法定調書: 申告書提出期限1月末

1. 法定調書とは
12月の最終給与支給までに、 従業員の年末調整が行なわれ一区切りついたと思っても、 翌1月末までに提出、申告等の対応が必要となるものがあります。 その1つに法定調書作成がありますが、 これは、所得税法、相続税法等の法律の規定により、給与、報酬、家賃等の支払者(提出義務者)が、それらの1年間の支払いに関して、支払先の氏名、住所、支払金額等を記載し所轄税務署に提出が義務付けられている書類(全部で60種類ほど)です。この主目的は、税務署が適正な課税の確保を図ることを目的に支払事実を把握し、受給者が正しく所得を申告していることの確認手段になるものです。 提出すべき法定調書は、 特定項目の一定金額以上のものですが、 源泉徴収の対象になるものとは限っておりませんので留意してください。
なお、 2016年度分より行政機関への提出にあたり、 マイナンバー(個人番号、等)が必要となっています。

2. 提出する一般的な6種類の法定調書と支払内容

提出する調書支 払 内 容
給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書(注2)俸給、給料、賞与等の支払
退職所得の源泉徴収票と特別徴収票(注2)退職手当(注1)、一時恩給等の支払
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書① 原稿料、印税、講演料、工業所有権の使用料等の支払
② 弁護士、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士、建築士等への報酬、料金の支払
③ 外交員、集金人、電力量計の検針人、モデル、プロ野球の選手、プロボクサー、騎手等への報酬、料金、契約金の支払、芸能人への出演料等の支払
④ バー、キャバレー等のホステス、コンパニオン等への報酬、料金の支払
⑤ 広告宣伝のための賞金、馬主への競馬の賞金の支払
不動産の使用料等の支払調書地代、家賃、権利金、礼金、更新料、承諾料、名義書換料等の支払
不動産等の譲受の対価の支払調書土地、建物等の譲受け(売買、交換、収用等)の代金の支払
不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書土地、建物等の売買や貸付の仲介手数料の支払

注1:死亡退職による退職手当等の場合には、相続税法による「退職手当等受給者別支払調書」を提出することになります。
注2:地方税法で提出が義務付けられています「給与支払報告書」及び「特別徴収票」は、名称が異なるだけで、それぞれ「給与所得の源泉徴収票」及び「退職所得の源泉徴収票」と記載内容は同じものです。

3. 提出範囲
支払調書は、一定金額以上のもの等(支払金額の提出範囲)に該当するときに提出が必要となります。主な提出範囲は次のとおりです。

(1)給与所得の源泉徴収票

年末調整受給者区分提出範囲(年間)
年末調整をしたもの法人役員(相談役、顧問など含む)150万円超
弁護士、公認会計士、 税理士等250万円超
上記以外の人(従業員)500万円超
年末調整をしなかったもの給与収入2,000万円超全部
「扶養控除等申告書」を提出した者のうち退職した者等250万円超(法人役員は50万円超)

(2)報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20の規定に基づく報酬 料金等の支払

区 分提出範囲
* 外交員、集金人、検針人、プロボクサー、ホステス等の報酬、料金
* 広告宣伝のための賞金
* 社会保険診療報酬支払基金からの診療報酬
年間50万円超
馬主に支払う競馬の賞金1回75万円超
プロ野球選手等の報酬及び契約金
弁護士、税理士等の報酬
作家、画家などの原稿料、画料
講演料、 その他の報酬、 料金等
年間5万円超

(3)その他の法定調書

法定調書提出範囲
退職所得の源泉徴収票法人役員が受給者であるもの
不動産の使用料等の支払調書
注:不動産、 不動産の上に存する権利、 総トン20トン以上の船舶、 航空機に対する対価を受領する法人と不動産業の個人の方が提出義務者となります。
年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。
又、法人に対し賃借料のみを支払っている場合にはその支払調書の提出は不要ですが、支払が権利金、更新料等は提出が必要となります。
不動産管理会社を通じて、オーナーが個人の場合には、個人に支払う使用料等として提出となります。
不動産等の譲受の対価の支払調書年間100万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。
不動産等の仲介料の支払調書年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません
公的年金等の源泉徴収票「扶養控除等申請書」を
提出した者:60万円超
提出しなかった者:30万円超
配当等の支払調書10万円超(中間配当がある場合は5万円超)
生命保険契約等の一時金の支払調書100万円超
損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書100万円超
株式等の譲渡対価の支払調書同一人に対し100万円超
1回30万円超
国外送金等調書1回100万円超

4. 提出先と提出期限
法定調書の提出期限は、原則として、その年の翌年の1月31日までとなっており、所轄税務署に提出することになります。税務署に提出する場合には、法定調書の合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)と各法定調書(提出範囲のもの)を提出します。

支払金額に関係なく受給者(個人・法人)の全員にも、 翌年の1月31日まで帳票が送付され(法的には送付は強制されていませんが、通常は送付しています)、 個人では確定申告の作成資料等に使用、 又、 法人では受給金額・内容との照合等に使用することができます。

法定調書の提出方法に関して、基準年(前々年)の提出枚数が100枚以上であった法定調書の場合には、光ディスク等又はe-Taxによる提出が義務付けられています。

5. 給与所得の源泉徴収票 (給与支払報告書)
サラリーマンの方にはお馴染みの給与所得の源泉徴収票は、 その年の給与所得に関する年末調整後(給与収入が2千万円超の方等は除く)の源泉徴収税額や税額計算情報が集約され記載されています帳票です。 税務署には、 一定金額以上の給与収入の「源泉徴収票」が提出され、 又、 同一内容ですが様式名が異なる給与支払報告書が個人の居住する市区町村に金額の制限なく全ての方の分が提出されます。
「給与支払報告書」(総括表を添える)提出先は、受給者(全員分)のその年の翌年の1月1日現在の住所地の市区町村となり、 提出期限は翌年の1月31日までとなっています(個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます)。
年度の途中で退職した者に対する給与支払報告書は、 支払額が30万円以下の場合には提出を省略することができます。 退職金の「特別徴収票」の提出先は、 受給者の退職日現在の住所地の市区町村となっており、 退職後1ケ月以内の提出となります。 市区町村では、 提出された資料から住民税の税額計算をおこない、 翌年6月から徴収を開始し1年間で納付が完了となります。

 2023年1月9日 償却資産の申告(固定資産税): 申告書提出期限1月末
1. 固定資産税とは
固定資産税とは、1月1日現在で国内に土地、家屋又は償却資産(事業用資産)の固定資産を所有している者に対し、当該固定資産の評価額を基に算定された税額を資産の所在する市区町村(東京23区内は特例で区でなく都が課税)が課する地方税をいいます。
課税対象のうち、土地と家屋については登記簿等で市区町村では実在を確認できることになりますが、償却資産は毎年1月1日に所有しているものを自己申告を通じて、固定資産(償却資産)課税台帳に登録され課税されることになります。

2. 固定資産税(土地・家屋)
土地と家屋については、登記事項のため市区町村は、その登記簿等に基づいて固定資産税を計算し、1月1日現在の所有者に納税通知書と同時に課税明細書が5月末前後に送られてきますので、当所有者は申告等の手続の必要はありません。
税率はいずれも1.4%であり、土地は課税標準額に、家屋は課税台帳に登録されている価格に掛けて税額が算定されます。なお、市区町村内に所有する固定資産の課税標準額が、土地30万円、家屋20万円未満の場合には、固定資産税は課税されません。
納期は年4回(6月、9月、12月、2月:市区町村によっては1ヶ月早まるところもあります)です。土地とは、田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野等です。家屋とは、住宅、店舗、工場、倉庫等です。

3. 固定資産税(償却資産)
償却資産とは、土地と家屋以外の事業用に供している減価償却対象資産のものをいいます。1月1日現在で償却資産を事業用に使用している所有者(法人や個人事業者)は、所定の申告書を作成し、1月31日までに償却資産の所在する市区町村ごとに提出しなければなりません。課税対象が償却資産に対する税金ということで償却資産税とも言われています。

(1)償却資産の対象(課税資産)
法人や個人で事業を行っている方で事業のために使用している減価償却の対象資産のうち、その取得価額が一定金額以上のものについては、償却資産となります。具体的には、以下のようなものが償却資産となっています。

① 構築物
舗装路面、庭園、門・塀・緑化施設等の外構工事、看板(広告塔等)、ゴルフ練習場設備等、並びに建物付属設備(受変電設備、予備電源設備、その他建築設備、内装・内部造作等)
② 機械及び装置
各種製造設備等の機器及び装置、クレーン等建設機械、機械式駐車設備等
③ 船舶
ボート、釣船、漁船、遊覧船等
④ 航空機
飛行機、ヘリコプター、グライダー等
⑤ 車両及び運搬具
大型特殊自動車、構内運搬車,貨車、客車等
⑥ 工具、器具及び備品
パソコン、陳列ケース、看板(ネオンサイン)、医療機器、測定工具、金型、理容及び美容機器、ルームエアコン、自動販売機等

以下の資産も償却資産として申告の対象になります。
・ 建設仮勘定で処理されている資産、簿外資産及び償却済資産であっても、1月1日現在で事業用に供することができる場合
・ 遊休又は未稼働の資産であっても、1月1日現在で事業用に供することが出来る状態にある場合
・ 耐用年数が1年未満又は取得価額が10万円未満の資産であっても、有形固定資産として計上し、減価償却している場合
・ 青色申告の中小企業法人・個人事業者については、取得価額が30万円未満の資産を一時に損金算入する処理(少額資産償却特例)がなされていても、この特例は国税(法人税・所得税)に関する制度であり、この地方税の固定資産税には適用されません。従って、この資産は固定資産税の申告対象となります。
その他、 所有権が留保されている資産(賃貸資産、 等)

(2)償却資産の非課税資産
償却資産の対象とならないものは、次のとおりです
(1) 土地や建物(いずれも登記対象資産であることから、 所有者を把握できますので敢えて償却資産として申告の対象にしていません)
(2) 自動車税・軽自動車税の課税対象(2重課税の排除)
(3) 無形固定資産(特許権、 営業権、 ソフトウェア等)
(4) 繰延資産
(5) 生物(観賞用、 興行用その他これらに準ずる生物は除く)
(6) 金額的に少額資産と言われる下記の資産:
① 取得価額が10万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたもの
② 取得価額が10万円以上20万円未満の資産で、 税務上、 3年間で一括償却しているもの
注1: 租税特別措置法の規定により、 一定の中小企業に対する特例を適用して、 取得価額が30万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたものでも、償却資産の申告対象になっています。
注2: 上記以外の資産で企業や個人で事業を行なっている方が事業のために用いることができる資産、 即ち、 構築物、 機械及び装置、 船舶、 航空機、車両及び運搬具、 工具・器具及び備品で有形減価償却資産が対象となります。 次のものも償却資産の対象となります。
(1) 建設仮勘定で計上されている資産、 簿外資産及び償却済資産であっても事業用に供することができるもの
(2) 遊休又は未稼働のものであっても事業用に供することができるもの
(3) 改良費(資本的支出)
(4) 家屋に施した建築設備・造作等のうち、 償却資産として取り扱うもの
建築設備における家屋(建物・建物附属設備)と償却資産とを区分して評価することになります。 家屋と設備の所有者が同一の場合に、 償却資産として取り扱うものは次の要件を満たすものです。
① 構造的に家屋と一体的でないもの (野外給水塔、 独立煙突等)
② 家屋から独立した機械及び装置として性格の強いもの (受・変電設備)
③ 特定の生産又は業務に使用されるもの (動力用配線設備等)
④ 単に移動を防止する程度に家屋に取り付けられたもの (ルームエアコン等)
⑤ 顧客の求めに応ずるサ-ビス設備

(4)固定資産税額等の算出方法(資産が所在する所轄の市区町村ごとに行ない、 申告書を作成します)
(1) 評価価額の算出方法
① 取得初年度
評価価額 = 取得価額 X 耐用年数に応ずる減価率 X 1/2(50%)
② 取得後2年目以降
評価価額 = 前年度の評価価額 X 耐用年数に応ずる減価率
(2) 固定資産税額の算出方法
① 課税標準額の集計(1,000円未満切捨て)
各資産の評価価額を集計(合算)した額が課税標準額(決定価格となります)です。
課税標準額が150万円未満の場合には、 固定資産税は課税されません。
② 税額の計算
固定資産税額(100円未満切捨て) = 課税標準額(1,000円未満切捨て) X 税率(1.4%)

(5)償却資産の申告
所定の償却資産申告書、 種類別明細書、 等の書類を資産の所在する市区町村ごとに作成し、 1月末までに提出(申告)することになります。 申告方式には、 以下の2方法がありますが、通常は一般方式を採用しています。
その方式とは、 前年中(申告対象年度)に増加又は減少した資産内容を申告するのみで、 評価額、 税額等は所管事務所で行う方式です。
注1: 前年中に増加又は減少した資産が無い場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「増減なし」等を付記します。
注2: 事業を行なっていますが、 対象償却資産を所有されていない場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「該当資産なし」を付記します。

以上

2023年1月10日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

2023年度(令和5年度)税制改正大綱(所得税、贈与税・相続税、法人税、消費税)

2022年(令和4年)12月16日に自民、公明党の両党は2023年度(令和5年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の概要(所得税、贈与税・相続税、法人税、消費税)となります。

個人所得課税の改正
1.非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置の見直し(新NISA)
資産所得倍増プランの実現に向けて「貯蓄から投資へ」と振り向ける為にNISA制度の抜本的拡充し時限措置を恒久化する(新NISA)。
(1)非課税保有期間(積立期間)
積立期間の制限なし(無期限化)
(2)非課税限度額
① つみたて投資枠(一定の公募等株式投資信託)
年間120万円へ拡充(現行年間30万円まで)
② 成長投資枠:従来の一般NISA(上場株式等)
年間240万円へ拡充(現行年間120万円まで)
③ 新たに①と②の併用が可能となり年間投資上限額の合計が360万円となる。
④ 生涯にわたる非課税限度額は、①と②の合計で最大元本1,800万円まで(そのうち成長投資枠は最大1,200万円まで)となる。
新NISAは令和6年1月1日より適用となる。現行の一般NISA及びつみたてNISAについては、令和5年末で終了となりますが、新NISAの非課税限度額の外枠で取扱いが継続となります。

新NISA①つみたて投資枠②成長投資枠
対象者18歳以上
非課税期間無期限
投資可能商品一定の公募等株式投資信託上場株式等
年間投資上限額120万円240万円
投資枠の選択①と②の併用可能(年間投資上限額の合計360万円)
生涯非課税限度額買付残高1800万円(内、成長投資枠1200万円):評価益を含まない

2.未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(ジュニアNISA)
ジュニアNISA(投資可能期間は令和5年12月31日までで終了)について、5年経過後に非課税管理勘定から継続勘定管理勘定に原則として移管されることになりますが、移管しない場合にはその旨等を記載した書類を提出しなければなりません。

3.特定中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例(スタートアップ支援)の創設
保有する株式を売却してスタートアップに再投資する場合の優遇税制を創設し、スタートアップへの資金供給を強化する。その為に、保有株式の譲渡益を元手に創業者が創業した場合やエンジェル投資家が特に資金が集まりにくい創業初期のスタートアップに再投資を行った場合に、再投資分につき株式譲渡益に課税しない優遇制度を創設する。
(1)投資時
一般株式等からの譲渡所得等金額又は上場株式等からの譲渡所得等金額から特定中小会社株式の取得金額(両株式等からの譲渡所得等金額の合計額を限度)を控除後の譲渡益に対して課税する。
(2)譲渡時
特定中小会社株式の取得金額は、上記(1)で控除した金額から20億円を超える部分の金額を控除した金額とする。
(3)投資対象となるスタートアップの特定中小会社とは
 ① 設立1年未満の中小事業者等
 ② 出資金額×30%<販管費
 ③ 特定の株主グループの持株割合が99%以下
 ④ 上場会社ではない等

4.エンジェル税制について、所要の見直しがあります。

5.特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等(ストックオプション税制)
新株予約権の行使はその付与決議の日後2年超かつ10年経過内までに行う要件が、一定の株式会社(設立5年未満で非上場会社等の要件を満たす会社)が付与する新株予約権については、その付与決議の日後2年超かつ15年経過内となります。

6.超富裕層への課税強化
その年分の基準所得金額から3億3,000万円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額がその年分の基準所得税額を超える場合には、その超える金額に相当する所得税が課税されます。
(①基準所得金額-3億3,000万円)×22.5%-②基準所得税額を所得税額に加算
① 基準所得金額とは
 配当及び上場株式譲渡益の申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額(特別控除額の控除後の金額)
なお、合計所得金額には、源泉分離課税の対象となる所得金額を含まない(NISA制度及び特定中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例における非課税のものも含まない)。
② 基準所得税額とは
 基準所得金額に係る所得税額(分配時調整外国税相当額控除及び外国控除の適用前の税額で附帯税を除く)
改正は令和7年度の所得税から適用となる。

7.短期所有土地の譲渡所得の非課税特例の延長
適用停止措置期限の3年延長(令和8年3月31日まで)する。

8.空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例
適用期限を4年延長(令和9年12月31日まで)する。
(1)本特例の適用対象となる相続人が相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(当該相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないものに限る。)の一定の譲渡又は当該被相続人居住用家屋とともにする当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(当該相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないものに限る。)の一定の譲渡をした場合において、当該被相続人居住用家屋が当該譲渡の時から当該譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に次に掲げる場合に該当することとなったときは、本特例を適用することができることとする。
 イ 耐震基準に適合することとなった場合
 ロ その全部の取壊し若しくは除却がされ、又はその全部が滅失をした場合
(2)相続又は遺贈による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人の数が3人以上である場合における特別控除額を2、000万円とする。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡について適用する。

9.低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除
適用期限を3年延長(令和7年12月31日まで)する。
(1)適用対象となる低未利用土地等の譲渡後の利用要件に係る用途から、いわゆるコインパーキングを除外する。
(2)次に掲げる区域内にある低未利用土地等を譲渡する場合における低未利用土地等の譲渡対価に係る要件を800万円以下(現行:500万円以下)に引き上げる。
 イ 市街化区域又は区域区分に関する都市計画が定められていない都市計画区域(用途地域が定められている区域に限る。)
 ロ 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する所有者不明土地対策計画を作成した市町村の区域
上記の改正は、令和5年1月1日以後に行う低未利用土地等の譲渡について適用する。

10.優良住宅の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税特例
適用範囲の見直し、その適用期限を3(令和7年12月31日まで)年延長する。

11.肉用牛の売却による農業所得の課税特例
適用期限を3年延長(令和8年12月31日まで)する。

12.給与所得者の扶養控除等申告書に記載の簡略化
扶養控除等申告書に記載すべき事項がその年の前年の申告内容と異動がない場合には、その記載すべき事項の記載に代えて、その異動がない旨の記載によることができることとする。
上記の改正は、令和7年1月1日以後の申告書について適用する。

13.給与所得者の保険料控除申告書の記載の簡略化
一定の事項(申告者との続柄)の記載を要しないこととする。
上記の改正は、令和6年10月1日以後の提出申告書について適用する。

14.源泉徴収票の提出方法変更
市区町村に給与支払報告書を提出した場合には税務署にも源泉徴収票を提出したとみなすことになります。
上記の改正は、令和9年1月1日以降提出すべき源泉徴収票から適用する。

15.個人事業の各種届出書の見直し及び簡素化
(1)個人事業の開業・廃業等届出書の提出期限は、その事業開始年分の確定申告期限とする(改正は、令和8年1月1日以後の事業開始から)。
(2)青色申告のやめる旨の届出書の提出期限は、その事業開始年分の確定申告期限とする(改正は、令和8年分以後の所得税から)。
(3)次の届出書等の記載事項は簡素化する(改正は、令和9年1月以後から)。
イ 納期の特例に関する承認の申請書
ロ 青色申告承認申請書及び青色専従者給与に関する届出書
ハ 給与等の支払をする事務所の開設等の届出書

16.国民健康保険税の上限額引上等
(1)後期高齢者支援金の課税限度額を22万円へ引上げ(現行20万円)
(2)国民健康保険税の減額対象となる所得金額引上げ
 ① 5割軽減|被保険者の数×29万円(現行28.5万円)
 ② 2割軽減|被保険者の数×53.5万円(現行52万円)

17.所得税額に対して、税率1%の新たな付加税
防衛力強化に係る財源確保の為に、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す。現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下げるとともに、課税期間を延長する。
上記の施行時期は、令和6年以降の適切な時期とする。

18.非居住者のカジノ所得の非課税制度の創設
非居住者の令和9年1月1日から令和13年12月31日までの間のカジノ所得については、所得税を課さない。

以上

資産課税(相続税・贈与税)の改正

1 相続時精算課税制度の見直し
(1)相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
つまり、非課税限度額2,500万円とは別枠で年間110万円の控除が可能となります(年間110万円を超えたら贈与税の申告が必要となります)。
(贈与額-基礎控除110万円-特別控除累計2,500万円)×一律20%=贈与額
上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。
この改正により、暦年課税と同額の基礎控除が認められることから、この相続時精算課税制度の活用が促進することが期待されます。
(2)相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用する。

 現行改正
贈与額の計算(贈与額-特別控除累計2,500万円)×一律20%(贈与額-基礎控除110万円-特別控除累計2,500万円)×一律20%
贈与税申告少額の贈与額でも贈与税の申告が必要年間の基礎控除110万円を超えた場合には贈与税の申告が必要
相続財産の加算すべき贈与財産取得した全ての相続時精算課税の財産取得した全ての相続時精算課税の財産(但し、年間の基礎控除110万円内の控除分を除く)
又、贈与財産が災害により一定の被害を受けた土地・建物である場合は相当額の控除可能

2.暦年課税における生前贈与の相続財産加算期間延長
相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。
つまり、現行の3年以内のものが、改正により、
3年以内の贈与額全額+(延長した4~7年の贈与額合計-100万円)を相続税の課税価格に加算すことになります。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。
改正後の相続開始日と加算期間との関係は以下の通りです。

相続開始日加算期間(相続開始日から) 
令和8年12月31日まで3年前改正の影響無し
令和9年度内3年超又は4年前未満1年ずつ段階的に加算期
間が延長されていく
令和10年度内4年超又は5年前未満
令和11年度内5年超又は6年前未満
令和12年度内6年超又は7年前未満
令和13年度以降7年前加算期間が7年となる

3.直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の見直し
(1)その適用期限を3年延長(令和8年3月31日まで)する。
(2)贈与者が死亡した場合、その相続税の課税価格の合計額が5億円超のときは、例え受贈者が23歳未満であっても、その死亡日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額を、受贈者は贈与者から相続等により取得したものとみなされます(課税対象の拡大)。
(3)受贈者が30歳に達した場合等において、贈与税が課されるときは(非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額)、年齢にかかわらずその残額に一般税率を適用する(現行:受贈者が18歳以上の場合には特例税率の適用)。
上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する相続税又は贈与税に適用する。

4.直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の見直し
受贈者が50歳に達した場合等において、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率(現行:特例税率)を適用することとした上、その適用期限を2年延長(令和8年3月31日まで)する。
上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する贈与税に適用する。

5.医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し
(1)その適用期限を令和8年12月31日までの3年3ヶ月延長する。
(2)当該制度における移行期限を、移行計画の認定日から起算して5年(現行3年)を超えない範囲内とする。

6.土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の延長
適用期限を3年延長(令和8年3月31日まで)する。

7.更正期限前6月以内における相続税の更正請求の見直し
更正をすることができないこととなる日前6月以内に相続税の更正の請求がされた場合において、当該請求に係る更正に伴い当該請求をした者の被相続人から相続等により財産を取得した他の者に係る課税価格等に異動を生ずるとき(当該他の者に係る通常の更正決定等の除斥期間が満了する日以前に当該請求がされた場合に限る。)は、当該他の者の相続税に係る更正若しくは決定又は当該更正若しくは決定等に伴う加算税の賦課決定は、当該請求があった日から6月を経過する日まで行うことができることとするほか、所要の整備を行う。

以上

法人課税の改正
1.中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の適用期限延長
適用期限を2年延長(令和7年3月31日まで)する。

2.中小企業投資促進税制の見直し
対象資産の一部除外(概ね全てを委託する本業以外のコインランドリー業の機械装置)・限定(総トン500トン以上の船舶)して、その適用期限を2年延長する(所得税も同様)。

3.中小企業経営強化税制の見直し
特定経営力向上設備等の対象から、本業以外でコインランドリー業と暗号資産マイニング業の機械装置でその管理の概ね全部を他の者に委託するものは適用除外となり、その適用期限を2年延長(令和7年3月31日まで)する(所得税も同様)。

4.青色申告の承認申請書について、記載事項の簡素化
上記の改正は、令和9年1月1日以後に開始する事業年度から適用

5.青色申告書による申告をやめる旨の届出書の提出期限
やめる旨の届出書の提出期限は、青色申告をやめようとする事業年度の確定申告書の提出期限(現行:その申告をやめようとする事業年度終了の日の翌日から2月以内)とするとともに、記載事項の簡素化を行う。
上記の改正は、令和8年1月1日以後に開始する事業年度から適用

6.退職年金等積立金に対する法人税課税の停止措置の延長
適用期限を3年延長(令和8年3月31日まで)する。

7.医療用機器等の特別償却制度の見直し
対象機器を見直して、その適用期限を2年延長(令和7年3月31日まで)する。

8.特定の資産の買換えの場合等の課税特例の見直し
以下の主な見直し行い、その適用期限を3年延長(令和8年3月31日まで)する。
(1)既成市街地等の内から外への買換えを適用対象から除外する。
(2)長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物等への買換えについて、東京都の特別区の区域から地域再生法の集中地域以外の地域への本店又は主たる事務所の所在地の移転を伴う買換えの課税の繰延べ割合を90%(現行:80%)に引き上げ、同法の集中地域以外の地域から東京都の特別区の区域への本店又は主たる事務所の所在地の移転を伴う買換えの課税の繰延べ割合を60%(現行:70%)に引き下げる。
(3)先行取得の場合、特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例及び特定の資産を交換した場合の課税の特例を除き、譲渡資産を譲渡した日又は買換資産を取得した日のいずれか早い日の属する3月期間の末日の翌日以後2月以内に本特例の適用を受ける旨、適用を受けようとする措置の別、取得予定資産又は譲渡予定資産の種類等を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に届け出ることを適用要件に加える(改正は、令和6年4月1日以後の譲渡・取得の届出に適用)。

9.暗号資産の評価方法等の見直し
(1)法人が事業年度末に保有する暗号資産の時価評価による評価損益対象の範囲から、以下の要件に該当する暗号資産を除外することになります。
① 自己が発行した暗号資産でその発行時から継続保有しているもの
② その暗号資産の発行時から継続して、次のいずれかにより譲渡制限が行われているもの:
(イ)他人に移転できないように技術的措置がとられていること
(ロ)一定の要件を満たす信託財産としていること
(2)自己が発行した暗号資産について、その取得価額を発行に要した費用額とする(所得税も同様)
(3)法人が暗号資産交換業者以外の者から借り入れた暗号資産を譲渡した場合、その譲渡した事業年度末までにその暗号資産と種類を同じくする暗号資産を買戻ししていないときは、その時においてその買戻しをしたものとみなして評価損益を計上する。

10.電子帳簿等保存制度の見直し
(1)国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度について、一定の国税関係帳簿に係る電磁的記録の保存等が、国税の納税義務の適正な履行に資するものとして一定の要件等を満たしている場合におけるその国税関係帳簿(以下「優良な電子帳簿」という。)に係る過少申告加算税の軽減措置の対象となる申告所得税及び法人税に係る優良な電子帳簿の範囲を次のとおりとする。
① 仕訳帳
② 総勘定元帳
③ 一定の事項の記載に係る上記①及び②以外の帳簿
上記の改正は、令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用する。
(2)国税関係書類に係るスキャナ保存制度の見直し
① 国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件を廃止する。
② 相互関連性要件について、相互関連性を求める書類は、契約書・領収書等の重要書類に限定する。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に保存される国税関係書類に適用する。
(3)電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の見直し
① 保存要件の緩和
イ 税務調査等において電子データをダウンロードできる場合には全ての検索要件を不要とされる対象者は次のとおりとなります。
(イ)その判定期間の売上高が5千万以下(現行:1千万以下)の保存事業者
(ロ)その電子データの出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限ります)での提示又は提出の求めに応じられる保存事業者
ロ 電子データの保存者等に関する情報の確認要件は廃止します。
② 保存要件を満たさないことに相当の理由がある場合の取扱い
保存要件を満たさすことができなかったことに相当な理由があると所轄税務署長が認め、かつ、その電子データの出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限ります)での提示又は提出の求めに応じられる場合には、電子データの保存として取扱うこととする。
③ 現行の適用延期は令和5年12月末までとなります。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録について適用する。

11.試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)の見直し
研究開発税制では、投資を増加させるインセンティブを更に強化するため、試験研究費の増減率に応じた税額控除率の見直し、増減試験研究費割合によって税額控除の上限も変動させる新たな仕組みも導入されます。
オープンイノベーション型において、研究開発型スタートアップ企業の対象範囲拡大、企業による先導的研究開発人材(博士号取得者や経験を積まれた外部人材)の活用・育成を行った場合の人件費の一部を特別試験研究費の対象とし新たな類型も創設されます。
具体的には、以下の研究開発税制が見直されています。
(1)一般試験研究費の額に係る税額控除制度
(2)中小企業技術基盤強化税制
(3)特別試験研究費の額に係る税額控除制度

12.税率4~4.5%の新たな付加税
防衛力強化に係る財源確保の為に、法人税額に対し、税率4~4.5%の新たな付加税を課す。中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から 500 万円を控除することとする。

13.グローバル・ミニマム課税の導入
内国法人(公共法人を除く)は、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税を納める義務が生じます。つまり、グローバル企業の法人税負担の最低税率を15%とする制度を令和6年度から導入されます。

14.加算税制度の見直し
(1)無申告加算税の割合(現行:15%(納付すべき税額が 50万円を超える部分は20%))について、納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合を30%に引き上げる。 (注1)調査通知以後に、かつ、その調査があることにより更正又は決定があるべきことを予知((2)において「更正予知」という。)する前にされた期限後申告又は修正申告に基づく無申告加算税の割合(現行:10%(納付すべき税額が50万円を超える部分は 15%))については、上記の納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合を25%とする。 (注2)上記の納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合について、納付すべき税額が300万円を超えることにつき納税者の責めに帰すべき事由がない場合の適用に関する所要の措置を講ずる。
(2)過去に無申告加算税又は重加算税が課されたことがある場合に無申告加算税又は重加算税の割合を10%加重する措置の対象に、期限後申告若しくは修正申告(調査通知前に、かつ、更正予知する前にされたものを除く。)又は更正若しくは決定(以下「期限後申告等」という。)があった場合において、その期限後申告等に係る国税の前年度及び前々年度の当該国税の属する税目について、無申告加算税(期限後申告又は修正申告が、調査通知前に、かつ、更正予知する前にされたものであるときに課されたものを除く。)若しくは無申告加算税に代えて課される重加算税((2)において「無申告加算税等」という。)を課されたことがあるとき、又はその無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認めるときに、その期限後申告等に基づき課する無申告加算税等を加える。
 (注)過少申告加算税、源泉徴収等による国税に係る不納付加算税及び重加算税(無申告加算税に代えて課されるものを除く。)については、上記の見直しの対象としない。

以上

消費課税の改正
1. 適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置の見直し
(1) 適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合には、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができることとする。
つまり、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間で免税事業者が適格請求書発行事業者になった場合には、その課税期間の消費税の納税額は課税売上の消費税額×20%になるという経過措置です。
但し、課税期間の特例の適用(課税期間の短縮)を受ける課税期間及び令和5年10月1日前から課税事業者選択届出書の提出により免税事業者ではない日の課税期間には適用がありません。
なお、課税事業者選択届出書の提出により令和5年10月1日の属する課税期間から免税事業者ではなくなる適格請求書発行事業者が、当該課税期間中に課税事業者選択不適用届出書を提出した時には、当該課税期間から課税事業者選択届出書の効力が失われることに留意する必要があります。
(2) 適格請求書発行事業者が上記(1)の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記する必要がものとする。
(3)上記(1)の適用を受けた適格請求書発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を納税地を所轄する税務署長に提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を認められます。

以上は、実質的に簡易課税制度を採用している場合の第二種事業(小売業等)に係る計算と同じです(みなし仕入れ率が80%)。この経過措置は、業種に関係なくどの事業者でも納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができます。事前に届出書の提出が必要なものではなく、申告書に付記することにより経過措置の適用を受けるか否か選択することができますので、従来通りの計算方法による納付税額と経過措置による納付税額のうち有利な方を選択することができることになります。

2.一定規模以下の事業者は1万円未満の課税仕入れにつき帳簿の保存のみで仕入税額控除可能(課税仕入額10,000円未満の適格請求書(インボイス)の不要特例)
基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者(一定の小規模事業者)が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認める経過措置となります。
つまり、基準期間(2期間前)の課税売上高1億円以下又は特定期間(前期の前半6ヶ月)の課税売上高5,000万円以下の小規模事業者ならば、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入において、支払対価(税込み)10,000円未満ならば帳簿記載のみで仕入税額控除が可能となります(インボイス不要)。

3.税込10,000円未満の売上返還等(値引・返品)における適格返還請求書の交付不要
売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されます。
つまり、税込10,000円未満の売上返還(値引・返品)に対して、適格返還請求書の発行不要となりますので、振込手数料相当額を控除して入金された場合にも売上返還として処理した場合には適格返還請求書の発行不要となります。銀行の振込手数料は、課税仕入れとして処理するか売上返還等として処理するか選択適用が認められています。
上記の改正は、令和5年10月1日以後の売上返還からの適用となります。

4.適格請求書発行事業者登録制度の見直し
(1)免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:当該課税期間の初日の前日から起算して1月前の日)までに登録申請書を提出しなければならないこととする。この場合において、当該課税期間の初日後に登録がされたときは、同日に登録を受けたものとみなす。
(2) 適格請求書発行事業者が登録の取消しを求める届出書を提出し、その提出があった課税期間の翌課税期間の初日から登録を取り消そうとする場合には、当該翌課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:その提出があった課税期間の末日から起算して30日前の日の前日)までに届出書を提出しなければならないこととする。
(3)適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置の適用により、令和5年10月1日後に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、その登録申請書に、提出する日から15日を経過する日以後の日を登録希望日として記載するものとする。この場合において、当該登録希望日後に登録がされたときは、当該登録希望日に登録を受けたものとみなす。
(注)上記の改正の趣旨等を踏まえ、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、その申請期限後(令和5年3月31日後)に提出する登録申請書に記載する困難な事情については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする(登録申請が令和5年4月1日以降になっても、困難な事情理由の記載は不要で「困難な事情」とだけ記載すればよい)。

5.免税購入された物品を許可なく譲渡した場合の消費税の連帯納付義務
外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)について、免税購入された物品の税務署長の承認を受けない譲渡又は譲受けがされた場合には、当該物品を譲り受けた者に対して譲り渡した者と連帯してその免除された消費税を納付する義務を課すこととされました。
この改正は、令和5年5月1日以後に行われる課税資産の譲渡等に係る税務署長の承認を受けない譲渡又は譲受けについて適用されます。

以上

2022年12月26日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

事業所得及び雑所得の所得区分

副業収入等を確定申告する時に、その所得区分(事業所得、雑所得、給与所得)に悩むことがあるかと思います。個人で収入を得た場合には、所得税法の所得区分は10種類ありそのいずれかに区分して所得税額等を計算していく必要がありますが、判断に迷うことがあることも事実です。特に、事業所得と雑所得の解釈に疑義が生じることが少なくありませんが、所得税基本通達の改正がありましたのでその内容を含めて確認したいと思います。
1.基本的な定義
(1)事業所得
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業、等から生じる所得ということで、社会通念上事業と判定される基準として、①営利性・有償性の有無、②継続性・反復性の有無、③自己の危険と計算における企画遂行性の有無、④その取引に費やした精神的或いは肉体的労力の程度、⑤人的・物的設備の有無、⑥その者の職歴・社会的地位・生活状況、等を総合勘案するということになっています。
(2)雑所得
他の9種類の所得区分に属さない所得となります。
(3)給与所得
雇用契約に基づいて勤務の対価として受給する給与・賞与からなる所得ということになります。上記2つの所得との大きな違いは、雇用契約の存在ですが、雇用契約と同じく、他人のために活動をする契約として、「請負契約」や「委任契約」というものもあります。雇用契約の場合は、労働者は雇用者の指揮・命令に従って仕事をすることになりますが、請負契約や委任契約では、雇用主の指示ではなく自らの判断で独立して仕事をするという点が異なります。税務上で注意しなければならない点は、契約というよりも業務実態から判定されることになります。
2.事業所得及び雑所得の判定基準
(1)原則
その所得を得る為の活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているか否かでの判定となります。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存があれば概ね事業所得に該当として申告可能となります。
(2)その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合の取扱い
① その所得の収入金額が僅少となっている場合
例年(概ね3年程度の期間)、300万円以下で主たる収入金額に対する割合が10%未満である場合には僅少に該当となります。
② その所得を得る活動に営利性が認められない場合
その所得が例年赤字で、かつ、赤字解消の取組を実施していない場合(収入を増加させる、或いは所得を黒字にする為の営業活動等の実施が無い状況)には、営利性が認められないことになります。
上記に該当する場合には、事業所得ではなく業務に係る雑所得に該当することになります。

以上から、記帳・帳簿書類の保存の有無で所得区分を判定することになり、記帳・帳簿書類を保存していれば、売上300万円以下の副業であっても概ね「事業所得」として申告可能とのことです(ただし、社会通念上の「事業」に該当することが前提)。
事業所得と雑所得の区分:

収入金額他記帳・帳簿書類の保存有り記帳・帳簿書類の保存無し
300万円超社会通念上の事業状況で判定:事業所得社会通念上の事業状況で判定
300万円以下で主たる収入の10%未満、又は例年赤字で営利性無し社会通念上の事業状況で判定:事業所得社会通念上の事業状況で判定
業務に係る雑所得

2022年11月14日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

配偶者及び親族が被扶養者となる適用条件

年末調整の時期が近づいてきていますが、被扶養者になるか否か気になる方も少なくないかもしれません。この被扶養者に関しましては、所得税上と社会保険上の取扱いが、以下の様に異なりますので留意する必要があります。
1.所得税上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「所得税の扶養」とは、扶養している親族等の人数に応じて所得の控除を受けることができる制度のことになります。
① 「生計を一にする(家計を共にしていれば同居でなくてもOK)」
② 以下の所得基準(収入金額ではありません)があります。
年間所得金額が480千円以下(給与収入で1,030千円)であること。なお、70歳以上の老人扶養は、同居での所得で580千円以下(年金収入で1,680千円・給与収入で1,130千円)・同居外での所得で480千円以下(年金収入で1,580千円・給与収入で1,030千円)であること。

2.社会保険上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「社会保険の扶養」とは、被保険者の扶養している親族等が、自分自身で社会保険料を負担することなく保険の給付を受けられる制度のことになります。
① 「三親等以内の親族は同一の世帯(同居して家計を共にしている)」であること
② 年間の収入金額(所得金額ではありません)が1,300千円未満(60歳以上は1,800千円未満)であること、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であること。いわゆる「130万円の壁」と言われるのは、この認定基準があるからです。
③ 75歳未満であること(従って、75歳以上は扶養者になれません。何故ならば、75歳から後期高齢者医療保険制度に移行になりますので、社会保険制度への加入資格はありません)

なお、社会保険加入で収入金額を「106万円」未満に収めたいと言われることがありますが、いわゆる「106万円の壁」とは、働く方でその方自身が厚生年金保険や健康保険といった社会保険への加入が必要となる収入基準のことです。こちらの保険適用基準は、以下の一定の条件を満たした場合に対象となります。
① 週20時間以上働いている
週20時間を算出する際は、残業時間を合算せずに計算します。
② 1年以上継続して勤務する見込み
雇用契約書等に1年以上継続して勤務する見込みがあること。
③ 1カ月の賃金が8.8万円超
1カ月の賃金が8.8万円を超すというもの。1カ月の賃金が8.8万円を超すと、1年の年収が計算上、で106万円以上になります。ここでいう1カ月の賃金とは所定内賃金のみで、各種手当や賞与などは含みません。
④ 学生ではない

2022年10月20日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

雇用保険料率の改正(令和4年10月より)

雇用保険料率が令和4年10月より労働者及び事業主のそれぞれの負担率が、2/1000の増加となります。以下の様に、一般事業会社での労働者負担率が、3/1000から5/1000に上昇します。
(1)令和4年4月1日~9月30日までの期間
①一般の事業    9.5/1000(うち労働者負担 3/1000・事業主負担 6.5/1000)
②農林水産業等   11.5/1000(うち労働者負担 4/1000・事業主負担 7.5/1000)
③建設業      12.5/1000(うち労働者負担 4/1000・事業主負担 8.5/1000)
(2)令和4年10月1日~令和5年3月31日までの期間
①一般の事業    13.5/1000(うち労働者負担 5/1000・事業主負担 8.5/1000)
②農林水産業等   15.5/1000(うち労働者負担 6/1000・事業主負担 9.5/1000)
③建設業      16.5/1000(うち労働者負担 6/1000・事業主負担10.5/1000)

2022年9月20日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

改正電子帳簿保存制度の概要

改正電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿及び書類の保存方法等の特例に関する法律:電帳法)の適用開始が、2年間の適用猶予期間の終了後の2024年(令和6年)1月1日となっています。
この電帳法による電子データ保存の3分類の内の「電子取引」に係るデータ保存制度では、電子で取引した際の電子取引データは所定の保存要件に基づいて保存しなければならないという保存義務が課されています。その大きな改正点は、電子取引に該当する場合には、これまでの電子取引データを紙に出力して保存することが認められなくなり、保存要件に従って電子取引データそのものを保存しなければならなくなっています。逆に、電子取引に該当しない帳簿・書類はこれまでどおり紙での保存で良いのですが、この紙での保存に代えて電子化して保存を望む場合には、所定の保存方法(電子帳簿等保存又はスキャナ保存)に従う必要があるというものです。電帳法の保存概要を纏めると以下の様になります。
① 電子取引の書類・帳簿等の保存方法(電子取引データとして保存強制)
電子的に授受される取引データ(電子取引となります)は、必ず電子取引データとして保存しておく必要があります。従って、当該電子データを紙で出力しその紙を保管し、電子データは削除することで紙を会計帳票書類とすることは保存においては認められません。この電子取引に関してのみ注視すれば良いことになります(電子取引は電子データのまま保存し所定の保存要件を満たす)。
② 電子取引以外の書類・帳簿等の保存方法(保存方法は任意選択)
上記①の電子取引以外の書類・帳簿の保存は、これまでと同様に紙での保存で問題はありません。ここで選択として、紙の保存量を減らしたい等の理由(ペイパーレス化)で紙での保存をせずに電子データ化して保存する場合には、書類・帳簿の内容別に「電子帳簿等保存」或いは「スキャナ保存」の適用要件を満たす保存法が要求されることになります。

1.電子データの保存分類
電子データの保存方法には、書類・帳簿等の内容別に「電子帳簿等保存」、「スキャナ保存」、「電子取引に係るデータ保存」の3種類に分かれています。その種類別に電子データ保存の要件が定められています。重要なことは、電子帳簿等保存とスキャナ保存については企業の任意選択(紙の保存又は電子データ化の保存の選択でよく、電子データで保存する場合には、所定の保存方法を遵守する必要があるということ)ですが、電子取引に係るデータ保存内容(紙の出力保存のみでは不可)については、該当する電子取引データを授受する全ての企業に適用される点が挙げられます。

2.電子データ保存義務の対象となる電子取引及び取引情報
(1)電子取引
電子取引とは、通信手段を問わず「取引情報」の受け渡し(授受)を電子データ(電磁的記録)により行う取引をいいます。以下は電子取引にあたり、書類等の受け渡しが電子データで行うものが含まれます。
① EDI 取引
② インターネット等による取引(クラウドサービスの利用等も含む)
③ 電子メールによる取引情報の受け渡し取引(添付ファイルも含む)
④ インターネット上のサイトで受け渡し取引
注:EDIとは「Electronic Data Interchange」の略称で、日本語では「電子データ交換」を意味します。企業間の商取引で発生する契約書や受発注書、納品書、請求書等といった帳票のやり取りを、専用回線やインターネットを用いて電子的に交換ができるシステム(企業間でやり取りする仕組)のことです。
更に、具体例として、
* 電子メールにより受領した請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)
* インターネットのホームページからダウンロード・スクリンショットした請求書や領収書等のデータ
* 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
* クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、 スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
* 特定の取引に係るEDIシステムを利用
* ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
注:FAXでの取引について
FAXで請求書等を受信することがありますが、この場合、その書面をスキャンして送信し書面で受領するタイプと、複合機などのFAX機能を介してデータを送受信するタイプの2種類があるかと思いますが、前者は書面(紙)での取引とされ、後者は電子取引に該当することになります。
* 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領、等があります。
(2)取引情報
取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項(取引先・取引日・取引金額等の事項)となります。従って、この様な取引情報が含まれていない電子データの保存義務はありません。
(3)電子取引で受渡しのデータにおける所得税・法人税法と消費税法の違い
① 所得税(源泉所得税を除く)・法人税法
電帳法は税務関係帳簿書類の電子データ保存を可能とする法律であり、2024年1月1日以後は授受した電子取引データを書面等に出力(紙出力)して保存することは認められません(記帳管理上、書面等を紙で出力保管することは全く問題ありません)。 全ての電子取引の情報は、電帳法に定められる要件を満たした上で、電子データを保存しなければなりません。 もし、同日以後に行う電子取引の取引情報を書面のみで保存していた場合、青色申告の承認の取消対象となる可能性もあるため注意が必要です(取消等は説明、資料、情報等を総合勘案されますが、書面で取引内容の確認ができ、かつ、申告内容が正しく、書面保存以外の特段の事由がないような場合には、青色申告の取消や費用の経費性が認められないことにはならないとのことです)。
② 消費税法
電子データを書面等に出力しての保存が可能です。2023年10月から始まるインボイス制度導入後も、書面の保存でも仕入税額控除の適用が受けられます。

3.電帳法の対象資料(帳簿、書類、電子取引)とその保存方法
電子帳簿保存法の対象となる資料は、電子帳簿保存法の第4条及び第7条に記載されています。条項ごとに整理すると以下の通りです。

各資料の保存方法

電子帳簿等保存
(自己が最初からPC等で作成した帳簿書類)
スキャナ保存
(紙で発行・受領した取引関係書類)
電子取引データ保存
(電子データで授受された取引情報)

対象の資料は、大きく分けて、帳簿、書類、電子取引の3種類に分けられます。

対象資料の種類対象となる資料電帳法
帳簿国税関係帳簿4条1項
書類国税関係書類決算関係書類4条2項
取引関係書類自己が作成する電磁的記録の書類、又は紙での書類の写し等
相手方から受領した紙の書類等4条3項
電子取引電子的取引データ7条

対象資料の保存法を改めて整理すると、
上述の通り、電帳法の資料については、その資料の種類及び作成方法により保存方法が異なります。保存方法について一覧化すると下記のとおりです。

出典:電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】

4.電子帳簿等保存とは(自己が最初の記録段階から一貫してデータで作成している場合)
国税関係帳簿及び書類のうち電子計算機(コンピュータ)を使用して自己が最初の記録段階から一貫して作成している国税関係帳簿及び書類については、一定の要件の下で、電磁的記録等(電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルム(COM))による保存が認められます。 なお、手書きで作成された国税関係帳簿については、原本の書面で保存することになります。
市販の会計ソフトを使って経理処理や申告書の作成等を行っている場合には、国税関係帳簿及び書類の電磁的記録等による保存等は認められるかは、市販の会計ソフトを使用して、見読可能装置(ディスプレイ等)やシステムの開発関係書類(システムの概要書等)の備付け等の法令で定められた要件を満たしている場合には、紙による保存等に代えて、電磁的記録等による保存等を行うことが認められます。しかしながら、 この法令で定められた要件を満たせない場合には、会計ソフトを使用して作成した帳簿書類について電磁的記録等による保存等は認められないことから、紙出力して保存等を行うことになります。
なお、優良な電子帳簿の保存要件を満たすことで、過少申告課税の5%軽減措置(税務署長への要事前申請)と所得税の青色申告特別控除(65万円)の適用を受けることが出来ます。
電子帳簿等保存における保存要件:

要件概要一般帳簿書類
1.関連書類の備付け
システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)の備付け
必要必要
2.見読性の確保
保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンター及びこれらの操作マニュアルを備付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できる
必要必要
3.検索機能の確保①取引年月日、取引金額、取引先で検索できる
②日付又は金額の範囲指定で検索できる
③2つ以上の任意の記録項目での組合せ条件で検索できる
税務職員による質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求めに応じることができる必要
(注1)
必要
(注2)

注1:優良帳簿での全ての要件を満たす場合には不要。
注2:①②の機能確保の場合には不要

5.スキャナ保存とは( 取引先から書面で受領した領収書や請求書、自己で作成した控え等の書類をスキャナで読み取る場合)
スキャナ保存制度は、取引の相手先から受け取った請求書等及び自己が作成したこれらの写し等の国税関係書類(決算関係書類を除きます。)について、書面による保存に代えて、一定の要件の下で、スキャン文書による保存が認められる制度です。
「スキャナ」とは、書面(紙)の国税関係書類を電磁的記録に変換する入力装置をいい、 いわゆる「スキャナ」や「複合機」として販売されている機器が該当することになります。 また、例えば、スマートフォンやデジタルカメラ等についても、上記の入力装置に該当すれば、「スキャナ」に含まれることになります。
スキャナ保存の主な保存要件:

入力期限①速やかに(7営業日以内)タイムスタンプを付す。
②なお、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの事務処理規程を定めている場合は、事務処理の経過後速やかに付す(2ヶ月+7営業日以内)。
タイムスタンプ付与入力期間内に、総務大臣が認定する時刻認証業務に係るタイムスタンプを入力単位ごとの電磁的記録の記録事項を付す。
なお、入力期間内に、別途記録事項を入力したことを客観的に確認出来る場合(例えば、外部委託会社でタイムスタンプ付与、等)には、このタイムスタンプの付与要件に代えることが出来ます。
見読可能装置の備付けディスプレイ及びプリンター並びにこれらの操作マニュアルを備付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できること。
検索機能の確保条件① 日付、金額、取引先の 3つの項目で検索ができること。
条件② 日付、金額は範囲を指定して検索ができること。
条件③ 二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて、 検索条件を設定できること。 AND検索でOK、OR検索までは求められない。
検索要件の充足方法の例外:
保存の電子データについて、税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに対して全てについて応じられる場合、その条件②及び条件③の要件は不要となります。

6.電子取引に係る電子取引データ保存とは(見積書、契約書、請求書、領収書等の送付・受領を電子データで行った場合)
電子取引制度は、所得税(源泉徴収に係る所得税を除きます) 及び法人税の保存義務者が取引情報(注文書、領収書等に通常記載される事項)を電磁的方式により授受する取引(電子取引)を行った場合には、その取引情報を一定の要件の下で電磁的記録により保存しなければならないという制度です。 所得税法及び法人税法では、取引に関して相手方から受け取った注文書、領収書等や相手方に交付したこれらの書類の写しの保存義務が定められていますが、同様の取引情報を電子取引により授受した場合には、この注文書、領収書等の原始記録の保存が行われない結果となりかねない状況にあったため、電帳法において、新たに電子取引により授受した場合には、その取引情報に係る電磁的記録を一定の方法により保存しなければならないこととされています。
電子取引に係る電子取引データの保存要件(改ざん防止措置として取引情報の可視性と真実性を確保):
電子取引に係るデータは書面での保存が不可となるため、電子取引の保存要件として、「可視性の確保」と「真実性の確保」との2つを満たす必要があります。それぞれ以下の目的があります。
• 可視性の確保:保存されたデータを検索・表示できること(検索性と見読性)
• 真実性の確保:保存されたデータが改ざんされていないこと
1.可視性の確保要件(電子取引データの必須的保存3要件)

(1)関係書類の備付け電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合)。
(2)見読可能性の確保保存しているデータを速やかに出力できるよう、PCとディスプレイ・プリンターを備付ける。
(3)検索機能の確保条件① 日付、金額、取引先の 3つの項目で検索ができること。
条件② 日付、金額は範囲を指定して検索ができること。
条件③ 二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて、 検索条件を設定できること。 AND検索でOK、OR検索までは求められない。

検索要件の充足方法の例外
例外1. 保存の電子データについて、税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに全てについて応じられる場合、その条件②及び条件③の要件は不要となります。
例外2. 電子取引保存に対応した専用システムを導入しておらず、一般的なパソコンやプリンターを使用している場合でも、以下のいずれかの方法でも検索要件を満たすことで保存要件を満たしたことになります。
① 取引情報のデータを規則的なファイル名により入力しておく方法。
ダウンロード可能な状態にして特定フォルダにファイル名で検索機能を活用する(税務職員の求めに応じて一括ダウンロードできるようにしておき、ファイル名に日付・金額・取引先を入れる)。
② エクセル等の表計算ソフトで索引簿を作成する方法。
範囲指定、および2以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できる機能が備わっているエクセル等の表計算ソフトに、取引データに係る取引年月日、取引金額、取引先の情報を入力して一覧表を作成する。
例外3. 以下を満たす場合には、検索要件充足は不要(免除)となります。
個人事業主の場合は2年前、法人の場合は前々年度の売上高が 1,000万円以下の場合(この売上高は、消費税における課税売上高ではありません)。

2.真実性の確保要件(選択的保存要件)
真実性の確保です。電子データは紙媒体の書類と比べて、内容の改ざんが容易です。電子データの改ざんが問題視されて、ニュースになった事例もあります。そのため、電子データを保存する際は、そのデータが改ざんされたとしても真実のデータがどういった内容のものか確認できるようにしておかなくてはいけません。

その真実性の確保として、次の①から④のいずれかの保存上の措置が必要です。

① 送信者側からタイムスタンプが付された後の取引情報を受領する。
② 速やかに(7営業日以内)タイムスタンプを付す。
取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの事務処理規程を定めている場合は、事務処理の経過後(最長2ヶ月以内)、速やか(おおむね7営業日以内)に付す。(2ヶ月+7営業日以内)
③ データの訂正削除を行った場合、その記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用する。
④ 正当な理由がない訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付ける。
一般的な事業者は、この④の対応となるかと思いますが、事務処理規程の例示は、国税庁から「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」として公表されていますので参考にすることができます。

電子データの隠蔽、改ざんが発覚した場合、その事実に関し生じた申告漏れ等の金額に10%の重加算税が加重され、合計45%が課されることになります。

最後に、国税庁HPに電子帳簿保存法Q&A(一問一答)により詳細説明がありますので必要に応じて参照してください。
以上

2022年8月25日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

払済保険と解約返戻金との関連による節税商品

これまで保険商品の中に節税商品と言われるものに対して過剰にならない様に国税当局は、規制する税制上の取扱いを公表してきました。その主なものとして、
Ⅰ 定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い(法人税基本通達9-3-5の2)(2019年7月8日以後の契約分から適用)
国税庁は、生命保険各社が節税対策になると販売していた解約返戻率が高い定期保険等について、過熱した節税保険ブームに歯止めをかけるということから、課税ルールの見直しの基本通達を発表しています。
1.対象の保険とは
法人が契約者で役員又は使用人(これらの親族も含む)を被保険者とする保険期間が3年以上の定期保険又は第三分野保険で最高解約返戻率が50%超の加入保険が対象となります。
従いまして、対象外となる全損タイプの定期保険等は、次のものになります。
(1)保険期間が3年未満の定期保険等
(2)最高解約返戻率が50%以下の定期保険等
(3)最高解約返戻率が70%以下、かつ、年換算保険料相当額(保険料総額÷保険期間)が30万円以下の定期保険等
(4)保険期間を通じて解約返戻金のない定期保険又は第三分野(ごく少額の払戻金のある契約を含み、保険料の払込期間が保険期間より短い保険)で、かつ、当年度の支払保険料が30万円以下の定期保険
参考:保険分類
①第一分野保険:生命保険(終身保険、定期保険等)
②第二分野保険:損害保険(火災保険、自動車保険等)
③第三分野保険:上記①及び②に属さない疾病・傷害保険(医療保険、介護保険、傷害保険等)

2.保険料の取扱い(会計処理)
(1)最高解約返戻率 50%超~70%以下のケース

保険開始から終了までの各期間支払保険料積立保険資産
資産計上損金計上
100分の40相当期間(資産計上期間)40%60%40%積立
資産計上期間経過後から100分の75相当期間100%
100分の75相当期間から保険終了まで100%当該期間に均等取崩して損金計上

注:但し、被保険者1人当たり年換算保険料相当額が30万円以下の場合には、全額損金計上。

(2)最高解約返戻率 70%超~85%以下のケース

保険開始から終了までの各期間支払保険料積立保険資産
資産計上損金計上
100分の40相当期間(資産計上期間)60%40%60%積立
資産計上期間経過後から100分の75相当期間100%
100分の75相当期間から保険終了まで100%当該期間に均等取崩して損金計上

(3)最高解約返戻率 85%超のケース

保険開始から終了までの各期間支払保険料積立保険資産
資産計上損金計上
開始から最高解約返戻率となる期間(各期間において、その解約返戻金相当額から前期の解約返戻金相当額を控除した金額を年換算保険料相当額で除した割合が70%を超える期間がある場合には、その超えることとなる最も遅い期間)の終了までの期間(資産計上期間:但し、資産計上期間が5年未満の場合には、開始から5年経過までとし、保険期間が10年未満の場合には、開始から当保険期間の100分の50に相当する期間終了までとする)支払保険料X最高解約返戻率X70%(但し、保険期間開始10年までは70%ではなく90%)支払保険料X最高解約返戻率X30%(但し、保険期間開始10年までは30%ではなく10%)所定割合の積立
資産計上期間経過後100%
資産計上期間経過後で解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後から保険終了まで100%当該期間に均等取崩して損金計上

Ⅱ 定期保険及び第三分野に係る保険料の取扱い(2019年10月8日以後の契約分から適用)
1.範囲
保険期間を通じて解約返戻金のない定期保険又は第三分野(ごく少額の払戻金のある契約を含み、保険料の払込期間が保険期間より短い保険)においての取扱い。
2.年間の支払保険料金額

年間の支払保険料金額30万円以下30万円超
税務処理支払時に損金処理保険期間の経過に応じて損金処理:
総支払保険料÷(116歳-加入年齢)=年間損金計上保険料

Ⅲ 名義変更に伴う低解約返戻保険等の評価の見直し
国税庁は、経営者等向け保険の中に加入初期に解約返戻金を抑え、その低い返戻金時に経営者等に名義変更し課税額を抑え、経営者等は返戻金が増加後に解約し節税効果を得るという保険商品がありました。これを、新たな課税方法では、解約返戻金が保険料の資産計上額の一定割合を下回る場合に資産計上額で課税額を算出するという見直しを行った。その改正基本通達36-37の概要は、以下の通り。

保険契約等の種類経営者等に名義変更時の評価方法
令和3.6.30までの変更令和3.7.1以後の変更

下記②及び③以外の保険契約支給時解約返戻金額

注1
低解約返戻金型保険:
支給時解約返戻金額<支給時資産計上額×70%
支給時解約返戻金額支給時資産計上額

注1
復旧することができる払済保険等支給時資産計上額プラス法人税基本通達9-3-7の2による損金算入額

Ⅳ 保険契約の変更(支払保険料の停止):払済保険と失効との違い
保険料の支払いが厳しくなった時には、解約や保険料の減額等が考えられますが、解約返戻金のある保険契約において、保険料の支払いを完全に停止し既払保険料に係る解約返戻金を利用して保険期間を継続(保障保険金は減額)させるという「払済保険」という方法があります。この払済保険に変更した時に税務上の処理は、一旦解約し新規契約したものと見做した処理が要求されます。つまり、その変更時における解約返戻金相当額とその保険契約により資産に計上している保険積立金との差額をその変更した日の属する事業年度の益金の額(又は損金の額)に算入しなければならない点に留意する必要があります。
そこで、保険契約を「失効」させることで、この様な解約返戻金の洗替処理を避けることができます。生命保険が失効すると保障を受けられなくなるだけで解約返戻率は維持され保険料の支払いはありません。但し、失効期間(例えば、2年、3年等)には保険会社により異なりますが制限(一定期間の措置)があります。この失効の措置活用も状況に応じて検討することが考えらえます。又、例外として、解約返戻金の洗替処理が不要となるケースに、定期保険等から同種類の払済保険への変更も含まれます。

以上の税務上の取扱がありますが、最近、「払済保険」を活用した保険商品による節税効果が話題となっているようです。ポイントは、定期保険等から同種類の払済保険へ変更し、その後の解約返戻率が高くなる時点(運用効率が上がり解約返戻率が100%を超えるケースも有り)で解約し、多額の解約返戻金を受取る様に契約当初から変更・解約を前提にされている点です。この内容の場合には、上述した税務上の取扱いには抵触しないことになるのですが、当初からこの様な活用効果を目的とした契約に国税当局は問題視しているようです。今後、何らかの規制が図られる可能性があると思われます。

2022年7月25日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

住宅取得資金贈与の非課税制度と住宅ローン控除

令和4年度税制改正により令和4年1月1日以降の贈与から、直系尊属(父母、祖父母等)からの住宅取得時の資金贈与における非課税限度額の減額改正がありました。以下は、その概要となります。

 改正前改正後
適用期限令和3年12月31日まで令和4年1月1日から令和5年12月31日までの贈与
非課税限度額契約の締結期間H31.4~R2.3R2.4~R3.12契約の締結時期を問わない(資金贈与日で判定)
①耐震・省エネバリアーフリー住宅3,000万円1,500万円1,000万円
②その他の住宅2,500万円1,000万円500万円
既存住宅用(中古住宅)の築年数要件取得日以前20年以内に建築されたもの(耐火建築物は25年以内)①築年数要件の廃止
②新耐震基準に適合していること(注1)
受贈者の年齢要件贈与年の1月1日現在20歳以上18歳以上(適用は令和4年4月以後)
改正適用時期令和4年1月以後の贈与

注1:新耐震基準とは、昭和57年1月1日以後に建築されたこと、又は耐震基準に適合することが証明されたものとなります。

なお、令和4年度税制改正に「住宅ローン控除の見直し」もありましたので、以下にご紹介しておきます。
住宅ローン控除の適用期限が令和3年12月31日から令和7年12月31日までの4年延長となりますが、控除率が現行1%から0.7%に引き下げられます。又、適用対象者の所得要件が、令和4年1月1日以降居住の用に供したものから合計所得金額が現行3,000万円から2,000万円に引き下げられます。又、所得税においてローン控除しきれなかった場合において、個人住民税のローン控除限度額は、現行の最高136,500円から最高97,500円に減額となります。
住宅ローン控除額等の要件は以下の様になります。

区分居住年借入限度額控除率控除期間
認定住宅令和4年・令和5年5,000万円0.7%13年
令和6年・令和7年4,500万円
ZEH水準省エネ住宅令和4年・令和5年4,500万円
令和6年・令和7年3,500万円
省エネ基準適合住宅令和4年・令和5年4,000万円
令和6年・令和7年3,000万円
新築住宅等令和4年・令和5年3,000万円
令和6年・令和7年2,000万円10年
中古住宅等令和4年・令和7年2,000万円
中古の認定住宅等令和4年・令和7年3,000万円

なお、新築住宅の場合に令和3年9月末(中古住宅の場合に令和3年11月末)までの契約締結での取得(特別特例取得)については、例え、居住年が令和4年であっても、控除率1%が適用可能となります(0.7%の適用除外)。

項目内容
所得要件合計所得金額3,000万円から2,000万円に引き下げ
適用日令和4年1月1日以降居住の用に供したものから適用(令和7年12月31日まで)
床面積基準の緩和床面積50㎡以上を40㎡以上に引き下げられましたが、40㎡以上50㎡未満は、合計所得金額が1,000万円以下の年度のみ適用となります。
又、令和5年12月31日以前に建築確認を受けた新築も同様に緩和の適用対象になります。
既存住宅の要件変更令和4年1月1日以降居住の用に供したものから、新耐震基準に適合している場合には、中古住宅の築年数要件は廃止となります。
確定申告等手続の見直し令和5年1月1日以降居住の用に供したものから、金融機関に住宅ローン控除申請書を提出した場合には、確定申告時に新築工事の請負契約書の写し等、年末借入金残高証明の添付不要となります。事前に、金融機関に「住宅ローン控除申請書」を提出する必要があり、当該申請書を基に金融機関から所轄税務署長に調書として提出(初年度のみ1月31日、それ以降各年10月31日までに)する必要があります。税務署は、毎年、住宅ローン控除証明書を本人に交付します。
なお、年末調整の際に特別控除申告書への年末借入金残高証明の添付も不要となります。
この改正は、居住年が令和5年以後である者が、令和6年1月1日以後に行う確定申告(令和5年分から)及び年末調整(令和6年分から)について適用となります。
2022年6月29日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

保険金と税金

生命保険、医療保険、年金保険、損害保険等の保険金を受領した時は、その保険料の負担者、支払原因等によって、税金の課税関係が異なってきます。その内容を、以下で確認したいと思います。
1.保険の種類別における課税・非課税
以下は、一般的な保険の種類別の課税・非課税となる例示です。

課税の有無保険の種類保険金
課税生命保険死亡保険金、満期保険金、解約返戻金
個人年金保険年金受給、一時金受給
非課税(注)医療保険、ガン保険入院、通院、手術、先進医療、ガン給付金
介護保険介護保険金
損害保険建物の焼失、身体の傷害・疾病を原因として受取る保険金

注:原則、身体の損害で支払いを受ける保険金等は非課税とされています。

2.保険の契約形態別における課税所得関係
課税対象になる場合の保険金は、保険の契約形態によって受取人に係る税金の種類が変わってきます。以下は、国税庁のHPで紹介しています内容です。

 「生命保険金を受け取る場合、その保険金が死亡に基づくものか、満期によるものか、また、保険料の負担者は誰なのかなどによって課税関係が異なります。
 夫婦の関係でみると、次の表のようになります。

区分被保険者負担者(契約者)受取人保険事故等課税関係
1満期夫の一時所得(※)
2満期妻に贈与税
夫の死亡妻に相続税
3夫の死亡妻に相続税(生命保険契約に関する権利)
4満期夫の一時所得(※)
妻の死亡

※一時所得の場合の課税所得金額の計算式 {(保険金-支払保険料)-50万円}×1/2
 一定の一時払養老保険等の差益は、源泉徴収だけで納税が完了する源泉分離課税となります。
 年金方式で保険金を受け取った場合は、その年ごとの雑所得として所得税及び復興特別所得税がかかります。」

上述のとおり保険契約者と受取人が異なる場合には、贈与税、相続税、所得税(一時所得)の何れかになります。その課される税金の種類は、被保険者、保険料の負担者(契約者)、受取人、保険事故形態によって決まるのです。
なお、生命保険契約の途中で保険受取人や契約者を変更した場合には、保険事故が発生したわけではありませんので課税関係が生じないことになります。なお、契約者変更時におきまして、保険契約を解約し解約返戻金を受領した場合には、新契約者は前契約者から贈与により取得したものとして贈与税が課税されます。
又、契約者の途中変更してその後に満期保険金或いは死亡保険金を受領した場合には、課税は変更前と変更後に分けて課税されます。以下は、その課税の例示です。

 前契約者新契約者
満期保険金に係る税金負担した保険料相当部分に対して、贈与税負担した保険料相当部分に対して、一時所得
死亡保険金に係る税金負担した保険料相当部分に対して、一時所得負担した保険料相当部分に対して、相続税

なお、契約者死亡に伴う契約者変更の場合は、死亡時点での「生命保険契約に関する権利の評価額」(解約返戻金相当額)が相続税の課税対象となります。

2022年5月30日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

インボイス発行事業者登録申請書の記載内容

2023(令和5)年10月よりインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入となりますが、その制度開始から適格請求書発行事業者となる為には、2023年3月31日までに税務署に登録申請書を提出する必要があります。適格請求書発行事業者のみが、インボイス(適格請求書)を発行できることになります。このインボイスを発行できるか否かは、請求書を受取る買手側が、消費税の仕入税額控除の適用を受けることができるか否かに関係してきます。
インボイスを発行する売手側には、記載要件を満たすインボイスを交付する義務、そして交付したインボイスの写しを保存する義務が課されます。
インボイスを受取る買手側は、当該インボイスにより仕入税額控除の提供を受けることが可能となります。従って、適格請求書発行事業者ではない事業者等からの請求書に含まれる消費税は仕入税額控除の適用を受けることができないことになります。
以上から、インボイス制度では適格請求書発行事業者であるか否かが重要ということです。しかしながら現在のところ、未だ登録申請件数が少ない状況のようですが、以下にその適格請求書発行事業者の登録申請書の記載内容を確認してみたいと思います。
主な記載事項は次の通りですが、法人と個人事業者とで記載箇所が多少異なっています。
1.法人用
(1)申請者
①住所又居所、②納税地、③氏名又は名称(会社名)、④代表者氏名、⑤法人番号
登記情報に基づいて正しく記載する必要があります。
(2)事業者区分
「課税事業者」か「免税事業者」かのいずれかを選択します。
区分は、この登録申請時点での判定となります。
(3)免税事業者の確認
上記の事業者区分で「免税事業者」となる法人の場合において、次のいずれかを選択する必要があります。
① 令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受け、所得税法等の一部………の適用を受けようとする事業者
こちらを選択した場合には、以下の項目記載が必要となります。
(イ)法人設立年月日、(ロ)事業内容、(ハ)事業年度及び資本金、
(二)登録希望日(但し、令和5年10月1日に登録希望される場合には、記載不要です。従って記載は、令和5年10月2日以後に登録希望される場合であり、その日付けを記載しますが、令和5年10月2日から令和6年3月31日までの日に限ります。
又は
② 消費税課税事業者(選択)届出書を提出し、納税義務の免除の規定の適用を受けないこととなる課税期間の初日から登録を受けようとする事業者
こちらを選択した場合には、以下の項目記載が必要となります。
(イ)課税期間の初日
この初日とは、消費税課税事業者(選択)届出書の「適用開始課税期間(自)」欄に記載した年月日となります。但し、令和5年10月1日から令和6年3月31日までの日に限ります。
(4)登録要件の確認
① 課税事業者です。
免税事業者もこの登録申請するので、「はい」の選択となります。
② 納税管理人を定める必要のない事業者です。
通常、定める必要がないでしょうから「はい」の選択となります。「いいえ」の場合には、該当事項に記載する必要があります。
③ 消費税法に違反して罰金以上の刑に処せられたことはありません。
該当しない場合に「はい」の選択となります。なお、加算金や延滞税では罰金になりません。

2.個人事業者用
(1)申請者
①住所又居所、②納税地、③氏名又は名称
氏名は、姓と名の間は1文字空けますが、屋号は記載しません。
(2)事業者区分
「課税事業者」か「免税事業者」かのいずれかを選択します。
区分は、この登録申請時点での判定となります。
(3)免税事業者の確認
上記の事業者区分で「免税事業者」となる法人の場合において、次のいずれかを選択する必要があります。
① 令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受け、所得税法等の一部………の適用を受けようとする事業者
こちらを選択した場合には、以下の項目記載が必要となります。
(イ)個人番号、(ロ)生年月日、(ハ)事業内容
(二)登録希望日(但し、令和5年10月1日に登録希望される場合には、記載不要です。従って記載は、令和5年10月2日以後に登録希望される場合であり、その日付けを記載しますが、令和5年10月2日から令和6年3月31日までの日に限ります。
又は
② 消費税課税事業者(選択)届出書を提出し、納税義務の免除の規定の適用を受けないこととなる課税期間の初日から登録を受けようとする事業者
こちらを選択した場合には、以下の項目記載が必要となります。
(イ)課税期間の初日
この初日とは、消費税課税事業者(選択)届出書の「適用開始課税期間(自)」欄に記載した年月日となります。但し、令和5年10月1日から令和6年3月31日までの日に限ります。
(4)登録要件の確認
① 課税事業者です。
免税事業者もこの登録申請するので、「はい」の選択となります。
② 納税管理人を定める必要のない事業者です。
通常、定める必要がないでしょうから「はい」の選択となります。「いいえ」の場合には、該当事項に記載する必要があります。
③ 消費税法に違反して罰金以上の刑に処せられたことはありません。
該当しない場合に「はい」の選択となります。なお、加算金や延滞税では罰金になりません。

以上となりますが、「消費税簡易課税制度選択届出書」も新様式となっています。

2022年4月30日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant