インボイス制度における適格請求書発行事業者の登録制度開始

令和5年(2023年)10月からインボイス制度「適格請求書等保存方式」導入にあたり、「適格請求書」を交付できる事業者「適格請求書発行事業者」の登録が10月1よりスタートします。以下に、事業者が適正に消費税申告を行う為に対応・留意しなければならい概要(主に、国税庁HPより)を記載してみます。

1.インボイス制度の導入
令和5年10月1日から、消費税に関して複数税率(10%、軽減税率の8%、等)に対応した仕入税額控除の方式として、諸外国と同様な「適格請求書等保存方式」(インボイス方式)が導入されます。同日から、仕入税額控除の適用要件として、原則、事前登録した「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書(インボイス)」の保存が必要となります。特に、今後、適格請求書発行事業者でない免税事業者等との取引に対して留意すべきことがあります。
消費税額の計算方法:
 納付消費税額 = 課税売上に係る消費税額 - 課税仕入れ等に係る消費税額 
         (売上税額:仮受消費税額)  (仕入税額:仮払消費税額)
                           仕入税額控除
2.請求書等及び帳簿の記載事項
軽減税率適用に併せて請求書等及び帳簿の作成・記載事項等は、以下の様になっています。 令和5年10月に、インボイス制度として「適格請求書等保存方式」を導入されまので、請求書等の記載事項に留意すべきです。

請求書等保存方式
(令和元年9月30日以前)
区分記載請求書等保存方式
(令和元年10月1日~)
適格請求書等保存方式
(インボイス制度)
(令和5年10月1日~)
①請求書発行者の氏名又は名称
②取引年月日
③取引の内容
④対価の額
⑤請求書受領者の氏名又は名称
①~⑤同左の記載①~⑤同左の記載
⑥軽減税率対象課税品目である旨(帳簿にも要記載)
⑦税率の異なるごとに合計した対価の額
(注)記載が不備の場合に、請求書の交付を受けた事業者による追記も可
同左の記載
⑦税率の異なるごとに合計した対価の額及び適用税率
⑧登録番号
⑨消費税額等
*売手に区分記載請求書の交付・保存義務は課されません。
*買手に区分記載請求書の保存を仕入税額控除の要件になりますが、追加記載事項(⑥と⑦)は買手が事実に基づき追記することが認められます。
偽りの請求書の交付行為に対しての罰則はありません。
*「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書」又は「適格簡易請求書」の保存が仕入税額控除の要件となります、「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)が導入されます。
*適格請求書発行事業者には、「適格請求書」又は「適格簡易請求書」の交付・保存を義務付け、偽りの請求書の交付行為に対して罰則があります。
*「適格請求書発行事業者」とは、免税事業者以外の課税事業者であり、所轄税務署長に申請書を提出し、交付事業者として登録を受けた事業者です(登録番号を受領)。登録申請は、令和3年10月1日から登録制度が開始されます。 登録後、その氏名又は名称及び登録番号等はインターネット上で公開となります。なお、令和5年10月1日から登録を受ける為には、原則、令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。
*「適格請求書」とは、上記事項を記載した請求書、納品書、その他これらに類する書類をいいます。
*1つの適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額を計算することはできません。複数商品の税率区分ごとの合計金額に対して消費税額を計算し表記します。税額の円未満の端数処理は、任意となります。

3.適格請求書(インボイス)
(1)適格請求書の記載事項
「適格請求書」とは、次の全ての事項が記載された書類(請求書、納品書、領収書、レシート、契約書、等)をいいますが、1つの書類に記載される必要はなく複数の書類でカバーさせていればよいことになっています。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
登録番号と紐付けられて管理されている取引先コード等で相手方と共有されていれば、取引先コードの記載で要件が満たされます。
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の 譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等(消費税額及び地方消費税額に相当する金額の合計額をいいます)
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
なお、返品や値引き等の売上の返還等を行う場合には、「適格返還請求書」を交付し、又、交付した請求書に誤りがあった場合には、「修正した適格請求書」を交付します。
又、適格請求書、適格簡易請求書等の交付に代えて、これらに係る電磁的記録(電子データ)を提供することもできますが、その保存方法が決められています。

(2)適格請求書の保存期間
課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存する必要があります。

(3)適格請求書に記載する消費税額の端数処理
消費税額に1円未満の端数が生じる場合、1つの適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要があります(切上げ、切捨て、四捨五入などの端数処理は任意)。従って、1つの適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額計算し、その合計額を記載等することは認められません。

(4)適格請求書に税抜価額と税込価額が混在する場合
スーパー等の小売業等では1つの適格請求書において、税抜価額表記の商品と税込価額表記の商品が混在するような場合、いずれかに統一して「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した額」を記載するとともに、これに基づいて「税率ごとに区分した消費税額」を算出して記載する必要があります。

4.適格請求書交付義務の免除項目(免除課税資産)
適格請求書発行事業者は免税事業者を除く他の課税事業者から求められたときには適格請求書を交付しなければなりませんが、次の課税資産の譲渡等は、事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な為、交付義務が免除されています(帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます)。
① 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送 :金額は1回の取引価額で判定。例えば、1人運賃13,000円で4人分の52,000円の運賃を支払う場合には、52,000円での判定となりますので免除対象となりません。
② 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者 が卸売の業務として行うものに限ります。)
③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売 (無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
④ 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等(代金の受領と資産の譲渡等が自動で行われる機械装置があり、それにより完結するもの。例えば、コインロッカーやコインランドリー等は含まれますが、機械装置から資産譲渡等を伴わないセルフレジ、ネットバンキング等は含まれません)
⑤ 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限 ります。)
⑥ その他請求書等の交付が困難な課税資産の譲渡等のうち一定のもの
なお、免税取引、非課税取引及び不課税取引のみを行った場合には、適格請求書の交付義務は課されません。

5.適格簡易請求書の交付可能な事業者
適格請求書発行事業者が不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う一定の事業を行う場合には、適格請求書に代えて「適格簡易請求書」を交付することができます。 適格簡易請求書は、適格請求書と異なる点は、書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称が省略でき、又、税率ごとに区分した消費税額等か適用税率のどちらかを記載するところです。
適格簡易請求書の交付可能な事業者例として、
①小売業、②飲食店業、③写真業、④旅行業、⑤タクシー業、⑥駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります)、⑦その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業
となっています。
不特定かつ多数の者に対する事業とは、相手方の氏名等を認識せず取引条件等を予め提示して相手方を問わず広く行うことが常態である事業等をいいます。
なお、適格簡易請求書についても、交付に代えて電磁的記録(電子データ)を提供することができます。

6.適格請求書発行事業者の登録制度
「適格請求書発行事業者」とは、免税事業者以外の課税事業者であり、所轄税務署長に申請書(適格請求書発行事業者の登録申請書)を提出し、交付事業者として登録を受けた事業者です(登録番号を受領)。登録申請は、令和3年10月1日から登録制度が開始されます。 登録後、その氏名又は名称及び登録番号等は通知及びインターネット上で公開(国税庁HP上の適格請求書発行事業者公表サイト)となります。なお、インボイス制度の導入日の令和5年10月1日から登録を受ける為には、原則、令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります(なお、特定期間の課税売上高又は給与等支払額の合計額が1千万円を超えて課税事業者となる場合は、提出期限は令和5年6月30日までに延長)。
登録申請は、e-Taxの利用(申請後の登録通知は2週間程度後)、又は郵送等の場合(申請後の登録通知は1ヵ月程度後)には各国税局のインボイス登録センターとなります。
登録の効力は、適格請求書発行事業者登録簿に登録された日(登録日)から生じます。登録日以降の取引については、買手方(課税事業者に限る)の求めに応じ、適格請求書を交付する義務があります。
なお、課税期間の中途での登録申請も可能です。

登録番号の構成:
① 法人の課税事業者は、T+法人番号
② 法人以外の個人事業者等の課税事業者は、T+13桁の数字
免税事業者の登録に関しては下記7Ⅱを参照。

7.免税事業者等からの仕入税額控除
(1)仕入税額控除の経過措置
インボイス制度が導入されます令和5年10月以降、仕入税額控除を受けるには、「帳簿」及び税務署に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者(登録事業者)が交付した適格請求書」の保存が必要となります。従いまして、
免税事業者、適格請求書発行事業者登録されていない課税事業者、並びに事業者で無い消費者からの課税仕入れに対して、仕入税額控除の適用を受けることが出来なくなります。但し、下記の様に特例で令和5年10月から令和11年9月までの6年間は、仕入税額相当の一定割合を税額控除できる経過措置が設けられています。

区分記載請求書等保存方式免税事業者からの仕入についても、仕入税額控除できます。
適格請求書等保存方式
(インボイス制度)
原則、免税事業者、適格請求書発行事業者登録されていない課税事業者等からの仕入は、仕入税額控除ができませんが、次の期間内での特例が認められています。
令和5年10月~
令和8年9月までの3年間
仕入税額相当額の80%控除
令和8年10月~
令和11年9月までの3年間
仕入税額相当額の50%控除
令和11年10月~仕入税額控除の対象とすることができません。

この経過措置の適用を受ける為には、次の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が必要となります。
(A)帳簿
「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が追加で必要です。具体的な記載事項は次のとおりです。

① 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
② 課税仕入れを行った年月日
③ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容及ぶ経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨
④ 課税仕入れに係る対価の額
(B)請求書等
① 書類の作成者の氏名又は名称
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(軽減対象資産の場合には、その資産の内容及び軽減対象資産である旨)
④ 税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額
⑤ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

(2)免税事業者の登録申請手続
免税事業者からの請求に対して、令和11年10月より相手課税事業者は完全に仕入税額控除の対象とすることが出来なくなります。免税事業者が適格請求書発行事業者として登録を受けるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要があります。(令和11年10月以前に)適格請求書を交付できる課税事業者となる登録手続は、以下の様になっています(経過措置もあり)。

① 登録申請が令和5年10月1日を属する課税期間の経過措置及び留意点
令和5年10月1日を属する課税期間中に適格請求書等発行事業者登録した場合には、「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要はありません。留意点として、その登録日(令和5年10月1日)に課税事業者となりますので、基準期間の課税売上高にかかわらず、登録日から期末日までの期間に対する消費税の申告が必要となります。なお、経過措置の適用を受けない課税期間に登録を受ける場合には、原則どおり、課税選択届出書を提出し課税事業者となる必要があります。

② 登録申請が令和5年10月1日を属する課税期間の翌課税期間以降の場合
免税事業者が、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者を選択し課税期間の初日から登録を受けようとする場合は、その課税期間の初日の前日から起算して1月前までに登録申請書の提出が必要となります。

以下は、免税事業者の登録申請の要約表となります。

登録申請時期
右記の前事業年度以前令和5年10月1日の属する事業年度(課税期間)左記の翌事業年度以降
経過措置適用の期間原則適用
消費税課税事業者選択届出書提出不要提出し、同時に課税事業者となる課税期間の初日の前日から1ヵ月前までに登録申請書の提出が必要
(登録日が4月1日ならば、申請の提出期限は2月28日)
適格請求書発行事業者の登録申請書申請し登録を受けた日から課税事業者となる(登録日以前は免税事業者期間)。
免税免税課税事業者及び適格請求書発行事業者

なお、適格請求書発行事業者の登録後に、基準期間の課税売上高が1千万円以下になっても、登録の効力が失われない限り課税事業者として継続します。

免税事業者である個人事業者の場合にも、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受ける為には、経過措置により登録申請書を令和5年3月31日までに提出する必要があります(課税選択届出書の提出は不要)。同年10月1日から12月31日の期間は課税事業者として令和5年分の消費税の申告が必要となります。なお、登録日の前日である9月30日に免税事業者であった期間中に課税仕入れの棚卸資産を有しているときは、その仕入税額控除の適用を受けることができます。なお、経過措置の適用を受け、同時に簡易課税制度の選択適用を受ける場合には、同年10月1日に属する課税期間中に消費税簡易課税制度選択届出書を同年12月31日までに提出(令和5年分から適用する旨を記載)すればよいことになります(法人も同様な扱いになります)。

(3)免税事業者の今後の検討課題
上述しましたが、免税事業者からの課税仕入れに対して、適格請求書の交付を受けることが出来ませんので仕入税額控除の適用を受けることが出来なくなります。その為に、売上先が課税事業者(適格請求書発行事業者)の場合には、免税事業者との取引を減らしていくことが予想されます。特に、小規模な免税事業者が課税事業者になれば、収める消費税の分だけ支出が増え事業経営に影響を受けるというデメリットがありますので、次の経営環境状況を検討し課税事業を選択するかを判断されても良いかと思います。

(1)課税事業者を選択することが望まれる経営環境(売上高に重大な影響を受ける可能性がある)(2)免税事業者を継続する経営環境(課税事業者と取引できなくともあまり問題が無い)
*課税事業者との取引が多い*免税事業者同士との取引が主である
*新規顧客(課税事業者)を開拓していく経営方針がある*不特定多数を顧客とする業種(小売業、飲食業等の消費者を顧客)である
*競合状況にあり他の課税事業者と比べて価格面で明らかに不利と予想される*商品・サービスに独自性があり競合が少ない

(4)インボイス制度下で免税事業者は消費税を付加請求可能か否か
インボイス制度が導入後(令和5年10月1日以降)も、免税事業者及び適格請求書発行事業者登録されていない課税事業者は、適格請求書を交付することができませんが、消費税法に基づく10%の消費税を付加表記した請求書は発行できます。
消費税法57条の5「適格請求書類似書類等の交付の禁止」という規定があり、その内容は、適格請求書発行事業者以外の者は、適格請求書発行事業者が作成した適格請求書又は適格簡易請求書であると誤認される恐れがある表示をした書類を他の者に対して交付し、又は提供してはならない、というものです(違反者には罰則規定あり)。この「誤認」の範囲は明確ではありませんが、明らかなものとして、適格請求書発行事業者でないのに登録番号を請求書等に記載することです。この適正な登録番号の課税事業者であるかは、国税庁で登録者を公開していますので、仕入税額控除を適用する事業者には、登録確認の負担や責任は課されていることになります。
現行の法制度上では免税事業者は消費税を請求書に記載出来ないという規定はどこにもありません。免税事業者からの取引では、あくまでも免税事業者は適格請求書を交付できなく、かつ納税義務者ではないということ、及び取引先が仕入税額控除を行うことができなくなることだけです。

8.新設法人等の登録時期の特例
免税事業者である新設法人(個人事業者、新設合併、新設分割の新規開業等も含む)の場合には、事業開始(設立)時から適格請求書発行事業者の登録を受ける為には、設立後、その課税期間の末日までに課税選択届出書と登録申請書(初日から登録を受けようとする旨の記載)を併せて提出する必要があります。
なお、課税事業者である新設法人の場合には、事業開始の課税期間の末日までに登録申請書(初日から登録を受けようとする旨の記載)を提出する必要があります。

9.適格請求書発行事業者の登録取消
登録取消を受ける場合には、課税期間の末日から31日前に「適格請求書発行事業者の登録の取り消しを求める旨の届出書」を提出することで、翌課税期間の初日から登録の効力が失われます。従って、末日から30日前の届出の場合には、翌々課税期間に登録取消となります。なお、免税となる要件を満たす事業者は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、課税の免除とはなりません。
消費税法上、事業を廃止した場合に「事業廃止届出書」を提出により適格請求書発行事業者の登録の効力が失われます。

10.適格請求書発行事業者からの事業承継(相続)
① 令和5年10月1日以前に死亡した場合
被相続人の登録効力が生じていませんので、相続により事業承継した相続人が、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合には、原則として、令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。この場合、同日までに提出できなかった困難な事情がある場合に、その旨を記載して令和5年9月30日までに提出することが認められます。
個人事業者が死亡した場合には、「個人事業者の死亡届出書」の提出も行う。
② 令和5年10月1日以後に死亡した場合
相続人は、「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を提出する必要があります。その登録の失効は、提出日の翌日又は死亡日の翌日から4カ月後のいずれか早い日となります。
相続により事業承継した相続人が適格請求書発行事業者の登録を受けようとする場合には、登録申請書を提出する必要があります。この場合、相続の翌日から、相続人の登録日の前日又は被相続人の死亡日から4カ月後のいずれか早い日までの期間については、相続人の適格請求書発行事業者と見做す措置が設けられています(被相続人の登録番号を相続人の登録番号と見做す)。

11.修正する適格請求書の交付
売手である適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書の記録事項に誤りがあったときには、相手である課税事業者に対して、修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなければなりません。これらの交付方法例として、
① 誤りがあった事項を修正し、改めて記載事項の全てを記載したものを交付(差替え)
② 当初交付したものとの関連性を明らかにし、修正した事項を明示したものを交付
原則、誤りを買手が自ら追記や修正を行ったものでは仕入税額控除の適用要件を満たしませんが、買手の課税事業者が作成した一定事項の記載のある仕入明細書等の書類で、売手の確認を受けたものについては、仕入税額控除の適用の為に必要な請求書等に該当となります。

12.口座振替・口座振込による家賃等の支払の留意事項
通常、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、仕入税額控除の適用を受ける為には、原則として、適格請求書の保存が必要となります。
適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することも可能(一定期間の賃借料についての適格請求書の交付を受けて保存する)となります。
適格請求書として必要な記載事項は、1つの書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たせばOK。例えば、契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、他に実際に行った取引の客観的な書類で全ての記載事項を満たし保存することで、仕入税額控除の適用要件を満たします。
口座振替の場合、適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに、通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することで、仕入税額控除の適用要件を満たします。
口座振込による家賃の支払う場合、適格請求書の記載事項の一部が記載された契約書とともに、銀行が発行した振込金受取書を保存することにより、請求書等の保存があるものとして、仕入税額控除の適用要件を満たします(複数の書類を合わせて1つの適格請求書とすることが可能)。
注:令和5年9月30日以前からの契約について、契約書に登録番号等の適格請求書として必要な事項の一部の記載が不足している場合には、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存することで仕入税額控除の適用要件を満たします。

なお、クレジットカード決済の場合にも、仕入税額控除の為には、記載要件を満たす適格請求書が必要となります。

13.適格請求書(及び適格簡易請求書)の電磁的記録(電子データ)の保存方法
適格請求書発行事業者は、適格請求書の交付に代えて電磁的記録を相手に提供できますが、その場合、提供した電磁的記録を電子帳簿保存法に準拠して、
(1) 電磁的記録のまま、又は
(2) 紙に印刷して、
提供した日の課税期間末の翌日から2月後から7年間保存しなければなりません。
上記の(1)の電磁的記録のまま保存する場合には、以下の措置を講ずる必要があります。
① 次のイからニのいずれかの措置を行うこと
イ 適格請求書の電磁的記録を提供する前にタイムスタンプを付してから電磁的記録を提供すること
ロ 次のいずれかの方法により、提供後であるがタイムスタンプを付すとともに、電磁的記録の保存者又はその直接監督者の情報を確認できるようにしておくこと
* 適格請求書の電磁的記録を提供後に、速やかにタイムスタンプを付すこと
* 適格請求書の電磁的記録を提供からタイムスタンプを付すまでの各事務処理に関する規定を定め、その処理の通常の期間経過後、速やかにタイムスタンプを付すこと
ハ 適格請求書の係る電磁的記録の記録事項について、次のいずれかの要件を満たす電子計算機システムを使用して適格請求書の電磁的記録の提供及びその電磁的記録を保存すること
* 訂正又は削除を行った場合、その事実及び内容を確認することができること
* 訂正又は削除することができないこと
ニ 適格請求書の係る電磁的記録の記録事項について正当な理由のない訂正又は削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと
② 適格請求書の係る電磁的記録の保存等に併せて、システム概要書の備付けを行うこと
③ 適格請求書の係る電磁的記録の保存等をする場所に、その電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、その電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力できるようにしておくこと
④ 適格請求書の電磁的記録について、次の要件を満たす検索機能を確保しておくこと
注:国税に関する法律の規定による電磁的記録の提示又は提出に応じることができるようにしているときは、次のⅱ及びⅲの要件は不要となり、その判定期間の基準期間の売上高が1千万円以下の事業者が、同様に国税の電磁的記録の提示又は提出に応じることができるようにしているときは検索機能の全てが不要となります。
ⅰ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索条件として設定できること
ⅱ 日付又は金額の記録項目については、その範囲を指定して条件を設定できること

上記(2)の適格請求書の電磁的記録を紙で保存しようとするときには、整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面を保存する必要があります。

14.仕入税額控除の要件
インボイス制度の下では、一定事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の適用要件となります。保存すべき請求書等には、次の様なものが含まれます。
(1)適格請求書
(2)適格簡易請求書
(3)適格請求書又は適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録(電子データ)
(4)適格請求書の記載事項を買手が記載した仕入明細書、仕入計算書その他これに類する書類の場合、課税仕入れの相手方(売手)の確認を受けたものに限られます(電子データを含む)
(5)次の取引について、媒介又は取次に係る業務を行う者が作成する一定の書類(電子データを含む)
イ 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者 が卸売の業務として行うものに限ります。)
ロ  生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売 (無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
(6)次の取引について、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で認められます。
① 適格請求書の交付義務が免除される、3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用時に回収される取引(①に該当分を除く)
③ 適格請求書発行事業者でない古物営業者(古物商、中古車販売業等)からの古物購入(棚卸資産に限定)
④ 適格請求書発行事業者でない質屋営業車からの質物取得(棚卸資産に限定)
⑤ 適格請求書発行事業者でない宅地建物取引業者からの建物購入(棚卸資産に限定)
⑥ 適格請求書発行事業者でない再生資源及び再生部品の購入(購入者の棚卸資産に限定)
⑦ 適格請求書の交付義務が免除される、3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の購入等
⑧ 適格請求書の交付義務が免除される、郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限定)
⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

15.納付税額の計算方法

区分記載請求書等保存方式現行通り、適用税率ごとに取引総額に110分の10、或いは108分の8を乗じて計算する「割戻し計算」を維持する。
適格請求書等保存方式
(インボイス制度)
適用税率ごとに取引総額に110分の10、或いは108分の8を乗じて計算する「割戻し計算」と、「適格請求書」に記載のある消費税額の「積上げ計算」のいずれかを選択できます。
但し、売上税額を「積上げ計算」する場合には、仕入税額も「積上げ計算」としなければなりません。

16.事業者別対応・検討事項
以上から、事業者としてインボイス制度の導入に伴い、対応・検討すべき事項があります。
(1)原則課税事業者
① 適格請求書発行事業者の登録申請
② 適格請求書等の様式変更
③ 仕入税額控除の適用要件の理解と税区・税率等の記帳確認
④ 免税事業者等の登録申請事業者以外の事業者との取引(業者選択の検討)

(2)簡易課税制度の選択課税事業者
① 適格請求書発行事業者の登録申請
② 適格請求書等の様式変更
③ 基準期間の課税売上高が50百万円超になる可能性が低い場合には、仕入税額控除の原則処理を気にしなくても良いかと思われます。
④ 免税事業者等の登録申請事業者以外の事業者との取引(業者選択の検討)
⑤ 課税売上高から納付消費税額を計算することから、売手側からの適格請求書等の保存は仕入税額控除においては必要となりません。

(3)免税事業者(上記7Ⅲを参照)
① 競争の激しい環境下にある場合に、仕入税額控除の対象外として登録申請事業者から取引を削減・停止となるリスク存在の有無確認
② 上記①のリスクがあり営業に重大な影響が考えられる場合には、課税事業者を選択し、かつ登録申請することを検討する。
③ 上記②で登録申請することを選択した場合に、簡易課税制度の選択が有利か否かを同時に検討する。
④ 課税事業者として、同様に上記(1)又は(2)の対応

17.委託販売:媒介者交付特例
委託販売の場合、購入者に対して課税資産の譲渡等を行っているのは、委託者ということから、本来、委託者が購入者に対して適格請求書を交付しなければなりません。この様な場合、受託者が委託者を代理して、委託者の氏名又は名称及び登録番号を記載した、委託者の適格請求書を、相手方に交付することも認められます(代理交付)。 また、次の①及び②の要件を満たすことにより、媒介又は取次ぎを行う者である受託者が、 委託者の課税資産の譲渡等について、自己の氏名又は名称及び登録番号を記載した適格請求書 又は適格請求書に係る電磁的記録を、委託者に代わって、購入者に交付し、又は提供することができます(媒介者交付特例)。
① 委託者及び受託者が適格請求書発行事業者であること
② 委託者が受託者に、自己が適格請求書発行事業者の登録を受けている旨を取引前までに通知していること(通知の方法としては、個々の取引の都度、事前に登録番号を書面等により 通知する方法のほか、例えば、基本契約等により委託者の登録番号を記載する方法など)。 なお、媒介者交付特例を適用する場合における受託者の対応及び委託者の対応は、次のとおりです。
受託者の対応:
① 交付した適格請求書の写し又は提供した電磁的記録を保存する。
② 交付した適格請求書の写し又は提供した電磁的記録を速やかに委託者に交付又は提供する。
委託者の対応:
① 自己が適格請求書発行事業者でなくなった場合、その旨を速やかに受託者に通知する。
② 委託者の課税資産の譲渡等について、受託者が委託者に代わって適格請求書を交付していることから、委託者においても、受託者から交付された適格請求書の写しを保存する。

以上

基準地価「地殻変動」映す 海外マネーや住環境評価、暴落を左右

国土交通省が9月21日発表した2021年7月1日時点の基準地価は、住宅地や商業地などの全国平均が前年度比0.4%下がり、2年連続の下落となった。際立ったのが2年目の新型コロナウイルス禍の下で進む「地殻変動」だ。
2021年基準地価の変動率(7月1日時点、 前年比%、 ▲は下落):

地域住宅地商業地全用途
2021年前年2021年前年2021年前年
全国平均0.5▲0.7▲0.5▲0.3▲0.4▲0.6
三大都市圏0.0
▲0.30.10.70.10.0
東京圏0.1▲0.20.11.00.20.1
大阪圏▲0.3▲0.4▲0.61.2▲0.30.0
名古屋圏0.3▲0.71.0▲1.1▲0.6▲0.8
地方圏▲0.7▲0.9▲0.7▲0.6▲0.3▲0.8
中核地方4市4.23.64.66.14.44.5

公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。

 公示地価基準地価 路線価 固定資産税評価額
調査主体国土交通省都道府県国税庁市町村
調査地点数約26,000約21,600 約336,000多数
調査時点1月1日7月1日1月1日1月1日(原則3年に1回、 次回は2021年)
公開時期3月9月7月又は8月3月
公開サイト国交省(土地総合情報ライブラリー) 国交省(土地総合情報ライブラリー)国税庁資産評価システム研究センター
その他調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。調査対象は地方の調査地点が多く、 不動産鑑定士の評価を参考に調査し、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から 相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準

概算要求 最大の111兆円 来年度予算

財務省は7日、2022年度予算の各省庁による概算要求について、金額を明示した項目の総額が一般会計で111兆6559憶円だったと発表した。2021年度の105兆4071憶円を上回り、過去最高となった。

住宅省エネ改修に補助 外壁・窓 断熱に50~100万円

国土交通省は住宅の省エネルギー化を交付金で支援する。戸建てやマンションの改修工事で断熱材などを活用する場合、費用の一部を自治体を通じて補助する。対象となるのは外壁や窓の断熱性能を高める改修工事だ。家全体ではなく部分的な改修も認める。費用の一部について1件あたり最大50万~100万円程度を補助する方向で調整している。

認知症と所有不動産処分

新聞に「認知症 自宅の処分難題」といを記事がありましたので、認知症を患うと所有不動産の処分・取引に影響する問題とは何か、そして、その対策・解決方法は何かを取り上げてみたいと思います。
例えば、自宅所有の方が認知症になり、介護施設等に入所することに迫られた場合に、入所金、介護費用、医療費等の負担が重くなり資金の捻出のためにそのご自宅を売却する必要がでた時に、ご家族の判断のみで例外無く売却手続きを進めることが可能でしょうか。答えはNOです。
通常、不動産を売却する時に、司法書士が所有権移転登記の手続きをおこないますが、司法書士には、正当な契約であったか確認する義務があるため、登記手続きをおこなう前の売買取引契約時に、本人確認および意思確認をおこなって契約に有効性があるか判断します。その際、認知症により不動産の所有者である本人の意思確認が十分にできないと判断された場合、売買契約が成立しませんので司法書士は登記手続きをおこなうことはできません。
この様な状況になっている場合、意思確認が十分にできない様な認知症になった親の不動産を売却したいという状況では、「成年後見制度」による成年後見人をつけることが必須になります。

1.成年後見制度
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などが原因で判断能力が不十分な人に対して、後見人が法律的に保護・支援をおこなう制度です。この制度の成年後見人は、本人に代わって財産管理や介護施設入所への契約などを行うことが出来ますが、本人の能力によって、後見(判断能力が全くない)・保佐(判断能力が著しく不十分)・補助(判断能力が不十分)の3つの分類があり、親族、弁護士、司法書士、社会福祉士、法人、市区町村長などが成年後見人になることができます。
成年後見制度の申立てが行いるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、検察官、市区村長などとなっています。
なお、成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。「任意後見制度」とは、本人に判断能力があるうちに公正証書を作成して後見になってくれる方と任意後見契約を結び、事前に自ら任意後見受任者を選んでおく制度のことです。一方、「法定後見制度」とは、本人の判断能力が不十分になった場合、家族等が家庭裁判所に申立てをし、審判により法定任後見人が選定され本人の代わりに支援を行う制度です。以下は、法定後見制度に関連しています。

2.家庭裁判所に「成年後見人」選任の申立
成年後見人の申立ては家庭裁判所に対して行い、申立書に記載された成年後見人候補者が適任であるかどうかが審理されます。場合によっては候補者以外の弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職、法律または福祉に関する法人などが選任されることもあります。
成年後見人は後見が終了するまで行った職務の内容を定期的にまたは随時、家庭裁判所に報告する義務があります。家庭裁判所に申立てる際、成年後見人候補者として記載した子や親族などが後見人に選ばれる場合もあり、又、家庭裁判所が必要と判断した場合は「後見監督人」を選任して、後見人に対する監督事務を行わせることがあります。
成年後見人の任期は不動産を売却したら終わりではなく、認知症本人の病状が回復するか、亡くなるまで続きます。

3.成年後見人を立てる前に診断書が必要
成年後見人をつけて認知症になってしまった親の不動産を売却することにしたい場合、先ずは病院で認知症であると医師に診断してもらう必要があります。医師の診断書がなければ、家庭裁判所に成年後見人の申立てを認めてもらうことはできません。

4.成年後見人との利益相反が起きる場合
成年後見制度は活用できるが、だれを成年後見人に選任するかによって、相続の際に問題になることもあります。例え「不動産の売却」が当初の目的であったとしても、成年後見人として選任された人は、本人が亡くなった際、相続人に財産を引渡すところまでが仕事となります。
例えば、長男が認知症の母親の成年後見人となっている際に、父親の相続が発生したというケースでは、長男は母親の「成年後見人」であり、かつ母親と共同で亡父の「相続人」であることになります。このような「利益相反」が起きるときは、2つの身分(相続人と成年後見人)のどちらかを捨てなければなりませんが、その場合の解決方法は下記①~③のいずれかとなります。
① 相続放棄し、成年後見人に専念する
② 後見監督人等がいる場合、遺産分割は後見監督人が成年被後見人を代理して行う
③ 家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立て、特別代理人を選任する
血縁者が成年後見人となった場合、既述のように相続の際に利益相反が起きやすいです。そのため成年後見人の選出の際に、家庭裁判所が本人を取り巻く状況を踏まえて、候補者以外の弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職、法律または福祉に関する法人などが選任されるケースがあります。

5.成年後見では家庭裁判所の許可がないと所有者が認知症の家は売れない
成年後見人や保佐人、また補助人になったからといって、認知症になった親の不動産を自由に売却できるわけではありません。認知症になった親の不動産を売却するためには、成年後見人を選任する手続きをおこなった後、改めて家庭裁判所に「居住用不動産処分許可」の申立てをし、許可を得る必要があります。
家庭裁判所が不動産売却に対して許可を出すかどうかは、以下の要素から判断されます。

売却の必要性本人の財産状況として売却が必要であるか。
本人の生活や看護の状態、意思確認入所や入院の状況と帰宅の見込み、本人の意向確認。帰宅の見込みがある場合、帰宅先をどのように確保するか。
売却代金の保管売却代金の入金や保管をどのようにおこなうか。
親族の処分に対する意向本人の推定相続人などの親族が売却に対して反対していないか。

6.後見人選定から不動産売却までの流れ
以上から、成年後見人の選任から不動産売却までの流れは下記となります。ケースバイケースではありますが、成年後見人の選任にかかる期間は1~2カ月程です。売却したい不動産が自宅の場合は、同じく家庭裁判所の許可が必要になるため、別途申立ての許可に時間がかかります。

1本人の所在地を管轄する家庭裁判所に「成年後見制度開始」の審判を申立てる
家庭裁判所から依頼された医師が本人の意思能力を評価し、診断書を作成
2後見人の選定、審判の確定
3後見人の選定、審判の確定
4不動産会社と売買契約に向けて買主を探す
5本人に代わり、成年後見人が買主と売買契約を結ぶ
6家庭裁判所の許可
(売却した資金の使い道などの明確な記載が必要)
7家庭裁判所からの許可後、売買代金の精算、所有権移転の登記が行われる

7.認知症を発症前の対策
上述が、判断能力が不十分となった場合のケースでしたが、財産を処分するには判断能力が必要になりますので、判断能力のあるうちの対応には下記のことが考えられます。
① 信託の利用
財産の管理を第三者に委託する方法もあります。
② 任意後見契約の締結
上述しました成年後見制度の一つであります、自分の判断能力が衰えたときに備えて、本人が「任意後見受任者」を選び、公正証書を作成して任意後見契約を締結して備える。

8.信託の利用
信託とは、「自分の大切な財産を、信頼する人に託し、大切な人あるいは自分のために管理・運用してもらう制度」のことです。財産の管理・運用を、「誰のために」「どういう目的で」ということを自分が決めて、信頼できる人に託すこと(信託すること)が、信託の大きな特徴です。
財産を信託された人(受託者)は、信託した人(委託者)の決めた目的の実現に向けて信託された財産を管理・運用します。「信託」は、以下の3者の関係からなる制度です。
* 委託者(自分)……財産を預ける(信託する)人
* 受託者(信託銀行、親族等)……財産を預かって(信託されて)管理・運用する人
* 受益者(恩恵を受ける人)……財産から生じる利益を得る人
信託の基本的な仕組みは、
① 自分の大切な財産を、信頼できる人に信託し
② 受託者は信託された財産を管理・運用し、そこから生まれた利益を
③ 委託者が指定した人(受益者)に渡します。
というのが最も基本的な信託のしくみになります。
委託者は、自分が持つ財産を契約などにより受託者に託します。信託すると、委託者の財産の所有権は受託者に移転し、受託者が信託された財産の所有者となります(不動産の場合には受託者として登記します)。この点が、他の制度にはない信託の最も大きな特徴です。
信託された財産は、受託者のもとで受益者のための財産として管理・運用することになります。委託者および受益者への大きな責任を負う信託銀行等の受託者(商事信託の場合)には、信託法や信託業法などの法律に基づいて様々な厳しい義務が課せられているため、信託した財産は安全に管理されます。
信託をすると、受益者は信託財産から生じる利益を受取る権利を持つことになります。これを「信託受益権」といいます。
(1)信託財産と信託目的
委託者から信託銀行等の受託者に信託された財産を「信託財産」といいます。信託できる財産の種類には、現金や土地・建物など金銭的価値のあるものであれば信託することができますが、農地、預貯金や一部の証券会社除き上場株式などの有価証券は実質的に不可となります。
また、信託した財産を、誰のために、どのような目的で、どのように管理・運用するかということは、委託者が決めます。これを「信託目的」といいます。脱法的なもの等ではない限り、「信託目的」も委託者が自由に決めることができます。

(2)商事信託と民事信託との違い
信託という大きな枠組みの中では、信託銀行や信託会社が行う「商事信託」とそれ以外の「民事信託」の二つに分けることができます。
① 商事信託
商事信託とは、財産を託される受託者を信託銀行や信託会社がビジネスとして他人の財産を管理運用等する仕組みです。他人から託された財産について報酬をもらって運用して、運用益をその人に戻すという従来からある信託です。
② 民事信託(家族信託)
一方で、民事信託とは、信託銀行等が担っていた受託者の立場を家族などの一般人が代わって行う制度です。信託銀行などのようにビジネスとして他人の財産を預かる場合については信託業法上の免許が必要で非常に要件は厳しいのですが、民事信託のようにビジネスとして行わない信託について免許は不要です。ただし、信託銀行などのように不特定多数の人から財産を預かって、信託報酬を得るようなことはできません。あくまで特定の人の財産を原則として報酬をもらわずに管理運用などをすることを「民事信託」といいます。なお、「家族信託」というものがありますが、これは民事信託のなかでも、特に受託者を家族が担う場合を家族信託と呼ぶようになっていますが、公的な呼称ではありません。
民事信託は、信託契約などによって内容を決めるので自分の生存中から死亡後まで、財産の管理活用承継について柔軟な設定ができます。また、自分が信頼した人に財産を託すことができるので、成年後見制度のようにまったく知らない人に財産を管理されたり、家庭裁判所の監督下に置かれたりするようなことはありません。家族を受託者にすることもできるので、司法書士などの専門職が成年後見人になった場合に比べ、長い目でみれば費用も安く抑えることができる場合があります。
成年後見制度では、財産の管理・活用・承継を一つの契約ですることができるので、認知症対策から遺言の機能までを一つの契約内で持たせることも可能です。さらに、通常の遺言では、自分の死後に発生した相続(二次相続以降)について財産を承継する者を指定することはできませんが、信託では二次相続以降についても財産を承継する者を指定することができます。
この様に、信託は、従来の成年後見制度や遺言では果たせなかったことについて、補完することができる新しい仕組みといいます。
 
以上が、不動産売却等に伴う認知症になる前後の対応策を言及しました。「前」は、任意後見制度又は信託があり、信託は特に不動産や非上場株式に有効に機能する方法かと思います。「後」は、法定後見制度の活用となります。
いずれの対応策もメリット・デメリットがありますので、状況に合わせて活用方法を決めることになるかと思います。

雇用保険料引き上げへ 2022年度にも

厚生労働省は雇用保険の保険料率を引き上げる検討に入る。新型コロナウイルス感染拡大で雇用調整助成金の給付が増え、財源が逼迫しているためだ。国費投入のほか、企業や働く人の負担も増える。

名義変更に伴う低解約返戻保険等の評価の見直し

国税庁は、経営者等向け保険の中に加入初期に解約返戻金を抑え、その低い返戻金時に経営者等に名義変更し課税額を抑え、経営者等は返戻金が増加後に解約し節税効果を得るという保険商品がありました。これを、新たな課税方法では、解約返戻金が保険料の資産計上額の一定割合を下回る場合に資産計上額で課税額を算出するという見直しを行った。その改正基本通達36-37の概要は、以下の通り。

保険契約等の種類経営者等に名義変更時の評価方法
令和3.6.30までの変更令和3.7.1以後の変更
下記②及び③以外の保険契約支給時解約返戻金額

注1
低解約返戻金型保険:
支給時解約返戻金額<支給時資産計上額×70%
支給時解約返戻金額支給時資産計上額

注1
復旧することができる払済保険等支給時資産計上額プラス法人税基本通達9-3-7の2による損金算入額

注1:法人税基本通達9-3-5の2の適用を受けるものに限定。従って、適用対象は、令和元年(2019年)7月8日以後に締結した保険契約からとなります。同日以前の保険契約には原則、適用対象外。

法人税基本通達9-3-5の2とは(2019年7月8日以後の契約分から適用):
国税庁は、生命保険各社が節税対策になると販売していた解約返戻率が高い定期保険等について、課税ルールの見直しの基本通達を発表しています。その概要は以下の通りです。過熱した節税保険ブームに歯止めをかけるということから、見直しの基本方針には変更が無いかと思われます。
対象の保険とは:
法人が契約者で役員又は使用人(これらの親族も含む)を被保険者とする保険期間が3年以上の定期保険又は第三分野保険で最高解約返戻率が50%超の加入保険が対象となります。
従いまして、対象外となる全損タイプの定期保険等は、次のものになります。
(1)保険期間が3年未満の定期保険等
(2)最高解約返戻率が50%以下の定期保険等
(3)最高解約返戻率が70%以下、かつ、年換算保険料相当額(保険料総額÷保険期間)が30万円以下の定期保険等
(4)保険期間を通じて解約返戻金のない定期保険又は第三分野(ごく少額の払戻金のある契約を含み、保険料の払込期間が保険期間より短い保険)で、かつ、当年度の支払保険料が30万円以下の定期保険

参考:保険分類
①第一分野保険:生命保険(終身保険、定期保険等)
②第二分野保険:損害保険(火災保険、自動車保険等)
③第三分野保険:上記①及び②に属さない疾病・傷害保険(医療保険、介護保険、傷害保険等)

路線価6年ぶり下落 2021年分0.5% 観光地・繁華街厳しく

国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基礎となる2021年分の路線価(1月1日時点)を発表した。全国約32万地点の標準宅地は全国平均で前年に比べ0.5%下落した。新型コロナウイルスの影響で観光地や繁華街などがマイナスに転じ、6年ぶりに前年を下回った。
都道府県別の路線価は、札幌、千葉、横浜など8都道府県で上昇した。 前年の上昇は38都道府県だった。 首都圏では東京都(下落率1.1%、前年の上昇率5.0%)、千葉県(上昇率0.2%、前年の上昇率1.2%)、神奈川県(下落率0.4%、前年の上昇率1.1%)、埼玉県(下落率0.6%、前年の上昇率1.2%)でした。最も上昇率が高かったのは、福岡県の1.8%(前年は4.8%)でした。
路線価とは、 主要道路に面した土地1平方メートル当たりの標準価格で、 2021年1月1日から12月31日までの間に相続や贈与で土地を取得した場合、 今回公表された路線価を基に税額が算定される。 調査地点は国土交通省が3月に公表した公示地価(2万6千地点)よりも多い約32万強地点。 公示地価の8割を目安に売買実例などを参考にして算出するため、 公示地価よりも遅く例年7月に公表される。 路線価の最高は、 36年連続でお馴染みの東京都中央区銀座5丁目銀座5の文具店「鳩居堂」前の1平方メートル当たり42,720千円(前年45,920千円)でした。

住宅ローン控除の特例特別控除

2021年(令和3年)度税制改正で、年消費税率10%で住宅の特別特例取得に該当し、以下の諸条件を満たす場合には、2022年末(令和4年末)までの入居(1年延長)により住宅ローン控除期間の3年間延長特例(控除期間13年間)が認められようになりました。
改正は、2022年(令和4年)1月1日以後の確定申告提出からの適用となっています。
(1)特別特例取得の要件(①と②)
適用要件には、以下の様に住宅取得区分と契約締結日並びに居住開始日が定められていますので各項目に留意する必要があります。

① 住宅取得の区分② 契約締結の期限居住開始の期間
イ 新築注文住宅2020年(令和2年)10月1日~2021年(令和3年)9月30日の期間2021年(令和3年)1月1日~2022年(令和4年)12月31日の期間
ロ 分譲住宅・マンション・既存中古住宅・増改築等2020年(令和2年)12月1日~2021年(令和3年)11月30日の期間

(2)住宅の床面積と合計所得金額の要件

 特別特例の場合原則の場合
住宅の床面積40㎡以上50㎡以上
合計所得金額1,000万円以下3,000万円以下

参考:住宅ローン特別控除(注1)

居住年一般住宅認定長期優良住宅
借入金等の年末残高の限度額控除率最高借入金等の年末残高の限度額控除率最高
H26年1月~3月2千万円1.0%20万円3千万円1.0%30万円
H26年4月~令和3年12月
(注2)
4千万円1.0%40万円5千万円1.0%50万円

注1:認定住宅とは、 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいい、 それ以外を一般住宅といいます。
注2:消費税等の税率が8%又は10%になった場合での金額であり、 それ以外の場合(経過措置の適用で旧税率が適用になっている場合や個人間の売買契約による場合も含む)には平成26年1月~3月と同じになります。
なお、 住宅を取得・居住した年に勤務先から転任の命令等やむを得ない事由により転居した場合における再居住の特例として、 居住年に一時転居しその年の12月31日までの間に再び居住した場合には、 継続居住とみなされ当該税額控除の適用対象となります。
上記の住宅ローン特別控除に対して、2020年(令和2年)度税制改正で、特例特別控除が創設されており消費税率10%が適用される住宅取得等(新築、中古、増改築等)をして、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に居住に供された場合に、住宅ローン控除として従来の10年目の適用期間を3年延長され、適用年の11年目から13年目までの各年の控除額については、以下の①又は②のいずれか少ない金額とされます(適用年の1年目から10年目までは現行と同様)。この居住要件が、上述の通り2021年(令和3年)度税制改正により、令和2年12月31日までが令和3年12月31日へと1年延長となりました。
(1) 一般住宅
①  住宅借入金等の年末残高(4千万円を限度)× 1%
② (住宅取得等の対価金額 - 対価金額に含まれる消費税額等){4千万円を限度}× 2% ÷ 3 
(2) 認定長期優良住宅
①  住宅借入金等の年末残高(5千万円を限度)× 1%
② (住宅取得等の対価金額 - 対価金額に含まれる消費税額等){5千万円を限度}× 2% ÷ 3 
*:居住と非居住に供する部分がある場合には、居住に占める床面積割合が控除対象となります。
*:住宅取得等に関し、補助金等の交付金や直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合には、その交付金や贈与額を取得金額から控除する必要はありません。
*:2以上の住宅取得等の場合には、調整計算が必要となります。