法人税電子申告を義務に 2019年度にも実施

財務省と国税庁は企業が法人税と消費税の税務申告をする際、インターネットを使った電子申告(e-Tax)を義務化する方針だ。 納税手続きをめぐる官民の事務作業の効率化が狙い。 早ければ2019年度から始められるよう与党の税制調査会 や経済界と調整に入る。 財務省などが6月までに具体案を詰め、2018年度税制改正大綱に盛り込むことを見指す。

遺産争いの法定相続分預金 最高裁 払い戻し認めず

遺産相続を巡って親族間の争いがある場合に、法定相続分の預金を払い戻せるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は6日、預金の払い戻しを認めない判断を示した。

昨年12月の大法廷決定は過去の判例を変更。 預貯金が「遺産分割」の対象になると判断。 預貯金だけを自動的に法定相続分に応じて分けることはできないとした。 今回の判決は、大法廷決定の流れに沿った判断となった。

寄附金控除(個人版)

ふるさと納税を行う人が増えていますが、 これも寄附金ということで税制上では、 税負担の軽減が図られています。 以下では、個人からの寄附行為に対する税務上の取扱いを確認したいと思います。

1.税務上の寄附金控除(所得控除と税額控除)とは

寄附金控除の適用を受けるには、寄附の相手先が「特定寄附金」の対象として認められていることが必要となります。 「特定寄附金」に該当すれば所得から一定の寄附金額を控除できるという「所得控除」が認められ、更にその中で一定の寄附金に該当しますと、所得控除に代えて、税額から一定金額を控除できるという「税額控除」を選択することができます。

2.「特定寄附金」の主な範囲

(1)国又は地方公共団体に対する寄附金

ふるさと納税もここに含まれます。

(2)指定寄附金

公益を目的とする事業法人(公益社団法人、公益財団法人等)、又は一定の要件を満たす団体に寄附するもののうち、財務大臣が指定した緊急性を要するものとした寄附金

(3)政治活動に関する寄附金

(4)特定公益増進法人に対する寄附金

公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、一定の学校法人等

(5)認定特定非営利法人等(認定NPO法人等)に対する寄附金

3.「税額控除」対象の寄附金と税額控除額

税額控除を税務上では「特別控除」という表現で規定しており、以下のものがあります。

① 政党等寄附金特別控除

特定の政治献金のうち、政党や政治資金団体へ寄附された場合の税額控除額

(イ)年間の政党等特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)

(ロ)上記(イ)X 30%

(ハ)所得税額 X 25%

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 政党等寄附金特別控除

② 公益社団法人等寄附金特別控除

一定の要件を満たす公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、学校法人、国立大学法人、公立大学法人等へ寄附をされた場合の税額控除額

(イ)年間の公益社団特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)

(ロ)上記(イ)X 40%

(ハ)所得税額 X 25%(注2)

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 公益社団法人等寄附金特別控除

③ 認定NPO法人等寄附金特別控除

一定の要件を満たす認定NPO法人へ寄附された場合の税額控除額

(イ)年間の認定NPO特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)

(ロ)上記(イ)X 40%

(ハ)所得税額 X 25%(注2)

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 認定NPO法人等寄附金特別控除

注1:この控除対象寄附金額(総所得金額等の40%相当額)及び控除適用下限額(2千円)の判定は、 所得控除対象の寄附金額及び税額控除対象の寄附金額と合わせて総合計でおこないます。

注2:この判定は、公益社団法人等寄附金と認定NPO法人等寄附金との合計でおこないます(政党等寄附金は含まず別枠での判定)。

 

上記の①~③の特定寄附金に該当された場合には、当該税額控除と下記の所得控除の有利な方をそれぞれ選択適用することができます。

4.「所得税寄附金控除」の計算

ふるさと納税(税額控除の適用は認められません)等の特定寄附金には寄附金所得控除額が認められていますが、その計算式は次のとおりです。

(イ)年間の特定寄附金合計額(注1)

(ロ)総所得金額等 X 40%

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額

(ニ)上記(ハ)の金額 - 2千円 = 寄附金所得控除額

(ホ)所得税の軽減税額

寄附金所得控除額 X 所得税率 X 1.021%

5.「住民税寄附金税額控除」の計算

上記では、所得税における寄附金の控除についてでしたが、同時に住民税におきましても特定の寄附金に対しては寄附金控除が認められています。 例えば、次の様な寄附金が対象となります。

① 都道府県・市区町村へのふるさと納税

② 住所地の日本赤十字社支部

③ 住所地の都道府県共同募金会

④ 住所地の都道府県が条例で指定する社会福祉法人

⑤ 住所地の都道府県・市区町村ともに条例で指定する認定NPO法人

なお、住民税においての控除方式は、税額控除のみとなっています。 住民税は、都府県民税と市町村民税とに分かれ、寄附金も特定寄附金になるものか否かは条例により異なりますので別々に計算する必要があります。

(1)住民税基本控除分

(イ)年間の都府県、市町村又は特別区等への特定寄附金合計額

(ロ)総所得金額等の30%相当額

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額

(ニ)上記(ハ)の金額 - 2千円

(ホ)上記(ニ)の金額 X 10%(都府県民税4%、市町村民税6%:平成30年度分より2%と8%に標準税率の変更)= 住民税基本控除分

(2)住民税特例控除分

(イ)年間の都府県、市町村又は特別区への特定寄附金合計額 - 2千円

(ロ)上記(イ)の金額 X (90% - 所得税率 X 1.021 X 5/5(都府県民税2/5、市町村民税3/5:平成30年度分より1/5と4/5に変更))

(ハ)住民税所得割額 X 20%相当額

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 住民税特例控除分

(3)住民税の寄附金税額控除額 = (1)+ (2)

6.寄附金限度額の計算

ふるさと納税でよく言われるのが、寄附金額から2千円控除した金額の全てが税金計算上、控除されることになるということですが、 これは正しいでしょうか。 これまでの寄附金の限度計算では、総所得金額等(注3)の40%或いは30%、又は住民税所得割額(注4)の20%が限度という算式がありましたので、寄附金には所得金額の多寡により一定の寄附金額控除に限度があることが分かります。 上記から、

寄附金限度額 = 個人住民税所得割額X 20%÷(90%-所得税率X1.021) + 2千円

の算式が導かれます。 ご存知の様に所得税率は、累進税率の7段階に分かれていますので、次の表が寄附金限度額の目安となるかと思います(但し、申告分離課税のみの場合ではなく、総合課税と申告分離課税も含む場合の適用時における目安)。

所得税の課税所得額 所得税率 寄附金限度額
195万円未満 5% 個人住民税所得割額 X 23.558% + 2千円
195~330万円未満 10% 個人住民税所得割額 X 25.065% + 2千円
330~695万円未満 20% 個人住民税所得割額 X 28.743% + 2千円
695~900万円未満 23% 個人住民税所得割額 X 30.067% + 2千円
900~1,800万円未満 33% 個人住民税所得割額 X 35.519% + 2千円
1,800~4,000万円未満 40% 個人住民税所得割額 X 40.683% + 2千円
4,000万円以上 45% 個人住民税所得割額 X 45.397% + 2千円

注3:総所得金額等とは

所得税計算での総合課税所得金額及び申告分離課税所得金額を合算し、かつ、各種の繰越損失控除を使用していた場合には、その使用額を加算(控除前に戻す)したところの所得金額。

注4:住民税所得割額とは

住民税計算での課税所得金額に税率を乗じた税額(総合課税に係る税額控除前所得割額と分離課税に係る税額控除前所得割額との合計額)から調整控除額(通常2,500円)を控除した後の税額。

 

例えば、給与所得500万円、社会保険料50万円、基礎控除38万円(住民税では33万円)の場合の人が、ふるさと納税30万円を行った場合と行わなかった場合の所得税及び住民税は以下のようになります。

(1)ふるさと納税30万円を行わなかった場合

① 所得税額

5,000,000 - (500,000 + 380,000) = 4,120,000

(4,120,000 X 20% - 427,500) X 1.021 = 404,826 à 404,800(所得税額)

② 住民税額

5,000,000 - (500,000 + 330,000) = 4,170,000

4,170,000 X 10% = 417,000円(住民税額)

(2)ふるさと納税30万円を行った場合

① 所得税額

(イ)特定寄附金合計額 300,000

(ロ)5,000,000 X 40% = 2,000,000

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額 300,000

(ニ)300,000 - 2,000 = 298,000寄附金所得控除額

(ホ)所得税額

5,000,000 - (500,000 + 298,000 + 380,000) = 3,822,000

(3,822,000 X 20% - 427,500) X 1.021 = 343,974 à 343,900 (所得税額)

(へ)寄附金による所得税額の軽減税額

寄附金所得控除額 X 所得税率 X 1.021 = 298,000 X 20% X 1.021 = 60,900円

② 住民税額

(1)住民税基本控除分

(イ)特定寄附金合計額 300,000

(ロ)5,000,000 X 30% = 1,500,000

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額 300,000

(ニ)300,000 - 2,000 = 298,000

(ホ)298,000 X 10% = 29,800

(2)住民税特例控除分

(イ)特定寄附金合計額300,000 - 2,000 = 298,000

(ロ)298,000 X (90% - 20% X 1.021) X 5/5(都府県民税2/5、市町村民税3/5)= 207,348

(ハ)住民税所得割額 (4,170,000 X 10% - 2,500) X 20% = 82,900

(二)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 82,900

(3)住民税の寄附金税額控除額 = 29,800 + 82,900 = 112,700円

(4)住民税額

5,000,000 - (500,000 + 330,000) = 4,170,000

4,170,000 X 10% - 112,700 = 304,300円(住民税額)

③ 所得税・住民税への軽減税額

所得税60,900 + 住民税112,700 = 173,600円

④ 寄附金限度額

以上の寄附額300,000円の例からは、 制限・上限に該当となるケースでしたが、 該当しない寄附額はいくらであったかは、 以下の計算で算出できます。

個人住民税所得割額X 20% ÷ (90% - 所得税率X 1.021)+ 2,000 = 414,500 X 20% ÷ (90% - 20% X 1.021) + 2,000 = 240,286円

計算結果から、 240,286円相当額が制限・上限に触れることのないレベル、 即ち、寄附金限度額ということになります。

ふるさと納税 返礼上限3割に

総務省はふるさと納税の返礼品の価格について、寄付額の3割までに抑えるように全国の地方自治体に要請する。 自治体が寄附金を集めるために高額すぎる返礼品を競って導入しているため。

4月1日付けで全国の自治体に通知する。 通知に強制力はないが、明らかに寄付額の3割を超える返礼品を出す自治体に対しては、総務省が個別に見直しを求める。 今回の目安を示すことで多くの自治体が返礼品を見直すとみられる。

住宅地9年ぶり上昇 公示価格、低金利が支え

住宅地の価格の下げ止まり基調が鮮明になってきた。 国土交通省が21日発表した2017年1月1日時点の公示価格は全国の住宅地が前年比0.022%プラスと9年ぶりに上昇に転じた。 景気の緩やかな回復や低金利を背景に、 先に上昇した商業地を追う。 全用途は0.4%プラスと2年続けて上昇した。 地方への波及が息長く続くかが焦点だ。

 

2017年公示地価の変動率(1月1日時点、 前年比%、 ▲は下落):

 

地域

住宅地 商業地 全用途
前年 2017年 前年 2017年 前年 2017年
全国平均 0.2 0.022 0.9 1.4 0.1 0.4
三大都市圏 0.5 0.5 2.9 3.3 1.1 1.1
東京圏 0.6 0.7 2.7 3.1 1.1 1.3
大阪圏 0.1 0.0 3.3 4.1 0.8 0.9
名古屋圏 0.8 0.6 2.7 2.5 1.3 1.1
地方圏 0.7 ▲0.4 0.1 ▲1.4 0.7 ▲0.3

 

公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。

  公示地価 基準地価 路線価 固定資産税評価額
調査主体 国土交通省 都道府県 国税庁 市町村
調査地点数 約26,000 約21,700 約334,000 多数
調査時点 1月1日 7月1日 1月1日 1月1日(原則3年に1回、 次回は2018年)
公開時期 3月 9月 7月又は8月 3月
公開サイト 国交省(土地総合情報ライブラリー) 国交省(土地総合情報ライブラリー) 国税庁 資産評価システム研究センター
その他 調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格(更地価格)の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。 調査対象は地方の調査地点が多く、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から 相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準 土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準

 

残業上限「100時間未満」

政府が進める働き方改革の柱である残業時間の上限規制を巡り、 繫忙月に例外として認める残業を「100時間未満」とすることが固まった。

  1. 時間外労働の上限は、 原則、 月45時間で年間では360時間
  2. 残業特例

(1) 労使協定を結べば年720時間(月平均60時間)まで可能

(2) 2~6カ月平均で80時間以内を順守

(3) 繫忙期は月100時間を基準値とする

(4) 月45時間を上回る特例の適用は年6回まで

平成28年度(2016年)個人確定申告について

個人並びに個人事業者の方の平成28年度確定申告の時期がきました。 以下に、 平成28年度分の確定申告の提出期限及び確定申告の対象となる人(任意ではなく申告しなければならない人)、 等に関しまして概要を纏めてみました。 なお、 確定申告の対象者は前年度と変更はありませんが、 税金の申告は、 本人自ら課税金額や税額を計算し、 その税額を申告納付する制度「申告納税制度」を採用していますので、 期限後申告・納付となりますと延滞税等がかかりますので注意してください。

 

  1. 平成28年度確定申告の提出・納付期限
所得の種類 平成28年度申告期間・納付期限 口座振替による納税日(振替日)
所得税 平成28年2月16日 から3月15日 (還付対象者の方は1月から申告可) 4月20日(木)

(新規の利用者の方は「預貯金口座振替依頼書」を申告期限までに要提出)

消費税 平成29年1月 から3月31日 4月25日(火)
贈与税 平成29年2月1日 から3月15日               非該当

(1) 申告書の提出方法には、 ①持参(所轄税務署等の所定の提出場所)、 ②郵送、 ③電子申告(e-Tax利用によりデータ送信。 この利用には事前準備が必要となりますが、 所得税では一定の第三者作成の提出書類を省略可の恩典があります)の方法があります。

(2) 納税方法には、 ①持参(所轄税務署)、 ②金融機関から納付書を付けて納付、 ③ダイレクト納付(e-Taxの利用で、 かつ、 事前にダイレクト納付利用届出書の所轄税務署に要提出)、 ④インターネットバンキング等による電子納税、⑤口座振替(上記を参照) の方法があります。

(3) 平成25年度から25年間には、 復興特別所得税として各年分の所得税額に2.1%の税率を掛けて計算した税額が発生することに留意してください。

(4) 平成28年分の申告書には、 マイナンバー(個人番号)の記載が必要となります。   申告書を提出する際には、 申告者のご本人の本人確認書類(番号確認書類及び身元確認書類)の提示又は写しの添付が必要です。 具体的な本人確認書類とは、

① マイナンバーカード(個人番号カード)

② 通知カード又は個人番号付の住民票の場合には、 身元確認書類として顔写真付きの運転免許証、 等の点、 又は顔写真付きでない場合には、 2点の確認書類(保険証、 年金手帳、 等)

 

  1. 平成28年度確定申告が必要となる対象者の方
    A. 所得税

(1)給与所得者(サラリーマンの方)

① 給与の年間収入金額が2,000万円超となる方(年末調整対象外の方)

② 給与(年末調整済)を1箇所から受けていて、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円超となる方 (給与収入額が2,000万円以下で、 給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合には申告の必要はありません)

③ 給与(源泉徴収済)を2箇所以上から受けていて、 年末調整されなかった給与の収入金額と、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円超となる方。

但し、 給与所得の収入金額から、 一定の所得控除の金額(雑損控除、 医療費控除、 寄付金控除及び基礎控除の項目を除く)の差引金額が150万円以下で、 かつ、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下となる方は、 申告不要となります。

(2)上記の給与所得者以外の方、 又は個人事業者で納付税額が発生する方

事業所得や不動産所得等がある方で、 各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方

(3) 源泉徴収の適用を受けない給与等の支払を受ける方

① 家事使用人等の方で給与から源泉所得税を徴収されていない方: 常時2人以下の家事使用人だけを雇用している使用人等には源泉徴収の義務が無いことから、 その使用人等から給与を受給されていた方

② 在日外国公館から給与等の支払を受けた方

③ 国外から給与、 退職金等の支払を受けた方

(4)同族会社の役員やその親族等で、 その会社から給与以外に利子、 家賃、 使用料等の支払を受けている方は、 その利子、 家賃、 使用料等は全て申告の対象

(5)災害減免法の適用を受け給与に対して源泉徴収の猶予や源泉徴収税額の還付を受けていた方

(6)上記以外の方で納付税額がある方

各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方

1: 公的年金等に係る所得の確定申告不要制度

その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、 かつ、 その雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、 所得税の確定申告書の提出は必要ありません(申告されれば還付となる場合もありますので、 その場合には申告される方が有利となる場合もあります)。 なお、国外源泉で国内源泉税の対象とならない国外年金収入等がある場合には、この確定申告不要制度の適用対象外となります。

この所得税の申告不要となる場合であっても、 住民税の申告が必要となることもありますので注意が必要です。

 

公的年金等の受給者で所得税の申告不要な者でも、住民税の申告が以下のような場合には必要となります(主に住民税の減額になるケース有り)。

① 年金や給与の源泉徴収票に記載されていない所得控除(扶養控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料, 寄附金等)のある方は、住民税の申告で住民税が減少する可能性があります。

② 上記①の控除を追加したい方で、公的年金等が105万円(65歳以上の方は155万円)を超えている場合、或いは、超えていない場合でも公的年金等以外の所得金額がある場合。

③ 日本年金機構等に扶養親族等申告書を提出しているが、その内容に変更がある場合等。

 

2: 確定申告不要(任意)となる方で申告すれば税金が戻ってくる方(還付申告者)

確定申告の総件数は2,000万件以上になるようですが、 この内の約半数近くが還付申告のものとなっているようです。 収め過ぎた税金を戻すためには確定申告書の提出が必要となります。 以下の様な場合には、 還付されるかもしれませんので調べてみてはどうでしょうか。

(1)サラリーマンで年末調整を受けた方で次の年末調整では取扱わない項目があった方

① 一定金額以上の医療費(医療費控除: 限度額200万円)

生計を一にする家族の支払医療費が、 以下の金額以上になっている場合が対象:

所得が200万円以上: 支払医療費 – 保険給付金等 – 10万円 = 医療費控除額

所得が200万円未満: 支払医療費 – 保険給付金等 – 所得金額 × 5% = 医療費控除額

② 災害(地震、 台風等)や盗難により住宅や家財に被害を受けた場合(雑損控除)

災害の場合には、 災害減免法により所得税の軽減・減免を受けられることもあります。

③ 特定の寄付をされた方(寄付金控除や政党等寄付金特別控除)

④ 初めて住宅ローン控除を受ける方(住宅借入金等特別控除)

⑤ 年末調整時に提出ができなかった、 或いは洩れている控除項目がある方

生命保険料控除、 地震保険料控除、 配偶者特別控除、 各種の扶養者控除等

⑥ 中途退職され再就職しなかった方

退職までの給与収入に対する源泉徴収税額が年税額として過大となっているケースが殆どです。 又、 退職金に対して20%源泉になっている場合も可能性がありますし、退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になっている方。

(2)上場株式等に係る配当所得(申告分離課税選択)と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算

(3)予定納税されたが確定申告不要となった方

(4)所得が少ない状況で配当や原稿料収入等からの源泉徴収税額が、 本来の納付すべき税額よりも多額となっている方

(5)外国税額控除の適用がある方

(6)申告の要件となっている項目がある方

① その年の翌年以降に純損失又は雑損失の繰越控除を受けるため、 ② その年分の純損失の金額について純損失の繰戻しによる還付を受けるため、 ③ 居住用財産の買換又は特定居住用財産の譲渡損失及び繰越控除を受けるため、 等には確定申告の提出が必要となります。

 

         B. 贈与税

ご存知かと思いますが、 下記に示す様に年間に受けた贈与額が110万円以下ならば非課税範囲のために贈与税の申告等は必要ありません。

  1. 年間合計で110万円超の財産贈与(個人からの土地、 建物、 現金、 預貯金、 株式、 債権等の財産の贈与)を受けた方(暦年課税で下記の②の選択者を除く)
  2. 相続時精算課税制度(60歳以上の父や母の直系卑属からの贈与者ごとに累積で特別控除額2,500万円)の選択者で財産贈与を受けた方(20歳以上の推定相続人の子、 並びに孫に限る)
  3. 住宅取得等資金の非課税制度(下記に限度額)を適用し、 父母や祖父母等の直系尊属から自己の居住用家屋の取得等のために住宅資金贈与を受けた方(20歳以上で合計所得金額が2,000万円以下であり、 かつ、 一定の居住条件を満たしている方)

 

消費税率が8%適用となる取得等の契約を平成33年12月までに締結された場合の非課税限度額は以下のようになります。

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 良質な住宅用家屋(耐震等住宅) 左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
平成28年1月~平成32年3月 1,200万円 700万円
平成32年4月~平成33年3月 1,000万円 500万円
平成33年4月~平成33年12月 800万円 300万円
なお、 東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、 以下のようになります。

現在~平成33年12月

 

 

1,500万円

 

 

1,000万円

  1. 配偶者控除の特例(控除額2,000万円)を適用し、 配偶者から居住用不動産又はその取得資金の贈与を受けた方(婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与に限る)
  2. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度、等

平成25年4月1日から平成31年3月31日までの期間に直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 この制度適用のためには、 受贈者は教育資金非課税申告書を金融機関等を経由して税務署に提出する必要がありますが、 申込時に対応されていると思いますので特に問題となることはないでしょう。

 

         C. 消費税

個人事業者で下記に該当する方は納税義務者(課税事業者)として申告する必要があります。

  1. 基準期間となる前々年度(平成26年度)の課税売上高が1,000万円超の事業者の方
  2. 特定期間となる前年(平成27年度)の1月1日から6ケ月間の課税売上高が1,000万円超で、 かつ、 同期間の給与等支払総額が1,000万円超の事業者の方
  3. 免税事業者となる方が、 課税事業者となることを選択(消費税課税事業者選択届出書を提出)している方(簡易課税選択者も含む)

納税義務者の判定上の留意事項:

(1) 基準期間の課税売上高は、 消費税込の金額となり、 事業用資産(住宅用として貸付けていた建物等)の譲渡の対価金額も含まれます

(2) 被相続人(亡くなられた方)の事業を相続により承継した相続人には、 被相続人が提出していた各種の届出書の効力は及ばないので、 新たに提出する必要があります。

(3) 新規開業又は相続により事業を承継したときに、 消費税課税事業者選択届出書を提出した場合の適用開始時期は、 当該課税期間か翌課税期間かを選択できます。

(4) 消費税課税事業者選択届出書を提出されている場合には、 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、 その効力が消滅することはありません。

 

 

以上が、所得税、贈与税、消費税に関する確定申告の対象者の概要です。

相続税対策の養子 有効 当事者の縁組意思 重視 最高裁初判断

「相続税対策で孫と結んだ養子縁組は有効かどうか」が争われた訴訟の上告審判決で、 最高裁第3小法廷(木内裁判長)は31日、 「節税目的の養子縁組でも直ちに無効とはいえない」との初判断を示した。 判決は相続税対策として縁組が広がりつつある現状を追認した形。 縁組が無効となるのは当事者に縁組の意思がない場合などに限られるそうだ。

相続税額は遺産全体から一定額を差し引いた上で算出される。 この控除分は3千万円が基本で、 相続人1人につき600万円を加算。 実子がいても養子は1人まで、 実子がいなければ2人まで相続人に含められる。 最高裁第3小法廷は「説明の動機と縁組の意思は併存し得る」と指摘。 縁組の意思があれば節税目的の養子縁組を認める初の判断を示したことで、 当事者の意思が確認されれば、 養子縁組が無効になる余地はほぼなくなった。 なお、 国税庁は「縁組に至った経緯や生活実態など個々の事例に応じて判断する」としている。

2017(平成29)年度税制改正大綱:法人税

2016年12月8日に与党が決定しました2017(平成29)年度税制改正大綱に関しまして、法人税に関する主な改正案の概要は、 以下のとおりです。

1.競争力強化のための研究開発税制等の見直し

(1) 試験研究費の範囲の見直し

試験研究費の範囲に、「対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究のために要する一定の費用が追加されます。 この「一定の費用」とは、対価を得て提供する新たな役務(新サービス)の開発を目的として行う業務に要する費用となっています。

(2) 総額型(試験研究費の総額に係る税額控除制度)の見直し

 ① 税額控除率等の見直し

試験研究費の増減割合に応じた税額控除率に変動されます。 現行では試験研究費割合に応じ8%~10%ですが、以下の様に変わります。

改正
区分 税額控除率
5% < 増減割合 9% +(増減割合-5%)x 0.3
-25% ≦ 増減割合 ≦ 5% 9% -(5%-増減割合)x 0.3
増減割合 < -25% 6%

「試験研究費の増減割合」とは、試験研究費増減差額の比較試験研究費に対する割合

「試験研究費増減差額」とは、試験研究費の額から比較試験研究費の額を減算した金額

 ② 税額控除率の上限引上げ(2年間の時限措置)

(イ)総額型の税額控除率の上限は、原則、10%だが、2年間の時限措置として14%に引上げられます。

(ロ)中小企業等技術基盤強化税制による総額型の場合、試験研究費の増加割合が5%を超える場合には次の様になります。

(①)税額控除率 = 12%% +(試験研究費の増加割合-5%)x 0.3}、 但し、税額控除率の上限は17%

(②)税額控除額 = 試験研究費の額 x 税額控除率

税額控除額の上限 = 当期の法人税額 x 25% + 上乗せ部分(当期の法人税額 x 10%)

なお、この適用にあたり、高水準型(平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度)との選択適用となります。

(3) 高水準型(平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度)の時限措置等

① 適用期限が2年延長されます。

② 試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合の上乗せ措置2年間の時限措置)

試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合、「高水準型」の適用に代えて、以下のとおり「総額型」の控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に一定の金額を上乗せできることになります。

参考:高水準型においての税額控除計算

税額控除額 = (当期試験研究費の額 – 平均売上金額 x 10%) x 超過税額控除割合

平均売上金額:当期及び当期前3年以内に開始した各事業年度の売上の平均額

超過税額控除割合:(試験研究費割合 – 10%) X 0.2

税額控除限度額は、 当期法人税額の10%

改正: 上乗せ措置

(①)総額型

当期の法人税額の25% + 上乗せ部分{(当期の法人税額 x(試験研究費割合 -10%)x 2}

(②)総額型(中小企業等技術基盤強化税制による総額型)

当期の法人税額の25% + 上乗せ部分{(当期の法人税額 x(試験研究費割合 -10%)x 2}

なお、この適用にあたり、上述しました総額型との選択適用となります。

(4) 増加型(試験研究費の増加額に係る税額控除制度) 

平成28年度末の期限をもって廃止となります(現行:高水準型との選択適用)。

(5) オープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)

特別試験研究費の対象となる支出費用が限定されていたが、その限定が廃止され、その研究に要した費用となります。

2.所得拡大促進税制の税額控除制度の見直し

(1) 大企業

現行 改正
適用要件 平均給与等支給額 > 比較平均給与等支給額

 

(平均給与等支給額 - 比較平均給与等支給額)÷ 比較平均給与等支給額 ≧ 2%
控除税額 雇用者給与等支給増加額 x 10% 雇用者給与等支給増加額 x 10% +(①又は②のいずれかの金額) x 2%

① 雇用者給与等支給増加額 ≧(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額の金額

② 雇用者給与等支給増加額 <(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給増加額の金額

(2) 中小企業者等

現行 改正
控除税額 雇用者給与等支給増加額 x10% 雇用者給与等支給増加額 x 10% + (①又は②のいずれかの金額)x 12%

① 雇用者給与等支給増加額 ≧(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給額 – 比較雇用者給与等支給額の金額

② 雇用者給与等支給増加額 <(雇用者給与等支給額 – 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給増加額の金額

3.確定申告書の提出期限の延長の特例

法人が、①会計監査人を置いている場合で、かつ、②定款等の定めにより各事業年度終了から3月以内に決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、4月を超えない範囲内で確定申告書を提出することが税務署長より認められます。

原則、「事業年度終了から2ヵ月以内」から、現行の「1ヵ月の提出期限の延長特例」は存置され、別途、最大で4ヵ月の提出期限の延長」となり、事業年度終了から最大6ヵ月以内の特例が創設されます。 また、法人税事業税についても、同様な取扱いとなります。

4.役員給与関連

(1) 利益連動給与の見直し(平成29年4月1日以後の支給又は交付決議分から適用対象)

算定指標の範囲に、株式の市場価格の状況を示す指標及び売上高の状況を示す一定の指標を加えるとともに、当該事業年度後の事業年度又は将来の所定の時点若しくは期間の指標を用いることができるようになります。

(2) 事前確定届出給与の見直し(平成29年4月1日以後の支給又は交付決議分から適用対象)

① 所定の時期に確定した数の株式を交付する給与が対象に加えられます。

② 所定の時期に確定した数の新株予約権を交付する給与が対象に加えられるとともに一定の新株予約権の給与は事前確定の届出は不要となります。

③ 利益その他の指標を基礎として譲渡制限が解除される数が算定される譲渡制限付株式による給与は対象外となります。

(3) 定期同額給与の範囲の見直し(平成29年4月1日以後の支給又は交付決議分から適用対象)

税及び社会保険料の源泉徴収等の控除後で金額が同額となるものも定期給与に加えられます。

(4) 退職給与の見直し (平成29年10月1日以後の支給又は交付決議分から適用対象)

退職給与で「利益その他の指標(勤務期間及び既に支給した給与を除く)」を基礎に算定されたもののうち、次の①と②の全額が損金不算入となります。

① 利益連動給与の損金算入要件を満たさないもの

② 新株予約権による給与で事前確定届出給与又は利益連動給与の損金算入要件を満たさないもの

(5) 譲渡制限付株式(RS)と新株予約権(SO)を対価とする費用の帰属事業年度の特例の見直し

平成29年10月1日以後の支給又は交付決議分から適用対象)

① 役務提供を受けた法人以外の法人が交付するものも対象に加えられます。

② RSの損金算入時期が、原則、「譲渡制限が解除されることが確定した日の属する事業年度」となります。 現行は、「譲渡制限解除日の属する事業年度」からの見直し。

③ RSやSOが、非居住者に交付された場合、その者が居住者であったとした場合に給与所得等が生じることが確定した日に役務提供を受けたこととなる。

5.組織再編税制等の見直し

多くの見直しが行われますが、特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフ関係の改正事項(分割型分割や現物分配によるスピンオフが行われた場合、適用要件を満たすことでスピンオフを行った会社側への譲渡損益の課税が繰り延べられる)は、平成29年4月1日以後の組織再編成に適用となります。 又、吸収合併・株式交換に係る適格要件の見直しなどといったスピンオフ関係以外の改正事項は、平成29年10月1日以後の組織再編成に適用となります。

6.営業権等の償却方法の見直し

営業権、資産調整勘定及び負債調整勘定の償却方法について、取得年度の償却限度額の計算上、月割計算で行うことになります。

7.地域中核企業向け設備投資促進税制の創設

企業立地促進法の改正を前提に、青色申告法人が同改正法の施行日から平成31年3月31日までの間に、一定の計画(国の確認が必要)に係る一定の地域内で一定の施設等(取得価額の合計が2千万円以上)を新設、又は増設した場合に、その施設等を構成する機械装置、器具備品、建物・建物附属設備・構築物の取得等をして、一定の事業用に供したときは、取得価額(本制度の上限は100億円)の40%(建物・建物附属設備・構築物は20%)の特別償却、又は4%(建物・建物附属設備・構築物は2%)の税額控除(但し、法人税額の20%が限度)との選択適用ができます。

8.中小企業向け設備投資促進税制の拡充

(1) 中小企業経営強化税制への改組(以前の中小企業投資促進税制の上乗せ措置)

青色申告書を提出する中小企業者等で中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものが、平成29年(2017年)4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間に、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、及びソフトウェアで特定経営力向上設備等に該当するもののうち、一定の規模以上のものの取得等をして、その特定経営力向上設備等を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その普通償却限度額との合計で取得価額までの特別償却と、その取得価額の7%(特定中小企業者等では10%)の税額控除(但し、法人税額の20%が限度で、控除限度超過額は1年間繰越可能)との選択適用が認めるというものです。

制度の目的 生産性の高い先進的な設備や生産ライン等の改善のための設備投資に対する税制支援(即時償却又は税額控除)を行い、 中小企業者の民間投資を活性化させる
適用法人 青色申告書を提出する中小企業者等
適用要件 「生産等設備」を構成する「特定経営力向上設備等」のうち、 一定規模以上のものを取得等し、 その設備を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合
生産等設備とは 法人の指定事業用に直接供される減価償却資産で構成されるもの。  従って、 本店、 寄宿舎等の建物附属設備、 福利厚生施設等は非該当
特定経営力向上設備等とは 経営力向上設備等(①生産性向上設備と②収益力強化設備)のうち経営力向上に著しく資する一定のもので、その法人の認定を受けた経営力向上計画に記載されたもの
①生産性向上設備
種類 取得価額(*2) 販売開始(*1) 用途・細目
機械装置 160万円以上 10年以内 限定なし
工具 1台30万円以上 5年以内 測定工具及び検査工具に限る
器具備品 1台30万円以上 6年以内 限定なし
建物附属設備 1台60万円以上 14年以内 限定なし
ソフトウエア 1台70万円以上 5年以内 稼働状況等を情報収集機能及び分析等するものに限る

*1: ソフトウエア及び旧モデルがないもの(*1の販売開始要件を満たすこと)以外は、 同メーカーの旧モデル比で経営力の向上に資するものの指標(生産効率、 エネルギー効率、精度等)が年平均1%以上向上するものであること

②収益力強化設備 経済産業局の確認を受けた投資計画に記載された設備(機械装置、 工具、 器具備品、建物附属設備、及びソフトウエア)で投資利益率が年平均5%以上となることが見込まれるものであること
特別償却と税額控除との選択適用 その普通償却限度額との合計で取得価額までの特別償却と、その取得価額の7%(特定中小企業者等では10%)の税額控除(但し、法人税額の20%が限度 (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)で、控除限度超過額は1年間繰越可能)との選択適用が認めるというものです。
適用時期 同法の施行日(平成29年4月1日)から平成31年3月31日までの間の取得等。

(2) 中小企業投資促進税制

対象資産から器具備品が除外され、 適用期限が2年延長となります。

特別償却の種類 対象法人、 対象設備の範囲等 限度額
特別償却等 税額控除
中小企業者等の機械等(平成10.6.1から31.3.31まで)

(①機械装置で、 1台又は1基で取得価額160万円以上、 ②ソフトウエアで70万円以上、 ③車両総重量3.5トン以上の貨物自動車、 ④内航船舶)

新品を指定事業に供する

中小企業者等(資本金3千万円以下)で大規模法人(資本金1億円超の法人で、 単独所有で50%以上、 又は複数所有で3分の2以上の所有関係。 なお、 所有割合判定では、 親会社の同族関係者の持株等は考慮しません)の所有法人を除き、 常時勤務従業員数が1千人以下等)が新品の一定の機械装置等を取得し事業に供した場合には、特別償却、 又は税額控除の選択可(特別償却の適用要件としては、 資本金1億円以下の中小企業者等) 基準取得価額の30%

(なお、 内航船舶の基準取得価額は、 実際の取得価額の75%相当額)

次の①と②のいずれか少額の金額

①基準取得価額(内航船舶では、取得価額の75%相当額)の7%

②当期法人税額の20% (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)

また、 ①>②のときには、 限度超過額を1年間の繰越控除可

(3) 特定中小企業者等の経営改善設備投資促進税制の期限延長

適用期限が2年延長となります。 その概要は以下のとおり。

(商業・サービス業・農林水産業の中小企業等の設備投資促進税制)

青色申告法人で指定事業を営む中小企業等が経営改善に関する指導及び助言を受けて行う店舗改修等に伴い器具備品及び建物附属設備の取得等を行なった場合、その取得価額に対して特別償却か税額控除かを選択適用できる制度(所得税についても同様の取扱い)。

適用期間 平成29年4月1日~平成31年3月31日の間に店舗改修等を行なった場合
指定事業 卸売業、 小売業、 サービス業、 農林水産業(性風俗関連特殊営業及び風俗営業を除く)
適用要件 商工会議所、 認定経営革新等支援機関等による法人の経営改善に係る指導及び助言を受けて行う店舗改修等であること
対象設備 ① 器具備品: 1台又は1基の取得価額が30万円以上

② 建物附属設備: 1つの取得価額が60万円以上

特別償却額 対象設備の取得価額 X 30%
税額控除額 対象法人は、 資本金3,000万円以下の中小法人等に限定 (但し、 認定経営革新等支援機関等は対象から除外)

対象設備の取得価額 X 7%

(但し、 控除限度額は当期法人税額の20% (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)であり、 控除限度超過額は1年間の繰越可能)

9.中小企業者等に係る法人税の軽減税率の特例の期限延長

中小企業者等に対して、所得800万円以下の部分につき、法人税率15%とする軽減税率の特例の適用期限が2年延長され、平成31年3月31日までの開始事業年度に適用となります。

10.地方拠点強化税制(オフィス減税)の拡充

(1)地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度における税額控除率を引き上げる措置の適用期限を1年延長する。

(2)雇用促進税制の特例について、無期雇用かつフルタイムの新規雇用等に対する税額控除額を上乗せする等の拡充を行う。

11.災害に関する税制上の措置

災害時における税制上の救済措置等が規定されました。

12.法人税の納税地異動における届出書

異動における届出書は、その移動後の納税地の所轄税務署長への届出は不要となります。

13.法人の設立届出書等

法人の設立届出書において、登記事項証明書の添付は不要となります。

14.特定資産の買換特例(9号買換特例)の適用期限の延長等

9号買換特例について、買換資産のうち、鉄道事業用車両運搬具が「貨物鉄道事業用の電気機関車」に限定した上で、適用期限を平成31年度末まで3年延長となります。

15.医療用機器の特別償却制度の用期限の延長等

適用対象機器の見直しを行った上で、適用期限を平成30年度末まで2年延長となります。

16.中小企業向け租税特別措置の適用停止

中小企業向け租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均額)が年15億円を超える事業年度においては、その租税特別措置の適用が停止となります。 適用は、平成31年4月1日以後開始事業年度からとなります。

以上。

法定調書と給与支払報告書: 提出期限 1月末

1. 法定調書とは

12月の最終給与支給までに、 従業員の年末調整が行なわれ一区切りついたと思っても、 翌1月末までに提出、申告等の対応が必要となるものがあります。 その1つに法定調書作成がありますが、 これは、所得税法、相続税法等の法律の規定により、給与、報酬、家賃等の支払者(提出義務者)が、それらの1年間の支払いに関して、支払先の氏名、住所、支払金額等を記載し所轄税務署に提出が義務付けられている書類(全部で61種類ほど)です。この主目的は、税務署が適正な課税の確保を図ることを目的に支払事実を把握し、受給者が正しく所得を申告していることの確認手段になるものです。 提出すべき法定調書は、 特定項目の一定金額以上のものですが、 源泉徴収の対象になるものとは限っておりませんので留意してください。

なお、 平成28年度分の行政機関への提出にあたり、 マイナンバー(個人番号、等)が必要となっています。

2. 提出する一般的な6種類の法定調書と支払内容

提出する調書 支 払 内 容
給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書(注2) 俸給、給料、賞与等の支払
退職所得の源泉徴収票と特別徴収票(注2) 退職手当(注1)、一時恩給等の支払
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 ① 原稿料、印税、講演料、工業所有権の使用料等の支払

② 弁護士、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士、建築士等への報酬、料金の支払

③ 外交員、集金人、電力量計の検針人、モデル、プロ野球の選手、プロボクサー、騎手等への報酬、料金、契約金の支払、芸能人への出演料等の支払

④ バー、キャバレー等のホステス、コンパニオン等への報酬、料金の支払

⑤ 広告宣伝のための賞金、馬主への競馬の賞金の支払

不動産の使用料等の支払調書 地代、家賃、権利金、礼金、更新料、承諾料、名義書換料等の支払
不動産等の譲受の対価の支払調書 土地、建物等の譲受け(売買、交換、収用等)の代金の支払
不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書 土地、建物等の売買や貸付の仲介手数料の支払

 

注1:死亡退職による退職手当等の場合には、相続税法による「退職手当等受給者別支払調書」を提出することになります。

注2:地方税法で提出が義務付けられています「給与支払報告書」及び「特別徴収票」は、

名称が異なりだけでそれぞれ「給与所得の源泉徴収票」及び「退職所得の源泉徴収票」と記載内容は同じものです。

3. 提出範囲

支払調書は、一定金額以上のもの等(支払金額の提出範囲)に該当するときに提出が必要となります。主な提出範囲は次のとおりです。

 

(1) 給与所得の源泉徴収票

 

年末調整 受給者区分 提出範囲(年間)
年末調整をしたもの 法人役員(相談役、顧問など含む) 150万円超
弁護士、公認会計士、 税理士等 250万円超
上記以外の人(従業員) 500万円超
年末調整をしなかったもの 給与収入2,000万円超 全部
「扶養控除等申告書」を提出した者のうち退職した者等 250万円超(法人役員は50万円超)
「扶養控除等申告書」を提出しなかった者 50万円超

 

(2) 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

 

  1. 所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20の規定に基づく報酬 料金等の支払
区 分 提出範囲
* 外交員、集金人、検針人、プロボクサー、ホステス等の報酬、料金

* 広告宣伝のための賞金

* 社会保険診療報酬支払基金からの診療報酬

年間50万円超
馬主に支払う競馬の賞金 1回75万円超
プロ野球選手等の報酬及び契約金

弁護士、税理士等の報酬

作家、画家などの原稿料、画料

講演料、 その他の報酬、 料金等

年間5万円超

 

当該支払調書の記載の概要は以下のとおりです。

① 支払を受ける者: 受給者の住所・名称を記入。

② 区分: 例えば、 原稿料、 印税(書きおろし初版印税、 その他の印税、等)、 さし絵料、 翻訳料、 通訳料、 脚本料、 作曲料、 講演料、 教授料、 著作権・工業所有権の使用料、 放送謝金、 映画・演劇の出演料、 弁護士報酬、 税理士報酬、 公認会計士報酬、 外交員報酬、 ホステス等の報酬、 契約金、 広告宣伝のための賞金、 競馬の賞金、 診療報酬、 等と記入。

③ 細目: 上記の区分内容をより詳細化して記入。

④ 支払金額: その年度中に支払の確定した金額を記入。 従って、 未払いのものも含み、 その場合には未払金額を各欄の上段に内書で記入。

提出範囲の金額基準の判定においては、 原則として消費税及び地方消費税(消費税等)の額を含めて行ないます。 但し、 消費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで判定しても構いません。

支払金額の記入にあたっては、 原則として消費税等の額を含めて記入します。 但し、 費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで記入しても構いませんが、 その場合には、 その消費税等の額を摘要欄に記入する必要があります。

⑤ 源泉徴収税額: その年度中の支払の確定した金額に基づく源泉徴収すべき税額を記入。 未払いのものがある場合には、 その未徴収税額を上段に内書で記入。

⑥ (摘要): 必要に応じて記入。

⑦ 支払者: 支払者の住所・名称及び電話番号を記入。

記載上の注意事項:

法人に支払われる報酬、 料金等で源泉徴収の対象とならないもの、 或いは支払金額が源泉徴収の限度額以下であるため源泉徴収していない報酬、 料金等についても、 提出範囲の金額基準以上のものは税務署への支払調書の提出が必要となります。

 

(3) その他の主な法定調書

 

法定調書 提出範囲
退職所得の源泉徴収票 法人役員(相談役、顧問その他これらに類する者も含む)が受給者であるもの
不動産の使用料等の支払調書

注:不動産、 不動産の上に存する権利、 総トン20トン以上の船舶、 航空機に対する対価を受領する法人と不動産業の個人の方が提出義務者となります。

年間15万円超

但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。

又、法人に対し賃借料のみを支払っている場合にはその支払調書の提出は不要ですが、支払が権利金、更新料等は提出が必要となります。

不動産等の譲受の対価の支払調書 年間100万円超
不動産等の仲介料の支払調書 年間15万円超

但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。

公的年金等の源泉徴収票 「扶養控除等申請書」を

提出した者:60万円超

提出しなかった者:30万円超

配当等の支払調書 10万円超(中間配当がある場合は5万円超)
生命保険契約等の一時金の支払調書 100万円超
損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書 100万円超
株式等の譲渡対価の支払調書 同一人に対し100万円超

1回30万円超

国外送金等調書 1回200万円超

4. 提出先と提出期限

法定調書の提出期限は、原則として、その年の翌年の1月31日までとなっており、所轄税務署に提出することになります。税務署に提出する場合には、法定調書の合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)と各法定調書(提出範囲のもの)を添付して提出します。

 

受給者(個人・法人)の全員にも、 翌年の1月31日まで帳票が送付されることになっていますので、 個人では確定申告の作成資料等に使用、 又、 法人では受給金額・内容との照合等に使用することができます。

 

法定調書の提出方法に関して、基準年(前々年)の提出枚数が1,000枚以上であった法定調書の場合には、光ディスク等又はe-Taxによる提出が義務付けられています。

5. 給与支払報告書(給与所得の源泉徴収票)

サラリーマンの方にはお馴染みの給与所得の源泉徴収票は、 その年の給与所得に関する年末調整後(給与収入が2千万円超の方等は年末調整は行われません)の源泉徴収税額や税額計算情報が集約され記載されています帳票です。 税務署には、 一定金額以上の給与収入の「源泉徴収票」が提出され、 又、 同一内容ですが様式名が異なる給与支払報告書が個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます。

「給与支払報告書」(総括表を添える)提出先は、受給者(全員分)のその年の翌年の1月1日現在の住所地の市区町村となり、 提出期限は翌年の1月31日までとなっています(個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます)。

年度の途中で退職した者に対する給与支払報告書は、 支払額が30万円以下の場合には提出を省略することができます。 なお、退職金の「特別徴収票」の提出は、役員のみであり従業員分は提出する必要はありません。 その提出先は、 受給者の退職日現在の住所地の市区町村となっており、 退職後1ケ月以内の提出となります。

市区町村では、 提出された資料から住民税の税額計算をおこない、 翌年6月から徴収を開始し1年間で納付を行ないます。 なお、給与所得を基因する住民税の納付方法は、原則として、会社等が所得税と同様に給与より天引きして納付するという特別徴収となっています。