新聞に「認知症 自宅の処分難題」といを記事がありましたので、認知症を患うと所有不動産の処分・取引に影響する問題とは何か、そして、その対策・解決方法は何かを取り上げてみたいと思います。
例えば、自宅所有の方が認知症になり、介護施設等に入所することに迫られた場合に、入所金、介護費用、医療費等の負担が重くなり資金の捻出のためにそのご自宅を売却する必要がでた時に、ご家族の判断のみで例外無く売却手続きを進めることが可能でしょうか。答えはNOです。
通常、不動産を売却する時に、司法書士が所有権移転登記の手続きをおこないますが、司法書士には、正当な契約であったか確認する義務があるため、登記手続きをおこなう前の売買取引契約時に、本人確認および意思確認をおこなって契約に有効性があるか判断します。その際、認知症により不動産の所有者である本人の意思確認が十分にできないと判断された場合、売買契約が成立しませんので司法書士は登記手続きをおこなうことはできません。
この様な状況になっている場合、意思確認が十分にできない様な認知症になった親の不動産を売却したいという状況では、「成年後見制度」による成年後見人をつけることが必須になります。
1.成年後見制度
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などが原因で判断能力が不十分な人に対して、後見人が法律的に保護・支援をおこなう制度です。この制度の成年後見人は、本人に代わって財産管理や介護施設入所への契約などを行うことが出来ますが、本人の能力によって、後見(判断能力が全くない)・保佐(判断能力が著しく不十分)・補助(判断能力が不十分)の3つの分類があり、親族、弁護士、司法書士、社会福祉士、法人、市区町村長などが成年後見人になることができます。
成年後見制度の申立てが行いるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、検察官、市区村長などとなっています。
なお、成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。「任意後見制度」とは、本人に判断能力があるうちに公正証書を作成して後見になってくれる方と任意後見契約を結び、事前に自ら任意後見受任者を選んでおく制度のことです。一方、「法定後見制度」とは、本人の判断能力が不十分になった場合、家族等が家庭裁判所に申立てをし、審判により法定任後見人が選定され本人の代わりに支援を行う制度です。以下は、法定後見制度に関連しています。
2.家庭裁判所に「成年後見人」選任の申立
成年後見人の申立ては家庭裁判所に対して行い、申立書に記載された成年後見人候補者が適任であるかどうかが審理されます。場合によっては候補者以外の弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職、法律または福祉に関する法人などが選任されることもあります。
成年後見人は後見が終了するまで行った職務の内容を定期的にまたは随時、家庭裁判所に報告する義務があります。家庭裁判所に申立てる際、成年後見人候補者として記載した子や親族などが後見人に選ばれる場合もあり、又、家庭裁判所が必要と判断した場合は「後見監督人」を選任して、後見人に対する監督事務を行わせることがあります。
成年後見人の任期は不動産を売却したら終わりではなく、認知症本人の病状が回復するか、亡くなるまで続きます。
3.成年後見人を立てる前に診断書が必要
成年後見人をつけて認知症になってしまった親の不動産を売却することにしたい場合、先ずは病院で認知症であると医師に診断してもらう必要があります。医師の診断書がなければ、家庭裁判所に成年後見人の申立てを認めてもらうことはできません。
4.成年後見人との利益相反が起きる場合
成年後見制度は活用できるが、だれを成年後見人に選任するかによって、相続の際に問題になることもあります。例え「不動産の売却」が当初の目的であったとしても、成年後見人として選任された人は、本人が亡くなった際、相続人に財産を引渡すところまでが仕事となります。
例えば、長男が認知症の母親の成年後見人となっている際に、父親の相続が発生したというケースでは、長男は母親の「成年後見人」であり、かつ母親と共同で亡父の「相続人」であることになります。このような「利益相反」が起きるときは、2つの身分(相続人と成年後見人)のどちらかを捨てなければなりませんが、その場合の解決方法は下記①~③のいずれかとなります。
① 相続放棄し、成年後見人に専念する
② 後見監督人等がいる場合、遺産分割は後見監督人が成年被後見人を代理して行う
③ 家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立て、特別代理人を選任する
血縁者が成年後見人となった場合、既述のように相続の際に利益相反が起きやすいです。そのため成年後見人の選出の際に、家庭裁判所が本人を取り巻く状況を踏まえて、候補者以外の弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職、法律または福祉に関する法人などが選任されるケースがあります。
5.成年後見では家庭裁判所の許可がないと所有者が認知症の家は売れない
成年後見人や保佐人、また補助人になったからといって、認知症になった親の不動産を自由に売却できるわけではありません。認知症になった親の不動産を売却するためには、成年後見人を選任する手続きをおこなった後、改めて家庭裁判所に「居住用不動産処分許可」の申立てをし、許可を得る必要があります。
家庭裁判所が不動産売却に対して許可を出すかどうかは、以下の要素から判断されます。
売却の必要性 本人の財産状況として売却が必要であるか。
本人の生活や看護の状態、意思確認 入所や入院の状況と帰宅の見込み、本人の意向確認。帰宅の見込みがある場合、帰宅先をどのように確保するか。
売却代金の保管 売却代金の入金や保管をどのようにおこなうか。
親族の処分に対する意向 本人の推定相続人などの親族が売却に対して反対していないか。
6.後見人選定から不動産売却までの流れ
以上から、成年後見人の選任から不動産売却までの流れは下記となります。ケースバイケースではありますが、成年後見人の選任にかかる期間は1~2カ月程です。売却したい不動産が自宅の場合は、同じく家庭裁判所の許可が必要になるため、別途申立ての許可に時間がかかります。
1 本人の所在地を管轄する家庭裁判所に「成年後見制度開始」の審判を申立てる
家庭裁判所から依頼された医師が本人の意思能力を評価し、診断書を作成
2 後見人の選定、審判の確定
3 後見人の選定、審判の確定
4 不動産会社と売買契約に向けて買主を探す
5 本人に代わり、成年後見人が買主と売買契約を結ぶ
6 家庭裁判所の許可
(売却した資金の使い道などの明確な記載が必要)
7 家庭裁判所からの許可後、売買代金の精算、所有権移転の登記が行われる
7.認知症を発症前の対策
上述が、判断能力が不十分となった場合のケースでしたが、財産を処分するには判断能力が必要になりますので、判断能力のあるうちの対応には下記のことが考えられます。
① 信託の利用
財産の管理を第三者に委託する方法もあります。
② 任意後見契約の締結
上述しました成年後見制度の一つであります、自分の判断能力が衰えたときに備えて、本人が「任意後見受任者」を選び、公正証書を作成して任意後見契約を締結して備える。
8.信託の利用
信託とは、「自分の大切な財産を、信頼する人に託し、大切な人あるいは自分のために管理・運用してもらう制度」のことです。財産の管理・運用を、「誰のために」「どういう目的で」ということを自分が決めて、信頼できる人に託すこと(信託すること)が、信託の大きな特徴です。
財産を信託された人(受託者)は、信託した人(委託者)の決めた目的の実現に向けて信託された財産を管理・運用します。「信託」は、以下の3者の関係からなる制度です。
* 委託者(自分)……財産を預ける(信託する)人
* 受託者(信託銀行、親族等)……財産を預かって(信託されて)管理・運用する人
* 受益者(恩恵を受ける人)……財産から生じる利益を得る人
信託の基本的な仕組みは、
① 自分の大切な財産を、信頼できる人に信託し
② 受託者は信託された財産を管理・運用し、そこから生まれた利益を
③ 委託者が指定した人(受益者)に渡します。
というのが最も基本的な信託のしくみになります。
委託者は、自分が持つ財産を契約などにより受託者に託します。信託すると、委託者の財産の所有権は受託者に移転し、受託者が信託された財産の所有者となります(不動産の場合には受託者として登記します)。この点が、他の制度にはない信託の最も大きな特徴です。
信託された財産は、受託者のもとで受益者のための財産として管理・運用することになります。委託者および受益者への大きな責任を負う信託銀行等の受託者(商事信託の場合)には、信託法や信託業法などの法律に基づいて様々な厳しい義務が課せられているため、信託した財産は安全に管理されます。
信託をすると、受益者は信託財産から生じる利益を受取る権利を持つことになります。これを「信託受益権」といいます。
(1)信託財産と信託目的
委託者から信託銀行等の受託者に信託された財産を「信託財産」といいます。信託できる財産の種類には、現金や土地・建物など金銭的価値のあるものであれば信託することができますが、農地、預貯金や一部の証券会社除き上場株式などの有価証券は実質的に不可となります。
また、信託した財産を、誰のために、どのような目的で、どのように管理・運用するかということは、委託者が決めます。これを「信託目的」といいます。脱法的なもの等ではない限り、「信託目的」も委託者が自由に決めることができます。
(2)商事信託と民事信託との違い
信託という大きな枠組みの中では、信託銀行や信託会社が行う「商事信託」とそれ以外の「民事信託」の二つに分けることができます。
① 商事信託
商事信託とは、財産を託される受託者を信託銀行や信託会社がビジネスとして他人の財産を管理運用等する仕組みです。他人から託された財産について報酬をもらって運用して、運用益をその人に戻すという従来からある信託です。
② 民事信託(家族信託)
一方で、民事信託とは、信託銀行等が担っていた受託者の立場を家族などの一般人が代わって行う制度です。信託銀行などのようにビジネスとして他人の財産を預かる場合については信託業法上の免許が必要で非常に要件は厳しいのですが、民事信託のようにビジネスとして行わない信託について免許は不要です。ただし、信託銀行などのように不特定多数の人から財産を預かって、信託報酬を得るようなことはできません。あくまで特定の人の財産を原則として報酬をもらわずに管理運用などをすることを「民事信託」といいます。なお、「家族信託」というものがありますが、これは民事信託のなかでも、特に受託者を家族が担う場合を家族信託と呼ぶようになっていますが、公的な呼称ではありません。
民事信託は、信託契約などによって内容を決めるので自分の生存中から死亡後まで、財産の管理活用承継について柔軟な設定ができます。また、自分が信頼した人に財産を託すことができるので、成年後見制度のようにまったく知らない人に財産を管理されたり、家庭裁判所の監督下に置かれたりするようなことはありません。家族を受託者にすることもできるので、司法書士などの専門職が成年後見人になった場合に比べ、長い目でみれば費用も安く抑えることができる場合があります。
成年後見制度では、財産の管理・活用・承継を一つの契約ですることができるので、認知症対策から遺言の機能までを一つの契約内で持たせることも可能です。さらに、通常の遺言では、自分の死後に発生した相続(二次相続以降)について財産を承継する者を指定することはできませんが、信託では二次相続以降についても財産を承継する者を指定することができます。
この様に、信託は、従来の成年後見制度や遺言では果たせなかったことについて、補完することができる新しい仕組みといいます。
以上が、不動産売却等に伴う認知症になる前後の対応策を言及しました。「前」は、任意後見制度又は信託があり、信託は特に不動産や非上場株式に有効に機能する方法かと思います。「後」は、法定後見制度の活用となります。
いずれの対応策もメリット・デメリットがありますので、状況に合わせて活用方法を決めることになるかと思います。
2021年8月20日
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カテゴリー : 税務情報
厚生労働省は雇用保険の保険料率を引き上げる検討に入る。新型コロナウイルス感染拡大で雇用調整助成金の給付が増え、財源が逼迫しているためだ。国費投入のほか、企業や働く人の負担も増える。
2021年7月28日
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カテゴリー : 社会情報
国税庁は、経営者等向け保険の中に加入初期に解約返戻金を抑え、その低い返戻金時に経営者等に名義変更し課税額を抑え、経営者等は返戻金が増加後に解約し節税効果を得るという保険商品がありました。これを、新たな課税方法では、解約返戻金が保険料の資産計上額の一定割合を下回る場合に資産計上額で課税額を算出するという見直しを行った。その改正基本通達36-37の概要は、以下の通り。
保険契約等の種類 経営者等に名義変更時の評価方法
令和3.6.30までの変更 令和3.7.1以後の変更
① 下記②及び③以外の保険契約 支給時解約返戻金額
②
注1
低解約返戻金型保険:
支給時解約返戻金額<支給時資産計上額×70%
支給時解約返戻金額 支給時資産計上額
③
注1
復旧することができる払済保険等 支給時資産計上額プラス法人税基本通達9-3-7の2による損金算入額
注1:法人税基本通達9-3-5の2の適用を受けるものに限定。従って、適用対象は、令和元年(2019年)7月8日以後に締結した保険契約からとなります。同日以前の保険契約には原則、適用対象外。
法人税基本通達9-3-5の2とは(2019年7月8日以後の契約分から適用):
国税庁は、生命保険各社が節税対策になると販売していた解約返戻率が高い定期保険等について、課税ルールの見直しの基本通達を発表しています。その概要は以下の通りです。過熱した節税保険ブームに歯止めをかけるということから、見直しの基本方針には変更が無いかと思われます。
対象の保険とは:
法人が契約者で役員又は使用人(これらの親族も含む)を被保険者とする保険期間が3年以上の定期保険又は第三分野保険で最高解約返戻率が50%超の加入保険が対象となります。
従いまして、対象外となる全損タイプの定期保険等は、次のものになります。
(1)保険期間が3年未満の定期保険等
(2)最高解約返戻率が50%以下の定期保険等
(3)最高解約返戻率が70%以下、かつ、年換算保険料相当額(保険料総額÷保険期間)が30万円以下の定期保険等
(4)保険期間を通じて解約返戻金のない定期保険又は第三分野(ごく少額の払戻金のある契約を含み、保険料の払込期間が保険期間より短い保険)で、かつ、当年度の支払保険料が30万円以下の定期保険
参考:保険分類
①第一分野保険:生命保険(終身保険、定期保険等)
②第二分野保険:損害保険(火災保険、自動車保険等)
③第三分野保険:上記①及び②に属さない疾病・傷害保険(医療保険、介護保険、傷害保険等)
国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基礎となる2021年分の路線価(1月1日時点)を発表した。全国約32万地点の標準宅地は全国平均で前年に比べ0.5%下落した。新型コロナウイルスの影響で観光地や繁華街などがマイナスに転じ、6年ぶりに前年を下回った。
都道府県別の路線価は、札幌、千葉、横浜など8都道府県で上昇した。 前年の上昇は38都道府県だった。 首都圏では東京都(下落率1.1%、前年の上昇率5.0%)、千葉県(上昇率0.2%、前年の上昇率1.2%)、神奈川県(下落率0.4%、前年の上昇率1.1%)、埼玉県(下落率0.6%、前年の上昇率1.2%)でした。最も上昇率が高かったのは、福岡県の1.8%(前年は4.8%)でした。
路線価とは、 主要道路に面した土地1平方メートル当たりの標準価格で、 2021年1月1日から12月31日までの間に相続や贈与で土地を取得した場合、 今回公表された路線価を基に税額が算定される。 調査地点は国土交通省が3月に公表した公示地価(2万6千地点)よりも多い約32万強地点。 公示地価の8割を目安に売買実例などを参考にして算出するため、 公示地価よりも遅く例年7月に公表される。 路線価の最高は、 36年連続でお馴染みの東京都中央区銀座5丁目銀座5の文具店「鳩居堂」前の1平方メートル当たり42,720千円(前年45,920千円)でした。
2021年(令和3年)度税制改正で、年消費税率10%で住宅の特別特例取得に該当し、以下の諸条件を満たす場合には、2022年末(令和4年末)までの入居(1年延長)により住宅ローン控除期間の3年間延長特例(控除期間13年間)が認められようになりました。
改正は、2022年(令和4年)1月1日以後の確定申告提出からの適用となっています。
(1)特別特例取得の要件(①と②)
適用要件には、以下の様に住宅取得区分と契約締結日並びに居住開始日が定められていますので各項目に留意する必要があります。
① 住宅取得の区分 ② 契約締結の期限 居住開始の期間
イ 新築注文住宅 2020年(令和2年)10月1日~2021年(令和3年)9月30日の期間 2021年(令和3年)1月1日~2022年(令和4年)12月31日の期間
ロ 分譲住宅・マンション・既存中古住宅・増改築等 2020年(令和2年)12月1日~2021年(令和3年)11月30日の期間
(2)住宅の床面積と合計所得金額の要件
特別特例の場合 原則の場合
住宅の床面積 40㎡以上 50㎡以上
合計所得金額 1,000万円以下 3,000万円以下
参考:住宅ローン特別控除(注1)
居住年 一般住宅 認定長期優良住宅
借入金等の年末残高の限度額 控除率 最高 借入金等の年末残高の限度額 控除率 最高
H26年1月~3月 2千万円 1.0% 20万円 3千万円 1.0% 30万円
H26年4月~令和3年12月
(注2)
4千万円 1.0% 40万円 5千万円 1.0% 50万円
注1:認定住宅とは、 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいい、 それ以外を一般住宅といいます。
注2:消費税等の税率が8%又は10%になった場合での金額であり、 それ以外の場合(経過措置の適用で旧税率が適用になっている場合や個人間の売買契約による場合も含む)には平成26年1月~3月と同じになります。
なお、 住宅を取得・居住した年に勤務先から転任の命令等やむを得ない事由により転居した場合における再居住の特例として、 居住年に一時転居しその年の12月31日までの間に再び居住した場合には、 継続居住とみなされ当該税額控除の適用対象となります。
上記の住宅ローン特別控除に対して、2020年(令和2年)度税制改正で、特例特別控除が創設されており消費税率10%が適用される住宅取得等(新築、中古、増改築等)をして、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に居住に供された場合に、住宅ローン控除として従来の10年目の適用期間を3年延長され、適用年の11年目から13年目までの各年の控除額については、以下の①又は②のいずれか少ない金額とされます(適用年の1年目から10年目までは現行と同様)。この居住要件が、上述の通り2021年(令和3年)度税制改正により、令和2年12月31日までが令和3年12月31日へと1年延長となりました。
(1) 一般住宅
① 住宅借入金等の年末残高(4千万円を限度)× 1%
② (住宅取得等の対価金額 - 対価金額に含まれる消費税額等){4千万円を限度}× 2% ÷ 3
(2) 認定長期優良住宅
① 住宅借入金等の年末残高(5千万円を限度)× 1%
② (住宅取得等の対価金額 - 対価金額に含まれる消費税額等){5千万円を限度}× 2% ÷ 3
*:居住と非居住に供する部分がある場合には、居住に占める床面積割合が控除対象となります。
*:住宅取得等に関し、補助金等の交付金や直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合には、その交付金や贈与額を取得金額から控除する必要はありません。
*:2以上の住宅取得等の場合には、調整計算が必要となります。
2021年6月25日
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カテゴリー : 税務情報
一定の所得がある75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が4日の参院本会議で、自民・公明両党などの賛成多数で可決・成立した。医療制度改革関連法のポイントは以下のとおり。
* 一定の所得がある75歳以上の窓口負担を1割から2割に
* 対象は単身で年収200万円以上、複数世帯は合計320万円以上
* 導入時期は2022年10月~2023年3月までの間で今後政令で定める
* 外来患者は3年間、1ヵ月分の負担増を3千円以内に抑える
厚生労働省は新型コロナウイルス感染拡大に伴う雇用調整助成金の特例措置を7月末まで延長する方針だ。
2021年5月27日
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カテゴリー : 社会情報
2021年度の税制改正におきまして、役員以外の従業員が勤続年数5年以下で退職し「短期退職手当等」(特定役員退職手当等の該当以外)を受給する場合で、その退職所得控除後の金額が300万円超の場合には、退職所得計算上の2分の1軽減適用は行われなくなります。この改正は、2022年(令和4年)分以後の所得税から適用です。
退職収入から退職所得控除後の残額 従業員の勤続年数
改正(2022年退職より) 現行
5年以下 5年超
300万円超 2分の1適用無し 2分の1適用 2分の1適用
300万円以下 2分の1適用
参考:退職所得計算
(1)一般退職のケース
(退職収入金額-退職所得控除額)×1/2 =退職所得
勤続年数 退職所得控除額
2年以下 80万円
3年~20年以下 40万円 X 勤続年数(*)
21年以上 70万円 X 勤続年数 - 600万円、 又は
70万円 X (勤続年数 - 20年) + 800万円
(*) 勤続年数の1年未満は切上げ。 障害者になって退職された場合には、 控除額に100万円加算。
(2)勤続5年以下の役員退職のケース(特定役員退職手当等)
役員として勤続年数5年以下における退職所得控除額を控除した金額に対する2分の1軽減措置は既に2012年税制改正で廃止となっています。
なお、特定役員退職手当等と一般退職手当等がある場合には、 下記の(イ)と(ロ)の退職所得を合算して計算することになります。
(イ) 特定役員退職所得
特定役員退職手当等 - 特定役員退職所得控除額 = 特定役員退職所得
特定役員退職所得控除額は、 次の金額の合計額とします。
(a) 40万円 X (特定役員等勤続年数 – 重複勤続年数)
(b) 20万円 X 重複勤続年数
(ロ) 一般退職所得
(一般退職手当等 - 一般退職所得控除額) X 1/2 = 一般退職所得
一般退職所得控除額とは、 退職所得控除額から特定役員退職所得控除額を控除した残額となります。
2021年5月26日
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カテゴリー : 税務情報
巨大IT(情報技術)企業を念頭に置くデジタル課税の国際ルールづくりで、経済協力開発機構(OECD)は米国の新提案を採用する調整に入った。利益率と売上高の規模による簡素な線引きで世界の100社程度を課税対象にする。
2021年5月23日
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カテゴリー : 社会情報
令和3年度の税制改正法が3年26日に可決・成立していますが、その中で最近の税制改正で見直しが頻繁に行われています「所得拡大促進税制」に関しましてご紹介しておきたいと思います。資本金1憶円以下の中小企業には、適用要件内容から「所得拡大促進税制」と言い、資本金1憶円超の大企業には、改正前で賃上げ・投資促進税制から「人材確保等促進税制」と言われています。令和3年4月1日以降の開始事業年度から、今回の税制改正が適用となりますので、以下に「所得拡大促進税制」に関しまして改正前後の比較を記載します。
中小企業の適用要件判定において、改正前の継続雇用者給与等支給額(抽出不要となります)から雇用者給与等支給額のみへと見直し、適用期限が2年間延長となり改正内容は、2021年(令和3年)4月1日から2023年(令和5年)3月31日までの開始事業年度に適用となります。
改正前 改正後
適用要件 ①当期の雇用者給与等支給額>前期の雇用者給与等支給額
②当期の継続雇用者給与等支給額≧前期の継続雇用者給与等支給額
X101.5%
判定には、雇用調整助成金等は控除します。
当期の雇用者給与等支給額≧前期の雇用者給与等支給額X101.5%
(注1)
注1:判定には、雇用調整助成金及びこれに類する額は控除しません。
税額控除 (当期の雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)X税額控除率15%
下記の①及び②の適用要件を満たす場合には、
(当期の雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)X税額控除率25%
①(当期の継続雇用者給与等支給額≧前期の継続雇用者給与等支給額X102.5%
②以下のいずれかを満たす場合
(イ)当期の教育訓練費≧前期の教育訓練費X110%
(ロ)中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画が実行されていることの証明されている
税額控除額の上限は、当期の法人税額の20%
(当期の雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)X税額控除率15%(注2)
注2:税額控除において増加支給額は、雇用調整助成金及びこれに類する額を控除した金額を上限とします。
下記の①及び②の適用要件を満たす場合には、
(当期の雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)X税額控除率25%
①(当期の雇用者給与等支給額≧前期の雇用者給与等支給額X102.5%(注1)
②以下のいずれかを満たす場合
(イ)当期の教育訓練費≧前期の教育訓練費X110%
(ロ)中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画が実行されていることの証明されている
税額控除額の上限は、当期の法人税額の20%
なお、「人材確保等促進税制」との併用は不可です。
「所得拡大促進税制」とは、青色申告法人が、所定の間に開始する各事業年度において国内雇用者に対する給与等支給額に関して、 その法人の雇用者給与等支給増加額に対して、税額控除を認めるというものですので、特に以下の定義を正確に理解する必要があります。
国内雇用者の範囲 国内雇用者とは、 役員、役員の特殊関係者及び使用人兼務役員を除く使用人で国内事業所に勤務し賃金台帳に記載されている雇用者(従って、 雇用保険の一般被保険者でない雇用者も含む)
役員の特殊関係者 役員の特殊関係者とは、次に掲げる者をいいます。
① 役員の親族 (配偶者、6親等以内の血族、及び3親等以内の姻族)
② 役員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
③ 上記以外の者で役員から生計の支援を受けているもの
④ 上記の者と生計を一にするこれらの者の親族
継続雇用者の範囲
継続雇用者の範囲 継続雇用者とは、適用年度(当期)およびその前年度の両方において給与等の支給(24ヵ月間継続)を受けた国内雇用者であり、継続雇用者に係る金額は、雇用保険法における一般被保険者に該当する者に対して支給したものに限ります(年齢は65歳未満の国内雇用者)が、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する継続雇用制度の対象である者に対して支給したものを除く、ということになっています。
具体的に継続雇用者とは、
①前期及び当期の全ての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者であること
②前期及び当期の全ての期間において雇用保険の一般被保険者であること(加入手続きの有無は関係ありません。又、一般被保険者とは、年齢65歳未満の雇用者です)
③前期及び当期の全ての又は一部の期間において高年齢再雇用者制度の対象となっていないこと
従って、一定の週20時間以上のパート・アルバイトで雇用保険法の適用要件を満たす一般被保険者は含まれます。
つまり、 第1に、雇用保険法における一般被保険者に該当する者に対して支給したものに限られますので、
(イ) 正社員、及び
(ロ)パート・アルバイトのうち週所定労働時間が20時間以上で継続して31日以上の雇用が見込まれ一般被保険者になっている者
ということになりますが、 但し、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する継続雇用制度の対象である者に対して支給したものを除くとされていますので、定年が65歳未満の会社で、65歳未満で定年退職した者を対象とする継続雇用制度を採用している会社の場合、定年以降の継続雇用制度の対象者に支給した金額は控除しなければなりません(この対象者の定年後の給与額は、 通常引下げられることとなり会社にとって不利とならない配慮により含めない処置となっています)。
給与等の範囲 給料、 賃金、 賞与等で賃金台帳に記載された支給額(非課税とされる通勤手当等の額も含む)のみを対象としますが、 合理的な方法により継続して給与等の支給額を計算している場合には、 これも認められます。 退職金等は対象外です。
雇用者給与等支給額・比較雇用者給与等支給額 雇用者給与等支給額とは、適用年度(当期)の損金算入される国内雇用者に対する給与等支給額。 なお、 控除すべきものとして、 国等から支給を受けた助成金や出向先法人から受けた出向者分の給与負担金受給額、 等は控除します。
なお、 出向先法人では、 その賃金台帳に出向者を記載している時には、 その給与負担金は含まれます。
比較雇用者給与等支給額とは、比較用年度(前期)の損金算入される国内雇用者に対する給与等支給額。 前期の事業月数が12ヵ月未満の時には、年換算に調整計算を行います。
2021年4月30日
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カテゴリー : 税務情報