ふるさと納税における寄附金限度額の目安計算

2023年(令和5年)も残すところ約1ヵ月となりました。近年、ふるさと納税(寄附金)の内容が理解され利用される方が多くなり、特に12月中にその頻度が高いようです。この傾向は、当該年度の年間収入・所得が予想されることで利用のメリット上限、いわゆる寄附金限度額をある程度考慮(予想)されてのことかと思われます。ご存知の様に加熱するふるさと納税の状況から、所定の基準に適合する都道府県等をふるさと納税適用の対象とされています。
①寄附金の募集を適正に実施する都道府県等
②上記都道府県等で返礼品は、以下のいずれも満たす都道府県等であること。
(イ)返礼品の返礼割合は3割以下とすること
(ロ)返礼品は地場産品とすること
このふるさと納税は寄附金として、個人所得税の寄附金の所得控除と個人住民税の寄附金の税額控除により、一定額が本来納める税額から減額・控除に代わるものであり、メリット上限(寄附金限度額)が存在します。
例えば、給与収入500万円(給与所得356万円)、社会保険料74万円、配偶者控除38万円、基礎控除48万円(住民税では43万円)の場合におけるふるさと納税の寄附金限度額は以下の算式で計算出来ます。
個人住民税所得割額X 20% ÷ (90% - 所得税率X 1.021)+ 2,000 =寄附金限度額
ご存知の様に所得税率は、累進税率の7段階に分かれていますので、次の表が寄附金限度額の目安となるかと思います(総合課税と申告分離課税も含む場合の適用時における目安)。

所得税の課税所得額所得税率寄附金限度額
195万円未満5%個人住民税所得割額 X 23.558% + 2千円
195~330万円未満10%個人住民税所得割額 X 25.065% + 2千円
330~695万円未満20%個人住民税所得割額 X 28.743% + 2千円
695~900万円未満23%個人住民税所得割額 X 30.067% + 2千円
900~1,800万円未満33%個人住民税所得割額 X 35.519% + 2千円
1,800~4,000万円未満40%個人住民税所得割額 X 40.683% + 2千円
4,000万円以上45%個人住民税所得割額 X 45.397% + 2千円

従って、
所得税の課税所得額:
所得3,560,000 - (社会保険料740,000 + 配偶者控除380,000+基礎控除480,000) = 課税所得金額1,960,000
適用所得税率は、10%となります。
個人住民税所得割額:
3,560,000 - (740,000 + 380,000+430,000) = 2,010,000
2,010,000 X 10% =201,000円(住民税所得割額)
201,000 X 20% ÷ (90% - 10% X 1.021) + 2,000 = 52,382円
又は、上記表から
201,000 X 25.065% + 2,000 = 52,381円
計算結果から、 52,380円相当額が寄附金限度額ということになります。

2023年11月25日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

「年収の壁」に対する政府の対応策

年収の壁に対する労働省の「年収の壁」の支援強化パッケージが、以下の様に示されています。

年収の壁対応策
103万円超特に無し
106万円超①  扶養から外れ社会保険料が発生するが、その相当額を手当支給した企業に助成金(最大、労働者一人当たり50万円)を出す(キャリアアップ助成金の新コースとして、「社会保険適用時処遇改善コース」を新設)。
なお、労働者の収入増加の取組として、(1)手当等支給メニュー、及び(2)労働時間延長メニューにより、各助成金の要件と上限が決められています(後述参照)。
②  社会保険適用促進手当
労働者が被用者保険の新たに適用となった場合に、会社は、当該労働者の保険料負担を軽減する目的で、給与・賞与とは別に「社会保険適用促進手当」を支給することができる。標準報酬月額が104千円以下の労働者に同手当金を支給した場合、適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、本人の社会保険料の算定対象となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に含めないこととする。
130万円超130万円を超えても一時的な収入増であると証明(被扶養者認定に通常必要な書類に加えて、人出不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業者の証明)されれば連続2年まで扶養に留まることが出来る。
150万円超特に無し

(1)手当等支給メニュー、及び(2)労働時間延長メニューにより、各助成金の要件と上限は次のとおり。

(1)手当等支給メニュー(2)労働時間延長メニュー
要件1人当たりの助成金要件1人当たりの助成金
週所定労働時間の延長賃金(注3)の増額
A賃金(注1)の15%以上分を労働者に追加支給(注2)1年目 20万円a 4時間以上30万円
B賃金(注1)の15%以上分を労働者に追加支給(注2)するとともに、3年目以降、以下cの取組が行われること2年目 20万円b 3時間以上
 4時間未満
5%以上
c 2時間以上
 3時間未満
10%以上
C賃金(注3)の18%以上を増額(注4)させること3年目 10万円d 1時間以上
 2時間未満
15%以上

注1:賃金は標準報酬月額及び標準賞与額
注2:標準報酬月額に算定されない「社会保険適用促進手当」による支給も可
注3:賃金は基本給
注4:基本給の他、被用者保険適用時に設けた一時的な手当を恒常的なものとする場合、当該手当を含む。労働時間延長との組合せによる増額も可。又、2年目に前倒してcの取組(賃金の増額の場合のみ)を実施する場合、3回目の支給申請でまとめて助成(30万円)

年収の壁とは:
パート主婦の中で給与収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担増になることから就業調整する方がおられます。この問題に関しましては、政府は上述の対応策が出されています。数回、この年収の壁を取り上げましたが、再掲載いたします。年間給与収入額からの年収の壁に関して、一般的なケースでは、以下の様に指摘されています。

年間給与収入額影響する基準影響する人影響する内容
103万円超所得税課税パート者本人パート者本人の所得税が発生する
106万円超本人の社会保険の加入基準従業員数101人以上の会社勤務のパート者本人(所定の適用条件を満たす場合)パート者本人の社会保険の加入基準であり、社会保険料(厚生年金・健康保険料)が発生する。将来、厚生年金が受領できます。
130万円超夫の社会保険の被扶養者基準従業員数100人以下の会社勤務のパート者本人夫の社会保険の被扶養者基準であり、本人が第3号被保険者から外れ、パート者本人の社会保険料(国民年金・国民健康保険料等)が発生する
150万円超所得税の配偶者特別控除夫の配偶者特別控除(最高38万円)が減額となっていく。

なお、被扶養者に関しましては所得税上と社会保険上の取扱いが、以下の様に異なりますので留意する必要があります。
1.所得税上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「所得税の扶養」とは、扶養している親族等の人数に応じて所得の控除を受けることができる制度のことになります。
① 「生計を一にする(家計を共にしていれば同居でなくてもOK)」
② 以下の所得基準(収入金額ではありません)があります。
年間所得金額が48万円以下(給与収入で103万円)であること(いわゆる「103万円の壁」)。なお、70歳以上の老人扶養は、同居での所得で58万円以下(年金収入で168万円・給与収入で113万円)・同居外での所得で48万円以下(年金収入で158万円・給与収入で103万円)であること。
2.社会保険上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「社会保険の扶養」とは、被保険者の扶養している親族等が、自分自身で社会保険料を負担することなく保険の給付を受けられる制度のことになります。
① 「三親等以内の親族は同一の世帯(同居して家計を共にしている)」であること
② 年間の収入金額(所得金額ではありません)が130万円未満(60歳以上は180万円未満)であること、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であること。いわゆる「130万円の壁」と言われるのは、この認定基準があるからです。
③ 75歳未満であること(従って、75歳以上は扶養者になれません。何故ならば、75歳から後期高齢者医療保険制度に移行になりますので、社会保険制度への加入資格はありません)
3.社会保険加入条件とは
なお、社会保険加入で収入金額を「106万円」未満に収めたいと言われることがありますが、いわゆる「106万円の壁」とは、働く方でその方自身が厚生年金保険や健康保険といった社会保険への加入が必要となる収入基準のことです。こちらの保険適用基準は、以下の一定の条件を満たした場合に対象となります。
正社員の場合には、所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上でありますが、パート・アルバイトなどの短時間労働者の場合には、従業員101人以上の企業(特定適用事業所)に勤務している方で、かつ、 
① 週20時間以上働いている
週20時間を算出する際は、残業時間を合算せずに計算します。
② 1年以上継続して勤務する見込み
雇用契約書等に1年以上継続して勤務する見込みがあること。
③ 1カ月の賃金が8.8万円超
1カ月の賃金が8.8万円を超すというもの。1カ月の賃金が8.8万円を超すと、1年の年収が計算上、で106万円以上になります。ここでいう1カ月の賃金とは、雇用契約時の所定内賃金のみで、残業代、各種手当や賞与などは含みません。
④ 学生ではない
の諸条件を満たす場合には社会保険加入となります。なお、2024年10月から社会保険加入条件の従業員数が51人以上の企業に引き下げられます。

2023年10月30日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

10月1日よりインボイス制度導入

来月10月よりインボイス制度が導入されますが、小規模事業者でこれまで免税事業者の方は、かなり抵抗があり中にはインボイス制度以前に消費税に関する理解が不十分である方も少なくないと感じています。インボイス制度では、課税事業であるインボイス発行事業者登録者は、相手が同様にインボイス発行事業者登録されている事業者から交付されたインボイス(請求書等)で無い場合には、その支払いに含まれる消費税額を控除出来なくなり、これまでと比べて消費税の納付額が増えることになってしまいます。その為に、取引相手に代替性があるならばインボイス発行事業者登録していない事業者との取引を避ける等の行動になることが予想されます。その様な行動を避ける為に、小規模事業者がインボイス発行事業者登録すると課税事業者として新たな消費税の納付負担が課されることになり、事業継続が危うくなることもあり得ます。この様な状況下でスタートしますが、様々な取引内の書類があり、その中で仕入税額控除(消費税額を控除)の為にインボイスとしての適用要件を満たす書類の保存も全事業者に重い負担となることは間違いありません。
現行の消費税率10%でも高いという方も少なくありませんが、国等の財源確保の為には、税率アップは避けて通れないことかもしれません。現状維持で国の借金を増やし続け後世の人への負担を先送りするか否かという課題・選択かと思います。いずれにしましても、今後の消費税を含む税制改正に注視していく必要があると感じています。
なお、詳細なインボイス制度内容を含む消費税に関しましては、「税金情報」の箇所を見てください。

2023年9月22日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

住宅ローン控除 2024年から省エネ基準適合義務化

令和4年度税制改正で住宅ローン控除の見直しがありましたが、改正建築物省エネ法の施行に伴い、令和7年4月以降、原則として全ての新築住宅に省エネ基準適合が義務付けられたことの背景から、令和6年以降に入居する新築住宅について住宅ローン控除を適用するのは、原則として省エネ基準に適合していることが要件となります。但し、令和6年以降の入居であっても、次の①又は②に該当する場合は、借入限度額2,000万円、控除期間10年間の住宅ローン控除の対象となります。
① 令和5年末までに建築確認を受けている
建築確認に係る確認済証又は検査済証の写しは必要
② 令和6年6月末までに竣工済である
登記事項証明書の添付が必要

省エネ基準適合住宅又はZEH水準省エネ住宅を取得し、住宅ローン控除の適用を受ける場合には、省エネ性能の証明書として、建築住宅性能評価書の写し又は住宅省エネルギー性能証明書の添付が必要となります。

住宅ローン控除の適用期限が令和3年12月31日から令和7年12月31日までの4年延長となりましたが、控除率が現行1%から0.7%に引き下げられました。又、適用対象者の所得要件が、令和4年1月1日以降居住の用に供したものから合計所得金額が現行3,000万円から2,000万円に引き下げられました。又、所得税においてローン控除しきれなかった場合において、個人住民税のローン控除限度額は、現行の最高136,500円から最高97,500円に減額となりました。
住宅ローン控除額等の要件は以下の様になります。
(1)認定住宅等の場合
A 新築の場合

区分居住年借入限度額控除率控除期間
認定住宅(注1)令和4年・令和5年5,000万円0.7%13年
令和6年・令和7年4,500万円
ZEH水準省エネ住宅
(注2)
令和4年・令和5年4,500万円
令和6年・令和7年3,500万円
省エネ基準適合住宅令和4年・令和5年4,000万円
令和6年・令和7年3,000万円

注1:認定住宅とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう。
注2:ZEH水準省エネ住宅とは、ZEH(ゼッチ)とはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称です。省エネ性能を上げつつ、エネルギーを「創り出す」ことで消費エネルギー量の収支をプラスマイナスゼロにする住宅(省エネのための設備や太陽光発電システムなどを導入する必要有り)のことを指します。
省エネ性能の要件基準:

評価方法基準/住宅区分ZEH水準省エネ住宅省エネ基準適合住宅
断熱等性能等級等級5以上等級4以上
一次エネルギー消費量等級等級6以上

借入限度額は一律3,000万円で、控除率0.7%、控除期間は一律10年間となります。
(2) 認定住宅等以外(一般住宅)の場合
A 新築の場合

区分居住年借入限度額控除率控除期間
令和4年・令和5年3,000万円0.7%13年
令和6年・令和7年2,000万円10年

B 中古と増築の場合
借入限度額は一律2,000万円で、控除率0.7%、控除期間は一律10年間となります。

その他見直し:

項目内容
所得要件合計所得金額3,000万円から2,000万円に引き下げ
適用日令和4年1月1日以降居住の用に供したものから適用(令和7年12月31日まで)一般新築住宅
床面積基準の緩和床面積50㎡以上を40㎡以上に引き下げられましたが、40㎡以上50㎡未満は、合計所得金額が1,000万円以下の年度のみ適用となります。
又、令和5年12月31日以前に建築確認を受けた新築も同様に緩和の適用対象になります。
既存住宅の要件変更令和4年1月1日以降居住の用に供したものから、新耐震基準に適合している場合には、中古住宅の築年数要件は廃止となります。
確定申告等手続の見直し令和5年1月1日以降居住の用に供したものから、金融機関に住宅ローン控除申請書を提出した場合には、確定申告時に新築工事の請負契約書の写し等、年末借入金残高証明の添付不要となります。事前に、金融機関に「住宅ローン控除申請書」を提出する必要があり、当該申請書を基に金融機関から所轄税務署長に調書として提出(初年度のみ1月31日、それ以降各年10月31日までに)する必要があります。税務署は、毎年、住宅ローン控除証明書を本人に交付します。
なお、年末調整の際に特別控除申告書への年末借入金残高証明の添付も不要となります。
この改正は、居住年が令和5年以後である者が、令和6年1月1日以後に行う確定申告(令和5年分から)及び年末調整(令和6年分から)について適用となります。

上記のまとめは、以下の様になります。

区分居住年借入限度額控除率控除期間
認定住宅(注1)令和4年・令和5年5,000万円0.7%13年
令和6年・令和7年4,500万円
ZEH水準省エネ住宅
(注2)
令和4年・令和5年4,500万円
令和6年・令和7年3,500万円
省エネ基準適合住宅令和4年・令和5年4,000万円
令和6年・令和7年3,000万円
新築住宅等令和4年・令和5年3,000万円
令和6年・令和7年2,000万円10年
中古住宅等令和4年・令和7年2,000万円
中古の認定住宅等令和4年・令和7年3,000万円
2023年8月21日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

働き方改革関連法下での2024年問題

「2024年問題」とは、働き方改革関連法によって、2024年4月1日以降、「自動車運転業務」「建設事業」「医師」等の業種に対し時間外労働の上限規制の5年間猶予が停止され、年間の時間外労働時間の上限が制限されることで発生する諸問題の総称のことです。
働き方改革関連法では、時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時間に制限され、労使間で36協定を結んだとしても、時間外労働は年720時間に制限されていました。以下を内容とする時間外労働の上限規制となっています。
1.原則(一般業務)
(1)認められる時間外労働時間は、原則として月45時間、年360時間
(2)臨時的な特別な事情があり、労使の合意(36協定)がある場合でも、以下の範囲しか認められない
① 時間外労働時間が年720時間
② 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
③ 時間外労働と休日労働の合計の平均が、2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月全て80時間以内
④ 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年に6ヵ月

2.自動車運転業務(トラックやバス、タクシーのドライバー業務)
(1)時間外労働時間の上限が、労使間で36協定が合意された場合、年960時間(休日労働を含まず)
(2)次の規制は適用させません。
①「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」
②「時間外労働と休日労働の合計の平均が、2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月全て80時間以内」

3.建設事業
(1)災害の復旧や復興の事業を除き、上限の原則規制が全て適用される。
(2)災害の復旧や復興の事業に関しては、次の規制は適用させません。
①「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」
②「時間外労働と休日労働の合計の平均が、2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月全て80時間以内」

4.医師
労働時間の上限規制は、医師の経験年数や医療機関の特性により、3つの水準に分けられて、それぞれ上限が異なります。各水準については、以下の通りです。
(1)A水準:すべての医師
対象は、一般の診療従事勤務医であるすべての医師です。時間外労働の上限は、年間で960時間以下、月間では100時間未満になり、休日労働も含まれます。
(2)B水準:地域医療確保暫定特例水準
対象は、救急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関で、地域医療を確保するために長時間労働が必要な医師です。時間外労働の上限は休日労働を含めて、年間1,860時間以下、月間100時間未満になります。
(3)C水準:集中的技能向上水準
対象は、初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医や高度技能獲得を目指すなど、短期間で集中的に症例経験を積む必要がある医師です。時間外労働の上限は、年間1,860時間以下、月間では100時間未満になり、休日労働も含みます。

時間外労働時間に対する給与の割増率は、以下の様になっています。

区分割増支払条件割増率
時間外
(時間外手当・残業手当)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25%以上
時間外労働時間が限度時間(1か月45時間、1年360時間等)を超えたとき25%以上
時間外労働時間が1か月60時間を超えたとき50%以上
休日(休日手当)法定休日(週1日)に勤務させたとき25%以上
深夜(深夜手当)22時から5時までの間に勤務させたとき35%以上
2023年8月11日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

マンション一室評価の個別通達案

国税庁は「マンション節税」や「タワマン節税」の防止に向け、実勢価格を反映する新たな計算式を導入した相続税・贈与税の算定ルールの通達案を示しました。マンションの理論的評価額と実勢価格との乖離率をベースに一定の補正率に基づいて評価が行われ、高層階ほど税額が増えることになりそうです。
新たな通達案は、①築年数や階数などに基づいて評価額と実勢価格の乖離の割合(評価乖離率)を計算、②その乖離率が約1.67倍以上(評価水準0.6未満)の場合、
従来の評価額✕評価乖離率✕0.6=課税評価額
となり、一戸建ての平均乖離率(1.66倍)にそろえることになります。

A 現行のマンション一室の評価方法は次のとおり。
建物(区分所有建物)の評価額(固定資産税評価額X1.0)+ 敷地(敷地利用権)の評価額(敷地全体の面積X共有持分(敷地権割合)X平米単価(路線価方式又は倍率方式)=マンション一室の評価額

B 新たなマンション一室の評価方法の見直は次のとおり。
1.評価適用対象物件
区分所有に係る財産の各部分(建物部分及び敷地利用部分。但し、構造上、居住の用途に共することができるものに限ります(マンション一室)。
なお、マンション一室には含まなく評価対象外の物件は以下のとおり。
① 地階を除き総階数2階以下の物件に係る部分
② 区分所有されている居住用部分が3以下であって、かつ、その全てがその区分所有者又はその親族の居住用である物件(いわゆる二世帯住宅等に係る部分は含まない)
③ マンション一棟保有の区分所有者がいない物件
④ 販売用マンション(棚卸商品)

2.マンション一室の評価方法

 現行個別通達案(新評価)
マンション一室の相続税評価額①建物の評価額+敷地の評価額=相続税評価額
①区分所有建物の評価額建物の固定資産税評価額(注1)X 1.0建物の固定資産税評価額(注1)X 1.0 X
「一定の補正率」
②敷地(土地:敷地利用権)の評価額敷地全体の価額(注2)X共有持分(敷地権割合)敷地全体の価額(注2)X共有持分(敷地権割合)X
「一定の補正率」

注1:建物の固定資産税評価額(各戸の評価額)=一棟の建物全体の評価額X当該専有面積割合
注2:敷地全体の価額=路線価方式、又は倍率方式による評価額

3.一定の補正率と評価水準との関係
一定の補正率は、「評価水準」値(3区分)によりその適用する補正率が決まります。
評価水準は「1÷評価乖離率」で計算され、マンションの理論的な市場価格が現行の通達評価額と比べ、どのくらいの割合で乖離しているかを示します。

区分評価水準(注3)適用する補正率(一定の補正率)
11超(=評価乖離率が1.0未満)評価乖離率(注4)
20.6以上1以下(=評価乖離率が
約1.67未満)
適用無し(現行の相続税評価額)
30.6未満(=評価乖離率が
約1.67以上)
評価乖離率(注4) X 0.6

注3:評価水準=1÷評価乖離率
注4:評価乖離率は、次のA~Dの要素を数値化したもの
A マンション建物の築年数
B マンション建物の総階数
C  マンション建物の所在階
D マンション建物の敷地持分狭小度   

4.評価乖離率の算出方法

評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220
      =①X△0.033 + ②X0.239 + ③X0.018 + ④X△1.195 + 3.220
A一棟の区分所有建物の築年数(注5) X △0.033
注5:築年数=建物の建築時から課税期間までの期間(1年未満は1年とする)
B一棟の区分所有建物の総階数指数(注6) X 0.239=:
(小数点以下第4位切捨て)
注6:総階数指数=地階を含まない総階数÷33(但し、1.0を超える場合は1とする)
C一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階(注7)X 0.018
注7:専有部分が地階の場合には、所在階は零階としてCの値は零(0)とする。なお、区分所有建物の複数階にまたがる場合には、低い階数階とする
C一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度(注8)X △1.195=:
(小数点以下第4位切上げ)
注8:敷地持分狭小度=一室の区分所有権等に係る敷地利用権の面積÷専有部分の面積

注:評価乖離率を求める算式及び一定の補正率の数値0.6については、適時見直しがおこなわれることになっています。例えば、固定資産税の評価見直し時期に併せて、当該時期の直前における一戸建て及びマンション一室の取引事例の取引価格に基づいて見直されることが考えられます。

5.適用時期
令和6年1月1日以後の相続、遺贈又は贈与により取得した財産評価の適用

2023年7月21日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

中小企業経営強化税制の見直し

この中小企業経営強化税制の制度は、青色申告書を提出する中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた一定の中小企業者(資本金1憶円以下、等)が平成29年4月1日から令和7年3月31日までの指定期間内に、新品(貸付は除く)の特定経営力向上設備等を取得または製作もしくは建設して、国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その事業年度において、特別償却(即時償却)または税額控除(所得価額の7%<資本金3千万以下は10%>:但し、法人税額の20%を上限)を認めるものです。
令和5年度改正で、特定経営力向上設備等の対象から、本業以外でコインランドリー業と暗号資産マイニング業の機械装置でその管理の概ね全部を他の者に委託するものは適用除外となりました。
特定経営力向上設備等の概要は次のとおり:

類型要件確認者対象設備
生産性向上設備
(A類型)
生産性が旧モデル比1%以上向上する設備工業会等*機械装置(160万円以上)
*工具(30万円以上):A類型の場合には測定工具又は検査工具に限る
*器具備品(30万円以上)
*建物附属設備(60万円以上)
*ソフトウェア(70万円以上):A類型の場合には設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するものに限る
収益力強化設備
(B類型)
投資収益性が年平均5%以上の投資計画に係る設備経済産業局
デジタル化設備
(C類型)
デジタル化設備
(C類型)
経営資源集約化設備(D類型)修正ROA又は有形固定資産回転率が一定割合以上の投資経営に係る設備

デジタル化設備(C類型)の適用要件は、①遠隔操作、②可視化、③自動制御化のいずれかに該当する設備である必要があります(中小企業庁より)。
① 遠隔操作とは
(1)デジタル技術を用いて、遠隔操作をすること
(2)以下のいずれかを目的とすること
(A)事業を非対面で行うことができるようにすること
(B)事業に従事する者が、通常行っている業務を、通常出勤している場所以外の場所で行うことができるようにすること
② 可視化とは
(1)データの集約・分析を、デジタル技術を用いて行うこと
(2)(1)のデータが、現在行っている事業や事業プロセスに関係するものであること
(3)(1)により事業プロセスに関する最新の状況を把握し経営資源等の最適化(※)を行うことができるようにすること
③ 自動制御化とは
(1)デジタル技術を用いて、状況に応じて自動的に指令を行うことができるようにすること
(2)(1)の指令が、現在行っている事業プロセスに関する経営資源等の最適化(※)のためのものであること
( ※):「経営資源等の最適化」とは、「設備、技術、個人の有する知識及び技能等を含む事業活動に活用される資源等の最適な配分等」をいいます。

2023年6月25日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

令和5年10月1日からのインボイス制度の見直し

インボイス制度が令和5年10月1日より導入されることは各種媒体から公表され、関係事業者はその対応・準備に追われているかと思います。特に小規模事業者には、その負担や影響が大きいことは否めません。既にご存知かと思いますが、令和5年度税制改正で多少緩和となる当制度の見直しがありましたので、以下で確認しておきたいと思います。
1. 適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間で免税事業者が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者として課税事業者)になった場合には、その課税期間の消費税の納税額は課税売上の消費税額の20%になるという経過措置です。この適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記する必要があります。
但し、課税期間の特例の適用(課税期間の短縮)を受ける課税期間及び令和5年10月1日前から課税事業者選択届出書の提出により免税事業者ではない日の課税期間には適用がありません。
なお、適用を受けた適格請求書発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を税務署に提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用が認められます(原則は、提出日の翌課税期間から適用)。

2.一定規模以下の事業者は1万円未満の課税仕入れにつき帳簿の保存のみで仕入税額控除可能(課税仕入額10,000円未満の適格請求書(インボイス)の不要特例)
基準期間(2期間前)の課税売上高1億円以下又は特定期間(前期の前半6ヶ月)の課税売上高5,000万円以下の小規模事業者ならば、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入において、支払対価(税込)10,000円未満ならば帳簿記載のみで仕入税額控除が可能となります(インボイスは不要)。

3.税込10,000円未満の売上返還等(値引・返品)における適格返還請求書の交付不要(全事業者対象)
税込10,000円未満の売上返還(値引・返品)に対して、適格返還請求書の発行不要となりますので、振込手数料相当額を控除して入金された場合にも売上返還として処理した場合には適格返還請求書の発行不要となります。銀行の振込手数料は、課税仕入れとして処理するか売上返還等として処理するか選択適用が認められています。支払手数料として課税仕入れとして処理している場合には、原則、金融機関や取引先からの支払手数料に係るインボイスが必要となります。

4.適格請求書発行事業者登録制度の見直し
免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15日前の日(現行: 1月前の日)までに登録申請書の提出義務となります。この場合において、当該課税期間の初日後に登録がされたときでも、同日に登録を受けたものとみなされます。なお、 適格請求書発行事業者が登録の取消しの提出期限も同様の見直しとなります。
又、適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置の適用により、令和5年10月1日後に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、その登録申請書に、提出する日から15日を経過する日以後の日を登録希望日として記載するものとする。この場合において、当該登録希望日後に登録がされたときでも、当該登録希望日に登録を受けたものとみなされます。
(注)上記の改正の趣旨等を踏まえ、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、その申請期限後(令和5年3月31日後)に提出する登録申請書に記載する困難な事情については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする(登録申請が令和5年4月1日以降になっても、困難な事情理由の記載は不要で「困難な事情」とだけ記載すれば登録申請可能となりますが、登録完了に時間がかかるようですので、早目の申請が望まれます)。

2023年5月29日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

令和5年度税制改正における相続時精算課税制度・暦年課税制度の見直し

Ⅰ. 相続時精算課税制度の見直し
1.令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用となる改正です。
相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円(特定贈与者ごとの基礎控除額であるが、同一年に2人以上の特定贈与者からの贈与がある場合には、110万円を各特定贈与者からの贈与額に応じて按分する)を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
つまり、非課税限度額2,500万円とは別枠で年間110万円の控除が可能となります(年間110万円を超えたら贈与税の申告が必要となります。超えなければ申告不要)。
(贈与額-基礎控除110万円-特別控除累計2,500万円)×一律20%=贈与額
この改正により、暦年課税と同額の基礎控除が認められることから、この相続時精算課税制度の活用が促進することが期待されます。

2.令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用となる改正です。
相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害(震災、風水害、火災等)によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする。

3.まとめ

相続時精算課税現行改正
贈与額の計算(贈与額-特別控除累計2,500万円)×一律20%(贈与額-基礎控除110万円-特別控除累計2,500万円)×一律20%
贈与税申告少額の贈与額でも贈与税の申告が必要年間の基礎控除110万円を超えた場合には贈与税の申告が必要
相続財産の加算すべき贈与財産取得した全ての相続時精算課税の財産取得した全ての相続時精算課税の財産(但し、年間の基礎控除110万円内の控除分を除く)
又、贈与財産が災害により一定の被害を受けた土地・建物である場合は相当額の控除可能

参考:相続時精算課税制度とは
この制度は、贈与時の税負担を一時的に軽減させ、相続時に税額を精算(相続時には過去の全ての贈与財産が相続税の課税対象となる)するということから、相続税の仮払的な性格を有するものです。
この制度の適用要件として、贈与した年の1月1日現在で60歳以上の親(特定贈与者)から推定相続人(贈与時に最先順位の相続権を有する者)である、その年の1月1日現在18歳以上の子(推定相続人)及び孫<孫になった時前の贈与は対象外> /代襲相続人を含む)への財産の生前贈与であり、贈与税の申告期限内に選択届出書を選択初年度に所轄税務署に提出する必要があります。 養子も実子扱いで、 その人数の制限はありません。 この選択は、父母ごとに行うことができますが、一度選択後には撤回することはできず、特定贈与者が死亡するまで継続適用しなければなりません(贈与財産の種類、 金額、 贈与回数には制限がありません)。 一端選択すると、 その後はその特定贈与者からの一般贈与(基礎控除110万円)の暦年課税選択をすることができませんし、 改正前では、少額贈与でも相続時精算課税として贈与税の申告をしなければなりませんでした。
受贈財産は物納財産になりませんし、 贈与を受けた土地等が小規模宅地等の特例の適用を受けることもできません。
受贈者が特定贈与者より先に死亡された場合には、 相続時精算課税に係る受贈者の権利と義務は、 受贈者の法定相続人に法定相続分で承継となります。
受贈者が外国に居住している場合や国外財産の贈与でも適用対象となります。
孫への贈与の場合に将来のリスクを十分に検討する必要があります (例えば、 孫は相続税の納税義務者となります。 相続時の納税資金の必要性、 相続税は2割加算、 等)
この改正前の制度での贈与税額は、特定贈与者ごとに累積して2,500万円までの特別控除が利用でき、これを超えた課税価格の部分には一律20%を掛けた金額が贈与税額となります。
歴年内に受けた贈与財産の合計額 - 特別控除額(注) = 課税価格
  課税価格 × 20% = 贈与税額
(注)2,500万円-前年度までに使用した特別控除額 = 当年度の特別控除額(上限額)

2.暦年課税制度における生前贈与の相続財産加算期間延長
令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について、暦年課税における生前贈与の加算期間が3年から7年に延長となります。
相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額:加算不要の100万円は「贈与者ごと」の贈与財産の価額から控除することになります)を相続税の課税価格に加算することとする。
つまり、現行の3年以内のものが、改正により、
3年以内の贈与額全額+(延長した4~7年の贈与額合計-100万円)を相続税の課税価格に加算すことになります。
改正後の相続開始日と加算期間との関係は以下の通りです。

相続開始日加算期間(相続開始日から) 
令和8年12月31日まで3年前改正の影響無し
令和9年度内3年超又は4年前未満1年ずつ段階的に加算期間が延長されていく
令和10年度内4年超又は5年前未満
令和11年度内5年超又は6年前未満
令和12年度内6年超又は7年前未満
令和13年度以降7年前加算期間が7年となる

なお、相続又は遺贈により財産を取得しなかった者、例えば孫が生命保険や死亡退職金等のみなし相続財産を取得する場合には、生前贈与分が加算対象になる点に留意する必要があります。

参考:暦年課税制度とは
歴年内(1月1日から12月31日までの1年間)に受けた贈与財産の合計額 - 基礎控除額 110万円 = 課税価格
年間総額110万円までの贈与を受けても贈与税の課税とはなりません。 年間110万円を超える贈与を受けた場合の贈与税額は、 以下の算式となります。
  課税価格 × 税率(①又は②)- 控除額 = 贈与税額
① 特定贈与:直系尊属(父母・祖父母等)からの特定贈与:受贈者は1月1日現在で18歳以上の卑属(子・孫等)が対象であり、一般贈与よりも税率が軽減されています。
直系尊属(父母・祖父母等)からの特定贈与の場合には、直系尊属関係が確認できる戸籍謄本等を申告時に添付が必要となります(2回目以降は添付不要)。
② 一般贈与:上記の特定贈与以外となる贈与。
なお、 同一年中に特定贈与財産と一般贈与財産の両方がある場合には、 その贈与財産合計額から基礎控除額(限度110万円)を控除した総課税価格に各該当税率を乗じて算出された税額に対して、 各贈与財産割合(特定贈与財産額、 又は一般贈与財産額 / 贈与財産合計額)を乗じて贈与税額を導くという調整計算が必要となります。

暦年課税の場合、 原則として相続開始前3年以内の贈与財産は相続財産として加算する必要がありましたが、改正で7年以内となりした。

通常、贈与を行う場合には贈与契約書の作成をお願いしておりますが、これは贈与の履行時期の証明等の問題を回避する為であり、課税実務上、贈与による財産の取得時期は、原則として、贈与契約書(書面)によるものはその契約の効力が発生した時、贈与契約書(書面)によらないものはその履行の時とされています(相続税基本通達1の3・1の4共・8)。

2023年4月26日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

年収の壁と就業調整

パート主婦の中で給与収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担増になることから就業調整する方がおられます。この問題に関しましては、政府でも対応策を検討すると表明しています。以前にもこの年収の壁を取り上げましたが、再確認してみたいと思います。年間給与収入額からの年収の壁に関して、一般的なケースでは、以下の様に指摘されています。

年間給与収入額影響する基準影響する人影響する内容
103万円超所得税課税パート者本人所得税が発生する
106万円超本人の社会保険の加入基準従業員数101人以上の会社勤務のパート者本人(所定の適用条件を満たす場合)パート者本人の社会保険の加入基準であり、社会保険料(厚生年金・健康保険料)が発生する。将来、厚生年金が受領できます。
130万円超夫の社会保険の被扶養者基準従業員数100人以下の会社勤務のパート者本人夫の社会保険の被扶養者基準であり、本人が被扶養対象外になることから、社会保険料(国民年金・国民健康保険料等)が発生する
150万円超配偶者特別控除夫の配偶者特別控除(最高38万円)が減額となっていく。

なお、被扶養者に関しましては所得税上と社会保険上の取扱いが、以下の様に異なりますので留意する必要があります。
1.所得税上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「所得税の扶養」とは、扶養している親族等の人数に応じて所得の控除を受けることができる制度のことになります。
① 「生計を一にする(家計を共にしていれば同居でなくてもOK)」
② 以下の所得基準(収入金額ではありません)があります。
年間所得金額が48万円以下(給与収入で103万円)であること(いわゆる「103万円の壁」)。なお、70歳以上の老人扶養は、同居での所得で58万円以下(年金収入で168万円・給与収入で113万円)・同居外での所得で48万円以下(年金収入で158万円・給与収入で103万円)であること。
2.社会保険上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「社会保険の扶養」とは、被保険者の扶養している親族等が、自分自身で社会保険料を負担することなく保険の給付を受けられる制度のことになります。
① 「三親等以内の親族は同一の世帯(同居して家計を共にしている)」であること
② 年間の収入金額(所得金額ではありません)が130万円未満(60歳以上は180万円未満)であること、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であること。いわゆる「130万円の壁」と言われるのは、この認定基準があるからです。
③ 75歳未満であること(従って、75歳以上は扶養者になれません。何故ならば、75歳から後期高齢者医療保険制度に移行になりますので、社会保険制度への加入資格はありません)
3.社会保険加入条件とは
なお、社会保険加入で収入金額を「106万円」未満に収めたいと言われることがありますが、いわゆる「106万円の壁」とは、働く方でその方自身が厚生年金保険や健康保険といった社会保険への加入が必要となる収入基準のことです。こちらの保険適用基準は、以下の一定の条件を満たした場合に対象となります。
正社員の場合には、所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上でありますが、パート・アルバイトなどの短時間労働者の場合には、従業員101人以上の企業(特定適用事業所)に勤務している方で、かつ、 
① 週20時間以上働いている
週20時間を算出する際は、残業時間を合算せずに計算します。
② 1年以上継続して勤務する見込み
雇用契約書等に1年以上継続して勤務する見込みがあること。
③ 1カ月の賃金が8.8万円超
1カ月の賃金が8.8万円を超すというもの。1カ月の賃金が8.8万円を超すと、1年の年収が計算上、で106万円以上になります。ここでいう1カ月の賃金とは、雇用契約時の所定内賃金のみで、残業代、各種手当や賞与などは含みません。
④ 学生ではない
の諸条件を満たす場合には社会保険加入となります。なお、2024年10月から社会保険加入条件の従業員数が51人以上に引き下げられます。

2023年3月15日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant