ふるさと納税の適用を見直し、2019年6月1日以後に行われる寄附金から適用となります。
総務大臣は、所定の基準に適合する都道府県等をふるさと納税適用の対象とします。
① 寄附金の募集を適正に実施する都道府県等
② 上記都道府県等で返礼品は、以下のいずれも満たす都道府県等であること。
(イ) 返礼品の返礼割合は3割以下とすること
(ロ) 返礼品は地場産品とすること
総務大臣から指定された都道府県等に対する寄付金のみがふるさと納税(個人住民税の寄附金税額控除)の適用対象となります。対象外ものは、通常の寄附金控除として取扱うことになります。
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大法人(資本金1億円超の法人等)の電子申告義務化
2020年4月1日以後の開始事業年度から大法人が行う税務申告(添付書類を含めて)はe-Taxにより提出しなければならなくなりました。従いまして、電子申告義務化に向けて書類の作成方法の見直しが必要となるものもあるかと思います。以下は、電子申告義務化の概要となります。
1.対象法人
(1)内国法人のうち、その事業年度開始時の資本金額又は出資金額が1憶円超の法人
(2)相互会社、投資法人及び特定目的会社
2.対象税目及び申告書
(1)国税の法人税及び地方法人税並びに消費税及び地方消費税
(2)地方税の法人住民税及び法人事業税
上記税目の確定申告書、中間(予定)申告書、仮決算の中間申告書、修正申告書及び還付申告書
3.電信申告対象書類
申告書及び申告書に添付すべきものとされる書類(財務諸表、勘定科目内訳明細書など)の全て
4.届出規定
対象法人は、所轄税務署に適用開始事業年度等を記載した届出書(e-Taxによる申告の特例に係る届出書)の提出が必要となります。
5.適用日
2020年4月1日以後の開始事業年度(課税期間)から適用
6.罰則規定
電子申告の義務化は、申告方法をe-Taxに限定するもので、書面による申告書の提出は認められません。 このため、電子申告の義務化の対象となる法人が、e-Taxにより法定申告期限までに申告書を提出せず、書面により提出した場合、その申告書は無効なものとして取り扱われることとなり、無申告加算税の対象となりますので、ご注意ください。
なお、法定申告期限までに書面により申告書を提出した後、法定申告期限後にe-Taxにより提出した場合でも同様です。
7.添付書類のデータ形式
電信申告義務化の対象書類は、PDF形式でのデータ提出は認められていませんので注意が必要です。これまで認められていたデータ形式として、財務諸表はXBRL形式、申告書・勘定科目内訳明細書・その他はXML形式でしたが、今後は、CSV形式(CSVはテキストファイルですので、データをカンマ区切りにして保存しますが、名前をつけて保存のときに拡張子を.CSVとすることでエクセル形式やワード形式をCSV形式に変換可能)が認められることになります。
なお、申告書に証明書などの書類添付が求められものについては、イメージデータ化(PDF化)によりe-Taxにより提出が可能となります。法人税等の申告に当たって、別表や添付書類のうち、e-Taxにより提出できない別表等については(こうした別表については国税庁が提供しているe-Taxソフトを利用するなどして提出していただく必要があります)、PDF形式による提出も認めることとしています。
8.法人税確定申告書における電信申告義務化の対象書類
(1)法人税申告書
(2)法人税申告書別表
(3)財務諸表
(4)勘定科目内訳明細書
(5)法人(会社)事業概況書
(6)適用額明細書
(7)第三者作成等の添付書類
なお、一部を書面して提出することは認められません。又、光ディスクによる提出は、e-Taxによる提出ができない場合(添付書類が大量にある場合等)となります。
社会保険料等の保険料納付及び年金受給のタイミング
公的年金保険・健康保険等の社会保険料納付がいつまで続くのか、働く年齢との関係で決まりますが、原則的な取り扱いを周知されている方は少ないような気がします。以下に現行制度での内容を確認してみたいと思います。
1.社会保険料の範囲
公的な保険に関しまして各種の用語が出てきますが、国民年金・厚生年金、国民健康保険・健康保険・後期高齢者医療保険、介護保険、雇用保険、労働保険等が代表的なものです。以下では、年金と医療に関する保険に言及したいと思います。
2.年金(厚生年金・国民年金)
| 保険料の納付年齢 | 年金の受給年齢 | ||
|---|---|---|---|
| 厚生年金 | 会社員として会社に勤務の方 | 69歳(最長)まで | 65歳から(原則):老齢基礎年金と老齢厚生年金(注1)の受給 |
| 会社員の配偶者(妻:第3号) | 59歳(原則):保険料の負担なし(但し、会社員が65歳になった時点で第3号から第1号となり60歳になるまで国民年金分の保険料の納付義務が発生) | 65歳から(原則):老齢基礎年金の受給 | |
| 国民年金 | 自営業等の方 | 59歳(原則) | 65歳から(原則):老齢基礎年金の受給 |
厚生労働省が発表した平成31年度(2019年度)の国民年金から支給される老齢基礎年金は、20歳から60歳まで40年間保険料を支払った人で、1人1カ月65,008円。また、会社員の厚生年金から夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額として1家庭1カ月221,504円とされています。この年金額だけでは、少なくとも都市部では老後の生活資金としては十分とは言えないと思います。
3.医療(健康保険・介護保険)
| ~39歳 | 40歳~ | ~64歳 | 65歳~ | 75歳~ | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 健康保険 | 会社員(健康保険) | 健保組合、又は 協会けんぽ | 会社経由で給与から天引納付(保険料の半額は会社負担のうえ、配偶者の保険料はゼロ) | 会社経由で給与から天引納付(保険料の半額は会社負担のうえ、配偶者の保険料はゼロ) | 会社経由で給与から天引納付(保険料の半額は会社負担のうえ、配偶者の保険料はゼロ) | 会社経由で給与から天引納付(保険料の半額は会社負担のうえ、配偶者の保険料はゼロ) | 後期高齢者医療保険制度(個人で納付) |
| 自営業等(国民健康保険) | 市区町村 | 個人で納付 | |||||
| 介護保険 | 会社員 自営業等 | 非該当 | 第2号被保険者 (健康保険料と一緒に介護保険料を納付) | 第1号被保険者 (年金から天引き、不足分は別途納付) |
(注1)老齢厚生年金(在職老齢年金)の支給カット(支給停止)
厚生年金保険は、 雇用中で70歳未満の方が加入するものですので、 70歳になりますと厚生年金の加入資格が無くなり脱退手続きをします。 脱退後は厚生年金の保険料は徴収しませんが、 それ以前の60歳から在職中で厚生年金保険料を納めながら老齢厚生年金を受給する場合、 その年金額の全部又は一部が以下に示すように1カ月間の年金受給額と給与収入の合計額に応じてカット(支給停止)されることがあります (国民年金部分の老齢基礎年金についてのカットはありません)。 雇用中に老齢厚生年金を受給される場合の年金は、「在職老齢年金」といいます。
老齢厚生年金のカット額(在職老齢年金の受給額)について:
| 年齢 | 1カ月の年金額(基本月額)と給与(総報酬月額相当額 = 現時点の標準報酬月額 + 直近1年間の賞与総額 X 1/12) の合計額(1カ月間の金額判定基準) | 老齢厚生年金のカット金額 |
|---|---|---|
| 60歳から64歳 | 月28万円以下の場合 | カット無し(年金は全額支給) |
| 月28万円超の場合 | 計算が多少複雑になります(下図を参照) | |
| 65歳以上 | 月46万円以下の場合 | カット無し(年金は全額支給) |
| 月46万円超の場合 | 月46万円を超えた額の2分の1 |
年齢が60歳~64歳で1カ月の年金受給額と給与収入の合計額が28万円を超える場合の年金カット額:
| 基本月額 | 総報酬月額相当額 | 支給される月額の年金額 |
|---|---|---|
| 28万円以下 | 46万円以下 | 基本月額 - (総報酬月額相当額 + 基本月額 - 28万円) ÷ 2 |
| 46万円超 | 基本月額 -{(46万円 + 基本月額 - 28万円) ÷ 2 + (総報酬月額相当額 - 46万円)} | |
| 28万円超 | 46万円以下 | 基本月額 - 総報酬月額相当額 ÷ 2 |
| 46万円超 | 基本月額 -{46万円 ÷ 2 + (総報酬月額相当額 - 46万円)} |
なお、上記の総報酬月額相当額の「46万円」は、2018年度の適用であり、2019年度(平成31年4月分以降)は「47万円」へ変更となっています。最近では、年度ごとに金額が交互に変更になってきています。
働きながら年金を受給する場合に、一定の年金額を調整する制度である在職老齢年金が、就労意欲を抑制しているとの指摘もあり、当該年金額の減額調整する制度を見直す方向にあります。
定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い(法人税基本通達案)
国税庁は先月、生命保険各社が節税対策になると販売していた解約返戻率が高い定期保険等について、課税ルールの見直しの基本通達案を発表しています。その概要は以下の通りですが、来月の6月には外部コメントを受け最終化される予定になっています。過熱した節税保険ブームに歯止めをかけるということから、見直しの基本方針には変更が無いかと思われます。
1.対象の保険とは
法人が契約者で役員又は使用人(これらの親族も含む)を被保険者とする保険期間が3年以上の定期保険又は第三分野保険で最高解約返戻率が50%超の加入保険が対象となります。
従いまして、対象外となる全損タイプの定期保険等は、次のものになります。
(1)保険期間が3年未満の定期保険等
(2)最高解約返戻率が50%以下の定期保険等
(3)最高解約返戻率が70%以下、かつ、年換算保険料相当額(保険料総額÷保険期間)が20万円以下の定期保険等
2.保険料の取扱い
(1)最高解約返戻率 50%超~70%以下のケース
| 保険開始から終了までの各期間 | 支払保険料 | 積立保険資産 | |
|---|---|---|---|
| 資産計上 | 損金計上 | ||
| 100分の40相当期間(資産計上期間) | 40% | 60% | 40%積立 |
| 資産計上期間経過後から100分の75相当期間 | - | 100% | - |
| 100分の75相当期間から保険終了まで | - | 100% | 当該期間に均等取崩して損金計上 |
注:但し、被保険者1人当たり年換算保険料相当額が20万円以下の場合には、全額損金計上。
(2)最高解約返戻率 70%超~85%以下のケース
| 保険開始から終了までの各期間 | 支払保険料 | 積立保険資産 | |
|---|---|---|---|
| 資産計上 | 損金計上 | ||
| 100分の40相当期間(資産計上期間) | 60% | 40% | 60%積立 |
| 資産計上期間経過後から100分の75相当期間 | - | 100% | - |
| 100分の75相当期間から保険終了まで | - | 100% | 当該期間に均等取崩して損金計上 |
(3)最高解約返戻率 85%超のケース
| 保険開始から終了までの各期間 | 支払保険料 | 積立保険資産 | |
|---|---|---|---|
| 資産計上 | 損金計上 | ||
| 開始から最高解約返戻率となる期間(各期間において、その解約返戻金相当額から前期の解約返戻金相当額を控除した金額を年換算保険料相当額で除した割合が70%を超える期間がある場合には、その超えることとなる最も遅い期間)の終了までの期間(資産計上期間:但し、資産計上期間が5年未満の場合には、開始から5年経過までとし、保険期間が10年未満の場合には、開始から当保険期間の100分の50に相当する期間終了までとする) | 支払保険料X最高解約返戻率X70%(但し、保険期間開始10年までは70%ではなく90%) | 支払保険料X最高解約返戻率X30%(但し、保険期間開始10年までは30%ではなく10%) | 所定割合の積立 |
| 資産計上期間経過後 | - | 100% | - |
| 資産計上期間経過後で解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後から保険終了まで | - | 100% | 当該期間に均等取崩して損金計上 |
3.記帳処理の例示
設例:
保険期間:20年(事業年度の月始め契約)
保険料:月額20万円(年額240万円)
最高解約返戻率:70%
(1)資産計上期間
20年X40%=8年目までは、保険料の60%は資産計上、40%は損金計上
各年の年間の仕訳:
(借方)積立保険資産 144万円 (貸方) 現預金 240万円
保険料 96万円
(2)資産計上期間後から75%相当経過までの期間
9年目(資産計上期間後)から15年目(20年X75%)までは、保険料の100%は損金計上
各年の年間の仕訳:
(借方)保険料 240万円 (貸方) 現預金 240万円
(3)75%相当経過後から契約終了までの期間
20年-15年(20年X75%)=5年間(契約終了までの残期間)は、保険料の100%は損金計上
144万円X8年間=1,152万円(積立保険資産の総額)
1,152万円÷5年=230.4万円(年間積立保険資産の取崩額)は、取崩し各年に損金計上
各年の年間の仕訳:
(借方)保険料 470.4万円 (貸方) 現預金 240万円
積立保険資産 230.4万円
以上
働き方改革法施行による労働環境の変化
残業時間規制等を柱とする働き方改革関連法が4月に施行され1ヵ月が経過しましたが、今後の働き方にどの様に影響されてくるのか、改めて導入時期から確認してみたいと思います。
1.2019年4月(大企業)から残業時間規制
A. 労働時間給のケース:残業時間の上限規制
残業時間は、原則として月45時間、年間360時間が上限
特例として最大でも単月100時間以内、年間720時間以内(但し、2~6ヵ月平均80時間以内、月40時間超は年6ヵ月までの制限)
違反事業者の罰則:6ヵ月以下懲役または30万円以下の罰金
適用開始時期:大企業は2019年4月
中小企業は2020年4月
特定業種は2024年4月(建設業、自動車運転業、医師などの業種)
B 脱時間給(高度プロフェッショナル)制度の導入
労働時間に縛られず、仕事の成果で報酬が決まる制度が新たに導入され、適用対象者は年収が1,075万円以上で、かつ、対象業種は以下の5業種に限定されます。
① 金融商品の開発(金融工学の知識などに基づき、金融商品を開発する業務)
② トレーダーやディーラー(金融知識を用いて自ら投資判断し、資産運用したり有価証券を売買したりする業務)
③ アナリスト(調査・分析のうえで今後の企業価値を予測し、推奨銘柄について投資判断につながるレポートを作成や助言する業務)
④ コンサルタント(コンサルティング会社で顧客企業の事業調査・分析をもとに経営戦略を助言・支援する業務
⑤ 研究開発(新たな技術や商品の研究開発する業務)
当制度を導入する条件:労使の委員会で対象業務や社員の範囲などを決議し、労働基準監督署に届出る必要があります。又、対象社員には年104日以上の休日を取得させる他、健康確保措置も組み合わせます。例えば、翌日の勤務までに11時間以上間隔を空けることや、臨時の健康診断を受けさせるなど、健康を守る対策の中から労使で選択します。対象社員から書面での同意を得ることも必要となります。
2.2020年4月(大企業)から同一労働同一賃金
同一労働同一賃金は、同じ企業のなかで同じ仕事をしていれば、正規か非正規かといった雇用形態に関係なく同じ待遇(賃金)であるべきという規制です。同一賃金ガイドラインは以下のとおりです。
| 待遇差異を認めない | 手当 | 出張手当、通勤手当、深夜・休日手当、単身赴任手当 |
| 福利厚生 | 食堂、更衣室、慶弔休暇、病気による休職 | |
| 待遇差異を認める | 基本給 | 能力や経験、成果などに差が有れば、違いに応じて支給 |
| ボーナス | 業績への貢献に差が有れば、違いに応じて支給 |
適用開始時期:大企業は2020年4月
中小企業は2021年4月
3.2023年4月から法定時間外労働した場合の残業割増賃金率
| 残業時間が月60時間以内 | 残業時間が月60時間超 | |
|---|---|---|
| 大企業 | 25%以上 | 50%以上 |
| 中小企業 | 25%以上 | 50%以上(注) |
注:残業割増賃金を軽減(25%)する特例が廃止となります。
以上
賃上げ・設備投資促進税制:所得拡大促進税制の改組
2018年(平成30年)4月1日~2021年3月31日までの開始事業年度より(通常、2019年3月期末の企業より適用)、これまでの所得拡大促進税制は2018年(平成30年)3月31日の適用期限をもって終了し、賃上げ・設備投資促進税制に改組となりました。当制度の適用要件は、大企業と中小企業とは異なる内容となっています。
1.賃上げ・設備投資促進税制:大企業の場合
大企業において、十分な賃上げや国内設備投資を行った場合には、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができることになります。又、更に人材投資を増加させた企業に対しては、税額控除割合が上乗せとなります。なお、これまでの基準事業年度、継続雇用者の定義及び適用要件が変わった点に留意する必要があります。
| 対象法人・対象期間 | 青色申告の大法人で、2018年4月1日~2021年3月31日までの期間に開始する各事業年度 但し、設立初年度は対象外 |
| 適用3要件と税額控除 | ①賃金要件(2要件): (イ) 雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額 (ロ)(継続雇用者給与等支給額 - 継続雇用者比較給与等支給額)÷ 継続雇用者比較給与等支給額 ≧ 賃上げ率3% ②投資要件: (ハ) 国内設備投資額 ≧ 減価償却費総額 X 90% 税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)X 15% = 税額控除額 |
| 上乗せ要件 (適用第4要件)と税額控除 | ③教育費要件: (ニ) (教育訓練費 - 比較教育訓練費)÷ 比較教育訓練 ≧ 20% 教育訓練費要件を満たし上乗せ税額控除率(20%)を適用する場合には、申告書に明細書(教育訓練等の実施時期、実施内容、受講者及び支払証明)を添付する必要があります。 税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)X 20% = 税額控除額 |
| 国内雇用者の範囲 | 国内雇用者とは、 役員、役員の特殊関係者及び使用人兼務役員を除く使用人で国内事業所に勤務し賃金台帳に記載されている雇用者(従って、 雇用保険の一般被保険者でない雇用者も含む) |
| 役員の特殊関係者 | 役員の特殊関係者とは、次に掲げる者をいいます。 ① 役員の親族 (配偶者、6親等以内の血族、及び3親等以内の姻族) ② 役員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者 ③ 上記以外の者で役員から生計の支援を受けているもの ④ 上記の者と生計を一にするこれらの者の親族 |
| 継続雇用者の範囲 | 継続雇用者とは、適用年度(当期)およびその前年度の両方において給与等の支給(24ヵ月間継続)を受けた国内雇用者であり、継続雇用者に係る金額は、雇用保険法における一般被保険者に該当する者に対して支給したものに限ります(年齢は65歳未満の国内雇用者)が、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する継続雇用制度の対象である者に対して支給したものを除く、ということになっています。 具体的に継続雇用者とは、 ①前期及び当期の全ての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者であること ②前期及び当期の全ての期間において雇用保険の一般被保険者であること(加入手続きの有無は関係ありません。又、一般被保険者とは、年齢65歳未満の雇用者です) ③前期及び当期の全ての又は一部の期間において高年齢再雇用者制度の対象となっていないこと 従って、一定の週20時間以上のパート・アルバイトで雇用保険法の適用要件を満たす一般被保険者は含まれます。 つまり、 第1に、雇用保険法における一般被保険者に該当する者に対して支給したものに限られますので、 (イ) 正社員、及び (ロ)パート・アルバイトのうち週所定労働時間が20時間以上で継続して31日以上の雇用が見込まれ一般被保険者になっている者 ということになりますが、 但し、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する継続雇用制度の対象である者に対して支給したものを除くとされていますので、定年が65歳未満の会社で、65歳未満で定年退職した者を対象とする継続雇用制度を採用している会社の場合、定年以降の継続雇用制度の対象者に支給した金額は控除しなければなりません(この対象者の定年後の給与額は、 通常引下げられることとなり会社にとって不利とならない配慮により含めない処置となっています)。 |
| 給与等の範囲 | 給料、 賃金、 賞与等で賃金台帳に記載された支給額(非課税とされる通勤手当等の額も含む)のみを対象としますが、 合理的な方法により継続して給与等の支給額を計算している場合には、 これも認められます。 退職金等は対象外です。 |
| 雇用者給与等支給額・比較雇用者給与等支給額 | 雇用者給与等支給額とは、適用年度(当期)の損金算入される国内雇用者に対する給与等支給額。 なお、 控除すべきものとして、 国等から支給を受けた助成金や出向先法人から受けた出向者分の給与負担金受給額、 等は控除します。 なお、 出向先法人では、 その賃金台帳に出向者を記載している時には、 その給与負担金は含まれます。 比較雇用者給与等支給額とは、比較用年度(前期)の損金算入される国内雇用者に対する給与等支給額。 前期の事業月数が12ヵ月未満の時には、年換算に調整計算を行います。 |
| 継続雇用者給与等支給額・継続雇用者比較給与等支給額 | 継続雇用者給与等支給額とは、適用年度(当期)における国内の継続雇用者に対する給与等支給額をいいます。 継続雇用者比較給与等支給額とは、比較年度(前期)における国内の継続雇用者に対する給与等支給額をいいます。 |
| 国内設備投資額とは | 国内で当期中取得(取得又は製作もしくは建設)の減価償却資産(有形固定資産、無形固定資産及び生物)で当期末に有する取得価額の合計額をいう。原則、国内資産に対する資本的支出の金額も含む。又、少額減価償却資産及び一括償却資産の金額も含む。なお、圧縮記帳が適用している場合には、適用前の実際の取得金額を含める。 |
| 減価償却費総額とは | 全減価償却資産の損金経理した減価償却費の総額(過年度分の減価償却超過額の当期認容額を除き、特別償却準備金の積立額を含む)をいう。なお、当期の減価償却費総額の対象は、法人が有する全ての減価償却資産であることから、国外で保有する資産に対する減価償却費も含まれます。 |
| 教育訓練とは | 国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を取得させ、又は向上させる次の費用(外部支払)をいう。 ①法人が教育訓練等を自ら行う場合の社外講師謝金等の費用 ②他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合のその委託費 ③他の者が行う教育訓練等に参加させる場合のその参加に要する費用(授業料、受講料、受験手数料、等) なお、従業員の資格取得費に要する費用のうち教育訓練費の対象は以下のとおりです。 |
| 対象 | *業務遂行に必要となる資格取得費 *資格取得後の法定更新講習会への参加費用(更新料等は除く) |
| 対象外 | *従業員が自己研鑽等の目的で資格を取得した場合の受験料等 *福利厚生の一環として支払った報奨金 *資格取得のために企業側が用意した教材費 |
| 比較教育訓練費とは | 前期及び前々の教育訓練費の年平均額をいう。 |
| 税額控除額の上限 | 税額控除の上限は、法人税額の20% |
適用要件等を整理しますと、
(1) 要件
* 給与等支給総額の対前年度増加
* 継続雇用者給与等支給額:対前年度増加率3%以上
* 国内設備投資額:当期の減価償却費総額の90%以上
(2) 税額控除
* 給与等支給総額の対前年度増加額の15%の税額控除
* 追加要件:教育訓練費増加要件(当期の教育訓練費:対前期・前々期の教育訓練費の平均増加率20%以上を満たす場合には、控除率を5%上乗せ(合計20%の税額控除)
2.賃上げ・設備投資促進税制:中小企業の場合
中小企業において、十分な賃上げを行った場合には、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができることになります。又、更に人材投資を増加させた企業に対しては、税額控除割合が上乗せとなります。なお、大企業と同様に適用要件等が変更になっています。
| 対象法人・対象期間 | 青色申告の中小企業者等で、2018年4月1日~2021年3月31日までの期間に開始する各事業年度 但し、設立初年度は対象外 |
| 中小企業者等 | 中小企業者等とは、青色申告法人のうち、中小企業者又は農業協同組合等をいいます。 中小企業者とは、次に掲げる法人をいいます。 ① 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人 ただし、同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます) に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人、 及び2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人を除きます。 ② 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人 |
| 適用2要件と税額控除額 | ①賃金要件(2要件): (イ) 雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額 (ロ)(継続雇用者給与等支給額 - 継続雇用者比較給与等支給額)÷ 継続雇用者比較給与等支給額 ≧ 賃上げ率1.5% 税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)X 15% = 税額控除額 |
| 上乗せ要件 (適用3要件)と税額控除額 | 要件(3要件): (イ) 雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額 (ロ)(継続雇用者給与等支給額 - 継続雇用者比較給与等支給額)÷ 継続雇用者比較給与等支給額 ≧ 賃上げ率2.5% (ハ) 次のいずれかの要件を満たす場合 Ⅰ 教育費要件: (教育訓練費 - 前期教育訓練費<中小企業比較教育訓練費>)÷ 前期教育訓練費 ≧ 10%の場合、又は Ⅱ その事業年度終了日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされた場合 税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)X 25% = 税額控除額 |
| 国内雇用者の範囲 | 大企業と同じ |
| 役員の特殊関係者 | 大企業と同じ |
| 継続雇用者の範囲 | 大企業と同じ |
| 給与等の範囲 | 大企業と同じ |
| 雇用者給与等支給額・比較雇用者給与等支給額 | 大企業と同じ |
| 継続雇用給与等支給額及び継続雇用比較給与等支給額 | 大企業と同じ |
| 教育訓練とは | 大企業と同じ |
| 中小企業比較教育訓練費とは | 当期開始前の前1年以内に開始した各事業年度の教育訓練費(前期の教育訓練)をいう。 |
| 税額控除額の上限 | 税額控除の上限は、法人税額の20% |
適用要件等を整理しますと、
(1) 要件
*給与等支給総額の対前年度増加
*継続雇用者給与等支給額:対前年度増加率1.5%以上
(2) 税額控除
*給与等支給総額の対前年度増加額の15%の税額控除
*追加要件:継続雇用者給与等支給額:対前年度増加率2.5%以上であり、かつ、教育訓練費増加要件(当期の教育訓練費:対前期の教育訓練費の増加率10%以上、又は中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明を満たす場合には、控除率を10%上乗せ(合計25%の税額控除)
以上
新たな定款認証制度の平成30年11月30日から導入
新たに第13条の4が新設された公証人法施行規則が平成30年11月30日から施行され、株式会社、一般社団法人及び一般財団法人の定款認証の方式が変わっています。公証人に定款認証を受けるときに、「実質的支配者となるべき者の申告書」を提出し、暴力団員等に該当するか否かを申告しなければならなくなりました。確認の結果、暴力団員等に該当した場合には、原則として、公証人は定款認証を拒むことになります。
1.改正の趣旨
法人の実質的支配者を把握することにより、法人の透明性を高め、暴力団員等による法人の不正使用、マネーロンダリングやテロ資金供与等を防止することを目的とするものであり、国内外からの要請に基づくものです。特に、平成31年に行われるFATF(資金洗浄に関する金融活動作業部会)による第4次対日相互審査に対応するもので、仮に、この改正が行われなければ金融機関間での海外送金が制限される可能性がありました。経済活動に対する国際的な信用を向上させるためにも必要なことでした。
2.施行時期
平成30年11月30日以降の申請からの適用となっています。
3.対象となる法人
株式会社、一般社団法人及び一般財団法人のみが適用対象ですので、特定目的会社や税理士法人等の定款認証手続きは、従来通りです。
4.実質的支配者とは
その法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある者として主務省令で定める者(犯罪による収益の移転防止に関する法律4条1項4号)となっており、株式会社の場合における具体的な該当事由として、認定する手順は次の通りです。
(1)議決権の直接保有及び間接保有が50%超となる自然人となるべき者の存否
直接保有:自然人が発起人となり、出資して株式を保有すること。
間接保有:自然人の支配法人(当該自然人が50%超の議決権を保有する法人)が発起人となり、出資して株式を保有すること。
保有議決権数の認定:直接保有及び間接保有の合計数による。
上場企業等及びその子会社は、自然人とみなされます。
(イ)該当者ありのケース
該当者1名が実質的支配者(1号該当)
但し、この者が事業経営を実質的に支配する意思又は能力(実質支配意思等)がないことが明らかな場合には実質的支配者非該当(その場合には、他の者につき(3)で判定する)
(ロ)該当者なしのケース
下記(2)で認定
(2)上記(1)による実質的支配者が存在しない場合には、
議決権の直接保有及び間接保有が25%超となる自然人となるべき者の存否
(イ)該当者ありのケース
該当者全員が実質的支配者(1号該当)
但し、このうち実質支配意思等がないことが明らかな者は実質的支配者非該当(全員非該当となると(3)で判定する)、また、実質支配意思等のある25%超保有者がいても、他に実質支配意思等がない議決権50%超保有者がいるときは(3)で判定する
(ロ)該当者なしのケース
下記(3)で認定
(3)上記(1)及び(2)のいずれにも該当する者がいない場合には、
出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力を有する自然人となるべき者の存否
(イ)該当者ありのケース
該当者全員が実質的支配者(2号該当)
(ロ)該当者なしのケース
下記(4)で認定
(4)上記(1)、(2)及び(3)のいずれにも該当する者がいない場合には、
設立する株式会社の代表権を持つ取締役が実質的支配者(4号該当)
5.認証手続きの概要
(1)定款認証申請前の手続き
① 定款案の公証人への送付と検討依頼
従来通り、メール、ファックス等で定款案を送付する。
② 「実質的支配者となるべき者の申告書」の送付
「実質的支配者となるべき者の申告書」(日本公証人連合会のホームページから書式をダウンロードできます)を作成し、署名押印又は記名押印を付して、公証人に送付する。当申告書には、次の資料を添付します。
Ⅰ 実質的支配者となるべき者の本人特定事項等が明らかになる資料
* 自然人の場合:運転免許証・旅券・マイナンバーカード・在留カード等の写し等(印鑑証明書もOK)
* 法人の場合:全部事項証明書及び印鑑証明書の原本、又は写し(代表者印を印鑑証明書の欄外等に押捺する)
Ⅱ 実質的支配者該当性の根拠資料
* 定款のみが根拠資料のときは、添付資料不要
* 定款以外の根拠資料があるときは、その原本又は写し
* 根拠資料なしのときは、申告書の実質的支配者該当性の根拠資料欄の「なし」を〇で囲むこと
Ⅲ 申告書及び添付書類の送付方法
公証人への送付は、持参、郵送、ファックス又はメールのいずれの方法で構いません。
以上から、公証人はデータベースより申告書記載の実質的支配者となるべき者が暴力団員等に該当するか否かをチェックし、該当しないと判断された場合には、そのまま認証手続きを行います。逆に、暴力団員等に該当する疑いを払拭できない場合には、必要に応じて関係機関に照会する等の手続きを経て最終結論を出します。その結果、法人の設立行為に違法性があると認められれば、定款認証は拒否されることになります。
(2)定款認証申請時の手続き
従来の申請内容と実質的に変わりはありません。
(3)定款認証文
定款の認証文には、実質的支配者となるべき者の申告があったこと等も記載されることになります。なお、希望があれば「申告受理証明書」が交付手数料なしで交付してもらいます。
以上
平成31年度(2019年度)税制改正大綱:法人税
平成30年12月14日に自民、公明党は2019年度(平成31年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の法人税に関する概要となります。
1.イノベーション促進のための研究開発税制の見直し
総額型について、研究開発を行う一定のベンチャー企業(設立後10年以内の法人のうち、当期において翌期繰越欠損金額を有するものとされています。スタートアップ企業が想定されています)の控除税額の上限が、当期の法人税額の40%(現行:25%)に引上げられます。税額控除率及び税額控除上限の上乗せ措置について、適用期限が2年延長されます。
オープン・イノベーション型(特別試験研究費に係る税額控除)について、対象に一般の民間企業(所定の要件を満たす研究開発型ベンチャー企業を含む)への一定の委託研究が追加されます。研究開発型ベンチャー企業への委託研究及び同企業との共同研究に係る税額控除率は25%とします。また、控除税額の上限が当期の法人税額の10%(現行:5%)に引上げられます。
高水準型は廃止され、試験研究費が高い水準の企業に対する税額控除率の割増措置を総額型に創設することによって、総額型に統合されます。
(1)総額型
⓵ 税額控除率
| 総額型(6%~14%) | 中小企業技術基盤強化税制(12%~17%) |
| 増減試験研究費割合>8%の場合: 9.9%+(増減試験研究費割合-8%)X0.3 | 増減試験研究費割合>8%の場合: 12%+(増減試験研究費割合-8%)X0.3 |
| 増減試験研究費割合≦8%の場合: 9.9%+(8%-増減試験研究費割合)X0.175 | 増減試験研究費割合≦8%の場合: 12% |
| 高水準型の廃止に伴う上乗せ措置 試験研究費割合>10%の場合: 上記税額控除率X{(試験研究費割合-10%)X0.5} |
⓶ 控除上限額
| 総額型(25%~35%) | 中小企業技術基盤強化税制(25%~35%) |
| 試験研究費割合≦10%の場合: 法人税額の25% | 増減試験研究費割合≦8%の場合: 法人税額の25% 増減試験研究費割合>8%の場合: 法人税額の35% |
| 試験研究費割合>10%の場合: 法人税額の25%+法人税額X{(試験研究費割合-10%)X2} | 試験研究費割合>10%の場合: 法人税額の25%+法人税額X{(試験研究費割合-10%)X2 |
(2)オープン・イノベーション型の税額控除率
| (2)オープン・イノベーション型の税額控除率 |
| 研究開発型ベンチャー企業との共同研究・一定の要件を満たす委託研究の費用の25% |
| 上記以外の共同研究・委託研究・企業間における一定の要件を満たす委託研究等の費用の20% |
2.中小企業等の支援
| 中小企業者の法人税率の軽減特例(年800万円以下の所得に対して15%) | 適用期限が平成33年3月31日までの2年延長 |
| 中小企業投資促進税制 | 適用期限が平成33年3月31日までの2年延長 |
| 中小企業経営強化税制は、特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行う | 適用期限が平成33年3月31日までの2年延長 |
| 商業・サービス等活性化税制は、経営改善設備の投資計画の実施を含む経営改善により、売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等が確認することを適用要件に追加されます。平成31年4月1日以後に取得等をする経営改善設備に適用されますが、一定の経過措置有り。 | 適用期限が平成33年3月31日までの2年延長 |
| 防災・減災設備の特別償却制度を創設: 中小企業等経営強化法の改正を前提に、中小企業における防災・減災設備の特別償却制度を創設されます。 青色申告書を提出する特定中小企業者のうち、同法の事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画の認定を受けたものが、同法の施行日から平成33年3月31日までの間に、これらの計画に係る特定事業継続力強化設備等(一定の機械装置、器具備品、建物附属設備)の取得等して、その事業用に供した場合、その取得価額の20%の特別償却ができる。 |
| 対象設備 | 具体例 | 最低投資額(取得価額) |
|---|---|---|
| 機械装置 | 自家発電機、排水ポンプ等 | 1台・1基が100万円以上 |
| 器具備品 | 制震・免震ラック、衛星電話等 | 1台・1基が100万円以上 |
| 建物附属設備 | 止水板、防火シャッター、排煙設備等 | 1件が160万円以上 |
| 租税特別措置法上の中小企業にかかる「みなし大企業」の範囲について適正化が図られ、例え資本金が1憶円以下であっても、以下の様に大規模法人の支配下にある孫会社も中小企業特例の適用対象外とされます。 ① 大法人(資本金5憶円以上の法人、相互会社等)の100%子会社 ② 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている法人 |
3.法人事業税(所得割及び収入割に限る)の税率改正
法人事業税の標準税率を次のとおり、平成31年10月1日以後に開始事業年度から適用となりますが、同日以後に改正予定でありました税率(下記の現行と記載)の再度の変更となっていますので留意すべきかと思います。
| 項目 | 標準税率 | |||
|---|---|---|---|---|
| 平成31年9月30日以前開始事業年度 | 平成31年10月1日以後開始事業年度 | |||
| 当初 (現行) | 改正 | |||
| ① 外形標準課税対象の普通法人(資本金1億円超)の所得割 | 資本金1億円超法人については、 後述記載を参照 | |||
| 軽減税率適用法人 | 年400万円以下の所得 | |||
| 年400万円超年800万円以下の所得 | ||||
| 年800万円超の所得 | ||||
| ② 上記①以外の普通法人(資本金1億円以下) の所得割 | ||||
| 軽減税率適用法人 | 年400万円以下の所得 | 3.4% | 5.0% | 3.5% |
| 年400万円超年800万円以下の所得 | 5.1% | 7.3% | 5.3% | |
| 年800万円超の所得 | 6.7% | 9.6% | 7.0% | |
| ③ 特別法人の所得割 | ||||
| 軽減税率適用法人 | 年400万円以下の所得 | 3.4% | 5.0% | 3.5% |
| 年400万円超の所得 | 4.6% | 6.6% | 4.9% | |
| (特定の共同組合等の年10億円超の所得) | (5.885%) | (7.9%) | (5.7%) | |
| ④ 収入金額課税法人(電気供給業、 ガス供給業及び保険業)の収入割 | 0.9% | 1.3% | 1.0% |
| 上記の税率は、不均一課税対象法人(中小法人)に適用される標準税率を示しています。 不均一課税(標準課税)対象となる中小法人の範囲は、各都道府県条例によって決められております。 例えば、神奈川県の場合には、以下に該当する法人には標準税率が適用され、それ以外の大法人となる場合には、超過税率の適用となります。 ① 法人事業税:資本金の額が2億円以下で、かつ、所得金額が年1憶55万円以下の法人 ② 法人県民税法人税割:資本金の額が2億円以下で、かつ、法人税額が年4千万円以下の法人 東京都の場合には、以下に該当する法人には標準税率が適用されます。 ① 法人事業税:資本金の額が1億円以下で、かつ、所得金額が年2,500万円以下、かつ、年収入金額が2億円以下の法人 ② 法人県民税法人税割:資本金の額が1億円以下で、かつ、法人税額が年1千万円以下の法人 軽減税率不適用法人: 3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人のうち、 資本金1,000万円以上である場合 |
資本金1億円超の普通法人に対する法人事業税と外形標準課税:
資本金の額又は出資金の額が1億円超の普通法人に対しては、原則として、外形標準課税制度が適用となっています。
資本金の1億円超の普通法人の法人事業税の標準税率は以下のようになっています。
| 課税項目区分 | 平成27年4月1日以後開始 | 平成28年4月1日以後開始 | 平成31年10月1日以後開始 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 当初 (現行) | 改正 | ||||
| 外形標準課税 | 付加価値割 | 0.72% | 1.2% | 1.2% | |
| 資本割 | 0.3% | 0.5% | 0.5% | ||
| 所得割 | 年400万円以下の所得 | 1.6% | 0.3% | 1.9% | 0.4% |
| 年400万円超800万円以下の所得 | 2.3% | 0.5% | 2.7% | 0.7% | |
| 年800万円超の所得 | 3.1% | 0.7% | 3.6% | 1.0% |
注1: 上記の税率は、不均一課税対象法人(中小法人)に適用される標準税率を示していますガ、所得割の制限税率(超過税率)については、標準税率の1.7倍(現行:1.2倍)に引上げられます。
注2: 3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人(軽減税率不適用法人)の所得割に係る税率については、 軽減税率の適用はありません(税率は、年800万円超の所得の場合と同じです)。
注 3: 「所得割」に標準税率ではなく超過税率を採用しているのは、全8都府県(東京都、大阪府、京都府、神奈川県、宮城県、静岡県、愛知県、兵庫県)となっています。 各税条例で超過税率が決められます。
4.特別法人事業税の創設( 地方法人特別税及び地方法人特別譲与税の廃止)
⓵ 平成31年10月1日以後(消費税率引上げ時)に開始する事業年度から地方法人特別税は廃止し、 法人事業税(所得割又は収入割)の納税義務者に対し特別法人事業税(国税)を課します。 特別法人事業税は、法人事業税と合わせて都道府県に申告納付します。
⓶ 地方法人特別譲与税も廃止し特別法人事業譲渡税となります。
| 課税項目区分 (地方法人特別税) | 平成27年4月1日以後開始 | 平成28年4月1日以後開始 | 平成31年10月1日以後開始 | |
|---|---|---|---|---|
| 付加価値割額、 資本割額及び所得割額の合算額によって法人事業税を課税される法人の所得割額に対する税率 | 資本金等の1億円以下の普通法人 | 43.2% | 37% | |
| 資本金等の1億円超の普通法人 | 93.5% | 414.2% | 260% | |
| 所得割額によって法人事業税を課税される法人の所得割額に対する税率 | 43.2% | 34.5% | ||
| 収入割額によって法人事業税を課税される法人の収入割額に対する税率 | 43.2% | 30% |
その他地方税率の参考:
(1) 法人住民税法人税割の税率
| 項目 | 平成26年10月1日から平成31年9月30日までに開始 | 平成31年10月1日以後開始 | ||
|---|---|---|---|---|
| 標準税率 | 制限税率 | 標準税率 | 制限税率 | |
| 道府県民税法人割 | 3.2% | 4.2% | 1.0% | 2.0% |
| 市町村民税法人割 | 9.7% | 12.1% | 6.0% | 8.4% |
| 合計 | 12.9% | 16.3% | 7.0% | 10.4% |
(2) 地方法人税(国税)の税率の改正
| 納税義務者 | 法人税を納める義務のある法人(人格のない社団等を含む) | |
| 税額の計算 | 各課税事業年度の基準法人税額 X 地方法人税率 = 地方法人税額 | |
| 申告及び納付 | 申告及び納付は、 国(税務署)に対して行う。 申告書の提出期限は、 法人税の申告書と同一となります。 | |
| 税率 | 平成31年9月30日までに開始 | 平成31年10月1日以後開始 |
| 4.4% | 10.3% |
5.仮想通貨の評価方法等
(1)事業年度末の仮想通貨のうち、活発な市場が存在する仮想通貨については、時価評価により評価損益を計上する。
(2)仮想通貨の譲渡時の譲渡損益は、譲渡契約時の事業年度に計上する。
(3)仮想通貨の算出方法は、移動平均法又は総平均法による原価法とし、法定算出方法は移動平均法による原価法とする。
(4)未決済の仮想通貨の信用取引等については、事業年度末に決済したものとして損益相当額を計上する。
上記改正は、平成31年4月1日以後に終了する事業年度より適用する(時価評価に関して経過措置有り)。
6.法人設立届出書
定款等の写し以外の書類の添付を要しなくなります。
7.公益法人等又は協同組合等の貸倒引当金の特例の廃止
特例は適用期限の到来時に廃止となります。経過措置として、平成31年4月1日から平成35年3月31日までの間の各開始事業年度における貸倒引当金の繰入限度額は、現行法による割増率(10%)に対して1年ごとに5分の1ずつ縮小した率による割増となります。
8.組織再編税制
株式交換等の後で、完全子会社化された会社が完全親会社を被合併法人として逆さ合併を行う場合は、支配関係継続要件等の適格要件について、その合併の直前の時までの関係により判定することになります。
合併、分割及び株式交換にかかる適格要件や旧株譲渡損益繰延要件のうち、対価にかかる要件について、三角合併等で対価となる合併法人等の親会社の株式に、合併法人等の発行済株式の全部を間接に保有する法人の株式が加えられます。
以上
平成30年度(2018年) 個人確定申告
個人並びに個人事業者の方の平成30年度確定申告の時期がきました。 以下に、 平成30年度分の確定申告の提出期限及び確定申告の対象となる人(任意ではなく申告しなければならない人)、 等に関しまして概要を纏めてみました。 なお、 確定申告の対象者は前年度と変更はありませんが、 税金の申告は、 本人自ら課税金額や税額を計算し、 その税額を申告納付する制度「申告納税制度」を採用していますので、 期限後申告・納付となりますと延滞税等がかかりますので注意してください。
1. 平成30年度確定申告の提出・納付期限
| 所得の種類 | 平成30年度申告期間・納付期限 | 口座振替による納税日(振替日) |
|---|---|---|
| 所得税 | 平成31年2月18日(月) から3月15日 (還付対象者の方は1月から申告可) | 4月22日(月) (新規の利用者の方は「預貯金口座振替依頼書」を申告期限までに要提出) |
| 消費税 | 平成31年1月 から4月1日 | 4月24(水) |
| 贈与税 | 平成31年2月1日 から3月15日 | 非該当 |
(1) 申告書の提出方法には、 ①持参(所轄税務署等の所定の提出場所)、 ②郵送、 ③電子申告(e-Tax利用によりデータ送信、この利用には事前準備が必要となりますが、 所得税では一定の第三者作成の提出書類を省略可の恩典があります)、の方法があります。
(2) 納税方法には、 ①持参(所轄税務署)、 ②金融機関から納付書を付けて納付、 ③ダイレクト納付(e-Taxの利用で、 かつ、 事前にダイレクト納付利用届出書の所轄税務署に要提出)、 ④④インターネットバンキング・クレジットカードによる電子納税、⑤口座振替(上記を参照) の方法があります。
(3) 平成25年度から25年間には、 復興特別所得税として各年分の所得税額に2.1%の税率を掛けて計算した税額が発生することに留意してください。
(4) 平成28年分以降の確定申告にあたり、 マイナンバー(個人番号)の記載が必要となります。 申告書を提出する際には、 申告者のご本人の本人確認書類(番号確認書類及び身元確認書類)の提示又は写しの添付が必要です。 具体的な本人確認書類とは、
⓵ マイナンバーカード(個人番号カード)
⓶ 通知カード又は個人番号付の住民票の場合には、 身元確認書類として顔写真付きの運転免許証、 等の点、 又は顔写真付きでない場合には、 2点の確認書類(保険証、 年金手帳、 等)
2. 平成30年度確定申告が必要となる対象者の方
A. 所得税
1. 給与所得者(サラリーマンの方)
⓵ 給与の年間収入金額が2,000万円超となる方(年末調整対象外の方)
⓶ 給与(年末調整済)を1箇所から受けていて、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円超となる方 (給与収入額が2,000万円以下で、 給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合には申告の必要はありません)
⓷ 給与(源泉徴収済)を2箇所以上から受けていて、 年末調整されなかった給与の収入金額と、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円超となる方。
但し、 給与所得の収入金額から、 一定の所得控除の金額(雑損控除、 医療費控除、 寄付金控除及び基礎控除の項目を除く)の差引金額が150万円以下で、 かつ、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下となる方は、 申告不要となります。
2. 上記の給与所得者以外の方、 又は個人事業者で納付税額が発生する方
事業所得や不動産所得等がある方で、 各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
3. 源泉徴収の適用を受けない給与等の支払を受ける方
⓵ 家事使用人等の方で給与から源泉所得税を徴収されていない方: 常時2人以下の家事使用人だけを雇用している使用人等には源泉徴収の義務が無いことから、 その使用人等から給与を受給されていた方
⓶ 在日外国公館から給与等の支払を受けた方
⓷ 国外から給与、 退職金等の支払を受けた方
4. 同族会社の役員やその親族等で、 その会社から給与以外に利子、 家賃、 使用料等の支払を受けている方は、 その利子、 家賃、 使用料等は全て申告の対象
5. 災害減免法の適用を受け給与に対して源泉徴収の猶予や源泉徴収税額の還付を受けていた方
6. 上記以外の方で納付税額がある方
各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
注1: 公的年金等に係る所得の確定申告不要制度
その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、 かつ、 その雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、 所得税の確定申告書の提出は必要ありません(申告されれば還付となる場合もありますので、 その場合には申告される方が有利となる場合もあります)。 なお、国外源泉で国内源泉税の対象とならない国外年金収入等がある場合には、この確定申告不要制度の適用対象外となります。
この所得税の申告不要となる場合であっても、 住民税の申告が必要となることもありますので注意が必要です。
公的年金等の受給者で所得税の申告不要な者でも、住民税の申告が以下のような場合には必要となります(主に住民税の減額になるケース有り)。
⓵ 年金や給与の源泉徴収票に記載されていない所得控除(扶養控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料, 寄附金等)のある方は、住民税の申告で住民税が減少する可能性があります。
⓶ 上記①の控除を追加したい方で、公的年金等が105万円(65歳以上の方は155万円)を超えている場合、或いは、超えていない場合でも公的年金等以外の所得金額がある場合。
⓷ 日本年金機構等に扶養親族等申告書を提出しているが、その内容に変更がある場合等。
注2: 確定申告不要(任意)となる方で申告すれば税金が戻ってくる方(還付申告者)
確定申告の総件数は2,000万件以上になるようですが、 この内の約半数近くが還付申告のものとなっているようです。 収め過ぎた税金を戻すためには確定申告書の提出が必要となります。 以下の様な場合には、 還付されるかもしれませんので調べてみてはどうでしょうか。
1. サラリーマンで年末調整を受けた方で次の年末調整では取扱わない項目があった方
⓵ 一定金額以上の医療費(医療費控除: 限度額200万円)
生計を一にする家族の支払医療費が、 以下の金額以上になっている場合が対象:
所得が200万円以上: 支払医療費 – 保険給付金等 – 10万円 = 医療費控除額
所得が200万円未満: 支払医療費 – 保険給付金等 – 所得金額 × 5% = 医療費控除額
⓶ 災害(地震、 台風等)や盗難により住宅や家財に被害を受けた場合(雑損控除)
災害の場合には、 災害減免法により所得税の軽減・減免を受けられることもあります。
⓷ 特定の寄付をされた方(寄付金控除や政党等寄付金特別控除)
⓸ 初めて住宅ローン控除を受ける方(住宅借入金等特別控除)
⓹ 年末調整時に提出ができなかった、 或いは洩れている控除項目がある方
生命保険料控除、 地震保険料控除、 配偶者特別控除、 各種の扶養者控除等
⓺ 中途退職され再就職しなかった方
退職までの給与収入に対する源泉徴収税額が年税額として過大となっているケースが殆どです。 又、 退職金に対して20%源泉になっている場合も可能性がありますし、退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になっている方。
2. 上場株式等に係る配当所得(申告分離課税選択)と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算
3. 予定納税されたが確定申告不要となった方
4. 所得が少ない状況で配当や原稿料収入等からの源泉徴収税額が、 本来の納付すべき税額よりも多額となっている方
5. 外国税額控除の適用がある方
6. 申告の要件となっている項目がある方
⓵ その年の翌年以降に純損失又は雑損失の繰越控除を受けるため、 ② その年分の純損失の金額について純損失の繰戻しによる還付を受けるため、 ③ 居住用財産の買換又は特定居住用財産の譲渡損失及び繰越控除を受けるため、 等には確定申告の提出が必要となります。
B. 贈与税
ご存知かと思いますが、 下記に示す様に年間に受けた贈与額が110万円以下ならば非課税範囲のために贈与税の申告等は必要ありません。
1. 年間合計で110万円超の財産贈与(個人からの土地、 建物、 現金、 預貯金、 株式、 債権等の財産の贈与)を受けた方(暦年課税で下記の②の選択者を除く)
2. 相続時精算課税制度(60歳以上の父や母の直系卑属からの贈与者ごとに累積で特別控除額2,500万円)の選択者で財産贈与を受けた方(20歳以上の推定相続人の子、 並びに孫に限る)
3. 住宅取得等資金の非課税制度(下記に限度額)を適用し、 父母や祖父母等の直系尊属から自己の居住用家屋の取得等のために住宅資金贈与を受けた方(20歳以上で合計所得金額が2,000万円以下であり、 かつ、 一定の居住条件を満たしている方)
消費税率が8%適用となる取得等の契約を平成33年12月までに締結された場合の非課税限度額は以下のようになります。
| 住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 | 良質な住宅用家屋(耐震等住宅) | 左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅) |
|---|---|---|
| 平成28年1月~平成32年3月 | 1,200万円 | 700万円 |
| 平成32年4月~平成33年3月 | 1,000万円 | 500万円 |
| 平成33年4月~平成33年12月 | 800万円 | 300万円 |
| なお、 東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、 以下のようになります。 現在~平成33年12月 | 1,500万円 | 1,000万円 |
4. 配偶者控除の特例(控除額2,000万円)を適用し、 配偶者から居住用不動産又はその取得資金の贈与を受けた方(婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与に限る)
5. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度、等
平成25年4月1日から平成31年3月31日までの期間に直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 この制度適用のためには、 受贈者は教育資金非課税申告書を金融機関等を経由して税務署に提出する必要がありますが、 申込時に対応されていると思いますので特に問題となることはないでしょう。
C. 消費税
個人事業者で下記に該当する方は納税義務者(課税事業者)として申告する必要があります。
1. 基準期間となる前々年度(平成28年度)の課税売上高が1,000万円超の事業者の方
2. 特定期間となる前年(平成29年度)の1月1日から6ケ月間の課税売上高が1,000万円超で、 かつ、 同期間の給与等支払総額が1,000万円超の事業者の方
3. 免税事業者となる方が、 課税事業者となることを選択(消費税課税事業者選択届出書を提出)している方(簡易課税選択者も含む)
納税義務者の判定上の留意事項:
(1) 基準期間の課税売上高は、 消費税込の金額となり、 事業用資産(住宅用として貸付けていた建物等)の譲渡の対価金額も含まれます
(2) 被相続人(亡くなられた方)の事業を相続により承継した相続人には、 被相続人が提出していた各種の届出書の効力は及ばないので、 新たに提出する必要があります。
(3) 新規開業又は相続により事業を承継したときに、 消費税課税事業者選択届出書を提出した場合の適用開始時期は、 当該課税期間か翌課税期間かを選択できます。
(4) 消費税課税事業者選択届出書を提出されている場合には、 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、 その効力が消滅することはありません。
以上が、所得税、贈与税、消費税に関する確定申告の対象者の概要です。
平成31年度(2019年度)税制改正大綱:贈与税・相続税(資産課税)
平成30年12月14日に自民、公明党は2019年度(平成31年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の贈与税・相続税に関する概要となります。
1.個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設等
(1)個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度の創設
「承継計画」に記載された「認定相続人」が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、相続等により「特定事業用資産」を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納税が猶予されます。
| 認定相続人 | 承継計画に記載された後継者で、中小企業の経営承継円滑化法に規定する認定を受けた者。 |
| 特定事業用資産 | 被相続人の個人事業(不動産貸付事業等を除く)に供されていた以下の事業用資産で青色申告決算書(貸借対照表)に計上されているもの: ① 土地(面積400㎡までの部分まで) ② 建物(床面積800㎡までの部分まで) ③ その他減価償却資産(固定資産税又は営業用の自動車税若しくは軽自動車税の課税対象になっているものその他準ずるもの) |
| 承継計画 | 認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて作成された特定事業用資産の承継前後の経営見通し等が記載された計画書で、平成31年4月1日から平成36年3月31日までに都道府県に提出されたもの。 |
| 猶予税額の計算 | 計算方法は、法人組織における非上場株式等についての相続税の納税猶予制度特例と同様。 |
| 猶予税額の免除 | ① 全額免除 イ 認定相続人が、その死亡時まで特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合 ロ 認定相続人が一定の身体障害等に該当した場合 ハ 認定相続人に破産手続開始決定があった場合 二 相続税の申告期限から5年経過後に、次の後継者に特定事業用資産を贈与し、その後継者が当該贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合 ② 一部免除 イ 同族関係者以外の者へ特定事業用資産を一括して贈与する場合 ロ 民事再生計画の認可決定等があった場合 二 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特定事業用資産の一部譲渡又は特定事業用資産に係る事業の廃止の場合 |
| 猶予税額・利子税の納付 | ① 認定相続人が、特定事業用資産に係る事業の廃止の場合等には、猶予税額の全額を納付する ② 認定相続人が、特定事業用資産の譲渡等をした場合には、その譲渡等の部分に対応する猶予税額を納付する 上記の納付が発生した場合には、所定の利子税も併せて納付する |
| その他 | ① 被相続人は相続開始前において、認定相続人は相続開始後において、それぞれ青色申告の承認を受けていなければならない ② 認定相続人は、相続税の申告期限から3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければならない ③ 認定相続人が、相続税の申告期限から5年経過後に特定事業用資産を現物出資して、会社を設立した場合には、当該認定相続人が当該株式等を継続保有等の一定要件を満たすときは、納税猶予は継続されます。 ④ この納税猶予の適用を受ける場合には、特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けることはできない |
| 適用時期 | 平成31年1月1日以後の相続等から適用 |
(2)個人事業者の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度の創設
「承継計画」に記載された「認定受贈者」が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、贈与により「特定事業用資産」を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定受贈者が納付すべき贈与税額のうち、贈与により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する贈与税の納税が猶予されます。
| 認定受贈者 | 承継計画に記載された後継者で、中小企業の経営承継円滑化法に規定する認定を受けた18歳以上(平成34年3月31日までの贈与については、20歳以上)の者。 |
| 特定事業用資産 | 贈与者の個人事業(不動産貸付事業等を除く)に供されていた以下の事業用資産で青色申告決算書(貸借対照表)に計上されているもの: ① 土地(面積400㎡までの部分まで) ② 建物(床面積800㎡までの部分まで) ③ その他減価償却資産(固定資産税又は営業用の自動車税若しくは軽自動車税の課税対象になっているものその他準ずるもの) |
| 承継計画 | 認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて作成された特定事業用資産の承継前後の経営見通し等が記載された計画書で、平成31年4月1日から平成36年3月31日までに都道府県に提出されたもの。 |
| 相続時精算課税の適用 | 認定受贈者が贈与者の直系卑属である推定相続人以外の者であっても、その贈与者がその年の1月1日において60歳以上であれば適用を受けることができる |
| 猶予税額の計算 | 計算方法は、法人組織における非上場株式等についての贈与税の納税猶予制度特例と同様。 |
| 猶予税額の免除 | ① 全額免除 イ 認定受贈者が、その死亡時まで特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合 ロ 認定受贈者が一定の身体障害等に該当した場合 ハ 認定受贈者に破産手続開始決定があった場合 二 贈与税の申告期限から5年経過後に、次の後継者に特定事業用資産を贈与し、その後継者が当該贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合 ② 一部免除 イ 同族関係者以外の者へ特定事業用資産を一括して贈与する場合 ロ 民事再生計画の認可決定等があった場合 二 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特定事業用資産の一部譲渡又は特定事業用資産に係る事業の廃止の場合 |
| 猶予税額・利子税の納付 | ① 認定受贈者が、特定事業用資産に係る事業の廃止の場合等には、猶予税額の全額を納付する ② 認定受贈者が、特定事業用資産の譲渡等をした場合には、その譲渡等の部分に対応する猶予税額を納付する 上記の納付が発生した場合には、所定の利子税も併せて納付する |
| 贈与者の死亡 | 特定事業用資産をその贈与者から相続等により取得したものとみなし、贈与時の時価により他の相続財産と合算して相続税を計算する。その際、都道府県の確認を受けた場合には、相続税の納税猶予適用を受けることができる |
| その他 | ① 贈与者は贈与開始前において、認定受贈者は贈与開始後において、それぞれ青色申告の承認を受けていなければならない ② 認定受贈者は、贈与税の申告期限から3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければならない ③ 認定受贈者が、贈与税の申告期限から5年経過後に特定事業用資産を現物出資して、会社を設立した場合には、当該認定受贈者が当該株式等を継続保有等の一定要件を満たすときは、納税猶予は継続されます。 ④ この納税猶予の適用を受ける場合には、特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けることはできない |
| 適用時期 | 平成31年1月1日以後の贈与から適用 |
2.特定事業用宅地等の係る小規模宅地等についての相続税の課税価格計算特例の見直し
小規模宅地等の特例に対し、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業用の宅地等(但し、当該宅地等の上で事業用に利用されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の15%以上である場合は除く)は特例対象の範囲から除外となります。
改正は、平成31年4月1日以後の相続等により取得する財産に係る相続税について適用となります(但し、同日前から事業用に供されている宅地等には適用されません)。
3.教育資金の一括贈与非課税措置の見直し
直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 見直しは以下のとおりです。
(1) 適用期限の2年延長
適用期限が、平成33年3月31日まで2年間延長となります。
(2) 受贈者の所得制限
平成31年4月1日以後の贈与から、受贈年の前年おける受贈者の合計所得金額が1千万円超の場合には、非課税措置の特例を受けることができません。
(3)教育資金範囲からの一部除外
平成31年7月1日以後から、学校等以外に支払われる金銭で受贈者が満23歳の翌日以後に支払われるもののうち、①教育に関する役務提供の対価、②スポーツ・文化芸術に関する活動等に係る指導の対価、③これらの役務提供又は指導に係る物品の購入費及び施設の利用料は、教育資金範囲から除外となります。但し教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練の受講費用は除外となりません。
(4)契約期間中に贈与者が死亡した場合
これまで契約期間中に贈与者が死亡した場合には、残高については相続税には加算されないことになっていましたが、一定の管理残額に対して受贈者が贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされようになります。
以下のいずれかに該当する場合を除き、教育資金管理契約期間中に贈与者が死亡した場合において、受贈者が贈与者からその死亡前3年以内に信託等を受け、その死亡日に「管理残高」は受贈者が贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされ相続税の対象となります。
① 当該受贈者が23歳未満である場合
② 当該受贈者が学校等に在学中の場合
③ 当該受贈者が教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練の受講している場合
「管理残高」とは、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額のうち、贈与者からその死亡前3年以内に信託等の価額に対応する金額をいいます。
なお、上記②又は③のいずれかに該当する場合やいずれかに該当する期間がなかった場合には、当該満了の年齢は30歳ではなく、その年の12月31日又は40歳のいずれか早い日に終了となります。
4.結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し
贈与者である直系尊属が20歳以上50歳未満の子や孫へ結婚・子育て資金に充てるために金銭等を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行等及び金融商品取引業者に信託等した場合、 信託受益権の価額又は拠出された金銭等の金額のうち、 受贈者(子・孫)1人当たり1,000万円(結婚に際して支出する費用については300万円を限度)までの金額を、平成31年3月31日までに拠出されたものに限り非課税とする特例があります。見直しは以下のとおりです。
(1) 適用期限の2年延長
適用期限が、平成33年3月31日まで2年間延長となります。
(2) 受贈者の所得制限
平成31年4月1日以後の贈与から、受贈年の前年おける受贈者の合計所得金額が1千万円超の場合には、非課税措置の特例を受けることができません。
5.非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例制度の見直し(特例措置及び一般措置)
(1)平成34年4月1日以後の贈与から、贈与税の納税猶予における受贈者の年齢要件が18歳以上(現行:20歳以上)に引下げられます。
(2)一定のやむを得ない事情により認定承継会社等が資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合、その該当した日から6月以内にこれらの会社に該当しなくなったときには、納税猶予の取消事由に該当しなくなります。
(3)贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の適用を受ける場合には、贈与税の納税猶予の免除届出の添付書類が不要となります。
6.年齢制限の引下げ
平成34年4月1日以後の相続若しくは遺贈又は贈与における、以下における適用年齢を18歳(現行:20歳)に引下げられます。
(1) 相続税の未成年者控除の対象となる相続人の年齢は、18歳未満
(2) 受贈者の年齢.は、18歳以上
① 相続時精算課税制度
② 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
③ 相続時精算課税適用者の特例
④ 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度
7.民法改正に伴う相続関係の措置
民法の相続分野の規定を約40年ぶりに見直す民法改正が2018年7月6日に成立し、7月13日に公布されました。主な法改正は以下の6点で、2020年7月13日までに順次施行されることになっています(下記に記載以外の施行は、2019年7月13日までに政令で定める日となっていますが、法務省のHP等で公表される予定です)。
一 配偶者の居住権保護(施行は、2020年7月13日までに政令で定める日)
二 遺産分割等に関する見直し
三 遺言制度に関する見直し(施行は2019年1月13日から)
四 遺留分制度に関する見直し
五 相続の効力等に関する見直し
六 相続人以外の人からの介護・看護への特別寄与分の請求権
以下、それらの概要を記載します。
一 配偶者の居住権保護
1. 配偶者短期居住権
(1)居住建物を配偶者を含む共同相続人間で遺産分割すべき場合
配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には、配偶者は、下記のいずれか遅い日までの間、無償でその建物を使用することができます。
① 遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間
② 相続開始から6ヵ月間の間
(2)上記(1)以外に、居住建物を第三者に遺贈や配偶者が相続放棄した場合等
居住建物の所有者は建物に無償で居住していた配偶者に対して、いつでも配偶者短期居住権の消滅を申入れすることが可能ですが、その申入れを受けてから6ヵ月間は引続き配偶者は無償でその建物を使用することができます。
2. 配偶者居住権
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として、残された配偶者の保護を手厚くし、遺産分割の協議が調うなどすれば、残された配偶者は自身が亡くなるまで(終身又は当事者間で存続期間を定めた場合にはその一定期間)今の住居に住み続けられる「配偶者居住権」を得られ、住居の所有権を取得する必要がなくなります(配偶者は家に居住権を設定する登記手続きを法務局(登記所)にすることで権利を確保)。それにより、遺産分割では預貯金など他の遺産の取り分を増やし、老後の生活資金にあてることも可能になります。居住権のみなら、所有権を取得する場合よりも評価額が低くなるためです(これまでの相続財産の評価額が、居住権評価額と所有権評価額に分けられることになります)。なお、配偶者居住権は、協議による遺産分割の場合に限られるものではなく、被相続人の遺言によって取得させることもできます。
(1)相続税における配偶者居住権の財産評価額方法は、次のとおりとなります。
イ 配偶者居住権の評価額(建物)
建物の時価 - 建物の時価 ×(残存耐用年数 - 存続年数)÷ 残存耐用年数
× 存続年数に応じた民法の法定利率による福利現価率
ロ 配偶者居住権が設定された建物(居住建物)の所有権の評価額(建物)
建物の時価 - 配偶者居住権の評価額
二 配偶者居住権に基づく居住建物の敷地利用の権利評価額(土地)
土地等の時価 - 土地等の時価 × 存続年数に応じた民法の法定利率による
福利現価率
ホ 居住建物の敷地の所有権等の評価額(土地)
土地等の時価 - 居住建物の敷地利用の権利評価額
注1:「建物の時価」及び「土地等の時価」とは、それぞれ配偶者居住権が設定されていない場合の時価とする。
注2:「残存耐用年数」とは、居住建物の所得税法に基づく住宅用耐用年数の1.5を乗じた年数から築後年数を控除した年数をいいます。
注3:「存続年数」とは、次の区分に応じた年数をいう。
① 配偶者居住権の存続期間が配偶者の終身の間である場合には、配偶者の平均余命年数
② 上記①以外の場合には、遺産分割協議等に定められた配偶者居住権の存続期間の年数(但し、配偶者の平均余命年数を上限とする)
注4:残存耐用年数又は残存耐用年数から存続年数を控除した年数が零以下となる場合には、上記イの「(残存耐用年数 - 存続年数)÷ 残存耐用年数」は、零とする。
(2)物納劣後財産の範囲に居住建物及びその敷地を加える。
(3)配偶者居住権の設定登記について、居住建物の価額(固定資産税評価額)に対し1,000分の2の税率による登録免許税が課税されます。
二 遺産分割等に関する見直し
1.特定配偶者に遺贈又は贈与した居住用不動産の特別受益の持戻し計算免除
婚姻期間が20年以上で、配偶者に居住用の建物又はその敷地の全部又は一部(居住用不動産)を生前贈与するか遺言で贈与の意思を示せば、その居住用不動産は被相続人が特別受益の持戻し免除の意思表示したものと推定し、遺産分割の対象にしない(遺産分割の共有財産にならない)という優遇措置が設けられました。
2.預貯金債権の仮払い制度
遺産分割の協議中でも、相続した預貯金を葬儀費用や生活費用に充てるため、仮払いを認める仮払制度が設けられます。
(1) 家事事件手続法の保全処分要件の緩和
家庭裁判所に遺産分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、仮分割の仮処分の必要性があり、かつ、他の共同相続人の利益を害しないと裁判所が判断した場合には、預貯金債権の仮払いが認められることになります。
(2) 家庭裁判所の判断なく預貯金債権の払戻し
各共同相続人は、預貯金債権のうち、各預貯金口座ごとに以下の金額(但し、一つの金融機関で引き出せる金額については法務省令で定める金額を上限:100万円~150万円程度の予定)まで、他の共同相続人の同意なく単独で払戻しを求めることができます。
相続開始時の個々の預貯金口座の金額 × 3分の1 × 共同相続人の法定相続分
= 単独で払戻しを求めることができる金額
3. 遺産分割前に相続財産が処分された場合の遺産分割の範囲
(1) 遺産分割前に相続財産が処分された場合であっても、共同相続人全員の同意により、当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができます。
(2) 共同相続人の1人又は数人が遺産分割前に相続財産を処分した場合には、当該処分した共同相続人については、上記(1)の同意を得る必要はありません。
三 遺言制度に関する見直し
1.自筆証書遺言の利便性と信頼性の向上
これまで生前に被相続人が書く自筆証書遺言は、内容に問題があっても死後まで分からず、信頼性に欠ける等から相続を巡るトラブルも少なくありませんでした。そこで、自筆証書遺言は、今後、公的機関である全国の法務局で形式に関し事前チェック後に保管できるようにして、相続人が遺言があるかを簡単に調べられるようになります。法務局に預けた場合は、家庭裁判所で相続人が立ち会って内容確認する「検認」の手続きを不要とし、又、財産目録はこれまで全文を自筆に限定していましたが、パソコンでの作成可能となります(但し、財産目録の毎ページに署名押印しなければなりません。又、自書によらない記載が両面に及ぶ場合には、その両面に署名押印しなければなりません)。この法務局に預ける場合の手数料も数千円程度に安価を想定しているようです。
なお、遺言者の死亡届が提出された場合、法務局から相続人に通知できるようなシステムも検討されます。
2.遺言執行者権限の明確化
これまで遺言執行者は常に相続人の利益のために職務を遂行すべきであるとの誤った認識を抱く者も少なくなく、このために遺言執行者と相続人との間でトラブルになるケースが相当数生じていました。そこで、
(1) 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示していた行為は、相続人に対し直接にその効力が帰属するという規定表現になりました。
(2) 特定遺贈又は特定財産承継遺言がされた場合における遺言執行者の権限等について明確化が図られました。
四 遺留分制度に関する見直し
1.遺留分減殺請求権の金銭債権化
これまで減殺請求により当然に物権的効果が生ずることとされているため、減殺請求の結果、遺贈又は贈与の目的財産は受贈者と遺留分権利者との共有になることが多く、このような帰結は、円滑な事業承継を困難にするものであり、又、共有関係の解消をめぐって新たな紛争を生じさせることになることがありました。そこで、
(1) 遺留分に関する権利行使により生ずる権利を遺留分侵害額に相当する金銭債権化することとしました。
(2) 遺留分権利者から遺留分侵害額請求を受けた時点で相当期間経過しており請求を受けた時点では、受遺者又は受贈者が十分な資金がなく金銭を直ちに準備できない場合には、受贈者等は、裁判所に対し金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができるようになりました。
2.遺留分及び遺留分侵害額の算定方法
(1)遺留分及び遺留分侵害額の計算式
① 「遺留分」 = 「遺留分を算定するための財産価額」 × 1/2(*1)× 遺留分権利者の法定相続分
(*1)相続人が直系尊属のみの場合は1/3
「遺留分を算定するための財産価額」
= 相続時における被相続人の積極財産の額
+ 相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内*2)
+ 第三者に対する生前贈与の額(原則1年以内)
- 被相続人の債務の額
(*2)被相続人と受贈者が、遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した場合には、10年前の贈与分も含む
② 遺留分侵害額 = 「遺留分の額」- 遺留分権利者が受けた特別受益額 - 遺産分割の対象財産がある場合(既に遺産分割が終了している場合も含む)には具体的相続分に応じて遺産を取得したものとした場合の当該遺産の価額(但し、寄与分もよる修正は考慮しない)+ 被相続人に債務がある場合には、その債務のうち遺留分権利者が負担する債務の額
(2)相続人に対する贈与は、相続開始前10年間にされたものに限定し、その価額を遺留分を算定するための財産価額に算入する。
五 相続の効力等に関する見直し
特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)や相続分の指定された場合により承継された財産については、登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができていましたが、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないことになります。
六 相続人以外の人からの介護・看護への特別寄与分の請求権
被相続人の親族で相続の対象にならない人でも、被相続人に対して介護や看病その他の労務の提供により被相続人の財産の維持又は増加に貢献(寄与)した場合は、相続人に金銭(特別寄与料)を請求できる仕組みが取り入れられます。対象は、息子の妻が義父母を介護していたケース等を想定したもので、特別寄与の請求権者は、被相続人の親族に限定されることになっています。これまでの介護の寄与をめぐり争った場合の家庭裁判所が示す目安は、次の通りです。
介護の日当額(8千円)× 日数(500日)× 裁量的割合(70%)
= 介護寄与分額(280万円)
(1)特別寄与料に対する課税は、次のとおりとなります。
① 特別寄与者は特別寄与料が確定した場合には、当該特別寄与者が被相続人から遺贈により取得したものとして、相続税が課税されます。
② 上記①の事由が生じたために新たに相続税の申告義務が生じた者は、当該事由は生じたことを知った日から10月以内に相続税の申告書を提出しなければなりません。
③ 相続人が支払うべき特別寄与料の額は、当該相続人に係る相続税の課税価格から控除します。
④ 相続税の更正の請求対象に上記①の事由が加えられます。
以上