事業復活支援金 事業継続へ最大250万円

経済対策は新型コロナウイルスの影響がなお残る企業向けに厚めの支援策を用意した(事業復活支援金)。昨年又は2年前と比べ売上が大幅に減った事業者を対象にし、減収分の補填につなげる仕組みだ。2021年11月から2022年3月までの5カ月分を一括して支給する内容で、事業の継続支援に力点を置く。
事業規模(年間売上高)に応じた給付金(最大)は、以下の通り。

年間売上高減収率
50%以上30%以上
5億円以上250万円150万円
5億円未満 1億円以上150万円90万円
1億円未満100万円60万円
個人事業主50万円30万円

令和3年度(2021年度)年末調整における主な改正・変更ポイント

年末調整に時期が近づいてきましたが、令和3年度に新たに影響する特別は税制改正事項がありませんが、前年度(令和2年度)には多くの改正事項がありましたので、再度、その主な内容を確認しておきたいと思います。
A. 令和2年度より主な改正事項
① 給与所得控除・公的年金等控除の減額から基礎控除の増額への振替
② 給与所得控除の見直し(減額)
③ 公的年金等控除の見直し(減額)
④ 基礎控除の見直し(増額)

1.給与所得控除の見直し
イ 給与所得控除額を一律10万円引下げ
ロ 給与所得控除額の上限が、給与等の収入金額850万円で195万円に引下げ

給与等の収入金額給与所得控除額
令和元年度令和2年度以降
162.5万円以下65万円55万円
162.5万円超 ~ 180万円以下収入金額X40%収入金額X 40%-10万円
180万円超 ~ 360万円以下収入金額X 30%+18万円収入金額X 30%+8万円
360万円超 ~ 660万円以下収入金額X 20%+54万円収入金額X 20%+44万円
660万円超 ~850万円以下収入金額X10%+120万円収入金額X10%+110万円
850万円超 ~ 1,000万円以下195万円(上限)
1,000万円超220万円(上限)

2.公的年金等控除の見直し
イ 公的年金等控除額を一律10万円引下げ
ロ 公的年金等の収入金額1千万円超における公的年金等控除額の上限が1,955千円
ハ 公的年金等の雑所得以外の合計所得金額に対する公的年金等控除額の引下げ

公的年金等の雑所得以外の合計所得金額 公的年金等控除額の引下金額
1千万円以下無し
1千万円超~2千万円以下一律、10万円引下げ
2千万円超一律、20万円引下げ

3.基礎控除額の見直し
イ 基礎控除額を一律10万円引上げ
ロ 合計所得金額が2,400万円超から逓減

合計所得金額(注)基礎控除額
令和元年度令和2年度以降
所得税住民税所得割所得税住民税所得割
2,400万円以下38万円33万円48万円43万円
2,400万円超~2,450万円以下32万円29万円
2,450万円超~2,500万円以下16万円15万円
2,500万円超

注:年末調整において、基礎控除の適用を受ける場合に見積額を基礎控除申告書で申告する。
地方税においては、前年の合計所得金額で判定する。

4.所得金額調整控除
以下のいずれかの要件に該当する場合(子育て世帯や介護世帯)には、負担増とならないように一定額を給与所得から控除します(控除額の緩和で夫婦双方での適用可)。
(1)給与等の収入金額が850万円超の居住者の中で、
① 特別障害者である者
② 年齢23歳未満の扶養親族を有する者
③ 特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する者
給与所得から控除額(所得金額調整控除額) ={給与等の収入金額(上限1千万円)- 850万円}X 10%
給与等の収入金額が1千万円以上の場合には、所得金額調整控除額は15万円(最高)。
(2)給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額とがある居住者で、その合計額が10万円超の場合には、
給与所得から控除額(所得金額調整控除額)={給与所得控除後の給与等の金額(上限10万円)+ 公的年金等に係る雑所得の金額(上限10万円)}- 10万円
給与所得の金額 = 給与等の収入金額 − 給与所得控除額 − 所得金額調整控除額(最高10万円)
注:公的年金等に係る確定申告不要制度において、当所得金額調整控除を給与所得の金額から控除するものとする。

5.各種合計所得金額要件の見直し

項目 令和元年度令和2年度以降
同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件38万円以下48万円以下
源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件85万円以下95万円以下
配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件38万円超~123万円以下48万円超~133万円以下とし、配偶者の合計所得金額の区分を、それぞれ10万円引下げる
勤労学生の合計所得金額要件65万円以下75万円以下

B. 所得控除額の確認
所得の合計額から控除できるもの(所得控除)には、次の15種類があります。
(1) 人的控除
① 基礎控除:全ての人が基本48万円の控除(所得制限あり)
  ② 扶養控除:扶養親族がいる場合には一定額の控除
  ③ 配偶者控除:控除対象配偶者がいる場合には一定額の控除
  ④ 配偶者特別控除:1,000万円以下の合計所得金額である人が生計を一にする配偶者がいる場合には一定額の控除(上記の③の控除と重複できない)
  ⑤ 勤労学生控除:本人が勤労学生である場合には27万円の控除
  ⑥ ひとり親控除:一定の要件を満たす場合には35万円の控除
  ⑦ 寡婦控除:一定の要件を満たす場合には27万円の控除
  ⑧ 障害者控除:本人、控除対象配偶者、扶養親族が障害者である場合には、それぞれに一定額の控除

(2) 物的控除
  ⑨ 寄付金控除:本人が特定の寄付金を支出した場合には一定額の控除
  ⑩ 生命保険料控除:生命保険料を支払った場合には、一般、 介護と個人年金とに区分して一定額の控除
  ⑪ 地震保険料控除:常時住んでいる家屋や家財等の地震保険料を支払った場合に   は一定額の控除
  ⑫ 小規模企業共済等掛金控除:当掛金を支払った場合には全額の控除
  ⑬ 社会保険料控除:1年間に支払った保険料は全額の控除
  ⑭ 医療費控除:本人や同一生計の親族の医療費を支払った場合には一定額の控除
  ⑮ 雑損控除:資産が災害、盗難などにより損害を受けた場合には、損失額が
    一定額を超えた分の控除
人的控除を一覧にすると以下のようになります。

人的控除項目対象者控除額本人の所得要件等
基礎控除 本人48万円合計所得金額24百万円以下。超える場合には、段階的に控除額減額(25百万円超でゼロ円)
扶養控除生計を一にし、 かつ、 年間所得が48万円以下である親族等(扶養親族)を有する者(事業専従者は除く)
年少扶養親族年齢が16歳未満
(所得税上は控除金額はありませんが、 住民税上では控除対象となりますので、 申告書上の住民税に関する事項の所に扶養者名等の記載をお忘れなく)
0万円
一般扶養親族年齢が16歳以上19歳未満又は23歳以上の70歳未満 38万円非居住者の場合には、原則、30歳以上70歳未満を除く
特定扶養親族年齢が19歳以上23歳未満63万円
老人扶養親族 年齢が70歳以上(非同居)48万円
(同居老親等加算) 直系尊属であり同居を常況 + 10万円
配偶者控除(注1)生計を一にし、 かつ、 年間所得が48万円以下である配偶者を有する者(事業専従者は除く)
(一般控除対象) 年齢が70歳未満 38万円
(老人控除対象)年齢が70歳以上48万円
配偶者特別控除
(注1)
生計を一にする年間所得が48万円を超え133万円未満である配偶者(事業専従者は除く) 最高38万円(年間所得に応じて)年間所得1,000万円以下
勤労学生控除 本人が学校教育法に規定する学校の学生、 生徒等27万円年間所得75万円以下かつ給与所得以外が10万円以下
寡婦控除
(ひとり親に該当しない方)
夫と離婚した者、 扶養親族(子以外:子を有する場合にはひとり親控除の適用)を有する者かつ住民票に夫(未婚)・妻(未婚)記載なし
又は、扶養親族無しで夫と死別した者又は生死不明である者かつ住民票に夫(未婚)・妻(未婚)記載なし
27万円年間所得500万円以下(給与収入678万円以下)
ひとり親控除①未婚(離婚後、死別後を含む、及び生死不明な配偶者がいる方も含む)のひとり親であり、②生計を一にする子の総所得金額等の金額が48万円以下であること
③未婚のひとり親が入籍しない事実婚の世帯であっても住民票に事実婚の旨「夫(未婚)・妻(未婚)」を登録記載されていないこと
35万円年間所得500万円以下(給与収入678万円以下)
障害者控除障害者である者
障害者である同一生計配偶者又は扶養親族者
27万円
(特別障害者)特別障害者である者
特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族者
40万円
(同居特別障害者)特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族と同居を常況としている者75万円

普通障害者・特別障害者の区分例:

障害の内容普通障害者特別障害者
精神に障害がある方で精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方右の等級以外の方精神障害者保健福祉手帳の障害の等級が1級の方
身体上の障害がある方で身体障害者手帳の交付を受けている方障害の程度が3級から6級の方障害の程度が1級又は2級の方

注1:配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し
配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与収入では103万円以下)の場合に配偶者控除38万円(老人控除対象配偶者48万円)、 並びに配偶者控除は世帯主の年収に応じて縮小され、配偶者特別控除は配偶者の年収要件を103万円から150万円に引上げ、 かつ配隅者及び世帯主の年収に応じて控除額が以下の様に9段階で縮小となります。

配偶者控除等に関する源泉徴収及び確定申告における見直し
(1)給与等又は公的年金等の源泉徴収における源泉控除対象配偶者に係る控除適用は、夫婦いずれか一方しか適用できません。
(2)居住者の配偶者が、公的年金等の源泉徴収において源泉控除対象配偶者の適用を受け、かつ、公的年金等に係る確定申告不要制度を受ける場合には、その居住者は確定申告において配偶者特別控除の適用を受けることはできません。

C. 給与所得者の年末調整
1. 年末調整とは
会社等の給与支払者(源泉徴収義務者)は、給与等の支払時に所定の源泉所得税を徴収しています。この源泉所得税は事前の条件下での計算に基づくものであり、一種の仮計算による前払税金ですので、この仮計算を最終条件に基づいての再計算(年税額を確定する手続)が年末調整です。具体的には、給与支払者は暦年(1月~12月)の総給与額に対して12月の最終給与支払日に最終条件に基づいて再計算し、徴収していた総源泉所得税の過不足を調整(精算)します。
通常のサラリーマンは、事業者が行うこの年末調整で給与収入の納税手続きは完了(事務処理・対応の緩和)となり、個人が行う確定申告は不要となりますので、税制度の内容に触れることが少ないことから税知識の理解不足に繋がっている感があります。

2. 年末調整の対象者又は非対象者
年末調整の対象者は、 原則として会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人は全員含まれます。 但し、 給与収入額が2千万円を超える人は年末調整を行ないませんので自身の所得税確定申告を通じて年税額の精算をしなければなりません。 通常、 1カ所から給与支給を受けている人は、 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出し年末調整を受けることになります。

次の人は年末調整の対象者にはなりません。
(1) 年中の給与収入額が2千万円を超える人
(2) 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人(年末調整を行うことができませんが、 支払の際の源泉徴収においては乙欄の税額表が適用となっています)
(3) 年中に退職(死亡退職した人、 非居住者として国外勤務者となった人、 等を除く)した人
(4) 国内に住所も1年以上の居所を有していない人(非居住者)
(5) 災害免除法の規定により源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人
(6) 日雇労働者等(丙欄の税額表適用者)

この様に一般のサラリーマンの方は、この年末調整を給与支払者から受けることで、その年の所得税は確定しますので、原則として確定申告は必要ありません。年末調整の対象外の方や、年末調整の一部処理洩等の方は、通常、その年の翌年の2月15日から3月15日の間に確定申告を行います。

3. 年末調整のスケジュール
一般的な年末調整のスケジュール(流れ)は、以下のようになります。

11月上旬必要書類の準備および従業員への事前案内
中旬従業員への年末調整用の提出書類の案内  注1
下旬年末調整用書類の回収
12月上旬回収書類のチェック
中旬年末調整計算
下旬給与支給(年末調整の還付又は追徴)
翌年1月10日期限徴収税額の納付
20日期限徴収税額の納付(特例適用の場合)
31日期限源泉徴収票の交付(従業員)法定調書合計表の
提出(税務署)注2
給与支払報告書の
提出(市区町村)注3

注1:扶養控除等/保険料控除申告書の書類や証明書の提出を依頼します。 この時に、次年度分の扶養控除等申告書の作成・提出も併せて依頼すると良いでしょう。
注2:合計表と共に法定調書提出の対象となる一定の役員等の源泉徴収票(1枚)も提出します。
注3:給与支払報告書とは、源泉徴収票と同じ書式であり、2枚と一定の事項を記載した総括表(表紙)も提出します。

上述の様に11月となりますと給与支払者(会社)は、 年末調整の準備・対応が始まり、 勤務者(従業員)は年末調整の為に必要となる申告書や証明書類等を所定の期限までに給与支払者に提出することが求められます。 給与支払者は、 勤務者から回収した年末調整用の書類の内容を確認しその最終情報に基づいて、 暦年における最終給与支払い時(通常、 12月給与)に納めるべき年間の所得税(年税額)を算出し、 これまでの支給時に源泉徴収された税額と比べその過不足額を精算(徴収又は還付)します。 一般的には、 年末調整により還付されるケースが多いかと思います。

4. 年末調整での取扱項目
給与所得者の年末調整で取扱える項目と取扱えない項目の主なものは、次の通りです。

取 扱 項 目   非取扱項目(要確定申告)
社会保険料控除(生計を一にする親族等の負担分)雑損控除
小規模企業共済等掛金控除医療費控除
生命保険料控除寄付金控除
地震保険料控除 住宅借入金等特別控除(初年度)
配偶者控除、 又は配偶者特別控除その他各種特別控除
所得金額調整控除
住宅借入金等特別控除(2年目以降)
障害者控除
ひとり親控除
寡婦控除
中途入社の方は、前職の給与収入(源泉徴収票)
扶養家族等の控除情報更新(注)

注:年始にはその年の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書が提出(原則として、 本年最初の給与の支払を受ける日の前日までに提出)されているため、その内容は毎月の給与計算に反映され、源泉所得税が給与収入から天引されています。 提出後に控除関連事項に異動が生じた場合には、 その都度異動申告を行うことになっています。

年末調整の為に提出が求められる申告書とその中に記載される控除項目は以下のとおりです。 当該控除項目以外に所得から控除可能な項目がある場合にはそれらの項目は確定申告で行うことになります。

申告書の名称控除項目
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書扶養控除、 障害者控除、 ひとり親控除、寡婦控除、 勤労学生控除
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書基礎控除、
配偶者控除・配偶者特別控除、
所得金額調整控除
給与所得者の保険料控除申告書生命保険料控除(一般生命・介護医療・個人年金)、 地震保険料控除、 社会保険料控除(申告分)、 小規模企業共済等掛金控除(申告分)
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(2年目から年末調整の対象で初年度は確定申告が必要)

注: マイナンバーの記載不要の特例制度
平成28年1月よりマイナンバー制度が導入されています。原則、マイナバーを記載すべき書類の提出を受ける際には、その都度(毎回)必ず、マイナバーカード等で本人確認する必要があります。但し、平成29年分以後の扶養控除等(異動)申告書等へのマイナンバーの記載不要の特例制度が創設され、その適用要件として、過去にマイナンバーの情報が提供されており、 一度その番号確認を実施した上で作成した帳簿(特定個人情報ファイル)を会社が備えているときには記載不要となりました。 これは、確認書類の提示を受けることが困難な場合を前提とされていますが、変更が無いことが口頭等で確認されていれば参照できることでよいかと思います。なお、本人確認のうち身元確認については、過去に一度確認を行っている場合、本人を対面で確認することで明らかに本人であると認識されたる場合には、身元確認書類の提示は不要となります。
マイナンバーの記載不要の特例制度が適用できない方には、以下の対応が必要となります。
「平成3年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出にあたり、 給与所得者本人、 源泉控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の個人番号を記載することになります。 提出にあたり、 給与支払者が給与所得者から個人番号の提供を受ける場合は、 本人確認として、 提供の番号が正しいことの確認(番号確認)と、 番号提供者が真にその番号の持ち主であることの確認(身元確認)を行う必要があります。 なお、 控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の本人確認は、 給与所得者(従業員)が行うことになっています。
平成28年1月以降の支払に係る給与所得の源泉徴収票には、 上記の個人番号を記載して税務署等の行政機関に提出することが必要となりますので、 「扶養控除等(異動)申告書」に必要なマイナンバーが記載されていない場合には、 源泉徴収票作成までにマイナンバーの提供を受ける必要があります。 なお、 給与所得者への源泉徴収票には、 個人番号は記載されません。

申告書記載上の主な注意点は以下のものがあります。
(イ) 12月31日時点の現況で記載
その年の12月31日現在の現況を見積もりで記載することになります。 見積記載の内容に修正が生じた場合(例えば、 扶養者数の増減、 等)には、 再年末調整(翌年の1月末までは可能)又は確定申告により適正な精算を行うことになります。

(ロ) 人的控除項目の判定基準に合計所得金額基準
控除項目の中(控除対象配偶者、 控除対象扶養控除、 配偶者特別控除等の人的控除項目)には、 その控除に該当するかの判定基準にその年度の合計所得金額となりますので留意してください。 多い誤りとしては、 配偶者の合計所得金額が控除対象金額を超えているケースです。
配偶者控除の場合の合計所得金額は、 48万円以下(給与収入額では103万円以下)でなければなりません。
配偶者特別控除の場合の合計所得金額は、 48万円超~133万円以下でなければなりません。
公的年金等の雑所得だけの方で控除対象扶養者(合計所得金額が48万円以下)になる場合には、 公的年金等の雑所得以外の合計所得金額が1千万円以下では、公的年金等の収入金額が158万円以下(年齢65歳未満の人は108万円以下)という条件を満たす人です。

「所得金額」として、 税法の規定のなかに「合計所得金額」、 「総所得金額」、 「総所得金額等」の3種類が適用判定基準の中に出てきますが、 それぞれ多少の違いがあります。
①合計所得金額、 ②総所得金額、 ③総所得金額等の定義
総所得金額とは、総合課税項目の所得合計であり、合計所得金額とは、更に分離課税での繰越控除適用前の分離課税所得等を加えた所得合計であり、総所得金額等とは、更に分離課税での繰越控除を控除した所得金額となります。

所得種類  各種繰越控除の適用
利子所得所得金額の損益通算合計所得金額* 純損失や雑損失の繰越控除
* 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除
* 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
* 上場株式等の譲渡損失の繰越控除
* 特定中小会社発行株式の譲渡損失の繰越控除
* 先物取引の差金等決済損失の繰越控除
総所得金額総所得金額等
配当所得
不動産所得
事業所得
給与所得
雑所得
一時所得2分の1
総合課税の譲渡所得長期
短期
分離課税(土地・建物等)の譲渡所得(特別控除適用前)長期
分離課税の株式等の譲渡所得短期
分離課税の先物取引の雑所得
退職所得
山林所得

(ハ) 年齢16歳未満の年少扶養親族
控除対象扶養控除に関して、 平成23年度から年齢16歳未満の年少扶養親族に対する扶養控除が所得税では廃止となっています(年齢16歳未満は所得税における扶養控除対象者ではありません)。 しかし、 住民税の方では控除対象となっていますので住民税に関する欄への記載を忘れないでください。 なお、 年齢16歳未満の年少扶養親族であっても、 障害者又は特別障害者に該当する場合には、 障害者控除を受けることはできます。
令和3年度の年末調整時における年齢16歳未満とは、 平成18年1月2日以後に生まれた人が年少者となります。

(ニ) 扶養親族
所得者と生計を一にする親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)で、 合計所得金額が48万円以下の人を扶養親族(配偶者、青色事業専従者及び白色事業専従者を除く)といいます。 その中には、 以下のように区分されています。
① 控除対象扶養親族
扶養親族のうち、 年齢16歳以上の人をいいます(令和3年度の年末調整では、 平成18年1月1日以前に生まれた人)。
② 特定扶養親族
扶養親族のうち、 年齢19歳以上23歳未満の人をいいます(令和3年度の年末調整では、 平成11年1月2日から平成15年1月1日までの間に生まれた人)。
③ 老人扶養親族
控除対象扶養親族のうち、 年齢70歳以上の人をいいます(令和3年度の年末調整では、 昭和27年1月1日以前に生まれた人)。
④ 同居老親等
老人扶養親族のうち、 所得者又はその配偶者のいずれかとの同居を常況としている必要がありますが、 同居特別障害者は、 所得者、 その配偶者又は所得者と生計を一にするその他の親族のいずれかとの同居を常況としていることが適用の要件となっています。

(ホ) 生命保険料控除の改組
平成24年(2012年)1月1日からの契約分(新契約)から一般生命保険に含まれていた「介護医療保険」が独立の控除対象となりました。 平成23年までの契約分(旧契約)については、 昨年までと同様に「一般生命保険」と「個人年金保険」の2つに分けられ最高控除額は、 各5万円です。 新契約は、 「一般生命保険」、 「介護医療保険」と「個人年金保険」の3つに分けられ最高控除額は、 各4万円となります。 なお、 旧契約と新契約が混在するケースも発生することもありますが、 各保険料控除の合計適用限度額が12万円とされています。 従いまして、 支払保険契約が、 旧契約か新契約かを保険会社からの証明書で確認しながら申請書に正しく記載する必要があります。
生命保険契約等により支払われた保険料や掛金は所得者本人が支払ったものに限られています。 又、 保険金、 共済金等の給付金の受取人の全てが所得者本人又は所得者の配偶者や親族となっていることが必要です。
翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 本年中に相当する部分のみが支払保険料の金額となります。

(ヘ) 社会保険料控除
所得者本人と生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料を所得者自身が支払った場合(時限措置により納付可能となった過去分の保険料の支払分も含む)には、 所得者本人の社会保険料として控除できます。
年金から特別徴収された介護保険料や後期高齢者医療保険料については、 支払者が年金受給者自身となることから、 その年金の受給者の社会保険料として控除となります。
翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 前納期間が1年以内の場合には、 その全額を本年の社会保険料として控除することができます。 なお、 国民年金保険料については、 2年分を前納できることになりましたので、 全額控除をするか、 又は期間按分して控除(この場合には、 按分の明細書が要作成)する方法のいずれかを選択することが可能です。

(ト) 地震保険料控除
所得者本人と生計を一にする親族が所有して常時居住している家屋や生活に通常必要な家財に対して支払った保険料の内、 一定の金額を地震保険料控除として控除できます。
一つの契約等で、 地震等損害に対する損害保険契約と旧長期損害保険契約のいずれの契約区分にも該当する場合には、 選択によりいずれか一方の契約区分のみが地震保険料控除の控除額となります(有利な方を選択する)。

(チ) (特定増改築等)住宅借入金等特別控除
現在、 各種の住宅借入金等特別控除がありますが、 控除を受けようとする初年度分については、 確定申告により控除の適用を受ける必要があります。 2年度以降分については、 年末調整の際に下記のものを給与支払者に提出します。
① 税務署長が発行した「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」。 この証明書の上部に「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」がありますので、 控除金額等の記載を行い提出します。
② 金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
一般の住宅借入金等特別控除は、 居住者が一定の要件を満たす住宅の取得等して、 その人の居住の用に供した場合(その家屋の取得等の日から6ケ月以内に居住用に供したものに限られています)において、 その住宅の取得等のために一定の住宅借入金(償還期間10年以上等)を有するときには、 居住年以後10年間(平成13年7月1日から平成30年12月31日までの間で居住した場合には、 最長10年間。 それ以前のものは最長15年間)の各年のうち、 合計所得金額が3千万円以下である年について、 住宅借入金等の年末残高を基にした所定額を住宅借入金等特別控除としてその年の所得税額から控除できるというものです。
家屋に入居後、 本年12月31日まで継続して居住用に供していることが控除の適用要件ですので、 年度の途中で海外勤務となり出国している場合には、 この制度の適用はありません。
自己の居住用の家屋が2以上有する場合には、 主として居住用とする1の家屋に限られます。
連帯債務(共有)の場合には、 各年12月31日現在のその住宅借入金等の金額に控除を受ける人の負担割合(持分割合)を加味して控除額を計算します。 その割合は、 小数点以下第4位を切上げ、 90%以上である場合は100%とします。

住宅ローンの借換え: この制度の適用者が、 住宅借入金等の借換えをした場合に一定の要件を満たすときには適用が継続します。 住宅ローン金利が低くいものがあるとローンの借換えを行う場合があります。 一般の住宅ローンの場合の借換えでは、 新たな借入金が当初の借入金を消滅させるもので、 適用対象となっていた家屋の取得等のための資金に充てるものであれば住宅ローン控除の継続適用の対象となります。 その場合の新たな借入金の償還期間も10年以上であることが適用要件となっています。 ローン借換後の借入額が借換前の借入残高以下であれば、 年末借入残高が控除対象額となりますが、 逆に借換後の借入額が借換直前の借入残高を上回る場合、 次の按分計算して控除対象額を導く必要があります。
ローン借換後の借入額の年末残高 X (借換直前の借入残高 ÷ 借換直後の借入額) = 控除対象借入額の年末残高

(リ) 給与と徴収税額の集計
年中に支払った給与・賞与が対象になりますが、 本年分の給与で未払いであっても、 本年中に支給時期がきており支払金額が確定したものについても年末調整の対象になります。

(ヌ) 年末調整のやり直し(再調整)
年末調整後に関係事項に異動があった場合には、 年末調整のやり直し(再調整)をすることになります(①以外は翌年1月末までに所定の申告書の提出を受け翌年1月末までなら可能)。 例えば、
① 給与の追加払いがあった場合
年末までに本年分の給与の追加払いがあった場合には、 年末調整のやり直しをしなければなりません。
翌年になって給与改訂により本年分まで遡って支給することになっても、 それは改訂時の年度の所得となりますので年末調整のやり直し対象にはなりません。
② 控除対象配偶者、 控除対象扶養者等の数に異動(増減) があった場合
異動事項の申告を受けた場合には、 年末調整のやり直しを行ないます。
③ 保険料の追加払いがあった場合
保険料控除額に影響する保険料の追加払いがあり異動事項の申告を受けた場合には、 年末調整のやり直しを行ないます。
④ 配偶者等の控除対象者の合計所得金額の見積額と確定額に差異があり控除額が変動することになった場合
異動事項の申告を受けた場合には、 年末調整のやり直しを行ないます。
⑤ 住宅借入金等特別控除申告書の提出があった場合
申告書の提出を受けた場合には、 年末調整のやり直しを行ないます。
なお、 上記の様に年末調整後に関係事項に異動があった場合で年末調整のやり直しがされなかった項目の中で、 所得税額が過少になっている場合には、 確定申告で適正に精算する必要があります。

5. 令和3年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
令和3年分の扶養控除、 障害者控除、 ひとり親控除、寡婦控除、 勤労学生控除の各控除の為に申告書を作成しますが、同時に令和4年度の扶養親族等を確認・確定します。
その控除に該当するかの判定は、その年度の合計所得金額(見積金額)と年度末等における現況によることになります。
A 源泉控除対象配偶者
 「源泉控除対象配偶者」とは、居住者(合計所得金額が900万円以下である者に限る)の配偶者でその居住者と生計を一にするもの(青色事業専従者等を除く)のうち、合計所得金額が95万円以下である者をいう。
B 控除対象扶養親族(平成18.1.1以前生まれの16歳以上)
 ①一般扶養親族(年齢16歳以上19歳未満)
 ②特定扶養親族(年齢19歳以上23歳未満)
 ③老人扶養親族(年齢70歳以上(非同居))
 ④同居老人扶養親族(年齢70歳以上(同居))
C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生
イ 障害者
 一般障害者(所得者、同一生計配偶者、扶養親族)
 特別障害者(所得者、同一生計配偶者、扶養親族)
 同居特別障害者(同居:同一生計配偶者、扶養親族)
ロ 寡婦
①-1夫と離婚した者で扶養親族(子以外:子を有する場合にはひとり親控除の適用)を有する者、かつ住民票に夫(未婚)・妻(未婚)記載(いわゆる事実婚)なし
①-2又は、扶養親族無しで夫と死別した者又は生死不明である者、かつ住民票に夫(未婚)・妻(未婚)記載なし
②合計所得金額500万円以下であること
ハ ひとり親
①未婚(離婚後、死別後を含む、及び生死不明な配偶者がいる方も含む)のひとり親
②生計を一にする子の総所得金額等の金額が48万円以下であること
③未婚のひとり親が入籍しない事実婚の世帯であっても住民票に事実婚の旨「夫(未婚)・妻(未婚)」を登録記載されていないこと
④合計所得金額500万円以下であること
二 勤労学生(所得者本人)
D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
〇 住民税に関する事項:16歳未満の年少扶養親族(平成18.1.2以後生まれ)

6. 令和3年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、所得金額調整控除の各控除の為に申告書を作成します。
(1)給与所得者の基礎控除申告書
所得者の給与所得及び他の所得の合計金額に応じて基礎控除額が決まります。

合計所得金額基礎控除額
所得税住民税所得割
2,400万円以下48万円43万円
2,400万円超~2,450万円以下32万円29万円
2,450万円超~2,500万円以下16万円15万円
2,500万円超

2)給与所得者の配偶者控除等申告書
所得者の所得金額と生計0を一にする配偶者の所得金額との組み合わせをより、配偶者控除額又は配偶者特別控除額が決まります。
配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与収入では103万円以下)の場合に配偶者控除38万円(老人控除対象配偶者48万円)を上限に、 配偶者控除は世帯主の年収に応じて縮小され、配偶者特別控除は配偶者の年収要件を103万円から150万円に引上げ、 かつ配隅者及び世帯主の年収に応じて控除額が9段階で縮小となっています。

(3)所得金額調整控除申告書
所得者の年間給与収入金額が850万円超の場合で、以下のいずれかの要件を満たす場合には、控除額15万円(最高)の適用があります。
① 所得者本人が特別障害者である者
② 年齢23歳未満の扶養親族を有する者
③ 特別障害者である同一生計配偶者を有する者
④ 特別障碍者である扶養親族を有する者
給与所得から控除額 =(給与等の収入金額(上限1千万円)- 850万円)X
 10%
給与等の収入金額が1千万円以上の場合には、所得金額調整控除額は15万円(最高)。

なお、給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額がある所得者で、その合計額が10万円超の場合には、最高10万円の所得金額調整控除額があり、給与所得から控除することがありますが、年末調整では適用を受けることが出来ません。その場合、年末調整の際に「給与所得者の基礎控除申告書」等で合計所得金額を計算する時には、当該年金所得金額を考慮する必要があります。
給与所得から控除額(所得金額調整控除額)={給与所得控除後の給与等の金額(上限
10万円)+ 公的年金等に係る雑所得の金額(上限10万円)}- 10万円
給与所得の金額 = 給与等の収入金額 − 給与所得控除額 − 所得金額調整控除額(最高10万円)

7. 令和3年分 給与所得者の保険料控除申告書
生命保険料控除(一般生命・介護医療・個人年金)、 地震保険料控除(申告分)、 社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除(申告分) の各控除の為に申告書を作成します(証明書類の添付)。
(1)生命保険料控除(一般生命・介護医療・個人年金)
① 所得者本人が支払ったもので、保険金等の受取人が所得者又はその配偶者や親族(個人年金保険の場合には親族を除く)であることが必要
② 新旧の保険区分に注意
(2)地震保険料控除
① 所得者本人が年内に支払ったもので、所得者又は生計を一にする親族が所有する常時居住する家屋や、生活に通常必要な家財を目的とする保険であることが必要
② 同一契約内に地震保険と旧長期損害保険がある場合には、いずれか有利の保険料を選択
(3) 社会保険料控除
① 所得者又は生計を一にする親族分で所得者が支払ったもの
② 配偶者が年金から特別徴収(天引き)された保険料(介護保険料等)については、その年金受給者が支払ったことになることに注意(所得者からの控除とはならない)
(4)小規模企業共済等掛金控除
① 確定拠出年金法に基づく企業型年金加入者掛金、個人型年金加入者掛金(iDeCo等)も含む
② 前納減額金は、支払い掛金から控除

8.  給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
ローン控除の初年度は確定申告により控除適用を受ける必要があります。2年目以降は年末調整で控除を適用することができますので、年末調整時に、
① 添付書類として、税務署長が発行したその年度分の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」
② 添付書類として、金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」

9. 税務関係書類における押印の不要
源泉所得税関係書類について、押印が不要となりました。

10. 年末調整手続の電子化
令和2年度の年末調整から、生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等特別控除(ローン控除)の3件に係る控除証明書等については、従業員から電子データで会社に提出できることになっています。具体的には、
① 従業員が保険会社、金融機関、税務署等から電子データで受領する。
② 従業員が当電子データを専用の年末調整ソフトを使用してインポートし年末調整申告用の電子データを作成する。
③ 従業員が年末調整申告用の電子データと控除証明書等データを会社に提供(送信)する。
④ 会社が、送信されたデータを給与システムにインポートして年末調整計算を行う。
注:現時点では、全ての保険会社、金融機関等がこの電子化に対応しているわけではありませんので、事前確認が必要としています。

電子化の事前準備:
① 給与システム等の対応準備
② 事前に税務署に会社が「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、その承認が令和3年度より不要となりました。
③ 従業員に周知徹底

以上が年末調整等の概要となります。

雇調金特例を来年縮小 厚労省方針 1月から段階的に

厚生労働省は雇用調整助成金を増額する新型コロナウイルス対応の特例措置を2022年1月から段階的に縮小する方針だ。売上が大幅に減った企業など向けの手厚い支援を当面続ける。
1人1日の上限が、今の13,500円を来年の1月から11,000円、3月から9,000円に下げられる。

みなし解散と商業登記遵守

法務省から「みなし解散」の通知を受けたことはありませんか。既に数年前から完全なる休眠会社であり、その様な解散通知されても問題は無い場合もあるかもしれませんが、継続して事業・営業活動を行っているにも拘わらず「みなし解散」されてしまった場合には、その後の継続処理、特に税務申告処理は面倒となりますので、その様にならない為の事前の留意点、或いは解散という最悪の事態となった場合の元に戻す事後の処理を説明します。
1.役員の任期と登記のルール
会社法の規定により,株式会社の取締役の任期は,原則として2年,株式の譲渡制限規程のある閉鎖会社においては最長でも10年とされており,取締役の交替や重任の場合にはその旨の登記が必要とされており,株式会社については,取締役の任期毎に,取締役の変更登記がされることになります。又,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定により,理事の任期は2年とされ,同様に少なくとも2年に一度,理事の変更の登記がされることになります。又、取締役又は理事の変更に限らず,株式会社,一般社団法人又は一般財団法人は,その登記事項に変更があった場合には,所定の期間内にその変更の登記が必要とされています。
注:有限会社等には、役員の任期満了に伴う重任登記というものはありません。

2. みなし解散となる状況
しかしながら、最後の登記をしてから12年を経過している株式会社,又は最後の登記をしてから5年を経過している一般社団法人又は一般財団法人が,まだ事業を廃止していない場合には,その届出をする必要があります。この様な時期を迎えている場合には、法務省より事前に通知連絡がありますので、その所定の期間内に必要な登記(役員変更等)の申請又は「まだ事業を廃止していない」旨の届出を行うことでみなし解散を回避できますが、それを怠れば,解散したものとみなされ,法務省の職権で解散の登記がされてしまいます。これが、みなし解散です。更に、法人の代表者個人が過料(罰金)を支払うことになってしまいます。
3.みなし解散という整理作業の必要性(法務省より)
長期間登記がされていない株式会社,一般社団法人又は一般財団法人は,既に事業を廃止し,実体がない状態となっている可能性が高く,このような休眠状態の株式会社,一般社団法人又は一般財団法人の登記をそのままにしておくと,商業登記制度に対する国民の信頼が損なわれることになります。
そこで,株式会社については,最後の登記をしてから12年を経過しているもの,一般社団法人又は一般財団法人については,最後の登記をしてから5年を経過しているものについて,法務大臣の公告を行い(法務省から確認申請の通知有り),2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出や役員変更等の登記の申請がない限り,みなし解散の登記をすることとしています。
4.みなし解散された場合の事後対応
みなし解散登記が行われてしまった場合には、法的な解散であり、これを撤回することは出来ませんが、みなし解散の登記後3年以内に限り法人継続のチャンスがあります。
(1)解散したものとみなされた株式会社は,株主総会の特別決議によって,株式会社を継続することができます。
(2)解散したものとみなされた一般社団法人又は一般財団法人は,社員総会の特別決議又は評議員会の特別決議によって,法人を継続することができます。
特別決議で継続したときは,2週間以内に継続の登記の申請をする必要があります。
5.みなし解散後の法人継続までの税務申告
みなし解散され法人継続の登記を行った場合、税務申告においては、先ずは解散に伴う手続きが必要となりますので、最短でも1年間に3回の決算・申告(①直近の開始事業開始日から解散日までの期間、②解散日の翌日から特別決議による事業継続日までの期間、そして③事業継続日の翌日から定款上の事業年度終了の日までの期間)を行う必要があります。

以上から、役員任期関連で登記時期を見過ごしますと、みなし解散となり予期せぬ事後対応が必要となってしまいますので、登記スケジュールには留意すべきです。特に、法務省からの登記確認の申請通知が来ましたら遅滞なく対応することが必要です。

国民保険料 限度額上げ 厚労省案 3万円増え102万円に

厚生労働省は22日、自営業などが加入する国民健康保険を巡り、保険料上限を年99万円から102万円に3万円引き上げる案を示した。2022年度に実施する方針で、引き上げは2年ぶりとなる。高齢化に伴う医療費の伸びに対応するため、高所得層の保険料負担を重くし、中所得層の負担を抑える。
また同省は、75歳以上が加入する後期高齢者医療保険の保険料上限についても、現行の年64万円から66万円に2万円引き上げる案を示した。

インボイス制度における適格請求書発行事業者の登録制度開始

令和5年(2023年)10月からインボイス制度「適格請求書等保存方式」導入にあたり、「適格請求書」を交付できる事業者「適格請求書発行事業者」の登録が10月1よりスタートします。以下に、事業者が適正に消費税申告を行う為に対応・留意しなければならい概要(主に、国税庁HPより)を記載してみます。

1.インボイス制度の導入
令和5年10月1日から、消費税に関して複数税率(10%、軽減税率の8%、等)に対応した仕入税額控除の方式として、諸外国と同様な「適格請求書等保存方式」(インボイス方式)が導入されます。同日から、仕入税額控除の適用要件として、原則、事前登録した「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書(インボイス)」の保存が必要となります。特に、今後、適格請求書発行事業者でない免税事業者等との取引に対して留意すべきことがあります。
消費税額の計算方法:
 納付消費税額 = 課税売上に係る消費税額 - 課税仕入れ等に係る消費税額 
         (売上税額:仮受消費税額)  (仕入税額:仮払消費税額)
                           仕入税額控除
2.請求書等及び帳簿の記載事項
軽減税率適用に併せて請求書等及び帳簿の作成・記載事項等は、以下の様になっています。 令和5年10月に、インボイス制度として「適格請求書等保存方式」を導入されまので、請求書等の記載事項に留意すべきです。

請求書等保存方式
(令和元年9月30日以前)
区分記載請求書等保存方式
(令和元年10月1日~)
適格請求書等保存方式
(インボイス制度)
(令和5年10月1日~)
①請求書発行者の氏名又は名称
②取引年月日
③取引の内容
④対価の額
⑤請求書受領者の氏名又は名称
①~⑤同左の記載①~⑤同左の記載
⑥軽減税率対象課税品目である旨(帳簿にも要記載)
⑦税率の異なるごとに合計した対価の額
(注)記載が不備の場合に、請求書の交付を受けた事業者による追記も可
同左の記載
⑦税率の異なるごとに合計した対価の額及び適用税率
⑧登録番号
⑨消費税額等
*売手に区分記載請求書の交付・保存義務は課されません。
*買手に区分記載請求書の保存を仕入税額控除の要件になりますが、追加記載事項(⑥と⑦)は買手が事実に基づき追記することが認められます。
偽りの請求書の交付行為に対しての罰則はありません。
*「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書」又は「適格簡易請求書」の保存が仕入税額控除の要件となります、「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)が導入されます。
*適格請求書発行事業者には、「適格請求書」又は「適格簡易請求書」の交付・保存を義務付け、偽りの請求書の交付行為に対して罰則があります。
*「適格請求書発行事業者」とは、免税事業者以外の課税事業者であり、所轄税務署長に申請書を提出し、交付事業者として登録を受けた事業者です(登録番号を受領)。登録申請は、令和3年10月1日から登録制度が開始されます。 登録後、その氏名又は名称及び登録番号等はインターネット上で公開となります。なお、令和5年10月1日から登録を受ける為には、原則、令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。
*「適格請求書」とは、上記事項を記載した請求書、納品書、その他これらに類する書類をいいます。
*1つの適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額を計算することはできません。複数商品の税率区分ごとの合計金額に対して消費税額を計算し表記します。税額の円未満の端数処理は、任意となります。

3.適格請求書(インボイス)
(1)適格請求書の記載事項
「適格請求書」とは、次の全ての事項が記載された書類(請求書、納品書、領収書、レシート、契約書、等)をいいますが、1つの書類に記載される必要はなく複数の書類でカバーさせていればよいことになっています。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
登録番号と紐付けられて管理されている取引先コード等で相手方と共有されていれば、取引先コードの記載で要件が満たされます。
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の 譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等(消費税額及び地方消費税額に相当する金額の合計額をいいます)
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
なお、返品や値引き等の売上の返還等を行う場合には、「適格返還請求書」を交付し、又、交付した請求書に誤りがあった場合には、「修正した適格請求書」を交付します。
又、適格請求書、適格簡易請求書等の交付に代えて、これらに係る電磁的記録(電子データ)を提供することもできますが、その保存方法が決められています。

(2)適格請求書の保存期間
課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存する必要があります。

(3)適格請求書に記載する消費税額の端数処理
消費税額に1円未満の端数が生じる場合、1つの適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要があります(切上げ、切捨て、四捨五入などの端数処理は任意)。従って、1つの適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額計算し、その合計額を記載等することは認められません。

(4)適格請求書に税抜価額と税込価額が混在する場合
スーパー等の小売業等では1つの適格請求書において、税抜価額表記の商品と税込価額表記の商品が混在するような場合、いずれかに統一して「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した額」を記載するとともに、これに基づいて「税率ごとに区分した消費税額」を算出して記載する必要があります。

4.適格請求書交付義務の免除項目(免除課税資産)
適格請求書発行事業者は免税事業者を除く他の課税事業者から求められたときには適格請求書を交付しなければなりませんが、次の課税資産の譲渡等は、事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な為、交付義務が免除されています(帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます)。
① 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送 :金額は1回の取引価額で判定。例えば、1人運賃13,000円で4人分の52,000円の運賃を支払う場合には、52,000円での判定となりますので免除対象となりません。
② 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者 が卸売の業務として行うものに限ります。)
③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売 (無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
④ 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等(代金の受領と資産の譲渡等が自動で行われる機械装置があり、それにより完結するもの。例えば、コインロッカーやコインランドリー等は含まれますが、機械装置から資産譲渡等を伴わないセルフレジ、ネットバンキング等は含まれません)
⑤ 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限 ります。)
⑥ その他請求書等の交付が困難な課税資産の譲渡等のうち一定のもの
なお、免税取引、非課税取引及び不課税取引のみを行った場合には、適格請求書の交付義務は課されません。

5.適格簡易請求書の交付可能な事業者
適格請求書発行事業者が不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う一定の事業を行う場合には、適格請求書に代えて「適格簡易請求書」を交付することができます。 適格簡易請求書は、適格請求書と異なる点は、書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称が省略でき、又、税率ごとに区分した消費税額等か適用税率のどちらかを記載するところです。
適格簡易請求書の交付可能な事業者例として、
①小売業、②飲食店業、③写真業、④旅行業、⑤タクシー業、⑥駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります)、⑦その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業
となっています。
不特定かつ多数の者に対する事業とは、相手方の氏名等を認識せず取引条件等を予め提示して相手方を問わず広く行うことが常態である事業等をいいます。
なお、適格簡易請求書についても、交付に代えて電磁的記録(電子データ)を提供することができます。

6.適格請求書発行事業者の登録制度
「適格請求書発行事業者」とは、免税事業者以外の課税事業者であり、所轄税務署長に申請書(適格請求書発行事業者の登録申請書)を提出し、交付事業者として登録を受けた事業者です(登録番号を受領)。登録申請は、令和3年10月1日から登録制度が開始されます。 登録後、その氏名又は名称及び登録番号等は通知及びインターネット上で公開(国税庁HP上の適格請求書発行事業者公表サイト)となります。なお、インボイス制度の導入日の令和5年10月1日から登録を受ける為には、原則、令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります(なお、特定期間の課税売上高又は給与等支払額の合計額が1千万円を超えて課税事業者となる場合は、提出期限は令和5年6月30日までに延長)。
登録申請は、e-Taxの利用(申請後の登録通知は2週間程度後)、又は郵送等の場合(申請後の登録通知は1ヵ月程度後)には各国税局のインボイス登録センターとなります。
登録の効力は、適格請求書発行事業者登録簿に登録された日(登録日)から生じます。登録日以降の取引については、買手方(課税事業者に限る)の求めに応じ、適格請求書を交付する義務があります。
なお、課税期間の中途での登録申請も可能です。

登録番号の構成:
① 法人の課税事業者は、T+法人番号
② 法人以外の個人事業者等の課税事業者は、T+13桁の数字
免税事業者の登録に関しては下記7Ⅱを参照。

7.免税事業者等からの仕入税額控除
(1)仕入税額控除の経過措置
インボイス制度が導入されます令和5年10月以降、仕入税額控除を受けるには、「帳簿」及び税務署に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者(登録事業者)が交付した適格請求書」の保存が必要となります。従いまして、
免税事業者、適格請求書発行事業者登録されていない課税事業者、並びに事業者で無い消費者からの課税仕入れに対して、仕入税額控除の適用を受けることが出来なくなります。但し、下記の様に特例で令和5年10月から令和11年9月までの6年間は、仕入税額相当の一定割合を税額控除できる経過措置が設けられています。

区分記載請求書等保存方式免税事業者からの仕入についても、仕入税額控除できます。
適格請求書等保存方式
(インボイス制度)
原則、免税事業者、適格請求書発行事業者登録されていない課税事業者等からの仕入は、仕入税額控除ができませんが、次の期間内での特例が認められています。
令和5年10月~
令和8年9月までの3年間
仕入税額相当額の80%控除
令和8年10月~
令和11年9月までの3年間
仕入税額相当額の50%控除
令和11年10月~仕入税額控除の対象とすることができません。

この経過措置の適用を受ける為には、次の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が必要となります。
(A)帳簿
「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が追加で必要です。具体的な記載事項は次のとおりです。

① 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
② 課税仕入れを行った年月日
③ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容及ぶ経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨
④ 課税仕入れに係る対価の額
(B)請求書等
① 書類の作成者の氏名又は名称
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(軽減対象資産の場合には、その資産の内容及び軽減対象資産である旨)
④ 税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額
⑤ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

(2)免税事業者の登録申請手続
免税事業者からの請求に対して、令和11年10月より相手課税事業者は完全に仕入税額控除の対象とすることが出来なくなります。免税事業者が適格請求書発行事業者として登録を受けるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要があります。(令和11年10月以前に)適格請求書を交付できる課税事業者となる登録手続は、以下の様になっています(経過措置もあり)。

① 登録申請が令和5年10月1日を属する課税期間の経過措置及び留意点
令和5年10月1日を属する課税期間中に適格請求書等発行事業者登録した場合には、「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要はありません。留意点として、その登録日(令和5年10月1日)に課税事業者となりますので、基準期間の課税売上高にかかわらず、登録日から期末日までの期間に対する消費税の申告が必要となります。なお、経過措置の適用を受けない課税期間に登録を受ける場合には、原則どおり、課税選択届出書を提出し課税事業者となる必要があります。

② 登録申請が令和5年10月1日を属する課税期間の翌課税期間以降の場合
免税事業者が、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者を選択し課税期間の初日から登録を受けようとする場合は、その課税期間の初日の前日から起算して1月前までに登録申請書の提出が必要となります。

以下は、免税事業者の登録申請の要約表となります。

登録申請時期
右記の前事業年度以前令和5年10月1日の属する事業年度(課税期間)左記の翌事業年度以降
経過措置適用の期間原則適用
消費税課税事業者選択届出書提出不要提出し、同時に課税事業者となる課税期間の初日の前日から1ヵ月前までに登録申請書の提出が必要
(登録日が4月1日ならば、申請の提出期限は2月28日)
適格請求書発行事業者の登録申請書申請し登録を受けた日から課税事業者となる(登録日以前は免税事業者期間)。
免税免税課税事業者及び適格請求書発行事業者

なお、適格請求書発行事業者の登録後に、基準期間の課税売上高が1千万円以下になっても、登録の効力が失われない限り課税事業者として継続します。

免税事業者である個人事業者の場合にも、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受ける為には、経過措置により登録申請書を令和5年3月31日までに提出する必要があります(課税選択届出書の提出は不要)。同年10月1日から12月31日の期間は課税事業者として令和5年分の消費税の申告が必要となります。なお、登録日の前日である9月30日に免税事業者であった期間中に課税仕入れの棚卸資産を有しているときは、その仕入税額控除の適用を受けることができます。なお、経過措置の適用を受け、同時に簡易課税制度の選択適用を受ける場合には、同年10月1日に属する課税期間中に消費税簡易課税制度選択届出書を同年12月31日までに提出(令和5年分から適用する旨を記載)すればよいことになります(法人も同様な扱いになります)。

(3)免税事業者の今後の検討課題
上述しましたが、免税事業者からの課税仕入れに対して、適格請求書の交付を受けることが出来ませんので仕入税額控除の適用を受けることが出来なくなります。その為に、売上先が課税事業者(適格請求書発行事業者)の場合には、免税事業者との取引を減らしていくことが予想されます。特に、小規模な免税事業者が課税事業者になれば、収める消費税の分だけ支出が増え事業経営に影響を受けるというデメリットがありますので、次の経営環境状況を検討し課税事業を選択するかを判断されても良いかと思います。

(1)課税事業者を選択することが望まれる経営環境(売上高に重大な影響を受ける可能性がある)(2)免税事業者を継続する経営環境(課税事業者と取引できなくともあまり問題が無い)
*課税事業者との取引が多い*免税事業者同士との取引が主である
*新規顧客(課税事業者)を開拓していく経営方針がある*不特定多数を顧客とする業種(小売業、飲食業等の消費者を顧客)である
*競合状況にあり他の課税事業者と比べて価格面で明らかに不利と予想される*商品・サービスに独自性があり競合が少ない

(4)インボイス制度下で免税事業者は消費税を付加請求可能か否か
インボイス制度が導入後(令和5年10月1日以降)も、免税事業者及び適格請求書発行事業者登録されていない課税事業者は、適格請求書を交付することができませんが、消費税法に基づく10%の消費税を付加表記した請求書は発行できます。
消費税法57条の5「適格請求書類似書類等の交付の禁止」という規定があり、その内容は、適格請求書発行事業者以外の者は、適格請求書発行事業者が作成した適格請求書又は適格簡易請求書であると誤認される恐れがある表示をした書類を他の者に対して交付し、又は提供してはならない、というものです(違反者には罰則規定あり)。この「誤認」の範囲は明確ではありませんが、明らかなものとして、適格請求書発行事業者でないのに登録番号を請求書等に記載することです。この適正な登録番号の課税事業者であるかは、国税庁で登録者を公開していますので、仕入税額控除を適用する事業者には、登録確認の負担や責任は課されていることになります。
現行の法制度上では免税事業者は消費税を請求書に記載出来ないという規定はどこにもありません。免税事業者からの取引では、あくまでも免税事業者は適格請求書を交付できなく、かつ納税義務者ではないということ、及び取引先が仕入税額控除を行うことができなくなることだけです。

8.新設法人等の登録時期の特例
免税事業者である新設法人(個人事業者、新設合併、新設分割の新規開業等も含む)の場合には、事業開始(設立)時から適格請求書発行事業者の登録を受ける為には、設立後、その課税期間の末日までに課税選択届出書と登録申請書(初日から登録を受けようとする旨の記載)を併せて提出する必要があります。
なお、課税事業者である新設法人の場合には、事業開始の課税期間の末日までに登録申請書(初日から登録を受けようとする旨の記載)を提出する必要があります。

9.適格請求書発行事業者の登録取消
登録取消を受ける場合には、課税期間の末日から31日前に「適格請求書発行事業者の登録の取り消しを求める旨の届出書」を提出することで、翌課税期間の初日から登録の効力が失われます。従って、末日から30日前の届出の場合には、翌々課税期間に登録取消となります。なお、免税となる要件を満たす事業者は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、課税の免除とはなりません。
消費税法上、事業を廃止した場合に「事業廃止届出書」を提出により適格請求書発行事業者の登録の効力が失われます。

10.適格請求書発行事業者からの事業承継(相続)
① 令和5年10月1日以前に死亡した場合
被相続人の登録効力が生じていませんので、相続により事業承継した相続人が、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合には、原則として、令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。この場合、同日までに提出できなかった困難な事情がある場合に、その旨を記載して令和5年9月30日までに提出することが認められます。
個人事業者が死亡した場合には、「個人事業者の死亡届出書」の提出も行う。
② 令和5年10月1日以後に死亡した場合
相続人は、「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を提出する必要があります。その登録の失効は、提出日の翌日又は死亡日の翌日から4カ月後のいずれか早い日となります。
相続により事業承継した相続人が適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合には、登録申請書を提出する必要があります。この場合、相続の翌日から、相続人の登録日の前日又は被相続人の死亡日から4カ月後のいずれか早い日までの期間については、相続人の適格請求書発行事業者と見做す措置が設けられています(被相続人の登録番号を相続人の登録番号と見做す)。

11.修正する適格請求書の交付
売手である適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書の記録事項に誤りがあったときには、相手である課税事業者に対して、修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなければなりません。これらの交付方法例として、
① 誤りがあった事項を修正し、改めて記載事項の全てを記載したものを交付(差替え)
② 当初交付したものとの関連性を明らかにし、修正した事項を明示したものを交付
原則、誤りを買手が自ら追記や修正を行ったものでは仕入税額控除の適用要件を満たしませんが、買手の課税事業者が作成した一定事項の記載のある仕入明細書等の書類で、売手の確認を受けたものについては、仕入税額控除の適用の為に必要な請求書等に該当となります。

12.口座振替・口座振込による家賃等の支払の留意事項
通常、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、仕入税額控除の適用を受ける為には、原則として、適格請求書の保存が必要となります。
適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することも可能(一定期間の賃借料についての適格請求書の交付を受けて保存する)となります。
適格請求書として必要な記載事項は、1つの書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たせばOK。例えば、契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、他に実際に行った取引の客観的な書類で全ての記載事項を満たし保存することで、仕入税額控除の適用要件を満たします。
口座振替の場合、適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに、通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することで、仕入税額控除の適用要件を満たします。
口座振込による家賃の支払う場合、適格請求書の記載事項の一部が記載された契約書とともに、銀行が発行した振込金受取書を保存することにより、請求書等の保存があるものとして、仕入税額控除の適用要件を満たします(複数の書類を合わせて1つの適格請求書とすることが可能)。
注:令和5年9月30日以前からの契約について、契約書に登録番号等の適格請求書として必要な事項の一部の記載が不足している場合には、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存することで仕入税額控除の適用要件を満たします。

なお、クレジットカード決済の場合にも、仕入税額控除の為には、記載要件を満たす適格請求書が必要となります。

13.適格請求書(及び適格簡易請求書)の電磁的記録(電子データ)の保存方法
適格請求書発行事業者は、適格請求書の交付に代えて電磁的記録を相手に提供できますが、その場合、提供した電磁的記録を電子帳簿保存法に準拠して、
(1) 電磁的記録のまま、又は
(2) 紙に印刷して、
提供した日の課税期間末の翌日から2月後から7年間保存しなければなりません。
上記の(1)の電磁的記録のまま保存する場合には、以下の措置を講ずる必要があります。
① 次のイからニのいずれかの措置を行うこと
イ 適格請求書の電磁的記録を提供する前にタイムスタンプを付してから電磁的記録を提供すること
ロ 次のいずれかの方法により、提供後であるがタイムスタンプを付すとともに、電磁的記録の保存者又はその直接監督者の情報を確認できるようにしておくこと
* 適格請求書の電磁的記録を提供後に、速やかにタイムスタンプを付すこと
* 適格請求書の電磁的記録を提供からタイムスタンプを付すまでの各事務処理に関する規定を定め、その処理の通常の期間経過後、速やかにタイムスタンプを付すこと
ハ 適格請求書の係る電磁的記録の記録事項について、次のいずれかの要件を満たす電子計算機システムを使用して適格請求書の電磁的記録の提供及びその電磁的記録を保存すること
* 訂正又は削除を行った場合、その事実及び内容を確認することができること
* 訂正又は削除することができないこと
ニ 適格請求書の係る電磁的記録の記録事項について正当な理由のない訂正又は削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと
② 適格請求書の係る電磁的記録の保存等に併せて、システム概要書の備付けを行うこと
③ 適格請求書の係る電磁的記録の保存等をする場所に、その電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、その電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力できるようにしておくこと
④ 適格請求書の電磁的記録について、次の要件を満たす検索機能を確保しておくこと
注:国税に関する法律の規定による電磁的記録の提示又は提出に応じることができるようにしているときは、次のⅱ及びⅲの要件は不要となり、その判定期間の基準期間の売上高が1千万円以下の事業者が、同様に国税の電磁的記録の提示又は提出に応じることができるようにしているときは検索機能の全てが不要となります。
ⅰ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索条件として設定できること
ⅱ 日付又は金額の記録項目については、その範囲を指定して条件を設定できること

上記(2)の適格請求書の電磁的記録を紙で保存しようとするときには、整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面を保存する必要があります。

14.仕入税額控除の要件
インボイス制度の下では、一定事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の適用要件となります。保存すべき請求書等には、次の様なものが含まれます。
(1)適格請求書
(2)適格簡易請求書
(3)適格請求書又は適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録(電子データ)
(4)適格請求書の記載事項を買手が記載した仕入明細書、仕入計算書その他これに類する書類の場合、課税仕入れの相手方(売手)の確認を受けたものに限られます(電子データを含む)
(5)次の取引について、媒介又は取次に係る業務を行う者が作成する一定の書類(電子データを含む)
イ 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者 が卸売の業務として行うものに限ります。)
ロ  生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売 (無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
(6)次の取引について、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で認められます。
① 適格請求書の交付義務が免除される、3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用時に回収される取引(①に該当分を除く)
③ 適格請求書発行事業者でない古物営業者(古物商、中古車販売業等)からの古物購入(棚卸資産に限定)
④ 適格請求書発行事業者でない質屋営業車からの質物取得(棚卸資産に限定)
⑤ 適格請求書発行事業者でない宅地建物取引業者からの建物購入(棚卸資産に限定)
⑥ 適格請求書発行事業者でない再生資源及び再生部品の購入(購入者の棚卸資産に限定)
⑦ 適格請求書の交付義務が免除される、3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の購入等
⑧ 適格請求書の交付義務が免除される、郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限定)
⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

15.納付税額の計算方法

区分記載請求書等保存方式現行通り、適用税率ごとに取引総額に110分の10、或いは108分の8を乗じて計算する「割戻し計算」を維持する。
適格請求書等保存方式
(インボイス制度)
適用税率ごとに取引総額に110分の10、或いは108分の8を乗じて計算する「割戻し計算」と、「適格請求書」に記載のある消費税額の「積上げ計算」のいずれかを選択できます。
但し、売上税額を「積上げ計算」する場合には、仕入税額も「積上げ計算」としなければなりません。

16.事業者別対応・検討事項
以上から、事業者としてインボイス制度の導入に伴い、対応・検討すべき事項があります。
(1)原則課税事業者
① 適格請求書発行事業者の登録申請
② 適格請求書等の様式変更
③ 仕入税額控除の適用要件の理解と税区・税率等の記帳確認
④ 免税事業者等の登録申請事業者以外の事業者との取引(業者選択の検討)

(2)簡易課税制度の選択課税事業者
① 適格請求書発行事業者の登録申請
② 適格請求書等の様式変更
③ 基準期間の課税売上高が50百万円超になる可能性が低い場合には、仕入税額控除の原則処理を気にしなくても良いかと思われます。
④ 免税事業者等の登録申請事業者以外の事業者との取引(業者選択の検討)
⑤ 課税売上高から納付消費税額を計算することから、売手側からの適格請求書等の保存は仕入税額控除においては必要となりません。

(3)免税事業者(上記7Ⅲを参照)
① 競争の激しい環境下にある場合に、仕入税額控除の対象外として登録申請事業者から取引を削減・停止となるリスク存在の有無確認
② 上記①のリスクがあり営業に重大な影響が考えられる場合には、課税事業者を選択し、かつ登録申請することを検討する。
③ 上記②で登録申請することを選択した場合に、簡易課税制度の選択が有利か否かを同時に検討する。
④ 課税事業者として、同様に上記(1)又は(2)の対応

17.委託販売:媒介者交付特例
委託販売の場合、購入者に対して課税資産の譲渡等を行っているのは、委託者ということから、本来、委託者が購入者に対して適格請求書を交付しなければなりません。この様な場合、受託者が委託者を代理して、委託者の氏名又は名称及び登録番号を記載した、委託者の適格請求書を、相手方に交付することも認められます(代理交付)。 また、次の①及び②の要件を満たすことにより、媒介又は取次ぎを行う者である受託者が、 委託者の課税資産の譲渡等について、自己の氏名又は名称及び登録番号を記載した適格請求書 又は適格請求書に係る電磁的記録を、委託者に代わって、購入者に交付し、又は提供することができます(媒介者交付特例)。
① 委託者及び受託者が適格請求書発行事業者であること
② 委託者が受託者に、自己が適格請求書発行事業者の登録を受けている旨を取引前までに通知していること(通知の方法としては、個々の取引の都度、事前に登録番号を書面等により 通知する方法のほか、例えば、基本契約等により委託者の登録番号を記載する方法など)。 なお、媒介者交付特例を適用する場合における受託者の対応及び委託者の対応は、次のとおりです。
受託者の対応:
① 交付した適格請求書の写し又は提供した電磁的記録を保存する。
② 交付した適格請求書の写し又は提供した電磁的記録を速やかに委託者に交付又は提供する。
委託者の対応:
① 自己が適格請求書発行事業者でなくなった場合、その旨を速やかに受託者に通知する。
② 委託者の課税資産の譲渡等について、受託者が委託者に代わって適格請求書を交付していることから、委託者においても、受託者から交付された適格請求書の写しを保存する。

以上

基準地価「地殻変動」映す 海外マネーや住環境評価、暴落を左右

国土交通省が9月21日発表した2021年7月1日時点の基準地価は、住宅地や商業地などの全国平均が前年度比0.4%下がり、2年連続の下落となった。際立ったのが2年目の新型コロナウイルス禍の下で進む「地殻変動」だ。
2021年基準地価の変動率(7月1日時点、 前年比%、 ▲は下落):

地域住宅地商業地全用途
2021年前年2021年前年2021年前年
全国平均0.5▲0.7▲0.5▲0.3▲0.4▲0.6
三大都市圏0.0
▲0.30.10.70.10.0
東京圏0.1▲0.20.11.00.20.1
大阪圏▲0.3▲0.4▲0.61.2▲0.30.0
名古屋圏0.3▲0.71.0▲1.1▲0.6▲0.8
地方圏▲0.7▲0.9▲0.7▲0.6▲0.3▲0.8
中核地方4市4.23.64.66.14.44.5

公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。

 公示地価基準地価 路線価 固定資産税評価額
調査主体国土交通省都道府県国税庁市町村
調査地点数約26,000約21,600 約336,000多数
調査時点1月1日7月1日1月1日1月1日(原則3年に1回、 次回は2021年)
公開時期3月9月7月又は8月3月
公開サイト国交省(土地総合情報ライブラリー) 国交省(土地総合情報ライブラリー)国税庁資産評価システム研究センター
その他調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。調査対象は地方の調査地点が多く、 不動産鑑定士の評価を参考に調査し、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から 相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準

概算要求 最大の111兆円 来年度予算

財務省は7日、2022年度予算の各省庁による概算要求について、金額を明示した項目の総額が一般会計で111兆6559憶円だったと発表した。2021年度の105兆4071憶円を上回り、過去最高となった。

住宅省エネ改修に補助 外壁・窓 断熱に50~100万円

国土交通省は住宅の省エネルギー化を交付金で支援する。戸建てやマンションの改修工事で断熱材などを活用する場合、費用の一部を自治体を通じて補助する。対象となるのは外壁や窓の断熱性能を高める改修工事だ。家全体ではなく部分的な改修も認める。費用の一部について1件あたり最大50万~100万円程度を補助する方向で調整している。