2024年分の年末調整について

1.年末調整とは
サラリーマンの方は11月に年末調整の書類を整理して会社に提出する時期となります。会社等の給与支払者(源泉徴収義務者)は、給与等の支払時に所定の源泉所得税を徴収しています。この源泉所得税は事前の条件下での計算に基づくものであり、一種の仮計算による前払税金ですので、この仮計算を最終状況に基づいての再計算(年税額を確定する手続)が年末調整です。具体的には、給与支払者は暦年(1月~12月)の総給与額に対して12月の最終給与支払日に最終状況(配偶者・扶養親族、等)に基づいて再計算し、徴収していた総源泉所得税の過不足を調整(精算)します。

2.提出すべき申告書
年末調整の為に提出が求められる申告書とその中に記載される控除項目は以下のとおりです。 当該控除項目以外に所得から控除可能な項目がある場合にはそれらの項目は確定申告で行うことになります。

申告書の名称控除項目
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書扶養控除、 障害者控除、 ひとり親控除、寡婦控除、 勤労学生控除
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、所得金額調整控除
注:基礎控除申告書により合計所得金額が1,805万円超か否かを確認する
給与所得者の保険料控除申告書生命保険料控除(一般生命・介護医療・個人年金)、 地震保険料控除(申告分)、 社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除(申告分)
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(2年目から年末調整の対象で初年度は確定申告が必要)

3.年調減税額の控除フロー
2024年度は6月1日以降の給与等の支給時に定額減税を実施してきていますが、年末調整時に再計算による精算を行うことになります。対象者は、年末調整の対象者と同じですが、但し、給与所得と他の所得を含めた合計所得金額が1,805万円超になることが見込まれる人は、年末調整時の定額減税額(年調減税額)はゼロ(対象外)となります。
(1) 給与所得控除後の給与等金額
(2) 各所得控除の金額
(3) 課税所得金額(1-2):1,000円未満切捨て
(4) 算出所得税額
(5) (特定増改築等)住宅借入金等特別控除
(6) 年調所得税額(4-5)
(7) 年調減税額
(8) 年調減税額控除後の年調所得税額(6-7)
(9) 年調年税額(8×102.1%):100円未満切捨て 

4.源泉徴収票の摘要欄への記載
(1)実際に控除した年調減税額ある場合:
「源泉徴収時所得税減税控除済額 XXX円」
(2)年調減税額のうち年調所得税額から控除しきれなかった金額がある場合:
「控除外額 XXX円」
又は、控除しきれなかった金額がない場合:
「控除外額 0円」

以下の様に源泉徴収票の摘要欄に控除した額等を記載します。
A 年末調整の対象者(給与収入が2千万円以下の納税者)
① 年末調整を行った一般的なケース
源泉徴収時所得減税額控除済額 120,000円、控除外額0円
源泉徴収時所得減税額控除済額 73,600円、控除外額46,400円
② 非控除対象配偶者分(従業員の合計所得金額が1千万円超では、配偶者控除<給与収入が103万円以下>・特別控除<給与収入が188万円以下>の対象にならないが、同一生計配偶者として定額減税対象となっている配偶者有り:非控除対象配偶者)の定額減税の適用を受けたケース
  源泉徴収時所得減税額控除済額 120,000円、控除外額0円
  非控除対象配偶者減税有
③ 非控除対象配偶者(上記②と同様に従業員の合計所得金額が1千万円超)であり、かつ障害者に該当するケース
  源泉徴収時所得減税額控除済額 120,000円、控除外額0円
  減税有 氏名XXXX(同配)
④ 年末調整の対象となるが定額減税の適用を受けないケース
源泉徴収時所得減税額控除済額 0円、控除外額0円
⑤ 同一生計配偶者が扶養配偶者内(合計所得金額が48万円以下)で勤務されている配偶者のケース
源泉徴収時所得減税額控除済額 0円、控除外額30,000円
B 年末調整の対象者(給与収入が2千万円超の納税者)
⑥ 源泉徴収票の摘要欄に記載不要

2024年11月15日

フリーランス保護 厳格に

公正取引委員会は12日、ライターやカメラマンの原稿料などを不当に引き下げたのは下請法違反にあたるとして、出版大手のKADOKAWAと子会社に再発防止などを求める勧告を出した。
11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス保護法)が施行され、フリーランスが安定的に働く環境を整備する目的で制定されたもので、事業者(発注元)はフリーランスに対して業務委託した場合には、発注先に業務内容や報酬額等の取引条件を書面やメールで明示することを義務付けや禁止行為等の順守すべき7項目が定められています。この「フリーランス」とは、業務委託の相手方(発注先)で次の事業者となっています。
1. 個人の場合で従業員を使用していない。
2. 法人の場合で代表者1名以外に従業員を使用していない。
この従業員の使用とは、1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ、継続して31日以上雇用することが見込まれる労働者を雇用するというものであり、事業に同居親族のみを使用している場合には、従業員の使用に該当しません。なお、法人において、他に同居親族役員がいるこの場合には、従業員の使用に該当することになります。
このフリーランス保護法は、業種・業界に限定されることなく、従業員を雇用せずに一人の個人として業務委託を受ける事業者に適用されるものとなっています。

「106万円の壁」撤廃へ 厚生年金の対象拡大

厚生労働省が月額88千円(年額106万円)以上とするパート労働者の厚生年金適用要件を撤廃する方向で調整に入った(2025年の制度改正で撤廃する方針)。労働時間が週20時間未満で働くとこれまでの労働時間要件は残し社会保険の適用対象外となる見込みです。
現在、所得税が課税される、いわゆる「103万円の壁」問題が議論されていますが、同時に社会保険料の負担問題の壁も合せて議論されることになるでしょう。

配偶者の給与収入額(年収)住民税の課税所得税の課税社会保険料の負担配偶者特別控除の減額(注1)
188万円超有り控除の適用無し
188万円以下150万円超有り
150万円以下130万円超有り無し
130万円以下106万円超有り従業員数51人以上会社:有り無し
106万円以下103万円超有り無し
103万円以下100万円超有り無し
100万円以下無し

注1:配偶者特別控除額は、給与所得者とその配偶者の各合計所得金額の組合せで決まりますが、給与所得者の合計所得金額が1,000万円超(給与収入額では1,195万円超)には、配偶者特別控除の適用は無く控除額はありません。又、配偶者の給与収入額が150万円超から188万円以下の間で段階的に配偶者特別控除額が減少していきます。

住宅・家財の被災での雑損控除

2024年度も地震、台風、豪雨等の災害により住宅家財等(生活の必要となる資産であることから、保養などの目的で保有する別荘などの不動産や、1個または1組が30万円を超える貴金属、絵画、骨董は対象になりません)に大きな損害が生じた方が多いかと思います。その様な損害に対して、確定申告を行うことで一定の雑損控除により税金(所得税・住民税)の還付や軽減される場合があります。
1.雑損控除とは
住宅家財等に災害又は盗難若しくは横領により損失を生じた場合、 又は災害関連支出金額がある場合に所得控除となる一定の雑損控除が認められます。
2.雑損控除金額
次の①と②のいずれか多い金額。
① 損失の金額(注1)―(年間所得金額 X 10%)= ①の金額
② 災害関連支出金額(注3)―補てんされた保険金等― 50,000円 = ②の金額
注1: 損失の金額とは、
(被災直前の時価―被災直後の時価)+災害関連支出金額―補てんされた保険金等 = 損失の金額
雑損控除の対象となる資産損失額の算定方法
従来、 雑損失の対象となる資産損失額は、 その資産の時価(損失が生じた時の直前におけるその資産の価額)を基礎として計算する方法でしたが、 その資産の取得価額に基づく価額(その資産の取得価額から減価償却費累計額相当額を控除した金額の簿価)を基礎に計算する方法も認められることになります。 しかしながら、実際の取得価額情報を確認する資料も無い場合が少なくなく、その場合には、以下の合理的な計算方法による対応も認められています。
(1) 住宅の損害金額
国税庁が地域別、構造別に一律に定めた1㎡の工事費用 X 総床面積 = 取得価額
(取得価額―減価償却累計額)X 被害割合(注2) = 住宅の損害金額 
「減価償却費累計額相当額」とは、 非業務用の場合には、 その資産の耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率により、 その資産の取得から譲渡までの期間の年数を乗じて計算された金額となります。
(2) 家財の損害金額
世帯主の年齢別、家族構成別に定めた家財評価額 X 被害割合(注2) = 家財の損害金額
別途、車両も雑損控除の対象となります。
注2:損害割合とは、
100% = 全壊、流出、埋没、倒壊
50%  = 半壊
5%   = 一部破損
注3:災害関連支出金額とは、
災害で被害を受けた住宅や家財等の取壊し・撤去・修繕のために支出した金額等。
3.損失額の繰越
損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合は、翌年以後3年間を限度に繰り越すことが可能です。

厚生年金 パートに手厚く 従業員51人以上の企業も対象

10月から、パート労働者の厚生年金の加入対象が拡大となる。これまでは従業員101人以上の企業に限られていたが、51人以上の企業も適用となる。なお、適用要件には、雇用契約で週所定労働時間20時間以上、月額賃金88千円以上、等があり、その要件に該当するパート者が含まれることになります。

賃上促進税制(2024年4月1日以降の開始事業年度より)の改正

令和6年度税制改正で物価高に負けない構造的・持続的な賃上げの動きをより多くの国民に拡げ、効果を深めるため、賃上促進税制を強化することになりました。近年では、この種の改正は頻繁に行われていますので、適用要件には注意が必要です。なお、今回の改正の適用期間は、令和6年4月1日~令和9年3月31日の開始事業年度となっていますので、早くとも2025年3月期末の事業年度の企業からとなります。
1. 賃上促進税制(大企業・中堅企業向け、中小企業も適用可)
① 大企業(資本金1憶円超等)向け控除率の改正

適用要件改正前(令和6年3月31日以前の開始事業年度まで適用)改正後(令和6年4月1日以降の開始事業年度から適用)
増加割合税額控除率増加割合税額控除率
【基本部分】
継続雇用者給与等支給額の増加割合
3%以上15%3%以上10%
4%以上25%4%以上15%
5%以上20%
7%以上25%
【上乗せ①】
教育訓練費の増加割合
20%以上+5%10%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加+5%
【上乗せ②】
(注1)
女性子育て支援
+5%
最大控除率30%35%

注1: 「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の厚生労働大臣認定認定)」又は「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の厚生労働大臣認定認定)」を受けている場合

② 大企業のうちの中堅企業向け控除率の改正(従業員数が2000人以下の企業)
新たな位置付けとなる中堅企業は、「中小企業以外の企業」で「従業員数が2000人以下の企業」かつ「グループ全体で1万人を超える企業グループに属さない企業」である中堅企業向けにおける人材促進税制について、次の通りとなります。

適用要件改正前改正後
増加割合税額控除率増加割合税額控除率
【基本部分】
継続雇用者給与等支給額の増加割合
3%以上15%3%以上10%
4%以上25%4%以上25%
【上乗せ①】
教育訓練費の増加割合
20%以上+5%10%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加+5%
【上乗せ②】
(注1)
女性子育て支援
+5%
最大控除率30%35%

注1:女性子育て支援上乗せ措置に「3段階目のえるぼし認定を受けている企業」を追加

③ マルチステークホルダー方針を公表しなければならない企業の範囲に従業員数2,000人超の企業を追加

改正前改正後
資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業のみ① 資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業、又は
② 従業員数2,000人を超える企業

2.賃上促進税制(中小企業)
中小企業(資本金1億円以下等)の人材促進税制について、次の通り見直しをします。
① 控除率の改正

適用要件改正前改正後
増加割合 税額控除率増加割合 税額控除率
【基本部分】
雇用者給与等支給額の増加割合
1.5%以上15%1.5%以上1.5%以上
2.5%以上30%2.5%以上30%
【上乗せ①】
教育訓練費の増加割合
10%以上 +10%5%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加+10%
【上乗せ②】 (注1)
女性子育て支援
+5%
最大控除率40%45%

注1: 以下のいずれかの認定を受けてる場合
・「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の厚生労働大臣認定)」
・「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の厚生労働大臣認定)」
・2段階目以上の「プラチナくるみん認定」又はプラチナ「えるぼし認定」
② 法人税額から控除がしきれない控除額があるときは、5年間の繰越税額控除制度の追加
中小企業においては、 赤字である場合や控除上限(法人税額の20%)に抵触しても、最大限の控除が取れるように申告することで新たに5年間の繰越税額控除が可能となりました。
なお、この繰越税額控除制度は、持続的な賃上げを実現する観点から、繰越控除事業年度において雇用者給与等支給額(当期)が比較雇用者給与等支給額(前期)を超える場合に限り適用できるものとなっています。具体的な確定申告書への主な添付書類は以下の通りです。

各事業年度確定申告書への主な添付書類
中小企業向け賃上げ促進税制の適用要件を満たす事業年度(最大限の控除が取れ無い)「別表六(26)給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書(現行)」
「繰越税額控除限度超過額の明細書」
赤字事業年度(法人税額が無い)「繰越税額控除限度超過額の明細書」を添付して申告を継続
黒字化して繰越控除をする事業年度(法人税額の発生)「控除の対象となる繰越税額控除限度超過額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類」

基準地価、地方32年ぶり上昇 訪日客増・半導体が起点

国土交通省が17日公表した2024年の基準地価で、地方圏の全用途の平均が地方4大都市を除いても前年から0.2%上昇し、32年ぶりのプラスになった。
2024年基準地価の変動率(7月1日時点、 前年比%、 ▲は下落):

地域住宅地商業地全用途
前年2024年前年2024年前年2024年
全国平均0.70.91.52.41.01.4
三大都市圏2.23.04.06.22.73.9
東京圏2.63.64.37.03.14.6
大阪圏1.11.73.66.01.82.9
名古屋圏2.22.53.43.82.62.9
地方圏0.10.10.50.90.30.4
中核地方4市7.55.69.08.78.16.8

地価が最も高かった地点は19年連続で東京・銀座2丁目の「明治屋銀座ビル」だった。1平方メートル当たりの地価は4,210万円で前年比5.0%伸びた。

公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。

 公示地価基準地価路線価固定資産税評価額
調査主体国土交通省都道府県国税庁市町村
調査地点数約26,000約21,000約320,000多数
調査時点1月1日7月1日1月1日1月1日(原則3年に1回、 次回は2027年)
公開時期3月9月7月又は8月3月
公開サイト国交省(土地総合情報ライブラリー)国交省(土地総合情報ライブラリー)国税庁資産評価システム研究センター
その他調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。調査対象は地方の調査地点が多く、 不動産鑑定士の評価を参考に調査し、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から 相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準

手形・小切手の発行終了 2025年度中にも

3メガバンクは2025年度中にも紙の約束手形・小切手の発行を終了する予定です。地方銀行なども今後追随する可能性が高い。この終了は、中小企業の金融取引は電子決済に移行し、効率性や安全性が高まる効果が期待できることになるとしています。

リース会計 国際水準に 全資産計上 2027年度義務づけ

新リース会計基準が2027年度から上場会社と会社法上の大会社に適用されます(中小企業には適用しません)。これまでリース取引の中でオペレーティングリースは、リース料として費用処理してきましたが、新基準では、リース資産・債務として計上し、減価償却費と支払利息に区分して費用処理することになります。その適用範囲は広く、リース契約なっていなくとも借手が特定の資産をどれだけ自由に使えるかで判定することになります。従って、サービスや役務提供の契約でも要件を満たせばリース取引に該当します。但し、1契約当たり300万円以下の少額取引は対象外となります。

社会保険料の上限と月額給与額と賞与額との関係

社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の負担額は少額ではなく出来れば削減したいところですが、所定の計算方法で計算される為に諦めるしかないところです。当該計算方法を確認することで、何か気付くことがあります。例えば、40歳以上のサラリーマンで東京都内の会社に勤め社会保険は協会けんぽに加入されている場合における社会保険料の計算は以下の様になります(他の地域や他の保険組合などのケースでも大きく変わることはありません)。

社会保険料月額給与
(定期同額給与)
賞与
(事前確定届出給与)
料率上限額料率上限額
健康保険料(40歳~64歳は介護保険料1.60%を含む)9.98%
(11.58%)
1,355千円
(年換算額16,260千円)
9.98%
(11.58%)
年間
5,730千円
厚生年金保険料18.30%665千円
(年換算額7,980千円)
18.30%月間
1,500千円

上記のとおり社会保険料の計算においては、給与額に上限がありますので高額な給与受給者の方、この場合には役員の方が、以下の様な対応がより適用可能性が高いのではないかと思います。

役員報酬の9.98%を健康保険料、18.30%を厚生年金保険料として納付しますが、その金額には上限が設定されています。この上限を超えた役員報酬には社会保険料がかかりません。そして、上限金額は定期同額給与よりも事前確定届出給与の方が低くなっていますので、定期同額給与を少額にして事前確定届出給与を多額にすることで、上限を超えた役員報酬の社会保険料が発生しなくなります。
以上の様に月額給与を少額にして賞与を多額にすることで社会保険料負担にメリットがありますが、その反面、以下の様なデメリットも考えておく必要があります。
①  厚生年金受給額の減少
当然のことですが、厚生年金保険料が減少することで、将来受給できる年金が減少するというデメリットがあります。
②  役員の退職金計算額の低下
役員の方の退職金計算における上限額は、通常、功績倍法により計算しますが、その時の最終報酬月額は定期同額給与で判定され、事前確定届出給与は含まないとされています。従いまして、定期同額給与を減らすことで役員退職金の上限額が低下してしまうことになります。
③  税務上の損金性
現在のところ、極端に事前確定届出給与(賞与)分を多額にされていても税務署や年金事務所から問題視されているという話しを聞いておりませんが、職務内容から事前確定届出給与(賞与)が過大であると費用性が否認されるリスクがゼロでは無いところです。