相続税額計算の基礎

相続税の課税方式は、昭和33年より遺産課税方式をベースに遺産取得課税方式という折衷法(法定相続課税方式)となっています。この法定相続課税方式とは、具体的には、被相続人(亡くなられた方)の遺産総額を、法定相続人の人数と法定相続分によって仮定計算による相続税額を算出し、その相続税額を各相続人が実際に取得した遺産価額の割合で按分し、その後に対象となる税額控除を反映して納税額を算出するというものです。相続税額計算ステップは、以下の様になります。

1.各相続人の遺産額を確定・計算(課税価格計算)

2.各相続人の遺産額の合計(課税価格総額の計算)

3.基礎控除額の計算

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数

4.課税遺産総額の計算

課税価格総額 - 基礎控除額 = 課税遺産総額

5.課税遺産総額に対する各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額の計算

6.各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額に対する相続税額の計算

7.各法定相続人分の税額の合計(相続税総額の計算)

8.相続税総額を各相続人の遺産額により按分計算

9.各相続人の納付税額の計算

各相続人の相続税額 + 2割加算 - 税額控除 = 納付税額

以下に、各計算ステップに対して概要を説明します。

1.各相続人の遺産額を確定・計算(課税価格計算)

取得財産の価格 –  債務・儀式費用 = 純資産の価格= 各人の課税価格
純資産の価格 + 相続開始前3年以内の贈与資産 + 相続税精算課税による贈与財産
本来の相続財産 + みなし相続財産 = 取得財産の価格

(1)相続開始前3年以内の贈与財産加算

原則、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得した場合、その財産価額を相続税の課税価格に加算して相続税を計算しなければなりません。なお、3年以内であっても贈与税の配偶者控除(居住用財産)等は、相続財産の加算対象になりません。(2)相続時精算課税制度の適用による贈与財産加算相続時精算課税制度の適用を受けた年分以降の贈与は、贈与税の申告の有無に係わらず全て相続財産の加算対象です。なお、特別控除枠を超えた贈与があり、その贈与税の申告が行われていない場合には、期限後申告を提出し納税します。

2.各相続人の遺産額の合計(課税価格総額の計算)

各人の課税価格を合計します(相続人分の総計)。

3.基礎控除額の計算

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数 = 基礎控除額

法定相続人に含められる養子の数は制限されています。最大2名(実子がいる場合には1名)まで養子として認められていますが、一定の場合(特別養子縁組により養子、配偶者の実子を養子、実子もしくは養子の死亡により代襲相続等)には、養子の人数制限はありません。

4.課税遺産総額の計算

課税価格総額 - 基礎控除額 = 課税遺産総額

5.課税遺産総額に対する各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額の計算

この分割額は、実際に財産を取得したかに関わりなく、法定相続人が法定相続分で分割したものとして仮定したものです。

6.各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額に対する相続税額の計算

各法定相続人に分割した課税遺産総額に対して、下記の税率を適用して税額を算出します。

相続税の速算表 (A×B-C = 税額)

(A)法定相続分の各人の取得金額(B)税率(C)控除額
1000万円以下10%0万円
1000万円超~3000万円以下 15%50万円
3000万円超~5000万円以下20%200万円
5000万円超~1億円以下30%700万円
1億円超~2億円以下40%1,700万円
2億円超~3億円以下45%2,700万円
3億円超~6億円以下50%4,200万円
6億円超~55%7,200万円

課税遺産総額×各法定相続人の法定相続割合分×税率-控除額=各法定相続人分の税額

7.各法定相続人割合分の税額の合計(相続税総額の計算)

各法定相続人分の税額の総額を算出します。

8.相続税総額を各相続人の遺産額により按分計算

相続税の総額 × 各人の課税価格/各人の課税価格の合計額 = 各人の相続税額

9.各相続人の納付税額の計算

各相続人の相続税額 + 相続税額2割加算 - 税額控除 = 各人の納付税額

(1)相続税額2割加算される相続人

2割加算される相続人は、配偶者及び1親等の血族(父母又は子とその代襲相続人及び養子も含む。但し、被相続人の養子の孫は除外)以外となっています。従って、 被相続人の孫や兄弟姉妹は2割加算の対象者です。

2割加算の対象者孫養子(代襲相続に該当の場合を除く)

兄弟姉妹(代襲相続人を含む)

法定相続人以外の受贈者等
2割加算の非対象者配偶者

一親等の血族(養子が、相続により被相続人である養親の財産を取得した場合においては、被相続人の一親等の法定血族となる)

代襲相続人である直系卑属(孫養子を含む)

(2)税額控除

各人の税額から次の該当する税額の控除があります。

① 贈与税額控除

相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けたものは、相続財産に加算されていますので、この部分の贈与税相当額は、控除の対象となります。

② 配偶者の税額軽減

配偶者は被相続人の財産形成に大いに寄与していること、及び将来の生活保障面を考慮して相続税の大幅な軽減を特例として認めています。

軽減額 = iとiiのうち少ない金額/課税価格の合計額 × 相続税の総額

ⅰ 課税価格の合計額×配偶者の法定相続分(1.6億円未満は1.6億円)

ⅱ 配偶者の課税価格

上記の算式を分かり易くすると、 配偶者が取得した遺産額のうち次のいずれか大きい方までは相続税がかからないことになっています。

(イ)総課税価格の金額に対する配偶者の法定相続割合相当額(総課税価格の金額の最低50%~最高100%)

(ロ)1億6千万円

総課税価格の金額が5億円でしたら、 相続人が配偶者と子であった場合には、その50%の2.5億円まで、 なお、 相続人が配偶者のみであった場合には、 その全額(100%)の5億円は配偶者には税額の軽減が図られることになります。

ただし、遺産分割が済んでいない場合には、この特例の適用はありません。なお、 相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が完了すれば、 この税額軽減の特例が受けられます。 この配偶者に対する税額軽減措置は、 非課税ではなく二次相続までの課税の繰延の性格を有しています。 配偶者の固有財産を調査して、 二次相続を想定した遺産分割を行うことが肝要です。

法定相続人と法定相続分の組合せ

法定相続人第1順位 (子)第2順位(直系尊属)第3順位(兄弟姉妹) 
配偶者1/2×2/3 ×3/4× 100%
血族相続人:
子(又は孫等1/2 100%×××××
直系尊属(親等)1/3100%×××
兄弟姉妹(又はその子)1/4100%×

×:相続人が死亡(又は不存在)している場合

 

③ 未成年者控除

相続人が20歳未満等に適用があります。

控除額 = (20歳-相続開始時の年齢)× 10万円

④ 障害者控除

相続人が年齢85歳未満等で障害者に適用があります。

控除額 = (85歳-相続開始時の年齢)× 10万円(特別障害者は20万円)

⑤ 相次相続控除

前の相続(1次)から10年以内に今回の相続(2次)が起こった場合、税額から一定額が控除されます。

⑥ 外国税額控除

国外にある財産にその所在する国で課税されていた場合、一定額が控除されます。

 

以上の計算結果で税額控除後で納付税額がマイナスになったときはゼロとし、さらに相続時精算課税に係る贈与財産の価額が存在していた場合には、その課税分の贈与税額を控除します。この控除後の金額が納税額となり、マイナスの場合には還付対象となります。

相続税の申告及び納付は、相続開始日(死亡日)から10ヶ月以内に行わなければなりません。なお、申告期限の延長が認められませんので、遺産分割協議が成立していない場合には、民法での法定相続分に従って仮定計算を行い、申告することになります。このような場合には、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減の特例等の適用は認められません。この申告後に遺産分割が確定し、申告との差額が発生した場合には、修正申告(増税のケース)、又は更正の請求(還付のケース)を行うことになります。

 

商業地 2年連続上昇 基準地価 訪日客効果一段と

国土交通省が19日発表した2017年7月1日時点の基準地価は、 全国商業地が前年比0.5%上がり、2年連続で上昇した。 2016年7月は前年比0.005%のプラスだった。訪日客の増加に伴い店舗やホテル用の土地が上がり、都市部では再開発がけん引役となった。全用途でみると、三大都市圏は1.2%のプラスで0.2ポイント上昇した。地方圏は0.9%のマイナスだったが、下落率は0.3%縮小した。

2017年基準地価の変動率(7月1日時点、 前年比%、 ▲は下落):

 

地域

住宅地 商業地 全用途
2017年 前年 2017年 前年 2017年 前年
全国平均 0.6 ▲0.8 0.5 ▲0.005 0.3 ▲0.6
三大都市圏 0.4 0.4 3.5 2.9 1.2 1.0
東京圏 0.6 0.5 3.3 2.7 1.3 1.1
大阪圏 0.0 0.0 4.5 3.7 1.1 0.8
名古屋圏 0.6 0.5 2.6 2.5 1.2 1.1
地方圏 1.0 ▲1.2 0.6 ▲1.1 0.9 ▲1.2
中核地方4市 2.8 2.5 7.9 6.7 4.6 4.0

 

公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。

公示地価 基準地価 路線価 固定資産税評価額
調査主体 国土交通省 都道府県 国税庁 市町村
調査地点数 約25,300 約21,700 約336,000 多数
調査時点 1月1日 7月1日 1月1日 1月1日(原則3年に1回、 次回は2018年)
公開時期 3月 9月 7月又は8月 3月
公開サイト 国交省(土地総合情報ライブラリー) 国交省(土地総合情報ライブラリー) 国税庁 資産評価システム研究センター
その他 調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。 調査対象は地方の調査地点が多く、 不動産鑑定士の評価を参考に調査し、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から 相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準 土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準

 

消費増税は予定通り 社会保障改革 財源に苦慮

安倍晋三首相は12日の日本経済新聞のインタービューで、社会保障制度の高齢者偏重を是正し、教育無償化や子育て対策などを通じて現役世代への再配分を充実させる考えを強調した。2019年10月の消費税率10%への引き上げを「予定通り実施する」と明言したものの、消費増税分の使途を見直し、教育無償化などの財源に充てることには慎重姿勢を示した。財政健全化を掲げながら新たな財源をどう確保するかで今後、対応に苦慮しそうだ。

都市農地維持へ税優遇 「生産緑地」2022年期限 転用を抑制

農林水産省と国土交通省は、都市部の農地「生産緑地」を維持するための対策に乗り出す。地主の相続税を猶予したり、硬直的な土地の貸し借りの仕組みを柔軟にしたりして、企業やNPOが借りやすくする。市民農園などの形で活用を促す狙いだ。生産緑地の多くは2022年に期間満了を迎え、宅地転用が加速する恐れがある。東京などでは今後、緑地の保全が課題になる。

現在の生産緑地は1992年、都市部に農地を残す目的で導入。地主には30年にわたる税優遇を認めるかわりに、営農を義務付ける。全国には約1万3千ヘクタールあり、2022年には全体の約8割の農地が優遇期間である30年の期限を迎える。期限切れの際、地主は利用を10年延長するか、市区町村に農地の買い取りを求めるか選べるが、営農をあきらめる人が増えれば、一気に宅地化が進む可能性がある。

広大地の評価方法の見直し(平成30年1月1日以後の相続等から)

平成29年度税制改正で広大地の評価方法の見直しがありました。 現行の面積に比例的に減額する評価方式から、各土地の個性に応じて形状、面積に基づき評価する方式に見直すとともに、適用要件を見直すこととされました。呼称も、「広大地の評価」から「地積規模の大きな宅地の評価」に変更になっています。

現行の評価方法では、適用要件が相対的な曖昧さがあり適用にあたり納税者と税務署との間で意見相違があり訴訟等となるケースが少なくありませんでした。又、個別の土地の形状等とは関係なく面積に比例して減額するために、この評価額が実際の取引価額と大きく乖離し下回るケースが生じていました。そこで、改正の評価方法は、

① 適用要件の簡素化

② 個別の土地の形状・面積に基づき評価

ということとなり、新たに広大地となるケースが増える半面、これまでよりも評価減額が縮小される傾向にあります。

 

1.広大地評価の算式 

現行

(評価通達24-4)

路線価 X 面積 X 広大地補正率 = 評価額

広大地補正率 = 0.6 - 0.05 X 広大地面積 / 1,000㎡

(下限値0.35)

改正

(評価通達案20-2)

路線価 X 面積 X 補正率 X 規模格差補正率 = 評価額

補正率 = 形状(不整形・奥行)を考慮した補正率(評基通15~20)

規模格差補正率 = 面積を考慮した補正率

各補正率は全て外部専門業者の実態調査に基づき設定

 

2.平成30年1月1日以後の相続等からの広大地適用要件(改正)

広大地になる要件として、「地積規模の大きな宅地」と「一定の地区」の要件を満たすのであれば広大地の評価が適用されることになり、間口が広がることになります。

(1)「地積規模の大きな宅地」とは

地積が1,000㎡(三大都市圏では500㎡)以上の宅地で、次のいずれかに該当する宅地は除かれます。

① 市街化調整区域(宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域を除く)に所在する宅地

② 工業専用地域(都市計画法8①一)に所在する宅地

③ 容積率が400%(東京都23区においては300%)以上の地域に所在する宅地

市街地の農地・山林・原野も地積規模の大きな宅地の評価対象となります(これらの土地は宅地比準方式により評価します)。

「三大都市圏」とは、

ア 首都圏整備法に規定する既成市街地又は近郊整備地帯

イ 近畿圏整備法に規定する既成都市区域又は近郊整備区域

ウ 中部圏開発整備法に規定する都市整備区域

 

(2)「一定の地区」とは

財産評価基本通達14-2(地区)の定めにより、適用対象となる地区が普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地区に所在する宅地であること。

 

(3)広大地の評価額

① 広大地が路線価地域にある場合

財産評価基本通達案(20-2)では、次の様に新設されています。

広大地の評価額 = 路線価 X 地積(面積) X 補正率 X 規模格差補正率(小数点以下第2位未満切捨て)

規模格差補正率 = (地積 X B + C)÷ 地積 X 0.8

 

(イ)三大都市圏に所在する宅地:

          地区区分

 

記号

地積㎡

普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
B C
500以上 1,000未満 0.95 25
1,000以上 3,000未満 0.90 75
3,000以上 5,000未満 0.85 225
5,000以上 0.80 475

 

(ロ)三大都市圏以外の地域に所在する宅地:

          地区区分

 

記号

地積㎡

普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
B C
1,000以上 3,000未満 0.90 100
3,000以上 5,000未満 0.85 250
5,000以上 0.80 500

 

広大地補正率と規模格差補正率との比較例示:

  1,000㎡、三大都市圏 5,000㎡、三大都市圏以外
現行広大地 改正広大地 現行広大地 改正広大地
広大地補正率・

規模格差補正率

0.55  

0.78

0.35  

0.72

 

② 広大地が倍率地域にある場合

本則の倍率方式(その土地の固定資産税評価額X倍率)により算出した価額と、近傍類似の宅地の評価額に倍率を乗じた金額を正面路線価として、そこから「規模格差補正率」を含めた土地の個別的要因の事情補正を行った後の価額とを比較して、いずれか低い方の価額となります。

 

3.平成29年12月31日以前の相続等までの広大地適用要件(現行)

その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に、 公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものであるが、 大規模工業用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等(いわゆるマンション)の敷地用地に適しているもの(その宅地について、 経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるもの)を除く、 ものをいいます。

 

(1)著しく地積が広大であるかの判定

各自治体が定める開発許可を要する面積基準以上(開発許可を要するか否かは、各自治体の開発指導課に確認)のものが挙げられ、 原則として、 以下に掲げる面積以上の宅地。

① 市街化区域

(a) 三大都市圏           500㎡以上

(b) それ以外の地域       1,000㎡以上

② 非線引き都市計画地域 3,000㎡以上

③ 用途地域が定められている非線引き都市計画地域: 市街化区域に準じた面積

開発許可を要する面積基準に満たない場合であっても、ミニ開発分譲が多い地域に存する土地について、広大地に該当する場合があります。

 

(2)都市計画法による開発行為(公共公益的施設用地の必要性)

公共公益的施設用地とは、 都市計画法第14条に規定する道路、 公園等の公共施設の用に供される土地、 及び都市計画法施行令第27条に掲げる教育施設、 医療施設等の公益施設の用に供される土地をいい、 その負担の必要性は経済的に最も合理的に戸建住宅用地の開発を行なった場合の、 その開発区域内での道路等の開設の必要性により判断するとしています。 その際、 セットバックによる道路やゴミ集積所用地等は公共公益的施設用地には該当しないことになります。 評価通達における広大地は、 戸建分譲用地として開発され、 道路等のつぶれ地が生ずる土地を前提としていますので、 以下の状況の土地も広大地の適用はありません。

* 道路に面しており、 間口が広く奥行がそれ程ない土地

* 区画整理地、 大規模開発分譲地等にみられる土地(道路が二方、 三方、 四方にある土地)

* 開発指導等により道路敷きとして一部土地を提供しなければならない状況の土地

* 路地状敷地による開発(路地状開発・旗竿開発)を行うことが合理的と考えられる土地

特に最近では、 この広大地の適用にあたり路地状開発(**)か道路開設開発かの判断で課税庁との間で揉めるケース増えてきています。 「路地状開発を行うことが合理的と認められる」かどうかは次の事項を総合的に勘案して判断するものとされています。

(a) 路地状部分を有する画地を設けることによって、 評価対象地の存する地域における「標準的な宅地の地積」に分割できること

(b) その開発都市計画法、 建築基準法、 都道府県等の条例等の法令に反しないこと

(c) 容積率及び建ぺい率の計算上有利であること

(d) 評価対象地の存する地域において路地状開発による戸建住宅の分譲が一般的に行なわれていること

(**) 路地状開発とは、 路地状部分を有する宅地を組合せ戸建住宅分譲地として開発することです。 旗竿地・敷地延長・路地状敷地は同じ意味の言葉であり、 間口が狭く通路のように長い路地状敷地部分(都市計画地域では、 建物を建てる時に敷地が道路に2m以上接していなければなりませんので、 その間口は2m以上必要となりますが、 通常はその形状敷地は通路や駐車場等として使われています)の奥に建物のスペースとして有効宅地部分がある旗竿形状の土地のことを指します。

 

広大地に該当しない例

① 有効開発完了地: 既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地

② 現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地(大規模店舗、 ファミリーレストラン等)

③ 原則として、 容積率300%以上の地域に所在する土地

容積率等について、役所の都市計画課で確認、特に前面道路の幅員を調べる必要があります。 それは、前面道路の幅員によって基準容積率が変化(下がる)することがあるからです。

住居系: 幅員 X 4/10 (前面道路が幅員が4mならば、 160%となる)

商業系: 幅員 X 6/10

④ 公共公益的施設用地の負担が殆んど生じないと認められる土地

 

マンション敵地等の判定

マンション敵地等に該当するものは広大地にはなりません。 この趣旨は、 戸建住宅分譲地として開発した場合に、 道路等のつぶれ地が生じる土地に広大地評価の適用があることを前提としていることから、 マンション等の敷地のように細分化せずに一体として有効利用できる場合には、 地積過大による減価の補正を行う必要はないことからです。 マンション敵地であるかどうかは、 「その地域」の標準的使用の状況を参考にして判断することになりますが、 戸建住宅とマンション等が混在する地域では判断が困難なケースがあります。 その様なケースでは、 専門家の意見も必要になるかもしれません。 形式的基準として容積率300%以上の地域内にあり、 開発面積基準以上の宅地は原則としてマンション適地に該当するものとされています。

原則として、 地上3階以上のマンションが建っている敷地は即、 広大地に該当しないと思われていますが、 判定要素として、 中高層と集合住宅等の2要件以外に、 「最有効使用(経済的に最も合理的である使用)」であるというものも満たす必要があります。

 

(3)広大地の評価額:

① 広大地が路線価地域にある場合

路線価 X 広大地補正率 X 地積 = 広大地の評価額

広大地補正率 = 0.6 - 0.05 X 広大地の地積 / 1.000㎡

広大地補正率は0.35を下限(広大地の地積は5,000㎡以下)とし、 四捨五入等の端数処理は行ないません。

② 広大地が倍率地域にある場合

通常の評価計算方式ではなく、 広大地を個別に評価することになり路線価方式に準じて評価します。 先ずは、 評価しようとする広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の価額(この価額は、 付近の標準的な画地規模を有する宅地の価額との均衡を考慮して算定する必要があります)を求め、 その価額を路線価方式における路線価とします。

 

以上から、 現行の広大地判定として少なくとも以下の4項目をクリアーする必要があるということになります。

広大地判定の項目 広大地の判定基準
大規模工事用地に該当するか NO
中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているか NO
その地域における標準的な住宅の地積に比して著しく地積が広大か YES
開発行為を行うとした場合、 道路や公園等の公共公益的施設用地の負担が必要と認められるか YES

 

改正(通達改正案)では、現行の広大地判定の4項目は、大規模工事用地を除き特に判定基準に影響しないことになりそうですが、今後の最終通達等には注視していく必要があります。

最低賃金25円上昇 今年度平均

2017年度の都道府県別最低賃金の改定額の答申が17日出そろった。時給800円以上の自治体が前年比7割増の15都道府県に上った。全国平均は現在より25円高い848円になった。

一番高いのは東京958円、神奈川県956円、大阪府909円の順で、一番低いところの最低賃金は737円でした。

空き家解消 市町村主導 税も優遇、転用促す

国土交通省は人口減を背景に全国で増える空き家問題への対応で、市町村の役割を強化した新たな制度を導入する。市町村が空き家の情報を積極的に集め、土地や建物の売買のほか公園への転用等の仲介役まで担うようにする。所有者が分からない空き家が多い実情を踏まえ、市町村は個人や世帯の情報をつかみやすいとみて、行政主導で解消につなげる。買い手への税優遇も検討する。

空き家は直近で約820万戸あり、 日本の住居の14%に上る。 賃貸用が429万戸と最多だが、最大の問題は所有者不明や破損等で活用が難しい空き家が272万戸に上ることだ。

年末調整 ネットで完結 企業・会社員の負担減 住宅減税等2020年度めど

財務省と国税庁は、紙の書類でやり取りしている住宅ローン減税等の年末調整の手続きをインターネットで完結できるようにする。会社員はマイナンバーの個人サイトに金融機関から送られてくるデータを勤め先に転送、企業もネット経由で税務署に提出する。電子化を通じて年末調整で利便性を高め、低迷するマイナンバーカードの普及につなげる。2020年度に導入を目指す。

今秋稼働するマイナンバーの個人サイト「マイナポータル」を使えば、 2017年度分の申告から領収書の提出がいらなくなる予定。マイナンバーカードの普及率が10%に満たない現状を踏まえ、マイナポータルの実用性を上げてカードの一段の普及を見込む。

保険契約の法人から個人への名義変更

法人では各種の保険に加入されているかと思いますが、その保険契約を個人に名義変更することがあります。 その場合の会社と個人のそれぞれには、課税上どのような処理になるでしょうか。 保険の種類の中で、「低解約返戻金タイプの生命保険」を例として、検討してみたいと思います。

「低解約返戻金タイプの生命保険」とは、中途での解約時には所定の解約返戻金がありますが、保険契約から初期の段階では低い解約返戻金ですが、年数の経過により増加(急に増加するタイプもあり)し、ある経過年数でピークとなり逓減していくという商品です。俗に「逓増定期保険」と言われる商品も同様です。

法人で保険料を支払いますが、通常、この種の保険では、保険料の半額が経費として損金経理され、残りの半額は保険積立金として資産経理となります。 例えば、解約時の保険返戻率に関して、2年目で2%、3年目で25%、4年目で125%、5年目で115%、以降逓減していく保険契約のケースで、3年目で保険契約者・保険受取人の名義を法人から個人に変更する場合、個人は法人に変更時の解約返戻金を支払うことになります。 そして、個人は4年目に保険料を支払うとその年に保険を解約し解約返戻金を受領した場合の課税は、以下の様に取り扱われます。

1.法人の3年目の事業年度

(1)保険積立金総額(3年間の保険料総額 X 50%) - 解約返戻金相当額(3年間の保険料総額 X 25%)= 解約損失金(経費)

(2)3年目の50%保険料 = 経費

注:2年間の50%保険料総額は経費処理済

2.個人の4年目の申告年度

(1){4年目の解約返戻金(4年間の保険料総額 X 125%) - (3年目の解約返戻金(3年間の保険料総額 X 25%)+ 4年目の保険料)}- 500,000 = 一時所得

(2)上記の一時所得 X 50% = 総合課税所得

上記の例の様な保険契約のケースでは、法人では純保険料負担の100%が経費処理でき、個人では、保険料負担額の倍以上の収入が得られたことになります。

保険会社によっては、個人に名義変更した後に数年間は、契約者貸付(解約返戻金の範囲内で保険料を貸付)を利用して個人の負担なく続けられる保険商品もあります。

 

上記例はかなり特殊な契約内容でありますが、少なくとも保険契約の名義変更を法人から個人に承継させる上で留意すべき事項は次のとおりです。

① 名義変更先が個人の場合は被保険者本人またはその親族(2親等以内)に限られます。

② 個人は法人に名義変更時の解約返戻金相当額を支払う必要があります。

③ 名義変更の事業年度で法人は保険積立金額と個人から受領した解約返戻金相当額との差額が、解約損益金額となります。

④ 個人が保険解約時の解約返戻金は一時所得に該当しますが、その時の計算上、解約返戻金から控除できる保険料は、個人が負担した保険料に限定されます。 一時所得の計算上控除できる「その収入を得るために支出した金額」は、個人が負担して支出したものに限ることが、現行の法令・通達で明確化され、又、最高裁判決でもその様に判示されています。 一時所得の場合には50万円控除があり、更にその50%が課税所得となる扱いになります。

収益力のある法人等においては、検討されてもよいかもしれません。

遺産分割から居住除く 贈与の場合 配偶者に配慮

法制審議会(法相の諮問機関)の部会は18日、亡くなった人の遺産を分け合う遺産分割の規定を見直す試案をまとめた。婚姻期間が20年以上の夫婦のどちらかが死亡した場合、配偶者に贈与された居住は遺産分割の対象にしない。今は居住も相続人で分け合う遺産のため、居住を売却して配偶者が住まいを失う問題があった。

試案は、居住用の土地・建物を配偶者に贈与した際に、それ以外の遺産を相続人で分け合う内容。適用するには条件があり、①夫婦の婚姻期間が20年以上 ②配偶者に居住を生前贈与するか遺言で贈与の意思を示す、の2つだ。婚姻期間が20年未満の夫婦や、意思表示がなく被相続人が亡くなった場合は対象外となります。