「年収の壁」に対する政府の対応策

年収の壁に対する労働省の「年収の壁」の支援強化パッケージが、以下の様に示されています。

年収の壁対応策
103万円超特に無し
106万円超①  扶養から外れ社会保険料が発生するが、その相当額を手当支給した企業に助成金(最大、労働者一人当たり50万円)を出す(キャリアアップ助成金の新コースとして、「社会保険適用時処遇改善コース」を新設)。
なお、労働者の収入増加の取組として、(1)手当等支給メニュー、及び(2)労働時間延長メニューにより、各助成金の要件と上限が決められています(後述参照)。
②  社会保険適用促進手当
労働者が被用者保険の新たに適用となった場合に、会社は、当該労働者の保険料負担を軽減する目的で、給与・賞与とは別に「社会保険適用促進手当」を支給することができる。標準報酬月額が104千円以下の労働者に同手当金を支給した場合、適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、本人の社会保険料の算定対象となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に含めないこととする。
130万円超130万円を超えても一時的な収入増であると証明(被扶養者認定に通常必要な書類に加えて、人出不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業者の証明)されれば連続2年まで扶養に留まることが出来る。
150万円超特に無し

(1)手当等支給メニュー、及び(2)労働時間延長メニューにより、各助成金の要件と上限は次のとおり。

(1)手当等支給メニュー(2)労働時間延長メニュー
要件1人当たりの助成金要件1人当たりの助成金
週所定労働時間の延長賃金(注3)の増額
A賃金(注1)の15%以上分を労働者に追加支給(注2)1年目 20万円a 4時間以上30万円
B賃金(注1)の15%以上分を労働者に追加支給(注2)するとともに、3年目以降、以下cの取組が行われること2年目 20万円b 3時間以上
 4時間未満
5%以上
c 2時間以上
 3時間未満
10%以上
C賃金(注3)の18%以上を増額(注4)させること3年目 10万円d 1時間以上
 2時間未満
15%以上

注1:賃金は標準報酬月額及び標準賞与額
注2:標準報酬月額に算定されない「社会保険適用促進手当」による支給も可
注3:賃金は基本給
注4:基本給の他、被用者保険適用時に設けた一時的な手当を恒常的なものとする場合、当該手当を含む。労働時間延長との組合せによる増額も可。又、2年目に前倒してcの取組(賃金の増額の場合のみ)を実施する場合、3回目の支給申請でまとめて助成(30万円)

年収の壁とは:
パート主婦の中で給与収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担増になることから就業調整する方がおられます。この問題に関しましては、政府は上述の対応策が出されています。数回、この年収の壁を取り上げましたが、再掲載いたします。年間給与収入額からの年収の壁に関して、一般的なケースでは、以下の様に指摘されています。

年間給与収入額影響する基準影響する人影響する内容
103万円超所得税課税パート者本人パート者本人の所得税が発生する
106万円超本人の社会保険の加入基準従業員数101人以上の会社勤務のパート者本人(所定の適用条件を満たす場合)パート者本人の社会保険の加入基準であり、社会保険料(厚生年金・健康保険料)が発生する。将来、厚生年金が受領できます。
130万円超夫の社会保険の被扶養者基準従業員数100人以下の会社勤務のパート者本人夫の社会保険の被扶養者基準であり、本人が第3号被保険者から外れ、パート者本人の社会保険料(国民年金・国民健康保険料等)が発生する
150万円超所得税の配偶者特別控除夫の配偶者特別控除(最高38万円)が減額となっていく。

なお、被扶養者に関しましては所得税上と社会保険上の取扱いが、以下の様に異なりますので留意する必要があります。
1.所得税上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「所得税の扶養」とは、扶養している親族等の人数に応じて所得の控除を受けることができる制度のことになります。
① 「生計を一にする(家計を共にしていれば同居でなくてもOK)」
② 以下の所得基準(収入金額ではありません)があります。
年間所得金額が48万円以下(給与収入で103万円)であること(いわゆる「103万円の壁」)。なお、70歳以上の老人扶養は、同居での所得で58万円以下(年金収入で168万円・給与収入で113万円)・同居外での所得で48万円以下(年金収入で158万円・給与収入で103万円)であること。
2.社会保険上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「社会保険の扶養」とは、被保険者の扶養している親族等が、自分自身で社会保険料を負担することなく保険の給付を受けられる制度のことになります。
① 「三親等以内の親族は同一の世帯(同居して家計を共にしている)」であること
② 年間の収入金額(所得金額ではありません)が130万円未満(60歳以上は180万円未満)であること、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であること。いわゆる「130万円の壁」と言われるのは、この認定基準があるからです。
③ 75歳未満であること(従って、75歳以上は扶養者になれません。何故ならば、75歳から後期高齢者医療保険制度に移行になりますので、社会保険制度への加入資格はありません)
3.社会保険加入条件とは
なお、社会保険加入で収入金額を「106万円」未満に収めたいと言われることがありますが、いわゆる「106万円の壁」とは、働く方でその方自身が厚生年金保険や健康保険といった社会保険への加入が必要となる収入基準のことです。こちらの保険適用基準は、以下の一定の条件を満たした場合に対象となります。
正社員の場合には、所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上でありますが、パート・アルバイトなどの短時間労働者の場合には、従業員101人以上の企業(特定適用事業所)に勤務している方で、かつ、 
① 週20時間以上働いている
週20時間を算出する際は、残業時間を合算せずに計算します。
② 1年以上継続して勤務する見込み
雇用契約書等に1年以上継続して勤務する見込みがあること。
③ 1カ月の賃金が8.8万円超
1カ月の賃金が8.8万円を超すというもの。1カ月の賃金が8.8万円を超すと、1年の年収が計算上、で106万円以上になります。ここでいう1カ月の賃金とは、雇用契約時の所定内賃金のみで、残業代、各種手当や賞与などは含みません。
④ 学生ではない
の諸条件を満たす場合には社会保険加入となります。なお、2024年10月から社会保険加入条件の従業員数が51人以上の企業に引き下げられます。

2023年10月30日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

マンション相続新ルール 国税庁、来年1月適用

国税庁はマンションで新たに導入する相続税・贈与税の算定ルール(通達)について、2024年1月以降から適用することを正式に決めた。
当該算定方法につきましては、7月に記載しました通達案の内容に変更はありませんでした。

2023年10月12日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant