相続税額計算の基礎

相続税の課税方式は、昭和33年より遺産課税方式をベースに遺産取得課税方式という折衷法(法定相続課税方式)となっています。この法定相続課税方式とは、具体的には、被相続人(亡くなられた方)の遺産総額を、法定相続人の人数と法定相続分によって仮定計算による相続税額を算出し、その相続税額を各相続人が実際に取得した遺産価額の割合で按分し、その後に対象となる税額控除を反映して納税額を算出するというものです。相続税額計算ステップは、以下の様になります。

1.各相続人の遺産額を確定・計算(課税価格計算)

2.各相続人の遺産額の合計(課税価格総額の計算)

3.基礎控除額の計算

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数

4.課税遺産総額の計算

課税価格総額 - 基礎控除額 = 課税遺産総額

5.課税遺産総額に対する各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額の計算

6.各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額に対する相続税額の計算

7.各法定相続人分の税額の合計(相続税総額の計算)

8.相続税総額を各相続人の遺産額により按分計算

9.各相続人の納付税額の計算

各相続人の相続税額 + 2割加算 - 税額控除 = 納付税額

以下に、各計算ステップに対して概要を説明します。

1.各相続人の遺産額を確定・計算(課税価格計算)

取得財産の価格 –  債務・儀式費用 = 純資産の価格= 各人の課税価格
純資産の価格 + 相続開始前3年以内の贈与資産 + 相続税精算課税による贈与財産
本来の相続財産 + みなし相続財産 = 取得財産の価格

(1)相続開始前3年以内の贈与財産加算

原則、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得した場合、その財産価額を相続税の課税価格に加算して相続税を計算しなければなりません。なお、3年以内であっても贈与税の配偶者控除(居住用財産)等は、相続財産の加算対象になりません。(2)相続時精算課税制度の適用による贈与財産加算相続時精算課税制度の適用を受けた年分以降の贈与は、贈与税の申告の有無に係わらず全て相続財産の加算対象です。なお、特別控除枠を超えた贈与があり、その贈与税の申告が行われていない場合には、期限後申告を提出し納税します。

2.各相続人の遺産額の合計(課税価格総額の計算)

各人の課税価格を合計します(相続人分の総計)。

3.基礎控除額の計算

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数 = 基礎控除額

法定相続人に含められる養子の数は制限されています。最大2名(実子がいる場合には1名)まで養子として認められていますが、一定の場合(特別養子縁組により養子、配偶者の実子を養子、実子もしくは養子の死亡により代襲相続等)には、養子の人数制限はありません。

4.課税遺産総額の計算

課税価格総額 - 基礎控除額 = 課税遺産総額

5.課税遺産総額に対する各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額の計算

この分割額は、実際に財産を取得したかに関わりなく、法定相続人が法定相続分で分割したものとして仮定したものです。

6.各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額に対する相続税額の計算

各法定相続人に分割した課税遺産総額に対して、下記の税率を適用して税額を算出します。

相続税の速算表 (A×B-C = 税額)

(A)法定相続分の各人の取得金額 (B)税率  (C)控除額 

1000万円以下                          10%         0万円

1000万円超~3000万円以下     15%    50万円

3000万円超~5000万円以下       20%      200万円

5000万円超~1億円以下            30%      700万円

1億円超~2億円以下                 40%      1,700万円

2億円超~3億円以下                 45%      2,700万円

3億円超~6億円以下                 50%      4,200万円

6億円超~                               55%      7,200万円

課税遺産総額×各法定相続人の法定相続割合分×税率-控除額=各法定相続人分の税額

7.各法定相続人割合分の税額の合計(相続税総額の計算)

各法定相続人分の税額の総額を算出します。

8.相続税総額を各相続人の遺産額により按分計算

相続税の総額 × 各人の課税価格/各人の課税価格の合計額 = 各人の相続税額

9.各相続人の納付税額の計算

各相続人の相続税額 + 相続税額2割加算 - 税額控除 = 各人の納付税額

(1)相続税額2割加算される相続人

2割加算される相続人は、配偶者及び1親等の血族(父母又は子とその代襲相続人及び養子も含む。但し、被相続人の養子の孫は除外)以外となっています。従って、 被相続人の孫や兄弟姉妹は2割加算の対象者です。

2割加算の対象者 孫養子(代襲相続に該当の場合を除く)

兄弟姉妹(代襲相続人を含む)

法定相続人以外の受贈者等

2割加算の非対象者 配偶者

一親等の血族(養子が、相続により被相続人である養親の財産を取得

した場合においては、被相続人の一親等の法定血族となる)

代襲相続人である直系卑属(孫養子を含む)

(2)税額控除

各人の税額から次の該当する税額の控除があります。

① 贈与税額控除

相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けたものは、相続財産に加算されていますので、この部分の贈与税相当額は、控除の対象となります。

② 配偶者の税額軽減

配偶者は被相続人の財産形成に大いに寄与していること、及び将来の生活保障面を考慮して相続税の大幅な軽減を特例として認めています。

軽減額 = iとiiのうち少ない金額/課税価格の合計額 × 相続税の総額

ⅰ 課税価格の合計額×配偶者の法定相続分(1.6億円未満は1.6億円)

ⅱ 配偶者の課税価格

上記の算式を分かり易くすると、 配偶者が取得した遺産額のうち次のいずれか大きい方までは相続税がかからないことになっています。

(イ)総課税価格の金額に対する配偶者の法定相続割合相当額(総課税価格の金額の最低50%~最高100%)

(ロ)1億6千万円

総課税価格の金額が5億円でしたら、 相続人が配偶者と子であった場合には、その50%の2.5億円まで、 なお、 相続人が配偶者のみであった場合には、 その全額(100%)の5億円は配偶者には税額の軽減が図られることになります。

ただし、遺産分割が済んでいない場合には、この特例の適用はありません。なお、 相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が完了すれば、 この税額軽減の特例が受けられます。 この配偶者に対する税額軽減措置は、 非課税ではなく二次相続までの課税の繰延の性格を有しています。 配偶者の固有財産を調査して、 二次相続を想定した遺産分割を行うことが肝要です。

法定相続人と法定相続分の組合せ

法定相続人 第1順位 (子) 第2順位(直系尊属) 第3順位(兄弟姉妹)
 ①  ⑤  ②  ⑥  ③  ⑦  ④
配偶者  1/2  ×  2/3  ×  3/4  × 100%
血族相続人:  -  -  -  -  -  -  -
子(又は孫等)  1/2 100%  ×  ×  ×  ×  ×
直系尊属(親等)  -  -  1/3 100%  ×  ×  ×
兄弟姉妹(又はその子)  -  -  -  -  1/4 100%  ×

×:相続人が死亡(又は不存在)している場合

 

③ 未成年者控除

相続人が20歳未満等に適用があります。

控除額 = (20歳-相続開始時の年齢)× 10万円

④ 障害者控除

相続人が年齢85歳未満等で障害者に適用があります。

控除額 = (85歳-相続開始時の年齢)× 10万円(特別障害者は20万円)

⑤ 相次相続控除

前の相続(1次)から10年以内に今回の相続(2次)が起こった場合、税額から一定額が控除されます。

⑥ 外国税額控除

国外にある財産にその所在する国で課税されていた場合、一定額が控除されます。

 

以上の計算結果で税額控除後で納付税額がマイナスになったときはゼロとし、さらに相続時精算課税に係る贈与財産の価額が存在していた場合には、その課税分の贈与税額を控除します。この控除後の金額が納税額となり、マイナスの場合には還付対象となります。

相続税の申告及び納付は、相続開始日(死亡日)から10ヶ月以内に行わなければなりません。なお、申告期限の延長が認められませんので、遺産分割協議が成立していない場合には、民法での法定相続分に従って仮定計算を行い、申告することになります。このような場合には、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減の特例等の適用は認められません。この申告後に遺産分割が確定し、申告との差額が発生した場合には、修正申告(増税のケース)、又は更正の請求(還付のケース)を行うことになります。

2017年9月29日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

商業地 2年連続上昇 基準地価 訪日客効果一段と

国土交通省が19日発表した2017年7月1日時点の基準地価は、 全国商業地が前年比0.5%上がり、2年連続で上昇した。 2016年7月は前年比0.005%のプラスだった。訪日客の増加に伴い店舗やホテル用の土地が上がり、都市部では再開発がけん引役となった。全用途でみると、三大都市圏は1.2%のプラスで0.2ポイント上昇した。地方圏は0.9%のマイナスだったが、下落率は0.3%縮小した。

2017年基準地価の変動率(7月1日時点、 前年比%、 ▲は下落):

 

地域

住宅地 商業地 全用途
2017年 前年 2017年 前年 2017年 前年
全国平均 0.6 ▲0.8 0.5 ▲0.005 0.3 ▲0.6
三大都市圏 0.4 0.4 3.5 2.9 1.2 1.0
東京圏 0.6 0.5 3.3 2.7 1.3 1.1
大阪圏 0.0 0.0 4.5 3.7 1.1 0.8
名古屋圏 0.6 0.5 2.6 2.5 1.2 1.1
地方圏 1.0 ▲1.2 0.6 ▲1.1 0.9 ▲1.2
中核地方4市 2.8 2.5 7.9 6.7 4.6 4.0

 

公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。

  公示地価 基準地価 路線価 固定資産税評価額
調査主体 国土交通省 都道府県 国税庁 市町村
調査地点数 約25,300 約21,700 約336,000 多数
調査時点 1月1日 7月1日 1月1日 1月1日(原則3年に1回、 次回は2018年)
公開時期 3月 9月 7月又は8月 3月
公開サイト 国交省(土地総合情報ライブラリー) 国交省(土地総合情報ライブラリー) 国税庁 資産評価システム研究センター
その他 調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。 調査対象は地方の調査地点が多く、 不動産鑑定士の評価を参考に調査し、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から 相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準 土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準

 

 

  • 2017年9月13消費増税は予定通り 社会保障改革 財源に苦慮

 

安倍晋三首相は12日の日本経済新聞のインタービューで、社会保障制度の高齢者偏重を是正し、教育無償化や子育て対策などを通じて現役世代への再配分を充実させる考えを強調した。2019年10月の消費税率10%への引き上げを「予定通り実施する」と明言したものの、消費増税分の使途を見直し、教育無償化などの財源に充てることには慎重姿勢を示した。財政健全化を掲げながら新たな財源をどう確保するかで今後、対応に苦慮しそうだ。

2017年9月20日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant

消費増税は予定通り 社会保障改革 財源に苦慮

安倍晋三首相は12日の日本経済新聞のインタービューで、社会保障制度の高齢者偏重を是正し、教育無償化や子育て対策などを通じて現役世代への再配分を充実させる考えを強調した。2019年10月の消費税率10%への引き上げを「予定通り実施する」と明言したものの、消費増税分の使途を見直し、教育無償化などの財源に充てることには慎重姿勢を示した。財政健全化を掲げながら新たな財源をどう確保するかで今後、対応に苦慮しそうだ。

2017年9月13日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant

都市農地維持へ税優遇 「生産緑地」2022年期限 転用を抑制

農林水産省と国土交通省は、都市部の農地「生産緑地」を維持するための対策に乗り出す。地主の相続税を猶予したり、硬直的な土地の貸し借りの仕組みを柔軟にしたりして、企業やNPOが借りやすくする。市民農園などの形で活用を促す狙いだ。生産緑地の多くは2022年に期間満了を迎え、宅地転用が加速する恐れがある。東京などでは今後、緑地の保全が課題になる。

現在の生産緑地は1992年、都市部に農地を残す目的で導入。地主には30年にわたる税優遇を認めるかわりに、営農を義務付ける。全国には約1万3千ヘクタールあり、2022年には全体の約8割の農地が優遇期間である30年の期限を迎える。期限切れの際、地主は利用を10年延長するか、市区町村に農地の買い取りを求めるか選べるが、営農をあきらめる人が増えれば、一気に宅地化が進む可能性がある。

2017年9月6日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant