平成30(2018)年度税制改正: 事業承継税制の特例創設

平成30年度税制改正が、2018年3月29日に成立しました。その中で、中小企業の事業承継税制(代表権と持株の移行)が現行税制の特例としまして、更なる税優遇措置が設けられました。
現在、事業承継制度が存在していますが、同種の特例制度が創設され、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの10年間の特例措置として贈与、相続等で取得する非上場株式に係る贈与税又は相続税について適用されることになります。その概要は、施行日後5年以内(平成30年4月1日から平成35年3月31日までの期間)に承継計画を作成し都道府県に提出し認定を受けた特例承継会社の持株を贈与・相続により特例後継者に事業承継を行う場合、
(1)猶予対象の株式制限(発行済議決権株式総数の3分の2)を撤廃し、納税猶予割合80%を100%に引上げることで、贈与・相続時の納税負担が生じない制度とし、
(2)雇用確保要件を弾力化するとともに
(3)親族以外を含む複数の株主から、2名又は3名の後継者(要代表権)に対する贈与・相続に対象を拡大し、
(4)経営環境の変化に対応した減免制度を創設して将来の税負担に対する不安に対応する等の特別措置が取られています。

主な相違項目現行の事業承継税制 特例の事業承継税制
納税猶予となる対象株式数の上限の撤廃発行済株式数の2/3が上限で、相続時の相続税の猶予割合は80%上限が撤廃され全株が納税猶予の対象となり、相続時の納税猶予割合も100%
税制対象となる贈与者の拡充一人の先代経営者のみ先代経営者に限定せずに、親族以外の第三者を含む複数の株主からの贈与も対象
税制対象となる受贈者の拡充一人の代表権を持つ後継者のみ最大3名まで代表権を持つ後継者(同族関係者を含めて保有割合50%以上であること):
① 後継者一人の場合には、同族関係者を含めて保有割合が最高者であること
② 後継者が複数(3名以下)の場合には、各自の保有割合が10%以上で、かつ、保有割合上位3位までの同族関係者であること
雇用確保要件の緩和承継税制の適用後、5年間で平均8割以上の雇用を継続できない場合には猶予打ち切りとなり、猶予税額の全額と利子税を納付例え、5年間で平均8割以上の雇用要件が未達成の場合でも、納税猶予を継続可能で理由報告が必要(経営悪化が原因であるり場合等には、認定支援機関による指導助言が必要)
経営環境の変化に応じた減免後継者が自主廃業や売却を行う際、経営環境の変化により株価が下落した場合でも、承継時の株価を基に贈与・相続税が課税される廃業時の評価額や売却額を基に納税額を計算し、承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免する
相続時精算課税制度の適用範囲の拡充60歳以上の父母、祖父母等から、20歳以上の子又は孫の直系卑属への贈与のみが対象事業承継税制の適用を受ける場合には、60歳以上の贈与者から、20歳以上の後継者への贈与を対象とすることで適用範囲が拡充

上記と重複しますが、特例事業承継制度のより具体的内容としましては、
① 「特例後継者」が、「特例認定承継会社」の代表権を有していた者から、贈与又は相続若しくは遺贈(贈与等)がその非上場株式を取得した場合には、その全株の課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、その特例後継者の死亡日等まで納税を猶予されます。納税猶予対象の株式制限(現行:発行済議決権株式総数の3分の2)を撤廃し、納税猶予割合が80%から100%に引上げられます。
「特例後継者」とは特例認定承継会社の「特例承認計画」に記載された代表権を有する後継者(同族関係者と合わせてその総議決権数の過半数を有する者に限る)であって、当該同族関係者のうち、議決権を最も多く所有する者(記載された後継者が2名又は3名以上の場合には、議決権数において、それぞれ上位2名又は3名(但し、議決権数の10%以上を所有する者に限る)をいう。
「特例認定承継会社」とは平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に特例承認計画を都道府県に提出した会社で、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第12条第1項の承認を受けたものをいう。
「特例承認計画」とは認定経営革新支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画で、特例認定承継会社の後継者、承継時までの経営見通し等が記載されたものをいう。

② 特例後継者が特例認定承継会社の代表者以外の者から贈与等により取得する非上場株式についても、特例承認期間(5年)内に贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、本特例の対象となります。
③ 現行の事業承継税制における雇用確保要件(5年間平均で8割以上の雇用確保)を満たさない場合であっても、納付猶予期限は到来しません。但し、その場合には、その満たせない理由を記載した書類(認定経営革新支援機関の意見が記載されているものに限る)を都道府県に提出しなければなりません。なお、その理由が、経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められない場合には、特例認定承継会社は、認定経営革新支援機関から指導及び助言を受けて、当該書類にその内容を記載しなければなりません。
④ 「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」において、特例承継期間経過後に、特例認定承継会社の非上場株式の譲渡をするとき、合併により消滅するとき、解散をするとき等には、納税猶予税額を免除されます。
株価が下がれば差額が免除される減免制度が創設されました。
⑤ 特例後継者が贈与者の推定相続人以外の者(その年1月1日現在で20歳以上であること)であり、かつ、その贈与者が60歳以上である場合には、相続時精算課税を選択が拡充されました。
⑥ その他の適用要件等は、現行の事業承継税制と同様です。
例えば、現行の事業承継税制上の贈与税・相続税における納税猶予の適用要件は次のようなものがあります。
* 事前の計画的な取組の存在(確認)
* 被相続人・贈与者の筆頭株主要件(確認時、 代表時、 死亡時)
* 一定の後継者
* 対象会社として一定の中小企業会社
* 申告期限から5年間の事業継続要件
* 申告期限から5年経過後の継続要件

2018年3月31日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

2018年度予算成立 最大の97兆円超 子育て・事業承継支援

2018年度予算と税制改正関連法は28日、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。一般会計の歳出総額は97兆7128億円で、6年続けて過去最大を更新した。子育て世帯を支援するほか、中小企業の事業承継に対して税優遇する。新規国債発行額は減少したが、高い水準が続く。高所得者を中心に負担増も目立つ。税制改正事項の主なものは、税務情報コーナー等で紹介していきます。

2018年3月29日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant

地価上昇 全国に波及 地方、26年ぶりプラス 公示地価

地価上昇の波が全国に広がってきた。国土交通省が27日発表した2018年1月1日時点の公示価格は、商業・工業・住宅の全用途(全国)で0.7%のプラスと3年連続で上昇した。地方圏も26年ぶりに上昇に転じ、0.041%のプラスだった。緩和マネーが下支えし、訪日客増加を受けて地方でもホテルや店舗の重要が増している。都市部の再開発も活発で、資産デフレの解消が進んでいる。

2018年公示地価の変動率(1月1日時点、 前年比%、 ▲は下落):

地域住宅地 商業地 全用途 
2018年前年2018年前年2018年前年
全国平均0.30.0221.91.40.7 0.4
三大都市圏0.70.53.93.31.51.1
東京圏1.00.73.73.11.71.3
大阪圏0.10.0394.74.11.10.9
名古屋圏0.80.63.32.51.4 1.1
地方圏▲0.1▲0.40.5▲1.40.041▲0.3

公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。

    
公示地価 基準地価路線価固定資産税評価額
調査主体 国土交通省都道府県国税庁市町村
調査地点数約26,000 約21,700 約334,000多数
調査時点1月1日7月1日1月1日1月1日(原則3年に1回、 次回は2018年)
公開時期 3月9月7月又は8月3月
公開サイト国交省(土地総合情報ライブラリー) 国交省(土地総合情報ライブラリー)国税庁資産評価システム研究センター
その他調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格(更地価格)の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。調査対象は地方の調査地点が多く、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準

2018年3月28日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant