寄附金控除(個人版)

ふるさと納税を行う人が増えていますが、 これも寄附金ということで税制上では、 税負担の軽減が図られています。 以下では、個人からの寄附行為に対する税務上の取扱いを確認したいと思います。

1.税務上の寄附金控除(所得控除と税額控除)とは

寄附金控除の適用を受けるには、寄附の相手先が「特定寄附金」の対象として認められていることが必要となります。 「特定寄附金」に該当すれば所得から一定の寄附金額を控除できるという「所得控除」が認められ、更にその中で一定の寄附金に該当しますと、所得控除に代えて、税額から一定金額を控除できるという「税額控除」を選択することができます。

2.「特定寄附金」の主な範囲

(1)国又は地方公共団体に対する寄附金

ふるさと納税もここに含まれます。

(2)指定寄附金

公益を目的とする事業法人(公益社団法人、公益財団法人等)、又は一定の要件を満たす団体に寄附するもののうち、財務大臣が指定した緊急性を要するものとした寄附金

(3)政治活動に関する寄附金

(4)特定公益増進法人に対する寄附金

公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、一定の学校法人等

(5)認定特定非営利法人等(認定NPO法人等)に対する寄附金

3.「税額控除」対象の寄附金と税額控除額

税額控除を税務上では「特別控除」という表現で規定しており、以下のものがあります。

① 政党等寄附金特別控除

特定の政治献金のうち、政党や政治資金団体へ寄附された場合の税額控除額

(イ)年間の政党等特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)

(ロ)上記(イ)X 30%

(ハ)所得税額 X 25%

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 政党等寄附金特別控除

② 公益社団法人等寄附金特別控除

一定の要件を満たす公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、学校法人、国立大学法人、公立大学法人等へ寄附をされた場合の税額控除額

(イ)年間の公益社団特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)

(ロ)上記(イ)X 40%

(ハ)所得税額 X 25%(注2)

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 公益社団法人等寄附金特別控除

③ 認定NPO法人等寄附金特別控除

一定の要件を満たす認定NPO法人へ寄附された場合の税額控除額

(イ)年間の認定NPO特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)

(ロ)上記(イ)X 40%

(ハ)所得税額 X 25%(注2)

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 認定NPO法人等寄附金特別控除

注1:この控除対象寄附金額(総所得金額等の40%相当額)及び控除適用下限額(2千円)の判定は、 所得控除対象の寄附金額及び税額控除対象の寄附金額と合わせて総合計でおこないます。

注2:この判定は、公益社団法人等寄附金と認定NPO法人等寄附金との合計でおこないます(政党等寄附金は含まず別枠での判定)。

 

上記の①~③の特定寄附金に該当された場合には、当該税額控除と下記の所得控除の有利な方をそれぞれ選択適用することができます。

4.「所得税寄附金控除」の計算

ふるさと納税(税額控除の適用は認められません)等の特定寄附金には寄附金所得控除額が認められていますが、その計算式は次のとおりです。

(イ)年間の特定寄附金合計額(注1)

(ロ)総所得金額等 X 40%

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額

(ニ)上記(ハ)の金額 - 2千円 = 寄附金所得控除額

(ホ)所得税の軽減税額

寄附金所得控除額 X 所得税率 X 1.021%

5.「住民税寄附金税額控除」の計算

上記では、所得税における寄附金の控除についてでしたが、同時に住民税におきましても特定の寄附金に対しては寄附金控除が認められています。 例えば、次の様な寄附金が対象となります。

① 都道府県・市区町村へのふるさと納税

② 住所地の日本赤十字社支部

③ 住所地の都道府県共同募金会

④ 住所地の都道府県が条例で指定する社会福祉法人

⑤ 住所地の都道府県・市区町村ともに条例で指定する認定NPO法人

なお、住民税においての控除方式は、税額控除のみとなっています。 住民税は、都府県民税と市町村民税とに分かれ、寄附金も特定寄附金になるものか否かは条例により異なりますので別々に計算する必要があります。

(1)住民税基本控除分

(イ)年間の都府県、市町村又は特別区等への特定寄附金合計額

(ロ)総所得金額等の30%相当額

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額

(ニ)上記(ハ)の金額 - 2千円

(ホ)上記(ニ)の金額 X 10%(都府県民税4%、市町村民税6%:平成30年度分より2%と8%に標準税率の変更)= 住民税基本控除分

(2)住民税特例控除分

(イ)年間の都府県、市町村又は特別区への特定寄附金合計額 - 2千円

(ロ)上記(イ)の金額 X (90% - 所得税率 X 1.021 X 5/5(都府県民税2/5、市町村民税3/5:平成30年度分より1/5と4/5に変更))

(ハ)住民税所得割額 X 20%相当額

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 住民税特例控除分

(3)住民税の寄附金税額控除額 = (1)+ (2)

6.寄附金限度額の計算

ふるさと納税でよく言われるのが、寄附金額から2千円控除した金額の全てが税金計算上、控除されることになるということですが、 これは正しいでしょうか。 これまでの寄附金の限度計算では、総所得金額等(注3)の40%或いは30%、又は住民税所得割額(注4)の20%が限度という算式がありましたので、寄附金には所得金額の多寡により一定の寄附金額控除に限度があることが分かります。 上記から、

寄附金限度額 = 個人住民税所得割額X 20%÷(90%-所得税率X1.021) + 2千円

の算式が導かれます。 ご存知の様に所得税率は、累進税率の7段階に分かれていますので、次の表が寄附金限度額の目安となるかと思います(但し、申告分離課税のみの場合ではなく、総合課税と申告分離課税も含む場合の適用時における目安)。

所得税の課税所得額 所得税率 寄附金限度額
195万円未満 5% 個人住民税所得割額 X 23.558% + 2千円
195~330万円未満 10% 個人住民税所得割額 X 25.065% + 2千円
330~695万円未満 20% 個人住民税所得割額 X 28.743% + 2千円
695~900万円未満 23% 個人住民税所得割額 X 30.067% + 2千円
900~1,800万円未満 33% 個人住民税所得割額 X 35.519% + 2千円
1,800~4,000万円未満 40% 個人住民税所得割額 X 40.683% + 2千円
4,000万円以上 45% 個人住民税所得割額 X 45.397% + 2千円

注3:総所得金額等とは

所得税計算での総合課税所得金額及び申告分離課税所得金額を合算し、かつ、各種の繰越損失控除を使用していた場合には、その使用額を加算(控除前に戻す)したところの所得金額。

注4:住民税所得割額とは

住民税計算での課税所得金額に税率を乗じた税額(総合課税に係る税額控除前所得割額と分離課税に係る税額控除前所得割額との合計額)から調整控除額(通常2,500円)を控除した後の税額。

 

例えば、給与所得500万円、社会保険料50万円、基礎控除38万円(住民税では33万円)の場合の人が、ふるさと納税30万円を行った場合と行わなかった場合の所得税及び住民税は以下のようになります。

(1)ふるさと納税30万円を行わなかった場合

① 所得税額

5,000,000 - (500,000 + 380,000) = 4,120,000

(4,120,000 X 20% - 427,500) X 1.021 = 404,826 à 404,800(所得税額)

② 住民税額

5,000,000 - (500,000 + 330,000) = 4,170,000

4,170,000 X 10% = 417,000円(住民税額)

(2)ふるさと納税30万円を行った場合

① 所得税額

(イ)特定寄附金合計額 300,000

(ロ)5,000,000 X 40% = 2,000,000

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額 300,000

(ニ)300,000 - 2,000 = 298,000寄附金所得控除額

(ホ)所得税額

5,000,000 - (500,000 + 298,000 + 380,000) = 3,822,000

(3,822,000 X 20% - 427,500) X 1.021 = 343,974 à 343,900 (所得税額)

(へ)寄附金による所得税額の軽減税額

寄附金所得控除額 X 所得税率 X 1.021 = 298,000 X 20% X 1.021 = 60,900円

② 住民税額

(1)住民税基本控除分

(イ)特定寄附金合計額 300,000

(ロ)5,000,000 X 30% = 1,500,000

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額 300,000

(ニ)300,000 - 2,000 = 298,000

(ホ)298,000 X 10% = 29,800

(2)住民税特例控除分

(イ)特定寄附金合計額300,000 - 2,000 = 298,000

(ロ)298,000 X (90% - 20% X 1.021) X 5/5(都府県民税2/5、市町村民税3/5)= 207,348

(ハ)住民税所得割額 (4,170,000 X 10% - 2,500) X 20% = 82,900

(二)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 82,900

(3)住民税の寄附金税額控除額 = 29,800 + 82,900 = 112,700円

(4)住民税額

5,000,000 - (500,000 + 330,000) = 4,170,000

4,170,000 X 10% - 112,700 = 304,300円(住民税額)

③ 所得税・住民税への軽減税額

所得税60,900 + 住民税112,700 = 173,600円

④ 寄附金限度額

以上の寄附額300,000円の例からは、 制限・上限に該当となるケースでしたが、 該当しない寄附額はいくらであったかは、 以下の計算で算出できます。

個人住民税所得割額X 20% ÷ (90% - 所得税率X 1.021)+ 2,000 = 414,500 X 20% ÷ (90% - 20% X 1.021) + 2,000 = 240,286円

計算結果から、 240,286円相当額が制限・上限に触れることのないレベル、 即ち、寄附金限度額ということになります。

2017年3月26日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

ふるさと納税 返礼上限3割に

総務省はふるさと納税の返礼品の価格について、寄付額の3割までに抑えるように全国の地方自治体に要請する。 自治体が寄附金を集めるために高額すぎる返礼品を競って導入しているため。

4月1日付けで全国の自治体に通知する。 通知に強制力はないが、明らかに寄付額の3割を超える返礼品を出す自治体に対しては、総務省が個別に見直しを求める。 今回の目安を示すことで多くの自治体が返礼品を見直すとみられる。

2017年3月23日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant

住宅地9年ぶり上昇 公示価格、低金利が支え

住宅地の価格の下げ止まり基調が鮮明になってきた。 国土交通省が21日発表した2017年1月1日時点の公示価格は全国の住宅地が前年比0.022%プラスと9年ぶりに上昇に転じた。 景気の緩やかな回復や低金利を背景に、 先に上昇した商業地を追う。 全用途は0.4%プラスと2年続けて上昇した。 地方への波及が息長く続くかが焦点だ。

 

2017年公示地価の変動率(1月1日時点、 前年比%、 ▲は下落):

 

地域

住宅地 商業地 全用途
前年 2017年 前年 2017年 前年 2017年
全国平均 0.2 0.022 0.9 1.4 0.1 0.4
三大都市圏 0.5 0.5 2.9 3.3 1.1 1.1
東京圏 0.6 0.7 2.7 3.1 1.1 1.3
大阪圏 0.1 0.0 3.3 4.1 0.8 0.9
名古屋圏 0.8 0.6 2.7 2.5 1.3 1.1
地方圏 0.7 ▲0.4 0.1 ▲1.4 0.7 ▲0.3

 

公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。

  公示地価 基準地価 路線価 固定資産税評価額
調査主体 国土交通省 都道府県 国税庁 市町村
調査地点数 約26,000 約21,700 約334,000 多数
調査時点 1月1日 7月1日 1月1日 1月1日(原則3年に1回、 次回は2018年)
公開時期 3月 9月 7月又は8月 3月
公開サイト 国交省(土地総合情報ライブラリー) 国交省(土地総合情報ライブラリー) 国税庁 資産評価システム研究センター
その他 調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格(更地価格)の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。 調査対象は地方の調査地点が多く、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から 相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準 土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準

 

2017年3月22日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant

残業上限「100時間未満」

政府が進める働き方改革の柱である残業時間の上限規制を巡り、 繫忙月に例外として認める残業を「100時間未満」とすることが固まった。

  1. 時間外労働の上限は、 原則、 月45時間で年間では360時間
  2. 残業特例

(1) 労使協定を結べば年720時間(月平均60時間)まで可能

(2) 2~6カ月平均で80時間以内を順守

(3) 繫忙期は月100時間を基準値とする

(4) 月45時間を上回る特例の適用は年6回まで

2017年3月14日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant