自民、公明両党は14日、2018年度の与党税制改正大綱を決定した。年収850万円超の会社員への所得増税やたばこ増税で、約2,800億円の増税となる。森林保護や観光インフラ整備の財源とする27年ぶりの新たな国税も創設。個人の増税が際立つ一方、法人税は賃上げや設備投資を進める企業に減税するメニューが並び、増減税はほぼ同額となった。
アーカイブ
広大地評価の改正に伴う平成29年度内の生前贈与の提案
本年の8月ニュースで広大地評価の改正内容を紹介しましたが、来年(平成30年)1月1日より「地積規模の大きな宅地」として新たな評価方法が適用されます。奥行、不整形地等にかかる補正率を考慮せずに、現行と改正後の減率額比較では、地積の多寡にもよりますが最低でも20%以上の差異があり現行の方が有利となります。その為に、平成29年内に行う相続対策の一つに、減額幅が大きく有利である現行の広大地の適用要件を満たす土地が存在していれば、子や孫に相続時精算課税制度を利用して生前贈与しておくことが賢明なことでありますが、メリットとデメリットもありますので総合的に判断すべきかと思います。
1.広大地評価の概要
(1)現行の評価方法
広大地の価額=正面路線価×広大地補正率×地積
「広大地補正率」(下限0.35) =0.6 - 0.05 X 広大地面積 / 1,000㎡
特質:適用要件が厳しく、判定が難しい反面、非常に大きな減額が可能。
(2)改正の評価方法(平成30年1月1日以降より)
地積規模の大きな宅地の価額=正面路線価×補正率(※1)×規模格差補正率(※2)×地積
※1:形状(不整形・奥行)を考慮した補正率:奥行価格補正、側方路線影響加算等の加算、不整形地補正を行います
※2:規模格差補正率(面積を考慮した補正率)=(A×B+C)/A×0.8
A:地積規模の大きな宅地の地積
B及びC:地区区分と地積に応じた数値が規定されています。
特質:適用要件が緩和され、判定が容易になる反面、減額幅が大幅に縮小。
(3)評価減価率の比較
但し、形状(不整形・奥行)を考慮した補正率は1と仮定する。
三大都市圏に所在する 住宅地の場合で地積 | 現行の減価率 | 改正減価率 | 差異率 |
---|---|---|---|
500㎡ | 57.5% | 80.0% | 22.5% |
1,000㎡ | 55.0% | 78.0% | 23.0% |
2,000㎡ | 50.0% | 75.0% | 25.0% |
3,000㎡ | 45.0% | 74.0% | 29.0% |
4,000㎡ | 40.0% | 72.5% | 32.5% |
5,000㎡ | 35.0% | 71.6% | 36.6% |
現行は面積が大きくなるほど減価率は大きくなっていましたが、改正後は面積が大きくなっても減価率はあまり大きくなりません。
2.相続時精算課税制度の概要
60歳以上の祖父母や父母が20歳以上の子や孫に財産を生前に贈与する際には、2,500万円(特別控除額)までは贈与税を課さず、それを超える金額部分には一律20%税率で贈与税が課され申告・納税し、後に相続が発生した際にこの贈与分を遺産に含めて相続税を計算し課税するという制度です。直接節税になるものではありませんが、相続時精算課税を利用することにより土地の評価額を固定することにメリットがあります。
3.相続時精算課税制度で広大地を生前贈与する場合のデメリットとメリット
(1)デメリット
① 相続時精算課税制度の選択届、及び贈与税の申告書を翌年の3月15日までに行う必要があります。一度、相続時精算課税制度を選択すると取消ができなく、暦年課税に戻ることができません。選択後の贈与は、相続時精算課税制度下で金額に関係なく贈与税の申告対象になります。
② 登録免許税(登記費用)の負担
登記時に固定資産税評価額に対して登録免許税が課税されますが、相続に比べて、贈与の方が税率が高くなります。
贈与:20/1000、相続:4/1000
③ 不動産取得税の負担
相続では不動産取得税は非課税ですが、贈与では固定資産税評価額に対して3/100(宅地の場合には、その1/2になる減額有り)の課税があります。
④ 広大地評価の否認リスク
広大地評価の適用要件が厳しく判定が難しいところがある為、課税庁が適用を否認する可能があります。
⑤ 相続時において小規模宅地等の特例を受けることはできません。
⑥ 孫が相続時精算課税により贈与を受けていた場合は、原則として、相続税額は、2割加算が適用されます。
(2)メリット
① 平成29年度中に相続時精算課税制度化での贈与し広大地適用となる土地評価額が低くなる場合には、重要なのはこの制度を用いた場合の相続税計算における贈与財産の評価額があくまで贈与時の評価額となるということです。すなわち、減額幅の大きい現行の広大地評価額が将来の相続税計算に用いられることになるため、相対的に有利となるということです。
② 生前贈与となる為に、相続発生時には共有財産として遺産分割の対象から外れることになります。
4.まとめ
広い地積の土地を保有されている場合、現行の広大地評価と改正の地積規模の大きな宅地評価の金額を試算し、その結果によっては相続時精算課税制度を使用して平成29年度中に生前贈与することで大きな節税になる可能があります。しかしながら、その場合のデメリットとなる側面、例えば、暦年課税に戻れないという以後の生前対策の制約、登録免許税の負担、不動産取得税の負担、広大地評価リスク等を総合的に検討評価し決断すべきです。
自民税調 議論スタート 消費増税の日程意識
自民党税制調査会は22日に総会を開き、2018年度税制改正の本格的な議論をスタートさせた。高所得者に負担増を求める所得税改革を最優先課題に掲げる。2019年10月に予定する消費税10%への引き上げを控えるなか、増税日程を意識するほど改革は進めにくくなる。
項目 | 内容 | 想定する時期 | |
---|---|---|---|
所得税改革、 くらし | 想定する時期 | 高所得の会社員や年金受給者の控除縮小。基礎控除は拡大 | 未定 |
出国(観光促進税) | 出国時に1,000円 | 2019年度 | |
森林環境税 | 一人あたり年1,000円 | 2020年度以降 | |
紙巻きたばこの増税 | 4年かけて3円増税 | 2018年度から | |
加熱式たばこの増税 | 増税し企業間の税率差見直し | 2018年度から | |
企業向けなど | 賃上げ減税 | 3%以上賃上げで大幅減税 | 2018年度 |
生産性向上 | 中小の固定資産税を3年間ゼロ | 2018~2020年度 | |
経営者の代替わり円滑化 | 承継時に全株式で納税猶予 | 2018年度から10年簡 | |
地方消費税の配分基準見直し | 人口比率を半分程度に引き上げ。都市部は減収 | 2018年度 |
中小承継へ税優遇拡大 政府・与党 廃業増に歯止め
政府・与党は2018年度税制改正で、中小企業の世代交代を促すため税優遇を拡大する。承継する非上場株式のすべて(現在は3分の2)について相続税を猶予し、事業を継続する限り支払わなくてよくする。日本は後継者難で2025年には130万社近い中小が廃業の危機に陥る見通しだ。政府は事業承継を円滑に進めるため今後10年間を集中対応期間とし、中小の成長力強化やM&A(合併・買収)市場整備などを含む緊急対応作のパッケージを打ち出す。
「事業承継税制」見直しのポイント | ||
---|---|---|
現行 | 項目 | 10年間限定(見直し後) |
発行済株式総数の3分の2まで | 納税猶予対象株式 | 全株を対象に |
(相続税)課税価額の80% | 納税猶予額 | 増額を検討 |
(贈与税)課税価額の全額 | ||
雇用の8割以上を5年間維持 | 雇用 | 雇用計画策定等の条件付きで撤廃 |
高所得の会社員増税 給与所得控除縮小 基礎控除は拡大
財務省は2018年度税制改正での所得税改革案を与党に提案する。会社員の給与収入から差し引ける給与所得控除を縮小する一方、全納税者に適用する基礎控除を引き上げる。年収800万~900万円を上回る会社員が増税となり、フリーランスなど請負契約で働く人らは減税。
項目 | 現行 | 財務省案 |
---|---|---|
給与所得控除 | 上限220万円(年収 1,000万円以上) | 上限188万円程度(年収800万 円以上)に引下げ |
基礎控除 | 38万円 | 50万円程度に引上げ |
公的年金等控除 | 年金控除に上限なし | 年金以外の一定所得金額以上 に上限を設ける |
平成29年度税制改正による平成30年度以降の源泉徴収事務等の留意点
1.配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し(平成30年分以後(2018年1月から)
現行では、配偶者の合計所得金額が38万円以下(給与収入では103万円以下)の場合に配偶者控除38万円(老人控除対象配偶者48万円)、 並びに配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満の場合に配偶者特別控除が適用となっていましたが、 改正では、 配偶者控除は世帯主の年収に応じて縮小され、配偶者特別控除は配偶者の年収要件を103万円(合計所得金額では38万円)から150万円(合計所得金額では123万円)に引上げ、 かつ配隅者及び世帯主の年収に応じて控除額が以下の様に9段階で縮小となりました。
配偶者控除及び配偶者特別控除/ 配偶者の合計所得金額 | 900万以下 | 900万超950万以下 | 950万超1,000万以下 | 1,000万超 | 控除区分 |
---|---|---|---|---|---|
38万円以下 | 38万円 「同一生計配偶者」 | 26万円 「同一生計配偶者」 | 13万円「同一生計配偶者」 | 0円 「同一生計配偶者」 | 配偶者 控除(1) |
「控除対象配偶者」 「源泉控除対象配偶者」 | 「控除対象配偶者」 | 「控除対象配偶者」 | |||
38万円超 85万円以下 | 38万円 「源泉控除対象配偶者」 | 26万円 | 13万円 | 0円 | 配偶者 特別控除(2) |
85万円超 90万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | 同上 | 同上 |
90万円超 95万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | 同上 | 同上 |
95万円超 100万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | 同上 | 同上 |
100万円超 105万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | 同上 | 同上 |
105万円超 110万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | 同上 | 同上 |
110万円超115万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | 同上 | 同上 |
115万円超120万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | 同上 | 同上 |
120万円超123万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 | 同上 | 同上 |
123万円超 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
(1)配偶者控除
合計所得金額が38万円以下である「同一生計配偶者」で、かつ、合計所得金額が1千万円以下(給与等の収入金額では1,220万円以下)である世帯主の配偶者となる「控除対象配偶者」のみが、配偶者控除の対象となります。
*「同一生計配偶者」とは、世帯主と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除く)で、合計所得金額が38万円以下である人をいいます。
*「控除対象配偶者」とは、同一生計配偶者の内、合計所得金額が1千万円以下である世帯主の配偶者をいいます。又、控除対象配偶者の内、年齢が70歳以上の人は「老人控除対象配偶者」となり、控除額が上乗せされています。
*「配偶者」とは、戸籍法で定める婚姻届出をされている配偶者とされますので、内縁関係にある者は配偶者に該当しません。なお、外国人においては、その者の本国法に定める要件を満たすことによって婚姻の成立した配偶者であればよいことになります。配偶者の判定時期は、12月31日(あるいは死亡時又は出国時)の現況によります。年の途中で配偶者と死別し、再婚した場合には、どちらか一人を配偶者とすることができます。
*「合計所得金額」とは、純損失の繰越控除及び雑損失の繰越控除を適用しないで計算した総所得金額、退職所得金額、山林所得金額その他租税特別措置法の規定する申告分離課税の対象とされる所得の金額(例えば、上場株式等の配当所得等の金額)の合計額をいいます。
(2)配偶者特別控除
合計所得金額が38万円超123万円以下の世帯主と生計を一にする配偶者で、かつ、合計所得金額が1千万円以下である世帯主の配偶者に対して、配偶者特別控除の対象となります。
(3)障害者控除
対象者 | 一般障害者 | 特別障害者 |
---|---|---|
同一生計配偶者 | 27万円 | 40万円 |
世帯主(納税者) | 27万円 | 40万円 |
同居同一生計配偶者又は同居扶養親族 | − | 75万円 |
2.平成30年1月以降の源泉徴収事務
給与等の源泉徴収税額の計算にあたり、扶養親族等の数や給与所得者の扶養控除等(異動)申告書等の申告書に対して、以下の通り変更があります。
(1)配偶者に係る扶養親族等の数のカウント及び給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記載
控除額38万円の配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けることができる世帯主は、合計所得金額が900万円以下の者に限られることになりました。その為に、源泉徴収における配偶者の「扶養親族等の数」のカウントにも変更があります。これまでは、合計所得金額が38万円以下の配偶者であれば、扶養親族等の数に1人としてカウント出来ましたが、平成30年1月より扶養親族等の数に1名としてカウント出来る配偶者は、生活を一にする配偶者の合計所得金額が85万円以下で、かつ、世帯主の合計所得金額が900万円以下である、「源泉対象配偶者」である場合に限定されました。
*「源泉対象配偶者」とは、世帯主と生活を一にする配偶者(青色事業専従者等を除く)の合計所得金額が85万円以下で、かつ、世帯主の合計所得金額が900万円以下である人をいいます。各合計所得金額は、当年間の見積額により判定することになります。
又、同一生計配偶者が障害者に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を更に加算して計算することになります。
これにより、毎年最初に給与の支払日前に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、該当する場合には、源泉対象配偶者の氏名、個人番号、生年月日、当年間の所得の見積額、及び同一生計配偶者が障害者並びに扶養親族の障害者等に該当の有無等を記載し提出することになりました。
(2)年末調整時の申告書
配偶者控除及び配偶者特別控除の適用について、配偶者の合計所得金額に上限額が設けられた為、年末調整に際して、これまで給与所得者の保険料控除申告書と兼用様式となっていた給与所得者の配偶者特別控除申告書が改正され、単独の「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出し正確な控除を確定することになります。つまり、見積額で源泉控除対象配偶者に該当する場合には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、月々の源泉徴収を行い、年度中に変更等があった時には扶養控除等異動申告書を提出することになります。なお、年度中に源泉控除対象配偶者に該当しなくなった場合でも遡及是正を行う必要はありません。最終的には、年末調整時に「給与所得者の配偶者控除等申告書」で精算することになります。
財務・経産省の来年度案 税制改正、企業負担減が柱
財務省と経済産業省は2018年度の税制改正で、賃金を上げる企業と事業を後継者に引き継ぐ企業への税優遇を充実する方針だ。企業の生産性を高めるため、人材への投資と事業承継を支援する。
スマホで確定申告 国税庁、2019年1月から
国税庁は2019年1月から、スマートフォン(スマホ)を使って確定申告ができるようにする。本人確認に使うマイナンバーカードと、このカードの情報を読み取れる機能がついたスマホの普及を見据え、現在の申告システムを刷新する。
年末調整の概要
- 年末調整とは
毎年11月となりますと会社(給与支払者)の給与担当部署は、 「年末調整」の準備・対応という大変忙しい時期を迎え、 勤務者(従業員)はその年末調整の為に必要となる申告書や証明書類等を所定の期限までに会社に提出することが求められます。 会社は、 勤務者から回収した年末調整用の書類の内容を確認しその最終提出情報に基づいて、 暦年の最終給与支払時(通常、 12月給与)に納めるべき年間の所得税及び復興特別所得税(年税額)を算出し、 これまでの給与支給時に源泉徴収された累計税額とを比べその差額となる過不足額を精算(徴収又は還付)します。 その一連の精算手続が年末調整ということになります。 一般的には、 年末調整により還付されるケースが多いかと思います。
- 平成29年度(2017年度)の所得税に係わる改正
平成29年度の年末調整において、税制改正により影響を受ける主な項目は以下の通りです。
(1) 給与所得控除額の上限額引下げ
給与収入1,000万円超から給与所得控除額は220万円が上限となりました。
(2) マイナンバーの記載不要の特例制度
平成28年1月よりマイナンバー制度が導入されましたが、平成29年分以後の扶養控除等(異動)申告書等へのマイナンバーの記載不要の特例制度が創設されました。 その適用要件として、既にマイナンバーの情報が提供されており、 その情報を記載した帳簿を会社が備えているときには記載不要となりました。
マイナンバーの記載不要の特例制度が適用できない方には、以下の対応が必要となります。
「平成29分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出にあたり、 給与所得者本人、 控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の個人番号を記載することになります。 提出にあたり、 給与支払者が給与所得者から個人番号の提供を受ける場合は、 本人確認として、 提供の番号が正しいことの確認(番号確認)と、 番号提供者が真にその番号の持ち主であることの確認(身元確認)を行う必要があります。 なお、 控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の本人確認は、 給与所得者が行うことになっています。
平成28年1月以降の支払に係る給与所得の源泉徴収票には、 上記の個人番号を記載して税務署等の行政機関に提出することになりますので、 「扶養控除等(異動)申告書」に必要なマイナンバーが記載されていない場合には、 源泉徴収票作成までにマイナンバーの提供を受ける必要があります。 なお、 給与所得者への源泉徴収票には、 個人番号は記載されません。
(3) 平成30年1月以後の源泉徴収等に関する改正
平成29年度税制改正におきまして、平成30年1月(平成30年度)より配偶者控除及び配偶者特別控除に改正がありました。その為に、源泉徴収事務においてその対応に注意が必要となります。特に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の記載内容や扶養親族等の数の数え方に関する点です。年末調整時にも影響する内容となっています。これらの内容に関しましては、後日紹介いたします。
- 年末調整の対象者
年末調整の対象者は、 原則として会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人は全員含まれます。 但し、 給与収入額が2千万円を超える人は年末調整を行ないませんので自身の確定申告を通じて年税額の精算をしなければなりません。 通常、 1カ所から給与支給を受けている人は、 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出し年末調整を受けることになります。
次の人は年末調整の対象者にはなりません。
(1) 年中の給与収入額が2千万円を超える人
(2) 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人(年末調整を行うことができませんが、 支払の際の源泉徴収においては乙欄の税額表が適用となります)
(3) 年中に退職(死亡退職した人、 非居住者として国外勤務者となった人、 等を除く)した人
(4) 国内に住所も1年以上の居所を有していない人(非居住者)
(5) 災害免除法の規定により源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人
(6) 日雇労働者等(丙欄の税額表適用者)
年末調整の為に提出が求められる申告書とその中に記載される控除項目は以下のとおりです。 当該控除項目以外に所得から控除可能な項目がある場合にはそれらの項目は確定申告で行うことになります。
申告書の名称 | 控除項目 |
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 配偶者控除、 扶養控除、 障害者控除、 寡婦(夫)控除、 勤労学生控除、 基礎控除 |
給与所得者の配偶者特別控除申告書 | 配偶者特別控除 |
給与所得者の保険料控除申告書 | 生命保険料控除(一般生命・介護医療・個人年金)、 地震保険料控除、 社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除 |
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 | (特定増改築等)住宅借入金等特別控除(2年目から年末調整の対象で初年度は確定申告が必要) |
申告書記載上の主な注意点は以下のものがあります。
(イ) 12月31日時点の現況で記載
その年の12月31日現在の現況を見積もりで記載することになります。 見積記載の内容に修正が生じた場合(例えば、 扶養者数の増減、 等)には、 再年末調整(翌年の1月末までは可能)又は確定申告により適正な精算を行うことになります。
(ロ) 人的控除項目の判定基準に合計所得金額基準
控除項目の中(控除対象配偶者、 控除対象扶養控除、 配偶者特別控除等の人的控除項目)には、 その控除に該当するかの判定基準にその年度の合計所得金額がありますので留意してください。 多い誤りとしては、 配偶者の合計所得金額が控除対象金額を超えているケースです。
配偶者控除の場合の合計所得金額は、 38万円以下(給与収入額では103万円以下)でなければなりません。 「配偶者」とは、 婚姻の届出をしている配偶者をいい、 内縁関係の人は含まれません。
配偶者特別控除の場合の合計所得金額は、 38万円超~76万円以下でなければなりません。
公的年金等の雑所得だけの方で控除対象扶養者(合計所得金額が38万円以下)になる場合には、 公的年金等の収入金額が158万円以下(年齢65歳未満の人は108万円以下)という条件を満たす人です。
「所得金額」として、 税法の規定のなかに「合計所得金額」、 「総所得金額」、 「総所得金額等」の3種類が適用判定基準の中に出てきますが、 それぞれ多少の違いがあります。
(1) 所得金額基準は主にどの適用範囲に出てきているか
所得金額 | 主な適用範囲 |
合計所得金額 | ●扶養控除対象者: 合計所得金額が38万円以下
●配偶者控除対象者: 合計所得金額が38万円以下 ●配偶者特別控除対象者: 合計所得金額が38万円超76万円未満、 並びに申告者本人の控除対象者: 合計所得金額が1,000万円以下 ●寡婦(寡夫)控除対象者: 合計所得金額が500万円以下 ●勤労学生控除対象者: 合計所得金額が65万円以下 ●住宅ローン控除対象者: 合計所得金額が3,000万円以下の年 ●居住用財産の買換えの譲渡損失の損益通算・繰越控除の適用対象者: 合計所得金額が3,000万円以下の年 ●特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除の適用対象者: 合計所得金額が3,000万円以下の年 ●市県民税均等割の非課税判定基準・市県民税の扶養親族や各種控除の判定基準 ●直系尊属から住宅取得等資金の受贈与者の非課税対象者: 合計所得金額が2,000万円以下 |
総所得金額 | |
総所得金額等 | ●医療費控除限度額: 総所得金額等の5%
●雑損控除限度額: 損失の金額 - 総所得金額等 X 10% ●寄付金控除限度額: 総所得金額等 X 40% - 2,000円 ●寡婦となる要件: 扶養親族その他その人と生計を一にするその年分の総所得金額等が38万円以下の子がいる人 ●寡夫となる要件: 生計を一にするその年分の総所得金額等が38万円以下の子がいる人 ●市県民税所得割の非課税判定基準 |
(2) ①合計所得金額、 ②総所得金額、 ③総所得金額等の定義
左から右にみて所得の範囲等がそれぞれ異なっていることがお分りになるかと思います。
所得種類 | ① | 各種繰越控除の適用(①から控除) | ② | ③ | |||
利子所得 | 所 得 金 額 の 損 益 通算 |
合 |
* 純損失や雑損失の繰越控除
* 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除 * 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除 * 上場株式等の譲渡損失の繰越控除 * 特定中小会社発行株式の譲渡損失の繰越控除 * 先物取引の差金等決済損失の繰越控除 |
総 |
総 |
||
配当所得 | |||||||
不動産所得 | |||||||
事業所得 | |||||||
給与所得 | |||||||
雑所得 | |||||||
一時所得 | 2分 の1 |
||||||
総合課税の譲渡所得 | 長期 | ||||||
短期 | |||||||
分離課税(土地・建物等)の譲渡所得(特別控除適用前) | 長期 | ||||||
短期 | |||||||
分離課税の株式等の譲渡所得 | |||||||
分離課税の先物取引の雑所得 | |||||||
退職所得 | |||||||
山林所得 |
配偶者控除、 扶養者控除等の所得基準額は、 「総所得金額」より範囲が広い「合計所得金額」で判定することになり、 分離課税所得の発生年度には注意が必要となります。
(ハ) 年齢16歳未満の年少扶養親族
控除対象扶養控除に関して、 平成23年度から年齢16歳未満の年少扶養親族に対する扶養控除が所得税では廃止となっています(年齢16歳未満は所得税における扶養控除対象者ではありません)。 しかし、 住民税の方では控除対象となっていますので住民税に関する欄への記載を忘れないでください。 なお、 年齢16歳未満の年少扶養親族であっても、 障害者又は特別障害者に該当する場合には、 障害者控除を受けることはできます。
平成29年度の年末調整時における年齢16歳未満とは、 平成14年1月2日以後に生まれた人が年少者となります。
(ニ) 扶養親族
所得者と生計を一にする親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)で、 合計所得金額が38万円以下の人を扶養親族(配偶者、青色事業専従者及び白色事業専従者を除く)といいます。 その中には、 以下のように区分されています。
① 控除対象扶養親族
扶養親族のうち、 年齢16歳以上の人をいいます(平成29年度の年末調整では、 平成14年1月1日以前に生まれた人)。
② 特定扶養親族
扶養親族のうち、 年齢19歳以上23歳未満の人をいいます(平成29年度の年末調整では、 平成7年1月2日から平成11年1月1日までの間に生まれた人)。
③ 老人扶養親族
控除対象扶養親族のうち、 年齢70歳以上の人をいいます(平成28年度の年末調整では、 昭和23年1月1日以前に生まれた人)。
④ 同居老親等
老人扶養親族のうち、 所得者又はその配偶者の直系尊属でいずれかとの同居を常況としている人をいいます。
(注): 国外居住親族に係る扶養控除等の適用時に所定の書類添付等の義務化
非居住者である親族(国外居住親族)に係る扶養控除、 配偶者控除、 障害者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける場合には、 「親族関係書類」及び「送金関係書類」の提出又は提示を受ける必要があります。
具体的な手続きとして、 適用を受ける旨を「扶養控除等(異動)申告書」上の「非居住者である親族」欄に○印を付し、 関係書類の提出等を行います。
(ホ) 生命保険料控除の改組
平成24年(2012年)1月1日からの契約分(新契約)から一般生命保険に含まれていた「介護医療保険」が独立の控除対象となりました。 平成23年までの契約分(旧契約)については、 昨年までと同様に「一般生命保険」と「個人年金保険」の2つに分けられ最高控除額は、 各5万円です。 新契約は、 「一般生命保険」、 「介護医療保険」と「個人年金保険」の3つに分けられ最高控除額は、 各4万円となります。 なお、 旧契約と新契約が混在するケースも発生することもありますが、 各保険料控除の合計適用限度額が12万円とされています。 従いまして、 支払保険契約が、 旧契約か新契約かを保険会社からの証明書で確認しながら申請書に正しく記載する必要があります。
生命保険契約等により支払われた保険料や掛金は所得者本人が支払ったものに限られています。 又、 保険金、 共済金等の給付金の受取人の全てが所得者本人又は所得者の配偶者や親族となっていることが必要です。
翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 本年中に相当する部分のみが支払保険料の金額となります。
(ヘ) 社会保険料控除
所得者本人と生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料を所得者自身が支払った場合(時限措置により納付可能となった過去分の保険料の支払分も含む)には、 所得者本人の社会保険料として控除できます。
年金から特別徴収された介護保険料や後期高齢者医療保険料については、 支払者が年金受給者自身となることから、 その年金の受給者の社会保険料として控除となります。
翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 前納期間が1年以内の場合には、 その全額を本年の社会保険料として控除することができます。 なお、 国民年金保険料については、 2年分を前納できることになりましたので、 全額控除をするか、 又は期間按分して控除(この場合には、 按分の明細書が要作成)する方法のいずれかを選択することが可能です。
(ト) 地震保険料控除
所得者本人と生計を一にする親族が所有して常時居住している家屋や生活に通常必要な家財に対して支払った保険料の内、 一定の金額を地震保険料控除として控除できます。
一つの契約等で、 地震等損害に対する損害保険契約と旧長期損害保険契約のいずれの契約区分にも該当する場合には、 選択によりいずれか一方の契約区分のみが地震保険料控除の控除額となります(有利な方を選択する)。
(チ) (特定増改築等)住宅借入金等特別控除
現在、 各種の住宅借入金等特別控除がありますが、 控除を受けようとする初年度分については、 確定申告により控除の適用を受ける必要があります。 2年度以降分については、 年末調整の際に下記のものを給与支払者に提出します。
① 税務署長が発行した「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」。 この証明書の上部に「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」がありますので、 控除金額等の記載を行い提出します。
② 金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
一般の住宅借入金等特別控除は、 居住者が一定の要件を満たす住宅の取得等して、 その人の居住の用に供した場合(その家屋の取得等の日から6ケ月以内に居住用に供したものに限られています)において、 その住宅の取得等のために一定の住宅借入金(償還期間10年以上等)を有するときには、 居住年以後10年間(平成13年7月1日から平成33年12月31日までの間で居住した場合には、 最長10年間。 それ以前のもは最長15年間)の各年のうち、 合計所得金額が3千万円以下である年について、 住宅借入金等の年末残高を基にした所定額を住宅借入金等特別控除としてその年の所得税額から控除できるというものです。
家屋に入居後、 本年12月31日まで継続して居住用に供していることが控除の適用要件ですので、 年度の途中で海外勤務となり出国している場合には、 この制度の適用はありません。
自己の居住用の家屋が2以上有する場合には、 主として居住用とする1の家屋に限られます。
連帯債務(共有)の場合には、 各年12月31日現在のその住宅借入金等の金額に控除を受ける人の負担割合(持分割合)を加味して控除額を計算します。 その割合は、 小数点以下第4位を切上げ、 90%以上である場合は100%とします。
住宅ローンの借換え: この制度の適用者が、 住宅借入金等の借換えをした場合に一定の要件を満たすときには適用が継続します。 住宅ローン金利が低くいものがあるとローンの借換えを行う場合があります。 一般の住宅ローンの場合の借換えでは、 新たな借入金が当初の借入金を消滅させるもので、 適用対象となっていた家屋の取得等のための資金に充てるものであれば住宅ローン控除の継続適用の対象となります。 その場合の新たな借入金の償還期間も10年以上であることが適用要件となっています。 ローン借換後の借入額が借換前の借入残高以下であれば、 年末借入残高が控除対象額となりますが、 逆に借換後の借入額が借換直前の借入残高を上回る場合、 次の按分計算して控除対象額を導く必要があります。
ローン借換後の借入額の年末残高 X (借換直前の借入残高 ÷ 借換直後の借入額) = 控除対象借入額の年末残高
(リ) 給与と徴収税額の集計
年中に支払った給与・賞与が対象になりますが、 本年分の給与で未払いであっても、 本年中に支給日が到来して支払の確定したものについても年末調整の対象になります。
以上が年末調整の概要となります。
所有者不明の土地調査 法務省、来年度から 相続登記促す
法務省は2018年度から、相続の手続きがされず所有者がわからなくなった土地の本格的な調査に乗り出す。全国の司法書士らに委託し、登記簿などから所有者が生きているかを調べる。既に死亡している場合は法定相続人をたどり相続の登記をするよう促す。
不動産の相続登記が放置されたままだと、子、孫、ひ孫と相続権を持つ人が増え、さらに権利関係が複雑になる。同省は法定相続人に対応を促す必要があると判断した。