ふるさと納税と個人寄附金控除

A. ふるさと納税の見直し
ふるさと納税の適用を見直し、令和元年(2019年)6月1日以後に行われる寄附金から適用となりました。
総務大臣は、所定の基準に適合する都道府県等をふるさと納税適用の対象とします。
① 寄附金の募集を適正に実施する都道府県等
② 上記都道府県等で返礼品は、以下のいずれも満たす都道府県等であること。
(イ)返礼品の返礼割合は3割以下とすること
(ロ)返礼品は地場産品とすること
総務大臣から指定された都道府県等に対する寄付金のみがふるさと納税(個人住民税の寄附金税額控除)の適用対象となります。対象外ものは、通常の寄附金控除として取扱うことになります。

ふるさと納税の控除方式は、所得税におきましては所得控除ですが、住民税では所得控除ではなく税額控除(ふるさと納税では住民税特例控除となります)となりますので、所得金額の多寡により寄付されたふるさと納税から2千円控除後の全額と税金負担減とがイコールとなります。このイコールになる寄付金額(限度額)は、後述していますが次の計算式で算出できます。
 寄附金限度額 = 個人住民税所得割額X 20%÷(90%-所得税率X1.021)
+ 2千円

B. 個人寄附金控除
ふるさと納税を行う人が増えていますが、 これも寄附金ということで税制上では、 税負担の軽減が図られています。 以下では、個人からの寄附行為に対する税務上の取扱いを確認したいと思います。
1.税務上の寄附金控除(所得控除と税額控除)とは
寄附金控除の適用を受けるには、寄附の相手先が「特定寄附金」の対象として認められていることが必要となります。 「特定寄附金」に該当すれば所得から一定の寄附金額を控除できるという「所得控除」が認められ、更にその中で一定の寄附金に該当しますと、所得控除に代えて、税額から一定金額を控除できるという「税額控除」を選択することができます。
2.「特定寄附金」の主な範囲
(1)国又は地方公共団体に対する寄附金
ふるさと納税もここに含まれます。
(2)指定寄附金
公益を目的とする事業法人(公益社団法人、公益財団法人等)、又は一定の要件を満たす団体に寄附するもののうち、財務大臣が指定した緊急性を要するものとした寄附金
(3)政治活動に関する寄附金
(4)特定公益増進法人に対する寄附金
公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、一定の学校法人等
(5)認定特定非営利法人等(認定NPO法人等)に対する寄附金
3.「税額控除」対象の寄附金と税額控除額
税額控除を税務上では「特別控除」という表現で規定しており、以下のものがあります。
① 政党等寄附金特別控除
特定の政治献金のうち、政党や政治資金団体へ寄附された場合の税額控除額
(イ)年間の政党等特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)
(ロ)上記(イ)X 30%
(ハ)所得税額 X 25%
(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 政党等寄附金特別控除
② 公益社団法人等寄附金特別控除
一定の要件を満たす公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、学校法人、国立大学法人、公立大学法人等へ寄附をされた場合の税額控除額
(イ)年間の公益社団特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)
(ロ)上記(イ)X 40%
(ハ)所得税額 X 25%(注2)
(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 公益社団法人等寄附金特別控除
③ 認定NPO法人等寄附金特別控除
一定の要件を満たす認定NPO法人へ寄附された場合の税額控除額
(イ)年間の認定NPO特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)
(ロ)上記(イ)X 40%
(ハ)所得税額 X 25%(注2)
(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 認定NPO法人等寄附金特別控除
注1:この控除対象寄附金額(総所得金額等の40%相当額)及び控除適用下限額(2千円)の判定は、 所得控除対象の寄附金額及び税額控除対象の寄附金額と合わせて総合計でおこないます。
注2:この判定は、公益社団法人等寄附金と認定NPO法人等寄附金との合計でおこないます(政党等寄附金は含まず別枠での判定)。

上記の①~③の特定寄附金に該当された場合には、当該税額控除と下記の所得控除の有利な方をそれぞれ選択適用することができます。
4.「所得税寄附金控除」の計算
ふるさと納税(税額控除の適用は認められません)等の特定寄附金には寄附金所得控除額が認められていますが、その計算式は次のとおりです。
(イ)年間の特定寄附金合計額(注1)
(ロ)総所得金額等 X 40%
(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額
(ニ)上記(ハ)の金額 - 2千円 = 寄附金所得控除額
(ホ)所得税の軽減税額
    寄附金所得控除額 X 所得税率 X 1.021% 
5.「住民税寄附金税額控除」の計算
上記では、所得税における寄附金の控除についてでしたが、同時に住民税におきましても特定の寄附金に対しては寄附金控除が認められています。 例えば、次の様な寄附金が対象となります。
① 都道府県・市区町村へのふるさと納税
② 住所地の日本赤十字社支部
③ 住所地の都道府県共同募金会
④ 住所地の都道府県が条例で指定する社会福祉法人
⑤ 住所地の都道府県・市区町村ともに条例で指定する認定NPO法人
なお、住民税においての控除方式は、税額控除のみとなっています。 住民税は、都府県民税と市町村民税とに分かれ、寄附金も特定寄附金になるものか否かは条例により異なりますので別々に計算する必要があります。
(1)住民税基本控除分
(イ)年間の都府県、市町村又は特別区等への特定寄附金合計額
(ロ)総所得金額等の30%相当額
(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額
(ニ)上記(ハ)の金額 - 2千円 
(ホ)上記(ニ)の金額 X 10%(都府県民税4%、市町村民税6%:平成30年度分より2%と8%に標準税率の変更)= 住民税基本控除分
(2)住民税特例控除分
(イ)年間の都府県、市町村又は特別区への特定寄附金合計額 - 2千円
(ロ)上記(イ)の金額 X (90% - 所得税率 X 1.021 X 5/5(平成30年度分より都府県民税1/5、市町村民税4/5)
(ハ)住民税所得割額 X 20%相当額
(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 住民税特例控除分
(3)住民税の寄附金税額控除額 = (1)+ (2) 
6.寄附金限度額の計算
ふるさと納税でよく言われるのが、寄附金額から2千円控除した金額の全てが税金計算上、控除されることになるということですが、 これは正しいでしょうか。 これまでの寄附金の限度計算では、総所得金額等(注3)の40%或いは30%、又は住民税所得割額(注4)の20%が限度という算式がありましたので、寄附金には所得金額の多寡により一定の寄附金額控除に限度があることが分かります。 上記から、
寄附金限度額 = 個人住民税所得割額X 20%÷(90%-所得税率X1.021)+ 2千円
の算式が導かれます。 ご存知の様に所得税率は、累進税率の7段階に分かれていますので、次の表が寄附金限度額の目安となるかと思います。

所得税の課税所得額所得税率寄附金限度額
195万円未満5%個人住民税所得割額 X 23.558% + 2千円
195~330万円未満10%個人住民税所得割額 X 25.065% + 2千円
330~695万円未満20%個人住民税所得割額 X 28.743% + 2千円
695~900万円未満23%個人住民税所得割額 X 30.067% + 2千円
900~1,800万円未満 33%個人住民税所得割額 X 35.519% + 2千円
1,800~4,000万円未満40%個人住民税所得割額 X 40.683% + 2千円
4,000万円以上45%個人住民税所得割額 X 45.397% + 2千円

注3:総所得金額等とは
所得税計算での総合課税所得金額及び申告分離課税所得金額を合算し、かつ、各種の繰越損失控除を使用していた場合には、その使用額を加算(控除前に戻す)したところの所得金額。
注4:住民税所得割額とは
住民税計算での課税所得金額に税率を乗じた税額(総合課税に係る税額控除前所得割額と分離課税に係る税額控除前所得割額との合計額)から調整控除額(通常2,500円)を控除した後の税額。

例えば、給与所得500万円、社会保険料50万円、基礎控除38万円(住民税では33万円)の場合の人が、ふるさと納税30万円を行った場合と行わなかった場合の所得税及び住民税は以下のようになります。
(1)ふるさと納税30万円を行わなかった場合
① 所得税額
5,000,000 - (500,000 + 380,000) = 4,120,000
(4,120,000 X 20% - 427,500) X 1.021 = 404,826  404,800(所得税額)
② 住民税額
5,000,000 - (500,000 + 330,000) = 4,170,000
4,170,000 X 10% = 417,000円(住民税額)
(2)ふるさと納税30万円を行った場合
① 所得税額
(イ)特定寄附金合計額 300,000
(ロ)5,000,000 X 40% = 2,000,000
(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額 300,000
(ニ)300,000 - 2,000 = 298,000寄附金所得控除額
(ホ)所得税額
5,000,000 - (500,000 + 298,000 + 380,000) = 3,822,000
(3,822,000 X 20% - 427,500) X 1.021 = 343,974  343,900 (所得税額)
(へ)寄附金による所得税額の軽減税額
   寄附金所得控除額 X 所得税率 X 1.021 = 298,000 X 20% X 1.021 = 60,900円 
② 住民税額
(1)住民税基本控除分
(イ)特定寄附金合計額 300,000
(ロ)5,000,000 X 30% = 1,500,000
(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額 300,000
(ニ)300,000 - 2,000 = 298,000 
(ホ)298,000 X 10% = 29,800
(2)住民税特例控除分
(イ)特定寄附金合計額300,000 - 2,000 = 298,000
(ロ)298,000 X (90% - 20% X 1.021) X 5/5(都府県民税2/5、市町村民税3/5)= 207,348
(ハ)住民税所得割額 (4,170,000 X 10% - 2,500) X 20% = 82,900
(二)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 82,900
(3)住民税の寄附金税額控除額 = 29,800 + 82,900 = 112,700円
(4)住民税額
5,000,000 - (500,000 + 330,000) = 4,170,000
4,170,000 X 10% - 112,700 = 304,300円(住民税額)
③ 所得税・住民税への軽減税額
所得税60,900 + 住民税112,700 = 173,600円
④ 寄附金限度額
以上の寄附額300,000円の例からは、 制限・上限に該当となるケースでしたが、 該当しない寄附額はいくらであったかは、 以下の計算で算出できます。
個人住民税所得割額X 20% ÷ (90% - 所得税率X 1.021)+ 2,000 = 414,500 (4,170,000 X 10% - 2,500) X 20% ÷ (90% - 20% X 1.021) + 2,000 = 240,286円
計算結果から、 240,286円相当額が制限・上限に触れることのないレベル、 即ち、寄附金限度額ということになります。

以上

事業承継、親族外も支援 中小企業に税制優遇検討

跡継ぎのいない中小企業の経営者が第三者に円滑に事業を譲り渡せるよう、中小企業庁と財務省は新たな支援税制の創設を検討する。
* 経営者が会社を売った時に手にする利益にかかる税金を、一定条件のもとで繰り延べる。又、経営者が退任後、譲渡益を元手にベンチャー企業などに投資した赤字が発生した場合などは、赤字と譲渡益に生じた黒字を相殺することを認める。
* 会社を譲り受けた第三者側には、承継に伴って発生した「のれん」の価値について、通常は5年かけて償却するところを、特別に一括償却できる。又、承継後に投資損失に備えて計上した引当金を税務上の損失として扱い、毎年の税負担を圧縮できる。

親族の債務 知らずに相続人に 認知後3ヵ月放棄可能

伯父の債務を相続放棄しないまま父親が死亡した場合(再転相続)、その債務を引き継ぐことになった子どもはいつまでに相続放棄すれば返済を免れるのか。こうしたケースで、最高裁第2小法廷は9日、子ども自身が債務の相続人になったことを知って(強制執行の通知日)から3ヵ月以内に相続放棄すれよいとする初判断を示した。
これまでは親族の債務に関する子どもの認識に関わらず、親の死亡を知った時点を熟慮期間の起算点とする法解釈が通説だった。

暗号資産の取扱い

これまでの「仮想通貨」の呼称が、日本円や米ドルなど法定通貨との誤認を防ぐという目的や国際会議等の外国での使用表現に合わせ、「暗号資産」に変更されました。この暗号資産(仮想通貨)に関する規制強化策を盛り込んだ「改正資金決済法」、及び「金融商品取引法」が参院本会議で可決、法案が成立し。 2020年4月から施行されます。
2019年度の税制改正で暗号資産の取扱いが、以下の様になりました。
1.法人税:暗号資産の評価方法等
(1)事業年度末の暗号資産のうち、活発な市場が存在する暗号資産(市場暗号資産)については、時価評価により評価損益を計上する。

       区分評価方法評価損益の取扱い
市場暗号資産自己の計算において有する暗号資産時価法益金(損金)算入
自己以外の者の計算において有する暗号資産益金(損金)算入しない
市場暗号資産に該当しない暗号資産原価法

活発な市場が存在する暗号資産(市場暗号資産)とは、次の要件の全てに該当するものをいいます。
イ 継続的に売買価格等(売買の価格又は他の暗号資産との交換比率)の公表がされ、かつ、その公表される売買価格等がその暗号資産の売買価格又は交換比率の決定に需要な影響を与えているものであること。
ロ 継続的に上記イの売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。
ハ 次の要件のいずれかに該当すること。
① 上記イの売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること。
② 上記ロの取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと。
(2)暗号資産の譲渡時の譲渡損益は、譲渡契約時の事業年度に計上する。
(3)暗号資産の単価算出方法は、移動平均法又は総平均法による原価法とし、法定算出方法は移動平均法による原価法とする。
(4)未決済の暗号資産の信用取引等については、事業年度末に決済したものとして損益相当額を計上する。
(5)棚卸資産及び固定資産の範囲から暗号資産が除外となります。
上記改正は、2019年4月1日以後に終了する事業年度より適用する(時価評価に関して経過措置有り)。

2.所得税:暗号資産の所得計算方法
移動平均法又は総平均法で算出することになりますが、法定評価方法は総平均法となりました。
法定評価方法:総平均法(従って、移動平均法を採用したい場合には、所轄税務署に要届出)
評価の方法:移動平均法又は総平均法
所得区分:原則は雑所得(事業と認められる場合は事業所得)

確定申告時の添付不要項目

2019年4月1日以後に提出する確定申告等から以下の書類が添付不要となります。
(1) 給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票
(2) オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書
(3) 配当等と見做す金額に関する通知書
(4) 上場株式配当等の支払通知書
(5) 特定口座年間取引報告書
(6) 未成年者口座等につき契約不履行等事由が生じた場合の報告書
(7) 特定割引債の償還金の支払通知書
(8) 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(取得費加算)を適用する際の相続税額等を記載した書類

ふるさと納税の見直し

ふるさと納税の適用を見直し、2019年6月1日以後に行われる寄附金から適用となります。
総務大臣は、所定の基準に適合する都道府県等をふるさと納税適用の対象とします。
① 寄附金の募集を適正に実施する都道府県等
② 上記都道府県等で返礼品は、以下のいずれも満たす都道府県等であること。
(イ) 返礼品の返礼割合は3割以下とすること
(ロ) 返礼品は地場産品とすること
総務大臣から指定された都道府県等に対する寄付金のみがふるさと納税(個人住民税の寄附金税額控除)の適用対象となります。対象外ものは、通常の寄附金控除として取扱うことになります。

路線価4年連続上昇 2019年分1.3% 訪日客効果続く

国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基礎となる2019年分の路線価(1月1日現在)を発表した。全国約32万地点の標準宅地は2018年比で1.3%のプラスとなり、4年連続で上昇した。上昇率はこの4年で最も高かった。地方にも波及しつつある訪日客の増加や再開発などが地価上昇をけん引している。
都道府県別の路線価は、東京、 大阪、 愛知など19都道府県で上昇した。 前年の上昇は18都道府県だった。 首都圏では東京都(上昇率4.9%)、千葉県(1.0%)、神奈川県(0.9%)、埼玉県(1.0%)がいずれも6年連続で上昇。愛知県(2.2%)は7年連続で上昇した。最も上昇率が高かったのは、好調な観光需要が要因で沖縄県の8.3%(前年は5.0%)でした。
路線価とは、 主要道路に面した土地1平方メートル当たりの標準価格で、 2019年1月1日から12月31日までの間に相続や贈与で土地を取得した場合、 今回公表された路線価を基に税額が算定される。 調査地点は国土交通省が3月に公表した公示地価(2万6千地点)よりも多い約32万強地点。 公示地価の8割を目安に売買実例などを参考にして算出するため、 公示地価よりも遅く例年7月に公表される。 路線価の最高は、 34年連続でお馴染みの東京都中央区銀座5丁目銀座5の「鳩居堂」の1平方メートル当たり45,600千円(前年44,320千円)でした。

特別養子 15歳未満に 年齢引き下げ 改正民法が成立

特別養子制度の対象を原則15歳未満(従来、原則6歳未満)に引き上げる改正民法が7日の参議院本会議で可決、成立した。
特別養子制度は家庭に恵まれない子どもの健全な養育が目的であり、特別養子縁組をすると実父母と親族関係がなくなります。