納付が発生した場合には、所定の利子税も併せて納付する
その他① 被相続人は相続開始前において、認定相続人は相続開始後において、それぞれ青色申告の承認を受けていなければならない
② 認定相続人は、相続税の申告期限から3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければならない
③ 認定相続人が、相続税の申告期限から5年経過後に特定事業用資産を現物出資して、会社を設立した場合には、当該認定相続人が当該株式等を継続保有等の一定要件を満たすときは、納税猶予は継続されます。
④ この納税猶予の適用を受ける場合には、特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けることはできない
適用時期平成31年1月1日以後の相続等から適用

(2)個人事業者の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度の創設
「承継計画」に記載された「認定受贈者」が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、贈与により「特定事業用資産」を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定受贈者が納付すべき贈与税額のうち、贈与により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する贈与税の納税が猶予されます。

認定受贈者承継計画に記載された後継者で、中小企業の経営承継円滑化法に規定する認定を受けた18歳以上(平成34年3月31日までの贈与については、20歳以上)の者。
特定事業用資産贈与者の個人事業(不動産貸付事業等を除く)に供されていた以下の事業用資産で青色申告決算書(貸借対照表)に計上されているもの:
① 土地(面積400㎡までの部分まで)
② 建物(床面積800㎡までの部分まで)
③ その他減価償却資産(固定資産税又は営業用の自動車税若しくは軽自動車税の課税対象になっているものその他準ずるもの)
承継計画認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて作成された特定事業用資産の承継前後の経営見通し等が記載された計画書で、平成31年4月1日から平成36年3月31日までに都道府県に提出されたもの。
相続時精算課税の適用認定受贈者が贈与者の直系卑属である推定相続人以外の者であっても、その贈与者がその年の1月1日において60歳以上であれば適用を受けることができる
猶予税額の計算計算方法は、法人組織における非上場株式等についての贈与税の納税猶予制度特例と同様。
猶予税額の免除① 全額免除
イ 認定受贈者が、その死亡時まで特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合
ロ 認定受贈者が一定の身体障害等に該当した場合
ハ 認定受贈者に破産手続開始決定があった場合
二 贈与税の申告期限から5年経過後に、次の後継者に特定事業用資産を贈与し、その後継者が当該贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合
② 一部免除
イ 同族関係者以外の者へ特定事業用資産を一括して贈与する場合
ロ 民事再生計画の認可決定等があった場合
二 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特定事業用資産の一部譲渡又は特定事業用資産に係る事業の廃止の場合
猶予税額・利子税の納付① 認定受贈者が、特定事業用資産に係る事業の廃止の場合等には、猶予税額の全額を納付する
② 認定受贈者が、特定事業用資産の譲渡等をした場合には、その譲渡等の部分に対応する猶予税額を納付する
上記の納付が発生した場合には、所定の利子税も併せて納付する
贈与者の死亡特定事業用資産をその贈与者から相続等により取得したものとみなし、贈与時の時価により他の相続財産と合算して相続税を計算する。その際、都道府県の確認を受けた場合には、相続税の納税猶予適用を受けることができる
その他① 贈与者は贈与開始前において、認定受贈者は贈与開始後において、それぞれ青色申告の承認を受けていなければならない
② 認定受贈者は、贈与税の申告期限から3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければならない
③ 認定受贈者が、贈与税の申告期限から5年経過後に特定事業用資産を現物出資して、会社を設立した場合には、当該認定受贈者が当該株式等を継続保有等の一定要件を満たすときは、納税猶予は継続されます。
④ この納税猶予の適用を受ける場合には、特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けることはできない
適用時期平成31年1月1日以後の贈与から適用

2.特定事業用宅地等の係る小規模宅地等についての相続税の課税価格計算特例の見直し
小規模宅地等の特例に対し、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業用の宅地等(但し、当該宅地等の上で事業用に利用されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の15%以上である場合は除く)は特例対象の範囲から除外となります。
改正は、平成31年4月1日以後の相続等により取得する財産に係る相続税について適用となります(但し、同日前から事業用に供されている宅地等には適用されません)。

3.教育資金の一括贈与非課税措置の見直し
直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 見直しは以下のとおりです。
(1) 適用期限の2年延長
適用期限が、平成33年3月31日まで2年間延長となります。
(2) 受贈者の所得制限
平成31年4月1日以後の贈与から、受贈年の前年おける受贈者の合計所得金額が1千万円超の場合には、非課税措置の特例を受けることができません。
(3)教育資金範囲からの一部除外
平成31年7月1日以後から、学校等以外に支払われる金銭で受贈者が満23歳の翌日以後に支払われるもののうち、①教育に関する役務提供の対価、②スポーツ・文化芸術に関する活動等に係る指導の対価、③これらの役務提供又は指導に係る物品の購入費及び施設の利用料は、教育資金範囲から除外となります。但し教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練の受講費用は除外となりません。
(4)契約期間中に贈与者が死亡した場合
これまで契約期間中に贈与者が死亡した場合には、残高については相続税には加算されないことになっていましたが、一定の管理残額に対して受贈者が贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされようになります。
以下のいずれかに該当する場合を除き、教育資金管理契約期間中に贈与者が死亡した場合において、受贈者が贈与者からその死亡前3年以内に信託等を受け、その死亡日に「管理残高」は受贈者が贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされ相続税の対象となります。
① 当該受贈者が23歳未満である場合
② 当該受贈者が学校等に在学中の場合
③ 当該受贈者が教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練の受講している場合
「管理残高」とは、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額のうち、贈与者からその死亡前3年以内に信託等の価額に対応する金額をいいます。
なお、上記②又は③のいずれかに該当する場合やいずれかに該当する期間がなかった場合には、当該満了の年齢は30歳ではなく、その年の12月31日又は40歳のいずれか早い日に終了となります。

4.結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し
贈与者である直系尊属が20歳以上50歳未満の子や孫へ結婚・子育て資金に充てるために金銭等を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行等及び金融商品取引業者に信託等した場合、 信託受益権の価額又は拠出された金銭等の金額のうち、 受贈者(子・孫)1人当たり1,000万円(結婚に際して支出する費用については300万円を限度)までの金額を、平成31年3月31日までに拠出されたものに限り非課税とする特例があります。見直しは以下のとおりです。
(1) 適用期限の2年延長
適用期限が、平成33年3月31日まで2年間延長となります。
(2) 受贈者の所得制限
平成31年4月1日以後の贈与から、受贈年の前年おける受贈者の合計所得金額が1千万円超の場合には、非課税措置の特例を受けることができません。

5.非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例制度の見直し(特例措置及び一般措置)
(1)平成34年4月1日以後の贈与から、贈与税の納税猶予における受贈者の年齢要件が18歳以上(現行:20歳以上)に引下げられます。
(2)一定のやむを得ない事情により認定承継会社等が資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合、その該当した日から6月以内にこれらの会社に該当しなくなったときには、納税猶予の取消事由に該当しなくなります。
(3)贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の適用を受ける場合には、贈与税の納税猶予の免除届出の添付書類が不要となります。

6.年齢制限の引下げ
平成34年4月1日以後の相続若しくは遺贈又は贈与における、以下における適用年齢を18歳(現行:20歳)に引下げられます。
(1) 相続税の未成年者控除の対象となる相続人の年齢は、18歳未満
(2) 受贈者の年齢.は、18歳以上
① 相続時精算課税制度
② 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
③ 相続時精算課税適用者の特例
④ 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度

7.民法改正に伴う相続関係の措置
民法の相続分野の規定を約40年ぶりに見直す民法改正が2018年7月6日に成立し、7月13日に公布されました。主な法改正は以下の6点で、2020年7月13日までに順次施行されることになっています(下記に記載以外の施行は、2019年7月13日までに政令で定める日となっていますが、法務省のHP等で公表される予定です)。
一 配偶者の居住権保護(施行は、2020年7月13日までに政令で定める日)
二 遺産分割等に関する見直し
三 遺言制度に関する見直し(施行は2019年1月13日から)
四 遺留分制度に関する見直し
五 相続の効力等に関する見直し
六 相続人以外の人からの介護・看護への特別寄与分の請求権
以下、それらの概要を記載します。

一 配偶者の居住権保護
1. 配偶者短期居住権
(1)居住建物を配偶者を含む共同相続人間で遺産分割すべき場合
配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には、配偶者は、下記のいずれか遅い日までの間、無償でその建物を使用することができます。
① 遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間
② 相続開始から6ヵ月間の間
(2)上記(1)以外に、居住建物を第三者に遺贈や配偶者が相続放棄した場合等
居住建物の所有者は建物に無償で居住していた配偶者に対して、いつでも配偶者短期居住権の消滅を申入れすることが可能ですが、その申入れを受けてから6ヵ月間は引続き配偶者は無償でその建物を使用することができます。
2. 配偶者居住権
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として、残された配偶者の保護を手厚くし、遺産分割の協議が調うなどすれば、残された配偶者は自身が亡くなるまで(終身又は当事者間で存続期間を定めた場合にはその一定期間)今の住居に住み続けられる「配偶者居住権」を得られ、住居の所有権を取得する必要がなくなります(配偶者は家に居住権を設定する登記手続きを法務局(登記所)にすることで権利を確保)。それにより、遺産分割では預貯金など他の遺産の取り分を増やし、老後の生活資金にあてることも可能になります。居住権のみなら、所有権を取得する場合よりも評価額が低くなるためです(これまでの相続財産の評価額が、居住権評価額と所有権評価額に分けられることになります)。なお、配偶者居住権は、協議による遺産分割の場合に限られるものではなく、被相続人の遺言によって取得させることもできます。
(1)相続税における配偶者居住権の財産評価額方法は、次のとおりとなります。
イ 配偶者居住権の評価額(建物)
建物の時価 - 建物の時価 ×(残存耐用年数 - 存続年数)÷ 残存耐用年数
 × 存続年数に応じた民法の法定利率による福利現価率
ロ 配偶者居住権が設定された建物(居住建物)の所有権の評価額(建物)
建物の時価 - 配偶者居住権の評価額
二 配偶者居住権に基づく居住建物の敷地利用の権利評価額(土地)
土地等の時価 - 土地等の時価 × 存続年数に応じた民法の法定利率による
福利現価率
ホ 居住建物の敷地の所有権等の評価額(土地)
土地等の時価 - 居住建物の敷地利用の権利評価額
注1:「建物の時価」及び「土地等の時価」とは、それぞれ配偶者居住権が設定されていない場合の時価とする。
注2:「残存耐用年数」とは、居住建物の所得税法に基づく住宅用耐用年数の1.5を乗じた年数から築後年数を控除した年数をいいます。
注3:「存続年数」とは、次の区分に応じた年数をいう。
① 配偶者居住権の存続期間が配偶者の終身の間である場合には、配偶者の平均余命年数
② 上記①以外の場合には、遺産分割協議等に定められた配偶者居住権の存続期間の年数(但し、配偶者の平均余命年数を上限とする)
注4:残存耐用年数又は残存耐用年数から存続年数を控除した年数が零以下となる場合には、上記イの「(残存耐用年数 - 存続年数)÷ 残存耐用年数」は、零とする。
(2)物納劣後財産の範囲に居住建物及びその敷地を加える。
(3)配偶者居住権の設定登記について、居住建物の価額(固定資産税評価額)に対し1,000分の2の税率による登録免許税が課税されます。

二 遺産分割等に関する見直し
1.特定配偶者に遺贈又は贈与した居住用不動産の特別受益の持戻し計算免除
婚姻期間が20年以上で、配偶者に居住用の建物又はその敷地の全部又は一部(居住用不動産)を生前贈与するか遺言で贈与の意思を示せば、その居住用不動産は被相続人が特別受益の持戻し免除の意思表示したものと推定し、遺産分割の対象にしない(遺産分割の共有財産にならない)という優遇措置が設けられました。
2.預貯金債権の仮払い制度
遺産分割の協議中でも、相続した預貯金を葬儀費用や生活費用に充てるため、仮払いを認める仮払制度が設けられます。
(1) 家事事件手続法の保全処分要件の緩和
家庭裁判所に遺産分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、仮分割の仮処分の必要性があり、かつ、他の共同相続人の利益を害しないと裁判所が判断した場合には、預貯金債権の仮払いが認められることになります。
(2) 家庭裁判所の判断なく預貯金債権の払戻し
各共同相続人は、預貯金債権のうち、各預貯金口座ごとに以下の金額(但し、一つの金融機関で引き出せる金額については法務省令で定める金額を上限:100万円~150万円程度の予定)まで、他の共同相続人の同意なく単独で払戻しを求めることができます。
 相続開始時の個々の預貯金口座の金額 × 3分の1 × 共同相続人の法定相続分 
= 単独で払戻しを求めることができる金額
3. 遺産分割前に相続財産が処分された場合の遺産分割の範囲
(1) 遺産分割前に相続財産が処分された場合であっても、共同相続人全員の同意により、当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができます。
(2) 共同相続人の1人又は数人が遺産分割前に相続財産を処分した場合には、当該処分した共同相続人については、上記(1)の同意を得る必要はありません。

三 遺言制度に関する見直し
1.自筆証書遺言の利便性と信頼性の向上
これまで生前に被相続人が書く自筆証書遺言は、内容に問題があっても死後まで分からず、信頼性に欠ける等から相続を巡るトラブルも少なくありませんでした。そこで、自筆証書遺言は、今後、公的機関である全国の法務局で形式に関し事前チェック後に保管できるようにして、相続人が遺言があるかを簡単に調べられるようになります。法務局に預けた場合は、家庭裁判所で相続人が立ち会って内容確認する「検認」の手続きを不要とし、又、財産目録はこれまで全文を自筆に限定していましたが、パソコンでの作成可能となります(但し、財産目録の毎ページに署名押印しなければなりません。又、自書によらない記載が両面に及ぶ場合には、その両面に署名押印しなければなりません)。この法務局に預ける場合の手数料も数千円程度に安価を想定しているようです。
なお、遺言者の死亡届が提出された場合、法務局から相続人に通知できるようなシステムも検討されます。
2.遺言執行者権限の明確化
これまで遺言執行者は常に相続人の利益のために職務を遂行すべきであるとの誤った認識を抱く者も少なくなく、このために遺言執行者と相続人との間でトラブルになるケースが相当数生じていました。そこで、
(1) 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示していた行為は、相続人に対し直接にその効力が帰属するという規定表現になりました。
(2) 特定遺贈又は特定財産承継遺言がされた場合における遺言執行者の権限等について明確化が図られました。

四 遺留分制度に関する見直し
1.遺留分減殺請求権の金銭債権化
これまで減殺請求により当然に物権的効果が生ずることとされているため、減殺請求の結果、遺贈又は贈与の目的財産は受贈者と遺留分権利者との共有になることが多く、このような帰結は、円滑な事業承継を困難にするものであり、又、共有関係の解消をめぐって新たな紛争を生じさせることになることがありました。そこで、
(1) 遺留分に関する権利行使により生ずる権利を遺留分侵害額に相当する金銭債権化することとしました。
(2) 遺留分権利者から遺留分侵害額請求を受けた時点で相当期間経過しており請求を受けた時点では、受遺者又は受贈者が十分な資金がなく金銭を直ちに準備できない場合には、受贈者等は、裁判所に対し金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができるようになりました。
2.遺留分及び遺留分侵害額の算定方法
(1)遺留分及び遺留分侵害額の計算式
① 「遺留分」 = 「遺留分を算定するための財産価額」 × 1/2(*1)× 遺留分権利者の法定相続分 
                 (*1)相続人が直系尊属のみの場合は1/3
「遺留分を算定するための財産価額」 
= 相続時における被相続人の積極財産の額 
+ 相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内*2)
+ 第三者に対する生前贈与の額(原則1年以内)
- 被相続人の債務の額
              (*2)被相続人と受贈者が、遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した場合には、10年前の贈与分も含む
 ② 遺留分侵害額 = 「遺留分の額」- 遺留分権利者が受けた特別受益額 - 遺産分割の対象財産がある場合(既に遺産分割が終了している場合も含む)には具体的相続分に応じて遺産を取得したものとした場合の当該遺産の価額(但し、寄与分もよる修正は考慮しない)+ 被相続人に債務がある場合には、その債務のうち遺留分権利者が負担する債務の額
(2)相続人に対する贈与は、相続開始前10年間にされたものに限定し、その価額を遺留分を算定するための財産価額に算入する。

五 相続の効力等に関する見直し
特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)や相続分の指定された場合により承継された財産については、登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができていましたが、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないことになります。

六 相続人以外の人からの介護・看護への特別寄与分の請求権
被相続人の親族で相続の対象にならない人でも、被相続人に対して介護や看病その他の労務の提供により被相続人の財産の維持又は増加に貢献(寄与)した場合は、相続人に金銭(特別寄与料)を請求できる仕組みが取り入れられます。対象は、息子の妻が義父母を介護していたケース等を想定したもので、特別寄与の請求権者は、被相続人の親族に限定されることになっています。これまでの介護の寄与をめぐり争った場合の家庭裁判所が示す目安は、次の通りです。
介護の日当額(8千円)× 日数(500日)× 裁量的割合(70%)
= 介護寄与分額(280万円)

(1)特別寄与料に対する課税は、次のとおりとなります。
① 特別寄与者は特別寄与料が確定した場合には、当該特別寄与者が被相続人から遺贈により取得したものとして、相続税が課税されます。
② 上記①の事由が生じたために新たに相続税の申告義務が生じた者は、当該事由は生じたことを知った日から10月以内に相続税の申告書を提出しなければなりません。
③ 相続人が支払うべき特別寄与料の額は、当該相続人に係る相続税の課税価格から控除します。
④ 相続税の更正の請求対象に上記①の事由が加えられます。

以上

2019年1月6日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

法定調書と給与支払報告書: 提出期限 1月末

1. 法定調書とは
12月の最終給与支給までに、 従業員の年末調整が行なわれ一区切りついたと思っても、 翌1月末までに提出、申告等の対応が必要となるものがあります。 その1つに法定調書作成がありますが、 これは、所得税法、相続税法等の法律の規定により、給与、報酬、家賃等の支払者(提出義務者)が、それらの1年間の支払いに関して、支払先の氏名、住所、支払金額等を記載し所轄税務署に提出が義務付けられている書類(全部で61種類ほど)です。この主目的は、税務署が適正な課税の確保を図ることを目的に支払事実を把握し、受給者が正しく所得を申告していることの確認手段になるものです。 提出すべき法定調書は、 特定項目の一定金額以上のものですが、 源泉徴収の対象になるものとは限っておりませんので留意してください。
なお、 平成28年度分より行政機関への提出にあたり、 マイナンバー(個人番号、等)が必要となっています。

2. 提出する一般的な6種類の法定調書と支払内容

提出する調書支 払 内 容
支 払 内 容俸給、給料、賞与等の支払
退職所得の源泉徴収票と特別徴収票(注2)退職手当(注1)、一時恩給等の支払
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書① 原稿料、印税、講演料、工業所有権の使用料等の支払
② 弁護士、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士、建築士等への報酬、料金の支払
③ 外交員、集金人、電力量計の検針人、モデル、プロ野球の選手、プロボクサー、騎手等への報酬、料金、契約金の支払、芸能人への出演料等の支払
④ バー、キャバレー等のホステス、コンパニオン等への報酬、料金の支払
⑤ 広告宣伝のための賞金、馬主への競馬の賞金の支払
不動産の使用料等の支払調書地代、家賃、権利金、礼金、更新料、承諾料、名義書換料等の支払
不動産等の譲受の対価の支払調書土地、建物等の譲受け(売買、交換、収用等)の代金の支払
不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書土地、建物等の売買や貸付の仲介手数料の支払

注1:死亡退職による退職手当等の場合には、相続税法による「退職手当等受給者別支払調書」を提出することになります。
注2:地方税法で提出が義務付けられています「給与支払報告書」及び「特別徴収票」は、
名称が異なりだけでそれぞれ「給与所得の源泉徴収票」及び「退職所得の源泉徴収票」と記載内容は同じものです。

3. 提出範囲
支払調書は、一定金額以上のもの等(支払金額の提出範囲)に該当するときに提出が必要となります。主な提出範囲は次のとおりです。

(1) 給与所得の源泉徴収票

年末調整受給者区分受給者区分
年末調整をしたもの法人役員(相談役、顧問など含む)150万円超
弁護士、公認会計士、 税理士等250万円超
上記以外の人(従業員)500万円超
年末調整をしなかったもの給与収入2,000万円超全部
「扶養控除等申告書」を提出した者のうち退職した者等250万円超(法人役員は50万円超)
「扶養控除等申告書」を提出しなかった者50万円超

(2) 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20の規定に基づく報酬 料金等の支払

区 分提出範囲
* 外交員、集金人、検針人、プロボクサー、ホステス等の報酬、料金
* 広告宣伝のための賞金
* 社会保険診療報酬支払基金からの診療報酬
年間50万円超
馬主に支払う競馬の賞金1回75万円超
プロ野球選手等の報酬及び契約金
弁護士、税理士等の報酬
作家、画家などの原稿料、画料
講演料、 その他の報酬、 料金等
年間5万円超

当該支払調書の記載の概要は以下のとおりです。
① 支払を受ける者: 受給者の住所・名称を記入。
② 区分: 例えば、 原稿料、 印税(書きおろし初版印税、 その他の印税、等)、 さし絵料、 翻訳料、 通訳料、 脚本料、 作曲料、 講演料、 教授料、 著作権・工業所有権の使用料、 放送謝金、 映画・演劇の出演料、 弁護士報酬、 税理士報酬、 公認会計士報酬、 外交員報酬、 ホステス等の報酬、 契約金、 広告宣伝のための賞金、 競馬の賞金、 診療報酬、 等と記入。
③ 細目: 上記の区分内容をより詳細化して記入。
④ 支払金額: その年度中に支払の確定した金額を記入。 従って、 未払いのものも含み、 その場合には未払金額を各欄の上段に内書で記入。
提出範囲の金額基準の判定においては、 原則として消費税及び地方消費税(消費税等)の額を含めて行ないます。 但し、 消費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで判定しても構いません。
支払金額の記入にあたっては、 原則として消費税等の額を含めて記入します。 但し、 費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで記入しても構いませんが、 その場合には、 その消費税等の額を摘要欄に記入する必要があります。
⑤ 源泉徴収税額: その年度中の支払の確定した金額に基づく源泉徴収すべき税額を記入。 未払いのものがある場合には、 その未徴収税額を上段に内書で記入。
⑥ (摘要): 必要に応じて記入。
⑦ 支払者: 支払者の住所・名称及び電話番号を記入。
記載上の注意事項:
法人に支払われる報酬、 料金等で源泉徴収の対象とならないもの、 或いは支払金額が源泉徴収の限度額以下であるため源泉徴収していない報酬、 料金等についても、 提出範囲の金額基準以上のものは税務署への支払調書の提出が必要となります。

(3) その他の主な法定調書

法定調書提出範囲
退職所得の源泉徴収票法人役員(相談役、顧問その他これらに類する者も含む)が受給者であるもの
不動産の使用料等の支払調書
注:不動産、 不動産の上に存する権利、 総トン20トン以上の船舶、 航空機に対する対価を受領する法人と不動産業の個人の方が提出義務者となります。
年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。
又、法人に対し賃借料のみを支払っている場合にはその支払調書の提出は不要ですが、支払が権利金、更新料等は提出が必要となります。
不動産等の譲受の対価の支払調書年間100万円超
不動産等の仲介料の支払調書年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。
公的年金等の源泉徴収票「扶養控除等申請書」を
提出した者:60万円超
提出しなかった者:30万円超
配当等の支払調書10万円超(中間配当がある場合は5万円超)
生命保険契約等の一時金の支払調書100万円超
損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書100万円超
株式等の譲渡対価の支払調書同一人に対し100万円超
1回30万円超
国外送金等調書1回200万円超

4. 提出先と提出期限
法定調書の提出期限は、原則として、その年の翌年の1月31日までとなっており、所轄税務署に提出することになります。税務署に提出する場合には、法定調書の合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)と各法定調書(提出範囲のもの)を添付して提出します。

受給者(個人・法人)の全員にも、 翌年の1月31日まで帳票が送付されることになっていますので、 個人では確定申告の作成資料等に使用、 又、 法人では受給金額・内容との照合等に使用することができます。

法定調書の提出方法に関して、基準年(前々年)の提出枚数が1,000枚以上であった法定調書の場合には、光ディスク等又はe-Taxによる提出が義務付けられています。

5. 給与支払報告書(給与所得の源泉徴収票)
サラリーマンの方にはお馴染みの給与所得の源泉徴収票は、 その年の給与所得に関する年末調整後(給与収入が2千万円超の方等は年末調整は行われません)の源泉徴収税額や税額計算情報が集約され記載されています帳票です。 税務署には、 一定金額以上の給与収入の「源泉徴収票」が提出され、 又、 同一内容ですが様式名が異なる給与支払報告書が個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます。
「給与支払報告書」(総括表を添える)提出先は、受給者(全員分)のその年の翌年の1月1日現在の住所地の市区町村となり、 提出期限は翌年の1月31日までとなっています(個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます)。
年度の途中で退職した者に対する給与支払報告書は、 支払額が30万円以下の場合には提出を省略することができます。 なお、退職金の「特別徴収票」の提出は、役員のみであり従業員分は提出する必要はありません。 その提出先は、 受給者の退職日現在の住所地の市区町村となっており、 退職後1ケ月以内の提出となります。
市区町村では、 提出された資料から住民税の税額計算をおこない、 翌年6月から徴収を開始し1年間で納付を行ないます。 なお、 主たる給与所得を基因する住民税の納付方法は、原則として、会社等が所得税と同様に給与より天引きして納付するという特別徴収となっています。 

2019年1月4日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成31年度(2019年度)税制改正大綱:個人所得課税

平成30年12月14日に自民、公明党は2019年度(平成31年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の所得税に関する概要となります。

1.住宅借入金等の特例特別控除(住宅ローン控除)の創設
消費税率10%が適用される住宅取得等(新築、中古、増改築等)をして、平成31年10月1日から平成32年12月31日までの間に居住に供された場合に、住宅ローン控除として従来の10年目の適用期間を3年延長され、適用年の11年目から13年目までの各年の控除額については、以下のいずれか少ない金額とされます(適用年の1年目から10年目までは現行と同様)。
(1) 一般住宅
⓵    住宅借入金等の年末残高(4千万円を限度)× 1%
⓶ (住宅取得等の対価金額 - 対価金額に含まれる消費税額等){4千万円を限度}× 2% ÷ 3 
(2) 認定長期優良住宅
⓵  住宅借入金等の年末残高(5千万円を限度)× 1%
⓶ (住宅取得等の対価金額 - 対価金額に含まれる消費税額等){5千万円を限度}× 2% ÷ 3 
(3) 東日本大震災の被災者等
⓵  住宅借入金等の年末残高(5千万円を限度)× 1.2%
⓶ (住宅取得等の対価金額 - 対価金額に含まれる消費税額等){5千万円を限度}× 2% ÷ 3 
*:居住と非居住に供する部分がある場合には、居住に占める床面積割合が控除対象となる。
*:住宅取得等に関し、補助金等の交付金や直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合には、その交付金や贈与額を取得金額から控除する必要はありません。
*:2以上の住宅取得等の場合には、調整計算が必要となります。

参考:現行の住宅ローン控除

居住年一般住宅(注1)   認定長期優良住宅 (注1)   
借入金等の年末残高の限度額控除率最高合計最高累積控除額借入金等の年末残高の限度額控除率最高合計最高累積控除額
26年1月~3月2千万円1.0%20万円200万円3千万円1.0%30万円300万円
26年4月~平成31年9月(注2)
4千万円1.0%40万円400万円5千万円1.0%50万円500万円

(注1):認定住宅とは、 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいい、 それ以外を一般住宅といいます。
(注2): 消費税等の税率が8%又は10%になった場合での金額であり、 それ以外の場合(経過措置の適用で旧税率が適用になっている場合や個人間の売買契約による場合も含む)には平成26年1月~3月と同じになります。
なお、 住宅を取得・居住した年に勤務先から転任の命令等やむを得ない事由により転居した場合における再居住の特例として、 居住年に一時転居しその年の12月31日までの間に再び居住した場合には、 継続居住とみなされ当該税額控除の適用対象となります。

東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等特別税額控除:
東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合に平成31年9月30日までは、 再建住宅を取得等した場合の再建住宅借入金等に対して以下のようになります。

居住年借入限度額控除率各年の控除限度額最大控除額
平成26年1月~3月3,000万円1.2%36万円360万円
平成26年4月~平成31年9月5,000万円1.2%60万円600万

2.空き家に係る譲渡所得の3千万円特別控除の特例の適用期限延長
相続又は遺贈(死因贈与を含む)から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、相続人が一定の「被相続人居住用家屋」又はその居住用家屋とともに敷地の土地譲渡、或いは家屋の除却後の土地譲渡の譲渡益から居住用財産の譲渡した場合に該当するものとみなして、3,000万円を控除できる特例が創設されていましたが、その適用期限が4年延長され、譲渡が平成28年4月1日から平成35年12月31日までに行われたもので、譲渡金額が1億円以下である空き家の譲渡に限ります。なお、被相続人が所有していた家屋と土地をセットで相続により取得することが大前提であり、その相続人に対して特例が適用となります。また、平成31年4月1日以後に行う譲渡から、適用対象に以下のものが追加となりました。
老人ホーム等に入所したことにより被相続人の居住に供さなくなった家屋及びその家屋の土地等は、次の要件を満たす場合に限り、相続の開始直前まで居住していたものと見做されます。
(1) 被相続人が介護保険法の要介護認定等を受け、かつ、相続の開始直前まで老人ホーム等に入所していたこと。
(2) 被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続の開始直前まで、その家屋をその者の使用がなされ、かつ、事業用、貸付用又はその者以外の者の居住用に居されたことがないこと。

3.非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置の拡充(少額投資非課税制度 日本版ISA; NISA)の見直し
居住者等が、 非課税口座を開設した年の1月1日以後、 投資可能期間になされた一定の適用要件を満たす少額上場株式等からの配当等及び譲渡益等に対しては、 非課税とされるものです。 以下の改正が行われます。
(1) 一時的な出国により非居住者となる場合の届出書
やむを得ない事由を起因として出国時に金融商品取引業者等に「継続適用届出書」の提出から、5年を経過する日に属する12月31日までと、帰国時に「帰国届出書」を提出する日とのいずれか早い日までの間は、その者を居住者等と見做します。
なお、当5年を経過する日に属する12月31日までに「帰国届出書」を提出しなかった場合には、「非課税口座廃止届出書」を提出したものと見做されます。
また、その出国につき、国外転出をする場合には「継続適用届出書」を提出できません。
(2) 非課税口座を開設できる年齢の引下げ
その年1月1日において18歳以上(現行:20歳以上)に引下げられます。改正は、平成35年1月1日以後に設けられる非課税口座からの適用となります。

4.子供版ジュニアNISA (未成年者非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置)上の年齢の引下げ
未成年者の少額上場株式等に対する非課税制度となるNISAがあります。
親権者となる両親や祖父母が20歳未満の子どもや孫の名義で未成年者口座として設けた勘定区分(非課税管理勘定、 又は継続管理勘定)に応じて所定期間内に支払われる一定の適用要件を満たす少額上場株式等からの配当等及び譲渡益等に対しては、 所定の期間非課税とされるものです。
以下の課税口座を開設等できる年齢の引下げの改正が行われます。
その年1月1日において18歳以上(現行:20歳以上)に引下げられます。改正は、平成35年1月1日以後に設けられる未成年者口座等から適用となります。

5.森林環境税の創設
平成36年度より、森林環境税として年額1,000円を個人住民税と併せて徴収します。

6.未婚の児童扶養手当受給者に対する臨時・特別給付金の非課税
未婚の児童扶養手当受給者に対する臨時・特別給付金としての給付金は非課税となります。

7.政党等寄付金特別税額控除の適用期限5年延長
政党又は政治資金団体に対して政治活動に関する一定の寄付金(特定の政治献金)を行なった場合には、 寄付金控除(所得控除)か、 この税額控除のどちらかを選択できます。
税額控除額は、 次の①又は②のうちいずれか低い金額となります。
① {政党等への合計寄付額(年間所得の40%が限度) – 2,000円(寄付金控除の適用がある場合には0円)} X 30%
② 所得税額 X 25%
上記の適用期限が5年延長となります。

8.配偶者控除等に関する源泉徴収及び確定申告における見直し
(1)給与等又は公的年金等の源泉徴収における源泉控除対象配偶者に係る控除適用は、夫婦いずれか一方しか適用できません。
(2)居住者の配偶者が、公的年金等の源泉徴収において源泉控除対象配偶者の適用を受け、かつ、公的年金等に係る確定申告不要制度を受ける場合には、その居住者は確定申告において配偶者特別控除の適用を受けることはできません。
上記の改正は、平成32年度からの適用となります。

9.確定申告時の添付不要項目
平成31年4月1日以後に提出する確定申告等から以下の書類が添付不要となります。
(1) 給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票
(2) オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書
(3) 配当等と見做す金額に関する通知書
(4) 上場株式配当等の支払通知書
(5) 特定口座年間取引報告書
(6) 未成年者口座等につき契約不履行等事由が生じた場合の報告書
(7) 特定割引債の償還金の支払通知書
(8) 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例を適用する際の相続税額等を記載した書類

10.ふるさと納税の見直し
ふるさと納税の適用を見直し、平成31年6月1日以後に行われる寄附金から適用となります。
(1) 総務大臣は、所定の基準に適合する都道府県等をふるさと納税適用の対象とします。
① 寄附金の募集を適正に実施する都道府県等
② 上記都道府県等で返礼品は、以下のいずれも満たす都道府県等であること。
(イ) 返礼品の返礼割合は3割以下とすること
(ロ) 返礼品は地場産品とすること

11.未婚者等に対する個人住民税の非課税措置
児童扶養手当の支給を受けている児童(生計を一とする前年度合計所得金額が48万以下)の前年度合計所得金額が135万円以下の父又は母のうち、未婚者又は配偶者の生死が明らかで無い者は、個人住民税の非課税対象となります。平成33年度分以降の個人住民税より適用となります。

12.国民健康保険税
基礎課税額に係る課税限度額を61万円(現行:58万円)に引上げられます。

13.仮想通貨の期末評価方法
期末に保有する仮想通貨の価額は、移動平均法又は総平均法により算出した取得価額をもって評価する等の措置が取られます。

以上

2018年12月25日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

償却資産の申告(固定資産税): 申告書提出期限1月末

1. 固定資産税とは
固定資産税とは、1月1日現在で国内に土地、家屋又は償却資産(事業用資産)の固定資産を所有している者に対し、当該固定資産の評価額を基に算定された税額を資産の所在する市区町村(東京23区内は特例で区でなく都が課税)が課する地方税をいいます。
課税対象のうち、土地と家屋については登記簿等で市区町村では実在を確認できることになりますが、償却資産は毎年1月1日に所有しているものを自己申告を通じて、固定資産(償却資産)課税台帳に登録され課税されることになります。

2. 固定資産税(土地・家屋)
土地と家屋については、登記事項のため市区町村は、その登記簿等に基づいて固定資産税を計算し、1月1日現在の所有者に納税通知書と同時に課税明細書が5月末前後に送られてきますので、当所有者は申告等の手続の必要はありません。
税率はいずれも1.4%であり、土地は課税標準額に、家屋は課税台帳に登録されている価格に掛けて税額が算定されます。なお、市区町村内に所有する固定資産の課税標準額が、土地30万円、家屋20万円未満の場合には、固定資産税は課税されません。
納期は年4回(6月、9月、12月、2月:市区町村によっては1ヶ月早まるところもあります)です。土地とは、田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野等です。家屋とは、住宅、店舗、工場、倉庫等です。

3. 固定資産税(償却資産)
償却資産とは、土地と家屋以外の事業用に供している減価償却対象資産のものをいいます。1月1日現在で償却資産を事業用に使用している所有者(法人や個人事業者)は、所定の申告書を作成し、1月31日までに償却資産の所在する市区町村ごとに提出しなければなりません。課税対象が償却資産に対する税金ということで償却資産税とも言われています。

(1)償却資産の対象(課税資産)
法人や個人で事業を行っている方で事業のために使用している減価償却の対象資産のうち、その取得価額が一定金額以上のものについては、償却資産となります。具体的には、以下のようなものが償却資産となっています。

① 構築物
舗装路面、庭園、門・塀・緑化施設等の外構工事、看板(広告塔等)、ゴルフ練習場設備等、並びに建物付属設備(受変電設備、予備電源設備、その他建築設備、内装・内部造作等)
② 機械及び装置
各種製造設備等の機器及び装置、クレーン等建設機械、機械式駐車設備等
③ 船舶
ボート、釣船、漁船、遊覧船等
④ 航空機
飛行機、ヘリコプター、グライダー等
⑤ 車両及び運搬具
大型特殊自動車、構内運搬車,貨車、客車等
⑥ 工具、器具及び備品
パソコン、陳列ケース、看板(ネオンサイン)、医療機器、測定工具、金型、理容及び美容機器、ルームエアコン、自動販売機等

以下の資産も償却資産として申告の対象になります。
・ 建設仮勘定で処理されている資産、簿外資産及び償却済資産であっても、1月1日現在で事業用に供することができる場合
・ 遊休又は未稼働の資産であっても、1月1日現在で事業用に供することが出来る状態にある場合
・ 耐用年数が1年未満又は取得価額が10万円未満の資産であっても、有形固定資産として計上し、減価償却している場合
・ 青色申告の中小企業法人・個人事業者については、取得価額が30万円未満の資産を一時に損金算入する処理(少額資産償却特例)がなされていても、この特例は国税(法人税・所得税)に関する制度であり、この地方税の固定資産税には適用されません。従って、この資産は固定資産税の申告対象となります。
その他、 所有権が留保されている資産(賃貸資産、 等)

(2)償却資産の非課税資産
償却資産の対象とならないものは、次のとおりです
(1) 土地や建物(いずれも登記対象資産であることから、 所有者を把握できますので敢えて償却資産として申告の対象にしていません)
(2) 自動車税・軽自動車税の課税対象(2重課税の排除)
(3) 無形固定資産(特許権、 営業権、 ソフトウェア等)
(4) 繰延資産
(5) 生物(観賞用、 興行用その他これらに準ずる生物は除く)
(6) 金額的に少額資産と言われる下記の資産:
① 取得価額が10万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたもの
② 取得価額が10万円以上20万円未満の資産で、 税務上、 3年間で一括償却しているもの
注1: 租税特別措置法の規定により、 一定の中小企業に対する特例を適用して、 取得価額が30万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたものでも、償却資産の申告対象になっています。
注2: 上記以外の資産で企業や個人で事業を行なっている方が事業のために用いることができる資産、 即ち、 構築物、 機械及び装置、 船舶、 航空機、車両及び運搬具、 工具・器具及び備品で有形減価償却資産が対象となります。 次のものも償却資産の対象となります。
(1) 建設仮勘定で計上されている資産、 簿外資産及び償却済資産であっても事業用に供することができるもの
(2) 遊休又は未稼働のものであっても事業用に供することができるもの
(3) 改良費(資本的支出)
(4) 家屋に施した建築設備・造作等のうち、 償却資産として取り扱うもの
建築設備における家屋(建物・建物附属設備)と償却資産とを区分して評価することになります。 家屋と設備の所有者が同一の場合に、 償却資産として取り扱うものは次の要件を満たすものです。
① 構造的に家屋と一体的でないもの (野外給水塔、 独立煙突等)
② 家屋から独立した機械及び装置として性格の強いもの (受・変電設備)
③ 特定の生産又は業務に使用されるもの (動力用配線設備等)
④ 単に移動を防止する程度に家屋に取り付けられたもの (ルームエアコン等)
⑤ 顧客の求めに応ずるサ-ビス設備

(3)固定資産税額等の算出方法(資産が所在する所轄の市区町村ごとに行ない、 申告書を作成します)
(1) 評価価額の算出方法
① 取得初年度
評価価額 = 取得価額 X 耐用年数に応ずる減価率 X 1/2(50%)
② 取得後2年目以降
評価価額 = 前年度の評価価額 X 耐用年数に応ずる減価率
(2) 固定資産税額の算出方法
① 課税標準額の集計(1,000円未満切捨て)
各資産の評価価額を集計(合算)した額が課税標準額(決定価格となります)です。
課税標準額が150万円未満の場合には、 固定資産税は課税されません。
② 税額の計算
固定資産税額(100円未満切捨て) = 課税標準額(1,000円未満切捨て) X 税率(1.4%)

(4)償却資産の申告
所定の償却資産申告書、 種類別明細書、 等の書類を資産の所在する市区町村ごとに作成し、 1月末までに提出(申告)することになります。 申告方式には、 以下の2方法がありますが、通常は一般方式を採用しています。
その方式とは、 前年中(申告対象年度)に増加又は減少した資産内容を申告するのみで、 評価額、 税額等は所管事務所で行う方式です。
注1: 前年中に増加又は減少した資産が無い場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「増減なし」等を付記します。
注2: 事業を行なっていますが、 対象償却資産を所有されていない場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「該当資産なし」を付記します。

以上

2018年12月24日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

年末調整の概要

1. 年末調整とは
毎年11月となりますと会社(給与支払者)の給与担当部署は、 「年末調整」の準備・対応という大変忙しい時期を迎え、 勤務者(従業員)はその年末調整の為に必要となる申告書や証明書類等を所定の期限までに会社に提出することが求められます。 会社は、 勤務者から回収した年末調整用の書類の内容を確認しその最終提出情報に基づいて、 暦年の最終給与支払時(通常、 12月給与)に納めるべき年間の所得税及び復興特別所得税(年調年税額)を算出し、 これまでの給与支給時に源泉徴収された累計年税額とを比べその差額となる過不足額を精算(徴収又は還付)します。 その一連の精算手続が年末調整ということになります。 一般的には、 年末調整により還付されるケースが多いかと思います。

2. 平成30年度(2018年度)の所得税に係わる改正
平成30年度の年末調整において、税制改正により影響を受ける主な項目は以下の通りです。
(1) 配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正
前年度までは、配偶者の合計所得金額が38万円以下(給与収入では103万円以下)の場合に配偶者控除38万円(老人控除対象配偶者48万円)、 並びに配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満の場合に配偶者特別控除が適用となっていましたが、 平成30年度では、 配偶者控除は世帯主(給与所得者本人)の年収に応じて縮小(本人の合計所得金額が900万円超から1,000万以下まで3段階で縮小。従って、1,000万円超・給与収入額では1,220万円超になりますと配偶者控除の適用を受けることができません)され、配偶者特別控除は配偶者の年収要件を103万円から150万円に引上げ、 かつ配隅者の年収(103万円201.6万円未満)及び世帯主の年収(1,120万円超から1,220万円以下)に応じて控除額が9段階で縮小となります。
(2) 給与所得者の配偶者控除等申告書の改正
前年度までは、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」(兼用様式)から、平成30年度では、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」の2種類の様式となりました。
配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるには、「平成30年分 給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出する必要があります。
(3)源泉徴収簿の様式変更
① 「配偶者特別控除額」が「配偶者(特別)控除額」に変更
② 「配偶者控除、扶養控除額、基礎控除額及び障害者等の控除額の合計額」が「扶養控除額、基礎控除額及び障害者等の控除額の合計額」に変更
(4)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の様式変更
前年度までは、「控除対象配偶者」を記載することになっていましたが、平成30年度では、「源泉控除対象配偶者」を記載することになりました。
(5) 保険料控除申告書に添付する証明書範囲の改正
保険料控除申告書に添付すべき生命保険料控除及び地震保険料控除に関する証明書に、電磁的記録印刷書面が加えられました。

3. 年末調整の対象者
年末調整の対象者は、 原則として会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人は全員含まれます。 但し、 給与収入額が2千万円を超える人は年末調整を行ないませんので自身の確定申告を通じて年税額の精算をしなければなりません。 通常、 1カ所から給与支給を受けている人は、 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出し年末調整を受けることになります。
次の人は年末調整の対象者にはなりません。
(1) 年中の給与収入額が2千万円を超える人
(2) 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人(年末調整を行うことができませんが、 支払の際の源泉徴収においては乙欄の税額表が適用となります)
(3) 年中に退職(死亡退職した人、 非居住者として国外勤務者となった人、 等を除く)した人
(4) 国内に住所も1年以上の居所を有していない人(非居住者)
(5) 災害免除法の規定により源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人
(6) 日雇労働者等(丙欄の税額表適用者)

年末調整の為に提出が求められる申告書とその中に記載される控除項目は以下のとおりです。 当該控除項目以外に所得から控除可能な項目がある場合にはそれらの項目は確定申告で行うことになります。

申告書の名称控除項目
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書扶養控除、 障害者控除、 寡婦(夫)控除、 勤労学生控除、 基礎控除
給与所得者の配偶者控除等申告書配偶者控除、配偶者特別控除
給与所得者の保険料控除申告書生命保険料控除(一般生命・介護医療・個人年金)、 地震保険料控除、 社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(2年目から年末調整の対象で初年度は確定申告が必要)

注: マイナンバーの記載不要の特例制度
平成28年1月よりマイナンバー制度が導入されています。原則、マイナバーを記載すべき書類の提出を受ける際には、その都度(毎回)必ず、マイナバーカード等で本人確認する必要があります。但し、平成29年分以後の扶養控除等(異動)申告書等へのマイナンバーの記載不要の特例制度が創設され、その適用要件として、過去にマイナンバーの情報が提供されており、 一度その番号確認を実施した上で作成した帳簿(特定個人情報ファイル)を会社が備えているときには記載不要となりました。 これは、確認書類の提示を受けることが困難な場合を前提とされていますが、変更が無いことが口頭等で確認されていれば参照できることでよいかと思います。なお、本人確認のうち身元確認については、過去に一度確認を行っている場合、本人を対面で確認することで明らかに本人であると認識されたる場合には、身元確認書類の提示は不要となります。
マイナンバーの記載不要の特例制度が適用できない方には、以下の対応が必要となります。
「平成30分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出にあたり、 給与所得者本人、 源泉控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の個人番号を記載することになります。 提出にあたり、 給与支払者が給与所得者から個人番号の提供を受ける場合は、 本人確認として、 提供の番号が正しいことの確認(番号確認)と、 番号提供者が真にその番号の持ち主であることの確認(身元確認)を行う必要があります。 なお、 控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の本人確認は、 給与所得者が行うことになっています。
平成28年1月以降の支払に係る給与所得の源泉徴収票には、 上記の個人番号を記載して税務署等の行政機関に提出することが必要となりますので、 「扶養控除等(異動)申告書」に必要なマイナンバーが記載されていない場合には、 源泉徴収票作成までにマイナンバーの提供を受ける必要があります。 なお、 給与所得者への源泉徴収票には、 個人番号は記載されません。

申告書記載上の主な注意点は以下のものがあります。
(イ) 12月31日時点の現況で記載
その年の12月31日現在の現況を見積もりで記載することになります。 見積記載の内容に修正が生じた場合(例えば、 扶養者数の増減、 等)には、 再年末調整(翌年の1月末までは可能)又は確定申告により適正な精算を行うことになります。

(ロ) 人的控除項目の判定基準に合計所得金額基準
控除項目の中(控除対象配偶者、 控除対象扶養控除、 配偶者特別控除等の人的控除項目)には、 その控除に該当するかの判定基準にその年度の合計所得金額がありますので留意してください。 多い誤りとしては、 配偶者の合計所得金額が控除対象金額を超えているケースです。
配偶者控除の場合の合計所得金額は、 38万円以下(給与収入額では103万円以下)でなければなりません。 「配偶者」とは、 婚姻の届出をしている配偶者をいい、 内縁関係の人は含まれません。
配偶者特別控除の場合の合計所得金額は、 38万円超~123万円以下でなければなりません。
公的年金等の雑所得だけの方で控除対象扶養者(合計所得金額が38万円以下)になる場合には、 公的年金等の収入金額が158万円以下(年齢65歳未満の人は108万円以下)という条件を満たす人です。

(ハ) 年齢16歳未満の年少扶養親族
控除対象扶養控除に関して、 平成23年度から年齢16歳未満の年少扶養親族に対する扶養控除が所得税では廃止となっています(年齢16歳未満は所得税における扶養控除対象者ではありません)。 しかし、 住民税の方では控除対象となっていますので住民税に関する欄への記載を忘れないでください。 なお、 年齢16歳未満の年少扶養親族であっても、 障害者又は特別障害者に該当する場合には、 障害者控除を受けることはできます。
平成30年度の年末調整時における年齢16歳未満とは、 平成15年1月2日以後に生まれた人が年少者となります。

(ニ) 扶養親族
所得者と生計を一にする親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)で、 合計所得金額が38万円以下の人を扶養親族(配偶者、青色事業専従者及び白色事業専従者を除く)といいます。 その中には、 以下のように区分されています。
① 控除対象扶養親族
扶養親族のうち、 年齢16歳以上の人をいいます(平成30年度の年末調整では、 平成15年1月1日以前に生まれた人)。
② 特定扶養親族
扶養親族のうち、 年齢19歳以上23歳未満の人をいいます(平成30年度の年末調整では、 平成8年1月2日から平成12年1月1日までの間に生まれた人)。
③ 老人扶養親族
控除対象扶養親族のうち、 年齢70歳以上の人をいいます(平成30年度の年末調整では、 昭和24年1月1日以前に生まれた人)。
④ 同居老親等
老人扶養親族のうち、 所得者又はその配偶者の直系尊属でいずれかとの同居を常況としている人をいいます。
(注): 国外居住親族に係る扶養控除等の適用時に所定の書類添付等の義務化
非居住者である親族(国外居住親族)に係る扶養控除、 配偶者控除、 障害者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける場合には、 「親族関係書類」及び「送金関係書類」の提出又は提示を受ける必要があります。
具体的な手続きとして、 適用を受ける旨を「扶養控除等(異動)申告書」上の「非居住者である親族」欄に○印を付し、 関係書類の提出等を行います。
「親族関係書類」の書類とは、
* 戸籍の附票その他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族のパソポートの写し
* 外国政府又は外国地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があることが必要):例えば、戸籍謄本その他これに類する書類、出生証明書、婚姻証明書、等
「送金関係書類」の書類とは、
各人に支払ったことを明らかにする、金融機関の書類又はその写し、或いは、購入したことを証するクレジットカード発行会社の書類又はその写し、等
* 生活費を現金渡しの場合には、送金等の確認が出来ない限り、扶養控除の適用は受けられません。
* 生活費を次年度分を含めて当年度に送金した場合、その送金書類を当年度分として使用することは出来ません。その年において各人に支払っていることが必要となります。
* 生活費を長男及び次男の二人分を長男名義の口座に送金した場合には、長男のみが扶養控除の適用となります。各人に対して行ったことを明らかにする書類が必要となります。

(ホ) 生命保険料控除の改組
平成24年(2012年)1月1日からの契約分(新契約)から一般生命保険に含まれていた「介護医療保険」が独立の控除対象となりました。 平成23年までの契約分(旧契約)については、 昨年までと同様に「一般生命保険」と「個人年金保険」の2つに分けられ最高控除額は、 各5万円です。 新契約は、 「一般生命保険」、 「介護医療保険」と「個人年金保険」の3つに分けられ最高控除額は、 各4万円となります。 なお、 旧契約と新契約が混在するケースも発生することもありますが、 各保険料控除の合計適用限度額が12万円とされています。 従いまして、 支払保険契約が、 旧契約か新契約かを保険会社からの証明書で確認しながら申請書に正しく記載する必要があります。
生命保険契約等により支払われた保険料や掛金は所得者本人が支払ったものに限られています。 又、 保険金、 共済金等の給付金の受取人の全てが所得者本人又は所得者の配偶者や親族となっていることが必要です。
翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 本年中に相当する部分のみが支払保険料の金額となります。

(ヘ) 社会保険料控除
所得者本人と生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料を所得者自身が支払った場合(時限措置により納付可能となった過去分の保険料の支払分も含む)には、 所得者本人の社会保険料として控除できます。
年金から特別徴収された介護保険料や後期高齢者医療保険料については、 支払者が年金受給者自身となることから、 その年金の受給者の社会保険料として控除となります。
翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 前納期間が1年以内の場合には、 その全額を本年の社会保険料として控除することができます。 なお、 国民年金保険料については、 2年分を前納できることになりましたので、 全額控除をするか、 又は期間按分して控除(この場合には、 按分の明細書が要作成)する方法のいずれかを選択することが可能です。

(ト) 地震保険料控除
所得者本人と生計を一にする親族が所有して常時居住している家屋や生活に通常必要な家財に対して支払った保険料の内、 一定の金額を地震保険料控除として控除できます。
一つの契約等で、 地震等損害に対する損害保険契約と旧長期損害保険契約のいずれの契約区分にも該当する場合には、 選択によりいずれか一方の契約区分のみが地震保険料控除の控除額となります(有利な方を選択する)。

(チ) (特定増改築等)住宅借入金等特別控除
現在、 各種の住宅借入金等特別控除がありますが、 控除を受けようとする初年度分については、 確定申告により控除の適用を受ける必要があります。 2年度以降分については、 年末調整の際に下記のものを給与支払者に提出します。
① 税務署長が発行した「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」。 この証明書の上部に「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」がありますので、 控除金額等の記載を行い提出します。
② 金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
一般の住宅借入金等特別控除は、 居住者が一定の要件を満たす住宅の取得等して、 その人の居住の用に供した場合(その家屋の取得等の日から6ケ月以内に居住用に供したものに限られています)において、 その住宅の取得等のために一定の住宅借入金(償還期間10年以上等)を有するときには、 居住年以後10年間(平成13年7月1日から平成33年12月31日までの間で居住した場合には、 最長10年間。 それ以前のものは最長15年間)の各年のうち、 合計所得金額が3千万円以下である年について、 住宅借入金等の年末残高を基にした所定額を住宅借入金等特別控除としてその年の所得税額から控除できるというものです。
家屋に入居後、 本年12月31日まで継続して居住用に供していることが控除の適用要件ですので、 年度の途中で海外勤務となり出国している場合には、 この制度の適用はありません。
自己の居住用の家屋が2以上有する場合には、 主として居住用とする1の家屋に限られます。
連帯債務(共有)の場合には、 各年12月31日現在のその住宅借入金等の金額に控除を受ける人の負担割合(持分割合)を加味して控除額を計算します。 その割合は、 小数点以下第4位を切上げ、 90%以上である場合は100%とします。
住宅ローンの借換え: この制度の適用者が、 住宅借入金等の借換えをした場合に一定の要件を満たすときには適用が継続します。 住宅ローン金利が低くいものがあるとローンの借換えを行う場合があります。 一般の住宅ローンの場合の借換えでは、 新たな借入金が当初の借入金を消滅させるもので、 適用対象となっていた家屋の取得等のための資金に充てるものであれば住宅ローン控除の継続適用の対象となります。 その場合の新たな借入金の償還期間も10年以上であることが適用要件となっています。 ローン借換後の借入額が借換前の借入残高以下であれば、 年末借入残高が控除対象額となりますが、 逆に借換後の借入額が借換直前の借入残高を上回る場合、 次の按分計算して控除対象額を導く必要があります。
ローン借換後の借入額の年末残高 X (借換直前の借入残高 ÷ 借換直後の借入額) = 控除対象借入額の年末残高

(リ) 給与と徴収税額の集計
年中に支払った給与・賞与が対象になりますが、 本年分の給与で未払いであっても、 本年中に支給日が到来して支払の確定したものについても年末調整の対象になります。

以上が年末調整の概要となります。

2018年11月8日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

相続分野で民法改正の概要

民法の相続分野の規定を約40年ぶりに見直す民法改正が2018年7月6日に成立し、7月13日に公布されました。主な法改正は以下の6点で、2020年7月13日までに順次施行されることになっています(下記に記載以外の施行は、2019年7月13日までに政令で定める日となっていますが、法務省のHP等で公表される予定です)。
一 配偶者の居住権保護(施行は、2020年7月13日までに政令で定める日)
二 遺産分割等に関する見直し
三 遺言制度に関する見直し(施行は2019年1月13日から)
四 遺留分制度に関する見直し
五 相続の効力等に関する見直し
六 相続人以外の人からの介護・看護への特別寄与分の請求権
以下、それらの概要を記載します。

一 配偶者の居住権保護
1. 配偶者短期居住権
(1)居住建物を配偶者を含む共同相続人間で遺産分割すべき場合
配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には、配偶者は、下記のいずれか遅い日までの間、無償でその建物を使用することができます。
① 遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間
② 相続開始から6ヵ月間の間
(2)上記(1)以外に、居住建物を第三者に遺贈や配偶者が相続放棄した場合等
居住建物の所有者は建物に無償で居住していた配偶者に対して、いつでも配偶者短期居住権の消滅を申入れすることが可能ですが、その申入れを受けてから6ヵ月間は引続き配偶者は無償でその建物を使用することができます。
2. 配偶者居住権
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として、残された配偶者の保護を手厚くし、遺産分割の協議が調うなどすれば、残された配偶者は自身が亡くなるまで(終身又は当事者間で存続期間を定めた場合にはその一定期間)今の住居に住み続けられる「配偶者居住権」を得られ、住居の所有権を取得する必要がなくなります(配偶者は家に居住権を設定する登記手続きを法務局(登記所)にすることで権利を確保)。それにより、遺産分割では預貯金など他の遺産の取り分を増やし、老後の生活資金にあてることも可能になります。居住権のみなら、所有権を取得する場合よりも評価額が低くなるためです(これまでの相続財産の評価額が、居住権評価額と所有権評価額に分けられることになります)。なお、配偶者居住権は、協議による遺産分割の場合に限られるものではなく、被相続人の遺言によって取得させることもできます。
配偶者居住権の財産評価額方法は、今後公表されることになります。

二 遺産分割等に関する見直し
1.特定配偶者に遺贈又は贈与した居住用不動産の特別受益の持戻し計算免除
婚姻期間が20年以上で、配偶者に居住用の建物又はその敷地の全部又は一部(居住用不動産)を生前贈与するか遺言で贈与の意思を示せば、その居住用不動産は被相続人が特別受益の持戻し免除の意思表示したものと推定し、遺産分割の対象にしない(遺産分割の共有財産にならない)という優遇措置が設けられました。
2.預貯金債権の仮払い制度
遺産分割の協議中でも、相続した預貯金を葬儀費用や生活費用に充てるため、仮払いを認める仮払制度が設けられます。
(1) 家事事件手続法の保全処分要件の緩和
家庭裁判所に遺産分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、仮分割の仮処分の必要性があり、かつ、他の共同相続人の利益を害しないと裁判所が判断した場合には、預貯金債権の仮払いが認められることになります。
(2) 家庭裁判所の判断なく預貯金債権の払戻し
各共同相続人は、預貯金債権のうち、各預貯金口座ごとに以下の金額(但し、一つの金融機関で引き出せる金額については法務省令で定める金額を上限:100万円~150万円程度の予定)まで、他の共同相続人の同意なく単独で払戻しを求めることができます。
 相続開始時の個々の預貯金口座の金額 × 3分の1 × 共同相続人の法定相続分 
= 単独で払戻しを求めることができる金額
3. 遺産分割前に相続財産が処分された場合の遺産分割の範囲
(1) 遺産分割前に相続財産が処分された場合であっても、共同相続人全員の同意により、当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができます。
(2) 共同相続人の1人又は数人が遺産分割前に相続財産を処分した場合には、当該処分した共同相続人については、上記(1)の同意を得る必要はありません。

三 遺言制度に関する見直し
1.自筆証書遺言の利便性と信頼性の向上
これまで生前に被相続人が書く自筆証書遺言は、内容に問題があっても死後まで分からず、信頼性に欠ける等から相続を巡るトラブルも少なくありませんでした。そこで、自筆証書遺言は、今後、公的機関である全国の法務局で形式に関し事前チェック後に保管できるようにして、相続人が遺言があるかを簡単に調べられるようになります。法務局に預けた場合は、家庭裁判所で相続人が立ち会って内容確認する「検認」の手続きを不要とし、又、財産目録はこれまで全文を自筆に限定していましたが、パソコンでの作成可能となります(但し、財産目録の毎ページに署名押印しなければなりません。又、自書によらない記載が両面に及ぶ場合には、その両面に署名押印しなければなりません)。この法務局に預ける場合の手数料も数千円程度に安価を想定しているようです。
なお、遺言者の死亡届が提出された場合、法務局から相続人に通知できるようなシステムも検討されます。
2.遺言執行者権限の明確化
これまで遺言執行者は常に相続人の利益のために職務を遂行すべきであるとの誤った認識を抱く者も少なくなく、このために遺言執行者と相続人との間でトラブルになるケースが相当数生じていました。そこで、
(1) 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示していた行為は、相続人に対し直接にその効力が帰属するという規定表現になりました。
(2) 特定遺贈又は特定財産承継遺言がされた場合における遺言執行者の権限等について明確化が図られました。

四 遺留分制度に関する見直し
1.遺留分減殺請求権の金銭債権化
これまで減殺請求により当然に物権的効果が生ずることとされているため、減殺請求の結果、遺贈又は贈与の目的財産は受贈者と遺留分権利者との共有になることが多く、このような帰結は、円滑な事業承継を困難にするものであり、又、共有関係の解消をめぐって新たな紛争を生じさせることになることがありました。そこで、
(1) 遺留分に関する権利行使により生ずる権利を遺留分侵害額に相当する金銭債権化することとしました。
(2) 遺留分権利者から遺留分侵害額請求を受けた時点で相当期間経過しており請求を受けた時点では、受遺者又は受贈者が十分な資金がなく金銭を直ちに準備できない場合には、受贈者等は、裁判所に対し金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができるようになりました。
2.遺留分及び遺留分侵害額の算定方法
(1)遺留分及び遺留分侵害額の計算式
① 「遺留分」 = 「遺留分を算定するための財産価額」 × 1/2(*1)× 遺留分権利者の法定相続分 
                 (*1)相続人が直系尊属のみの場合は1/3
「遺留分を算定するための財産価額」 
= 相続時における被相続人の積極財産の額 
+ 相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内*2)
+ 第三者に対する生前贈与の額(原則1年以内)
- 被相続人の債務の額
              (*2)被相続人と受贈者が、遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した場合には、10年前の贈与分も含む
 ② 遺留分侵害額 = 「遺留分の額」- 遺留分権利者が受けた特別受益額 - 遺産分割の対象財産がある場合(既に遺産分割が終了している場合も含む)には具体的相続分に応じて遺産を取得したものとした場合の当該遺産の価額(但し、寄与分もよる修正は考慮しない)+ 被相続人に債務がある場合には、その債務のうち遺留分権利者が負担する債務の額
(2)相続人に対する贈与は、相続開始前10年間にされたものに限定し、その価額を遺留分を算定するための財産価額に算入する。

五 相続の効力等に関する見直し
特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)や相続分の指定された場合により承継された財産については、登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができていましたが、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないことになります。

六 相続人以外の人からの介護・看護への特別寄与分の請求権
被相続人の親族で相続の対象にならない人でも、被相続人に対して介護や看病その他の労務の提供により被相続人の財産の維持又は増加に貢献(寄与)した場合は、相続人に金銭(特別寄与料)を請求できる仕組みが取り入れられます。対象は、息子の妻が義父母を介護していたケース等を想定したもので、特別寄与の請求権者は、被相続人の親族に限定されることになっています。これまでの介護の寄与をめぐり争った場合の家庭裁判所が示す目安は、次の通りです。
介護の日当額(8千円)× 日数(500日)× 裁量的割合(70%)
= 介護寄与分額(280万円) 

以上です。

2018年10月28日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant