国税庁は新型コロナウイルスの影響を受ける納税者の負担を軽くする。大きな損失が生じた企業や感染者らの税金の支払いは原則1年猶予する。納税の猶予は申請があれば柔軟に応じるよう各国税局に通達を出した。
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企業・個人へ支援厚く 中小に無利子融資/親休業に助成金
政府は10日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、第2弾の緊急対応策を決めた。4300憶円超を支出し、中小企業の資金繰り支援などのために1.6兆円の金融支援をする。小中学校と高校の臨時休校で保護者が仕事を休業した際の費用を補填する助成金
をつくる。
企業保険料4月大幅上げ 年1万円超の負担増 大企業続出
主に大企業で働く会社員の介護保険料が4月から大幅に上がる。年収が高い人に多く払ってもらう仕組みが全面施行され、年1万円を超える負担増になる人が続出する。
令和元年度(2019年) 個人確定申告
個人並びに個人事業者の方の令和元年度確定申告の時期がきました。 以下に、 令和元年度分の確定申告の提出期限及び確定申告の対象となる人(任意ではなく申告しなければならない人)、 等に関しまして概要を纏めてみました。 なお、 確定申告の対象者は前年度と変更はありませんが、 税金の申告は、 本人自ら課税金額や税額を計算し、 その税額を申告納付する制度「申告納税制度」を採用していますので、 期限後申告・納付となりますと延滞税等がかかります。
1. 令和元年度確定申告の提出・納付期限
| 所得の種類 | 令和元年度申告期間・納付期限 | 口座振替による納税日(振替日) |
|---|---|---|
| 所得税 | 令和2年2月17日(月) から3月16日(火) なお、還付申告は令和2年1月から可能 | 4月21日(火) (新規の利用者の方は「預貯金口座振替依頼書」を申告期限までに要提出) |
| 消費税 | 令和2年1月 から3月31日(火) | 4月23(木) |
| 贈与税 | 令和2年2月 から3月16日(火) | 非該当 |
(1) 申告書の提出方法には、 ①持参(所轄税務署等の所定の提出場所)、 ②郵送、 ③電子申告(e-Tax利用によりデータ送信、この利用には事前準備が必要となりますが、 所得税では一定の第三者作成の提出書類を省略可の恩典があります)、の方法があります。
(2) 納税方法には、 ①持参(所轄税務署)、 ②金融機関から納付書を付けて納付、 ③ダイレクト納付(e-Taxの利用で、 かつ、 事前にダイレクト納付利用届出書の所轄税務署に要提出)、 ④インターネットバンキング・クレジットカードによる電子納税、⑤口座振替(上記を参照) の方法があります。
(3) 平成25年度から25年間には、 復興特別所得税として各年分の所得税額に2.1%の税率を掛けて計算した税額が発生することに留意してください。
(4) 平成28年分以降の確定申告にあたり、 マイナンバー(個人番号)の記載が必要となります。 申告書を提出する際には、 申告者のご本人の本人確認書類(番号確認書類及び身元確認書類)の提示又は写しの添付が必要です。 具体的な本人確認書類とは、
① マイナンバーカード(個人番号カード)
② 通知カード又は個人番号付の住民票の場合には、 身元確認書類として顔写真付きの運転免許証、 等の点、 又は顔写真付きでない場合には、 2点の確認書類(保険証、 年金手帳、 等)
2. 令和元年度確定申告が必要となる対象者の方
A. 所得税
1. 給与所得者(サラリーマンの方)
① 給与の年間収入金額が2,000万円超となる方(年末調整対象外の方)
② 給与(年末調整済)を1箇所から受けていて、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円超となる方 (給与収入額が2,000万円以下で、 給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合には申告の必要はありません)
③ 給与(源泉徴収済)を2箇所以上から受けていて、 年末調整されなかった給与の収入金額と、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円超となる方。
但し、 給与所得の収入金額から、 一定の所得控除の金額(雑損控除、 医療費控除、 寄付金控除及び基礎控除の項目を除く)の差引金額が150万円以下で、 かつ、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下となる方は、 申告不要となります。
2. 上記の給与所得者以外の方、 又は個人事業者で納付税額が発生する方
事業所得や不動産所得等がある方で、 各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
3. 源泉徴収の適用を受けない給与等の支払を受ける方
① 家事使用人等の方で給与から源泉所得税を徴収されていない方: 常時2人以下の家事使用人だけを雇用している使用人等には源泉徴収の義務が無いことから、 その使用人等から給与を受給されていた方
② 在日外国公館から給与等の支払を受けた方
③ 国外から給与、 退職金等の支払を受けた方
4. 同族会社の役員やその親族等で、 その会社から給与以外に利子、 家賃、 使用料等の支払を受けている方は、 その利子、 家賃、 使用料等は全て申告の対象
5. 災害減免法の適用を受け給与に対して源泉徴収の猶予や源泉徴収税額の還付を受けていた方
6. 上記以外の方で納付税額がある方
各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
注1: 公的年金等に係る所得の確定申告不要制度
その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、 かつ、 その雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、 所得税の確定申告書の提出は必要ありません(申告されれば還付となる場合もありますので、 その場合には申告される方が有利となる場合もあります)。 なお、国外源泉で国内源泉税の対象とならない国外年金収入等がある場合には、この確定申告不要制度の適用対象外となります。
この所得税の申告不要となる場合であっても、 住民税の申告が必要となることもありますので注意が必要です。
公的年金等の受給者で所得税の申告不要な者でも、住民税の申告が以下のような場合には必要となります(主に住民税の減額になるケース有り)。
① 年金や給与の源泉徴収票に記載されていない所得控除(扶養控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料, 寄附金等)のある方は、住民税の申告で住民税が減少する可能性があります。
② 上記①の控除を追加したい方で、公的年金等が105万円(65歳以上の方は155万円)を超えている場合、或いは、超えていない場合でも公的年金等以外の所得金額がある場合。
③ 日本年金機構等に扶養親族等申告書を提出しているが、その内容に変更がある場合等。
注2: 確定申告不要(任意)となる方で申告すれば税金が戻ってくる方(還付申告者)
確定申告の総件数は2,000万件以上になるようですが、 この内の約半数近くが還付申告のものとなっているようです。 収め過ぎた税金を戻すためには確定申告書の提出が必要となります。 以下の様な場合には、 還付されるかもしれませんので調べてみてはどうでしょうか。
1. サラリーマンで年末調整を受けた方で次の年末調整では取扱わない項目があった方
① 一定金額以上の医療費(医療費控除: 限度額200万円)
生計を一にする家族の支払医療費が、 以下の金額以上になっている場合が対象:
所得が200万円以上: 支払医療費 – 保険給付金等 – 10万円 = 医療費控除額
所得が200万円未満: 支払医療費 – 保険給付金等 – 所得金額 × 5% = 医療費控除額
② 災害(地震、 台風等)や盗難により住宅や家財に被害を受けた場合(雑損控除)
災害の場合には、 災害減免法により所得税の軽減・減免を受けられることもあります。
③ 特定の寄付をされた方(寄付金控除や政党等寄付金特別控除)
④ 初めて住宅ローン控除を受ける方(住宅借入金等特別控除)
⑤ 年末調整時に提出ができなかった、 或いは洩れている控除項目がある方
生命保険料控除、 地震保険料控除、 配偶者特別控除、 各種の扶養者控除等
⑥ 中途退職され再就職しなかった方
退職までの給与収入に対する源泉徴収税額が年税額として過大となっているケースが殆どです。 又、 退職金に対して20%源泉になっている場合も可能性がありますし、退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になっている方。
2. 上場株式等に係る配当所得(申告分離課税選択)と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算
3. 予定納税されたが確定申告不要となった方
4. 所得が少ない状況で配当や原稿料収入等からの源泉徴収税額が、 本来の納付すべき税額よりも多額となっている方
5. 外国税額控除の適用がある方
6. 申告の要件となっている項目がある方
① その年の翌年以降に純損失又は雑損失の繰越控除を受けるため、 ② その年分の純損失の金額について純損失の繰戻しによる還付を受けるため、 ③ 居住用財産の買換又は特定居住用財産の譲渡損失及び繰越控除を受けるため、 等には確定申告の提出が必要となります。
B. 贈与税
ご存知かと思いますが、 下記に示す様に年間に受けた贈与額が110万円以下ならば非課税範囲のために贈与税の申告等は必要ありません。
1. 年間合計で110万円超の財産贈与(個人からの土地、 建物、 現金、 預貯金、 株式、 債権等の財産の贈与)を受けた方(暦年課税で下記の②の選択者を除く)
2. 相続時精算課税制度(60歳以上の父や母の直系卑属からの贈与者ごとに累積で特別控除額2,500万円)の選択者で財産贈与を受けた方(20歳以上の推定相続人の子、 並びに孫に限る)
3. 直近尊属から住宅取得等資金贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
特定受贈者(贈与年の1月1日現在20歳以上で合計所得金額2,000万円以下の者)が、 その直系尊属(親、祖父母等)から受ける居住用家屋の新築・取得・増改築等用に住宅取得等資金の贈与については、非課税限度額が定められていますが、消費税率の8%から10%への引上日が平成31年10月1日に延期されたことに伴い、 非課税措置の適用期限を令和3年12月31日まで延長し、 非課税限度額は以下のようになります。
① 住宅用家屋の取得価額に消費税率10%の消費税等が含まれている場合 (消費税率10%で契約した者)
| 住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 | 良質な住宅用家屋(省エネ等住宅) | 左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅) |
|---|---|---|
| 平成31年4月~令和2年3月 | 3,000万円 | 2,500万円 |
| 令和2年4月~令和3年3月 | 1,500万円 | 1,000万円 |
| 令和3年4月~平令和3年12月 | 1,200万円 | 700万円 |
| なお、 東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、 以下のようになります。 平成31年4月~令和2年3月 令和2年4月~令和3年12月 | 3,000万円 1,500万円 | 2,5000万円 1,000万円 |
② 上記(1)以外の場合 (消費税率8%で契約した者や個人間売買で中古住宅売買契約した者)
| 住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 | 良質な住宅用家屋(省エネ等住宅) | 左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅) |
|---|---|---|
| 平成28年1月~令和2年3月 | 1,200万円 | 700万円 |
| 令和2年4月~令和3年3月 | 1,000万円 | 500万円 |
| 令和3年4月~令和3年12月 | 800万円 | 300万円 |
| なお、 東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、 以下のようになります。 平成26年度申告対象分 ~令和3年12月 | 1,500万円 | 1,000万円 |
4. 配偶者控除の特例(控除額2,000万円)を適用し、 配偶者から居住用不動産又はその取得資金の贈与を受けた方(婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与に限る)
5. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度、等
平成25年4月1日から令和3年3月31日までの期間に直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 この制度適用のためには、 受贈者は教育資金非課税申告書を金融機関等を経由して税務署に提出する必要がありますが、 申込時に対応されていると思いますので特に問題となることはないでしょう。
C. 消費税
個人事業者で下記に該当する方は納税義務者(課税事業者)として申告する必要があります。
1. 基準期間となる前々年度(平成29年度)の課税売上高が1,000万円超の事業者の方
2. 特定期間となる前年(平成30年度)の1月1日から6ケ月間の課税売上高が1,000万円超で、 かつ、 同期間の給与等支払総額が1,000万円超の事業者の方
3. 免税事業者となる方が、 課税事業者となることを選択(消費税課税事業者選択届出書を提出)している方(簡易課税選択者も含む)
納税義務者の判定上の留意事項:
(1) 基準期間の課税売上高は、 消費税込の金額となり、 事業用資産(住宅用として貸付けていた建物等)の譲渡の対価金額も含まれます
(2) 被相続人(亡くなられた方)の事業を相続により承継した相続人には、 被相続人が提出していた各種の届出書の効力は及ばないので、 新たに提出する必要があります。
(3) 新規開業又は相続により事業を承継したときに、 消費税課税事業者選択届出書を提出した場合の適用開始時期は、 当該課税期間か翌課税期間かを選択できます。
(4) 消費税課税事業者選択届出書を提出されている場合には、 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、 その効力が消滅することはありません。
2020年度税制改正大綱:法人税、消費税
2020年(令和2年)12月12日に自民、公明党両党は2020年度(令和2年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の概要(法人税、消費税)となります。
法人税課税
1.オープンイノベーションに係る税制措置の創設
青色申告法人で特定事業活動を行うものが、2020年(令和2年)4月1日から2022年(令和4年)3月31日までの間に、一定のベンチャー企業の株式(特定株式)を出資の払込により取得し、かつ、その取得した日の事業年度末まで保有継続している場合において、その特定株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定として経理した金額を限度とし、損金算入できます(但し、事業年度の所得金額を上限とする)。
この特別勘定の金額は、特定株式の譲渡その他取消し事由に該当した場合には、その事由に応じた金額を取崩し益金算入する。但し、特定株式の取得から5年経過した場合は、取崩す必要はありません。
2.給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の税額控除制度の見直し
国内投資設備が当期減価償却総額の割合について、現行の90%以上の要件を95%以上に変更となります。
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| 国内設備投資額≧当期減価償却費の90% | 国内設備投資額≧当期減価償却費の95% |
3.交際費等の損金不算入制度の延長等
適用期限を2年延長し、2022年(令和4年)3月末までとなります。
接待交際費に係る損金算入の特例(接待飲食費の50%損金算入の特例)の対象法人から、その資本金の額等が100憶円超の法人が場外となります。
4.大企業の研究所税制その他生産性向上に関連する税額控除適用要件の見直し
大企業において、所得要件、賃上げ要件及び設備投資要件のいずれにも該当しない場合には、研究開発税制、地域未来投資促進税制の税額控除ができないとなれていますが、改正で設備投資要件が以下の様になります。
| 改正前 | 改正後 |
|---|---|
| 当期設備投資額>当期減価償却費の10% | 当期設備投資額>当期減価償却費の30% |
5.5G(第5世代移動通信システム)投資促進税制の創設
認定特定高度情報通信等システム導入事業者に該当する青色申告法人が、特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の施行日から2022年(令和4年)3月末までの間に、特定高度情報通信用認定等設備の取得等し国内事業用に供した場合には、その取得価額の30%の特別償却又は15%の税額控除との.選択適用が認められます(但し、当期法人税額の20%を上限とする)
6.連結納税制度からグループ通算制度への移行
連結納税制度に代えて、企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行うとともに、損益通算等の調整を行う簡素な仕組みとすることで事務負担の軽減を図りつつ、親法人の欠損金の利用制限等を行うことにより公平公正な税負担の措置を講じた、グループ通算制度へ移行となりました。
手続上の比較は以下の通りです。
| 項目 | 連結納税制度 | グループ通算制度 |
|---|---|---|
| 納税主体 | 親法人が一体申告 | 企業グループ内の各法人が個別申告 |
| 連帯納付 | 有り | 有り |
| 修正・更正申告 | 結グループ内で再調整を行い、親法人にて修正・更正 | 原則、各法人にて修正・更正 |
| 事業年度 | 親会社の事業年度 | 親会社の事業年度 |
| 青色申告 | 連結申告法人は制度の対象外 | 各法人の青色申告承認が必要 |
| 電子申告 | 任意 | 強制 |
| 適用時期 | 2022年(令和4年)4月1日以後の開始事業年度から適用 |
7.中小企業におけるオープンイノベーションに係る措置の創設
対象となる中小企業者が、2020年(令和2年)4月1日から2022年(令和4年)3月31日までの間に、一定のベンチャー企業の株式(特定株式)を出資の払込(払込金は1千万円以上)により取得した場合において、その特定株式の取得価額の25%の所得控除ができます。
但し、特定株式の譲渡その他取消し事由に該当した場合には、特定株式の取得から5年経過した場合を除き、その事由に応じた金額を益金算入する。
8.中小企業における交際費等の損金不算入制度の延長
適用時期を2年延長し、中小法人に係る損金算入の特例(800万円の定額控除特例)の適用時期も2年延長となります。
9.地方拠点強化税制の見直し
(1)特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の適用時期を2年延長となります。
(2)雇用者数の増加による税額控除制度について、各種の措置を講じて適用期限を2年延長となります。
10.租税特別措置の主な延長等
| 倉庫用建物等の割増償却制度の適用期限 | 2年延長 |
| 海外投資等損失準備金制度の適用期限 | 2年延長 |
| 短期の土地譲渡益に対する追加課税制度の適用停止措置の期限 | 3年延長 |
| 退職年金等積立金に対する法人税の課税停止措置の適用期限 | 3年延長 |
| 障害者雇用する場合の機械等の割増償却制度について、対象資産から工場用の建物等を除外し、機械装置の割増償却率を24%から12%に引下げて、適用期限の延長 | 2年延長 |
| 特定資産の買換え等の課税特例について、所要の見直しの上、適用期限の延長 | 3年延長 |
| 退職年金等積立金に対する法人税の課税停止措置の適用期限 | 3年延長 |
11.中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例制度の見直し
適用期限を2年延長し、以下の見直しがあります。
① 対象法人から連結法人が除外となります。
② 対象法人から常時使用従業員数の要件が、1,000人以下から500人以下に引下げられます。
12.過度なM&A絡む節税対策の防止
法人が、特定関係法人(子会社)から株式簿価の1割を超える対象配当金額があれば、税務上は株式簿価をその対象配当金額のうち益金不算入額相当額だけ引下げることを親会社に義務付ける。それにより、子会社の簿価と実際の価値が同じになることから、例え子会社を売却しても、税務上の赤字を意図的に作り出すことができなくなりました。但し、この適用は、過去10年以内に買収した子会社に限定する等の包括的な租税回避防止規定の新ルールを設けることになります。
以上
消費課税
1.法人に係る消費税の申告期限の特例の創設
法人税の確定申告書の提出期限の延長特例適用を受けている法人が、消費税の確定申告書の提出期限延長の届出書を提出した場合には、提出期限を1月延長する。
改正は、2021年(令和3年)3月31日以後に終了する事業年度末日の属する課税期間から適用となります。なお、当該延長された期間分の利子税が課されます。
2.居住用賃貸建物の取得に係る消費税の仕入税額控除制度の見直し
(1)仕入税額控除の制限
① 住宅の貸付用に供しないことが明らかな建物以外の建物で、かつ、高額特定資産(1千万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産(1百万円以上の固定資産)に該当する場合の課税仕入については、仕入税額控除制度の適用が認められなくなります。但し、居住用賃貸建物のうち、住宅貸付用に供しないことが明らかな部分については、引続き仕入税額控除制度の対象です。
上記①の仕入税額控除制度の適用が認められないこととされた居住用賃貸建物について、その仕入日が属する課税期間の初日から3年間内の間に住宅の貸付用以外に供した場合又は譲渡した場合には、それまでの居住用賃貸建物の貸付及び譲渡対価の額を基礎として計算した額を当該課税期間又は譲渡した課税期間の仕入控除税額に加算して調整する。
改正は、2020年(令和2年)10月1日以後に居住用建物の仕入から適用となりますが、同年3月31日までに締結している契約には適用しません。
② 住宅の貸付契約において貸付に係る用途が明らかにされていない場合であっても、当該貸付用に供する建物の状況等から人の居住用に供することが明らかな貸付については、消費税は非課税となります。
改正は、2020年(令和2年)4月1日以後に行われる貸付から適用となります。
③ 高額特定資産の取得等をした場合の特例措置の見直し
高額特定資産の取得をした場合の事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を制限する措置の対象に、高額特定資産である棚卸資産が納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整措置の適用を受けた場合を加える。
改正は、2020年(令和2年)4月1日以後に棚卸資産の調整措置の適用を受けた場合に適用となります。
以上
公的年金制度の改正案
公的年金制度の改正案が1月から始まる予定の通常国会に提出され、成立に向けて動き出します。以下は、その概要となります。
1.厚生年金の適用範囲の拡大
| 現行 2016年10月から | 改正案 | ||
| 2022年10月から | 2024年10月から | ||
| 従業員数 | 501人以上 | 101人以上 | 51人以上 |
| 勤務期間 | 1年以上 | 2ヵ月超 | 同左 |
| 週所定労働時間 | 20時間以上 | 同左 | 同左 |
| 月額賃金 | 8.8万円以上 | 同左 | 同左 |
2.受給開始時期の選択肢の拡大
| 繰上げ | 原則 | 繰下げ | ||
|---|---|---|---|---|
| 現行 | 受給開始 | 60歳 | 65歳 | 70歳 |
年金額 | 30%減 (1ヵ月当たり0.5%減) | 42%増 (1ヵ月当たり0.7%増) |
||
| 改正案 | 受給開始 | 60歳 | 65歳 | 75歳 |
| 年金額 | 24%減 (1ヵ月当たり0.4%減) | 84%増 (1ヵ月当たり0.7%増) |
3.在職老齢年金制度の減額基準の一部変更
| 基準額(月額給与・賞与収入+月額年金収入) | ||
| 現行 | 改正案 | |
| 65歳未満 | 28万円 | 47万円 |
| 65歳以上 | 47万円 | 同左 |
月額給与・賞与収入は、標準月額報酬額と直近1年間の賞与額の1/12の合計額であり、月額年金収入は報酬比例部分をいいます。
法定調書と給与支払報告書: 提出期限 1月末
1. 法定調書とは
12月の最終給与支給までに、 従業員の年末調整が行なわれ一区切りついたと思っても、 翌1月末までに提出、申告等の対応が必要となるものがあります。 その1つに法定調書作成がありますが、 これは、所得税法、相続税法等の法律の規定により、給与、報酬、家賃等の支払者(提出義務者)が、それらの1年間の支払いに関して、支払先の氏名、住所、支払金額等を記載し所轄税務署に提出が義務付けられている書類(全部で60種類ほど)です。この主目的は、税務署が適正な課税の確保を図ることを目的に支払事実を把握し、受給者が正しく所得を申告していることの確認手段になるものです。 提出すべき法定調書は、 特定項目の一定金額以上のものですが、 源泉徴収の対象になるものとは限っておりませんので留意してください。
なお、 平成28年度分より行政機関への提出にあたり、 マイナンバー(個人番号、等)が必要となっています。
2. 提出する一般的な6種類の法定調書と支払内容
| 提出する調書 | 支 払 内 容 |
|---|---|
| 給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書(注2) | 俸給、給料、賞与等の支払 |
| 退職所得の源泉徴収票と特別徴収票(注2) | 退職手当(注1)、一時恩給等の支払 |
| 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 | ① 原稿料、印税、講演料、工業所有権の使用料等の支払 ② 弁護士、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士、建築士等への報酬、料金の支払 ③ 外交員、集金人、電力量計の検針人、モデル、プロ野球の選手、プロボクサー、騎手等への報酬、料金、契約金の支払、芸能人への出演料等の支払 ④ バー、キャバレー等のホステス、コンパニオン等への報酬、料金の支払 ⑤ 広告宣伝のための賞金、馬主への競馬の賞金の支払 |
| 不動産の使用料等の支払調書 | 地代、家賃、権利金、礼金、更新料、承諾料、名義書換料等の支払 |
| 不動産等の譲受の対価の支払調書 | 土地、建物等の譲受け(売買、交換、収用等)の代金の支払 |
| 不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書 | 土地、建物等の売買や貸付の仲介手数料の支払 |
注1:死亡退職による退職手当等の場合には、相続税法による「退職手当等受給者別支払調書」を提出することになります。
注2:地方税法で提出が義務付けられています「給与支払報告書」及び「特別徴収票」は、
名称が異なりだけでそれぞれ「給与所得の源泉徴収票」及び「退職所得の源泉徴収票」と記載内容は同じものです。
3. 提出範囲
支払調書は、一定金額以上のもの等(支払金額の提出範囲)に該当するときに提出が必要となります。主な提出範囲は次のとおりです。
(1)給与所得の源泉徴収票
| 年末調整 | 受給者区分 | 提出範囲(年間) |
|---|---|---|
| 年末調整をしたもの | 法人役員(相談役、顧問など含む) | 150万円超 |
| 弁護士、公認会計士、 税理士等 | 250万円超 | |
| 上記以外の人(従業員) | 500万円超 | |
| 年末調整をしなかったもの | 給与収入2,000万円超 | 全部 |
| 「扶養控除等申告書」を提出した者のうち退職した者等 | 250万円超(法人役員は50万円超) | |
| 「扶養控除等申告書」を提出しなかった者 | 50万円超 |
(2)報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20の規定に基づく報酬 料金等の支払
| 区 分 | 提出範囲 |
|---|---|
| * 外交員、集金人、検針人、プロボクサー、ホステス等の報酬、料金 * 広告宣伝のための賞金 * 社会保険診療報酬支払基金からの診療報酬 | 年間50万円超 |
| 馬主に支払う競馬の賞金 | 1回75万円超 |
| プロ野球選手等の報酬及び契約金 弁護士、税理士等の報酬 作家、画家などの原稿料、画料 講演料、 その他の報酬、 料金等 | 年間5万円超 |
当該支払調書の記載の概要は以下のとおりです。
① 支払を受ける者: 受給者の住所・名称を記入。
② 区分: 例えば、 原稿料、 印税(書きおろし初版印税、 その他の印税、等)、 さし絵料、 翻訳料、 通訳料、 脚本料、 作曲料、 講演料、 教授料、 著作権・工業所有権の使用料、 放送謝金、 映画・演劇の出演料、 弁護士報酬、 税理士報酬、 公認会計士報酬、 外交員報酬、 ホステス等の報酬、 契約金、 広告宣伝のための賞金、 競馬の賞金、 診療報酬、 等と記入。
③ 細目: 上記の区分内容をより詳細化して記入。
④ 支払金額: その年度中に支払の確定した金額を記入。 従って、 未払いのものも含み、 その場合には未払金額を各欄の上段に内書で記入。
提出範囲の金額基準の判定においては、 原則として消費税及び地方消費税(消費税等)の額を含めて行ないます。 但し、 消費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで判定しても構いません。
支払金額の記入にあたっては、 原則として消費税等の額を含めて記入します。 但し、 費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで記入しても構いませんが、 その場合には、 その消費税等の額を摘要欄に記入する必要があります。
⑤ 源泉徴収税額: その年度中の支払の確定した金額に基づく源泉徴収すべき税額を記入。 未払いのものがある場合には、 その未徴収税額を上段に内書で記入。
⑥ (摘要): 必要に応じて記入。
⑦ 支払者: 支払者の住所・名称及び電話番号を記入。
記載上の注意事項:
法人に支払われる報酬、 料金等で源泉徴収の対象とならないもの、 或いは支払金額が源泉徴収の限度額以下であるため源泉徴収していない報酬、 料金等についても、 提出範囲の金額基準以上のものは税務署への支払調書の提出が必要となります。
(3)その他の主な法定調書
| 法定調書 | 提出範囲 |
|---|---|
| 退職所得の源泉徴収票 | 法人役員(相談役、顧問その他これらに類する者も含む)が受給者であるもの |
| 不動産の使用料等の支払調書 注:不動産、 不動産の上に存する権利、 総トン20トン以上の船舶、 航空機に対する対価を受領する法人と不動産業の個人の方が提出義務者となります。 | 年間15万円超 但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。 又、法人に対し賃借料のみを支払っている場合にはその支払調書の提出は不要ですが、支払が権利金、更新料等は提出が必要となります。 |
| 不動産等の譲受の対価の支払調書 | 年間100万円超 |
| 不動産等の仲介料の支払調書 | 年間15万円超 但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。 |
| 公的年金等の源泉徴収票 | 「扶養控除等申請書」を提出した者:60万円超 提出しなかった者:30万円超 |
| 配当等の支払調書 | 10万円超(中間配当がある場合は5万円超 |
| 生命保険契約等の一時金の支払調書 | 100万円超 |
| 損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書 | 100万円超 |
| 株式等の譲渡対価の支払調書 | 同一人に対し100万円超 1回30万円超 |
| 国外送金等調書 | 1回100万円超 |
4. 提出先と提出期限
法定調書の提出期限は、原則として、その年の翌年の1月31日までとなっており、所轄税務署に提出することになります。税務署に提出する場合には、法定調書の合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)と各法定調書(提出範囲のもの)を添付して提出します。
受給者(個人・法人)の全員にも、 翌年の1月31日まで帳票が送付されることになっていますので、 個人では確定申告の作成資料等に使用、 又、 法人では受給金額・内容との照合等に使用することができます。
法定調書の提出方法に関して、基準年(前々年)の提出枚数が1,000枚以上であった法定調書の場合には、光ディスク等又はe-Taxによる提出が義務付けられています。
5. 給与支払報告書(給与所得の源泉徴収票)
サラリーマンの方にはお馴染みの給与所得の源泉徴収票は、 その年の給与所得に関する年末調整後(給与収入が2千万円超の方等は年末調整は行われません)の源泉徴収税額や税額計算情報が集約され記載されています帳票です。 税務署には、 一定金額以上の給与収入の「源泉徴収票」が提出され、 又、 同一内容ですが様式名が異なる給与支払報告書が個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます。
「給与支払報告書」(総括表を添える)提出先は、受給者(全員分)のその年の翌年の1月1日現在の住所地の市区町村となり、 提出期限は翌年の1月31日までとなっています(個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます)。
年度の途中で退職した者に対する給与支払報告書は、 支払額が30万円以下の場合には提出を省略することができます。 なお、退職金の「特別徴収票」の提出は、役員のみであり従業員分は提出する必要はありません。 その提出先は、 受給者の退職日現在の住所地の市区町村となっており、 退職後1ケ月以内の提出となります。
市区町村では、 提出された資料から住民税の税額計算をおこない、 翌年6月から徴収を開始し1年間で納付を行ないます。 なお、 主たる給与所得を基因する住民税の納付方法は、原則として、会社等が所得税と同様に給与より天引きして納付するという特別徴収となっています。
以上
2020年度税制改正大綱:所得税、贈与税・相続税
2020年(令和2年)12月12日に自民、公明党両党は2020年度(令和2年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の概要(所得税、贈与税・相続税)となります。
個人所得課税
1.NISAの延長及び新NISAの創設
非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(少額投資非課税制度)では、居住者等が、 非課税口座を開設した年の1月1日以後、 投資可能期間になされた一定の適用要件を満たす少額上場株式等からの配当等及び譲渡益等に対しては、 非課税とされるものです。
(1)積立NISA(低リスクの投資信託等に投資対象を限定)の勘定設定期間を2042年(令和24年)12月31日まで5年延長する。
(2)ジュニアNISAは延長せずに2023年(令和5年)12月31日で終了とする。なお、2024年(令和6年)1月1日以後は、課税未成年者口座及び未成年者口座内の上場株式等及び金銭の全額について源泉徴収を行わずに払い出すことができます。
(3)現行の一般NISAは2023年(令和5年)12月31日での終了に合わせて、特定非課税累積投資契約(仮称)による新NISAを創設し、現行の積立NISAとの選択適用となります。
| 現行(一般NISA) | 新NISA | |
|---|---|---|
| 非課税可能期間 | 2023年(令和5年)12月末まで | 2024年(令和6年)1月~2028年(令和10年)12月末まで |
| 非課税年間投資上限額 (譲渡益や配当等の運用益に対し非課税措置) | 非課税管理勘定:120万円 | ①特定累積投資勘定:20万円 ②特定非課税管理勘定:102万円 |
| 非課税期間 | 投資年から最長5年間 | 投資年から最長5年間 |
| 非課税の投資可能商品 | 上場株式、公募株式投資信託、ETF,REIT等 | 2階建ての制度として: ①1階(低リスクの投資信託等に投資対象を限定した積立枠);特定累積投資勘定:特定の公募等株式投資信託 ②2階(従来通り上場株式等にも投資できる枠);特定非課税管理勘定:上場株式等 原則として、①1階に投資した場合のみ、②2階にも投資が可能となり、例外として、上場株式のみへの投資の場合には、①1階の投資せずに②2階への投資が可能となります。 |
2.暗号資産デリバティブに係る雑所得等の取扱い
(1)先物取引に係る雑所得等の課税特例及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用対象から、暗号資産デリバティブに係る雑所得等は除外となります。
(2)2021年(令和3年)分より、金融商品取引業者等は、年間の暗号資産デリバティブ取引の差金等決済金額の支払調書を、翌年1月末までに税務署長に提出する必要があります。
3.低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除の創設
個人が、都市計画区域内にある低未利用土地又はその上の権利を譲渡した場合に、一定の適用要件を満たすときには、その譲渡に係る長期譲渡所得から特別控除として100万円を控除することができます。その適用要件は、以下のとおりです。
| 市区町村長の承認 | 低未利用土地等であること及び譲渡後の低未利用土地等の利用について承認がされていること |
| 所有期間 | 譲渡年の1月1日現在で5年超であること |
| 適用外となる譲渡の相手方 | 買手が、売主個人の配偶者、その他の売主と一定の特別な関係がある者であれば適用外 |
| 譲渡対価 | その土地の上にある建物等を含めて譲渡金額が500万円以下であること |
| 継続適用の制限 | 前年又は前々年に当該制度の適用を受けていないこと |
| 適用時期 | 以下のいずれか遅い日から2022年(令和4年)12月31日までの間の譲渡に適用: ①土地基本法等の一部を改正する法律の施行日 ②2020年(令和2年)7月1日 |
4.土地・住宅税制の適用期限延長等
| 項目 | 期限 |
|---|---|
| 短期所有土地の譲渡等の土地譲渡等に係る事業所得等の課税特例 | 適用停止措置の期限を3年延長 |
| 特定の居住用財産の買換え及び交換の長期譲渡所得の課税特例の適用期限 | 2年延長 |
| 居住用財産の買換等の譲渡損失の繰越控除等の適用期限 | 2年延長 |
| 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限 | 2年延長 |
| 優良住宅の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税特例について、一部適用対象変更の上、適用期限を延長する | 3年延長 |
5.配偶者居住権及び配偶者敷地利用権に係る譲渡所得の取扱い
(1)配偶者居住権及び配偶者敷地利用権の消滅等により対価を得た場合の課税の取扱い
合意解除や放棄により権利が消滅等し、配偶者が対価を取得した場合は、譲渡所得課税となるが、その際の取得費は以下の様に計算します。
居住建物等の取得費(減価償却後)× 配偶者居住権等割合(注1)- 設定から消滅等までの期間に係る減価の額 = 取得費
(注1):設定時における配偶者居住権等の価額相当額 ÷ 設定時における居住建物等の価額相当額
(2)配偶者居住権及び配偶者敷地利用権の消滅前に居住用建物等を譲渡した場合の取得費の計算方法
相続人が相続により取得した居住建物等(配偶者居住権の目的となっている建物又はその建物の敷地となっている土地等)を、配偶者居住権及び配偶者敷地利用権の消滅前に居住用建物等を譲渡した場合の、譲渡所得の計算上控除する際の取得費は以下の様に計算します。
居住建物等の取得費(減価償却後)- 配偶者居住権等の取得費(注2) = 取得費
(注2):設定日から譲渡日までの期間に係る減価の額を控除した金額
6.国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例の創設
(1)個人が、2021年(令和3年)以降の各年において、「国外中古建物」を賃貸し不動産所得を有する場合に、その国外不動産所得の損失金額が生じるときは、その国外中古建物の減価償却費の相当部分の金額は、生じなかったものと見做すことになります。
「国外中古建物」とは、建物の減価償却費の計算にあたり、その対象年数の算定が「簡便法」又は「適正であることを証する一定の書類の添付がない見積法」をより行われているものとなります。
(2)上記の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合の、譲渡所得の金額の計算上、その取得費から、生じなかったと見做された償却費相当額部分は控除しないことになります。
7.未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し
(1)未婚のひとり親に対する税制上の措置(適用は2020年(令和2年)分以後)
居住者が未婚のひとり親(寡婦(寡夫)を除く)が、次の適用要件を満たす場合には、35万円控除が認められます。
① 未婚のひとり親と生計を一にする子の総所得金額等の金額が48万円以下であること
② 未婚のひとり親の合計所得金額が500万円(年収678万円)以下であること
③ 未婚のひとり親が入籍しない事実婚の世帯であっても住民票に事実婚の旨を登録記載されていないこと
(2)寡婦(寡夫)控除の見直し
① 寡婦控除の要件に新たに寡夫控除と同様に所得要件として、合計所得金額が500万円(年収678万円)以下であることを加える
② 寡婦(寡夫)の要件に住民票に事実婚の旨を登録記載されていないことを加える
③ 子ありの寡夫の控除額(現行所得税27万円)について、子ありの寡婦と同様に同額の35万円とする
8.国外居住親族に係る扶養控除等の見直し(適用は2023年(令和5年)分以降)
扶養控除の対象者から日本国外に居住する親族のうち、30歳以上70歳未満の者が除外となります。但し、下記のいずれかに該当する者は適用対象のままです(明らかにする書類が必要)。
| 扶養控除の対象者 | 提出又は提示が必要な書類 |
|---|---|
| 留学により非居住者となった者 | 公的な在留者であることを証する書類 |
| 障害者 | |
| 居住者から年間38万円以上の生活費又は教育費の支給を受けている者 | 送金関係書類等で38万円以上であることを明らかにする書類 |
9.確定拠出年金制度の見直し
| 改正項目 | 対象制度 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|---|
| 加入年齢の見直し | 企業型DC | 厚生年金被保険者の65歳未満 | 厚生年金被保険者の70歳未満 |
| 個人型のDC(iDeCo)及び農業者年金制度 | 国民年金被保険者の60歳未満 | 国民年金被保険者の65歳未満 | |
| 受給開始時期の選択肢の拡大 | 企業型DC・個人型DC(iDeCo) | 60歳~70歳の間で選択 | 70歳以降も選択可 |
| DB | 60歳~65歳の間で選択 | 60歳~70歳の間で選択 |
10.相続国外財産に係る相続直後の国外財産調書等への記載の柔軟化
相続開始の日に属する年度の12月31日に有する国外財産調書については、その相続又は遺贈により取得した国外財産を記載しないで提出することができるようになります。この場合の提出義務の判定には、その相続国外財産の価額を除外して行うことになります(国外財産調書における相続財産についても同様となります)。
改正は、2020年(令和2年)分以後の国外財産調書又は国外財産調書について適用となります。
11.居住用財産の譲渡特例を適用した場合における住宅ローン控除適用の見直し
新規住宅の居住年から3年目に新規住宅及びその敷地の土地等以外の資産の譲渡(従前住宅を譲渡)した場合において、その従前住宅を譲渡に対して、下記の譲渡特例の適用を受けるときには、新規住宅について住宅ローン控除の適用ができないことになります。
① 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税特例
② 居住用財産の譲渡所得の特別控除
③ 特定の居住用財産等の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税特例
改正は、2020年(令和2年)4月1日以後に従前住宅等を譲渡する場合に適用となります。
以上
贈与税・相続税(資産課税)
1.所有者不明土地等に係る課税上の措置
(1)現に所有している者の申告の制度化(2020年(令和2年)4月1日以後の条例の施行日以後から適用)
登記簿上の所有者が死亡している場合、市町村長は条例によりその土地又は家屋を現に所有している者に対して固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができることになります。罰則も設けることになっています。
(2)使用者を所有者とみなす制度の拡大(2021年(令和3年)度以後の年度分の固定資産税から適用)
市町村は、一定の調査を尽くしてもなお固定資産の.所有者が一人も明らかとならない場合には、その使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、その使用者に固定資産税を課すことができることになります。
2.住宅用家屋の所有権移転等における登録免許税
登録免許税の軽減税率の適用措置を2年延長する。
3.不動産譲渡に関する契約書等に係る印紙税
印紙税の税率特例措置の適用措置を2年延長する。
4.医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等の適用期限延長
適用期限が3年延長となります。
以上
税制改正大綱 新産業育成へ投資減税
自民、公明両党は12日、2020年度税制改正大綱を決めた。当該大綱のポイントは以下の通り。
| 資産作り | 確定拠出年金で企業型は70歳、個人型は65歳まで掛金の拠出可能へ |
| NISAを2024年に2階建ての新制度へ。 積立NISAは期間延長 |
|
| ネットで少額出資しやすく、エンジェル税制を拡充 | |
| 未婚のひとり親 | 年収678万円以下を対象に35万円を所得控除 |
| 富裕層 | 5千万円超の海外資産を持つ富裕層の資産把握を厳しく |
| 新興企業 | 大企業からスタートアップへの1憶円以上の出資に税優遇 |
| 連結納税 | グループ各社が別々に申告・納税する仕組みに。研究開発費の優遇枠はグループ間で共有 |
| 大企業 | 資本金100憶円超の大企業は飲食費の損金算入ができなくなる |
| 資本取引を通じて意図的に赤字を出す節税策に対策 | |
| 5G網の整備を支援。投資額の15%を税額控除。2020年度から2年間の時限措置 |
償却資産の申告(固定資産税): 申告書提出期限1月末
1. 固定資産税とは
固定資産税とは、1月1日現在で国内に土地、家屋又は償却資産(事業用資産)の固定資産を所有している者に対し、当該固定資産の評価額を基に算定された税額を資産の所在する市区町村(東京23区内は特例で区でなく都が課税)が課する地方税をいいます。
課税対象のうち、土地と家屋については登記簿等で市区町村では実在を確認できることになりますが、償却資産は毎年1月1日に所有しているものを自己申告を通じて、固定資産(償却資産)課税台帳に登録され課税されることになります。
2. 固定資産税(土地・家屋)
土地と家屋については、登記事項のため市区町村は、その登記簿等に基づいて固定資産税を計算し、1月1日現在の所有者に納税通知書と同時に課税明細書が5月末前後に送られてきますので、当所有者は申告等の手続の必要はありません。
税率はいずれも1.4%であり、土地は課税標準額に、家屋は課税台帳に登録されている価格に掛けて税額が算定されます。なお、市区町村内に所有する固定資産の課税標準額が、土地30万円、家屋20万円未満の場合には、固定資産税は課税されません。
納期は年4回(6月、9月、12月、2月:市区町村によっては1ヶ月早まるところもあります)です。土地とは、田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野等です。家屋とは、住宅、店舗、工場、倉庫等です。
3. 固定資産税(償却資産)
償却資産とは、土地と家屋以外の事業用に供している減価償却対象資産のものをいいます。1月1日現在で償却資産を事業用に使用している所有者(法人や個人事業者)は、所定の申告書を作成し、1月31日までに償却資産の所在する市区町村ごとに提出しなければなりません。課税対象が償却資産に対する税金ということで償却資産税とも言われています。
(1)償却資産の対象(課税資産)
法人や個人で事業を行っている方で事業のために使用している減価償却の対象資産のうち、その取得価額が一定金額以上のものについては、償却資産となります。具体的には、以下のようなものが償却資産となっています。
① 構築物
舗装路面、庭園、門・塀・緑化施設等の外構工事、看板(広告塔等)、ゴルフ練習場設備等、並びに建物付属設備(受変電設備、予備電源設備、その他建築設備、内装・内部造作等)
② 機械及び装置
各種製造設備等の機器及び装置、クレーン等建設機械、機械式駐車設備等
③ 船舶
ボート、釣船、漁船、遊覧船等
④ 航空機
飛行機、ヘリコプター、グライダー等
⑤ 車両及び運搬具
大型特殊自動車、構内運搬車,貨車、客車等
⑥ 工具、器具及び備品
パソコン、陳列ケース、看板(ネオンサイン)、医療機器、測定工具、金型、理容及び美容機器、ルームエアコン、自動販売機等
以下の資産も償却資産として申告の対象になります。
・ 建設仮勘定で処理されている資産、簿外資産及び償却済資産であっても、1月1日現在で事業用に供することができる場合
・ 遊休又は未稼働の資産であっても、1月1日現在で事業用に供することが出来る状態にある場合
・ 耐用年数が1年未満又は取得価額が10万円未満の資産であっても、有形固定資産として計上し、減価償却している場合
・ 青色申告の中小企業法人・個人事業者については、取得価額が30万円未満の資産を一時に損金算入する処理(少額資産償却特例)がなされていても、この特例は国税(法人税・所得税)に関する制度であり、この地方税の固定資産税には適用されません。従って、この資産は固定資産税の申告対象となります。
その他、 所有権が留保されている資産(賃貸資産、 等)
(2)償却資産の非課税資産
償却資産の対象とならないものは、次のとおりです
(1) 土地や建物(いずれも登記対象資産であることから、 所有者を把握できますので敢えて償却資産として申告の対象にしていません)
(2) 自動車税・軽自動車税の課税対象(2重課税の排除)
(3) 無形固定資産(特許権、 営業権、 ソフトウェア等)
(4) 繰延資産
(5) 生物(観賞用、 興行用その他これらに準ずる生物は除く)
(6) 金額的に少額資産と言われる下記の資産:
① 取得価額が10万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたもの
② 取得価額が10万円以上20万円未満の資産で、 税務上、 3年間で一括償却しているもの
注1: 租税特別措置法の規定により、 一定の中小企業に対する特例を適用して、 取得価額が30万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたものでも、償却資産の申告対象になっています。
注2: 上記以外の資産で企業や個人で事業を行なっている方が事業のために用いることができる資産、 即ち、 構築物、 機械及び装置、 船舶、 航空機、車両及び運搬具、 工具・器具及び備品で有形減価償却資産が対象となります。 次のものも償却資産の対象となります。
(1) 建設仮勘定で計上されている資産、 簿外資産及び償却済資産であっても事業用に供することができるもの
(2) 遊休又は未稼働のものであっても事業用に供することができるもの
(3) 改良費(資本的支出)
(4) 家屋に施した建築設備・造作等のうち、 償却資産として取り扱うもの
建築設備における家屋(建物・建物附属設備)と償却資産とを区分して評価することになります。 家屋と設備の所有者が同一の場合に、 償却資産として取り扱うものは次の要件を満たすものです。
① 構造的に家屋と一体的でないもの (野外給水塔、 独立煙突等)
② 家屋から独立した機械及び装置として性格の強いもの (受・変電設備)
③ 特定の生産又は業務に使用されるもの (動力用配線設備等)
④ 単に移動を防止する程度に家屋に取り付けられたもの (ルームエアコン等)
⑤ 顧客の求めに応ずるサ-ビス設備
(4)固定資産税額等の算出方法(資産が所在する所轄の市区町村ごとに行ない、 申告書を作成します)
(1) 評価価額の算出方法
① 取得初年度
評価価額 = 取得価額 X 耐用年数に応ずる減価率 X 1/2(50%)
② 取得後2年目以降
評価価額 = 前年度の評価価額 X 耐用年数に応ずる減価率
(2) 固定資産税額の算出方法
① 課税標準額の集計(1,000円未満切捨て)
各資産の評価価額を集計(合算)した額が課税標準額(決定価格となります)です。
課税標準額が150万円未満の場合には、 固定資産税は課税されません。
② 税額の計算
固定資産税額(100円未満切捨て) = 課税標準額(1,000円未満切捨て) X 税率(1.4%)
(5)償却資産の申告
所定の償却資産申告書、 種類別明細書、 等の書類を資産の所在する市区町村ごとに作成し、 1月末までに提出(申告)することになります。 申告方式には、 以下の2方法がありますが、通常は一般方式を採用しています。
その方式とは、 前年中(申告対象年度)に増加又は減少した資産内容を申告するのみで、 評価額、 税額等は所管事務所で行う方式です。
注1: 前年中に増加又は減少した資産が無い場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「増減なし」等を付記します。
注2: 事業を行なっていますが、 対象償却資産を所有されていない場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「該当資産なし」を付記します。
以上