2024年度(令和6年度)税制改正大綱:所得税、贈与税・相続税、消費税、法人税

2023年(令和5年)12月15日に自民、公明党の両党は2024年度(令和6年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の主な概要(所得税、贈与税・相続税、消費税、法人税)となります。
なお、改正法は、2024年(令和6年)3月末に可決・成立し、施行日は原則として4月1日となる予定です(以下は改正案ですので、成立後の内容で確認をお願いします)。

個人所得課税
1.所得税・個人住民税の定額減税(特別控除)
物価高を受けた家計支援策の一環の一時的な措置として、令和6年分の所得税と住民税について、定額による特別控除を実施します。
(1)対象者の要件
居住者であり令和6年分の所得税・住民税(個人住民税は、令和5年分の合計所得金額)に係る合計所得金額が1,805万円以下(給与収入の場合には2,000万円以下)である者(年収2,000万円超は対象外)。
(2)特別控除の額
(所得税):所得税額を限度
 本人分 3万円 + (同一生計配偶者+扶養親族)の人数 × 3万円
(住民税):所得割額を限度
 本人分 1万円 + (控除対象配偶者+扶養親族)の人数 × 1万円
注1: 人数のカウントは全て居住者に限定
注2: 配偶者等の定義は下記の通り
① 同一生計配偶者:生計を一にする配偶者で合計所得金額が48 万円以下(所得金額に関係なく青色・白色の事業専従者の方は該当しない・含まれません)
② 扶養親族:生計を一にする親族で合計所得金額が48 万円以下(所得金額に関係なく青色・白色の事業専従者の方は該当しない・含まれません)
③ 控除対象配偶者:同一生計配偶者に該当し、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合
(3)特別控除の実施方法
特別控除は、給与所得者、公的年金受給者、個人事業者、その他者ごとに対応が、以下の様に異なります。
ケース1 給与所得者に係る特別控除の額の控除
① 毎月の給与からの所得税額の控除
イ 令和6年6月以後最初に支払いを受ける給与等(賞与含む)につき源泉徴収をされる所得税額から特別控除の額を控除します。
ロ 控除しきれない控除の額がある場合には、それ以降に支払う給与等(同年の最終給与支払を除く)につき源泉徴収をされる所得税額から順次控除をしていきます。
ハ 毎月の源泉徴収をされる所得税額から特別控除する場合には、配偶者の情報は「源泉控除対象配偶者」で合計所得金額が48万円以下である者で算出します。(「源泉控除対象配偶者」とは、同一生計配偶者に該当し、納税者本人の合計所得金額が900万円以下のケース)。
ニ 扶養控除申告書に記載した扶養親族等に異動が生じたことにより特別控除の額が変わるときは、年末調整により調整します。
ホ 給与明細には、特別控除の額等を記載します。

② 年末調整での所得税額の控除
イ 令和6年分の年末調整の際には、年税額から特別控除の額を控除します。年末調整で再度計算をして差額があれば精算されます。
ロ 源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載します。

③ 個人住民税の控除
イ 特別徴収義務者(会社等)は、令和6年6月に支払う給与からの特別徴収は行いません。
ロ 令和6年分の個人住民税の額から特別控除の額を控除した金額を11分割し(端数調整あり)、令和6年7月~令和7年5月のそれぞれの給与から毎月徴収します。
ハ 上記の計算がされた住民税額(特別徴収額を含む)が各自治体から通知されてきます。
なお、居住者であって控除対象配偶者を除く同一生計配偶者である場合(令和5年の合計所得金額が1,000万円を超える)については、令和7年度分の住民税額から1万円を控除します。
ニ 給与支払報告書の摘要の欄に控除した額等を記載します。

ケース2 公的年金等の受給者に係る特別控除の額の控除
イ 令和6年6月以降に支払いを受ける公的年金等につき源泉徴収をされる所得税額から特別控除の額を順次控除していきます。
ロ 公的年金等の受給者で、扶養親族に異動が生じたことにより特別控除の額が変わるときは、令和6年分の確定申告により調整します。
ハ 公的年金等のから特別徴収されるべき個人住民税から控除される特別控除額は所得税と同様な対応となります。
ニ 源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載します。
 
ケース3 事業所得者等に係る特別控除の額の控除
イ 第1期分予定納税額(7月)から本人分に係る特別控除の額を控除します。
ロ 第1期分予定納税額から控除しきれない部分の金額は、第2期分予定納税額(11月)から控除します。
ハ 予定納税額の減額の承認申請をする場合には、同一生計配偶者・扶養者に係る特別控除の額についても控除を受けることができます。
ニ 令和6年分の期限の延期(令和6年分のみ)
① 第1期分予定納税額の納付期限を7月31日から9月30日に延期
② 予定納税額の減額の承認の申請の期限を7月15日から7月31日に延期
ホ 最終的には確定申告で所得税額から特別控除の額を控除して精算します。控除対象は住宅ローン控除後の所得税額からの控除となります。

ケース4 住民税の普通徴収の場合
イ 第1期分の納付額から特別控除の額を控除し、控除しきれない場合には第2期分以降の納付額から順次控除します。

以上から、給与所得者・公的年金受給者の特別控除の順番は次の通りです。
① まずは6月以降の給与又は年金から順次控除(配偶者・扶養者の人数カウントは暫定的)
② その後に給与の場合は年末調整で計算をして差額があれば調整
③ 最後に確定申告で計算をして差額があれば再度調整

ケース5 定額減税の満額をカバーできない場合
納税額が定額減税額以下で減税の恩恵を十分に受けられない世帯には、給付で差額を1万円単位で賄うことが公表されています。
① 年収270万円~310万円程度
差額分が給付されることになります。
② 年収250万円~270万円程度(住民税は納税しているが所得税は非課税)
1世帯あたり10万円が給付されます。給付は2024年2月~3月から開始。
③ 年収250程度以下(住民税と所得税ともに非課税)
1世帯あたり7万円が給付されます(別途、物価高騰対策として3万円給付が有りますので、合わせて10万円の給付)。給付は年内から順次開始。

2.ストックオプション税制の要件緩和
スタートアップ企業の資金面や人材面での課題を税制面から後押しすることを目的として、税制適格ストック オプション(権利行使時に経済的利益が非課税(売却時に課税となるので課税の繰延べ)となる税制適格ストックオプション(株式購入権))の利便性の向上や権利行使価額の上限額の引上げなど要件が、次の通り緩和されます。
① 保管委託要件の撤廃
権利行使で取得した株式を証券会社等に保管委託することが要件でありましたが、下記の要件を満たすストックオプションを上場前に権利行使する場合に撤廃されます。
イ 権利行使により交付される株式が譲渡制限株式であること
ロ ストックオプションを発行した会社自身により当該譲渡制限株式の管理がされること
② 年間の権利行使価額の限度額の引き上げ

項目現行改正
設立から5年未満の株式会社1,200万円2,400万円
設立以後5年以上20年未満の会社で、①未上場会社又は②上場会社の内上場後5年未満の会社1,200万円3,600万円

③ 社外高度人材である特定従事者がストックオプション税制の適用を受けるための要件を緩和
イ 認定対象企業の要件のうち、ベンチャーキャピタルからの出資を受けた時点での要件(資本金5億円未満かつ従業員数900人以下)が撤廃されます。
ロ 社外高度人材の要件のうち、上場企業役員の経験については3年以上の実務要件を1年以上に緩和し、それ以外の専門家については、実務要件を廃止します。
ハ 社外高度人材の要件に一定の者(教授、一定の実務経験がある未上場企業役員・上場企業の重要な使用人、など)が追加となります。

 現行改正
① 株式保管委託要件非上場段階で権利行使後、証券会社等に保管委託することが必要新たな株式管理スキームを創設し、発行会社による株式の管理も可能とする
② 権利行使価額の限度額1,200万円/年設立5年未満の会社が付与したものは、2,400万円/年
設立5年以上20年未満の会社で非上場又は上場後5年未満の上場企業が付与したものは、3,600万円/年
③ 社外高度人材一定の要件を満たした社外高度人材が対象新たに、非上場企業の役員経験者等を追加し、国家資格保有者等に求めていた3年以上の実務経験の要件を撤廃するなど、対象を拡大

3.子育て支援に関する政策税制(住宅ローン控除等)
子育て世帯に対する支援策として、住宅ローン控除と住宅リフォーム税制について一定の拡充が行われます。令和6年度(令和6年1月1日から同年12月31日までに居住し住宅ローン契約)に限りの措置として先行的に対応とし、他は令和7年度以降については、次年度の令和7年度税制改正にて検討を行うことになっています。
(1)対象の子育て世帯とは
以下のいずれかに該当する者=「子育て特例対象個人」(子育て世帯及び若者夫婦世帯)となっています。
① 自分の年齢が40歳未満で、かつ、配偶者を有する者
② 自分の年齢が40歳以上で、かつ、40歳未満の配偶者を有する者
③ 自分の年齢が40歳以上で、かつ、年齢19歳未満の扶養親族を有する者
なお、その年分の合計所得金額が2,000万円以下である者に限られます。
(2)住宅ローン控除の拡充
① 子育て特例対象個人が、認定住宅等の新築等をして居住の用に供した場合の、借入限度額は次の通りとなります(上乗せ増額)。(控除率は0.7%)

住宅の区分現行改正
認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅)4,500万円5,000万円
ZEH水準省エネ住3,500万円4,500万円
省エネ基準適合住宅3,000万円4,500万円

② 令和5年末までに建築確認を受けた「認定住宅等の新築等」については、床面積要件が緩和(通常は50㎡以上の床面積要件が、合計所得金額1,000万円以下に限り40㎡以上に緩和)されていますが、これを令和6年末まで延長となります。
「認定住宅等の新築等」とは、認定住宅(認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅)、ZEH準省エネ住宅及び省エネ基準適合住宅をいい、建築後使用されたことのないものの取得又は買取再販認定住宅等の取得をいう。
③ 子育て特例対象個人である東日本大震災(震災特例法)の住宅被災者が、認定住宅等の新築等をして居住の用に供した場合の、借入限度額は次の通りとなります(上乗せ増額)。(控除率は0.9%)

住宅の区分現行改正
上記①の認定住宅等4,500万円5,000万円

④ 住宅リフォーム税制の拡充
子育て特例対象個人が、所有する居住用家屋について一定の子育て対応改修工事をして、令和6年4月~12月までに居住した場合、その工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%をその年分の所得税額から控除できます。
⑤ 生命保険料控除の拡充(令和7年度税制改正見込み)
子育て世帯に対する新生命保険料に係る一般枠(遺族保障)について、23歳未満の扶養親族を有する場合には、現行の適用限度額4万円から2万円の上乗せがあります(改正後6万円)。なお、生命保険の控除総額の上限は、現行の12万円からの変更はありません。
又、全世帯に対して一時払生命保険料については、これを控除の適用対象から除外となります。
⑥ 扶養控除等の見直し(令和7年度税制改正見込み)
児童手当については、所得制限が撤廃されるとともに、支給期間について高校生年代まで延長されることになります。この様に児童手当の対象が高校生まで拡大する代わりに16歳から18歳までの扶養控除について、縮小することが予定されています。子ども1人につき所得税控除は38万円から25万円に、住民税控除は33万円から12万円にそれぞれ引下げられます。
なお、ひとり親控除について、所得基準の引上げ(5百万円以下から10百万円以下へ)や控除額の引上げ(所得税では35万円から38万円へ、住民税では30万円から33万円へ)、等です。

4.土地・住宅税制における主な特例期限の延長

特例項目適用期限の延長摘要
① 特定の民間住宅造成事業に為の土地等の譲渡における1,500万円特別控除3年延長(令和8年12月31日まで)法人税も同様
② 特定居住用財産の買換え及び交換時の長期譲渡所得課税特例2年延長(令和7年12月31日まで)
③ 居住用財産の買換え等の場合・特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除2年延長(令和7年12月31日まで)
④ 既存住宅の耐震改修における所得税額の特別控除2年延長(令和7年12月31日まで)
⑤ 既存住宅に係る特定改修工事(バリアフリー・省エネ・三世代同居・耐久性向上)おける所得税額の特別控除に2年延長(令和7年12月31日まで)合計所得金額要件を3千万円から2千万円に引下げ
⑥ 認定住宅等の新築等における所得税額の特別控除2年延長(令和7年12月31日まで)合計所得金額要件を3千万円から2千万円に引下げ

5.政治活動の寄附金控除適用期限の延長
5年延長。

6.e-Taxによる支払調書等の提出枚数基準
e-Taxによる支払調書等の提出枚数が、現行100枚以上から30枚以上に引下げられます。
改正は、令和9年1月1日以後の提出分から適用。

7.国民健康保険税の課税限度額の引上げ
(1)後期高齢者医療保険料
現行22万円から24万円に引上げられます。
(2)国民健康保険料の世帯の軽減判定所得
① 5割軽減対象となる世帯の被保険者等の数に乗ずべき金額が、現行29万円から29.5万円に引上げ。
② 2割軽減対象となる世帯の被保険者等の数に乗ずべき金額が、現行53.5万円から54.5万円に引上げ。

資産課税
1.住宅資金贈与の非課税措置延長
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等について、3年間延長(令和8年12月31日まで)となります。
適用時期:令和 6年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用。

2.法人版事業承継税制の特例承継計画の提出期限延長
非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度(法人版事業承継税制)について、現行では令和6年3月末までである特例承継計画の提出期限を、令和8年3月末までの延長となります。(適用期限は令和9年12月末のままで変更無し)

3.個人版事業承継税制の特例承継計画の提出期限延長
個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(個人版事業承継税制)について、現行では令和6年3月末までである個人事業承継計画の提出期限を、令和8年3月末までの延長となります。(適用期限は令和10年12月末のままで変更無し)

4.特定贈与者から住宅資金贈与における相続時精算課税制度の特例適用期限の延長
適用期限を3年延長(令和8年12月31日まで)します。

5. 不動産譲渡契約書の印紙税率の軽減措置適用期限の延長
適用期限を3年延長(令和9年3月末まで)します。

6.土地に係る固定資産税の負担調整措置及び条例減額制度の延長
3年に一度の固定資産税評価額の評価替えの年にあたる令和6年度の評価替えにおいては、負担水準のばらつきが拡大することが見込まれるため、税負担の公平性の観点から段階的に負担水準の均衡化に向けた取組みが求められることから、現行の①負担調整措置②条例減額制度③下落修正措置の減額制度について令和8年度まで3年間適用期限を延長となります。

法人課税
1. 賃上促進税制(大企業・中堅企業向け)
物価高に負けない構造的・持続的な賃上げの動きをより多くの国民に拡げ、効果を深めるため、賃上げ促進税制を強化することになります。
大企業・中堅企業向けの人材促進税制について、次の通り見直しされます(適用期間:令和6年4月1日~令和9年3月31日の開始事業年度)。
① 大企業向け控除率の改正

適用要件現行 改正 
基本部分】
継続雇用者給与等支給額の増加割合
増加割合税額控除率増加割合税額控除率
3%以上15%3%以上10%
4%以上25%4%以上15%
5%以上20%
7%以上25%
上乗せ①】
教育訓練費の増加割合
20%以上+5%10%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加+5%
【上乗せ②】
(注1)
女性子育て支援
+5%
最大控除率30%35%

注1: 「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の厚生労働大臣認定認定)」又は「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の厚生労働大臣認定認定)」を受けている場合

② 大企業のうちの中堅企業向け控除率の改正(従業員数が2000人以下の企業)
新たな位置付けとなる中堅企業は、「中小企業以外の企業」で「従業員数が2000人以下の企業」かつ「グループ全体で1万人を超える企業グループに属さない企業」である中堅企業向けにおける人材促進税制について、次の通りとなります(適用期間:令和6年4月1日~令和9年3月31日の開始事業年度)。

適用要件現行 改正 
増加割合税額控除率増加割合税額控除率
【基本部分】
継続雇用者給与等支給額の増加割合
3%以上15%3%以上10%
4%以上25%4%以上+15%
【上乗せ①】
教育訓練費の増加割合
20%以上+5%10%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加+5%
【上乗せ②】
(注1)
女性子育て支援
+5%
最大控除率30%35%

注1:女性子育て支援上乗せ措置に「3段階目のえるぼし認定を受けている企業」を追加

③ マルチステークホルダー方針を公表しなければならない企業の範囲に従業員数2,000人超の企業を追加

現行改正
資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業のみ① 資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業、又は
② 従業員数2,000人を超える企業

2.賃上促進税制(中小企業)
中小企業向けの人材促進税制について、次の通り見直しをします(適用期間:令和6年4月1日~令和9年3月31日の開始事業年度)。
① 控除率の改正

適用要件現行 改正 
増加割合税額控除率増加割合税額控除率
【基本部分】
雇用者給与等支給額の増加割合
1.5%以上15%1.5%以上15%
2.5%以上30%2.5%以上30%
上乗せ①】
教育訓練費の増加割合
10%以上+10%5%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加+10%
【上乗せ②】 (注1)
女性子育て支援
+5%
最大控除率40%45%

注1: 以下のいずれかの認定を受けてる場合
・「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の厚生労働大臣認定)」
・「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の厚生労働大臣認定)」
・2段階目以上の「プラチナくるみん認定」又はプラチナ「えるぼし認定」
② 法人税額から控除がしきれない控除額があるときは、5年間の繰越控除制度の追加
赤字である場合や控除上限(法人税額の20%)に抵触しても、最大限の控除が取れるように申告をする必要があります。
なお、繰越税額控除制度は、持続的な賃上げを実現する観点から、繰越控除事業年度において雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超える場合に限り適用できものとなっています。

3.特定税額控除不適用規定の見直し
大企業向けの特定税額控除不適用規定について見直しを行います。
① 要件が強化される法人について、「資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業」のみでなく、「従業員数2,000人を超える企業」の追加となります。なお、前年度が赤字の場合には、従前より要件強化の対象外とされます。
② 要件が強化される法人についての要件(いずれかの要件に該当しないと特定税額控除規定の適用を受けることができません)。

要件現行改正
所得金額対前年比で減少変更なし
継続雇用者の給与等支給額対前年増加率1%以上変更なし
国内設備投資額減価償却費の30%超減価償却費の40%超

制限対象の特定税額控除規定の項目:
・研究開発税制(総額型、オープンイノベーション型)
・地域未来投資促進税制
・5G導入促進税制
・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
・デジタルトランスフォーメーション投資促進税制

4.中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充
中小企業事業再編投資損失準備金制度について、現行制度に新制度を追加して、適用を令和9年3月末までの延長となります。
① 特別事業再編計画(仮)」の認定を受けた事業者が対象。
② 購入する株式の金額が1億円以上100億円以下であることが要件。
③ 準備金の積立が出来る金額は、初回が株式取得価額の90%、二回目以降は100%
(現行制度では70%)。
④ 準備金取崩の期間が積立から10年経過後(現行制度では積立から5年経過後)以降5年間に渡って取崩を行って益金に算入となります。

5.国内投資促進税制(戦略分野国内生産促進税制・イノベーションボックス税制)
(1)戦略分野国内生産促進税制の創設
GX、DX, 経済安全保障という戦略分野において、民間として事業採算性に乗りにくいところ、国として特段に戦略的な長期投資が不可欠となる投資を選択し、それらを対象として生産・販売量に比例して法人税額を控除する戦略分野国内生産促進税制が創設されます。
① 産業競争力強化法の改正を前提に事業適応計画の認定が必要。
② 計画に基づいて産業競争力基盤強化商品の生産をするための設備(産業競争力基盤強化商品生産用資産)の購入が対象。
③ 認定後10年間に渡って販売数量に応じて税額控除を行っていく。
④ 控除が出来ない場合についても3年間~4年間の繰越控除がある。

(2)イノベーションボックス税制の創設
イノベーションの国際競争が激化する中、研究開発拠点としての立地競争力を強化し、民間による無形資産投資を後押しすることを目的として、特許やソフトウェア等の知財から生じる所得に減税措置を適用するイノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)が創設されます。
① 無形資産への国内投資を後押しするための制度。
② 内国法人等に対して特定特許検討の譲渡・貸付を行った場合に、その事業から発生する一定の課税所得の30%相当額を損金に算入する。
② 国外への投資については制度対象外であり、国内投資のみが対象。
  
6.交際費の損金不算入制度の除外措置拡大
(1)損金不算入特例の適用期限を3年延長(令和9年3月31日までの開始事業年度)となります。
① 飲食費(社内接待費を除く)の50%を損金算入できる特例措置{中小企業・大企業(資本金の額等が100憶円以下)}
③  交際費等が800万円までの全額損金算入できる特例措置(中小企業のみ)
(2)損金不算入の1人あたり飲食費の金額基準引上げ
損金不算入となる交際費等から除外される、いわゆる5,000円以下飲食費(社外との飲食に限る)の範囲について、会議費の実態を踏まえ、金額要件を1人当たり5,000円以下から10,000円以下に引上げられます。
改正適用は、令和6年4月1日以降の支出飲食費から適用。
注:インボイス制度の適格請求書に該当しない飲食費の場合には、税抜き処理における控除対象外消費税も上乗せした金額で単価判定が必要になるため注意が必要。

7.外形標準課税制度の対象拡大
法人事業税のうち、資本金1億円超の法人に対して、収益配分額(報酬給与額、純支払利子及び純支払賃借料の合計額)と単年度損益との合計額を課税標準とする付加価値割と、資本金等の額を課税標準とする資本割からなる外形標準課税が課されています。 小規模な企業の経営に与える影響等に配慮していた外形標準課税制度の適用対象法人の範囲について、現行の基準(資本金の額が1億円超の法人)を維持したうえで、減資への対応として範囲を拡大します。
(1)減資への対応
当分の間、以下の全てに該当する法人を外形標準課税の対象とする。
① 前事業年度に外形標準課税の対象であること(注1)
② 当該事業年度に資本金が1億円以下であること
③ 当該事業年度に資本金と資本剰余金の合計額が 10 億円を超えること
注1:公布日(令和6年3月末)以後に減資をして資本金が1億円以下になった法人については、①に該当するものとして扱われる。
改正適用開始時期は、令和7年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用。
(2)100%子法人等への対応
以下の全てに該当する100%子会社法人を外形標準課税の対象とします。
① 資本金と資本剰余金の合計額が 50 億円を超える外形対象法人の100%子法人等
② 当該事業年度に資本金が1億円以下であること
③ 当該事業年度に資本金と資本剰余金の合計額(注2)が 2億円を超えること
ただし、産業競争力強化法の改正を前提に、同法による認定を受けた事業者がM&Aを通じ て買収した100%子法人等については、5年間対象外とします。
注2:公布日以後に、子会社から親会社への資本剰余金から配当等があった場合には、当該配当金額を加算した金額で判定します。
適用開始時期:令和8年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用。
上記改正により、新たに外形標準課税の対象となる法人に係る税負担の緩和措置が講じられ、従来の課税方式で計算した税額を超えることとなる額のうち、次の金額を法人事業税から控除することになります。
(イ)令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度
 当該超える金額の3分の2を控除する。
(ロ)令和9年4月1日から令和10年3月31日までの間に開始する事業年度
 当該超える金額の3分の1を控除する。

8.中小企業者以外(大企業)の欠損金繰戻による還付制度の不適用措置の延長
適用期限を2年延長します(令和8年3月31日までの終了事業年度まで)。

9.中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入特例範囲等
少額減価償却資産の損金算入特例とは、中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、年間合計300万円までを限度に、即時償却 (全額損金算入)することが可能とする特例。
(1)e-Taxにより法人税申告を提出しなければならない法人のうち、常時使用する従業員数が300人を超える法人を適用法人から除外されます。
(2)適用期限を2年延長(令和8年3月31日までの開始事業年度)します。

10.  発行者以外の第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し
発行者以外が保有する暗号資産のうち活発な市場が存在するものについては、期末に時価評価し、評価損益は課税の対象とされていますが、法人が有する暗号資産で、以下の要件を満たす暗号資産は、期末時価評価課税の対象外となります。
① 他の者に移転できないようにするための技術的措置がとられていること等その暗号資産の譲渡についての一定の制限が付されていること。
② 上記①の制限が付されていることを認定資金決済事業者協会において公表させるため、その暗号資産を有する者等が上記①の制限が付されている旨の暗号資産交換業者に対する通知等をしていること。

11. 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
法制上の措置を講ずる主旨を令和6年度税制改正に関する法律の附則において明らかにすることになっています。

以上

消費税(インボイス制度)
1.国外事業者に係る消費税の課税の適正化(プラットフォーム課税の導入)
デジタルサービス市場の拡大によりプラットフォームを介して多くの国外事業者が国内市場に参入している中で、国外事業者の納める消費税が課題がとなっています。国内外の事業者間の競争条件の公平性や適正な課税確保の為に、プラットフォーム課税(事業者に代わってプラットフォーム事業者に納税義務を課す制度)を導入することになります。
(1)国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う消費者向けの電気通信利用役務の提供のうち、特定プラットフォーム事業者を介したものについては、その特定プラットフォーム事業者が行ったものとみなされます。
(2)その課税期間における上記の取引金額が50億円を超える場合には、特定プラットフォーム事業者として指定されます。
(3)適用開始時期:令和7年4月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供からとなります。
2.国外事業者に係る事業者免税点制度の特例の見直し
(1)特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例について、給与支払額による判定の対象から国外事業者を除外します。
(2)資本金1,000万円以上の新設法人に対する納税義務の免除の特例について、外国法人は基準期間を有する場合も、国内事業開始時点で本特例の適用の判定を行うことになります。
適用開始時期:令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用。
3.国外事業者に係る簡易課税制度等の見直し
その課税期間の初日において恒久的施設を有しない国外事業者については、簡易課税制度及び2割特例の適用を認めないことになります。
適用開始時期:令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用。
4.高額特定資産の範囲拡大
高額特定資産を取得し、仕入税額控除の適用を受けた場合には、その後2年間、消費税の原則課税が強制されます(免税・簡易課税適用不可)。この高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度及び簡易課税制度の制限措置の対象に、その課税期間において取得した金又は白金の地金等の合計額が200万円以上である場合が加えられます。
5.免税購入された物品の課税仕入れについて仕入税額控除の制限
外国人旅行者向け消費税免税制度により、横流しされた免税購入物品と知りながら行った課税仕入れについては、仕入税額控除制度の適用を認めないことになります。
適用開始時期:令和6年4月1日以後に国内において行う課税仕入から適用。
なお、不正排除から免税購入物品に関して、免税点が販売時に外国人旅行者から消費税相当額を預り、出国時に持ち出しが確認された場合に、旅行者にその消費税相当額を返金する仕組みとします(令和7年度税制改正見込み)。
6.インボイス制度の自販機特例・入場券特例についての帳簿記載要件を緩和
帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められるインボイス制度の自販機特例・入場券特例については、帳簿へ住所等の記載が必要でありましたが、不要となります。(令和5年10月まで遡って不要とします)
7.インボイス発行事業者以外からの課税仕入に係る税額控除の経過措置の除外
一のインボイス発行事業者以外からの課税仕入額の合計額が、その年又はその事業年度で10億円を超える場合には、その超える部分の課税仕入に対して経過措置の適用除外となります。
適用開始時期:令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用。

以上

ふるさと納税における寄附金限度額の目安計算

2023年(令和5年)も残すところ約1ヵ月となりました。近年、ふるさと納税(寄附金)の内容が理解され利用される方が多くなり、特に12月中にその頻度が高いようです。この傾向は、当該年度の年間収入・所得が予想されることで利用のメリット上限、いわゆる寄附金限度額をある程度考慮(予想)されてのことかと思われます。ご存知の様に加熱するふるさと納税の状況から、所定の基準に適合する都道府県等をふるさと納税適用の対象とされています。
①寄附金の募集を適正に実施する都道府県等
②上記都道府県等で返礼品は、以下のいずれも満たす都道府県等であること。
(イ)返礼品の返礼割合は3割以下とすること
(ロ)返礼品は地場産品とすること
このふるさと納税は寄附金として、個人所得税の寄附金の所得控除と個人住民税の寄附金の税額控除により、一定額が本来納める税額から減額・控除に代わるものであり、メリット上限(寄附金限度額)が存在します。
例えば、給与収入500万円(給与所得356万円)、社会保険料74万円、配偶者控除38万円、基礎控除48万円(住民税では43万円)の場合におけるふるさと納税の寄附金限度額は以下の算式で計算出来ます。
個人住民税所得割額X 20% ÷ (90% - 所得税率X 1.021)+ 2,000 =寄附金限度額
ご存知の様に所得税率は、累進税率の7段階に分かれていますので、次の表が寄附金限度額の目安となるかと思います(総合課税と申告分離課税も含む場合の適用時における目安)。

所得税の課税所得額所得税率寄附金限度額
195万円未満5%個人住民税所得割額 X 23.558% + 2千円
195~330万円未満10%個人住民税所得割額 X 25.065% + 2千円
330~695万円未満20%個人住民税所得割額 X 28.743% + 2千円
695~900万円未満23%個人住民税所得割額 X 30.067% + 2千円
900~1,800万円未満33%個人住民税所得割額 X 35.519% + 2千円
1,800~4,000万円未満40%個人住民税所得割額 X 40.683% + 2千円
4,000万円以上45%個人住民税所得割額 X 45.397% + 2千円

従って、
所得税の課税所得額:
所得3,560,000 - (社会保険料740,000 + 配偶者控除380,000+基礎控除480,000) = 課税所得金額1,960,000
適用所得税率は、10%となります。
個人住民税所得割額:
3,560,000 - (740,000 + 380,000+430,000) = 2,010,000
2,010,000 X 10% =201,000円(住民税所得割額)
201,000 X 20% ÷ (90% - 10% X 1.021) + 2,000 = 52,382円
又は、上記表から
201,000 X 25.065% + 2,000 = 52,381円
計算結果から、 52,380円相当額が寄附金限度額ということになります。

富裕層申告漏れ980億円 最高額 海外投資絡み多く

2023年6月までの1年間(2022事務年度)の税務調査で、「富裕層」の申告漏れ所得が過去最高の総額980億円に上ったことが22日、国税庁のまとめで分かった。各国の税務当局との連携を強化するなか、海外投資に絡む申告漏れが多く発覚したという。

「疑似中小企業」後絶たず 外形標準課税 減収続く

資本金1憶円超の企業が外形標準課税の支払いを逃れるため、減資して「疑似中小企業」となる動きが相次ぐ。総務省は6日、外形標準課税の新たな適用基準として資本金と資本剰余金の合計が一定額を超えた場合(案:50億円超)に課税する方向性をまとめた。

「年収の壁」に対する政府の対応策

年収の壁に対する労働省の「年収の壁」の支援強化パッケージが、以下の様に示されています。

年収の壁対応策
103万円超特に無し
106万円超①  扶養から外れ社会保険料が発生するが、その相当額を手当支給した企業に助成金(最大、労働者一人当たり50万円)を出す(キャリアアップ助成金の新コースとして、「社会保険適用時処遇改善コース」を新設)。
なお、労働者の収入増加の取組として、(1)手当等支給メニュー、及び(2)労働時間延長メニューにより、各助成金の要件と上限が決められています(後述参照)。
②  社会保険適用促進手当
労働者が被用者保険の新たに適用となった場合に、会社は、当該労働者の保険料負担を軽減する目的で、給与・賞与とは別に「社会保険適用促進手当」を支給することができる。標準報酬月額が104千円以下の労働者に同手当金を支給した場合、適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、最大2年間、本人の社会保険料の算定対象となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に含めないこととする。
130万円超130万円を超えても一時的な収入増であると証明(被扶養者認定に通常必要な書類に加えて、人出不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業者の証明)されれば連続2年まで扶養に留まることが出来る。
150万円超特に無し

(1)手当等支給メニュー、及び(2)労働時間延長メニューにより、各助成金の要件と上限は次のとおり。

(1)手当等支給メニュー(2)労働時間延長メニュー
要件1人当たりの助成金要件1人当たりの助成金
週所定労働時間の延長賃金(注3)の増額
A賃金(注1)の15%以上分を労働者に追加支給(注2)1年目 20万円a 4時間以上30万円
B賃金(注1)の15%以上分を労働者に追加支給(注2)するとともに、3年目以降、以下cの取組が行われること2年目 20万円b 3時間以上
 4時間未満
5%以上
c 2時間以上
 3時間未満
10%以上
C賃金(注3)の18%以上を増額(注4)させること3年目 10万円d 1時間以上
 2時間未満
15%以上

注1:賃金は標準報酬月額及び標準賞与額
注2:標準報酬月額に算定されない「社会保険適用促進手当」による支給も可
注3:賃金は基本給
注4:基本給の他、被用者保険適用時に設けた一時的な手当を恒常的なものとする場合、当該手当を含む。労働時間延長との組合せによる増額も可。又、2年目に前倒してcの取組(賃金の増額の場合のみ)を実施する場合、3回目の支給申請でまとめて助成(30万円)

年収の壁とは:
パート主婦の中で給与収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担増になることから就業調整する方がおられます。この問題に関しましては、政府は上述の対応策が出されています。数回、この年収の壁を取り上げましたが、再掲載いたします。年間給与収入額からの年収の壁に関して、一般的なケースでは、以下の様に指摘されています。

年間給与収入額影響する基準影響する人影響する内容
103万円超所得税課税パート者本人パート者本人の所得税が発生する
106万円超本人の社会保険の加入基準従業員数101人以上の会社勤務のパート者本人(所定の適用条件を満たす場合)パート者本人の社会保険の加入基準であり、社会保険料(厚生年金・健康保険料)が発生する。将来、厚生年金が受領できます。
130万円超夫の社会保険の被扶養者基準従業員数100人以下の会社勤務のパート者本人夫の社会保険の被扶養者基準であり、本人が第3号被保険者から外れ、パート者本人の社会保険料(国民年金・国民健康保険料等)が発生する
150万円超所得税の配偶者特別控除夫の配偶者特別控除(最高38万円)が減額となっていく。

なお、被扶養者に関しましては所得税上と社会保険上の取扱いが、以下の様に異なりますので留意する必要があります。
1.所得税上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「所得税の扶養」とは、扶養している親族等の人数に応じて所得の控除を受けることができる制度のことになります。
① 「生計を一にする(家計を共にしていれば同居でなくてもOK)」
② 以下の所得基準(収入金額ではありません)があります。
年間所得金額が48万円以下(給与収入で103万円)であること(いわゆる「103万円の壁」)。なお、70歳以上の老人扶養は、同居での所得で58万円以下(年金収入で168万円・給与収入で113万円)・同居外での所得で48万円以下(年金収入で158万円・給与収入で103万円)であること。
2.社会保険上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「社会保険の扶養」とは、被保険者の扶養している親族等が、自分自身で社会保険料を負担することなく保険の給付を受けられる制度のことになります。
① 「三親等以内の親族は同一の世帯(同居して家計を共にしている)」であること
② 年間の収入金額(所得金額ではありません)が130万円未満(60歳以上は180万円未満)であること、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であること。いわゆる「130万円の壁」と言われるのは、この認定基準があるからです。
③ 75歳未満であること(従って、75歳以上は扶養者になれません。何故ならば、75歳から後期高齢者医療保険制度に移行になりますので、社会保険制度への加入資格はありません)
3.社会保険加入条件とは
なお、社会保険加入で収入金額を「106万円」未満に収めたいと言われることがありますが、いわゆる「106万円の壁」とは、働く方でその方自身が厚生年金保険や健康保険といった社会保険への加入が必要となる収入基準のことです。こちらの保険適用基準は、以下の一定の条件を満たした場合に対象となります。
正社員の場合には、所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上でありますが、パート・アルバイトなどの短時間労働者の場合には、従業員101人以上の企業(特定適用事業所)に勤務している方で、かつ、 
① 週20時間以上働いている
週20時間を算出する際は、残業時間を合算せずに計算します。
② 1年以上継続して勤務する見込み
雇用契約書等に1年以上継続して勤務する見込みがあること。
③ 1カ月の賃金が8.8万円超
1カ月の賃金が8.8万円を超すというもの。1カ月の賃金が8.8万円を超すと、1年の年収が計算上、で106万円以上になります。ここでいう1カ月の賃金とは、雇用契約時の所定内賃金のみで、残業代、各種手当や賞与などは含みません。
④ 学生ではない
の諸条件を満たす場合には社会保険加入となります。なお、2024年10月から社会保険加入条件の従業員数が51人以上の企業に引き下げられます。

マンション相続新ルール 国税庁、来年1月適用

国税庁はマンションで新たに導入する相続税・贈与税の算定ルール(通達)について、2024年1月以降から適用することを正式に決めた。
当該算定方法につきましては、7月に記載しました通達案の内容に変更はありませんでした。