政府は公的年金の受け取りを始める年齢について、受給者の選択で70歳超に先送りできる制度の検討に入った。2020年中にも関連法改正案の国会提出を目指す。
現行の公的年金制度では、受け取り開始年齢は65歳が基準で、受給者の希望に応じて、原則として60~70歳までの間で選択できる。受け取り開始を65歳より後にすれば毎月の受給額が増え(1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ前月の受給額が増え、70歳まで遅らせた場合には、受給額が42%増える)、前倒しすれば減る(1カ月あたり0.5%ずつ減額)仕組みだ。これを、70歳超に先送りした場合の上乗せ率を現行の0.7%より高くする方針です。
民法の相続分野の見直しを議論する法制審議会の民法部会は16日、民法改正の要綱案をまとめた。残された配偶者の保護を強化するのが柱。配偶者が自身が亡くなるまで今の住居に住める「配偶者居住権」を新設する。生前に書く「自筆証書遺言」を全国の法務局で保管できる制度もつくり、相続を巡るトラブルを減らす。
遺産分割の協議が調うなどすれば、配偶者はそれまでの住居に住み続けられる「配偶者居住権」を新設する。又、遺産分割が終わるまで、それまでの住居に無償で住める「短期居住権」も新たに設ける。新たな制度では婚姻期間が20年以上で、配偶者に住居を生前贈与するか遺言で贈与の意思を示せば、その住居は遺産分割の対象にしない。
生前に被相続人が書く自筆証書遺言は、今後、公的機関である全国の法務局で保管できるようにして、相続人が遺言があるかを簡単に調べられるようにする。法務局に預けた場合は、家庭裁判所で相続人が立ち会って内容確認する「検認」の手続きを不要とする。又、財産目録はこれまで自筆に限定していたが、パソコンでの作成可能となります。
被相続人の親族で相続の対象にならない人でも、介護や看病で被相続人の財産の維持などに貢献した場合は、相続人に金銭を請求できる仕組みも取り入れられます。又、遺産分割の協議中でも、相続した預貯金を葬儀費用や生活費用に充てるため、仮払いを認める制度も設けられます。
2019年1月から、スマートフォン(スマホ)などを使い、コンビニエンスストアで納税できるようになる。納税者が使いやすい環境を整え、スマホやタブレット端末などからの電子申告・納税の利用を促す。
2018年1月に始まった積み立て方式の少額投資非課税制度「つみたてNISA」が個人マネーの新たな受け皿になりつつある。主な証券・銀行12社の2017年末時点の口座申し込みは約25万件となった。つみたてNISAは年間40万円まで投資可能で、20年間は運用益が非課税となる
自民、公明両党は14日、2018年度の与党税制改正大綱を決定した。年収850万円超の会社員への所得増税やたばこ増税で、約2,800億円の増税となる。森林保護や観光インフラ整備の財源とする27年ぶりの新たな国税も創設。個人の増税が際立つ一方、法人税は賃上げや設備投資を進める企業に減税するメニューが並び、増減税はほぼ同額となった。
自民党税制調査会は22日に総会を開き、2018年度税制改正の本格的な議論をスタートさせた。高所得者に負担増を求める所得税改革を最優先課題に掲げる。2019年10月に予定する消費税10%への引き上げを控えるなか、増税日程を意識するほど改革は進めにくくなる。
| 項目 | 内容 | 想定する時期 |
所得税改革、
くらし
| 想定する時期 | 高所得の会社員や年金受給者の控除縮小。基礎控除は拡大
| 未定 |
| 出国(観光促進税) | 出国時に1,000円 | 2019年度 |
| 森林環境税 | 一人あたり年1,000円 | 2020年度以降 |
| 紙巻きたばこの増税 | 4年かけて3円増税 | 2018年度から |
| 加熱式たばこの増税 | 増税し企業間の税率差見直し | 2018年度から |
企業向けなど | 賃上げ減税 | 3%以上賃上げで大幅減税 | 2018年度 |
| 生産性向上 | 中小の固定資産税を3年間ゼロ | 2018~2020年度 |
| 経営者の代替わり円滑化 | 承継時に全株式で納税猶予 | 2018年度から10年簡 |
| 地方消費税の配分基準見直し | 人口比率を半分程度に引き上げ。都市部は減収 | 2018年度 |
政府・与党は2018年度税制改正で、中小企業の世代交代を促すため税優遇を拡大する。承継する非上場株式のすべて(現在は3分の2)について相続税を猶予し、事業を継続する限り支払わなくてよくする。日本は後継者難で2025年には130万社近い中小が廃業の危機に陥る見通しだ。政府は事業承継を円滑に進めるため今後10年間を集中対応期間とし、中小の成長力強化やM&A(合併・買収)市場整備などを含む緊急対応作のパッケージを打ち出す。
| 「事業承継税制」見直しのポイント | |
現行 | 項目 | 10年間限定(見直し後) |
発行済株式総数の3分の2まで | 納税猶予対象株式 | 全株を対象に |
(相続税)課税価額の80% | 納税猶予額 | 増額を検討 |
(贈与税)課税価額の全額 | | |
雇用の8割以上を5年間維持 | 雇用 | 雇用計画策定等の条件付きで撤廃 |
財務省は2018年度税制改正での所得税改革案を与党に提案する。会社員の給与収入から差し引ける給与所得控除を縮小する一方、全納税者に適用する基礎控除を引き上げる。年収800万~900万円を上回る会社員が増税となり、フリーランスなど請負契約で働く人らは減税。
項目 | 現行 | 財務省案 |
給与所得控除 | 上限220万円(年収
1,000万円以上) | 上限188万円程度(年収800万
円以上)に引下げ |
基礎控除 | 38万円 | 50万円程度に引上げ |
公的年金等控除 | 年金控除に上限なし | 年金以外の一定所得金額以上
に上限を設ける |
財務省と経済産業省は2018年度の税制改正で、賃金を上げる企業と事業を後継者に引き継ぐ企業への税優遇を充実する方針だ。企業の生産性を高めるため、人材への投資と事業承継を支援する。
国税庁は2019年1月から、スマートフォン(スマホ)を使って確定申告ができるようにする。本人確認に使うマイナンバーカードと、このカードの情報を読み取れる機能がついたスマホの普及を見据え、現在の申告システムを刷新する。