所得税・個人住民税の定額減税(特別控除)

物価高を受けた家計支援策の一環の一時的な措置として、令和6年分の所得税と住民税について、定額による特別控除を実施することになります。既に、税務署等から定額減税の案内・パンフレットが出されていますが、その概要は以下の様になるものと理解しております。
(1)対象者の要件
居住者であり令和6年分の所得税・住民税(個人住民税は、令和5年分の合計所得金額)に係る合計所得金額が1,805万円以下(給与収入の場合には2,000万円以下)である者(従って、給与の年収2,000万円超は対象外)。
注:合計所得金額とは、事業所得、不動産所得、給与所得、雑所得等の「総合課税所得」と、土地・建物、有価証券等の譲渡所得等の「分離課税所得」を合わせた金額で、譲渡損失、純損失等の繰越控除適用前の金額を指します(なお、退職所得は計算上加算する必要があります)。
(2)定額減税の額
(所得税):控除される金額は、所得税額を限度
 本人分 3万円 + (同一生計配偶者+扶養親族)の人数 × 3万円
(住民税):所得割額を限度
 本人分 1万円 + (控除対象配偶者+扶養親族)の人数 × 1万円
注1: 人数のカウントは全て居住者に限定
注2: 配偶者・扶養親族の定義は下記の通り
① 同一生計配偶者:その年の12月31日現在の現況(納税者が死亡した場合には死亡時、又は出国の場合には出国時)で、生計を一にする配偶者で合計所得金額が48 万(給与収入の場合には103万円)円以下(所得金額に関係なく青色・白色の事業専従者の方は該当しない・含まれません)。なお、合計所得金額が48 万円超の配偶者は、配偶者自身の所得税において減額の対象者となります。
② 扶養親族:その年の12月31日現在の現況(納税者が死亡した場合には死亡時、又は出国の場合には出国時)で、生計を一にする配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族、等)で合計所得金額が48 万円以下(所得金額に関係なく青色・白色の事業専従者の方は該当しない・含まれません)。注:所得税法上の控除対象扶養親族だけでなく、16歳未満の扶養親族も含まれます(扶養控除等申告書内の住民税に関する事項の掲載で把握)。
③ 控除対象配偶者:同一生計配偶者に該当し、合計所得金額が納税者本人の合計1,000万円以下の場合
(3)定額減税の実施方法
定額減税は、給与所得者、公的年金受給者、個人事業者、その他者ごとに対応が、以下の様に異なります。
ケース1 給与所得者に係る定額減税額の控除
先ずは、定額減税の控除対象者の確認し把握することが必要であり重要なことになります。
定額減税の控除対象者は、令和6年6月1日現在、令和6年分扶養控除等申告書を提出している給与所得者(いわゆる甲欄適用者)となります(基準日対象者)。従って、その後(令和6年6月2日以降)に雇用され当該申告書を提出された人は対象外となります。
次の人は、基準日対象者に該当しません。
* 令和6年6月2日以後に雇用勤務することになった人(年末調整時に年調減税の適用)
* 令和6年5月31日以前に退職した人
* 令和6年6月1日以後の給与等支払時に乙欄・丙欄が適用される人(扶養控除等申告書の未提出者)
* 令和6年5月31日以前に出国した非居住者
上記の基準日対象者に該当しない人でも定額減税は、確定申告、準確定申告、更正の請求等の提出により適用を受けることができます。
先ずは、同一生計配偶者と扶養親族の人数を把握確認することが重要となります。確認方法は、「扶養控除等申告書」と「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の記載内容で行うことになります。
後述の月次減税と年調減税の対象となる同一生計配偶者・扶養親族の把握方法:

 対象者把握方法
月次減税同一生計配偶者源泉控除対象配偶者に該当する人扶養控除等申告書のA欄
源泉控除対象配偶者に該当しない人「令和6年分源泉徴収に係る定額減税のための申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書」を源泉徴収に係る申告書として使用
扶養親族扶養控除等申告書のB欄、及び住民税に関する事項の「16歳未満の扶養親族」欄
年調減税同一生計配偶者控除対象配偶者に該当する人「令和6年分給与所得者の配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書(同一生計配偶者に係る申告)」
控除対象配偶者に該当しない人
扶養親族扶養控除等申告書のB欄、及び住民税に関する事項の「16歳未満の扶養親族」欄

源泉控除対象配偶者とは、納税者本人の合計所得金額が900万円以下である同一生計配偶者。
控除対象配偶者とは、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下である同一生計配偶者。
月次減税及び年調減税の対象となる同一生計配偶者と扶養親族は、合計所得金額が48万円以下、かつ、居住者であることが要件となっています。

① 毎月の給与からの所得税額の控除(月次減税事務)
基準日在職者が既に提出した扶養控除等申告書、又は源泉徴収に係る定額減税のための申告書の内容に基づいて判定し、対象の配偶者と扶養親族の人数を把握します。
イ 令和6年6月1日以後最初に支払いを受ける令和6年分の6月以降の給与等(賞与含む)につき源泉徴収をされる所得税額から定額減税の額を控除します。
ロ 6月に控除しきれない控除の額がある場合には、それ以降(7月以降)に支払う給与等(同年の最終給与支払を除く)につき源泉徴収をされる所得税額から順次控除をしていきます。従いまして、月次減税事務においては、基準日在職者の各人別の月次減税額と各月の控除額等を管理(各人別控除実績簿の作成)することが必要となります。
ハ 毎月の源泉徴収をされる所得税額から定額減税する場合には、配偶者の情報は、扶養控除等申告書に記載されている「源泉控除対象配偶者」で合計所得金額の見積額が48万円以下である者で算出します。(「源泉控除対象配偶者」とは、同一生計配偶者に該当し、納税者本人の合計所得金額が900万円以下のケース)。
合計所得金額が見積で48万円超の配偶者については、配偶者自身の所得税において定額減税額の控除を受けることなります。
ニ 扶養控除等申告書に記載していない同一生計配偶者・16歳未満扶養親族に係る申告
この申告のケースとしては、控除対象者本人の合計所得金額が900万円を超えると見込まれるため、扶養控除等申告書に源泉控除対象配偶者として記載していない場合(非源泉控除対象同一生計配偶者)を想定しています。記載していない場合には、最初の月次減税事務を行うときまでに、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の提出を求め計算の人数に含めます。
上記ハとニのまとめ:繰返しとなりますが、月次減税事務の対象となる同一生計配偶者を把握する為に確認する申告書

同一生計配偶者の区分 確認する申告書
ハ 基準日在職者の合計所得金額900万円以下として源泉控除対象配偶者に該当し、扶養控除等申告書に記載がある場合扶養控除等申告書(A欄「源泉控除対象配偶者」)で所得の見積額が48万円以下で、かつ、居住者であることを確認する
ニ 基準日在職者の合計所得金額900万円超として源泉控除対象配偶者に該当しない為、扶養控除等申告書に記載が無い場合「令和6年分源泉徴収に係る定額減税のための申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書」(源泉徴収に係る申告書として使用)の提出を月次減税事務開始前までに受けて確認する

ホ 令和6年6月1日までに提出した扶養控除申告書に記載した扶養親族等に異動が生じたことにより定額減税の額が変わるときがあっても、月次減税額を再計算することは無く年末調整又は確定申告で調整することになります。
へ 給与明細には、定額減税の額等を記載します。なお、記載するスペースが無い場合には、別の用紙に記載して交付することも問題はありません。
例1:定額減税額(所得税)XXX円
例2:定額減税XXX円
ト 各人別控除実績簿と源泉徴収簿への記入
月次での控除前税額と月次減税額を必要に応じて各人別控除実績簿の作成、又は源泉徴収簿に記載することになります。
チ 納付書の記載と納付
各人毎の控除前税額から月次減税額の控除後の金額を集計し記載・納付します。

*なお、月次減額事務では納税者本人の合計所得金額を勘案しませんので、例え、年収2,000万円を超え年末調整を受けない事や合計所得金額1,805万円を超える事が見込まれている基準日在職者に対しても定額減税を行います(合計所得金額に関係なく、甲欄適用者の全員が月次減税の対象者)。
*この定額減税の適用は給与所得者が選択できるものではなく、基準日対象者の全員が定額減税の適用を受けなければなりません。
*2カ所から給与支払を受けている場合に、従たる給与(乙欄適用者)から定額減税の適用はありません。
*その年の12月31日現在の現況(納税者が死亡した場合には死亡時、又は出国の場合には出国時)で判定しますので、5月末以前に死亡した扶養親族の場合にも月次減税額の計算に含めることになります。
*他の会社で基準日在職者の人が月次減税を受けていて、再就職して来た場合には、月次減額は行わずに年末調整時に年調減税を行います。
各人別控除実績簿のイメージ:

基準日在職者(受給者の氏名)月次減税額の計算 月次減税――――――>
同一生計配偶者と扶養親族の人数① 月次減税額{(受給者本人+①人数)X 30,000円}② 令和6年6月25日給与支給 令和6年7月10日賞与支給 同一生計配偶者と扶養親族の人数① 月次減税額{(受給者本人+①人数)X 30,000円}② 令和6年6月25日給与支給 令和6年7月10日賞与支給令和6年6月25日給与支給令和6年7月10日賞与支給
控除前税額③②の内③から控除した金額④ 控除しきれない金額控除前税額⑥⑤の内⑥から控除した金額⑦控除しきれない金額(⑤―⑦)⑧
山田太郎3120,00011,750給与11,750108,25093,000賞与93,00015,250

② 年末調整での所得税額の控除(年調減税事務)
年調減税額の控除対象者は、原則として、年末調整の対象者となりますが、給与所得者以外の所得を含めた合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる人(判定は、基礎控除申告書に記載された合計所得金額)は、年調減税額(定額減税)を控除しないで年末調整を行うことになります。

年調減税事務年末調整で年調減税を受けられない非対象者
*令和6年6月1日以後の年末調整時に扶養控除等申告書を提出している人
*年の途中で年末調整の対象となる人も含みます(6月1日以後の中途での退職者、非居住者、等)
*年末調整の対象外の人(給与収入額が2,000万円超の人、年末調整時に扶養控除等申告書を提出していない人、等)。なお、2,000万円超の人は年末調整の対象外の為に、確定申告で年間の所得税額とこれまでの月次減税事務での定額減税額との精算を行うことになります。
乙欄・丙欄適用者は給与支払者のもとで定額減税の適用を受けられませんので、確定申告で受けることができます。
*令和6年5月31日以前の中途で年末調整の対象者
*合計所得金額が1,805万円超の人(給与所得以外の所得がある場合、年末調整で年調減税の適用が受けられませんので、年末調整時に月次減税事務での減税額の精算を行うことになります)

同一生計配偶者と扶養親族の人数の把握は、年末調整時の基礎控除申告書や配偶者控除等申告書(又は年末調整に係る定額減税のための申告書)から行うことになります。
人数に含まれる同一生計配偶者は、次のいずれかに該当する配偶者となります。
* 配偶者控除等申告書に記載された控除対象配偶者
* 合計所得合計が48万円以下の配偶者のうち、年調減税額の計算に含める配偶者として「年末調整に係る定額減税にための申告書」に記載された配偶者
なお、年調減税額の控除は、住宅ローン特別控除後の所得税額(年調所得税額)を限度に行います。又、年調所得税額から年調減税額の控除後の金額に102.1%を乗じて復興特別所得税を含めた年調年税額を計算します。
イ 令和6年分の年末調整の際には、年調所得税額(年税額)から定額減税の額を控除します。年末調整で再度計算をして差額があれば精算されます。
以下の様に計算されることになります。

区分 税額税額(年調所得税額から控除できないケース)
給与・賞与計①204,810204,810
算出所得税額(所得控除後の税額)②203,600203,600
住宅ローン特別控除額③40,000130,000
年調所得税額②-③=④163,60073,600
年調減税額(定額減税額)⑤120,000120,000
年調減税額控除後の年調所得税額④-⑤=⑥43,6000
控除外額(定額減税額のうち控除しきれなかった額)⑤-④046,400
年調年税額⑥X102.1%=⑦44,5000
差引超過額①-⑦=⑧ 160,310204,810
差引還付する税額⑧160,310204,810

ロ 源泉徴収票の摘要欄に控除した額等を記載します。
* 年末調整を行った一般的なケース
源泉徴収時所得減税額控除済額 120,000円、控除外額0円
源泉徴収時所得減税額控除済額 73,600円、控除外額46,400円
* 非控除対象配偶者分(合計所得金額が1千万円超)の定額減税の適用を受けたケース
  源泉徴収時所得減税額控除済額 120,000円、控除外額0円
  非控除対象配偶者減税有
* 非控除対象配偶者が障害者に該当するケース
  源泉徴収時所得減税額控除済額 120,000円、控除外額0円
  減税有 氏名XXXX(同配)

なお、年末調整を行っていない源泉徴収票(令和6年分の給与収入2千万円超、退職し再就職していない、等で年末調整の対象外)の摘要欄には、定額減税等を記載する必要はありません。なお、源泉徴収票の源泉徴収税額欄には、控除前税額から月次減税額の控除後の税額を記入することになります。
給与収入2千万円超の人は、確定申告で月次減税額を調整することになります。
なお、令和6年分の年末調整の結果、給与所得者の年調所得税額から控除しきれなかった年調減税額(定額減税額)については、源泉徴収票(給与支払報告書)に年調減税額の控除外額として記載しますが、令和7年1月以降の給与等支給の源泉徴収税額から控除することは出来ません。
退職所得と定額減税について:
退職所得の源泉徴収の際には定額減税は行いませんが、その退職所得を含めた所得に対する所得税について、確定申告により定額減税額の控除を受けることができます。従って、給与等に対する源泉徴収において控除しきれなかった定額減税額がある場合には、確定申告で退職所得を含めた所得に対する所得税から定額減税額を控除することができます。

③ 個人住民税の控除(給与からの特別徴収)
令和6年度分の個人住民税にあっては、納税義務者、控除対象配偶者及 び扶養親族1人につき1万円を乗じた金額を所得割額から控除する。
イ 特別徴収義務者(会社等)は、令和6年6月に支払う給与からの通常行う特別徴収は行いません。
ロ 令和6年分の個人住民税の額から定額減税の額を控除した金額を11分割し(端数調整あり)、令和6年7月~令和7年5月のそれぞれの給与から毎月徴収します。
ハ 上記の計算がされた住民税額(定額減税の額を含む)が各自治体から通知されてきます。
なお、居住者であって控除対象配偶者を除く同一生計配偶者である場合(納税義務者本人の令和5年の合計所得金額が1,000万円を超え、かつ、配偶者の合計所得金額が48万円以下の者)については、令和7年度分の住民税額から1万円を控除します。
ニ 給与支払報告書の摘要の欄に控除した額等を記載します。

※所得税の控除イメージ

※住民税の控除イメージ

出典:総務省「令和6年度地方税制改正(案)について」

ケース2 公的年金等の受給者に係る特別控除の額の控除
イ 令和6年6月以降に支払いを受ける厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法に基づく年金等は除く)につき源泉徴収をされる所得税額から定額減税の額を順次控除していきます。
ロ 公的年金等の受給者で、扶養親族に異動が生じたことにより定額減税の額が変わるときは、令和6年分の確定申告により調整します。
ハ 公的年金等のから特別徴収されるべき個人住民税から控除される定額減税の額は所得税と同様な対応となります。
ニ 源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載します。
*なお、主たる給与所得がある場合、給与等と公的年金等とのそれぞれの源泉徴収税額から定額減税を重複して受けることになりますが、この重複した控除については、確定申告で精算することになります。
 
ケース3 事業所得者等に係る定額減税の額の控除
イ 第1期分予定納税額(7月)から本人分に係る定額減税の額を控除します。
ロ 第1期分予定納税額から控除しきれない部分の金額は、第2期分予定納税額(11月)から控除します。
ハ 予定納税額の減額の承認申請をする場合には、同一生計配偶者・扶養者に係る定額減税の額についても控除を受けることができます。
ニ 令和6年分の期限の延期(令和6年分のみ)
① 第1期分予定納税額の納付期限を7月31日から9月30日に延期
② 予定納税額の減額の承認の申請の期限を7月15日から7月31日に延期
ホ 最終的には確定申告で所得税額から特別控除の額を控除して精算します。控除対象は住宅ローン控除後の所得税額からの控除となります。

ケース4 住民税の普通徴収の場合
イ 第1期分の納付額から定額減税の額を控除し、控除しきれない場合には第2期分以降の納付額から順次控除します。

以上から、給与所得者に係る所得税における定額減税の処理順番は下記の通りです。
① まずは6月以降の給与・賞与から順次控除(月次減税事務)
② その後に給与・賞与の場合は年末調整で計算をして差額があれば調整(年調減税事務)
③ 最後に確定申告におよぶ場合には、その計算をして差額があれば再度調整(確定申告)


出典:「令和5年10月26日 政府与党政策懇談会資料」(首相官邸ホームページ)

ケース5 定額減税しきれないと見込まれる方への給付金(調整給付)の場合
納税額が定額減税額以下で減税の恩恵を十分に受けられない世帯には、給付で差額を1万円単位で賄うことが公表されています。
具体的には、納税者本人と配偶者及び扶養親族の人数から算定される減税額(定額減税可能額)が、定額減税を行う前の所得税額・個人住民税所得割額を上回っており、定額減税しきれないと見込まれる場合は、個人住民税を課税する市区町村が定額減税しきれない差額を給付します。
① 年収270万円~310万円程度
差額分が給付されることになります。
② 年収250万円~270万円程度(住民税は納税しているが所得税は非課税)
1世帯あたり10万円が給付されます。給付は2024年2月~3月から開始。
③ 年収250程度以下(住民税と所得税ともに非課税)
1世帯あたり7万円が給付されます(別途、物価高騰対策として3万円給付が有りますので、合わせて10万円の給付)。給付は2023年内から順次開始。

2023年度(令和5年度) 個人確定申告

個人並びに個人事業者の方の令和5年度確定申告の時期がきました。 以下に、 令和5年度分の確定申告の提出期限及び確定申告の対象となる人(任意ではなく申告しなければならない人)、 等に関しまして概要を纏めてみました。 なお、 確定申告の対象者は前年度と変更はありませんが、 税金の申告は、 本人自ら課税金額や税額を計算し、 その税額を申告納付する制度「申告納税制度」を採用していますので、 期限後申告・納付となりますと延滞税等がかかります。
下記は、原則の確定申告の提出・納付期限となります。

令和5年度確定申告の提出・納付期限

所得の種類令和元年度申告期間・納付期限口座振替による納税日(振替日)
所得税 令和6年2月16日(金)から3月15日(金)
なお、還付申告は令和6年1月から可能
4月23日(火)
(新規の利用者の方は「預貯金口座振替依頼書」を申告期限までに要提出)
消費税令和6年1月 から4月1日(月)4月30(火)
贈与税令和6年2月 から3月15日(金)非該当

(1) 申告書の提出方法には、 ①持参(所轄税務署等の所定の提出場所)、 ②郵送、 ③電子申告(e-Tax利用によりデータ送信、この利用には事前準備が必要となりますが、 所得税では一定の第三者作成の提出書類を省略可の恩典があります)、の方法があります。
(2) 納税方法には、 ①持参(所轄税務署)、 ②金融機関から納付書を付けて納付、 ③ダイレクト納付(e-Taxの利用で、 かつ、 事前にダイレクト納付利用届出書の所轄税務署に要提出)、 ④インターネットバンキング・クレジットカードによる電子納税、⑤口座振替(上記を参照) の方法があります。
(3) 平成25年度から25年間には、 復興特別所得税として各年分の所得税額に2.1%の税率を掛けて計算した税額が発生することに留意してください。
(4) 平成28年分以降の確定申告にあたり、 マイナンバー(個人番号)の記載が必要となります。 申告書を書面提出する際には、 申告者のご本人の本人確認書類(番号確認書類及び身元確認書類)の提示又は写しの添付が必要です。 具体的な本人確認書類とは、
① マイナンバーカード(個人番号カード)
② 通知カード又は個人番号付の住民票の場合には、 身元確認書類として顔写真付きの運転免許証、 等の点、 又は顔写真付きでない場合には、 2点の確認書類(保険証、 年金手帳、 等)

A. 所得税
1. 令和5年度確定申告の主な改正・留意事項
令和2年度には基礎控除等に改正事項がありましたが、令和5年度には特筆すべき事項はありません。なお、申告書様式において、令和3年以降にいくつかの改訂があります。
(1)申告書Aは廃止され、申告書Bに一本化されます。
(2)納税者の押印欄の廃止
(3)国外居住親族の区分欄の創設:令和5年度から
(4)事業収入の区分欄の創設
帳簿記帳方法に関しまして、5区分から該当する数字(1から5)を記入:会計ソフト等での記帳の場合は数字2や簡易記帳の場合は4
(4)不動産収入の区分欄の創設
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例適用がある場合は、区分1欄に「1」を、区分2欄には上記(3)と同様な5区分から該当数字を記入
(5)雑収入「その他」欄の区分欄の新設
個人年金に係る収入がある場合は「1」、暗号資産取引に係る収入がある場合は「2」、双方の収入がある場合は「3」を区分欄に記載
(6)第1表~第5表の記入欄
① 第1表~第2表:記入欄の新設
①  第3表~第4表:記入欄の見直し
②  第5表:廃止(修正申告は第1表及び第2表で提出)
(7)青色申告決算書(一般用)の様式変更:令和5年度から
相手先の名称、所在地、登録番号(又は法人番号)、売上金額(収入)、仕入金額の各明細欄の創設

2. 令和5年度確定申告が必要となる対象者の方
1. 給与所得者(サラリーマンの方)
① 給与の年間収入金額が2,000万円超となる方(年末調整対象外の方)
② 給与(年末調整済)を1箇所から受けていて、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円超となる方 (給与収入額が2,000万円以下で、 給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合には申告の必要はありません)
③ 給与(源泉徴収済)を2箇所以上から受けていて、 年末調整されなかった給与の収入金額と、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円超となる方。
但し、 給与所得の収入金額から、 一定の所得控除の金額(雑損控除、 医療費控除、 寄付金控除及び基礎控除の項目を除く)の差引金額が150万円以下で、 かつ、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下となる方は、 申告不要となります。
2. 上記の給与所得者以外の方、 又は個人事業者で納付税額が発生する方
事業所得や不動産所得等がある方で、 各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
3. 源泉徴収の適用を受けない給与等の支払を受ける方
① 家事使用人等の方で給与から源泉所得税を徴収されていない方: 常時2人以下の家事使用人だけを雇用している使用人等には源泉徴収の義務が無いことから、 その使用人等から給与を受給されていた方
② 在日外国公館から給与等の支払を受けた方
③ 国外から給与、 退職金等の支払を受けた方
4. 同族会社の役員やその親族等で、 その会社から給与以外に利子、 家賃、 使用料等の支払を受けている方は、 その利子、 家賃、 使用料等は全て申告の対象  
5. 災害減免法の適用を受け給与に対して源泉徴収の猶予や源泉徴収税額の還付を受けていた方
6. 上記以外の方で納付税額がある方
各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
注1: 公的年金等に係る所得の確定申告不要制度
その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、 かつ、 その雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、 所得税の確定申告書の提出は必要ありません(申告されれば還付となる場合もありますので、 その場合には申告される方が有利となる場合もあります)。 なお、国外源泉で国内源泉税の対象とならない国外年金収入等がある場合には、この確定申告不要制度の適用対象外となります。
この所得税の申告不要となる場合であっても、 住民税の申告が必要となることもありますので注意が必要です。

公的年金等の受給者で所得税の申告不要な者でも、住民税の申告が以下のような場合には必要となります(主に住民税の減額になるケース有り)。
① 年金や給与の源泉徴収票に記載されていない所得控除(扶養控除、障害者控除、ひとり親控除、寡婦控除、医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料, 寄附金等)のある方は、住民税の申告で住民税が減少する可能性があります。
② 上記①の控除を追加したい方で、公的年金等収入が105万円(65歳以上の方は155万円)を超えている場合(この場合とは、公的年金等以外の合計所得金額が1千万円以下のケース)、或いは、超えていない場合でも公的年金等以外の所得金額がある場合。
③ 日本年金機構等に扶養親族等申告書を提出しているが、その内容に変更がある場合等。

注2: 確定申告不要(任意)となる方で申告すれば税金が戻ってくる方(還付申告者)
確定申告の総件数は2,000万件以上になるようですが、 この内の約半数近くが還付申告のものとなっているようです。 収め過ぎた税金を戻すためには確定申告書の提出が必要となります。 以下の様な場合には、 還付されるかもしれませんので調べてみてはどうでしょうか。
1. サラリーマンで年末調整を受けた方で次の年末調整では取扱わない項目があった方
① 一定金額以上の医療費(医療費控除: 限度額200万円)
生計を一にする家族の支払医療費が、 以下の金額以上になっている場合が対象:
所得が200万円以上: 支払医療費 – 保険給付金等 – 10万円 = 医療費控除額
所得が200万円未満: 支払医療費 – 保険給付金等 – 所得金額 × 5% = 医療費控除額
② 災害(地震、 台風等)や盗難により住宅や家財に被害を受けた場合(雑損控除)
災害の場合には、 災害減免法により所得税の軽減・減免を受けられることもあります。
③ 特定の寄付をされた方(寄付金控除や政党等寄付金特別控除)
④ 初めて住宅ローン控除を受ける方(住宅借入金等特別控除)
⑤ 年末調整時に提出ができなかった、 或いは洩れている控除項目がある方
生命保険料控除、 地震保険料控除、 配偶者特別控除、 各種の扶養者控除等
⑥ 中途退職され再就職しなかった方
退職までの給与収入に対する源泉徴収税額が年税額として過大となっているケースが殆どです。 又、 退職金に対して20%源泉になっている場合も可能性がありますし、退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になっている方。
2. 上場株式等に係る配当所得(申告分離課税選択)と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算
3. 予定納税されたが確定申告不要となった方
4. 所得が少ない状況で配当や原稿料収入等からの源泉徴収税額が、 本来の納付すべき税額よりも多額となっている方
5. 外国税額控除の適用がある方
6. 申告の要件となっている項目がある方
① その年の翌年以降に純損失又は雑損失の繰越控除を受けるため、 ② その年分の純損失の金額について純損失の繰戻しによる還付を受けるため、 ③ 居住用財産の買換又は特定居住用財産の譲渡損失及び繰越控除を受けるため、 等には確定申告の提出が必要となります。

B. 贈与税
税制改正により、令和6年1月から生前贈与(暦年課税及び相続時精算課税)の適用内容に変更がありましたので、今後の適用プランを再検討されても良いかも知れません。
ご存知の様に、 暦年課税制度の場合には、下記に示す様に年間に受けた贈与額が110万円以下ならば非課税範囲のために贈与税の申告等は必要ありません。
1. 年間合計で110万円超の財産贈与(個人からの土地、 建物、 現金、 預貯金、 株式、 債権等の財産の贈与)を受けた方(暦年課税で下記の②の選択者を除く)
2. 相続時精算課税制度(60歳以上の父や母の直系卑属からの贈与者ごとに累積で特別控除額2,500万円)の選択者で財産贈与を受けた方(18歳以上の推定相続人の子、 並びに孫に限る)
3. 直近尊属から住宅取得等資金贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
特定受贈者(贈与年の1月1日現在18歳以上で合計所得金額2,000万円以下の者)が、 その直系尊属(親、祖父母等)から受ける居住用家屋の新築・取得・増改築等用に住宅取得等資金の贈与については、非課税措置の適用期限を令和8年12月31日まで延長し、 非課税限度額は以下のようになります。

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間良質な住宅用家屋(省エネ等住宅)左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
令和2年4月~令和3年12月1,500万円1,000万円
令和4年1月~令和8年12月(契約の締結時期を問わない)1,000万円500万円

4. 配偶者控除の特例(控除額2,000万円)を適用し、 配偶者から居住用不動産又はその取得資金の贈与を受けた方(婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与に限る)
5. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度、等
平成25年4月1日から令和8年3月31日までの期間に直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 この制度適用のためには、 受贈者は教育資金非課税申告書を金融機関等の経由で税務署に提出する必要がありますが、 申込時に対応されていると思いますので特に問題となることはないでしょう。

C. 消費税
令和5年10月よりインボイス制度が始まり、これまで免税事業者でしたが、インボイス発行事業者登録された個人事業者の方は、10月から12月の3ヶ月間の課税売上高に対して2割特例等を適用して消費税の申告が必要となります。
通常、個人事業者で下記に該当する方は納税義務者(課税事業者)として申告する必要があります。
1. 基準期間となる前々年度(令和3年度)の課税売上高が1,000万円超の事業者の方
2. 特定期間となる前年(令和4年度)の1月1日から6ケ月間の課税売上高が1,000万円超で、 かつ、 同期間の給与等支払総額が1,000万円超の事業者の方
3. 免税事業者となる方が、 課税事業者となることを選択(消費税課税事業者選択届出書を事前に提出)している方(簡易課税選択者も含む)
納税義務者の判定上の留意事項:
(1) 基準期間の課税売上高は、 消費税込の金額となり、 事業用資産(住宅用として貸付けていた建物等)の譲渡の対価金額も含まれます。
(2) 被相続人(亡くなられた方)の事業を相続により承継した相続人には、 被相続人が提出していた各種の届出書の効力は及ばないので、 新たに提出する必要があります。
(3) 新規開業又は相続により事業を承継したときに、 消費税課税事業者選択届出書を提出した場合の適用開始時期は、 当該課税期間か翌課税期間かを選択できます。
(4) 消費税課税事業者選択届出書を提出されている場合には、 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、 その効力が消滅することはありません。

以上が、所得税、贈与税、消費税に関する確定申告の対象者の概要です。 

国税庁 令和7年1月より税務申告書等の郵送・持参における収受日付印の押なつ廃止

国税庁は、令和7年1月より納税者が税務署等に税務申告書等の控えを郵送又は持参した場合(書面での提出)、これまでの「収受日付印(税務署名、年月日等)」の押なつを行わないことを公表しました。対象は、税務署等に提出する全ての文書となっています。
納税者が申告書等を提出した事実を確認したい場合は、以下の方法となります。
(1)e-Tax利用による提出
メッセージボックスに格納された受信通知により確認することが可能。
(2)書面での提出
所得税の申告書等については、オンライン申請による「申告書等情報取得サービス」や「保有個人情報の開示請求」、「納税証明書の交付請求」により確認することも可能。 なお、令和7年1月以降、当分の間の対応として、窓口で交付する「リ ーフレット」(今般の見直しの内容と申告書等の提出事実等の確認方法をご案内するもの)に申告書等を収受した「日付」や「税務署名」を記載した上で、 希望者にお渡しすることを検討しています、とのことです。

2024年度(令和6年度)税制改正大綱:所得税、贈与税・相続税、消費税、法人税

2023年(令和5年)12月15日に自民、公明党の両党は2024年度(令和6年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の主な概要(所得税、贈与税・相続税、消費税、法人税)となります。
なお、改正法は、2024年(令和6年)3月末に可決・成立し、施行日は原則として4月1日となる予定です(以下は改正案ですので、成立後の内容で確認をお願いします)。

個人所得課税
1.所得税・個人住民税の定額減税(特別控除)
物価高を受けた家計支援策の一環の一時的な措置として、令和6年分の所得税と住民税について、定額による特別控除を実施します。
(1)対象者の要件
居住者であり令和6年分の所得税・住民税(個人住民税は、令和5年分の合計所得金額)に係る合計所得金額が1,805万円以下(給与収入の場合には2,000万円以下)である者(年収2,000万円超は対象外)。
(2)特別控除の額
(所得税):所得税額を限度
 本人分 3万円 + (同一生計配偶者+扶養親族)の人数 × 3万円
(住民税):所得割額を限度
 本人分 1万円 + (控除対象配偶者+扶養親族)の人数 × 1万円
注1: 人数のカウントは全て居住者に限定
注2: 配偶者等の定義は下記の通り
① 同一生計配偶者:生計を一にする配偶者で合計所得金額が48 万円以下(所得金額に関係なく青色・白色の事業専従者の方は該当しない・含まれません)
② 扶養親族:生計を一にする親族で合計所得金額が48 万円以下(所得金額に関係なく青色・白色の事業専従者の方は該当しない・含まれません)
③ 控除対象配偶者:同一生計配偶者に該当し、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合
(3)特別控除の実施方法
特別控除は、給与所得者、公的年金受給者、個人事業者、その他者ごとに対応が、以下の様に異なります。
ケース1 給与所得者に係る特別控除の額の控除
① 毎月の給与からの所得税額の控除
イ 令和6年6月以後最初に支払いを受ける給与等(賞与含む)につき源泉徴収をされる所得税額から特別控除の額を控除します。
ロ 控除しきれない控除の額がある場合には、それ以降に支払う給与等(同年の最終給与支払を除く)につき源泉徴収をされる所得税額から順次控除をしていきます。
ハ 毎月の源泉徴収をされる所得税額から特別控除する場合には、配偶者の情報は「源泉控除対象配偶者」で合計所得金額が48万円以下である者で算出します。(「源泉控除対象配偶者」とは、同一生計配偶者に該当し、納税者本人の合計所得金額が900万円以下のケース)。
ニ 扶養控除申告書に記載した扶養親族等に異動が生じたことにより特別控除の額が変わるときは、年末調整により調整します。
ホ 給与明細には、特別控除の額等を記載します。

② 年末調整での所得税額の控除
イ 令和6年分の年末調整の際には、年税額から特別控除の額を控除します。年末調整で再度計算をして差額があれば精算されます。
ロ 源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載します。

③ 個人住民税の控除
イ 特別徴収義務者(会社等)は、令和6年6月に支払う給与からの特別徴収は行いません。
ロ 令和6年分の個人住民税の額から特別控除の額を控除した金額を11分割し(端数調整あり)、令和6年7月~令和7年5月のそれぞれの給与から毎月徴収します。
ハ 上記の計算がされた住民税額(特別徴収額を含む)が各自治体から通知されてきます。
なお、居住者であって控除対象配偶者を除く同一生計配偶者である場合(令和5年の合計所得金額が1,000万円を超える)については、令和7年度分の住民税額から1万円を控除します。
ニ 給与支払報告書の摘要の欄に控除した額等を記載します。

ケース2 公的年金等の受給者に係る特別控除の額の控除
イ 令和6年6月以降に支払いを受ける公的年金等につき源泉徴収をされる所得税額から特別控除の額を順次控除していきます。
ロ 公的年金等の受給者で、扶養親族に異動が生じたことにより特別控除の額が変わるときは、令和6年分の確定申告により調整します。
ハ 公的年金等のから特別徴収されるべき個人住民税から控除される特別控除額は所得税と同様な対応となります。
ニ 源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載します。
 
ケース3 事業所得者等に係る特別控除の額の控除
イ 第1期分予定納税額(7月)から本人分に係る特別控除の額を控除します。
ロ 第1期分予定納税額から控除しきれない部分の金額は、第2期分予定納税額(11月)から控除します。
ハ 予定納税額の減額の承認申請をする場合には、同一生計配偶者・扶養者に係る特別控除の額についても控除を受けることができます。
ニ 令和6年分の期限の延期(令和6年分のみ)
① 第1期分予定納税額の納付期限を7月31日から9月30日に延期
② 予定納税額の減額の承認の申請の期限を7月15日から7月31日に延期
ホ 最終的には確定申告で所得税額から特別控除の額を控除して精算します。控除対象は住宅ローン控除後の所得税額からの控除となります。

ケース4 住民税の普通徴収の場合
イ 第1期分の納付額から特別控除の額を控除し、控除しきれない場合には第2期分以降の納付額から順次控除します。

以上から、給与所得者・公的年金受給者の特別控除の順番は次の通りです。
① まずは6月以降の給与又は年金から順次控除(配偶者・扶養者の人数カウントは暫定的)
② その後に給与の場合は年末調整で計算をして差額があれば調整
③ 最後に確定申告で計算をして差額があれば再度調整

ケース5 定額減税の満額をカバーできない場合
納税額が定額減税額以下で減税の恩恵を十分に受けられない世帯には、給付で差額を1万円単位で賄うことが公表されています。
① 年収270万円~310万円程度
差額分が給付されることになります。
② 年収250万円~270万円程度(住民税は納税しているが所得税は非課税)
1世帯あたり10万円が給付されます。給付は2024年2月~3月から開始。
③ 年収250程度以下(住民税と所得税ともに非課税)
1世帯あたり7万円が給付されます(別途、物価高騰対策として3万円給付が有りますので、合わせて10万円の給付)。給付は年内から順次開始。

2.ストックオプション税制の要件緩和
スタートアップ企業の資金面や人材面での課題を税制面から後押しすることを目的として、税制適格ストック オプション(権利行使時に経済的利益が非課税(売却時に課税となるので課税の繰延べ)となる税制適格ストックオプション(株式購入権))の利便性の向上や権利行使価額の上限額の引上げなど要件が、次の通り緩和されます。
① 保管委託要件の撤廃
権利行使で取得した株式を証券会社等に保管委託することが要件でありましたが、下記の要件を満たすストックオプションを上場前に権利行使する場合に撤廃されます。
イ 権利行使により交付される株式が譲渡制限株式であること
ロ ストックオプションを発行した会社自身により当該譲渡制限株式の管理がされること
② 年間の権利行使価額の限度額の引き上げ

項目現行改正
設立から5年未満の株式会社1,200万円2,400万円
設立以後5年以上20年未満の会社で、①未上場会社又は②上場会社の内上場後5年未満の会社1,200万円3,600万円

③ 社外高度人材である特定従事者がストックオプション税制の適用を受けるための要件を緩和
イ 認定対象企業の要件のうち、ベンチャーキャピタルからの出資を受けた時点での要件(資本金5億円未満かつ従業員数900人以下)が撤廃されます。
ロ 社外高度人材の要件のうち、上場企業役員の経験については3年以上の実務要件を1年以上に緩和し、それ以外の専門家については、実務要件を廃止します。
ハ 社外高度人材の要件に一定の者(教授、一定の実務経験がある未上場企業役員・上場企業の重要な使用人、など)が追加となります。

 現行改正
① 株式保管委託要件非上場段階で権利行使後、証券会社等に保管委託することが必要新たな株式管理スキームを創設し、発行会社による株式の管理も可能とする
② 権利行使価額の限度額1,200万円/年設立5年未満の会社が付与したものは、2,400万円/年
設立5年以上20年未満の会社で非上場又は上場後5年未満の上場企業が付与したものは、3,600万円/年
③ 社外高度人材一定の要件を満たした社外高度人材が対象新たに、非上場企業の役員経験者等を追加し、国家資格保有者等に求めていた3年以上の実務経験の要件を撤廃するなど、対象を拡大

3.子育て支援に関する政策税制(住宅ローン控除等)
子育て世帯に対する支援策として、住宅ローン控除と住宅リフォーム税制について一定の拡充が行われます。令和6年度(令和6年1月1日から同年12月31日までに居住し住宅ローン契約)に限りの措置として先行的に対応とし、他は令和7年度以降については、次年度の令和7年度税制改正にて検討を行うことになっています。
(1)対象の子育て世帯とは
以下のいずれかに該当する者=「子育て特例対象個人」(子育て世帯及び若者夫婦世帯)となっています。
① 自分の年齢が40歳未満で、かつ、配偶者を有する者
② 自分の年齢が40歳以上で、かつ、40歳未満の配偶者を有する者
③ 自分の年齢が40歳以上で、かつ、年齢19歳未満の扶養親族を有する者
なお、その年分の合計所得金額が2,000万円以下である者に限られます。
(2)住宅ローン控除の拡充
① 子育て特例対象個人が、認定住宅等の新築等をして居住の用に供した場合の、借入限度額は次の通りとなります(上乗せ増額)。(控除率は0.7%)

住宅の区分現行改正
認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅)4,500万円5,000万円
ZEH水準省エネ住3,500万円4,500万円
省エネ基準適合住宅3,000万円4,500万円

② 令和5年末までに建築確認を受けた「認定住宅等の新築等」については、床面積要件が緩和(通常は50㎡以上の床面積要件が、合計所得金額1,000万円以下に限り40㎡以上に緩和)されていますが、これを令和6年末まで延長となります。
「認定住宅等の新築等」とは、認定住宅(認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅)、ZEH準省エネ住宅及び省エネ基準適合住宅をいい、建築後使用されたことのないものの取得又は買取再販認定住宅等の取得をいう。
③ 子育て特例対象個人である東日本大震災(震災特例法)の住宅被災者が、認定住宅等の新築等をして居住の用に供した場合の、借入限度額は次の通りとなります(上乗せ増額)。(控除率は0.9%)

住宅の区分現行改正
上記①の認定住宅等4,500万円5,000万円

④ 住宅リフォーム税制の拡充
子育て特例対象個人が、所有する居住用家屋について一定の子育て対応改修工事をして、令和6年4月~12月までに居住した場合、その工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%をその年分の所得税額から控除できます。
⑤ 生命保険料控除の拡充(令和7年度税制改正見込み)
子育て世帯に対する新生命保険料に係る一般枠(遺族保障)について、23歳未満の扶養親族を有する場合には、現行の適用限度額4万円から2万円の上乗せがあります(改正後6万円)。なお、生命保険の控除総額の上限は、現行の12万円からの変更はありません。
又、全世帯に対して一時払生命保険料については、これを控除の適用対象から除外となります。
⑥ 扶養控除等の見直し(令和7年度税制改正見込み)
児童手当については、所得制限が撤廃されるとともに、支給期間について高校生年代まで延長されることになります。この様に児童手当の対象が高校生まで拡大する代わりに16歳から18歳までの扶養控除について、縮小することが予定されています。子ども1人につき所得税控除は38万円から25万円に、住民税控除は33万円から12万円にそれぞれ引下げられます。
なお、ひとり親控除について、所得基準の引上げ(5百万円以下から10百万円以下へ)や控除額の引上げ(所得税では35万円から38万円へ、住民税では30万円から33万円へ)、等です。

4.土地・住宅税制における主な特例期限の延長

特例項目適用期限の延長摘要
① 特定の民間住宅造成事業に為の土地等の譲渡における1,500万円特別控除3年延長(令和8年12月31日まで)法人税も同様
② 特定居住用財産の買換え及び交換時の長期譲渡所得課税特例2年延長(令和7年12月31日まで)
③ 居住用財産の買換え等の場合・特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除2年延長(令和7年12月31日まで)
④ 既存住宅の耐震改修における所得税額の特別控除2年延長(令和7年12月31日まで)
⑤ 既存住宅に係る特定改修工事(バリアフリー・省エネ・三世代同居・耐久性向上)おける所得税額の特別控除に2年延長(令和7年12月31日まで)合計所得金額要件を3千万円から2千万円に引下げ
⑥ 認定住宅等の新築等における所得税額の特別控除2年延長(令和7年12月31日まで)合計所得金額要件を3千万円から2千万円に引下げ

5.政治活動の寄附金控除適用期限の延長
5年延長。

6.e-Taxによる支払調書等の提出枚数基準
e-Taxによる支払調書等の提出枚数が、現行100枚以上から30枚以上に引下げられます。
改正は、令和9年1月1日以後の提出分から適用。

7.国民健康保険税の課税限度額の引上げ
(1)後期高齢者医療保険料
現行22万円から24万円に引上げられます。
(2)国民健康保険料の世帯の軽減判定所得
① 5割軽減対象となる世帯の被保険者等の数に乗ずべき金額が、現行29万円から29.5万円に引上げ。
② 2割軽減対象となる世帯の被保険者等の数に乗ずべき金額が、現行53.5万円から54.5万円に引上げ。

資産課税
1.住宅資金贈与の非課税措置延長
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等について、3年間延長(令和8年12月31日まで)となります。
適用時期:令和 6年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用。

2.法人版事業承継税制の特例承継計画の提出期限延長
非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度(法人版事業承継税制)について、現行では令和6年3月末までである特例承継計画の提出期限を、令和8年3月末までの延長となります。(適用期限は令和9年12月末のままで変更無し)

3.個人版事業承継税制の特例承継計画の提出期限延長
個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(個人版事業承継税制)について、現行では令和6年3月末までである個人事業承継計画の提出期限を、令和8年3月末までの延長となります。(適用期限は令和10年12月末のままで変更無し)

4.特定贈与者から住宅資金贈与における相続時精算課税制度の特例適用期限の延長
適用期限を3年延長(令和8年12月31日まで)します。

5. 不動産譲渡契約書の印紙税率の軽減措置適用期限の延長
適用期限を3年延長(令和9年3月末まで)します。

6.土地に係る固定資産税の負担調整措置及び条例減額制度の延長
3年に一度の固定資産税評価額の評価替えの年にあたる令和6年度の評価替えにおいては、負担水準のばらつきが拡大することが見込まれるため、税負担の公平性の観点から段階的に負担水準の均衡化に向けた取組みが求められることから、現行の①負担調整措置②条例減額制度③下落修正措置の減額制度について令和8年度まで3年間適用期限を延長となります。

法人課税
1. 賃上促進税制(大企業・中堅企業向け)
物価高に負けない構造的・持続的な賃上げの動きをより多くの国民に拡げ、効果を深めるため、賃上げ促進税制を強化することになります。
大企業・中堅企業向けの人材促進税制について、次の通り見直しされます(適用期間:令和6年4月1日~令和9年3月31日の開始事業年度)。
① 大企業向け控除率の改正

適用要件現行 改正 
基本部分】
継続雇用者給与等支給額の増加割合
増加割合税額控除率増加割合税額控除率
3%以上15%3%以上10%
4%以上25%4%以上15%
5%以上20%
7%以上25%
上乗せ①】
教育訓練費の増加割合
20%以上+5%10%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加+5%
【上乗せ②】
(注1)
女性子育て支援
+5%
最大控除率30%35%

注1: 「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の厚生労働大臣認定認定)」又は「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の厚生労働大臣認定認定)」を受けている場合

② 大企業のうちの中堅企業向け控除率の改正(従業員数が2000人以下の企業)
新たな位置付けとなる中堅企業は、「中小企業以外の企業」で「従業員数が2000人以下の企業」かつ「グループ全体で1万人を超える企業グループに属さない企業」である中堅企業向けにおける人材促進税制について、次の通りとなります(適用期間:令和6年4月1日~令和9年3月31日の開始事業年度)。

適用要件現行 改正 
増加割合税額控除率増加割合税額控除率
【基本部分】
継続雇用者給与等支給額の増加割合
3%以上15%3%以上10%
4%以上25%4%以上+15%
【上乗せ①】
教育訓練費の増加割合
20%以上+5%10%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加+5%
【上乗せ②】
(注1)
女性子育て支援
+5%
最大控除率30%35%

注1:女性子育て支援上乗せ措置に「3段階目のえるぼし認定を受けている企業」を追加

③ マルチステークホルダー方針を公表しなければならない企業の範囲に従業員数2,000人超の企業を追加

現行改正
資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業のみ① 資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業、又は
② 従業員数2,000人を超える企業

2.賃上促進税制(中小企業)
中小企業向けの人材促進税制について、次の通り見直しをします(適用期間:令和6年4月1日~令和9年3月31日の開始事業年度)。
① 控除率の改正

適用要件現行 改正 
増加割合税額控除率増加割合税額控除率
【基本部分】
雇用者給与等支給額の増加割合
1.5%以上15%1.5%以上15%
2.5%以上30%2.5%以上30%
上乗せ①】
教育訓練費の増加割合
10%以上+10%5%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加+10%
【上乗せ②】 (注1)
女性子育て支援
+5%
最大控除率40%45%

注1: 以下のいずれかの認定を受けてる場合
・「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の厚生労働大臣認定)」
・「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の厚生労働大臣認定)」
・2段階目以上の「プラチナくるみん認定」又はプラチナ「えるぼし認定」
② 法人税額から控除がしきれない控除額があるときは、5年間の繰越控除制度の追加
赤字である場合や控除上限(法人税額の20%)に抵触しても、最大限の控除が取れるように申告をする必要があります。
なお、繰越税額控除制度は、持続的な賃上げを実現する観点から、繰越控除事業年度において雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超える場合に限り適用できものとなっています。

3.特定税額控除不適用規定の見直し
大企業向けの特定税額控除不適用規定について見直しを行います。
① 要件が強化される法人について、「資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業」のみでなく、「従業員数2,000人を超える企業」の追加となります。なお、前年度が赤字の場合には、従前より要件強化の対象外とされます。
② 要件が強化される法人についての要件(いずれかの要件に該当しないと特定税額控除規定の適用を受けることができません)。

要件現行改正
所得金額対前年比で減少変更なし
継続雇用者の給与等支給額対前年増加率1%以上変更なし
国内設備投資額減価償却費の30%超減価償却費の40%超

制限対象の特定税額控除規定の項目:
・研究開発税制(総額型、オープンイノベーション型)
・地域未来投資促進税制
・5G導入促進税制
・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
・デジタルトランスフォーメーション投資促進税制

4.中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充
中小企業事業再編投資損失準備金制度について、現行制度に新制度を追加して、適用を令和9年3月末までの延長となります。
① 特別事業再編計画(仮)」の認定を受けた事業者が対象。
② 購入する株式の金額が1億円以上100億円以下であることが要件。
③ 準備金の積立が出来る金額は、初回が株式取得価額の90%、二回目以降は100%
(現行制度では70%)。
④ 準備金取崩の期間が積立から10年経過後(現行制度では積立から5年経過後)以降5年間に渡って取崩を行って益金に算入となります。

5.国内投資促進税制(戦略分野国内生産促進税制・イノベーションボックス税制)
(1)戦略分野国内生産促進税制の創設
GX、DX, 経済安全保障という戦略分野において、民間として事業採算性に乗りにくいところ、国として特段に戦略的な長期投資が不可欠となる投資を選択し、それらを対象として生産・販売量に比例して法人税額を控除する戦略分野国内生産促進税制が創設されます。
① 産業競争力強化法の改正を前提に事業適応計画の認定が必要。
② 計画に基づいて産業競争力基盤強化商品の生産をするための設備(産業競争力基盤強化商品生産用資産)の購入が対象。
③ 認定後10年間に渡って販売数量に応じて税額控除を行っていく。
④ 控除が出来ない場合についても3年間~4年間の繰越控除がある。

(2)イノベーションボックス税制の創設
イノベーションの国際競争が激化する中、研究開発拠点としての立地競争力を強化し、民間による無形資産投資を後押しすることを目的として、特許やソフトウェア等の知財から生じる所得に減税措置を適用するイノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)が創設されます。
① 無形資産への国内投資を後押しするための制度。
② 内国法人等に対して特定特許検討の譲渡・貸付を行った場合に、その事業から発生する一定の課税所得の30%相当額を損金に算入する。
② 国外への投資については制度対象外であり、国内投資のみが対象。
  
6.交際費の損金不算入制度の除外措置拡大
(1)損金不算入特例の適用期限を3年延長(令和9年3月31日までの開始事業年度)となります。
① 飲食費(社内接待費を除く)の50%を損金算入できる特例措置{中小企業・大企業(資本金の額等が100憶円以下)}
③  交際費等が800万円までの全額損金算入できる特例措置(中小企業のみ)
(2)損金不算入の1人あたり飲食費の金額基準引上げ
損金不算入となる交際費等から除外される、いわゆる5,000円以下飲食費(社外との飲食に限る)の範囲について、会議費の実態を踏まえ、金額要件を1人当たり5,000円以下から10,000円以下に引上げられます。
改正適用は、令和6年4月1日以降の支出飲食費から適用。
注:インボイス制度の適格請求書に該当しない飲食費の場合には、税抜き処理における控除対象外消費税も上乗せした金額で単価判定が必要になるため注意が必要。

7.外形標準課税制度の対象拡大
法人事業税のうち、資本金1億円超の法人に対して、収益配分額(報酬給与額、純支払利子及び純支払賃借料の合計額)と単年度損益との合計額を課税標準とする付加価値割と、資本金等の額を課税標準とする資本割からなる外形標準課税が課されています。 小規模な企業の経営に与える影響等に配慮していた外形標準課税制度の適用対象法人の範囲について、現行の基準(資本金の額が1億円超の法人)を維持したうえで、減資への対応として範囲を拡大します。
(1)減資への対応
当分の間、以下の全てに該当する法人を外形標準課税の対象とする。
① 前事業年度に外形標準課税の対象であること(注1)
② 当該事業年度に資本金が1億円以下であること
③ 当該事業年度に資本金と資本剰余金の合計額が 10 億円を超えること
注1:公布日(令和6年3月末)以後に減資をして資本金が1億円以下になった法人については、①に該当するものとして扱われる。
改正適用開始時期は、令和7年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用。
(2)100%子法人等への対応
以下の全てに該当する100%子会社法人を外形標準課税の対象とします。
① 資本金と資本剰余金の合計額が 50 億円を超える外形対象法人の100%子法人等
② 当該事業年度に資本金が1億円以下であること
③ 当該事業年度に資本金と資本剰余金の合計額(注2)が 2億円を超えること
ただし、産業競争力強化法の改正を前提に、同法による認定を受けた事業者がM&Aを通じ て買収した100%子法人等については、5年間対象外とします。
注2:公布日以後に、子会社から親会社への資本剰余金から配当等があった場合には、当該配当金額を加算した金額で判定します。
適用開始時期:令和8年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用。
上記改正により、新たに外形標準課税の対象となる法人に係る税負担の緩和措置が講じられ、従来の課税方式で計算した税額を超えることとなる額のうち、次の金額を法人事業税から控除することになります。
(イ)令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度
 当該超える金額の3分の2を控除する。
(ロ)令和9年4月1日から令和10年3月31日までの間に開始する事業年度
 当該超える金額の3分の1を控除する。

8.中小企業者以外(大企業)の欠損金繰戻による還付制度の不適用措置の延長
適用期限を2年延長します(令和8年3月31日までの終了事業年度まで)。

9.中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入特例範囲等
少額減価償却資産の損金算入特例とは、中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、年間合計300万円までを限度に、即時償却 (全額損金算入)することが可能とする特例。
(1)e-Taxにより法人税申告を提出しなければならない法人のうち、常時使用する従業員数が300人を超える法人を適用法人から除外されます。
(2)適用期限を2年延長(令和8年3月31日までの開始事業年度)します。

10.  発行者以外の第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し
発行者以外が保有する暗号資産のうち活発な市場が存在するものについては、期末に時価評価し、評価損益は課税の対象とされていますが、法人が有する暗号資産で、以下の要件を満たす暗号資産は、期末時価評価課税の対象外となります。
① 他の者に移転できないようにするための技術的措置がとられていること等その暗号資産の譲渡についての一定の制限が付されていること。
② 上記①の制限が付されていることを認定資金決済事業者協会において公表させるため、その暗号資産を有する者等が上記①の制限が付されている旨の暗号資産交換業者に対する通知等をしていること。

11. 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
法制上の措置を講ずる主旨を令和6年度税制改正に関する法律の附則において明らかにすることになっています。

以上

消費税(インボイス制度)
1.国外事業者に係る消費税の課税の適正化(プラットフォーム課税の導入)
デジタルサービス市場の拡大によりプラットフォームを介して多くの国外事業者が国内市場に参入している中で、国外事業者の納める消費税が課題がとなっています。国内外の事業者間の競争条件の公平性や適正な課税確保の為に、プラットフォーム課税(事業者に代わってプラットフォーム事業者に納税義務を課す制度)を導入することになります。
(1)国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う消費者向けの電気通信利用役務の提供のうち、特定プラットフォーム事業者を介したものについては、その特定プラットフォーム事業者が行ったものとみなされます。
(2)その課税期間における上記の取引金額が50億円を超える場合には、特定プラットフォーム事業者として指定されます。
(3)適用開始時期:令和7年4月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供からとなります。
2.国外事業者に係る事業者免税点制度の特例の見直し
(1)特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例について、給与支払額による判定の対象から国外事業者を除外します。
(2)資本金1,000万円以上の新設法人に対する納税義務の免除の特例について、外国法人は基準期間を有する場合も、国内事業開始時点で本特例の適用の判定を行うことになります。
適用開始時期:令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用。
3.国外事業者に係る簡易課税制度等の見直し
その課税期間の初日において恒久的施設を有しない国外事業者については、簡易課税制度及び2割特例の適用を認めないことになります。
適用開始時期:令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用。
4.高額特定資産の範囲拡大
高額特定資産を取得し、仕入税額控除の適用を受けた場合には、その後2年間、消費税の原則課税が強制されます(免税・簡易課税適用不可)。この高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度及び簡易課税制度の制限措置の対象に、その課税期間において取得した金又は白金の地金等の合計額が200万円以上である場合が加えられます。
5.免税購入された物品の課税仕入れについて仕入税額控除の制限
外国人旅行者向け消費税免税制度により、横流しされた免税購入物品と知りながら行った課税仕入れについては、仕入税額控除制度の適用を認めないことになります。
適用開始時期:令和6年4月1日以後に国内において行う課税仕入から適用。
なお、不正排除から免税購入物品に関して、免税点が販売時に外国人旅行者から消費税相当額を預り、出国時に持ち出しが確認された場合に、旅行者にその消費税相当額を返金する仕組みとします(令和7年度税制改正見込み)。
6.インボイス制度の自販機特例・入場券特例についての帳簿記載要件を緩和
帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められるインボイス制度の自販機特例・入場券特例については、帳簿へ住所等の記載が必要でありましたが、不要となります。(令和5年10月まで遡って不要とします)
7.インボイス発行事業者以外からの課税仕入に係る税額控除の経過措置の除外
一のインボイス発行事業者以外からの課税仕入額の合計額が、その年又はその事業年度で10億円を超える場合には、その超える部分の課税仕入に対して経過措置の適用除外となります。
適用開始時期:令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用。

以上

ふるさと納税における寄附金限度額の目安計算

2023年(令和5年)も残すところ約1ヵ月となりました。近年、ふるさと納税(寄附金)の内容が理解され利用される方が多くなり、特に12月中にその頻度が高いようです。この傾向は、当該年度の年間収入・所得が予想されることで利用のメリット上限、いわゆる寄附金限度額をある程度考慮(予想)されてのことかと思われます。ご存知の様に加熱するふるさと納税の状況から、所定の基準に適合する都道府県等をふるさと納税適用の対象とされています。
①寄附金の募集を適正に実施する都道府県等
②上記都道府県等で返礼品は、以下のいずれも満たす都道府県等であること。
(イ)返礼品の返礼割合は3割以下とすること
(ロ)返礼品は地場産品とすること
このふるさと納税は寄附金として、個人所得税の寄附金の所得控除と個人住民税の寄附金の税額控除により、一定額が本来納める税額から減額・控除に代わるものであり、メリット上限(寄附金限度額)が存在します。
例えば、給与収入500万円(給与所得356万円)、社会保険料74万円、配偶者控除38万円、基礎控除48万円(住民税では43万円)の場合におけるふるさと納税の寄附金限度額は以下の算式で計算出来ます。
個人住民税所得割額X 20% ÷ (90% - 所得税率X 1.021)+ 2,000 =寄附金限度額
ご存知の様に所得税率は、累進税率の7段階に分かれていますので、次の表が寄附金限度額の目安となるかと思います(総合課税と申告分離課税も含む場合の適用時における目安)。

所得税の課税所得額所得税率寄附金限度額
195万円未満5%個人住民税所得割額 X 23.558% + 2千円
195~330万円未満10%個人住民税所得割額 X 25.065% + 2千円
330~695万円未満20%個人住民税所得割額 X 28.743% + 2千円
695~900万円未満23%個人住民税所得割額 X 30.067% + 2千円
900~1,800万円未満33%個人住民税所得割額 X 35.519% + 2千円
1,800~4,000万円未満40%個人住民税所得割額 X 40.683% + 2千円
4,000万円以上45%個人住民税所得割額 X 45.397% + 2千円

従って、
所得税の課税所得額:
所得3,560,000 - (社会保険料740,000 + 配偶者控除380,000+基礎控除480,000) = 課税所得金額1,960,000
適用所得税率は、10%となります。
個人住民税所得割額:
3,560,000 - (740,000 + 380,000+430,000) = 2,010,000
2,010,000 X 10% =201,000円(住民税所得割額)
201,000 X 20% ÷ (90% - 10% X 1.021) + 2,000 = 52,382円
又は、上記表から
201,000 X 25.065% + 2,000 = 52,381円
計算結果から、 52,380円相当額が寄附金限度額ということになります。

「年収の壁」に対する政府の対応策

年収の壁に対する労働省の「年収の壁」の支援強化パッケージが、以下の様に示されています。

年収の壁対応策
103万円超特に無し
106万円超①  扶養から外れ社会保険料が発生するが、その相当額を手当支給した企業に助成金(最大、労働者一人当たり50万円)を出す(キャリアアップ助成金の新コースとして、「社会保険適用時処遇改善コース」を新設)。
なお、労働者の収入増加の取組として、(1)手当等支給メニュー、及び(2)労働時間延長メニューにより、各助成金の要件と上限が決められています(後述参照)。
②  社会保険適用促進手当
労働者が被用者保険の新たに適用となった場合に、会社は、当該労働者の保険料負担を軽減する目的で、給与・賞与とは別に「社会保険適用促進手当」を支給することができる。標準報酬月額が104千円以下の労働者に同手当金を支給した場合、適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、本人の社会保険料の算定対象となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に含めないこととする。
130万円超130万円を超えても一時的な収入増であると証明(被扶養者認定に通常必要な書類に加えて、人出不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業者の証明)されれば連続2年まで扶養に留まることが出来る。
150万円超特に無し

(1)手当等支給メニュー、及び(2)労働時間延長メニューにより、各助成金の要件と上限は次のとおり。

(1)手当等支給メニュー(2)労働時間延長メニュー
要件1人当たりの助成金要件1人当たりの助成金
週所定労働時間の延長賃金(注3)の増額
A賃金(注1)の15%以上分を労働者に追加支給(注2)1年目 20万円a 4時間以上30万円
B賃金(注1)の15%以上分を労働者に追加支給(注2)するとともに、3年目以降、以下cの取組が行われること2年目 20万円b 3時間以上
 4時間未満
5%以上
c 2時間以上
 3時間未満
10%以上
C賃金(注3)の18%以上を増額(注4)させること3年目 10万円d 1時間以上
 2時間未満
15%以上

注1:賃金は標準報酬月額及び標準賞与額
注2:標準報酬月額に算定されない「社会保険適用促進手当」による支給も可
注3:賃金は基本給
注4:基本給の他、被用者保険適用時に設けた一時的な手当を恒常的なものとする場合、当該手当を含む。労働時間延長との組合せによる増額も可。又、2年目に前倒してcの取組(賃金の増額の場合のみ)を実施する場合、3回目の支給申請でまとめて助成(30万円)

年収の壁とは:
パート主婦の中で給与収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担増になることから就業調整する方がおられます。この問題に関しましては、政府は上述の対応策が出されています。数回、この年収の壁を取り上げましたが、再掲載いたします。年間給与収入額からの年収の壁に関して、一般的なケースでは、以下の様に指摘されています。

年間給与収入額影響する基準影響する人影響する内容
103万円超所得税課税パート者本人パート者本人の所得税が発生する
106万円超本人の社会保険の加入基準従業員数101人以上の会社勤務のパート者本人(所定の適用条件を満たす場合)パート者本人の社会保険の加入基準であり、社会保険料(厚生年金・健康保険料)が発生する。将来、厚生年金が受領できます。
130万円超夫の社会保険の被扶養者基準従業員数100人以下の会社勤務のパート者本人夫の社会保険の被扶養者基準であり、本人が第3号被保険者から外れ、パート者本人の社会保険料(国民年金・国民健康保険料等)が発生する
150万円超所得税の配偶者特別控除夫の配偶者特別控除(最高38万円)が減額となっていく。

なお、被扶養者に関しましては所得税上と社会保険上の取扱いが、以下の様に異なりますので留意する必要があります。
1.所得税上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「所得税の扶養」とは、扶養している親族等の人数に応じて所得の控除を受けることができる制度のことになります。
① 「生計を一にする(家計を共にしていれば同居でなくてもOK)」
② 以下の所得基準(収入金額ではありません)があります。
年間所得金額が48万円以下(給与収入で103万円)であること(いわゆる「103万円の壁」)。なお、70歳以上の老人扶養は、同居での所得で58万円以下(年金収入で168万円・給与収入で113万円)・同居外での所得で48万円以下(年金収入で158万円・給与収入で103万円)であること。
2.社会保険上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「社会保険の扶養」とは、被保険者の扶養している親族等が、自分自身で社会保険料を負担することなく保険の給付を受けられる制度のことになります。
① 「三親等以内の親族は同一の世帯(同居して家計を共にしている)」であること
② 年間の収入金額(所得金額ではありません)が130万円未満(60歳以上は180万円未満)であること、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であること。いわゆる「130万円の壁」と言われるのは、この認定基準があるからです。
③ 75歳未満であること(従って、75歳以上は扶養者になれません。何故ならば、75歳から後期高齢者医療保険制度に移行になりますので、社会保険制度への加入資格はありません)
3.社会保険加入条件とは
なお、社会保険加入で収入金額を「106万円」未満に収めたいと言われることがありますが、いわゆる「106万円の壁」とは、働く方でその方自身が厚生年金保険や健康保険といった社会保険への加入が必要となる収入基準のことです。こちらの保険適用基準は、以下の一定の条件を満たした場合に対象となります。
正社員の場合には、所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上でありますが、パート・アルバイトなどの短時間労働者の場合には、従業員101人以上の企業(特定適用事業所)に勤務している方で、かつ、 
① 週20時間以上働いている
週20時間を算出する際は、残業時間を合算せずに計算します。
② 1年以上継続して勤務する見込み
雇用契約書等に1年以上継続して勤務する見込みがあること。
③ 1カ月の賃金が8.8万円超
1カ月の賃金が8.8万円を超すというもの。1カ月の賃金が8.8万円を超すと、1年の年収が計算上、で106万円以上になります。ここでいう1カ月の賃金とは、雇用契約時の所定内賃金のみで、残業代、各種手当や賞与などは含みません。
④ 学生ではない
の諸条件を満たす場合には社会保険加入となります。なお、2024年10月から社会保険加入条件の従業員数が51人以上の企業に引き下げられます。

10月1日よりインボイス制度導入

来月10月よりインボイス制度が導入されますが、小規模事業者でこれまで免税事業者の方は、かなり抵抗があり中にはインボイス制度以前に消費税に関する理解が不十分である方も少なくないと感じています。インボイス制度では、課税事業であるインボイス発行事業者登録者は、相手が同様にインボイス発行事業者登録されている事業者から交付されたインボイス(請求書等)で無い場合には、その支払いに含まれる消費税額を控除出来なくなり、これまでと比べて消費税の納付額が増えることになってしまいます。その為に、取引相手に代替性があるならばインボイス発行事業者登録していない事業者との取引を避ける等の行動になることが予想されます。その様な行動を避ける為に、小規模事業者がインボイス発行事業者登録すると課税事業者として新たな消費税の納付負担が課されることになり、事業継続が危うくなることもあり得ます。この様な状況下でスタートしますが、様々な取引内の書類があり、その中で仕入税額控除(消費税額を控除)の為にインボイスとしての適用要件を満たす書類の保存も全事業者に重い負担となることは間違いありません。
現行の消費税率10%でも高いという方も少なくありませんが、国等の財源確保の為には、税率アップは避けて通れないことかもしれません。現状維持で国の借金を増やし続け後世の人への負担を先送りするか否かという課題・選択かと思います。いずれにしましても、今後の消費税を含む税制改正に注視していく必要があると感じています。
なお、詳細なインボイス制度内容を含む消費税に関しましては、「税金情報」の箇所を見てください。

住宅ローン控除 2024年から省エネ基準適合義務化

令和4年度税制改正で住宅ローン控除の見直しがありましたが、改正建築物省エネ法の施行に伴い、令和7年4月以降、原則として全ての新築住宅に省エネ基準適合が義務付けられたことの背景から、令和6年以降に入居する新築住宅について住宅ローン控除を適用するのは、原則として省エネ基準に適合していることが要件となります。但し、令和6年以降の入居であっても、次の①又は②に該当する場合は、借入限度額2,000万円、控除期間10年間の住宅ローン控除の対象となります。
① 令和5年末までに建築確認を受けている
建築確認に係る確認済証又は検査済証の写しは必要
② 令和6年6月末までに竣工済である
登記事項証明書の添付が必要

省エネ基準適合住宅又はZEH水準省エネ住宅を取得し、住宅ローン控除の適用を受ける場合には、省エネ性能の証明書として、建築住宅性能評価書の写し又は住宅省エネルギー性能証明書の添付が必要となります。

住宅ローン控除の適用期限が令和3年12月31日から令和7年12月31日までの4年延長となりましたが、控除率が現行1%から0.7%に引き下げられました。又、適用対象者の所得要件が、令和4年1月1日以降居住の用に供したものから合計所得金額が現行3,000万円から2,000万円に引き下げられました。又、所得税においてローン控除しきれなかった場合において、個人住民税のローン控除限度額は、現行の最高136,500円から最高97,500円に減額となりました。
住宅ローン控除額等の要件は以下の様になります。
(1)認定住宅等の場合
A 新築の場合

区分居住年借入限度額控除率控除期間
認定住宅(注1)令和4年・令和5年5,000万円0.7%13年
令和6年・令和7年4,500万円
ZEH水準省エネ住宅
(注2)
令和4年・令和5年4,500万円
令和6年・令和7年3,500万円
省エネ基準適合住宅令和4年・令和5年4,000万円
令和6年・令和7年3,000万円

注1:認定住宅とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう。
注2:ZEH水準省エネ住宅とは、ZEH(ゼッチ)とはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称です。省エネ性能を上げつつ、エネルギーを「創り出す」ことで消費エネルギー量の収支をプラスマイナスゼロにする住宅(省エネのための設備や太陽光発電システムなどを導入する必要有り)のことを指します。
省エネ性能の要件基準:

評価方法基準/住宅区分ZEH水準省エネ住宅省エネ基準適合住宅
断熱等性能等級等級5以上等級4以上
一次エネルギー消費量等級等級6以上

借入限度額は一律3,000万円で、控除率0.7%、控除期間は一律10年間となります。
(2) 認定住宅等以外(一般住宅)の場合
A 新築の場合

区分居住年借入限度額控除率控除期間
令和4年・令和5年3,000万円0.7%13年
令和6年・令和7年2,000万円10年

B 中古と増築の場合
借入限度額は一律2,000万円で、控除率0.7%、控除期間は一律10年間となります。

その他見直し:

項目内容
所得要件合計所得金額3,000万円から2,000万円に引き下げ
適用日令和4年1月1日以降居住の用に供したものから適用(令和7年12月31日まで)一般新築住宅
床面積基準の緩和床面積50㎡以上を40㎡以上に引き下げられましたが、40㎡以上50㎡未満は、合計所得金額が1,000万円以下の年度のみ適用となります。
又、令和5年12月31日以前に建築確認を受けた新築も同様に緩和の適用対象になります。
既存住宅の要件変更令和4年1月1日以降居住の用に供したものから、新耐震基準に適合している場合には、中古住宅の築年数要件は廃止となります。
確定申告等手続の見直し令和5年1月1日以降居住の用に供したものから、金融機関に住宅ローン控除申請書を提出した場合には、確定申告時に新築工事の請負契約書の写し等、年末借入金残高証明の添付不要となります。事前に、金融機関に「住宅ローン控除申請書」を提出する必要があり、当該申請書を基に金融機関から所轄税務署長に調書として提出(初年度のみ1月31日、それ以降各年10月31日までに)する必要があります。税務署は、毎年、住宅ローン控除証明書を本人に交付します。
なお、年末調整の際に特別控除申告書への年末借入金残高証明の添付も不要となります。
この改正は、居住年が令和5年以後である者が、令和6年1月1日以後に行う確定申告(令和5年分から)及び年末調整(令和6年分から)について適用となります。

上記のまとめは、以下の様になります。

区分居住年借入限度額控除率控除期間
認定住宅(注1)令和4年・令和5年5,000万円0.7%13年
令和6年・令和7年4,500万円
ZEH水準省エネ住宅
(注2)
令和4年・令和5年4,500万円
令和6年・令和7年3,500万円
省エネ基準適合住宅令和4年・令和5年4,000万円
令和6年・令和7年3,000万円
新築住宅等令和4年・令和5年3,000万円
令和6年・令和7年2,000万円10年
中古住宅等令和4年・令和7年2,000万円
中古の認定住宅等令和4年・令和7年3,000万円

働き方改革関連法下での2024年問題

「2024年問題」とは、働き方改革関連法によって、2024年4月1日以降、「自動車運転業務」「建設事業」「医師」等の業種に対し時間外労働の上限規制の5年間猶予が停止され、年間の時間外労働時間の上限が制限されることで発生する諸問題の総称のことです。
働き方改革関連法では、時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時間に制限され、労使間で36協定を結んだとしても、時間外労働は年720時間に制限されていました。以下を内容とする時間外労働の上限規制となっています。
1.原則(一般業務)
(1)認められる時間外労働時間は、原則として月45時間、年360時間
(2)臨時的な特別な事情があり、労使の合意(36協定)がある場合でも、以下の範囲しか認められない
① 時間外労働時間が年720時間
② 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
③ 時間外労働と休日労働の合計の平均が、2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月全て80時間以内
④ 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年に6ヵ月

2.自動車運転業務(トラックやバス、タクシーのドライバー業務)
(1)時間外労働時間の上限が、労使間で36協定が合意された場合、年960時間(休日労働を含まず)
(2)次の規制は適用させません。
①「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」
②「時間外労働と休日労働の合計の平均が、2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月全て80時間以内」

3.建設事業
(1)災害の復旧や復興の事業を除き、上限の原則規制が全て適用される。
(2)災害の復旧や復興の事業に関しては、次の規制は適用させません。
①「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」
②「時間外労働と休日労働の合計の平均が、2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月全て80時間以内」

4.医師
労働時間の上限規制は、医師の経験年数や医療機関の特性により、3つの水準に分けられて、それぞれ上限が異なります。各水準については、以下の通りです。
(1)A水準:すべての医師
対象は、一般の診療従事勤務医であるすべての医師です。時間外労働の上限は、年間で960時間以下、月間では100時間未満になり、休日労働も含まれます。
(2)B水準:地域医療確保暫定特例水準
対象は、救急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関で、地域医療を確保するために長時間労働が必要な医師です。時間外労働の上限は休日労働を含めて、年間1,860時間以下、月間100時間未満になります。
(3)C水準:集中的技能向上水準
対象は、初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医や高度技能獲得を目指すなど、短期間で集中的に症例経験を積む必要がある医師です。時間外労働の上限は、年間1,860時間以下、月間では100時間未満になり、休日労働も含みます。

時間外労働時間に対する給与の割増率は、以下の様になっています。

区分割増支払条件割増率
時間外
(時間外手当・残業手当)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25%以上
時間外労働時間が限度時間(1か月45時間、1年360時間等)を超えたとき25%以上
時間外労働時間が1か月60時間を超えたとき50%以上
休日(休日手当)法定休日(週1日)に勤務させたとき25%以上
深夜(深夜手当)22時から5時までの間に勤務させたとき35%以上

マンション一室評価の個別通達案

国税庁は「マンション節税」や「タワマン節税」の防止に向け、実勢価格を反映する新たな計算式を導入した相続税・贈与税の算定ルールの通達案を示しました。マンションの理論的評価額と実勢価格との乖離率をベースに一定の補正率に基づいて評価が行われ、高層階ほど税額が増えることになりそうです。
新たな通達案は、①築年数や階数などに基づいて評価額と実勢価格の乖離の割合(評価乖離率)を計算、②その乖離率が約1.67倍以上(評価水準0.6未満)の場合、
従来の評価額✕評価乖離率✕0.6=課税評価額
となり、一戸建ての平均乖離率(1.66倍)にそろえることになります。

A 現行のマンション一室の評価方法は次のとおり。
建物(区分所有建物)の評価額(固定資産税評価額X1.0)+ 敷地(敷地利用権)の評価額(敷地全体の面積X共有持分(敷地権割合)X平米単価(路線価方式又は倍率方式)=マンション一室の評価額

B 新たなマンション一室の評価方法の見直は次のとおり。
1.評価適用対象物件
区分所有に係る財産の各部分(建物部分及び敷地利用部分。但し、構造上、居住の用途に共することができるものに限ります(マンション一室)。
なお、マンション一室には含まなく評価対象外の物件は以下のとおり。
① 地階を除き総階数2階以下の物件に係る部分
② 区分所有されている居住用部分が3以下であって、かつ、その全てがその区分所有者又はその親族の居住用である物件(いわゆる二世帯住宅等に係る部分は含まない)
③ マンション一棟保有の区分所有者がいない物件
④ 販売用マンション(棚卸商品)

2.マンション一室の評価方法

 現行個別通達案(新評価)
マンション一室の相続税評価額①建物の評価額+敷地の評価額=相続税評価額
①区分所有建物の評価額建物の固定資産税評価額(注1)X 1.0建物の固定資産税評価額(注1)X 1.0 X
「一定の補正率」
②敷地(土地:敷地利用権)の評価額敷地全体の価額(注2)X共有持分(敷地権割合)敷地全体の価額(注2)X共有持分(敷地権割合)X
「一定の補正率」

注1:建物の固定資産税評価額(各戸の評価額)=一棟の建物全体の評価額X当該専有面積割合
注2:敷地全体の価額=路線価方式、又は倍率方式による評価額

3.一定の補正率と評価水準との関係
一定の補正率は、「評価水準」値(3区分)によりその適用する補正率が決まります。
評価水準は「1÷評価乖離率」で計算され、マンションの理論的な市場価格が現行の通達評価額と比べ、どのくらいの割合で乖離しているかを示します。

区分評価水準(注3)適用する補正率(一定の補正率)
11超(=評価乖離率が1.0未満)評価乖離率(注4)
20.6以上1以下(=評価乖離率が
約1.67未満)
適用無し(現行の相続税評価額)
30.6未満(=評価乖離率が
約1.67以上)
評価乖離率(注4) X 0.6

注3:評価水準=1÷評価乖離率
注4:評価乖離率は、次のA~Dの要素を数値化したもの
A マンション建物の築年数
B マンション建物の総階数
C  マンション建物の所在階
D マンション建物の敷地持分狭小度   

4.評価乖離率の算出方法

評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220
      =①X△0.033 + ②X0.239 + ③X0.018 + ④X△1.195 + 3.220
A一棟の区分所有建物の築年数(注5) X △0.033
注5:築年数=建物の建築時から課税期間までの期間(1年未満は1年とする)
B一棟の区分所有建物の総階数指数(注6) X 0.239=:
(小数点以下第4位切捨て)
注6:総階数指数=地階を含まない総階数÷33(但し、1.0を超える場合は1とする)
C一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階(注7)X 0.018
注7:専有部分が地階の場合には、所在階は零階としてCの値は零(0)とする。なお、区分所有建物の複数階にまたがる場合には、低い階数階とする
C一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度(注8)X △1.195=:
(小数点以下第4位切上げ)
注8:敷地持分狭小度=一室の区分所有権等に係る敷地利用権の面積÷専有部分の面積

注:評価乖離率を求める算式及び一定の補正率の数値0.6については、適時見直しがおこなわれることになっています。例えば、固定資産税の評価見直し時期に併せて、当該時期の直前における一戸建て及びマンション一室の取引事例の取引価格に基づいて見直されることが考えられます。

5.適用時期
令和6年1月1日以後の相続、遺贈又は贈与により取得した財産評価の適用