中小企業等経営強化法に係る税制措置 (固定資産税特例と中小企業経営強化税制)

平成28年7月1日より施行された中小企業等経営強化法による「経営力向上計画」(人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資等により、事業者の生産性を向上させるための計画であり、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます)の認定を受けた中小企業者等は、一定の要件を満たす場合、以下の税制措置を受けることができます。

平成29年度税制改正により、税制措置として拡充となりました「固定資産税の軽減措置特例」と改組・創設された「中小企業経営強化税制」の2つとなりました。 又、 中小企業に対する他の投資優遇制度(中小企業投資促進税制と特定中小企業者等の経営改善設備投資促進税制)も併せて以下に紹介します。

 

1.固定資産税の軽減措置特例

経営力向上計画に基づき認定された事業者は、平成31年3月31日までに生産性を高める一定の設備を新規取得した場合、その翌年度から3年間の当該固定資産税の課税標準が2分の1に軽減されます。

(1)対象設備

種類 最低取得価額 販売開始要件(*1) 用途・細目 経営力向上要件(*1)
機械装置 1台160万円以上 10年以内 限定なし 旧モデル比で経営力に資するものの指標が年平均1%以上向上
工具 1台30万円以上 5年以内 測定工具及び検査工具に限る
器具備品 1台30万円以上 6年以内 限定なし
建物附属設備 1台60万円以上 14年以内 限定なし

*1: 工業会等による証明書で、販売開始時期と生産性向上に係る要件を確認するために取得する必要があります。

(2)地域・業種の制限

生産性を向上させて賃上げに繋げる必要性の有無が制限に関連しています。 なお、この地域・業種限定の判定は、本社所在地ではなく、設備の設置場所に応じて判定されることになります。

① 最低賃金が全国平均以上の7都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪)の地域

上記記載の機械装置以外の設備を当該7都府県に設置する場合、対象業種によって適用が制限(機械装置は制限無し)されるものがありますので、確認は中小企業庁が公表しています7都府県ごとの業種リストで行う必要があります。

② 最低賃金が全国平均未満の地域

制限なく、全業種が特例の対象となります。

業種の判定は、日本標準産業分類の「中分類」で行われます。

(3)基本的な手続フロー

① 事業者は対象設備の取得を決めたら、設備メーカを通じて工業会発行の証明書を入手

② 上記証明書と投資計画申請書を主務大臣(担当省庁)に提出

③ 主務大臣(担当省庁)は、計画認定書と投資計画申請書(写し)を事業者に交付

④ 事業者は、固定資産税の納税書類と一緒に、投資計画申請書(写し)・計画認定書(写し)・工業会証明書(写し)を自治体に提出

原則、対象設備取得前に計画申請書を主務大臣に提出することになっています。なお、取得後に提出する場合には、取得日から60日以内に計画申請書等の必要書類が受理される必要があります。

 

2.中小企業経営強化税制

青色申告書を提出する中小企業者等で中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものが、平成29年(2017年)4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間に、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、及びソフトウェアで特定経営力向上設備等に該当するもののうち、一定の規模以上のものの取得等をして、その特定経営力向上設備等を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その普通償却限度額との合計で取得価額までの特別償却(即時償却)と、その取得価額の7%(特定中小企業者等では10%)の税額控除(但し、法人税額の20%が限度で、控除限度超過額は1年間繰越可能)との選択適用が認めるというものです。

 

制度の目的 生産性の高い先進的な設備や生産ライン等の改善のための設備投資に対する税制支援(即時償却又は税額控除)を行い、 中小企業者の民間投資を活性化させる。
適用法人 青色申告書を提出する中小企業者等で、経営力向上計画の認定を受けた事業者。

具体的には、資本金1億円以下の企業、もしくは従業員千人以下の事業者、組合等。

適用要件 「生産等設備」を構成する「特定経営力向上設備等」のうち、 一定規模以上のものを取得等し、 その設備を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合。
指定事業 一部の事業は対象外、例えば、金融業、電気業(太陽光発電設備に関し、全量売電の場合には、電気業の用に供する設備として指定事業外となります)、映画業を除く娯楽業、風俗営業等であるが、ほぼ全営業が指定事業の対象とされる。
生産等設備とは 法人の指定事業用に直接供される生産等設備の減価償却資産で構成されるもの。 従って、 本店、 寄宿舎等の建物附属設備、 福利厚生施設等は非該当となります。国内への投資であること。中古資産・貸付資産でないこと等。
特定経営力向上設備等とは 経営力向上設備等(①生産性向上設備と②収益力強化設備)のうち経営力向上に著しく資する一定のもので、その法人の認定を受けた経営力向上計画に記載されたもの。
①生産性向上設備(A類型):個別設備の性能の向上の度合いを確認
種類 最低取得価額 販売開始(*1) 用途・細目 経営力向上要件(*1)
機械装置 1台160万円以上 10年以内 限定なし 旧モデル比で経営力に資するものの指標が年平均1%以上向上

 

 

 

 

工具 1台30万円以上 5年以内 測定工具及び検査工具に限る
器具備品 1台30万円以上 6年以内 限定なし
建物附属設備 1台60万円以上 14年以内 限定なし
ソフトウエア 1台70万円以上 5年以内 稼働状況等を情報収集機能及び分析等するものに限る

 

*1: ソフトウエア及び旧モデルがないもの(*1の販売開始要件を満たすこと)以外は、 同メーカーの旧モデル比で経営力の向上に資するものの指標(生産効率、 エネルギー効率、精度等)が年平均1%以上向上するものであること。

確認者:工業会等による証明書で、販売開始時期と生産性向上に係る要件を確認するために取得する必要があります。

証明書を入手後、経営力向上計画の申請書に当該証明書を添付して事業分野別の主務大臣に申請して認定を受けることになります。

基本的なフロー:

イ 証明書「入手」

ロ 計画「申請」

ハ 計画「受理」

二 計画「認定」

ホ 設備「取得」

へ 設備「事業供用」

②収益力強化設備(B類型):設備投資計画の投資収益力を確認 ① 経済産業局の確認を受けた投資計画に記載された設備(機械装置160万円以上、 工具30万円以上、 器具備品30万円以上、建物附属設備60万円以上、及びソフトウエア70万円以上)。

② 投資利益率が年平均5%以上となることが見込まれる投資計画に係る設備であること。

確認者:確認申請は所轄の経済産業局に対して行いますが、設備投資計画案については、税理士又は公認会計士から事前確認書を得ておくことが必要となります。

経済産業局から確認書を入手後、経営力向上計画の申請書に当該確認書を添付して事業分野別の主務大臣に申請して認定を受けることになります。

基本的なフロー:

イ 投資計画「事前確認」

ロ 投資計画確認書「発行申請」

ハ 確認書「入手」

二 計画「申請」

ホ 計画「受理」

へ 計画「認定」

ト 設備「取得」

チ 設備「事業供用」

特別償却と税額控除との選択適用 その普通償却限7%(資本金3千万円以下の特定中小企業者等では10%)の税額控除(但し、法人税額の20%が限度 (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)で、控除限度超過額は1年間繰越可能)との選択適用が認めるというものです。

中小企業者等 即時償却、又は税額控除(取得価額の7%)
特定中小企業者等 即時償却、又は税額控除(取得価額の10%)
適用時期 同法の施行日(平成29年4月1日)から平成31年3月31日までの間の取得等。

なお、この中小企業経営強化税制に関するQ&A集が、中小企業庁より平成29年4月4日に公表されています。

 

3.経営力向上計画の概要

中小企業等経営強化法による「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資等により、事業者の生産性を向上させるための計画であり、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。また、計画申請においては、経営革新等支援機関(士業等の専門家、商工会議所・商工会、地域金融機関等)のサポートを受けることが可能です。

(1)申請・認定の時期(弾力的な運用可)

原則、経営力向上計画の申請・認定は、設備の取得前に行うことが必要ですが、①取得後60日以内に計画が「受理」され、かつ、②設備の「取得」と計画の「認定」が同一事業年度内であれば、設備の取得後の計画申請・認定も容認されます。

具体的には、中小企業経営強化税制のA類型については、工業会等の証明書の入手の前から設備の取得等が可能となります。 一方で、B類型は、経済局に投資計画の確認書の「発行申請」を行った後に設備の取得等が可能となります。また、固定資産税の軽減と同様に「60日ルール」が課され、設備の取得日から60日以内に経営力向上計画が「受理」されることが必要となります。加えて、A類型、B類型ともに、設備の「取得」と同一事業年度内に計画が「認定」されることも必要となります。

(2)計画認定申請書

計画認定申請書は事業分野別の主務大臣に提出し認定を受けることになります。 記載内容は以下のようになります。

①企業の概要、②現状認識、③経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標、④経営力向上の内容など簡単な計画、等を策定することになります。

 

  1. 中小企業投資促進税制

上述以外に中小企業に対する投資優遇税制の中に、中小企業投資促進税制があり、平成29年度税制改正により、対象資産から器具備品が除外され、 適用期限が2年延長(平成31年3月31日まで延長)となりました。

特別償却の種類 対象法人、 対象設備の範囲等 限度額
特別償却等 税額控除
中小企業者等の機械等(平成10.6.1から31.3.31まで)

(①機械装置で、 1台又は1基で取得価額160万円以上、 ②ソフトウエアで70万円以上、 ③車両総重量3.5トン以上の貨物自動車、 ④内航船舶)

新品を指定事業に供する

中小企業者等(資本金3千万円以下)で大規模法人(資本金1億円超の法人で、 単独所有で50%以上、 又は複数所有で3分の2以上の所有関係。 なお、 所有割合判定では、 親会社の同族関係者の持株等は考慮しません)の所有法人を除き、 常時勤務従業員数が1千人以下等)が新品の一定の機械装置等を取得し事業に供した場合には、特別償却、 又は税額控除の選択可(特別償却の適用要件としては、 資本金1億円以下の中小企業者等) 基準取得価額の30%

(なお、 内航船舶の基準取得価額は、 実際の取得価額の75%相当額)

次の①と②のいずれか少額の金額

①基準取得価額(内航船舶では、取得価額の75%相当額)の7%

②当期法人税額の20% (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)

また、 ①>②のときには、 限度超過額を1年間の繰越控除可

 

  1. 特定中小企業者等の経営改善設備投資促進税制の期限延長

平成29年度税制改正により、特定中小企業者等の経営改善設備投資促進税制の適用期限が2年延長(平成31年3月31日まで延長)となります。 その概要は以下のとおり(商業・サービス業・農林水産業の中小企業等の設備投資促進税制とも呼称されています)。

青色申告法人で指定事業を営む中小企業等が経営改善に関する指導及び助言を受けて行う店舗改修等に伴い器具備品及び建物附属設備の取得等を行なった場合、その取得価額に対して特別償却か税額控除かを選択適用できる制度(所得税についても同様の取扱い)。

適用期間 平成29年4月1日~平成31年3月31日の間に店舗改修等を行なった場合
指定事業 卸売業、 小売業、 サービス業、 農林水産業(性風俗関連特殊営業及び風俗営業を除く)
適用要件 商工会議所、 認定経営革新等支援機関等による法人の経営改善に係る指導及び助言を受けて行う店舗改修等であること
対象設備 ① 器具備品: 1台又は1基の取得価額が30万円以上

② 建物附属設備: 1つの取得価額が60万円以上

特別償却額 対象設備の取得価額 X 30%
税額控除額 対象法人は、 資本金3,000万円以下の中小法人等に限定 (但し、 認定経営革新等支援機関等は対象から除外)

対象設備の取得価額 X 7%

(但し、 控除限度額は当期法人税額の20% (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)であり、 控除限度超過額は1年間の繰越可能)

 

2017年5月31日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

改正民法が成立 契約ルール 120年ぶり抜本見直し

企業や消費者の契約ルールを定める債権関係規定(債権法)に関する改正民法が26日午前の参院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。改正は約200項目に及び、公布から3年以内に施行する。

2017年5月26日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant

高齢者に応分負担要求 介護保険法 改正案きょう成立

現役並みの所得がある高齢者が介護サービスを利用する際の自己負担割合を引き上げる介護保険関連法改正案が、25日の参院厚生労働委員会で与党などの賛成多数で可決した。 2018年8月から一部の利用者の負担割合が2割から3割に引き上げられる。

自己負担を3割にする基準は今後政令で定める。単身世帯の場合、年収340万円以上の高齢者が想定されている。

2017年5月26日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant

空き店舗への課税強化 政府方針 地方の商店街再生

「まち・ひと・しごと創生基本方針」案の中で、地方の商店街を活性化させるため、空き店舗への課税を強化する方針を盛り込んだ。

基本方針案では、地方の空き店舗の活用について「積極的に取り込む地方公共団体や商店街を支援する」との方針を明記した。人が住んでいる商店街の店舗は税制上、住宅として扱い、固定資産税が最大で6分の1に減額される。政府は、空き店舗となった場合は住宅の特例対象から外し、事実上増税することを検討する。

2017年5月25日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant