住宅省エネ改修に補助 外壁・窓 断熱に50~100万円

国土交通省は住宅の省エネルギー化を交付金で支援する。戸建てやマンションの改修工事で断熱材などを活用する場合、費用の一部を自治体を通じて補助する。対象となるのは外壁や窓の断熱性能を高める改修工事だ。家全体ではなく部分的な改修も認める。費用の一部について1件あたり最大50万~100万円程度を補助する方向で調整している。

2021年8月25日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant

認知症と所有不動産処分

新聞に「認知症 自宅の処分難題」といを記事がありましたので、認知症を患うと所有不動産の処分・取引に影響する問題とは何か、そして、その対策・解決方法は何かを取り上げてみたいと思います。
例えば、自宅所有の方が認知症になり、介護施設等に入所することに迫られた場合に、入所金、介護費用、医療費等の負担が重くなり資金の捻出のためにそのご自宅を売却する必要がでた時に、ご家族の判断のみで例外無く売却手続きを進めることが可能でしょうか。答えはNOです。
通常、不動産を売却する時に、司法書士が所有権移転登記の手続きをおこないますが、司法書士には、正当な契約であったか確認する義務があるため、登記手続きをおこなう前の売買取引契約時に、本人確認および意思確認をおこなって契約に有効性があるか判断します。その際、認知症により不動産の所有者である本人の意思確認が十分にできないと判断された場合、売買契約が成立しませんので司法書士は登記手続きをおこなうことはできません。
この様な状況になっている場合、意思確認が十分にできない様な認知症になった親の不動産を売却したいという状況では、「成年後見制度」による成年後見人をつけることが必須になります。

1.成年後見制度
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などが原因で判断能力が不十分な人に対して、後見人が法律的に保護・支援をおこなう制度です。この制度の成年後見人は、本人に代わって財産管理や介護施設入所への契約などを行うことが出来ますが、本人の能力によって、後見(判断能力が全くない)・保佐(判断能力が著しく不十分)・補助(判断能力が不十分)の3つの分類があり、親族、弁護士、司法書士、社会福祉士、法人、市区町村長などが成年後見人になることができます。
成年後見制度の申立てが行いるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、検察官、市区村長などとなっています。
なお、成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。「任意後見制度」とは、本人に判断能力があるうちに公正証書を作成して後見になってくれる方と任意後見契約を結び、事前に自ら任意後見受任者を選んでおく制度のことです。一方、「法定後見制度」とは、本人の判断能力が不十分になった場合、家族等が家庭裁判所に申立てをし、審判により法定任後見人が選定され本人の代わりに支援を行う制度です。以下は、法定後見制度に関連しています。

2.家庭裁判所に「成年後見人」選任の申立
成年後見人の申立ては家庭裁判所に対して行い、申立書に記載された成年後見人候補者が適任であるかどうかが審理されます。場合によっては候補者以外の弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職、法律または福祉に関する法人などが選任されることもあります。
成年後見人は後見が終了するまで行った職務の内容を定期的にまたは随時、家庭裁判所に報告する義務があります。家庭裁判所に申立てる際、成年後見人候補者として記載した子や親族などが後見人に選ばれる場合もあり、又、家庭裁判所が必要と判断した場合は「後見監督人」を選任して、後見人に対する監督事務を行わせることがあります。
成年後見人の任期は不動産を売却したら終わりではなく、認知症本人の病状が回復するか、亡くなるまで続きます。

3.成年後見人を立てる前に診断書が必要
成年後見人をつけて認知症になってしまった親の不動産を売却することにしたい場合、先ずは病院で認知症であると医師に診断してもらう必要があります。医師の診断書がなければ、家庭裁判所に成年後見人の申立てを認めてもらうことはできません。

4.成年後見人との利益相反が起きる場合
成年後見制度は活用できるが、だれを成年後見人に選任するかによって、相続の際に問題になることもあります。例え「不動産の売却」が当初の目的であったとしても、成年後見人として選任された人は、本人が亡くなった際、相続人に財産を引渡すところまでが仕事となります。
例えば、長男が認知症の母親の成年後見人となっている際に、父親の相続が発生したというケースでは、長男は母親の「成年後見人」であり、かつ母親と共同で亡父の「相続人」であることになります。このような「利益相反」が起きるときは、2つの身分(相続人と成年後見人)のどちらかを捨てなければなりませんが、その場合の解決方法は下記①~③のいずれかとなります。
① 相続放棄し、成年後見人に専念する
② 後見監督人等がいる場合、遺産分割は後見監督人が成年被後見人を代理して行う
③ 家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立て、特別代理人を選任する
血縁者が成年後見人となった場合、既述のように相続の際に利益相反が起きやすいです。そのため成年後見人の選出の際に、家庭裁判所が本人を取り巻く状況を踏まえて、候補者以外の弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職、法律または福祉に関する法人などが選任されるケースがあります。

5.成年後見では家庭裁判所の許可がないと所有者が認知症の家は売れない
成年後見人や保佐人、また補助人になったからといって、認知症になった親の不動産を自由に売却できるわけではありません。認知症になった親の不動産を売却するためには、成年後見人を選任する手続きをおこなった後、改めて家庭裁判所に「居住用不動産処分許可」の申立てをし、許可を得る必要があります。
家庭裁判所が不動産売却に対して許可を出すかどうかは、以下の要素から判断されます。

売却の必要性本人の財産状況として売却が必要であるか。
本人の生活や看護の状態、意思確認入所や入院の状況と帰宅の見込み、本人の意向確認。帰宅の見込みがある場合、帰宅先をどのように確保するか。
売却代金の保管売却代金の入金や保管をどのようにおこなうか。
親族の処分に対する意向本人の推定相続人などの親族が売却に対して反対していないか。

6.後見人選定から不動産売却までの流れ
以上から、成年後見人の選任から不動産売却までの流れは下記となります。ケースバイケースではありますが、成年後見人の選任にかかる期間は1~2カ月程です。売却したい不動産が自宅の場合は、同じく家庭裁判所の許可が必要になるため、別途申立ての許可に時間がかかります。

1本人の所在地を管轄する家庭裁判所に「成年後見制度開始」の審判を申立てる
家庭裁判所から依頼された医師が本人の意思能力を評価し、診断書を作成
2後見人の選定、審判の確定
3後見人の選定、審判の確定
4不動産会社と売買契約に向けて買主を探す
5本人に代わり、成年後見人が買主と売買契約を結ぶ
6家庭裁判所の許可
(売却した資金の使い道などの明確な記載が必要)
7家庭裁判所からの許可後、売買代金の精算、所有権移転の登記が行われる

7.認知症を発症前の対策
上述が、判断能力が不十分となった場合のケースでしたが、財産を処分するには判断能力が必要になりますので、判断能力のあるうちの対応には下記のことが考えられます。
① 信託の利用
財産の管理を第三者に委託する方法もあります。
② 任意後見契約の締結
上述しました成年後見制度の一つであります、自分の判断能力が衰えたときに備えて、本人が「任意後見受任者」を選び、公正証書を作成して任意後見契約を締結して備える。

8.信託の利用
信託とは、「自分の大切な財産を、信頼する人に託し、大切な人あるいは自分のために管理・運用してもらう制度」のことです。財産の管理・運用を、「誰のために」「どういう目的で」ということを自分が決めて、信頼できる人に託すこと(信託すること)が、信託の大きな特徴です。
財産を信託された人(受託者)は、信託した人(委託者)の決めた目的の実現に向けて信託された財産を管理・運用します。「信託」は、以下の3者の関係からなる制度です。
* 委託者(自分)……財産を預ける(信託する)人
* 受託者(信託銀行、親族等)……財産を預かって(信託されて)管理・運用する人
* 受益者(恩恵を受ける人)……財産から生じる利益を得る人
信託の基本的な仕組みは、
① 自分の大切な財産を、信頼できる人に信託し
② 受託者は信託された財産を管理・運用し、そこから生まれた利益を
③ 委託者が指定した人(受益者)に渡します。
というのが最も基本的な信託のしくみになります。
委託者は、自分が持つ財産を契約などにより受託者に託します。信託すると、委託者の財産の所有権は受託者に移転し、受託者が信託された財産の所有者となります(不動産の場合には受託者として登記します)。この点が、他の制度にはない信託の最も大きな特徴です。
信託された財産は、受託者のもとで受益者のための財産として管理・運用することになります。委託者および受益者への大きな責任を負う信託銀行等の受託者(商事信託の場合)には、信託法や信託業法などの法律に基づいて様々な厳しい義務が課せられているため、信託した財産は安全に管理されます。
信託をすると、受益者は信託財産から生じる利益を受取る権利を持つことになります。これを「信託受益権」といいます。
(1)信託財産と信託目的
委託者から信託銀行等の受託者に信託された財産を「信託財産」といいます。信託できる財産の種類には、現金や土地・建物など金銭的価値のあるものであれば信託することができますが、農地、預貯金や一部の証券会社除き上場株式などの有価証券は実質的に不可となります。
また、信託した財産を、誰のために、どのような目的で、どのように管理・運用するかということは、委託者が決めます。これを「信託目的」といいます。脱法的なもの等ではない限り、「信託目的」も委託者が自由に決めることができます。

(2)商事信託と民事信託との違い
信託という大きな枠組みの中では、信託銀行や信託会社が行う「商事信託」とそれ以外の「民事信託」の二つに分けることができます。
① 商事信託
商事信託とは、財産を託される受託者を信託銀行や信託会社がビジネスとして他人の財産を管理運用等する仕組みです。他人から託された財産について報酬をもらって運用して、運用益をその人に戻すという従来からある信託です。
② 民事信託(家族信託)
一方で、民事信託とは、信託銀行等が担っていた受託者の立場を家族などの一般人が代わって行う制度です。信託銀行などのようにビジネスとして他人の財産を預かる場合については信託業法上の免許が必要で非常に要件は厳しいのですが、民事信託のようにビジネスとして行わない信託について免許は不要です。ただし、信託銀行などのように不特定多数の人から財産を預かって、信託報酬を得るようなことはできません。あくまで特定の人の財産を原則として報酬をもらわずに管理運用などをすることを「民事信託」といいます。なお、「家族信託」というものがありますが、これは民事信託のなかでも、特に受託者を家族が担う場合を家族信託と呼ぶようになっていますが、公的な呼称ではありません。
民事信託は、信託契約などによって内容を決めるので自分の生存中から死亡後まで、財産の管理活用承継について柔軟な設定ができます。また、自分が信頼した人に財産を託すことができるので、成年後見制度のようにまったく知らない人に財産を管理されたり、家庭裁判所の監督下に置かれたりするようなことはありません。家族を受託者にすることもできるので、司法書士などの専門職が成年後見人になった場合に比べ、長い目でみれば費用も安く抑えることができる場合があります。
成年後見制度では、財産の管理・活用・承継を一つの契約ですることができるので、認知症対策から遺言の機能までを一つの契約内で持たせることも可能です。さらに、通常の遺言では、自分の死後に発生した相続(二次相続以降)について財産を承継する者を指定することはできませんが、信託では二次相続以降についても財産を承継する者を指定することができます。
この様に、信託は、従来の成年後見制度や遺言では果たせなかったことについて、補完することができる新しい仕組みといいます。
 
以上が、不動産売却等に伴う認知症になる前後の対応策を言及しました。「前」は、任意後見制度又は信託があり、信託は特に不動産や非上場株式に有効に機能する方法かと思います。「後」は、法定後見制度の活用となります。
いずれの対応策もメリット・デメリットがありますので、状況に合わせて活用方法を決めることになるかと思います。

2021年8月20日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant