老後の資産形成方法(主にイデコ)の検証

最近のニュースの中で国の公的年金だけでは老後の生活資金が2千万円不足するとかということが話題となりました。確かに、現行の年金受給金額からすれば、大多数の方は、計算上では年金受給金額だけでは、生活資金が不足することは否定できないところです。その為に、老後資金・資産を十分に確保するには自助努力が欠かせないところです。各種の資産形成方法がありますが、以下では税制上優遇のある年金等を中心に列挙しますが、その中で最近存在感が高まっている確定拠出年金の個人型(イデコ)を含めて紹介してみたいと思います。

1.年金・退職金制度
(1)公的年金(国の組織運営)
① 国民年金(老齢基礎年金、遺族基礎年金、障害基礎年金)
国民年金基金(任意加入)
② 厚生年金(老齢厚生年金、遺族厚生年金、障害厚生年金)
(2)企業年金(企業の組織運営)
① 確定拠出年金(企業型):下記4を参照
② 確定給付年金
③ 厚生年金基金(厚生年金の上乗せ部分)
④ 中小企業退職金共済制度(中退共制度)
⑤ 中小企業主掛金納付制度(イデコプラス):下記4を参照
⑥ その他退職金制度
(3)個人年金(個人の組織運営)
① 確定拠出年金(個人型:イデコ):下記4を参照
② 貯蓄型個人年金保険
③ 小規模企業共済(個人事業)

2.有価証券投資運用
(1)特定口座取引・一般口座取引
(2)少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税制度
① 少額投資非課税制度(NISA)
② 少額投資累積非課税制度(積立NISA)
③ 未成年者少額投資非課税制度(子供版ジュニアNISA) 
最近、税制優遇のあるNISAの口座数が約1,200万口座になっています。

3.その他
他にも様々はものがあり、身近なものでは、不動産投資、暗号資産(仮想通貨)投資、先物・FX取引、等があります。

4.確定拠出年金(DC)の概要:個人型(イデコ)
確定拠出年金とは、確定拠出年金法を根拠に私的年金であり、個人の加入者が所定の掛金額を納め、その資金の運用を個人自身が指示してその運用の結果総額を将来受給するものです。この確定拠出年金には、企業型と個人型があります。

 企業型 個人型(イデコ)
定義確定拠出年金制度を設ける会社が掛金を毎月積立て(拠出)し、従業員が自ら年金資産の運用を行う制度です。個人が積極的に老後の資産形成を図ろうとする制度です。このイデコと呼ばれる確定拠出年金は、金融機関(運営管理機構)を個人で選択して、掛金限度額の範囲内で掛金額を決めて、国民年金基金連合会に定期的に積み立て行くことになるものです。
加入対象者確定拠出年金制度を設けている企業の従業員(国民年金の第2号被保険者)①自営業、学生等の20歳以上60歳未満の方(国民年金の第1号被保険者)
②専業主婦・主夫、パート労働者等の20歳以上60歳未満の方(国民年金の第3号被保険者:厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている方)
③会社員、公務員の60歳未満の厚生年金の被保険者の方(国民年金の第2号被保険者)
加入者数直近で約720万人と増加傾向(対象会社員の約2割加入)直近で約130万人と増加傾向(2017年に専業主婦、公務員等の加入対象を拡大)
掛金月額5,000円から1,000円単位で選択し、掛金は年1回変更可能で、60歳まで積立できます。
月額掛金限度額年額掛金限度額月額掛金限度額年額掛金限度額
他の企業年金が無い場合55,000円660,000円①自営業等68,000円816,000円
他の企業年金と組合せている場合27,500円330,000円②専業主婦等23,000円276,000円
③会社員(注2)

会社に企業年金制度が無い
23,000円276,000円
(注1) 企業型確定拠出年金加入者について、 その者が①マッチング拠出を行なわないこと及び②個人型確定拠出年金制度の加入者になることができることについて、 企業型確定拠出年金の規約の定めがある場合にのみ個人型確定拠出年金制度の加入者を可能とします。 その場合の企業型確定拠出年金制度の年間拠出限度額は、 下記の金額となります。③会社員(注1)企業型確定拠出年金加入者(他の企業年金がない場合)(注1)
20,000円240,000円
③会社員(注1)企業型確定拠出年金加入者(他の企業年金がない場合)(注1)
12,000円144,000円
③会社員・公務員確定給付型年金のみ加入者及び公務員等共済加入者
12,000円144,000円
月額掛金限度額年額掛金限度額
他の企業年金が無い場合35,000円420,000円
他の企業年金と組合せている場合15,500円186,000円
税制優遇①掛金積立時:全額が会社の経費(損金)
②運用時:運用益は非課税
③受給時(原則、60歳以降):
イ 年金として受給(65歳以降):雑所得として公的年金等控除の適用
ロ 一時金として受給:退職所得として退職所得控除の適用
①掛金積立時:全額が社会保険料控除対象
②運用時:運用益は非課税
③受給時(原則、60歳以降):
イ 年金として受給(65歳以降):雑所得として公的年金等控除の適用
ロ 一時金として受給:退職所得として退職所得控除の適用
イデコプラス(注2)イデコの個人加入者に対して、会社(対象は、会社に企業年金制度が無い従業員100人以下の企業)が掛金(中小事業主掛金)を上乗せし、従業員の老後の資産形成を支援するものです。この場合、月額掛金限度額は、中小事業主掛金と個人加入者掛金の合計額は、23,000円となります(個人加入者掛金が既に23,000円の場合には、中小事業主掛金の上乗せはできません)。
掛金納付は、個人加入者掛金分は給与天引し、これに中小事業主掛金を加えて会社が国民年金基金連合会に行います。
確定拠出年金デメリット確定拠出年金制度のデメリットもありますので、制度内容をよく検討し選択する必要があります。
①受給開始は早くて60歳以降になります(60歳まで引出不可)。又、途中で積立てをストップすることは可能ですが、その場合でも60歳までは、所定の管理手数料を負担する必要があります。又、「60歳」から受取れるのは、確定拠出年金の加入期間が「10年以上」の場合に限られます(10年未満は所定の受給年齢が決まっています)。同時に、加入・積立が、60歳未満という条件があり、中高年の方には不向きな面があります。なお、積立運用は最長90歳までは可能。
②リスクの高い商品に投資している場合、運用益も高くなることもありますが、逆に運用損になり積立掛金額よりも下回り、いわゆる元本割れとなるリスクがあります。又、途中での株式等の損失は申告分離課税等を適用できません。
③企業型確定拠出年金は、持運び可能ですが、転籍先企業に当該年金制度が無い場合には、個人型に移行するしかありません。
④金融機関(運営管理機構)ごとに取扱い商品が異なり、個人が希望する商品を選択することができない場合もあります。
2019年8月16日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant