空き家活用促進法成立 管理不全は税優遇解除

空き家の発生を抑えて活用を促す空き家対策特別措置法などの改正案が7日の参院本会議で可決、成立した。窓や壁に一部が壊れるなど管理状態が悪い空き家「管理不全空き家」について税優遇の対象から外す。市区町村から勧告を受けて従わなかった場合、住宅用地の固定資産税を最大6分の1に減額する措置を解除する。

新型株式報酬は「給与」 国税庁が説明 税率最大55%に

国税庁は29日、信託型(2014年に登場し、事業が軌道に乗る前の株価で株式購入権を発行し、信託会社などにプールする仕組)と呼ばれるストックオプション(株式購入権)について、給与としての課税処理が必要だと示した。企業の多くは購入権を株式に転換した際でなく、その株式を市場で売却した際の譲渡所得(売却益)に対して20%の税金がかかると認識していたが、国税庁は株式に転換した際に給与所得として課税し、最高税率は55%となるとする見解を示した。又、給与所得は会社側に源泉徴収義務が生じる。想定より税負担が増えることになることから、会社では当該信託型の見直しが行われることが予想されます。

令和5年10月1日からのインボイス制度の見直し

インボイス制度が令和5年10月1日より導入されることは各種媒体から公表され、関係事業者はその対応・準備に追われているかと思います。特に小規模事業者には、その負担や影響が大きいことは否めません。既にご存知かと思いますが、令和5年度税制改正で多少緩和となる当制度の見直しがありましたので、以下で確認しておきたいと思います。
1. 適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間で免税事業者が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者として課税事業者)になった場合には、その課税期間の消費税の納税額は課税売上の消費税額の20%になるという経過措置です。この適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記する必要があります。
但し、課税期間の特例の適用(課税期間の短縮)を受ける課税期間及び令和5年10月1日前から課税事業者選択届出書の提出により免税事業者ではない日の課税期間には適用がありません。
なお、適用を受けた適格請求書発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を税務署に提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用が認められます(原則は、提出日の翌課税期間から適用)。

2.一定規模以下の事業者は1万円未満の課税仕入れにつき帳簿の保存のみで仕入税額控除可能(課税仕入額10,000円未満の適格請求書(インボイス)の不要特例)
基準期間(2期間前)の課税売上高1億円以下又は特定期間(前期の前半6ヶ月)の課税売上高5,000万円以下の小規模事業者ならば、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入において、支払対価(税込)10,000円未満ならば帳簿記載のみで仕入税額控除が可能となります(インボイスは不要)。

3.税込10,000円未満の売上返還等(値引・返品)における適格返還請求書の交付不要(全事業者対象)
税込10,000円未満の売上返還(値引・返品)に対して、適格返還請求書の発行不要となりますので、振込手数料相当額を控除して入金された場合にも売上返還として処理した場合には適格返還請求書の発行不要となります。銀行の振込手数料は、課税仕入れとして処理するか売上返還等として処理するか選択適用が認められています。支払手数料として課税仕入れとして処理している場合には、原則、金融機関や取引先からの支払手数料に係るインボイスが必要となります。

4.適格請求書発行事業者登録制度の見直し
免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15日前の日(現行: 1月前の日)までに登録申請書の提出義務となります。この場合において、当該課税期間の初日後に登録がされたときでも、同日に登録を受けたものとみなされます。なお、 適格請求書発行事業者が登録の取消しの提出期限も同様の見直しとなります。
又、適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置の適用により、令和5年10月1日後に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、その登録申請書に、提出する日から15日を経過する日以後の日を登録希望日として記載するものとする。この場合において、当該登録希望日後に登録がされたときでも、当該登録希望日に登録を受けたものとみなされます。
(注)上記の改正の趣旨等を踏まえ、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、その申請期限後(令和5年3月31日後)に提出する登録申請書に記載する困難な事情については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする(登録申請が令和5年4月1日以降になっても、困難な事情理由の記載は不要で「困難な事情」とだけ記載すれば登録申請可能となりますが、登録完了に時間がかかるようですので、早目の申請が望まれます)。

「デジタル遺言」制度創設へ ネットで作成 押印・署名不要 

政府は法的効力がある遺言書をインターネット上で作成・保管できる制度の創設を調整する。署名・押印に代わる本人確認手段や改ざん防止の仕組みをつくる。デジタル社会で使いやすい遺言制度の導入により円滑な相続につなげる。2024年3月を目標に新制度の方向性を提言する。

令和5年度税制改正における相続時精算課税制度・暦年課税制度の見直し

Ⅰ. 相続時精算課税制度の見直し
1.令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用となる改正です。
相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円(特定贈与者ごとの基礎控除額であるが、同一年に2人以上の特定贈与者からの贈与がある場合には、110万円を各特定贈与者からの贈与額に応じて按分する)を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
つまり、非課税限度額2,500万円とは別枠で年間110万円の控除が可能となります(年間110万円を超えたら贈与税の申告が必要となります。超えなければ申告不要)。
(贈与額-基礎控除110万円-特別控除累計2,500万円)×一律20%=贈与額
この改正により、暦年課税と同額の基礎控除が認められることから、この相続時精算課税制度の活用が促進することが期待されます。

2.令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用となる改正です。
相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害(震災、風水害、火災等)によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする。

3.まとめ

相続時精算課税現行改正
贈与額の計算(贈与額-特別控除累計2,500万円)×一律20%(贈与額-基礎控除110万円-特別控除累計2,500万円)×一律20%
贈与税申告少額の贈与額でも贈与税の申告が必要年間の基礎控除110万円を超えた場合には贈与税の申告が必要
相続財産の加算すべき贈与財産取得した全ての相続時精算課税の財産取得した全ての相続時精算課税の財産(但し、年間の基礎控除110万円内の控除分を除く)
又、贈与財産が災害により一定の被害を受けた土地・建物である場合は相当額の控除可能

参考:相続時精算課税制度とは
この制度は、贈与時の税負担を一時的に軽減させ、相続時に税額を精算(相続時には過去の全ての贈与財産が相続税の課税対象となる)するということから、相続税の仮払的な性格を有するものです。
この制度の適用要件として、贈与した年の1月1日現在で60歳以上の親(特定贈与者)から推定相続人(贈与時に最先順位の相続権を有する者)である、その年の1月1日現在18歳以上の子(推定相続人)及び孫<孫になった時前の贈与は対象外> /代襲相続人を含む)への財産の生前贈与であり、贈与税の申告期限内に選択届出書を選択初年度に所轄税務署に提出する必要があります。 養子も実子扱いで、 その人数の制限はありません。 この選択は、父母ごとに行うことができますが、一度選択後には撤回することはできず、特定贈与者が死亡するまで継続適用しなければなりません(贈与財産の種類、 金額、 贈与回数には制限がありません)。 一端選択すると、 その後はその特定贈与者からの一般贈与(基礎控除110万円)の暦年課税選択をすることができませんし、 改正前では、少額贈与でも相続時精算課税として贈与税の申告をしなければなりませんでした。
受贈財産は物納財産になりませんし、 贈与を受けた土地等が小規模宅地等の特例の適用を受けることもできません。
受贈者が特定贈与者より先に死亡された場合には、 相続時精算課税に係る受贈者の権利と義務は、 受贈者の法定相続人に法定相続分で承継となります。
受贈者が外国に居住している場合や国外財産の贈与でも適用対象となります。
孫への贈与の場合に将来のリスクを十分に検討する必要があります (例えば、 孫は相続税の納税義務者となります。 相続時の納税資金の必要性、 相続税は2割加算、 等)
この改正前の制度での贈与税額は、特定贈与者ごとに累積して2,500万円までの特別控除が利用でき、これを超えた課税価格の部分には一律20%を掛けた金額が贈与税額となります。
歴年内に受けた贈与財産の合計額 - 特別控除額(注) = 課税価格
  課税価格 × 20% = 贈与税額
(注)2,500万円-前年度までに使用した特別控除額 = 当年度の特別控除額(上限額)

2.暦年課税制度における生前贈与の相続財産加算期間延長
令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について、暦年課税における生前贈与の加算期間が3年から7年に延長となります。
相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額:加算不要の100万円は「贈与者ごと」の贈与財産の価額から控除することになります)を相続税の課税価格に加算することとする。
つまり、現行の3年以内のものが、改正により、
3年以内の贈与額全額+(延長した4~7年の贈与額合計-100万円)を相続税の課税価格に加算すことになります。
改正後の相続開始日と加算期間との関係は以下の通りです。

相続開始日加算期間(相続開始日から) 
令和8年12月31日まで3年前改正の影響無し
令和9年度内3年超又は4年前未満1年ずつ段階的に加算期間が延長されていく
令和10年度内4年超又は5年前未満
令和11年度内5年超又は6年前未満
令和12年度内6年超又は7年前未満
令和13年度以降7年前加算期間が7年となる

なお、相続又は遺贈により財産を取得しなかった者、例えば孫が生命保険や死亡退職金等のみなし相続財産を取得する場合には、生前贈与分が加算対象になる点に留意する必要があります。

参考:暦年課税制度とは
歴年内(1月1日から12月31日までの1年間)に受けた贈与財産の合計額 - 基礎控除額 110万円 = 課税価格
年間総額110万円までの贈与を受けても贈与税の課税とはなりません。 年間110万円を超える贈与を受けた場合の贈与税額は、 以下の算式となります。
  課税価格 × 税率(①又は②)- 控除額 = 贈与税額
① 特定贈与:直系尊属(父母・祖父母等)からの特定贈与:受贈者は1月1日現在で18歳以上の卑属(子・孫等)が対象であり、一般贈与よりも税率が軽減されています。
直系尊属(父母・祖父母等)からの特定贈与の場合には、直系尊属関係が確認できる戸籍謄本等を申告時に添付が必要となります(2回目以降は添付不要)。
② 一般贈与:上記の特定贈与以外となる贈与。
なお、 同一年中に特定贈与財産と一般贈与財産の両方がある場合には、 その贈与財産合計額から基礎控除額(限度110万円)を控除した総課税価格に各該当税率を乗じて算出された税額に対して、 各贈与財産割合(特定贈与財産額、 又は一般贈与財産額 / 贈与財産合計額)を乗じて贈与税額を導くという調整計算が必要となります。

暦年課税の場合、 原則として相続開始前3年以内の贈与財産は相続財産として加算する必要がありましたが、改正で7年以内となりした。

通常、贈与を行う場合には贈与契約書の作成をお願いしておりますが、これは贈与の履行時期の証明等の問題を回避する為であり、課税実務上、贈与による財産の取得時期は、原則として、贈与契約書(書面)によるものはその契約の効力が発生した時、贈与契約書(書面)によらないものはその履行の時とされています(相続税基本通達1の3・1の4共・8)。

バイト・パートに雇用保険 政府検討

政府は週20時間未満働く短時間労働者も雇用保険に加入させる検討に入った。非正規社員であっても正規社員と同じように子育てや学び直しの支援を受けられるようにする。

公示価格 15年ぶり上昇率 全国1.6% 

国土交通省が22日に発表した2023年1月1日時点の公示価格は、住宅地や商業地といった全用途の全国平均が前年比1.6%上昇した。上昇は2年連続で、リーマン・ショック前の2008年(1.7%)に次ぐ水準となった。往来の回復や海外マネーの流入で都市部の商業地が伸びた。
2023年公示地価の上昇率(1月1日時点):

地域住宅地商業地全用途
2023年前年2023年前年2023年前年
全国平均1.40.51.80.41.60.6
三大都市圏1.70.52.90.72.10.7
東京圏2.10.63.00.72.40.8
大阪圏0.70.12.30.01.20.2
名古屋圏2.31.03.41.72.61.2
地方圏1.20.51.00.21.20.5

公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。

 公示地価基準地価路線価固定資産税評価額
調査主体国土交通省都道府県国税庁市町村
調査地点数約26,000約21,700約334,000多数
調査時点1月1日7月1日1月1日1月1日(原則3年に1回、 次回は2024年)
公開時期3月9月7月又は8月3月
公開サイト国交省(土地総合情報ライブラリー)国交省(土地総合情報ライブラリー)国税庁資産評価システム研究センター
その他調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格(更地価格)の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。調査対象は地方の調査地点が多く、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から 相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準

年収の壁と就業調整

パート主婦の中で給与収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担増になることから就業調整する方がおられます。この問題に関しましては、政府でも対応策を検討すると表明しています。以前にもこの年収の壁を取り上げましたが、再確認してみたいと思います。年間給与収入額からの年収の壁に関して、一般的なケースでは、以下の様に指摘されています。

年間給与収入額影響する基準影響する人影響する内容
103万円超所得税課税パート者本人所得税が発生する
106万円超本人の社会保険の加入基準従業員数101人以上の会社勤務のパート者本人(所定の適用条件を満たす場合)パート者本人の社会保険の加入基準であり、社会保険料(厚生年金・健康保険料)が発生する。将来、厚生年金が受領できます。
130万円超夫の社会保険の被扶養者基準従業員数100人以下の会社勤務のパート者本人夫の社会保険の被扶養者基準であり、本人が被扶養対象外になることから、社会保険料(国民年金・国民健康保険料等)が発生する
150万円超配偶者特別控除夫の配偶者特別控除(最高38万円)が減額となっていく。

なお、被扶養者に関しましては所得税上と社会保険上の取扱いが、以下の様に異なりますので留意する必要があります。
1.所得税上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「所得税の扶養」とは、扶養している親族等の人数に応じて所得の控除を受けることができる制度のことになります。
① 「生計を一にする(家計を共にしていれば同居でなくてもOK)」
② 以下の所得基準(収入金額ではありません)があります。
年間所得金額が48万円以下(給与収入で103万円)であること(いわゆる「130万円の壁」)。なお、70歳以上の老人扶養は、同居での所得で58万円以下(年金収入で168万円・給与収入で113万円)・同居外での所得で48万円以下(年金収入で158万円・給与収入で103万円)であること。
2.社会保険上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「社会保険の扶養」とは、被保険者の扶養している親族等が、自分自身で社会保険料を負担することなく保険の給付を受けられる制度のことになります。
① 「三親等以内の親族は同一の世帯(同居して家計を共にしている)」であること
② 年間の収入金額(所得金額ではありません)が130万円未満(60歳以上は180万円未満)であること、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であること。いわゆる「130万円の壁」と言われるのは、この認定基準があるからです。
③ 75歳未満であること(従って、75歳以上は扶養者になれません。何故ならば、75歳から後期高齢者医療保険制度に移行になりますので、社会保険制度への加入資格はありません)
3.社会保険加入条件とは
なお、社会保険加入で収入金額を「106万円」未満に収めたいと言われることがありますが、いわゆる「106万円の壁」とは、働く方でその方自身が厚生年金保険や健康保険といった社会保険への加入が必要となる収入基準のことです。こちらの保険適用基準は、以下の一定の条件を満たした場合に対象となります。
正社員の場合には、所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上でありますが、パート・アルバイトなどの短時間労働者の場合には、従業員101人以上の企業(特定適用事業所)に勤務している方で、かつ、 
① 週20時間以上働いている
週20時間を算出する際は、残業時間を合算せずに計算します。
② 1年以上継続して勤務する見込み
雇用契約書等に1年以上継続して勤務する見込みがあること。
③ 1カ月の賃金が8.8万円超
1カ月の賃金が8.8万円を超すというもの。1カ月の賃金が8.8万円を超すと、1年の年収が計算上、で106万円以上になります。ここでいう1カ月の賃金とは、雇用契約時の所定内賃金のみで、残業代、各種手当や賞与などは含みません。
④ 学生ではない
の諸条件を満たす場合には社会保険加入となります。なお、2024年10月から社会保険加入条件の従業員数が51人以上に引き下げられます。

2022年度(令和4年度) 個人確定申告

個人並びに個人事業者の方の令和4年度確定申告の時期がきました。 以下に、 令和4年度分の確定申告の提出期限及び確定申告の対象となる人(任意ではなく申告しなければならない人)、 等に関しまして概要を纏めてみました。 なお、 確定申告の対象者は前年度と変更はありませんが、 税金の申告は、 本人自ら課税金額や税額を計算し、 その税額を申告納付する制度「申告納税制度」を採用していますので、 期限後申告・納付となりますと延滞税等がかかります。
下記は、原則の確定申告の提出・納付期限となります。

令和4年度確定申告の提出・納付期限

所得の種類令和元年度申告期間・納付期限口座振替による納税日(振替日)
所得税令和5年2月16日(木)から3月15日(水)
なお、還付申告は令和5年1月から可能
4月24日(月)
(新規の利用者の方は「預貯金口座振替依頼書」を申告期限までに要提出)
消費税令和5年1月 から3月31日(金)4月27(木)
贈与税令和5年2月 から3月15日(水)非該当

(1) 申告書の提出方法には、 ①持参(所轄税務署等の所定の提出場所)、 ②郵送、 ③電子申告(e-Tax利用によりデータ送信、この利用には事前準備が必要となりますが、 所得税では一定の第三者作成の提出書類を省略可の恩典があります)、の方法があります。
(2) 納税方法には、 ①持参(所轄税務署)、 ②金融機関から納付書を付けて納付、 ③ダイレクト納付(e-Taxの利用で、 かつ、 事前にダイレクト納付利用届出書の所轄税務署に要提出)、 ④インターネットバンキング・クレジットカードによる電子納税、⑤口座振替(上記を参照) の方法があります。
(3) 平成25年度から25年間には、 復興特別所得税として各年分の所得税額に2.1%の税率を掛けて計算した税額が発生することに留意してください。
(4) 平成28年分以降の確定申告にあたり、 マイナンバー(個人番号)の記載が必要となります。 申告書を書面提出する際には、 申告者のご本人の本人確認書類(番号確認書類及び身元確認書類)の提示又は写しの添付が必要です。 具体的な本人確認書類とは、
① マイナンバーカード(個人番号カード)
② 通知カード又は個人番号付の住民票の場合には、 身元確認書類として顔写真付きの運転免許証、 等の点、 又は顔写真付きでない場合には、 2点の確認書類(保険証、 年金手帳、 等)

A. 所得税
1. 令和4年度確定申告の主な改正・留意事項
令和2年度には基礎控除等に改正事項がありましたが、令和4年度には特筆すべき事項はありません。なお、申告書様式において、令和3年及び令和4年にいくつかの改訂があります。
(1)申告書Aは廃止され、申告書Bに一本化されます。
(2)納税者の押印欄の廃止
(3)事業収入の区分欄の創設
帳簿記帳方法に関しまして、5区分から該当する数字(1から5)を記入:会計ソフト等での記帳の場合は、数字2
(4)不動産収入の区分欄の創設
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例適用がある場合は、区分1欄に「1」を、区分2欄には上記(3)と同様な5区分から該当数字を記入
(5)雑収入「その他」欄の区分欄の新設
個人年金に係る収入がある場合は「1」、暗号資産取引に係る収入がある場合は「2」、双方の収入がある場合は「3」を区分欄に記載
(6)第1表~第5表の記入欄
① 第1表~第2表:記入欄の新設
② 第3表~第4表:記入欄の見直し
③ 第5表:廃止(修正申告は第1表及び第2表で提出)

2. 令和4年度確定申告が必要となる対象者の方
1. 給与所得者(サラリーマンの方)
① 給与の年間収入金額が2,000万円超となる方(年末調整対象外の方)
② 給与(年末調整済)を1箇所から受けていて、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円超となる方 (給与収入額が2,000万円以下で、 給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合には申告の必要はありません)
③ 給与(源泉徴収済)を2箇所以上から受けていて、 年末調整されなかった給与の収入金額と、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円超となる方。
但し、 給与所得の収入金額から、 一定の所得控除の金額(雑損控除、 医療費控除、 寄付金控除及び基礎控除の項目を除く)の差引金額が150万円以下で、 かつ、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下となる方は、 申告不要となります。
2. 上記の給与所得者以外の方、 又は個人事業者で納付税額が発生する方
事業所得や不動産所得等がある方で、 各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
3. 源泉徴収の適用を受けない給与等の支払を受ける方
① 家事使用人等の方で給与から源泉所得税を徴収されていない方: 常時2人以下の家事使用人だけを雇用している使用人等には源泉徴収の義務が無いことから、 その使用人等から給与を受給されていた方
② 在日外国公館から給与等の支払を受けた方
③ 国外から給与、 退職金等の支払を受けた方
4. 同族会社の役員やその親族等で、 その会社から給与以外に利子、 家賃、 使用料等の支払を受けている方は、 その利子、 家賃、 使用料等は全て申告の対象  
5. 災害減免法の適用を受け給与に対して源泉徴収の猶予や源泉徴収税額の還付を受けていた方
6. 上記以外の方で納付税額がある方
各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
注1: 公的年金等に係る所得の確定申告不要制度
その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、 かつ、 その雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、 所得税の確定申告書の提出は必要ありません(申告されれば還付となる場合もありますので、 その場合には申告される方が有利となる場合もあります)。 なお、国外源泉で国内源泉税の対象とならない国外年金収入等がある場合には、この確定申告不要制度の適用対象外となります。
この所得税の申告不要となる場合であっても、 住民税の申告が必要となることもありますので注意が必要です。

公的年金等の受給者で所得税の申告不要な者でも、住民税の申告が以下のような場合には必要となります(主に住民税の減額になるケース有り)。
① 年金や給与の源泉徴収票に記載されていない所得控除(扶養控除、障害者控除、ひとり親控除、寡婦控除、医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料, 寄附金等)のある方は、住民税の申告で住民税が減少する可能性があります。
② 上記①の控除を追加したい方で、公的年金等収入が105万円(65歳以上の方は155万円)を超えている場合(この場合とは、公的年金等以外の合計所得金額が1千万円以下のケース)、或いは、超えていない場合でも公的年金等以外の所得金額がある場合。
③ 日本年金機構等に扶養親族等申告書を提出しているが、その内容に変更がある場合等。

注2: 確定申告不要(任意)となる方で申告すれば税金が戻ってくる方(還付申告者)
確定申告の総件数は2,000万件以上になるようですが、 この内の約半数近くが還付申告のものとなっているようです。 収め過ぎた税金を戻すためには確定申告書の提出が必要となります。 以下の様な場合には、 還付されるかもしれませんので調べてみてはどうでしょうか。
1. サラリーマンで年末調整を受けた方で次の年末調整では取扱わない項目があった方
① 一定金額以上の医療費(医療費控除: 限度額200万円)
生計を一にする家族の支払医療費が、 以下の金額以上になっている場合が対象:
所得が200万円以上: 支払医療費 – 保険給付金等 – 10万円 = 医療費控除額
所得が200万円未満: 支払医療費 – 保険給付金等 – 所得金額 × 5% = 医療費控除額
② 災害(地震、 台風等)や盗難により住宅や家財に被害を受けた場合(雑損控除)
災害の場合には、 災害減免法により所得税の軽減・減免を受けられることもあります。
③ 特定の寄付をされた方(寄付金控除や政党等寄付金特別控除)
④ 初めて住宅ローン控除を受ける方(住宅借入金等特別控除)
⑤ 年末調整時に提出ができなかった、 或いは洩れている控除項目がある方
生命保険料控除、 地震保険料控除、 配偶者特別控除、 各種の扶養者控除等
⑥ 中途退職され再就職しなかった方
退職までの給与収入に対する源泉徴収税額が年税額として過大となっているケースが殆どです。 又、 退職金に対して20%源泉になっている場合も可能性がありますし、退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になっている方。
2. 上場株式等に係る配当所得(申告分離課税選択)と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算
3. 予定納税されたが確定申告不要となった方
4. 所得が少ない状況で配当や原稿料収入等からの源泉徴収税額が、 本来の納付すべき税額よりも多額となっている方
5. 外国税額控除の適用がある方
6. 申告の要件となっている項目がある方
① その年の翌年以降に純損失又は雑損失の繰越控除を受けるため、 ② その年分の純損失の金額について純損失の繰戻しによる還付を受けるため、 ③ 居住用財産の買換又は特定居住用財産の譲渡損失及び繰越控除を受けるため、 等には確定申告の提出が必要となります。

B. 贈与税
ご存知かと思いますが、 暦年課税制度の場合には、下記に示す様に年間に受けた贈与額が110万円以下ならば非課税範囲のために贈与税の申告等は必要ありません。
1. 年間合計で110万円超の財産贈与(個人からの土地、 建物、 現金、 預貯金、 株式、 債権等の財産の贈与)を受けた方(暦年課税で下記の②の選択者を除く)
2. 相続時精算課税制度(60歳以上の父や母の直系卑属からの贈与者ごとに累積で特別控除額2,500万円)の選択者で財産贈与を受けた方(18歳以上の推定相続人の子、 並びに孫に限る)
3. 直近尊属から住宅取得等資金贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
特定受贈者(贈与年の1月1日現在18歳以上で合計所得金額2,000万円以下の者)が、 その直系尊属(親、祖父母等)から受ける居住用家屋の新築・取得・増改築等用に住宅取得等資金の贈与については、非課税措置の適用期限を令和5年12月31日まで延長し、 非課税限度額は以下のようになります。

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間良質な住宅用家屋(省エネ等住宅)左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
平成31年4月~令和2年3月3,000万円2,500万円
令和2年4月~令和3年12月1,500万円1,000万円
令和4年1月~令和5年12月(契約の締結時期を問わない)1,000万円500万円

4. 配偶者控除の特例(控除額2,000万円)を適用し、 配偶者から居住用不動産又はその取得資金の贈与を受けた方(婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与に限る)
5. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度、等
平成25年4月1日から令和5年3月31日までの期間に直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 この制度適用のためには、 受贈者は教育資金非課税申告書を金融機関等を経由して税務署に提出する必要がありますが、 申込時に対応されていると思いますので特に問題となることはないでしょう。

C. 消費税
個人事業者で下記に該当する方は納税義務者(課税事業者)として申告する必要があります。
1. 基準期間となる前々年度(令和2年度)の課税売上高が1,000万円超の事業者の方
2. 特定期間となる前年(令和3年度)の1月1日から6ケ月間の課税売上高が1,000万円超で、 かつ、 同期間の給与等支払総額が1,000万円超の事業者の方
3. 免税事業者となる方が、 課税事業者となることを選択(消費税課税事業者選択届出書を事前に提出)している方(簡易課税選択者も含む)
納税義務者の判定上の留意事項:
(1) 基準期間の課税売上高は、 消費税込の金額となり、 事業用資産(住宅用として貸付けていた建物等)の譲渡の対価金額も含まれます。
(2) 被相続人(亡くなられた方)の事業を相続により承継した相続人には、 被相続人が提出していた各種の届出書の効力は及ばないので、 新たに提出する必要があります。
(3) 新規開業又は相続により事業を承継したときに、 消費税課税事業者選択届出書を提出した場合の適用開始時期は、 当該課税期間か翌課税期間かを選択できます。
(4) 消費税課税事業者選択届出書を提出されている場合には、 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、 その効力が消滅することはありません。

以上が、所得税、贈与税、消費税に関する確定申告の対象者の概要です。