みなし解散と商業登記遵守

法務省から「みなし解散」の通知を受けたことはありませんか。既に数年前から完全なる休眠会社であり、その様な解散通知されても問題は無い場合もあるかもしれませんが、継続して事業・営業活動を行っているにも拘わらず「みなし解散」されてしまった場合には、その後の継続処理、特に税務申告処理は面倒となりますので、その様にならない為の事前の留意点、或いは解散という最悪の事態となった場合の元に戻す事後の処理を説明します。
1.役員の任期と登記のルール
会社法の規定により,株式会社の取締役の任期は,原則として2年,株式の譲渡制限規程のある閉鎖会社においては最長でも10年とされており,取締役の交替や重任の場合にはその旨の登記が必要とされており,株式会社については,取締役の任期毎に,取締役の変更登記がされることになります。又,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定により,理事の任期は2年とされ,同様に少なくとも2年に一度,理事の変更の登記がされることになります。又、取締役又は理事の変更に限らず,株式会社,一般社団法人又は一般財団法人は,その登記事項に変更があった場合には,所定の期間内にその変更の登記が必要とされています。
注:有限会社等には、役員の任期満了に伴う重任登記というものはありません。

2. みなし解散となる状況
しかしながら、最後の登記をしてから12年を経過している株式会社,又は最後の登記をしてから5年を経過している一般社団法人又は一般財団法人が,まだ事業を廃止していない場合には,その届出をする必要があります。この様な時期を迎えている場合には、法務省より事前に通知連絡がありますので、その所定の期間内に必要な登記(役員変更等)の申請又は「まだ事業を廃止していない」旨の届出を行うことでみなし解散を回避できますが、それを怠れば,解散したものとみなされ,法務省の職権で解散の登記がされてしまいます。これが、みなし解散です。更に、法人の代表者個人が過料(罰金)を支払うことになってしまいます。
3.みなし解散という整理作業の必要性(法務省より)
長期間登記がされていない株式会社,一般社団法人又は一般財団法人は,既に事業を廃止し,実体がない状態となっている可能性が高く,このような休眠状態の株式会社,一般社団法人又は一般財団法人の登記をそのままにしておくと,商業登記制度に対する国民の信頼が損なわれることになります。
そこで,株式会社については,最後の登記をしてから12年を経過しているもの,一般社団法人又は一般財団法人については,最後の登記をしてから5年を経過しているものについて,法務大臣の公告を行い(法務省から確認申請の通知有り),2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出や役員変更等の登記の申請がない限り,みなし解散の登記をすることとしています。
4.みなし解散された場合の事後対応
みなし解散登記が行われてしまった場合には、法的な解散であり、これを撤回することは出来ませんが、みなし解散の登記後3年以内に限り法人継続のチャンスがあります。
(1)解散したものとみなされた株式会社は,株主総会の特別決議によって,株式会社を継続することができます。
(2)解散したものとみなされた一般社団法人又は一般財団法人は,社員総会の特別決議又は評議員会の特別決議によって,法人を継続することができます。
特別決議で継続したときは,2週間以内に継続の登記の申請をする必要があります。
5.みなし解散後の法人継続までの税務申告
みなし解散され法人継続の登記を行った場合、税務申告においては、先ずは解散に伴う手続きが必要となりますので、最短でも1年間に3回の決算・申告(①直近の開始事業開始日から解散日までの期間、②解散日の翌日から特別決議による事業継続日までの期間、そして③事業継続日の翌日から定款上の事業年度終了の日までの期間)を行う必要があります。

以上から、役員任期関連で登記時期を見過ごしますと、みなし解散となり予期せぬ事後対応が必要となってしまいますので、登記スケジュールには留意すべきです。特に、法務省からの登記確認の申請通知が来ましたら遅滞なく対応することが必要です。