財務省と国税庁は企業や富裕層に租税回避策を指南する税理士に仕組みの開示を義務付ける方針だ。 租税回避地(タックスヘイブン)に資産を移すなど悪質な税逃れを把握する狙い。 成功報酬を受け取るなどした税理士に具体策を開示させ、 拒んだ場合の罰則も設ける。 適正な助言も開示対象に含むが、 米国など各国も開示制度を設けており、 税制の不公平感の解消につなげる。
複数の基準を満たした場合に開示義務がありとするが、 その基準案として、 ①租税回避によって成功報酬を受け取る、 ②納税額を減らすための税務上の損失を生み出す、 ③守秘義務がある、 等としているようです。
8月 2016のアーカイブ
中古住宅購入時に補助 改修費最大50万円 40歳未満に
政府は中古住宅を購入する際に必要なリフォーム工事の費用を、 1件当たり最大で50万円補助する制度を創設する。 欧米に比べて少ない中古住宅の取引を活発にし、 深刻になっている空き家問題の解消につなげる。 対象を40歳未満の購入者に絞り、 若年層が使えるお金を増やして個人消費を底上げする狙いもある。
補助金対象となる適用条件等は、 次の様に想定されています。
1. 中古住宅を購入する40歳未満の者
2. 申請は、 リフォームの施工業者が代理で国の事務局に行う
3. 申請には、 専門家の物件の状態を判断する住宅診断書が必要
4. 補助金は、 住宅診断費用の5万円のほか、 リフォーム工事内容に応じて最大50万円
信託:遺言代用信託と遺言信託の違い
死亡により死亡者(被相続人)の財産は、通常その相続人に引き継がれますが、相続でのトラブルが少なくありません。 相続人間で解決できない場合には、家庭裁判所への相談(調停・裁定)となります。 現在では、その相談は年間10万件以上ということで死亡者の約10人に1人という割合になっています。 なお、相談となるケースでの相続財産は決して高額ではなく、相続財産が1千万未満で全体の約30%、5千万未満となると全体の約70%という割合を占めています。 この様に相続が「争続」にならないように事前に対策する傾向が高まってきています。 その対策の一つに信託の活用がありますが、最近では信託銀行等が提供しており活用が増えてきています「遺言代用信託」と「遺言信託」について考えてみたいと思います。
- 信託とは
信託法の改正により、 現在では信託を一定の枠組みに中で自由設計が認められるようになりました。 信託では、 契約(信託契約による信託行為)に基づき自分(委託者)の財産(信託財産)を他人(受託者)に託し、 特定者(受益者)への一定の目的(信託目的)の為に信託期間中、 それを運営管理・処分をしてもらうことです。 登場人物は委託者、 受託者、 受益者の3名ですが、 委託者と受益者とが同一人となることもありますし、 信託設定時には受益者が存在していない場合もあります。
- 信託法における信託類型
信託における課税関係では、 受益者となる者の時期等によって異なりますが、 その種類としては次の4つがあります。
(1) 遺言代用信託
委託者が生前には受益者(自益信託)となり、 死亡時に受益者となるべき者を予め指定している信託。 例えば、 契約により信託銀行が委託者から生前に金銭を預かり、 死亡時に契約した内容(葬儀費用等)で受取人に払出すという仕組にしているものです。
(2) 受益者指定・変更権のある信託
受益者を指定し、 又は変更する権利を有する者の定めのある信託
(3) 後継遺贈型による受益者の連続信託(受益者連続型信託)
受益者の死亡によりその受益者が消滅し、 他の者が新たな受益権を取得する定めのある信託
(4) 受益者の定めのない信託
信託設定時点では受益者の定めがなく、 公益目的等の為に設定しますが、 将来の受益者の為に信託管理人を設置しておく信託
- 遺言信託
「遺言信託」という商品名で信託銀行等が提供しているものがありますが、 信託法における遺言代用信託とは異なるもので、 そのサービス内容は3つに大別されます。
(1) 遺言の作成や公証役場での手続き支援
(2) 遺言書の保管(定期的に内容変更有無の確認)
(3) 相続時に遺言書の執行人(遺産の調査、 相続税の申告作業支援等)
- 遺言代用信託と遺言信託の相違点
遺言代用信託 | 遺言信託 | |
対象資産 | 現預金のみ | 制限無し |
金額 | 主に、 100万~3,000万円 | 原則制限無し |
費用負担 | 無料(信託銀行等が預かった資金の運用益の一部を受領有り) | 約100万~150万円から(資産額による) |
利用目的 | 葬儀代負担資金 毎月一定額の資金支払 |
依頼者の意向に沿った財産の分配 |
生前の利用として遺言信託以外に遺言代用信託も急増しています。 相続発生時に、 遺産分割の手続が完了するまでは、 原則として預金を引き出すことができませんので、 遺言代用信託はそれを回避することが可能であり、 又、 遺言のように被相続人の意向を遺産分配に反映することも可能となります。
消費税率10%引上げ時期の延期に伴う税制上の措置
自民、公明両党は、8月2日に「消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置」を決定し公表しました。 これを踏まえて、政府は9月招集の臨時国会に関連法案を提出して早期成立を図る予定です。 以下は、その措置の主な内容(改正案)です。
項目 | 平成28年度税制改正(現行) | 改正案 |
消費税率引き上げの施行日 | 平成29年4月1日 | 平成31年10月1日 |
請負工事等に係る適用税率の経過措置の指定日 | 平成28年10月1日 | 平成31年4月1日 |
軽減税率制度の導入時期 | 平成29年4月1日 | 平成31年10月1日 |
適格請求書等保存方式の導入前の税額計算の特例 | ||
① 売上税額の計算特例 | ||
(イ)基準期間の課税売上高が5千万円以下に中小事業者 | 平成29年4月1日から平成33年3月31日までの4年間 | 平成31年10月1日から平成35年9月30日までの4年間 |
(ロ)基準期間の課税売上高が5千万円超の大規模事業者 | 平成29年4月1日から1年間 | 経過措置の適用外 |
② 仕入税額の計算特例 | ||
(イ)卸小売業者の特例 | 平成29年4月1日から1年間(全卸小売業者を対象) | 平成31年10月1日から1年間(卸小売業の中小事業者のみを対象) |
(ロ)簡易課税制度等の事後選択特例 | 平成29年4月1日から1年間(中小事業者及び大規模事業者) | 平成31年10月1日から1年間(中小事業者のみを対象) |
適格請求書等保存方式(インボイス制度)の導入時期 | 平成33年4月1日 | 平成35年10月1日 |
適格請求書発行業者の登録申請開始日 | 平成31年4月1日 | 平成33年10月1日 |
免税事業者からの仕入控除特例 | ||
① 100%控除 | 平成33年3月31日まで | 平成35年9月30日まで |
② 80%控除 | 平成33年4月1日~平成36年3月31日まで | 平成35年10月1日~平成38年9月30日まで |
③ 50%控除 | 平成36年4月1日~平成39年3月31日まで | 平成38年10月1日~平成41年9月30日まで |
④ 0%控除 | 平成39年4月1日以降 | 平成41年10月1日以降 |
住宅取得等に係る税額控除の適用期限 | 平成31年6月30まで | 平成33年12月31まで |
① 住宅借入金等を有する場合 | ||
② 特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合(特例) | ||
③ 既存住宅の耐震改修をした場合 | ||
④ 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合 | ||
⑤ 認定住宅の新築等をした場合 | ||
⑥ 東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合(特例) |
資産課税におきまして、期間の変更があります。
- 直近尊属から住宅取得等資金贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
特定受贈者(贈与年の1月1日現在20歳以上で合計所得金額2,000万円以下の者)が、 その直系尊属(親、祖父母等)から受ける居住用家屋の新築・取得・増改築等用に住宅取得等資金の贈与については、非課税限度額が定められています。
① 住宅用家屋の取得価額に消費税率10%の消費税等が含まれている場合 (消費税率10%で契約した者)
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 | 良質な住宅用家屋(耐震等住宅) | 左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅) | |
現行 | 改正案 | 3,000万円 | 2,500万円 |
平成28年10月~平成29年9月 | 平成31年4月~平成32年3月 | ||
平成29年10月~平成30年9月 | 平成32年4月~平成33年3月 | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成30年10月~平成31年6月 | 平成33年4月~平成33年12月 | 1,200万円 | 700万円 |
なお、 東日本大震災の 被災者が受贈者の場 合には、 以下のようになります。 平成28年10月~平成29年9月 平成29年10月~平成31年6月 |
平成31年4月~平成32年3月
平成32年4月~平成33年12月 |
3,000万円
1,500万円 |
2,5000万円
1,000万円 |
② 上記(1)以外の場合 (消費税率8%で契約した者や個人間売買で中古住宅売買契約した者)
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 | 良質な住宅用家屋(耐震等住宅) | 左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅) | |
現行 | 改正案 | 1,200万円 | 700万円 |
平成28年1月~平成29年9月 | 平成28年1月~平成32年3月 | ||
平成29年10月~平成30年9月 | 平成32年4月~平成33年3月 | 1,000万円 | 500万円 |
平成30年10月~平成31年6月 | 平成33年4月~平成33年12月 | 800万円 | 300万円 |
なお、 東日本大震災の 被災者が受贈者の場 合には、 以下のようになります。 現在~平成31年6月 |
現在~平成33年12月 | 1,500万円 | 1,000万円 |
- 住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税選択の特例(措法70の3)
住宅取得等資金の贈与を受ける場合に限り、 相続時精算課税制度を選択される時には、 贈与者の年齢制限の適用要件が外れるという特例規定があります(相続時精算課税選択の特例)。 なお、 対象住宅の床面積が50㎡以上であればよく上限条件は付されていません。
特別控除 | 2,500万円 | ||
年齢要件 | 贈与者 | 親(年齢制限無し) | |
受贈者 | 20歳以上の子及び孫) | ||
適用期間 | 現行 | 改正案 | |
平成15年1月1日から 平成31年6月30日まで |
平成15年1月1日から 平成33年12月31日まで |
NISAに長期積立枠 非課税、20年を軸に
政府は利用が伸び悩んでいる少額投資非課税制度(NISA)をテコ入れする。 具体的には投資上限を現在の120万円の半分以下にする代わりに売却益や配当に税金がかからない期間を現行の5年から大幅に延ばす新たな枠を設ける方向で調整する。 毎月少額を積み立てるタイプの投資が対象となる。 実態に合わせて使い勝手を良くすることで視野を広げる。
現行の半分の60万円以下の投資について、 非課税期間を20年前後に延ばす枠をつくる方向。 非課税期間5年の現行制度との併用は認めず、 利用者はどちらを選ぶことを想定している。
配偶者控除「夫婦」に転換 政府税調 所得税改革で検討
政府の税制調査会は専業主婦世帯らを優遇する配偶者控除の見直しや子育て世帯の税負担軽減などを柱にした所得税改革の議論を9月から始める。 配偶者控除は夫婦であれば妻の年収にかかわらず一定額を控除できる制度への転換を軸に検討する。 自民党税制調査会も今秋から2017年度税制改正議論を始める。 ビールや発泡酒などの税額を統一する酒税の改革に踏み出せるかも焦点だ。