定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い(法人税基本通達案)

国税庁は先月、生命保険各社が節税対策になると販売していた解約返戻率が高い定期保険等について、課税ルールの見直しの基本通達案を発表しています。その概要は以下の通りですが、来月の6月には外部コメントを受け最終化される予定になっています。過熱した節税保険ブームに歯止めをかけるということから、見直しの基本方針には変更が無いかと思われます。
1.対象の保険とは
法人が契約者で役員又は使用人(これらの親族も含む)を被保険者とする保険期間が3年以上の定期保険又は第三分野保険で最高解約返戻率が50%超の加入保険が対象となります。
従いまして、対象外となる全損タイプの定期保険等は、次のものになります。
(1)保険期間が3年未満の定期保険等
(2)最高解約返戻率が50%以下の定期保険等
(3)最高解約返戻率が70%以下、かつ、年換算保険料相当額(保険料総額÷保険期間)が20万円以下の定期保険等

2.保険料の取扱い
(1)最高解約返戻率 50%超~70%以下のケース

保険開始から終了までの各期間支払保険料 積立保険資産
資産計上損金計上
100分の40相当期間(資産計上期間)40% 60% 40%積立
資産計上期間経過後から100分の75相当期間100%
100分の75相当期間から保険終了まで100%当該期間に均等取崩して損金計上

注:但し、被保険者1人当たり年換算保険料相当額が20万円以下の場合には、全額損金計上。

(2)最高解約返戻率 70%超~85%以下のケース

保険開始から終了までの各期間支払保険料 積立保険資産
資産計上損金計上
100分の40相当期間(資産計上期間)
60% 40% 60%積立
資産計上期間経過後から100分の75相当期間100%
100分の75相当期間から保険終了まで
100%当該期間に均等取崩して損金計上

(3)最高解約返戻率 85%超のケース

保険開始から終了までの各期間 支払保険料 積立保険資産
資産計上 損金計上
開始から最高解約返戻率となる期間(各期間において、その解約返戻金相当額から前期の解約返戻金相当額を控除した金額を年換算保険料相当額で除した割合が70%を超える期間がある場合には、その超えることとなる最も遅い期間)の終了までの期間(資産計上期間:但し、資産計上期間が5年未満の場合には、開始から5年経過までとし、保険期間が10年未満の場合には、開始から当保険期間の100分の50に相当する期間終了までとする)支払保険料X最高解約返戻率X70%(但し、保険期間開始10年までは70%ではなく90%)支払保険料X最高解約返戻率X30%(但し、保険期間開始10年までは30%ではなく10%)所定割合の積立
資産計上期間経過後100%
資産計上期間経過後で解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後から保険終了まで100%当該期間に均等取崩して損金計上

3.記帳処理の例示
設例:
保険期間:20年(事業年度の月始め契約)
保険料:月額20万円(年額240万円)
最高解約返戻率:70%
(1)資産計上期間
20年X40%=8年目までは、保険料の60%は資産計上、40%は損金計上
各年の年間の仕訳:

 (借方)積立保険資産 144万円  (貸方) 現預金    240万円
     保険料     96万円 
(2)資産計上期間後から75%相当経過までの期間
9年目(資産計上期間後)から15年目(20年X75%)までは、保険料の100%は損金計上
各年の年間の仕訳:
 (借方)保険料    240万円  (貸方) 現預金    240万円
(3)75%相当経過後から契約終了までの期間
20年-15年(20年X75%)=5年間(契約終了までの残期間)は、保険料の100%は損金計上
144万円X8年間=1,152万円(積立保険資産の総額)
1,152万円÷5年=230.4万円(年間積立保険資産の取崩額)は、取崩し各年に損金計上
各年の年間の仕訳:
 (借方)保険料    470.4万円 (貸方) 現預金    240万円
                       積立保険資産 230.4万円 

以上

2019年5月3日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant