法定調書と給与支払報告書: 提出期限 1月末

1. 法定調書とは
12月の最終給与支給までに、 従業員の年末調整が行なわれ一区切りついたと思っても、 翌1月末までに提出、申告等の対応が必要となるものがあります。 その1つに法定調書作成がありますが、 これは、所得税法、相続税法等の法律の規定により、給与、報酬、家賃等の支払者(提出義務者)が、それらの1年間の支払いに関して、支払先の氏名、住所、支払金額等を記載し所轄税務署に提出が義務付けられている書類(全部で60種類ほど)です。この主目的は、税務署が適正な課税の確保を図ることを目的に支払事実を把握し、受給者が正しく所得を申告していることの確認手段になるものです。 提出すべき法定調書は、 特定項目の一定金額以上のものですが、 源泉徴収の対象になるものとは限っておりませんので留意してください。
なお、 平成28年度分より行政機関への提出にあたり、 マイナンバー(個人番号、等)が必要となっています。

2. 提出する一般的な6種類の法定調書と支払内容

提出する調書支 払 内 容
給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書(注2)俸給、給料、賞与等の支払
退職所得の源泉徴収票と特別徴収票(注2)退職手当(注1)、一時恩給等の支払
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書① 原稿料、印税、講演料、工業所有権の使用料等の支払
② 弁護士、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士、建築士等への報酬、料金の支払
③ 外交員、集金人、電力量計の検針人、モデル、プロ野球の選手、プロボクサー、騎手等への報酬、料金、契約金の支払、芸能人への出演料等の支払
④ バー、キャバレー等のホステス、コンパニオン等への報酬、料金の支払
⑤ 広告宣伝のための賞金、馬主への競馬の賞金の支払
不動産の使用料等の支払調書地代、家賃、権利金、礼金、更新料、承諾料、名義書換料等の支払
不動産等の譲受の対価の支払調書土地、建物等の譲受け(売買、交換、収用等)の代金の支払
不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書土地、建物等の売買や貸付の仲介手数料の支払

注1:死亡退職による退職手当等の場合には、相続税法による「退職手当等受給者別支払調書」を提出することになります。
注2:地方税法で提出が義務付けられています「給与支払報告書」及び「特別徴収票」は、
名称が異なりだけでそれぞれ「給与所得の源泉徴収票」及び「退職所得の源泉徴収票」と記載内容は同じものです。

3. 提出範囲
支払調書は、一定金額以上のもの等(支払金額の提出範囲)に該当するときに提出が必要となります。主な提出範囲は次のとおりです。

(1)給与所得の源泉徴収票

年末調整受給者区分提出範囲(年間)
年末調整をしたもの


法人役員(相談役、顧問など含む)150万円超
弁護士、公認会計士、 税理士等250万円超
上記以外の人(従業員)500万円超
年末調整をしなかったもの給与収入2,000万円超全部
「扶養控除等申告書」を提出した者のうち退職した者等250万円超(法人役員は50万円超)
「扶養控除等申告書」を提出しなかった者50万円超

(2)報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20の規定に基づく報酬 料金等の支払

区 分提出範囲
* 外交員、集金人、検針人、プロボクサー、ホステス等の報酬、料金
* 広告宣伝のための賞金
* 社会保険診療報酬支払基金からの診療報酬
年間50万円超
馬主に支払う競馬の賞金1回75万円超
プロ野球選手等の報酬及び契約金
弁護士、税理士等の報酬
作家、画家などの原稿料、画料
講演料、 その他の報酬、 料金等
年間5万円超

当該支払調書の記載の概要は以下のとおりです。
① 支払を受ける者: 受給者の住所・名称を記入。
② 区分: 例えば、 原稿料、 印税(書きおろし初版印税、 その他の印税、等)、 さし絵料、 翻訳料、 通訳料、 脚本料、 作曲料、 講演料、 教授料、 著作権・工業所有権の使用料、 放送謝金、 映画・演劇の出演料、 弁護士報酬、 税理士報酬、 公認会計士報酬、 外交員報酬、 ホステス等の報酬、 契約金、 広告宣伝のための賞金、 競馬の賞金、 診療報酬、 等と記入。
③ 細目: 上記の区分内容をより詳細化して記入。
④ 支払金額: その年度中に支払の確定した金額を記入。 従って、 未払いのものも含み、 その場合には未払金額を各欄の上段に内書で記入。
提出範囲の金額基準の判定においては、 原則として消費税及び地方消費税(消費税等)の額を含めて行ないます。 但し、 消費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで判定しても構いません。
支払金額の記入にあたっては、 原則として消費税等の額を含めて記入します。 但し、 費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで記入しても構いませんが、 その場合には、 その消費税等の額を摘要欄に記入する必要があります。
⑤ 源泉徴収税額: その年度中の支払の確定した金額に基づく源泉徴収すべき税額を記入。 未払いのものがある場合には、 その未徴収税額を上段に内書で記入。
⑥ (摘要): 必要に応じて記入。
⑦ 支払者: 支払者の住所・名称及び電話番号を記入。
記載上の注意事項:
法人に支払われる報酬、 料金等で源泉徴収の対象とならないもの、 或いは支払金額が源泉徴収の限度額以下であるため源泉徴収していない報酬、 料金等についても、 提出範囲の金額基準以上のものは税務署への支払調書の提出が必要となります。

(3)その他の主な法定調書

法定調書提出範囲
退職所得の源泉徴収票法人役員(相談役、顧問その他これらに類する者も含む)が受給者であるもの
不動産の使用料等の支払調書
注:不動産、 不動産の上に存する権利、 総トン20トン以上の船舶、 航空機に対する対価を受領する法人と不動産業の個人の方が提出義務者となります。
年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。
又、法人に対し賃借料のみを支払っている場合にはその支払調書の提出は不要ですが、支払が権利金、更新料等は提出が必要となります。
不動産等の譲受の対価の支払調書年間100万円超
不動産等の仲介料の支払調書年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。
公的年金等の源泉徴収票「扶養控除等申請書」を提出した者:60万円超
提出しなかった者:30万円超
配当等の支払調書10万円超(中間配当がある場合は5万円超
生命保険契約等の一時金の支払調書100万円超
損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書100万円超
株式等の譲渡対価の支払調書同一人に対し100万円超
1回30万円超
国外送金等調書1回100万円超

4. 提出先と提出期限
法定調書の提出期限は、原則として、その年の翌年の1月31日までとなっており、所轄税務署に提出することになります。税務署に提出する場合には、法定調書の合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)と各法定調書(提出範囲のもの)を添付して提出します。

受給者(個人・法人)の全員にも、 翌年の1月31日まで帳票が送付されることになっていますので、 個人では確定申告の作成資料等に使用、 又、 法人では受給金額・内容との照合等に使用することができます。

法定調書の提出方法に関して、基準年(前々年)の提出枚数が1,000枚以上であった法定調書の場合には、光ディスク等又はe-Taxによる提出が義務付けられています。

5. 給与支払報告書(給与所得の源泉徴収票)
サラリーマンの方にはお馴染みの給与所得の源泉徴収票は、 その年の給与所得に関する年末調整後(給与収入が2千万円超の方等は年末調整は行われません)の源泉徴収税額や税額計算情報が集約され記載されています帳票です。 税務署には、 一定金額以上の給与収入の「源泉徴収票」が提出され、 又、 同一内容ですが様式名が異なる給与支払報告書が個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます。
「給与支払報告書」(総括表を添える)提出先は、受給者(全員分)のその年の翌年の1月1日現在の住所地の市区町村となり、 提出期限は翌年の1月31日までとなっています(個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます)。
年度の途中で退職した者に対する給与支払報告書は、 支払額が30万円以下の場合には提出を省略することができます。 なお、退職金の「特別徴収票」の提出は、役員のみであり従業員分は提出する必要はありません。 その提出先は、 受給者の退職日現在の住所地の市区町村となっており、 退職後1ケ月以内の提出となります。
市区町村では、 提出された資料から住民税の税額計算をおこない、 翌年6月から徴収を開始し1年間で納付を行ないます。 なお、 主たる給与所得を基因する住民税の納付方法は、原則として、会社等が所得税と同様に給与より天引きして納付するという特別徴収となっています。 

以上

2020年1月3日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

2020年度税制改正大綱:所得税、贈与税・相続税

2020年(令和2年)12月12日に自民、公明党両党は2020年度(令和2年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の概要(所得税、贈与税・相続税)となります。

個人所得課税
1.NISAの延長及び新NISAの創設
非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(少額投資非課税制度)では、居住者等が、 非課税口座を開設した年の1月1日以後、 投資可能期間になされた一定の適用要件を満たす少額上場株式等からの配当等及び譲渡益等に対しては、 非課税とされるものです。
(1)積立NISA(低リスクの投資信託等に投資対象を限定)の勘定設定期間を2042年(令和24年)12月31日まで5年延長する。
(2)ジュニアNISAは延長せずに2023年(令和5年)12月31日で終了とする。なお、2024年(令和6年)1月1日以後は、課税未成年者口座及び未成年者口座内の上場株式等及び金銭の全額について源泉徴収を行わずに払い出すことができます。
(3)現行の一般NISAは2023年(令和5年)12月31日での終了に合わせて、特定非課税累積投資契約(仮称)による新NISAを創設し、現行の積立NISAとの選択適用となります。

 現行(一般NISA)新NISA
非課税可能期間2023年(令和5年)12月末まで2024年(令和6年)1月~2028年(令和10年)12月末まで
非課税年間投資上限額
(譲渡益や配当等の運用益に対し非課税措置)
非課税管理勘定:120万円①特定累積投資勘定:20万円
②特定非課税管理勘定:102万円
非課税期間投資年から最長5年間投資年から最長5年間
非課税の投資可能商品上場株式、公募株式投資信託、ETF,REIT等2階建ての制度として:
①1階(低リスクの投資信託等に投資対象を限定した積立枠);特定累積投資勘定:特定の公募等株式投資信託
②2階(従来通り上場株式等にも投資できる枠);特定非課税管理勘定:上場株式等
原則として、①1階に投資した場合のみ、②2階にも投資が可能となり、例外として、上場株式のみへの投資の場合には、①1階の投資せずに②2階への投資が可能となります。

2.暗号資産デリバティブに係る雑所得等の取扱い
(1)先物取引に係る雑所得等の課税特例及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用対象から、暗号資産デリバティブに係る雑所得等は除外となります。
(2)2021年(令和3年)分より、金融商品取引業者等は、年間の暗号資産デリバティブ取引の差金等決済金額の支払調書を、翌年1月末までに税務署長に提出する必要があります。

3.低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除の創設
個人が、都市計画区域内にある低未利用土地又はその上の権利を譲渡した場合に、一定の適用要件を満たすときには、その譲渡に係る長期譲渡所得から特別控除として100万円を控除することができます。その適用要件は、以下のとおりです。

市区町村長の承認



低未利用土地等であること及び譲渡後の低未利用土地等の利用について承認がされていること
所有期間譲渡年の1月1日現在で5年超であること
適用外となる譲渡の相手方買手が、売主個人の配偶者、その他の売主と一定の特別な関係がある者であれば適用外
譲渡対価その土地の上にある建物等を含めて譲渡金額が500万円以下であること
継続適用の制限前年又は前々年に当該制度の適用を受けていないこと
適用時期以下のいずれか遅い日から2022年(令和4年)12月31日までの間の譲渡に適用:
①土地基本法等の一部を改正する法律の施行日
②2020年(令和2年)7月1日

4.土地・住宅税制の適用期限延長等

項目期限
短期所有土地の譲渡等の土地譲渡等に係る事業所得等の課税特例適用停止措置の期限を3年延長
特定の居住用財産の買換え及び交換の長期譲渡所得の課税特例の適用期限2年延長
居住用財産の買換等の譲渡損失の繰越控除等の適用期限2年延長
特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限2年延長
優良住宅の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税特例について、一部適用対象変更の上、適用期限を延長する3年延長

5.配偶者居住権及び配偶者敷地利用権に係る譲渡所得の取扱い
(1)配偶者居住権及び配偶者敷地利用権の消滅等により対価を得た場合の課税の取扱い
合意解除や放棄により権利が消滅等し、配偶者が対価を取得した場合は、譲渡所得課税となるが、その際の取得費は以下の様に計算します。
  居住建物等の取得費(減価償却後)× 配偶者居住権等割合(注1)- 設定から消滅等までの期間に係る減価の額 = 取得費
(注1):設定時における配偶者居住権等の価額相当額 ÷ 設定時における居住建物等の価額相当額
(2)配偶者居住権及び配偶者敷地利用権の消滅前に居住用建物等を譲渡した場合の取得費の計算方法
相続人が相続により取得した居住建物等(配偶者居住権の目的となっている建物又はその建物の敷地となっている土地等)を、配偶者居住権及び配偶者敷地利用権の消滅前に居住用建物等を譲渡した場合の、譲渡所得の計算上控除する際の取得費は以下の様に計算します。
居住建物等の取得費(減価償却後)- 配偶者居住権等の取得費(注2) = 取得費 
(注2):設定日から譲渡日までの期間に係る減価の額を控除した金額

6.国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例の創設
(1)個人が、2021年(令和3年)以降の各年において、「国外中古建物」を賃貸し不動産所得を有する場合に、その国外不動産所得の損失金額が生じるときは、その国外中古建物の減価償却費の相当部分の金額は、生じなかったものと見做すことになります。
「国外中古建物」とは、建物の減価償却費の計算にあたり、その対象年数の算定が「簡便法」又は「適正であることを証する一定の書類の添付がない見積法」をより行われているものとなります。
(2)上記の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合の、譲渡所得の金額の計算上、その取得費から、生じなかったと見做された償却費相当額部分は控除しないことになります。

7.未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し
(1)未婚のひとり親に対する税制上の措置(適用は2020年(令和2年)分以後)
居住者が未婚のひとり親(寡婦(寡夫)を除く)が、次の適用要件を満たす場合には、35万円控除が認められます。
① 未婚のひとり親と生計を一にする子の総所得金額等の金額が48万円以下であること
② 未婚のひとり親の合計所得金額が500万円(年収678万円)以下であること
③ 未婚のひとり親が入籍しない事実婚の世帯であっても住民票に事実婚の旨を登録記載されていないこと
(2)寡婦(寡夫)控除の見直し
① 寡婦控除の要件に新たに寡夫控除と同様に所得要件として、合計所得金額が500万円(年収678万円)以下であることを加える
② 寡婦(寡夫)の要件に住民票に事実婚の旨を登録記載されていないことを加える
③ 子ありの寡夫の控除額(現行所得税27万円)について、子ありの寡婦と同様に同額の35万円とする

8.国外居住親族に係る扶養控除等の見直し(適用は2023年(令和5年)分以降)
扶養控除の対象者から日本国外に居住する親族のうち、30歳以上70歳未満の者が除外となります。但し、下記のいずれかに該当する者は適用対象のままです(明らかにする書類が必要)。

扶養控除の対象者提出又は提示が必要な書類
留学により非居住者となった者公的な在留者であることを証する書類
障害者
居住者から年間38万円以上の生活費又は教育費の支給を受けている者送金関係書類等で38万円以上であることを明らかにする書類

9.確定拠出年金制度の見直し

改正項目対象制度改正前改正後
加入年齢の見直し企業型DC厚生年金被保険者の65歳未満厚生年金被保険者の70歳未満
個人型のDC(iDeCo)及び農業者年金制度国民年金被保険者の60歳未満国民年金被保険者の65歳未満
受給開始時期の選択肢の拡大企業型DC・個人型DC(iDeCo)60歳~70歳の間で選択70歳以降も選択可
DB60歳~65歳の間で選択60歳~70歳の間で選択

10.相続国外財産に係る相続直後の国外財産調書等への記載の柔軟化
相続開始の日に属する年度の12月31日に有する国外財産調書については、その相続又は遺贈により取得した国外財産を記載しないで提出することができるようになります。この場合の提出義務の判定には、その相続国外財産の価額を除外して行うことになります(国外財産調書における相続財産についても同様となります)。
改正は、2020年(令和2年)分以後の国外財産調書又は国外財産調書について適用となります。

11.居住用財産の譲渡特例を適用した場合における住宅ローン控除適用の見直し
新規住宅の居住年から3年目に新規住宅及びその敷地の土地等以外の資産の譲渡(従前住宅を譲渡)した場合において、その従前住宅を譲渡に対して、下記の譲渡特例の適用を受けるときには、新規住宅について住宅ローン控除の適用ができないことになります。
① 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税特例
② 居住用財産の譲渡所得の特別控除
③ 特定の居住用財産等の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税特例
改正は、2020年(令和2年)4月1日以後に従前住宅等を譲渡する場合に適用となります。

以上

贈与税・相続税(資産課税)
1.所有者不明土地等に係る課税上の措置
(1)現に所有している者の申告の制度化(2020年(令和2年)4月1日以後の条例の施行日以後から適用)
登記簿上の所有者が死亡している場合、市町村長は条例によりその土地又は家屋を現に所有している者に対して固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができることになります。罰則も設けることになっています。
(2)使用者を所有者とみなす制度の拡大(2021年(令和3年)度以後の年度分の固定資産税から適用)
市町村は、一定の調査を尽くしてもなお固定資産の.所有者が一人も明らかとならない場合には、その使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、その使用者に固定資産税を課すことができることになります。

2.住宅用家屋の所有権移転等における登録免許税
登録免許税の軽減税率の適用措置を2年延長する。

3.不動産譲渡に関する契約書等に係る印紙税
印紙税の税率特例措置の適用措置を2年延長する。

4.医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等の適用期限延長
適用期限が3年延長となります。

以上

2019年12月31日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

償却資産の申告(固定資産税): 申告書提出期限1月末

1. 固定資産税とは
固定資産税とは、1月1日現在で国内に土地、家屋又は償却資産(事業用資産)の固定資産を所有している者に対し、当該固定資産の評価額を基に算定された税額を資産の所在する市区町村(東京23区内は特例で区でなく都が課税)が課する地方税をいいます。
課税対象のうち、土地と家屋については登記簿等で市区町村では実在を確認できることになりますが、償却資産は毎年1月1日に所有しているものを自己申告を通じて、固定資産(償却資産)課税台帳に登録され課税されることになります。

2. 固定資産税(土地・家屋)
土地と家屋については、登記事項のため市区町村は、その登記簿等に基づいて固定資産税を計算し、1月1日現在の所有者に納税通知書と同時に課税明細書が5月末前後に送られてきますので、当所有者は申告等の手続の必要はありません。
税率はいずれも1.4%であり、土地は課税標準額に、家屋は課税台帳に登録されている価格に掛けて税額が算定されます。なお、市区町村内に所有する固定資産の課税標準額が、土地30万円、家屋20万円未満の場合には、固定資産税は課税されません。
納期は年4回(6月、9月、12月、2月:市区町村によっては1ヶ月早まるところもあります)です。土地とは、田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野等です。家屋とは、住宅、店舗、工場、倉庫等です。

3. 固定資産税(償却資産)
償却資産とは、土地と家屋以外の事業用に供している減価償却対象資産のものをいいます。1月1日現在で償却資産を事業用に使用している所有者(法人や個人事業者)は、所定の申告書を作成し、1月31日までに償却資産の所在する市区町村ごとに提出しなければなりません。課税対象が償却資産に対する税金ということで償却資産税とも言われています。

(1)償却資産の対象(課税資産)
法人や個人で事業を行っている方で事業のために使用している減価償却の対象資産のうち、その取得価額が一定金額以上のものについては、償却資産となります。具体的には、以下のようなものが償却資産となっています。

① 構築物
舗装路面、庭園、門・塀・緑化施設等の外構工事、看板(広告塔等)、ゴルフ練習場設備等、並びに建物付属設備(受変電設備、予備電源設備、その他建築設備、内装・内部造作等)
② 機械及び装置
各種製造設備等の機器及び装置、クレーン等建設機械、機械式駐車設備等
③ 船舶
ボート、釣船、漁船、遊覧船等
④ 航空機
飛行機、ヘリコプター、グライダー等
⑤ 車両及び運搬具
大型特殊自動車、構内運搬車,貨車、客車等
⑥ 工具、器具及び備品
パソコン、陳列ケース、看板(ネオンサイン)、医療機器、測定工具、金型、理容及び美容機器、ルームエアコン、自動販売機等

以下の資産も償却資産として申告の対象になります。
・ 建設仮勘定で処理されている資産、簿外資産及び償却済資産であっても、1月1日現在で事業用に供することができる場合
・ 遊休又は未稼働の資産であっても、1月1日現在で事業用に供することが出来る状態にある場合
・ 耐用年数が1年未満又は取得価額が10万円未満の資産であっても、有形固定資産として計上し、減価償却している場合
・ 青色申告の中小企業法人・個人事業者については、取得価額が30万円未満の資産を一時に損金算入する処理(少額資産償却特例)がなされていても、この特例は国税(法人税・所得税)に関する制度であり、この地方税の固定資産税には適用されません。従って、この資産は固定資産税の申告対象となります。
その他、 所有権が留保されている資産(賃貸資産、 等)

(2)償却資産の非課税資産
償却資産の対象とならないものは、次のとおりです
(1) 土地や建物(いずれも登記対象資産であることから、 所有者を把握できますので敢えて償却資産として申告の対象にしていません)
(2) 自動車税・軽自動車税の課税対象(2重課税の排除)
(3) 無形固定資産(特許権、 営業権、 ソフトウェア等)
(4) 繰延資産
(5) 生物(観賞用、 興行用その他これらに準ずる生物は除く)
(6) 金額的に少額資産と言われる下記の資産:
① 取得価額が10万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたもの
② 取得価額が10万円以上20万円未満の資産で、 税務上、 3年間で一括償却しているもの
注1: 租税特別措置法の規定により、 一定の中小企業に対する特例を適用して、 取得価額が30万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたものでも、償却資産の申告対象になっています。
注2: 上記以外の資産で企業や個人で事業を行なっている方が事業のために用いることができる資産、 即ち、 構築物、 機械及び装置、 船舶、 航空機、車両及び運搬具、 工具・器具及び備品で有形減価償却資産が対象となります。 次のものも償却資産の対象となります。
(1) 建設仮勘定で計上されている資産、 簿外資産及び償却済資産であっても事業用に供することができるもの
(2) 遊休又は未稼働のものであっても事業用に供することができるもの
(3) 改良費(資本的支出)
(4) 家屋に施した建築設備・造作等のうち、 償却資産として取り扱うもの
建築設備における家屋(建物・建物附属設備)と償却資産とを区分して評価することになります。 家屋と設備の所有者が同一の場合に、 償却資産として取り扱うものは次の要件を満たすものです。
① 構造的に家屋と一体的でないもの (野外給水塔、 独立煙突等)
② 家屋から独立した機械及び装置として性格の強いもの (受・変電設備)
③ 特定の生産又は業務に使用されるもの (動力用配線設備等)
④ 単に移動を防止する程度に家屋に取り付けられたもの (ルームエアコン等)
⑤ 顧客の求めに応ずるサ-ビス設備

(4)固定資産税額等の算出方法(資産が所在する所轄の市区町村ごとに行ない、 申告書を作成します)
(1) 評価価額の算出方法
① 取得初年度
評価価額 = 取得価額 X 耐用年数に応ずる減価率 X 1/2(50%)
② 取得後2年目以降
評価価額 = 前年度の評価価額 X 耐用年数に応ずる減価率
(2) 固定資産税額の算出方法
① 課税標準額の集計(1,000円未満切捨て)
各資産の評価価額を集計(合算)した額が課税標準額(決定価格となります)です。
課税標準額が150万円未満の場合には、 固定資産税は課税されません。
② 税額の計算
固定資産税額(100円未満切捨て) = 課税標準額(1,000円未満切捨て) X 税率(1.4%)

(5)償却資産の申告
所定の償却資産申告書、 種類別明細書、 等の書類を資産の所在する市区町村ごとに作成し、 1月末までに提出(申告)することになります。 申告方式には、 以下の2方法がありますが、通常は一般方式を採用しています。
その方式とは、 前年中(申告対象年度)に増加又は減少した資産内容を申告するのみで、 評価額、 税額等は所管事務所で行う方式です。
注1: 前年中に増加又は減少した資産が無い場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「増減なし」等を付記します。
注2: 事業を行なっていますが、 対象償却資産を所有されていない場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「該当資産なし」を付記します。

以上

2019年12月10日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

年末調整の概要

1. 年末調整とは
毎年11月となりますと会社(給与支払者)の給与担当部署は、 「年末調整」の準備・対応という大変忙しい時期を迎え、 勤務者(従業員)はその年末調整の為に必要となる申告書や証明書類等を所定の期限までに会社に提出することが求められます。 会社は、 勤務者から回収した年末調整用の書類の内容を確認しその最終提出情報に基づいて、 暦年の最終給与支払時(通常、 12月給与)に納めるべき年間の所得税及び復興特別所得税(年調年税額)を算出し、 これまでの給与支給時に源泉徴収された累計年税額とを比べその差額となる過不足額を精算(徴収又は還付)します。 その一連の精算手続が年末調整ということになります。 通常、 年末調整により還付されるケースが多いかと思います。

2. 令和元年度(2019年度)の所得税に係わる改正
令和元年度の年末調整において、税制改正により影響を受ける項目はありませんが、参考に平成30年度(2018年度)に大きな改正がありましたので、その主な項目は以下の通りでした。
(1) 配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正
平成29年度までは、配偶者の合計所得金額が38万円以下(給与収入では103万円以下)の場合に配偶者控除38万円(老人控除対象配偶者48万円)、 並びに配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満の場合に配偶者特別控除が適用となっていましたが、 平成30年度から、 配偶者控除は世帯主(給与所得者本人)の年収に応じて縮小(本人の合計所得金額が900万円超から1,000万以下まで3段階で縮小。従って、1,000万円超・給与収入額では1,220万円超になりますと配偶者控除の適用を受けることができません)され、配偶者特別控除は配偶者の年収要件を103万円から150万円に引上げ、 かつ配隅者の年収(103万円201.6万円未満)及び世帯主の年収(1,120万円超から1,220万円以下)に応じて控除額が9段階で縮小となっています。
(2) 給与所得者の配偶者控除等申告書の改正
平成29年度までは、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」(兼用様式)から、平成30年度から、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」の2種類の様式となりました。
配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるには、「令和元年分 給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出する必要があります。
(3)源泉徴収簿の様式変更
① 「配偶者特別控除額」が「配偶者(特別)控除額」に変更
② 「配偶者控除、扶養控除額、基礎控除額及び障害者等の控除額の合計額」が「扶養控除額、基礎控除額及び障害者等の控除額の合計額」に変更
(4)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の様式変更 
平成29年度までは、「控除対象配偶者」を記載することになっていましたが、平成30年度から、「源泉控除対象配偶者」を記載することになりました。
(5) 保険料控除申告書に添付する証明書範囲の改正
保険料控除申告書に添付すべき生命保険料控除及び地震保険料控除に関する証明書に、電磁的記録印刷書面が加えられました。

3. 年末調整の対象者
年末調整の対象者は、 原則として会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人は全員含まれます。 但し、 給与収入額が2千万円を超える人は年末調整を行ないませんので自身の確定申告を通じて年税額の精算をしなければなりません。 通常、 1カ所から給与支給を受けている人は、 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出し年末調整を受けることになります。
次の人は年末調整の対象者にはなりません。
(1) 年中の給与収入額が2千万円を超える人
(2) 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人(年末調整を行うことができませんが、 支払の際の源泉徴収においては乙欄の税額表が適用となります)
(3) 年中に退職(死亡退職した人、 非居住者として国外勤務者となった人、 等を除く)した人
(4) 国内に住所も1年以上の居所を有していない人(非居住者)
(5) 災害免除法の規定により源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人
(6) 日雇労働者等(丙欄の税額表適用者)

年末調整の為に提出が求められる申告書とその中に記載される控除項目は以下のとおりです。 当該控除項目以外に所得から控除可能な項目がある場合にはそれらの項目は確定申告で行うことになります。

申告書の名称控除項目
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書扶養控除、 障害者控除、 寡婦(夫)控除、 勤労学生控除、 基礎控除
給与所得者の配偶者控除等申告書配偶者控除、配偶者特別控除
給与所得者の保険料控除申告書生命保険料控除(一般生命・介護医療・個人年金)、 地震保険料控除、 社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(2年目から年末調整の対象で初年度は確定申告が必要)

注: マイナンバーの記載不要の特例制度
平成28年1月よりマイナンバー制度が導入されています。原則、マイナバーを記載すべき書類の提出を受ける際には、その都度(毎回)必ず、マイナバーカード等で本人確認する必要があります。但し、平成29年分以後の扶養控除等(異動)申告書等へのマイナンバーの記載不要の特例制度が創設され、その適用要件として、過去にマイナンバーの情報が提供されており、 一度その番号確認を実施した上で作成した帳簿(特定個人情報ファイル)を会社が備えているときには記載不要となりました。 これは、確認書類の提示を受けることが困難な場合を前提とされていますが、変更が無いことが口頭等で確認されていれば参照できることでよいかと思います。なお、本人確認のうち身元確認については、過去に一度確認を行っている場合、本人を対面で確認することで明らかに本人であると認識されたる場合には、身元確認書類の提示は不要となります。
マイナンバーの記載不要の特例制度が適用できない方には、以下の対応が必要となります。
「平成元年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出にあたり、 給与所得者本人、 源泉控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の個人番号を記載することになります。 提出にあたり、 給与支払者が給与所得者から個人番号の提供を受ける場合は、 本人確認として、 提供の番号が正しいことの確認(番号確認)と、 番号提供者が真にその番号の持ち主であることの確認(身元確認)を行う必要があります。 なお、 控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の本人確認は、 給与所得者(従業員)が行うことになっています。
平成28年1月以降の支払に係る給与所得の源泉徴収票には、 上記の個人番号を記載して税務署等の行政機関に提出することが必要となりますので、 「扶養控除等(異動)申告書」に必要なマイナンバーが記載されていない場合には、 源泉徴収票作成までにマイナンバーの提供を受ける必要があります。 なお、 給与所得者への源泉徴収票には、 個人番号は記載されません。

申告書記載上の主な注意点は以下のものがあります。
(イ) 12月31日時点の現況で記載
その年の12月31日現在の現況を見積もりで記載することになります。 見積記載の内容に修正が生じた場合(例えば、 扶養者数の増減、 等)には、 再年末調整(翌年の1月末までは可能)又は確定申告により適正な精算を行うことになります。

(ロ) 人的控除項目の判定基準に合計所得金額基準
控除項目の中(控除対象配偶者、 控除対象扶養控除、 配偶者特別控除等の人的控除項目)には、 その控除に該当するかの判定基準にその年度の合計所得金額がありますので留意してください。 多い誤りとしては、 配偶者の合計所得金額が控除対象金額を超えているケースです。
平成29年度までは、配偶者者控除の場合の合計所得金額が38万円以下(給与収入では103万円以下)の場合に配偶者控除38万円(老人控除対象配偶者48万円)、 並びに配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満の場合に配偶者特別控除が適用となっていましたが、 平成30年度から、 配偶者控除は世帯主(給与所得者本人)の年収に応じて縮小(本人の合計所得金額が900万円超から1,000万以下まで3段階で縮小。従って、1,000万円超・給与収入額では1,220万円超になりますと配偶者控除の適用を受けることができません)され、配偶者特別控除は配偶者の年収要件を103万円から150万円に引上げ、 かつ配隅者の年収(103万円201.6万円未満)及び世帯主の年収(1,120万円超から1,220万円以下)に応じて控除額が9段階で縮小となっています。

公的年金等の雑所得だけの方で控除対象扶養者(合計所得金額が38万円以下)になる場合には、 公的年金等の収入金額が158万円以下(年齢65歳未満の人は108万円以下)という条件を満たす人です。

(ハ) 年齢16歳未満の年少扶養親族
控除対象扶養控除に関して、 平成23年度から年齢16歳未満の年少扶養親族に対する扶養控除が所得税では廃止となっています(年齢16歳未満は所得税における扶養控除対象者ではありません)。 しかし、 住民税の方では控除対象となっていますので住民税に関する欄への記載を忘れないでください。 なお、 年齢16歳未満の年少扶養親族であっても、 障害者又は特別障害者に該当する場合には、 障害者控除を受けることはできます。
令和元年度の年末調整時における年齢16歳未満とは、 平成16年1月2日以後に生まれた人が年少者となります。

(ニ) 扶養親族
所得者と生計を一にする親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)で、 合計所得金額が38万円以下の人を扶養親族(配偶者、青色事業専従者及び白色事業専従者を除く)といいます。 その中には、 以下のように区分されています。
① 控除対象扶養親族
扶養親族のうち、 年齢16歳以上の人をいいます(令和元年度の年末調整では、 平成16年1月1日以前に生まれた人)。
② 特定扶養親族
扶養親族のうち、 年齢19歳以上23歳未満の人をいいます(令和元年度の年末調整では、 平成9年1月2日から平成13年1月1日までの間に生まれた人)。
③ 老人扶養親族
控除対象扶養親族のうち、 年齢70歳以上の人をいいます(令和元年度の年末調整では、 昭和25年1月1日以前に生まれた人)。
④ 同居老親等
老人扶養親族のうち、 所得者又はその配偶者の直系尊属でいずれかとの同居を常況としている人をいいます。
(注): 国外居住親族に係る扶養控除等の適用時に所定の書類添付等の義務化
非居住者である親族(国外居住親族)に係る扶養控除、 配偶者控除、 障害者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける場合には、 「親族関係書類」及び「送金関係書類」の提出又は提示を受ける必要があります。
具体的な手続きとして、 適用を受ける旨を「扶養控除等(異動)申告書」上の「非居住者である親族」欄に○印を付し、 関係書類の提出等を行います。
「親族関係書類」の書類とは、
* 戸籍の附票その他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族のパソポートの写し
* 外国政府又は外国地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があることが必要):例えば、戸籍謄本その他これに類する書類、出生証明書、婚姻証明書、等
「送金関係書類」の書類とは、
各人に支払ったことを明らかにする、金融機関の書類又はその写し、或いは、購入したことを証するクレジットカード発行会社の書類又はその写し、等
* 生活費を現金渡しの場合には、送金等の確認が出来ない限り、扶養控除の適用は受けられません。
* 生活費を次年度分を含めて当年度に送金した場合、その送金書類を当年度分として使用することは出来ません。その年において各人に支払っていることが必要となります。
* 生活費を長男及び次男の二人分を長男名義の口座に送金した場合には、長男のみが扶養控除の適用となります。各人に対して行ったことを明らかにする書類が必要となります。

(ホ) 生命保険料控除の改組
平成24年(2012年)1月1日からの契約分(新契約)から一般生命保険に含まれていた「介護医療保険」が独立の控除対象となりました。 平成23年までの契約分(旧契約)については、 昨年までと同様に「一般生命保険」と「個人年金保険」の2つに分けられ最高控除額は、 各5万円です。 新契約は、 「一般生命保険」、 「介護医療保険」と「個人年金保険」の3つに分けられ最高控除額は、 各4万円となります。 なお、 旧契約と新契約が混在するケースも発生することもありますが、 各保険料控除の合計適用限度額が12万円とされています。 従いまして、 支払保険契約が、 旧契約か新契約かを保険会社からの証明書で確認しながら申請書に正しく記載する必要があります。
生命保険契約等により支払われた保険料や掛金は所得者本人が支払ったものに限られています。 又、 保険金、 共済金等の給付金の受取人の全てが所得者本人又は所得者の配偶者や親族となっていることが必要です。
翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 本年中に相当する部分のみが支払保険料の金額となります。

(ヘ) 社会保険料控除
所得者本人と生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料を所得者自身が支払った場合(時限措置により納付可能となった過去分の保険料の支払分も含む)には、 所得者本人の社会保険料として控除できます。
年金から特別徴収された介護保険料や後期高齢者医療保険料については、 支払者が年金受給者自身となることから、 その年金の受給者の社会保険料として控除となります。
翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 前納期間が1年以内の場合には、 その全額を本年の社会保険料として控除することができます。 なお、 国民年金保険料については、 2年分を前納できることになりましたので、 全額控除をするか、 又は期間按分して控除(この場合には、 按分の明細書が要作成)する方法のいずれかを選択することが可能です。

(ト) 地震保険料控除
所得者本人と生計を一にする親族が所有して常時居住している家屋や生活に通常必要な家財に対して支払った保険料の内、 一定の金額を地震保険料控除として控除できます。
一つの契約等で、 地震等損害に対する損害保険契約と旧長期損害保険契約のいずれの契約区分にも該当する場合には、 選択によりいずれか一方の契約区分のみが地震保険料控除の控除額となります(有利な方を選択する)。

(チ) (特定増改築等)住宅借入金等特別控除
現在、 各種の住宅借入金等特別控除がありますが、 控除を受けようとする初年度分については、 確定申告により控除の適用を受ける必要があります。 2年度以降分については、 年末調整の際に下記のものを給与支払者に提出します。
① 税務署長が発行した「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」。 この証明書の上部に「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」がありますので、 控除金額等の記載を行い提出します。
② 金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
一般の住宅借入金等特別控除は、 居住者が一定の要件を満たす住宅の取得等して、 その人の居住の用に供した場合(その家屋の取得等の日から6ケ月以内に居住用に供したものに限られています)において、 その住宅の取得等のために一定の住宅借入金(償還期間10年以上等)を有するときには、 居住年以後10年間(平成13年7月1日から平成33年12月31日までの間で居住した場合には、 最長10年間。 それ以前のものは最長15年間)の各年のうち、 合計所得金額が3千万円以下である年について、 住宅借入金等の年末残高を基にした所定額を住宅借入金等特別控除としてその年の所得税額から控除できるというものです。
家屋に入居後、 本年12月31日まで継続して居住用に供していることが控除の適用要件ですので、 年度の途中で海外勤務となり出国している場合には、 この制度の適用はありません。
自己の居住用の家屋が2以上有する場合には、 主として居住用とする1の家屋に限られます。
連帯債務(共有)の場合には、 各年12月31日現在のその住宅借入金等の金額に控除を受ける人の負担割合(持分割合)を加味して控除額を計算します。 その割合は、 小数点以下第4位を切上げ、 90%以上である場合は100%とします。
住宅ローンの借換え: この制度の適用者が、 住宅借入金等の借換えをした場合に一定の要件を満たすときには適用が継続します。 住宅ローン金利が低くいものがあるとローンの借換えを行う場合があります。 一般の住宅ローンの場合の借換えでは、 新たな借入金が当初の借入金を消滅させるもので、 適用対象となっていた家屋の取得等のための資金に充てるものであれば住宅ローン控除の継続適用の対象となります。 その場合の新たな借入金の償還期間も10年以上であることが適用要件となっています。 ローン借換後の借入額が借換前の借入残高以下であれば、 年末借入残高が控除対象額となりますが、 逆に借換後の借入額が借換直前の借入残高を上回る場合、 次の按分計算して控除対象額を導く必要があります。
ローン借換後の借入額の年末残高 X (借換直前の借入残高 ÷ 借換直後の借入額) = 控除対象借入額の年末残高

(リ) 給与と徴収税額の集計
年中に支払った給与・賞与が対象になりますが、 本年分の給与で未払いであっても、 本年中に支給日が到来して支払の確定したものについても年末調整の対象になります。

以上が年末調整の概要となります。

4.令和2年分(2020年分)の源泉徴収事務処理上の留意事項
なお、税制改正により令和2年分(2020年分)の源泉徴収事務に影響がありますが、概要を次に記載します。
(1)「扶養控除等(異動)申告書」の追加欄
「住民税に関する事項」に「単身児童扶養者」の欄が追加され、令和2年分から様式が変更となります。
(2)源泉所得税に関する改正項目
① 給与所得控除及び基礎控除の改正
② 所得金額調整控除の創設
③ 各種所得控除等を受けるための扶養控除等の合計所得金額要件等の改正

扶養親族等の区分合計所得金額要件
令和元年分まで令和2年分以降
同一生計配偶者38万円以下48万円以下
扶養親族38万円以下48万円以下
源泉控除対象配偶者85万円以下95万円以下
配偶者特別控除の対象となる配偶者38万円超123万円以下48万円超133万円以下
勤労学生65万円以下75万円以下

④「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」の新設等
配偶者控除等申告書は、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」(3様式の兼用様式)になる予定です。
(3)年末調整手続きの電子化
令和2年10月以降の年末調整において、控除申告書を電磁的に提出している場合に限り、保険料控除申告書や住宅借入金等特別控除申告書に添付する控除証明書を、電磁的に交付を受けた控除証明書等のデータを会社に提出することが可能となります。

以上

2019年11月10日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

交際費 減税措置廃止へ大企業 経済活性化の効果薄く

政府・与党は大企業の交際費支出に適用している減額措置を今年度末に廃止する方向で調整に入る。大企業において、現在は接待などで使った一人あたり5千円以下の飲食代は年間の総額のうち半額を経費として、法人税の課税所得から控除できる。これを廃止すると、大企業による交際費はすべて経費扱いできなくなる。

2019年11月9日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

災害に伴う雑損控除と災害減免

台風15号、19号等により住宅家財に大きな損害が生じた方がおられますが、その様な損害に対して、所得税法では雑損控除や災害減免法では税金の軽減免除が認められています。
1.雑損控除とは
住宅家財等に災害又は盗難若しくは横領により損失を生じた場合、 又は災害関連支出金額がある場合に一定の所得控除が認められます。
2.雑損控除金額
次の①と②のいずれか多い金額。
① 損失の金額(注1) – 年間所得金額 X 10%
② 災害関連支出金額 – 50,000円
注1: 損失の金額とは、
(被災直前の時価 – 被災直後の時価) – 廃材価額 – 補てんされた保険金等 + 災害関連支出金額 = 損失の金額
雑損控除の対象となる資産損失額の算定方法
従来、 雑損失の対象となる資産損失額は、 その資産の時価(損失が生じた時の直前におけるその資産の価額)を基礎として計算する方法でしたが、 その資産の取得価額に基づく価額(その資産の取得価額から減価償却費累計額相当額を控除した金額の簿価)を基礎に計算する方法も認められることになります。
「減価償却費累計額相当額」とは、 非業務用の場合には、 その資産の耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率により、 その資産の取得から譲渡までの期間の年数を乗じて計算された金額となります。
3. 雑損控除と災害減免の選択
個人が住宅や家財等に損害を受けた時には法律での救済があり、 その中の租税面での救済として、 所得税法に定める雑損控除の方法と災害減免法に定める税金の軽減免除の方法のいずれか有利な方を選択できることになっています。 下記はその比較概要です。

区分所得税法の雑損控除災害減免法の軽減免除
控除又は減免の原因災害(①震災、風水害、火災、冷害、 干害等の自然現象の異変による災害、 ②鉱害、 火薬類の爆発等の人為による異常な災害、 ③害虫、 害獣等の生物による異常な災害)、 盗難、又は横領
従って、詐欺による損害は対象外。
災害
対象となる資産の範囲等生活に通常必要な資産(棚卸資産、 事業用の固定資産及び繰延資産、 山林、 生活に通常必要でない資産<事業用以外の競走馬、 別荘及び茶室、 時価30万円超の宝石等>以外のもの)。 即ち、 対象資産は、 居住用家屋、 家財、 衣服、 時価30万円以下の宝石等住宅又は家財。 但し、 損害額がその価額の2分の1以上であること。
住宅には、 自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族が常時起居する住宅で、 必ずしも生活の本拠である必要は無い。 家財とは、 日常生活に通常必要な家具、 什器、 衣服、 書籍その他の家庭用動産。
所得金額の制限無し。
居住者と生計を一にする配偶者その他の親族で、 その年の総所得金額が38万円以下の人の所有する資産も対象となる。
原則として、 損害年の合計所得金額が1,000万円以下の方であること。
控除額又は所得税の軽減額控除額は、 次の内いずれか多額の金額。
①差引損失額(*1) – 所得金額の10分の1
②差引損失額のうち災害関連支出(*2)の金額 – 5万円
*1: 差引損失額 = 損害額 + 災害関連支出(*2)の金額 – 保険金等の補てん金額
*2: 災害関連支出とは、 災害に関連した金額で災害により滅失した住宅、 家財の除去するための支出、 土砂その他の障害物を除去するための支出、原状回復のための支出をいう。
軽減額は、 次の額。
所得金額 所得税額の軽減額
500万円以下 全額免除
700万円以下 50%の減額
1,000万円以下 25%の減額
控除不足額の繰越繰越不足がある場には、 翌年以降3年間繰越控除無し
損害額の評価時価(保険金等の補てん金額は控除)時価(保険金等の補てん金額は控除)
手続確定申告書に雑損控除事項を記載し、 大震災に関連してやむを得ない支出をした金額(災害関連支出)についての領収書が必要。確定申告書に被害状況及び損害金額の「損失額の明細書」が必要。
その他として、 所得税(予納・源泉税)の徴収猶予の申請できる特例規定あり。
2019年11月2日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

災害に伴う雑損控除と災害減免

台風15号、19号等により住宅家財に大きな損害が生じた方がおられますが、その様な損害に対して、所得税法では雑損控除や災害減免法では税金の軽減免除が認められています。
1.雑損控除とは
住宅家財等に災害又は盗難若しくは横領により損失を生じた場合、 又は災害関連支出金額がある場合に一定の所得控除が認められます。
2.雑損控除金額
次の①と②のいずれか多い金額。
① 損失の金額(注1) – 年間所得金額 X 10%
② 災害関連支出金額 – 50,000円
注1: 損失の金額とは、
(被災直前の時価 – 被災直後の時価) – 廃材価額 – 補てんされた保険金等 + 災害関連支出金額 = 損失の金額
雑損控除の対象となる資産損失額の算定方法
従来、 雑損失の対象となる資産損失額は、 その資産の時価(損失が生じた時の直前におけるその資産の価額)を基礎として計算する方法でしたが、 その資産の取得価額に基づく価額(その資産の取得価額から減価償却費累計額相当額を控除した金額の簿価)を基礎に計算する方法も認められることになります。
「減価償却費累計額相当額」とは、 非業務用の場合には、 その資産の耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率により、 その資産の取得から譲渡までの期間の年数を乗じて計算された金額となります。
3. 雑損控除と災害減免の選択
個人が住宅や家財等に損害を受けた時には法律での救済があり、 その中の租税面での救済として、 所得税法に定める雑損控除の方法と災害減免法に定める税金の軽減免除の方法のいずれか有利な方を選択できることになっています。 下記はその比較概要です。

区分所得税法の雑損控除災害減免法の軽減免除
控除又は減免の原因災害(①震災、風水害、火災、冷害、 干害等の自然現象の異変による災害、 ②鉱害、 火薬類の爆発等の人為による異常な災害、 ③害虫、 害獣等の生物による異常な災害)、 盗難、又は横領
従って、詐欺による損害は対象外。
災害
対象となる資産の範囲等生活に通常必要な資産(棚卸資産、 事業用の固定資産及び繰延資産、 山林、 生活に通常必要でない資産<事業用以外の競走馬、 別荘及び茶室、 時価30万円超の宝石等>以外のもの)。 即ち、 対象資産は、 居住用家屋、 家財、 衣服、 時価30万円以下の宝石等住宅又は家財。 但し、 損害額がその価額の2分の1以上であること。
住宅には、 自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族が常時起居する住宅で、 必ずしも生活の本拠である必要は無い。 家財とは、 日常生活に通常必要な家具、 什器、 衣服、 書籍その他の家庭用動産。
所得金額の制限無し。
居住者と生計を一にする配偶者その他の親族で、 その年の総所得金額が38万円以下の人の所有する資産も対象となる。
原則として、 損害年の合計所得金額が1,000万円以下の方であること。
控除額又は所得税の軽減額控除額は、 次の内いずれか多額の金額。
①差引損失額(*1) – 所得金額の10分の1
②差引損失額のうち災害関連支出(*2)の金額 – 5万円
*1: 差引損失額 = 損害額 + 災害関連支出(*2)の金額 – 保険金等の補てん金額
*2: 災害関連支出とは、 災害に関連した金額で災害により滅失した住宅、 家財の除去するための支出、 土砂その他の障害物を除去するための支出、原状回復のための支出をいう。
軽減額は、 次の額。
所得金額 所得税額の軽減額
500万円以下 全額免除
700万円以下 50%の減額
1,000万円以下 25%の減額
控除不足額の繰越繰越不足がある場には、 翌年以降3年間繰越控除無し
損害額の評価時価(保険金等の補てん金額は控除)時価(保険金等の補てん金額は控除)
手続確定申告書に雑損控除事項を記載し、 大震災に関連してやむを得ない支出をした金額(災害関連支出)についての領収書が必要。確定申告書に被害状況及び損害金額の「損失額の明細書」が必要。
その他として、 所得税(予納・源泉税)の徴収猶予の申請できる特例規定あり。
2019年11月2日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

消費税率10%引上後の住宅取得等資金贈与及び住宅ローン控除

2019年10月1日より消費税率が8%から10%に引上げられましたが、個人消費が落ち込まない様に各種の政策が図られています。その中で、特に金額が高額となり影響が大きな住宅取得等にどの様な製作があるか確認してみたいと思います。

1. 直近尊属から住宅取得等資金贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
特定受贈者(贈与年の1月1日現在20歳以上で合計所得金額2,000万円以下の者)が、 その直系尊属(親、祖父母等)から受ける居住用家屋の新築・取得・増改築等用に住宅取得等資金の贈与については、非課税限度額が定められています。
① 住宅用家屋の取得価額に消費税率10%の消費税等が含まれている場合 (消費税率10%で契約した者):契約締結時期で贈与額の非課税限度額が確定

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間良質な住宅用家屋(省エネ等住宅)左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
平成31年4月~令和2年3月3,000万円2,500万円
令和2年4月~令和3年3月1,500万円1,000万円
令和3年4月~平令和3年12月1,200万円700万円
なお、 東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、
以下のようになります。
平成31年4月~令和2年3月
令和2年4月~令和3年12月


3,000万円
1,500万円


2,5000万円
1,000万円

② 上記(1)以外の場合 (消費税率8%で契約した者や個人間売買で中古住宅売買契約した者)

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間良質な住宅用家屋(省エネ等住宅)左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
平成28年1月~令和2年3月1,200万円700万円
令和2年4月~令和3年3月1,000万円500万円
令和3年4月~令和3年12月800万円300万円
なお、 東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、
以下のようになります。
平成26年度申告対象分~令和3年12月


1,500万円


1,000万円

上記の「良質な住宅用家屋」とは、断熱等性能等級4、 又は耐震等級2以上若しくは免震建築物に該当する住宅用家屋のことであり、 所定の証明書が必要となります。
① 「良質な住宅用家屋」の範囲に、 一次エネルギー消費量等級4以上に該当する住宅用家屋及び高齢者等配慮対策等級3以上に該当する住宅用家屋も含まれます。
② 適用対象となる増改築の範囲に、 一定の省エネ改修工事、 バリアフリー改修工事及び給排水菅又は雨水の侵入を防止する部分に係る工事が加えられています。

更に、以下の適用要件があります。
① 住宅取得等資金であること
住宅取得等資金とは、住宅の新築、取得または増改築等に充てるための金銭をいいます。尚、住宅の新築に先行して、その敷地用の土地等を取得する場合における取得資金もこの制度の適用対象となっています。金銭の贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、原則として居住することが必要となっていますが、その後に遅滞なく(同年の12月31日までに居住できなかったときには、この非課税制度は認められなく、同日から2ヶ月以内に修正申告をしなければなりません)、居住することが確実に見込まれる場合であれば特定受贈者は所定の計算明細書等を添付して贈与税の申告期限内に提出すれば、この非課税制度の適用を受けることができます。
② 受贈者の非課税の適用要件:
(イ) 贈与時に日本国内に住所がある、 或いは日本国内に住所が無いものの日本国籍を有し、 かつ、 受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所があったことがある。
(ロ) 贈与時に贈与者の直系卑属(子や孫等)である。
(ハ) 贈与時の1月1日現在で20歳以上である。
(ニ) 贈与年の合計所得額が2,000万円以下である。
③ 住宅の新築・取得の適用要件:
日本国内にある家屋で、 受贈者が主として居住用に使用するものであり、 次の要件を満たす必要があります(土地だけの取得では不可)。
(イ) 適用対象となる住宅用家屋の床面積が50㎡以上で240㎡以下(区分所有の場合には、 その区分所有部分)。 なお、東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、 240㎡以下の床面積制限無し。
(ロ) 中古家屋の場合には、 耐火建築物であれば築25年以内 、耐火建築物以外では築20年以内のものであること。 但し、 地震に対する安全基準に適合するものには、 この建築年数制限は無し。
適用対象となる既存住宅用家屋の範囲に、 地震の耐震性に適合しない既存住宅を取得した場合でも、 当該取得日までに耐震改修工事の申請等をし、 かつ、 居住日(贈与日の翌年3月15日)までに耐震改修工事が完了しているという等の一定の要件を満たす家屋も対象となります。
(ハ) 床面積の2分の1以上が専ら居住用に使用されていること。
④ 住宅の増改築等の適用要件:
日本国内にある家屋で、 次の一定の増改築であることが必要です。
(イ) 工事代金が100万円以上で、 かつ、 居住用の工事費が全体の2分の1以上であること。
(ロ) 増改築等の家屋の床面積の2分の1以上が専ら居住用に使用されていること。
(ハ) 増改築等の家屋の床面積が50㎡以上(区分所有の場合には、 その区分所有部分)。
(ニ) 適用対象となる増改築等の範囲に、 一定の省エネ改修工事、 バリアフリー改修工事及び給排水菅又は雨水の侵入を防止する部分に係る工事が加えられています。
⑤ その他の適用要件:
(イ) 受贈者の一定の親族等の特別な関係者との請負契約等により新築若しくは増改築等をする場合、 又はこれらの特別な関係者から取得する場合には、 この特例の適用を受けることはできません。 
(ロ) 贈与税の申告期限内に申告する必要があります。
⑥ 相続開始前3年以内贈与の相続財産への加算措置の対象外

この非課税適用において、居住時期以外にも次の点に関し、留意すべきです。
 住宅新築(一戸建て)の時期
新築は、資金贈与日の翌年の3月15日までに行わなければなりません。同日までに屋根(その骨組を含む)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以降の状態が必要となります。
 住宅取得(マンション)の時期
売主から住宅の引渡し(通常は鍵の引渡し、 又は少なくとも残代金の支払完了、等)を翌年の3月15日までに受ける必要があります。従って、売買契約の締結等の状態では不十分です。
 住宅の新築、取得または増改築等の取引の相手先
受贈者の一定の親族等特別な関係者との契約に基づくものは適用対象外となります。
 居住用の不動産の贈与
父から居住用の不動産の贈与を受けても、 この非課税制度は家屋に関し金銭による贈与に限定されていますので適用対象外です。

尚、消費税率10%適用となる住宅取得等資金の非課税は、下記の特例と併用が可能です(優良住宅のケース)。
① 歴年課税の基礎控除
令和元年度:110万円(基礎)+ 3,000万円 = 3,110万円の非課税
② 相続時精算課税の特別控除
平令元年度:2,500万円(特別)+3,000万円 = 5,500万円の非課税

(3) 住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税選択の特例(措法70の3)
住宅取得等資金の贈与を受ける場合に限り、 相続時精算課税制度を選択される時には、 贈与者の年齢制限の適用要件が外れるという特例規定があります(相続時精算課税選択の特例)。 なお、 対象住宅の床面積が50㎡以上であればよく上限条件は付されていません。

 

 相続時精算課税制度相続時精算課税選択の特例
特別控除2,500万円
年齢要件贈与者60歳以上の親親(年齢制限無し)
受贈者20歳以上の子及び孫)
適用期間平成15年1月1日以降(期間制限無し)平成15年1月1日から
令和3年12月31日まで

令和4年4月1日以後の贈与における適用年齢を18歳(現行:20歳)に引下げられます。

2.住宅借入金等の特例特別控除(住宅ローン控除)の創設
消費税率10%が適用される住宅取得等(新築、中古、増改築等)をして、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に居住に供された場合に、住宅ローン控除として従来の10年目の適用期間を3年延長され、適用年の11年目から13年目までの各年の控除額については、以下の①又は②のいずれか少ない金額とされます(適用年の1年目から10年目までは現行と同様)。
(1)一般住宅
① 住宅借入金等の年末残高(4千万円を限度)× 1%
② (住宅取得等の対価金額 - 対価金額に含まれる消費税額等){4千万円を限度}× 2% ÷ 3 
(2)認定長期優良住宅
① 住宅借入金等の年末残高(5千万円を限度)× 1%
② (住宅取得等の対価金額 - 対価金額に含まれる消費税額等){5千万円を限度}× 2% ÷ 3 
(3)東日本大震災の被災者等
① 住宅借入金等の年末残高(5千万円を限度)× 1.2%
②(住宅取得等の対価金額 - 対価金額に含まれる消費税額等){5千万円を限度}× 2% ÷ 3 
*:居住と非居住に供する部分がある場合には、居住に占める床面積割合が控除対象となります。
*:住宅取得等に関し、補助金等の交付金や直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合には、上記の計算においては、その交付金や贈与額を取得金額から控除する必要はありません。
*:2以上の住宅取得等の場合には、調整計算が必要となります。

参考:現行の住宅ローン控除(当初10年間)

居住年一般住宅(注1)認定長期優良住宅 (注1)
借入金等の年末
残高の限度額
控除率各年の控除限度額借入金等の年末
残高の限度額
控除率各年の控除
限度額
26年4月~令和3年12月(注2)4千万円1.0%40万円5千万円1.0%50万円

(注1):認定住宅とは、 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいい、 それ以外を一般住宅といいます。
(注2): 消費税等の税率が8%又は10%になった場合での金額であり、 それ以外の場合(経過措置の適用で旧税率が適用になっている場合や個人間の売買契約による場合も含む)には平成26年1月~3月の適用と同じになります。
なお、 住宅を取得・居住した年に勤務先から転任の命令等やむを得ない事由により転居した場合における再居住の特例として、 居住年に一時転居しその年の12月31日までの間に再び居住した場合には、 継続居住とみなされ当該税額控除の適用対象となります。

東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等特別税額控除:
東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合に令和3年12月31日までは、 再建住宅を取得等した場合の再建住宅借入金等に対して以下のようになります。

居住年借入限度額控除率各年の控除限度額
平成26年4月~令和3年12月5,000万円1.2%60万円

なお、住宅取得等に関し、補助金等の交付金や直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合には、その交付金や贈与額を取得金額から控除する必要があります(控除後で、限度額計算を行う)。

3.すまい給付金(2021年12月まで)
居住用住宅を取得等した場合に、年収が一定金額以下の人に対して所定の現金を支給する制度が、すまい給付金です。今回、支給対象者の年収を510万円以下から775万円に引下げ、給付額を最大30万円から50万円に上げられました。なお、対象者は住宅ローンの利用者が原則ですが、50歳以上で、かつ、年収が650万円以下であれば住宅ローンの利用は要求されません。

2019年10月5日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

消費税率10%施行時(2019年10月1日)における経過措置

新消費税法は、 社会保障支出の財源確保を目的として消費税率のアップとなっています。

引上時期(施行日)消費税地方消費税合計
2014(平成26)年4月1日より 6.3%1.7%(消費税の63分の17) 8%
2019(令和元)年10月1日より7.8%2.2%(消費税の78分の22) 10%

注: 消費税率10%への引上時期は、 2019(令和元)年10月1日になっています。

上記のように消費税率は、2019(令和元)年10月1日より8%から10%へ引き上げられることになっていますが、 その施行日(適用日)後でも一定の課税対象に対して、新たな 軽減税率制度の適用以外に経過措置(施行日後でも旧消費税率の適用等)が規定させています。 当経過措置に関する政令やQ&A等が公表されていますので、 それらの概要を含めて以下で紹介します。

改正法附則に別段の定めがあるものを除き、 施行日(令和元年10月1日)以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入、 並びに保税地域から引取られる課税貨物に係る消費税率は新税率10%の適用となります。 従って、施行日の前日(令和元年9月30日)までに締結した契約に基づき行なわれる資産の譲渡等及び課税仕入等であっても、 施行日以後に行なわれるものは、 経過措置が適用される場合を除き、 消費税率は新税率10%の適用となります。 又、 同様に、 施行日の前日(令和元年9月30日)までに仕入れた商品(旧消費税率8%の適用)を施行日以後に販売する場合にも、 その販売に係る消費税率は新税率の適用となります。
なお、 別段の定めとなる経過措置における消費税率は、 事業者の選択(任意)ではなく、 経過措置の適用要件を満たす場合には必ず旧税率を適用しなければなりません(強制適用)。 又、 取引双方の合意があっても任意に適用する消費税率を決められるものでもありません。  

資産譲渡等における消費税の課税時期は、
①物の引渡しを要するものにあってはその目的物の全部を完成して引渡した日。
②物の引渡しを要しないものにあってはその約した役務提供の全部を完了し引渡した日。
③資産の貸付けについては前受けに係るものを除き使用料等の支払を受けるべき日を原則としています。
(1) 施行日を跨ぐ資産の譲渡等
① 事業者間で収益・費用の計上基準が異なる場合
例えば、 商品の売上・仕入において事業者間で出荷基準・検収基準という異なる計上基準を採用していた場合でも、 課税資産の譲渡等の認識時点は異なることはありませんので、 施行日前の譲渡であれば双方とも譲渡日の旧消費税率の適用となります。
② 月ごとに役務提供が完了する保守サービスの適用税率
月払いの保守サービスのような役務提供契約の場合には、 その契約上の月ごとに役務提供が完了することになりますので、 その完了時点の消費税率が適用となります。
③ 保守料金を前受けする保守サービスの適用税率
1年分の事務機器等の保守サービス料金が月額で定められてものを受領した場合には、 上記②と同様に課税資産の譲渡等の認識時点は、 その契約上の月ごとに役務提供が完了することになりますので、 その完了時点の消費税率が適用となります。
なお、 保守サービス料金が月額で定められていなく1年分を受領した場合には、 その1年後に役務提供契約が完了することになりますので、 その完了時点の消費税率が適用となります。

施行日前後の返品の取扱い:
施行日前の商品販売のものが施行日後に返品されてきた場合には、 原則として、 その販売時に適用された旧税率により売上に係る対価の返還等の処理を行うことになります。 なお、 合理的な方法により継続して返品等を処理している場合には、 その方法も認められますが、 取引の相手方に適用税率を明記してあげることが必要です。
同様に貸倒れ、 減額等があった場合にも、 同様な取扱い(当初の税率が適用)となります。

以下は、 主な経過措置の対象項目(旧消費税率8%が適用となる項目)とその内容です。
(A) 旅客運賃等に関する経過措置(施行日を跨ぐ取引等)
(B) 水道光熱費等の特定継続供給等に関する経過措置(施行日を跨ぐ取引等)
(C) 請負工事等に関する経過措置(指定日を基準)
(D) 資産の貸付けに関する経過措置(指定日を基準)
(E) 指定役務提供に関する経過措置(指定日を基準)
(F) 予約販売に係る書籍等に関する経過措置(指定日を基準)
(G) 通信販売等に関する経過措置(指定日を基準)
(H) 特定新聞に関する経過措置(施行日を跨ぐ取引等)
(I) 有料老人ホームの一時金に関する経過措置(指定日を基準)
(J) 長期割賦販売等に関する資産譲渡等の時期の特例を受ける経過措置
(K) 長期大規模工事等に関する資産譲渡等の時期の特例を受ける経過措置
(L) リース取引等に関する資産譲渡等の時期の特例を受ける経過措置
(M) 家電リサイクル料金に関する経過措置(施行日を跨ぐ取引等)

(A) 旅客運賃等に関する経過措置
事業者が、 旅客運賃、 映画等の入場料その他不特定多数の者に対する譲渡に係る対価で政令で定めるものを施行日前に領収している(一定の前売り券等)場合には、 その課税資産の譲渡等が施行日以後の場合、 改正前の旧消費税率が適用されます。
政令で定める取引とは:

汽車、 電車、 乗合自動車、 船舶又は航空機に係る旅客運賃・料金
映画、 演劇、 演芸、 音楽、 スポーツ又は見せ物を不特定かつ多数の者の見せ、 又は聴かせる場所への入場料金
競馬場、 競輪場、 小型自動車競走場又はモーターボート競走場への入場料金
美術館、 遊園地、 動物園、 博覧会の会場その他不特定かつ多数の者が入場する施設又は場所でこれらに類するものへの入場料金

(1) チケットレスサービスにより乗車券等が発行されていない場合
乗車券等の発行の有無は問いませんので、あくまでも施行日前の領収であれば経過措置の適用となります。
(2) ICカードチャージによる乗車券
ICカードチャージ(入金)された時点では、 乗車券等の販売にはなりませんので乗車券等を購入した時点が施行日後であれば経過措置の適用はありません。
なお、 施行日前に販売した定期乗車券等は経過措置の適用となります。
(3) ディナーショーの料金
ディナーショーは、 見せ物を不特定かつ多数の者に見せ、 又は聴かせる場所への入場料金に該当しますので、 経過措置の適用はあります。 なお、 ディナークルーズと称して、 飲食の提供を主目的とするものである場合には経過措置の適用はありません。

(B) 水道光熱費等の特定継続供給等に関する経過措置
事業者が、 継続供給・提供の契約に基づく電気、 ガス、 水道水及び電気通信役務に関して、 施行日前から継続供給・提供しているもの、 その他政令で定める課税資産の譲渡等を施行日から令和元年10月31日までの間に料金の支払が確定するものは、 改正前の旧消費税率が適用されます。 なお、 令和元年10月31日以後に権利が確定する一定のものについては、 政令で定められました。 計量器を定期的に検針することにより、 一定期間の使用量を確認して料金が確定されるような電気供給、 ガス供給、灯油の供給、 水道水等供給・下水道使用、 電気通信役務提供、 熱供給及び温泉供給が対象ですので、 電気通信役務でも提供に係る料金が月毎に定額で定められているものは除かれます。
なお、 令和元年10月31日以後に初めて料金の支払を受ける権利が確定するものであっては(検針期間の間隔が複数月となる場合(例えば、 水道水の検針は通常2ケ月に1回ということの場合等)には)、 確定金額を当該期間月数で除し、 前回検針日から令和元年10月31日までの期間月数を乗じて按分計算することになります(月数計算では1月未満は1月として計算)。
(1) 継続的に供給等することを約する契約の意義
継続供給・提供の契約とは、 対象となる取引を不特定多数の者に対して継続して行うために定められた条件により、 長期的かつ継続的に供給・提供することを約する契約のものをいいます。 これには、 プロパンガスの供給契約でボンベに取り付けられた内容量メーターにより使用量を把握し料金が確定されるものも含まれます。
(2) 料金支払を受ける権利の確定の意義
料金支払を受ける権利が確定するものとは、 使用量を計量器等で定期的に検針その他これに類する行為で確認する方法により、 一定期間における使用量を把握し料金が確定するものをいいます。
(3) 携帯電話の料金
基本料、 付加機能使用料、 及び通話料等を一括して利用者に請求する料金は、 一定期間の通話量に応じて支払が確定しますので経過措置の適用対象です。
なお、 インターネット通信料金等の月々定額料金となっているものは経過措置の適用はありません(料金が一定期間の使用量に応じて変動しないものは適用外となります)。 但し、 料金設定が多段階定額制となっている場合には経過措置の適用対象となります。

(C) 請負工事等に関する経過措置
事業者が、 平成25年10月1日(前回引上げ時の指定日)から平成31年4月1日(「指定日」といいます)の前日(平成31年3月31日)までの間に締結した工事・製造の請負に係る契約(これに類する政令で定める契約を含む)に基づき、 施行日以後に課税資産の譲渡等を行う場合、 改正前の旧消費税率が適用されます(但し、 指定日以後に対価が増額された場合には、 増額前の部分に限ります)。
なお、 この経過措置を提供する場合には、 書面(請求書等)での通知が必要となります。
(1) 工事請負等の係る契約の範囲
(イ) 工事の請負に係る契約
工事の完成を約し、 かつ、 それに対する対価を支払うことを約する契約。
(ロ) 製造の請負に係る契約
製造に係る目的物の完成を約し、 かつ、 それに対する対価を支払うことを約する契約。
なお、 製造製品であっても、 見込み生産によるものはこの契約には含まれません。
(ハ) これらに類する契約
「請負契約に類する政令で定める契約」については、 「測量、 地質調査、 工事の施工に関する調査、 企画、 立案及び監理並びに設計、 映画の制作、 ソフトウエアの開発その他の請負に係る契約(委任その他の請負に類する契約を含む)で、 ①仕事の完成に長期間を要し、 かつ、 ②当該仕事の目的物の引渡しが一括して行なわれることとされているもののうち③当該契約に係る仕事の内容につき相手方の注文が付されているもの」とされています。
この「注文が付されているもの」には、 「建物の譲渡に係る契約で、 当該建物の内装若しくは外装又は設備の設置若しくは構造についての当該建物の譲渡を受ける者の注文に応じて建築される建物に係るものを含む」とされています。 この注文の有りの内容は、 契約書・ 申込書等で明らかにしておく必要があります。
政令では、 「その他の請負に係る契約(委任その他の請負に類する契約を含む)」としてかなり広い範囲を対象にしており、 通達等では以下のように説明されています。

①その他の請負に係る契約




例えば、 修繕や運送、 保管、 印刷、 広告、 仲介、 技術援助、 情報の提供に係る契約、 等
②委任その他の請負に類する契約例えば、 検査、 検定等の事務処理の委託に関する契約、 市場調査その他の調査に係る契約、 等
③仕事の完成に長期間を要するもの上記の①と②のような契約においては、 仕事の完成に長期間を要することが通例であるがゆえの規定ですが、 実際に長期間を要するかは問いません
④仕事の目的物の引渡しが一括して行なわれるもの運送、 設計、 測量など、 目的物の引渡しを要しない請負等の契約では、 約した役務の全部の完了が一括して行なわれたとする要件を満たします。 なお、 月極めの警備保障又はメンテナンス契約のように期間極めの契約の場合には、 約した役務の全部の完了が一括して行なわれたものにはなりませんので要件は満たしません。
次の(イ)、(ロ)のような場合には、 目的物の引渡しが部分的でも一括して行なわれたとする要件を満たすことになります。
(イ) 一の契約により同種の建設工事等を多量に請け負ったような場合で、 その引渡量に応じて工事代金等を収入する旨の特約又は慣習がある場合
(ロ) 一の建設工事等であっても、 その建設工事等の一部が完成し、 その完成した部分を引き渡した都度その割合に応じて工事代金等を収入する旨の特約又は慣習がある場合
⑤相手方の注文が付されている契約とは(イ) 目的物の仕様や規格に相手方の指示が付されている契約
(ロ) 目的物の原材料を相手方が支給することとされている契約
(ハ) 修理又は加工等を目的とする請負等の契約
例えば、 船舶、 車両、 機械、 家具等の制作、 洋服等の仕立て、 広告宣伝用資産の制作、 建物・機械の修繕など修理や加工等を目的とする請負契約ですが、 注文の内容、 注文に係る規模の程度及び対価金額の多寡は問いません。
注文が付されていることを明らかにする方法として、 契約書、 申込書等で明らかにします。
建物の購入者の注文を全く付すことが出来ない青田売りマンションには、 経過措置が適用されません。 なお、 注文を付すことができる青田売りマンションで、 購入者が標準仕様(モデルルーム)を購入された場合、 標準仕様という注文を付したものとして経過措置が適用されます。 青田売りマンションでも、 壁の色やドアの形状等について特別の注文が付すことができるものは、 指定日の前日までに譲渡契約を締結していれば経過措置の適用があります。

(2) 契約書等のない工事
契約書その他の書類を作成しているかどうかは、 この経過措置の適用要件ではありませんが、 契約の締結時期や工事内容が経過措置の適用要件を満たしていることを明らかにするためには作成しておくことが必要となります。
(3) 工事請負の着手日
指定日の前日までに工事の請負契約が締結されていることが適用要件であり、 工事着手日の規制はありません。
(4) 仮契約による契約日の判定
正式な仮契約は、 一種の停止条件付請負契約と考えられこの種の契約も経過措置の対象となります。
(5) 工事の対価等に増額があった場合
工事請負契約に係る対価が指定日以後に増額された場合には、 増額前の部分が経過措置の対象となりますが、 その増額された対価の部分については、 その増額が目的物の引渡し以前に確定した場合にはその引渡しを含む課税期間、 引渡し後に確定した場合にはその確定した日を含む課税期間における消費税の課税基準額に算入することになります。 なお、 ソフトウエアの開発のように、 その役務の提供の性質上、 開発レベル若しくはステップ単位の対価(単価)は定めるが、 その目的物全体の対価の額を定めなかったときに、 その単価の額に増額があったときには、 その増額された部分の金額にその目的物に係る役務の提供量を乗じて計算した金額について新税率の適用となります。
(6) 経過措置適用工事に係る請負金額に増減があった場合
(イ) 最終の請負金額が当初契約の請負金額より少ない場合: 最終の請負金額の全額が経過措置の対象となります。
(ロ) 最終の請負金額が当初契約の請負金額より多い場合: 当初契約の請負金額を超える部分については、 経過措置が適用されません(超過部分には新税率が適用)。
(7) 経過措置の適用を受ける工事のための課税仕入
新消費税率は、 経過措置が適用される場合を除き、 施行日以後に行なわれる資産の譲渡等及び課税仕入等について適用となります。 従って、 経過措置の適用を受ける工事に要する課税仕入であっても、 それ仕入が経過措置の適用を受けるものでない限り、 新消費税率が適用となります。
(8) 取引の合意日と契約書交付日が異なる場合
契約書交付日(作成日)が平成31年4月1日以後であったが、 当事者間での合意日が同年の3月31日以前の場合には、 合意日の日付で判定して差支えないものと考えられています。 これは、 民法での契約の成立時点とは申込と承諾が合致した時(当事者間で合意のあった日)とされているからです。 その場合には、合意内容及び合意日を客観的に説明できる書類・資料(覚書、 確認書、 稟議書、 等)が必要となります。 前述しましたように、 契約書その他の書類を作成しているかどうかは、 この経過措置の適用要件ではありませんがその適用要件を満たしていることを示す何らかの書類・資料は必要となることは言うまでもありません。
(9) 経過措置の適用となる工事の下請業者への発注
経過措置の適用対象となる建設工事を下請業者に発注した場合でも、 下請業者との契約の締結時期や工事内容が要件を満たしているか否かで取引ごとに経過措置の適用有無が判断されることになります。
(10) 中間金に係る適用消費税率
請負工事に係る中間金は、 部分引渡等の所定の条件外のものでは前受金と同様に受領時点では法人税法上益金の額に算入しないとともに、 消費税法上も資産の譲渡等の対価として認識されません。 そのため、 中間金(前受金)を振替える日、 即ち、 資産の引渡日に収益認識及び資産の譲渡等の認識をされることから、 同日時点での対応する消費税率が適用となります。 経過措置の適用があるものは旧消費税率、 経過措置の適用外のものは新消費税率の適当となります。
(11) 請負工事の資産の引渡しが遅れた場合
建設工事の引渡予定日が施行日前のものが完成遅れでその引渡しが施行日後になった場合、 引渡時点での消費税率が適用となります。 従って、 経過措置の適用対象工事であるものは旧消費税率、 経過措置の適用外のものは新消費税率の適当となります。
(12) 未成工事支出金(建設仮勘定も含む)の取扱い
原則は、 課税仕入等をした日(材料費等については引渡しを受けた日、 外注費については作業が完了した日、 等)の属する課税期間において仕入税額控除をおこないます。 但し、 未成工事支出金として資産計上する経理処理した課税仕入等については、 継続適用を条件として、 その工事の目的物の引渡した日に属する課税期間の課税仕入等とすることが認められています。 その場合であっても、 課税仕入ごとに、 それぞれ課税仕入をおこなった日において適用されるべき消費税率により控除対象仕入税額を計算しなければなりません。

(D) 資産の貸付けに関する経過措置
事業者が、 平成25年10月1日から指定日の前日(平成31年3月31日)までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき、 令和元年10月1日前から同日以後引続きその契約に係る資産の貸付けを行なっている場合で、 契約の内容が次の①及び②又は①及び③の要件に該当するときには、 令和元年10月1日以後の資産の貸付けに係る消費税率は、 改正前の旧消費税率が適用されます。 但し、 指定日以後に対価の額に変更があった場合、 変更後の資産の貸付けについては、 改正後の新消費税率が適用されることになります。
① 貸付期間とその間の対価の額が定められていること
② 事情の変更等で対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと
③ 契約期間中にいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがないこと、 並びに当該貸付けに係る資産の取得に要した費用の額及び付随費用の額(利子又は保険料の額を含む)の合計額のうちに、 当該契約期間中に支払われる資産の貸付けの対価の額の合計額の占める割合が90%以上であるように契約で定められていることとされています。
①及び②に該当するのは通常の賃貸借契約、①及び③に該当するのが、 いわゆる平成20年3月31日以前に契約を締結した所有権移転外ファイナンス・リース取引のリース契約ということになります(平成20年4月1日以後に契約を締結した所有権移転外ファイナンス・リース取引は、 売買(資産の譲渡)として「引渡基準」で取扱われるためにこの資産の貸付に係る経過措置が適用されません。 又、 売買とされる所有権移転外ファイナンス・リース取引で、 リース料の増額又は減額された場合においてもその資産の引渡時の消費税率が適用となります(例え、 通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理でも、 当該リース資産の引渡時の消費税率が適用)。 同様に、 中途解約となり賃借人から支払われる残存リース料は、 リース資産の引渡時における消費税率が適用となります。 
「所有権移転外リース取引」とは、 リース取引(①その賃貸借に係る契約が、 その期間中に解除することができないものであること、 ②賃借人がリース資産からの経済的利益を実質的に授受することができ、 かつ、 関連費用も実質的に負担すべきこととされているものであること)のうち、 次のいずれかに該当するもの及びこられに準ずるもの(準ずるものとして、 リース終了後、 無償と変わらない名目的な再リース料で再リースされることが契約で定められているケース)以外のものとされています。  
* リース取引契約無償又は名目的な対価でリース資産が賃借人に譲渡されるものであること
* 賃借人に著しく有利な価額で買い取る権利が与えられているものであること
* その使用可能期間中、 賃借人によってのみ使用されると見込まれるものであること、 又はその目的資産の識別が困難であると認められるものであること
* リース期間がその目的資産の耐用年数に比して相当短いものであること

なお、 この経過措置が適用される場合には、 書面(請求書等にその旨を表示)での通知が必要となります。
(1) 自動継続契約条項のある賃貸借契約
自動継続契約条項があり経過措置が適用中にその解約申出期限を経過して自動更新された場合には、 自動更新から新規のものとして経過措置が適用されません。 一方、 施行日(平成31年10月1日)以前に解約申出期限を経過して自動更新された場合には、 解約申出期限を経過した時に新たな契約の締結の合意とみなされ、 施行日から経過措置の適用はなく新消費税率が適用されることになります。
(2) 貸付期間中の解約条項がある場合
上記③の要件を満たしませんが、 ①と②を満たせば経過措置の適用となります。
(3) 対価の額が定められていることの意義
契約において、 当該契約中の対価の総額が具体的な金額により定められている場合、 又は総額が計算できる具体的な方法が定められている場合をいいます。 しかし、 次のものは該当しない例です。
① 定額料金XX円に売上金額のXX%相当額を加算した金額とする場合
② その年の固定資産税のXX倍とする場合
なお、 貸付期間中に賃借料の変更金額があらかじめ契約で定められている場合には、 「対価の額が定められていること」に該当します。
(4) 一定期間賃貸料の変更が行えない定めがある場合
2年間は賃貸料の変更はできないという定めがある場合には、 その2年間は「対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと」の要件を満たします。 なお、 消費税率の改正があったときには改正後の税率によるという定めは、 「事情の変更等で対価の額の変更を求めることができる旨の定め」には該当しないことになっていますが、 指定日以後に賃貸料を変更した場合には、 変更後の資産の貸付けについては経過措置の対象となりません。
(5) 正当な理由による対価の増減
諸般の事情により当該対価の額が変更(増加又は減額)された場合には、 新たな貸付契約が締結されたものとして変更後は対価の額の全額について経過措置の対象としません。 なお、 賃貸人が修繕義務を履行しない等の正当な理由がある場合には、 この経過措置の不適用の対象とはなりません。
物価変動、 租税公課等の増減を理由とする対価の額の変更は、 正当な理由には該当しません。 殆どの不動産に対する賃貸借契約には、 この様な条項が入っていると思われますので、 この経過措置の対象にはなりません。
(6) 転貸の取扱い
事業者が他の者から資産を借り受け、 当該資産の貸付け(転貸)を行う場合には、 当該転貸を行う者が貸付け資産を取得したものではないことから、 ①及び③の要件を満たしませんので経過措置の対象となりません。 しかしながら、 ①及び②の要件を満たせば経過措置の対象となります。
(7) 施行日を跨ぐ賃貸借契約(不動賃賃貸の貸借料)に係る適用税率
経過措置の対象とならない賃貸借契約で、 令和元年10月分を9月末までに受領した場合には、 令和元年10月分の賃料であり施行日後の資産貸付の対価として新消費税率の適用となります。 逆に、 令和元年9月分を10月1日以降に受領した場合には、 令和元年9月分の賃料であり施行日前の資産貸付の対価として旧消費税率の適用となります。
(8) 短期前払費用処理の取扱い(経過措置の適用とならない場合)
ご存知のように、 毎払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち事業年度終了時までに未だ提供を受けていない役務に対応する費用)の額で、 支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものについて、 継続して支出した事業年度に損金算入している場合には、 その現金主義による処理が認められています。 この短期前払費用処理に伴い、 その役務提供期間が施行日を跨ぐ(旧消費税率と新消費税率の適用がある)ケースでの、 仕入税額控除の処理には、 ①一括処理(仕入対価返還処理)と②前払部分に係る消費税額を翌期に繰延べる仮払金処理も認められます。 短期前払費用処理で留意すべき点は、 課税仕入れ時期は支払時点が認められますが、 その適用の消費税率はあくまでも、 その役務提供時の適用税率となります。 例えば、 9月分までの賃借料は8%の旧消費税率であり、 10月分以後の賃借料は10%の新消費税率で処理しなければなりません。
事務所の賃借料(税抜で月額10,000円と定められている場合)を例示として、
事業年度: 9月30日
賃借期間: 2019年8月1日~2020年7月31日
賃借料: 2019年8月1日~2019年9月30日の期間: 20,000円(プラス消費税8% 1,600円)
2019年10月1日~2020年7月31日の期間: 100,000円(プラス消費税10% 10,000円)
契約日・支払日: 2019年7月31日 131,600円現金払い

短期前払費用経理処理2019年9月末事業年度2020年9月末事業年度
①一括処理(仕入対価返還処理)

借) 賃借料 121,852
仮払消費税 9,748
貸)現金 131,600
借) 賃借料 100,000
仮払消費税10,000
貸)賃借料 101,852
仮払消費税 8,148
②繰延処理: 仮払金処理借) 賃借料 120,000
仮払消費税 1,600
仮払金 10,000
貸)現金 131,600
借) 仮払消費税 10,000
貸)仮払金 10,000

なお、 短期前払費用適用後に税率差2%相当額の追加請求・支払があった場合には、 仕入対価の返還として処理することが認められます。
事務所の賃借料を例示として、
事業年度: 9月30日
賃借期間: 2019年8月1日~2020年7月31日
賃借料: 2019年8月1日~2020年7月31日の期間: 120,000円(プラス消費税8% 9,600円)
2019年10月1日~2020年7月31日の期間対応の税率差2%分2,000円の追加支払
契約日・支払日: 2019年7月31日 129,600円現金払い
2019年10月1日 2,000円現金払い
2019年7月31日仕訳:
借) 賃借料 120,000 貸) 現金 129,600
仮払消費税 9,600
2019年10月1日仕訳:
借) 仮払金 2,000 貸) 現金 2,000
2020年9月30日決算時仕訳:
借) 賃借料 100,000 貸) 賃借料 100,000
仮払消費税 10,000 仮払消費税 8,000 (消費税率8%)
(消費税率10%) 仮払金   2,000

上記の例示の様に賃借料が月極めで1年間契約等が多いと思いますが、 月極めではない場合の適用税率とその支払時の仕訳は以下のようになります。
賃借期間: 2019年8月1日~2020年7月31日
賃貸料: 年間129,600円(税込み) 2019年8月1日支払い
① 原則処理
役務提供の完了時が2020年7月31日となりますので、 この時点の適用税率である10%が消費税率となります。
借) 賃借料 117,819 貸) 現金 129,600
仮払消費税 22,781
② 短期前払費用処理
特例として、 契約又は慣行により、 1年分の対価を収受することとしており継続的に収受時に費用処理しているときは、 その経理処理が認められています。 この場合における役務提供の完了時が2019年8月1日となりますので、 この時点の適用税率である8%が消費税率となります。
借) 賃借料 120,000 貸) 現金 129,600
仮払消費税 9,600

(E) 指定役務提供に関する経過措置
事業者が、 平成25年10月1日から指定日の前日(平成31年3月31日)までの間に締結した役務の提供に係る契約で、 当該契約の性質上役務の提供時期をあらかじめ定めることができないものであって、 役務提供に先立って対価の全部又は一部が分割して支払われる契約として政令で定めるものに基づき、 令和元年10月1日以後その契約に係る役務提供を行う場合において、 更に契約の内容が次の①及び②の要件に該当するときには、 令和元年10月1日以後の役務提供に係る消費税率は、 改正前の旧消費税率が適用されます。 但し、 指定日以後に対価の額に変更があった場合、 改正後の新消費税率が適用されることになります。
① 役務提供の対価の額が定められていること
② 事情の変更等で対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと
政令では、 割賦販売法に規定する前払式特定取引に係る契約で指定役務の提供に係るものとされており、 具体的には、 冠婚葬祭のための施設の提供や葬式のための祭壇の貸与、 その他便宜の提供等に係る役務の提供をいいます。

(F) 予約販売に係る書籍等に関する経過措置
事業者が、 指定日前(平成31年4月1日前)に締結した不特定かつ多数の者に対する定期継続供給契約に基づき譲渡する書籍その他の物品に係る対価の全部又は一部を施行日前(令和元年10月1日前)に領収している場合において、 その書籍等の譲渡を施行日(以令和元年10月1日)後に行うときは、 その領収した対価に係る部分の書籍等の譲渡については旧税率が適用されます。
なお、 「定期的に継続して供給する」とは、 週、 月、 年その他の一定の周期を単位とし、 概ね規則的に継続して供給することをいいます。
「定期継続供給契約」とは、 一定の種類のものを一定の代金で引続いて供給する契約が該当し、 書籍その他の物品には、 雑誌等の定期刊行物や百科事典等の書籍の他に食料品、 健康食品、 化粧品、 装花等も含まれます。 なお、 雑誌等のデジタル版は役務の提供に該当するものとして対象外となっています。
指定日前に締結した契約でも、 毎月物品を発送し、 発送の都度代金を決済する場合には、施行日(令和元年10月1日)以後に代金決済するものから経過措置の対象外となります。
* 軽減税率が適用される取引については、本経過措置の適用はありません。

(G) 通信販売等に関する経過措置
通信販売(不特定かつ多数の者に商品の内容、 販売価格その他の条件を提示し、 郵便、 電話その他の方法により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う商品の販売をいいますが、 予約販売契約のものを除く)の方法により商品を販売する事業者が、 指定日前(平成31年4月1日前)にその販売価格等の条件を提示し、 又は提示する準備を完了した場合において、 施行日前(令和元年10月1日前)に申込みを受け、 提示した条件に従って施行日(令和元年10月1日)以後に商品を販売(通信教育等の役務の提供も含む)するときは、 その商品の販売については旧税率が適用されます。
(1) 不特定かつ多数の者に販売条件を提示することの範囲
一般に、 新聞、 テレビ、 チラシ、 カタログ、 インターネット等の媒体を通じて購読者又は視聴者等に対して販売条件を提示することをいいます。 相当数で固定的でないことが対象であり、 訪問面談により販売条件を提示することは含まれません。
(2) 提示する準備を完了した場合の範囲
販売条件等を提示方法に応じ、 いつでも提示することができる状態にある場合をいいますが、 販売条件等を掲載したカタログ等の印刷物の作成を完了した場合等が該当します。
(3) 指定日前までに条件を提示したことの証明
客観的に説明できる状態であることが重要です。 例えば、 インターネット上で販売条件を提示している場合、 指定日前(平成31年3月31日)までに提示した内容を書類等で残す等の事後的に確認できるように証跡を残しておく必要があります。 当然の事ながら、 提示した販売条件が指定日以降に変更された場合には、 経過措置の対象外となります。
(4) 経過措置の対象となる商品について新税率を適用して請求した場合
結果として、 経過措置上の「提供した条件に従う」という要件を満たさないことになることから、 経過措置の適用はなく新消費税率を適用して計算を行うことになります。
* 軽減税率が適用される取引については、本経過措置の適用はありません。

(H) 特定新聞に関する経過措置(施行日後に販売される雑誌を除く)
事業者が、 不特定かつ多数の者に週、 月、 その他の一定の期間を周期として定期的に発行される新聞で、 発行者が指定する発行日が施行日前(令和元年10月1日前)であるもの(特定新聞)を施行日(令和元年10月1日)以後に譲渡する場合、 その譲渡については旧税率が適用されます。 経過措置から雑誌が除かれましたので、 雑誌は販売日に関係なく令和元年10月1日以後に販売されるものから新税率10%が適用されることになります。
* 軽減税率が適用される取引については、本経過措置の適用はありません。

(I) 有料老人ホームの一時金に関する経過措置
事業者が、 平成25年10月1日から指定日の前日(平成31年3月31日)までの間に締結した有料老人ホームに係る一定の終身入居契約で、 介護に係る役務提供の対価が一時金として支払われ、 事業者の都合で一時金の額の変更ができる旨の定めがないものに基づき、 施行日前(令和元年10月1日前)から施行日以後引続き介護に係る役務の提供を行なっている場合には、 施行日(令和元年10月1日)以後に行なわれる当該入居一時金に対応する役務の提供については旧税率が適用されます。 なお、 指定日以後に当該一時金の額の変更が行なわれた場合には、 変更後に伴う役務の提供については、 この経過措置は適用されません。

(J) 長期割賦販売等に関する資産譲渡等の時期の特例を受ける経過措置
既に、税制改正により収益認識基準の見直しにより長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等について延払基準により資産の譲渡等の対価の額を計算する制度が廃止となっています。ただ、平成30年4月1日前に長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等を行った事業者について5年間、現行制度を適用できるとともに、平成30年4月1日以後に終了する課税期間において延払基準の適用をやめた場合は、賦払金の残高を10年均等で資産の譲渡等の対価の額とする等の経過措置が講じられています。
従って、延払基準を廃止した場合及び経過措置を適用した場合のいずれであっても、資産の引渡しが令和元年9月30日までに行われているものについては、賦払金の支払日が令和元年10月1日以降でも旧税率8%が適用となります。

(K) 長期大規模工事等に関する資産譲渡等の時期の特例を受ける経過措置
事業者が、 指定日から施行日の前日までの間に締結した消費税法第17条第1項に規定する長期大規模工事又は同条第2項に規定する一定の工事の請負契約に基づき、 施行日以後に目的物の引渡しを行う場合において、 当該工事の対価の額につき、 工事の着手日から施行日の前日までの期間に対応する部分の対価の額、 並びに下記に示す政令で定めるところにより計算した金額に係る部分の課税資産の譲渡等に係る消費税率は、 改正前の旧消費税率が適用されます。
旧消費税率が適用される部分の算式は以下のようになります。
長期工事に係る対価の額に、 令和元年9月30日の現況による当該長期工事の見積原価価額のうちに当該長期工事から令和元年9月30日までの間に支出した原材料費、 労務費その他経費の額の合計額の占める割合を乗じて計算した金額(工事進行基準により計算された金額)。
事業者は、 その相手方に当該目的物の引渡しがこの経過措置の適用を受けたものであること及び適用を受けた部分に係る対価の額を書面で通知する必要があります。

(L) リース取引等に関する資産譲渡等の時期の特例を受ける経過措置
(1) リース延払基準の方法により経理した場合の長期割賦販売等に係る資産譲渡等の時期の特例を受けないこととなった場合の経過措置
事業者が所定のリース譲渡(売買取引としての資産の譲渡)に該当しリース延払基準の方法により経理した場合の長期割賦販売等に係る資産譲渡等の時期の特例を受けた場合において、 リース譲渡を行なった日を含む課税期間に資産譲渡等を行わなかったものとしてリース譲渡収益は繰延べられ、 各事業年度にリース譲渡延払収益が計上されることになっています。 この取扱いで、 このリース譲渡が施行日前に行なわれたものでリース譲渡延払収益額が存在している場合には、 その延払収益額に対しては経過措置の適用となり改正前の旧消費税率が適用されます。
(2) リース譲渡に係る資産譲渡等の時期の特例を受けないこととなった場合の経過措置
事業者が所定のリース譲渡(売買取引としての資産の譲渡)に該当し、 リース譲渡に係る資産譲渡等の時期の特例を受けた場合において、 リース譲渡を行なった日を含む課税期間に資産譲渡等を行わなかったものとしてその後のリース期間にリース譲渡収益は繰延べられことになっています。 この取扱いで、 このリース譲渡が施行日前に行なわれたものでリース譲渡収益額が存在している場合には、 その繰延収益額に対しては経過措置の適用となり改正前の旧消費税率が適用されます。

(M) 家電リサイクル料金に関する経過措置
家電リサイクル法4条に規定する製造業者等が、特定家庭用機器廃棄物の再商品化等に係る対価を施行日(2019年10月1日)前に領収している場合、その対価の領収に係る課税資産の譲渡等(再商品化等)を施行日(2019年10月1日)以後に行うときは、その課税資産の譲渡等について、旧消費税率が適用されます。

(N) 施行日と一部施行日における経過措置の各指定日
消費税率アップの時期(施行日)別に経過措置の指定日が決められています。 上記の経過措置に関する説明は、 令和元年10月1日からの税率10%になる段階でのものを指しています。

消費税率8%へ変更消費税率10%へ変更
平成26年4月1日が「施行日」 令和元年10月1日が「一部施行日」
「施行日」の半年前の平成25年10月1日が経過措置における「指定日」「一部施行日」の半年前の平成31年4月1日が経過措置における「指定日」

なお、 来る令和元年9月30日に決算期を迎えられる法人においては、 消費税率10%となる取引対象のものがあっても10%を適用することはできませんので、 その場合には一旦8%で処理を行い翌期に修正する等の処理が必要となります。

2019年9月29日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

基準地価 2年連続上昇 地方、中核4市6.8%伸び

国土交通省が19日発表した2019年7月1日時点の基準地価は前年比0.4%の上昇となり、2年連続のプラスになった。 地方圏の商業地は0.3%上昇し、バブル期の終わった1991年以来28年ぶりに前年を上回った。
2019年基準地価の変動率(7月1日時点、 前年比%、 ▲は下落):

地域住宅地商業地全用途
2019年前年2019年 前年2019年前年
全国平均▲0.3▲0.31.7 1.1 0.40.1
三大都市圏0.9 0.7 5.2 4.22.11.7
東京圏1.1 1.0 4.9 4.0 2.2 1.8
大阪圏0.3 0.1 6.8 5.4 1.9 1.4
名古屋圏1.0 0.8 3.8 3.3 1.9 1.5
地方圏▲0.5 ▲0.80.3 ▲0.1 ▲0.3 ▲0.6
中核地方4市4.9 3.9 10.3 9.2 6.8 5.8

公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。

 公示地価基準地価路線価固定資産税評価額
調査主体国土交通省都道府県国税庁市町村
調査地点数 約26,000 約21,600約336,000 多数
調査時点1月1日 7月1日 1月1日 1月1日(原則3年に1回、 次回は2021年)
公開時期3月 9月 7月又は8月 3月
公開サイト国交省(土地総合情報ライブラリー)国交省(土地総合情報ライブラリー) 国税庁資産評価システム研究センター
その他調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。調査対象は地方の調査地点が多く、 不動産鑑定士の評価を参考に調査し、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から 相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準

2019年9月20日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant