消費税の課税事業者(納税義務者)・免税事業者(納税免除者)の判定

1.課税事業者(納税義務者)とは.

国内取引の納税義務者は「事業者」に限定され、同種の営業行為を反復、継続、独立しておこなう個人事業者や法人(公共・公益法人、人格のない社団等を含む)であり、国内において行った課税資産の譲渡等に伴う取引(国内取引)があった場合です。しかしながら、全ての事業者が必ず消費税の納税者(課税事業者)となるのではなく、中小企業者等の事務負担の軽減や税務執行面に配慮して一定の条件下では、事業者は免税事業者(納税免除者)になることがあります(事業者免税点制度と呼ばれています)。 尚、輸入取引については、事業者だけではなく、個人が輸入する場合にも納税義務者(保税地域から課税貨物を引取る者に課税)となります。

 

(1) 課税事業者・免税事業者判定

消費税の課税事業者と免税事業者の判定が法令の改正が続き複雑になっていますが、次の様になっています。

① 新設法人の場合には資本金で判定(1千万円以上か未満か

(イ)1千万円以上――初年度から課税事業者

(ロ)1千万円未満――免税事業者

但し、1千万円未満でもその新設法人が50%超を直接・間接に所有(各事業年度開始の日時点で判定)され、 かつ、 その親会社の中で基準期間(前々事業年度)の課税売上が5億円超になっている場合には、 課税事業者となります。

② 「基準期間」の課税売上高で判定(前々事業年度の課税売上高1千万円超か以下か)

(イ)1千万円超――課税事業者

(ロ)1千万円以下――免税事業者

法人の場合、基準期間が1年未満(以上も含む)の場合には課税売上高は年換算して判定。

個人事業者の場合、 基準期間が1年未満の場合でも絶対金額で判定(年換算しない)。

③ 「特定期間」の課税売上高及び支払給与額で判定(前事業年度の上半期の6ヶ月間の課税売上高及び支払給与額の双方が1千万円超か又はいずれかが以下か)

(イ)1千万円超――課税事業者

(ロ)1千万円以下――免税事業者

 

(2)免税事業者の課税事業者になることの選択

⓵ 消費税課税事業者選択届出書

上述の様に、課税事業者か否かの判定基準として、「資本金」基準(法人の場合のみ)、「基準期間」基準、及び「特定期間」基準から免税事業者として判定された場合であっても、事業者が選択して課税事業者となることができます。この選択は、消費税の還付を受ける可能性がある場合、例えば高額の固定資産等の購入が予定されるときには、検討されることが望まれます。 手続きとして、「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署に提出しますが、」提出があった日の属する課税期間の翌課税期間以後(設立初年度は除く)の各課税期間に有効となります。

② 消費税課税事業者選択不適用届出書

この消費税課税事業者選択届出書を提出した場合、その後、課税事業者を辞めようとするときは、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を所轄税務署に提出しなければなりませんが、この選択不適用届出は、課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以降に提出可能となります。提出があった日の属する課税期間の翌課税期間から有効になりますので、少なくとも2課税期間は課税事業者として継続することになります(法人の場合、2年間経過後ということから初年度が1年未満事業年度の場合には、3課税期間は課税事業者になります)。この不適用届出書を提出していない限り、再度、基準期間における課税売上高が1千万円以下になる課税期間においても課税事業者として取り扱われます。 又、 新設法人で資本金が1千万円以上の場合には、 2課税期間は強制適用期間として課税事業者になりますが、 3年目において設立初年度(1年目)での課税売上高が1千万円未満(年換算後)であった場合には、 自動的に免税事業者となってしまいます。 3年目以降も課税事業者として継続されたい場合には、 2年目末までに「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署に提出することが必要になります。

③ 消費税課税事業者選択届出後の制約(調整対象固定資産に係わる控除対象仕入税額の調整)

控除対象仕入税額の控除期間の適正化のために、課税事業者として強制される期間内 ((イ) 新設法人で資本金1千万円以上の設立当初の基準期間が無い事業年度、 (ロ) 事業者免税点制度を受けないで課税事業者を選択した強制適用期間)に1個又は1組で100万円以上の固定資産「調整対象固定資産」を購入し、 第3年目末現在も当該調整対象固定資産を保有されている場合、一定の控除税額の調整が必要となるケースがあります。

(a)課税売上割合が著しく変動した場合

3年間の通算課税売上割合に対して、資産仕入時課税期間の売上割合との変動率が50%以上で、かつ両者の差額が5%以上のケース。

(b)転用があった場合

その資産用途が、課税と非課税業務用間での転用のケース

(注)課税事業者を選択した者、又は資本金1,000万円以上の設立後2年以内の新設法人で調整対象固定資産を取得した場合には、取得時に簡易課税制度の適用を除き、その取得期間から原則として3年間は事業者免税点制度の適用はなく、又、簡易課税制度へ変更することもできません。

2016年9月13日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

信託:遺言代用信託と遺言信託の違い

死亡により死亡者(被相続人)の財産は、通常その相続人に引き継がれますが、相続でのトラブルが少なくありません。 相続人間で解決できない場合には、家庭裁判所への相談(調停・裁定)となります。 現在では、その相談は年間10万件以上ということで死亡者の約10人に1人という割合になっています。 なお、相談となるケースでの相続財産は決して高額ではなく、相続財産が1千万未満で全体の約30%、5千万未満となると全体の約70%という割合を占めています。 この様に相続が「争続」にならないように事前に対策する傾向が高まってきています。 その対策の一つに信託の活用がありますが、最近では信託銀行等が提供しており活用が増えてきています「遺言代用信託」と「遺言信託」について考えてみたいと思います。

 

  1. 信託とは

信託法の改正により、 現在では信託を一定の枠組みに中で自由設計が認められるようになりました。 信託では、 契約(信託契約による信託行為)に基づき自分(委託者)の財産(信託財産)を他人(受託者)に託し、 特定者(受益者)への一定の目的(信託目的)の為に信託期間中、 それを運営管理・処分をしてもらうことです。 登場人物は委託者、 受託者、 受益者の3名ですが、 委託者と受益者とが同一人となることもありますし、 信託設定時には受益者が存在していない場合もあります。

 

  1. 信託法における信託類型

信託における課税関係では、 受益者となる者の時期等によって異なりますが、 その種類としては次の4つがあります。

(1) 遺言代用信託

委託者が生前には受益者(自益信託)となり、 死亡時に受益者となるべき者を予め指定している信託。 例えば、 契約により信託銀行が委託者から生前に金銭を預かり、 死亡時に契約した内容(葬儀費用等)で受取人に払出すという仕組にしているものです。

(2) 受益者指定・変更権のある信託

受益者を指定し、 又は変更する権利を有する者の定めのある信託

(3) 後継遺贈型による受益者の連続信託(受益者連続型信託)

受益者の死亡によりその受益者が消滅し、 他の者が新たな受益権を取得する定めのある信託

(4) 受益者の定めのない信託

信託設定時点では受益者の定めがなく、 公益目的等の為に設定しますが、 将来の受益者の為に信託管理人を設置しておく信託

 

  1. 遺言信託

「遺言信託」という商品名で信託銀行等が提供しているものがありますが、 信託法における遺言代用信託とは異なるもので、 そのサービス内容は3つに大別されます。

(1) 遺言の作成や公証役場での手続き支援

(2) 遺言書の保管(定期的に内容変更有無の確認)

(3) 相続時に遺言書の執行人(遺産の調査、 相続税の申告作業支援等)

 

  1. 遺言代用信託と遺言信託の相違点
遺言代用信託 遺言信託
対象資産 現預金のみ 制限無し
金額 主に、 100万~3,000万円 原則制限無し
費用負担 無料(信託銀行等が預かった資金の運用益の一部を受領有り) 約100万~150万円から(資産額による)
利用目的 葬儀代負担資金
毎月一定額の資金支払
依頼者の意向に沿った財産の分配

 

生前の利用として遺言信託以外に遺言代用信託も急増しています。 相続発生時に、 遺産分割の手続が完了するまでは、 原則として預金を引き出すことができませんので、 遺言代用信託はそれを回避することが可能であり、 又、 遺言のように被相続人の意向を遺産分配に反映することも可能となります。

2016年8月21日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

消費税率10%引上げ時期の延期に伴う税制上の措置

自民、公明両党は、8月2日に「消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置」を決定し公表しました。 これを踏まえて、政府は9月招集の臨時国会に関連法案を提出して早期成立を図る予定です。 以下は、その措置の主な内容(改正案)です。

項目 平成28年度税制改正(現行) 改正案
消費税率引き上げの施行日 平成29年4月1日 平成31年10月1日
請負工事等に係る適用税率の経過措置の指定日 平成28年10月1日 平成31年4月1日
軽減税率制度の導入時期 平成29年4月1日 平成31年10月1日
適格請求書等保存方式の導入前の税額計算の特例
① 売上税額の計算特例
(イ)基準期間の課税売上高が5千万円以下に中小事業者 平成29年4月1日から平成33年3月31日までの4年間 平成31年10月1日から平成35年9月30日までの4年間
(ロ)基準期間の課税売上高が5千万円超の大規模事業者 平成29年4月1日から1年間 経過措置の適用外
② 仕入税額の計算特例
(イ)卸小売業者の特例 平成29年4月1日から1年間(全卸小売業者を対象) 平成31年10月1日から1年間(卸小売業の中小事業者のみを対象)
(ロ)簡易課税制度等の事後選択特例 平成29年4月1日から1年間(中小事業者及び大規模事業者) 平成31年10月1日から1年間(中小事業者のみを対象)
適格請求書等保存方式(インボイス制度)の導入時期 平成33年4月1日 平成35年10月1日
適格請求書発行業者の登録申請開始日 平成31年4月1日 平成33年10月1日
免税事業者からの仕入控除特例
① 100%控除 平成33年3月31日まで 平成35年9月30日まで
② 80%控除 平成33年4月1日~平成36年3月31日まで 平成35年10月1日~平成38年9月30日まで
③ 50%控除 平成36年4月1日~平成39年3月31日まで 平成38年10月1日~平成41年9月30日まで
④ 0%控除 平成39年4月1日以降 平成41年10月1日以降
住宅取得等に係る税額控除の適用期限 平成31年6月30まで 平成33年12月31まで
① 住宅借入金等を有する場合
② 特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合(特例)
③ 既存住宅の耐震改修をした場合
④ 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合
⑤ 認定住宅の新築等をした場合
⑥ 東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合(特例)

資産課税におきまして、期間の変更があります。

  1. 直近尊属から住宅取得等資金贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置

特定受贈者(贈与年の1月1日現在20歳以上で合計所得金額2,000万円以下の者)が、 その直系尊属(親、祖父母等)から受ける居住用家屋の新築・取得・増改築等用に住宅取得等資金の贈与については、非課税限度額が定められています。

住宅用家屋の取得価額に消費税率10%の消費税等が含まれている場合 (消費税率10%で契約した者)

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 良質な住宅用家屋(耐震等住宅) 左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
現行 改正案 3,000万円 2,500万円
平成28年10月~平成29年9月 平成31年4月~平成32年3月
平成29年10月~平成30年9月 平成32年4月~平成33年3月 1,500万円 1,000万円
平成30年10月~平成31年6月 平成33年4月~平成33年12月 1,200万円 700万円
なお、 東日本大震災の
被災者が受贈者の場
合には、 以下のようになります。
平成28年10月~平成29年9月
平成29年10月~平成31年6月
平成31年4月~平成32年3月

平成32年4月~平成33年12月

3,000万円

1,500万円

2,5000万円

1,000万円

上記(1)以外の場合 (消費税率8%で契約した者や個人間売買で中古住宅売買契約した者)

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 良質な住宅用家屋(耐震等住宅) 左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
現行 改正案 1,200万円 700万円
平成28年1月~平成29年9月 平成28年1月~平成32年3月
平成29年10月~平成30年9月 平成32年4月~平成33年3月 1,000万円 500万円
平成30年10月~平成31年6月 平成33年4月~平成33年12月 800万円 300万円
なお、 東日本大震災の
被災者が受贈者の場
合には、 以下のようになります。
現在~平成31年6月
現在~平成33年12月 1,500万円 1,000万円

 

  1. 住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税選択の特例(措法70の3)

住宅取得等資金の贈与を受ける場合に限り、 相続時精算課税制度を選択される時には、 贈与者の年齢制限の適用要件が外れるという特例規定があります(相続時精算課税選択の特例)。 なお、 対象住宅の床面積が50㎡以上であればよく上限条件は付されていません。

特別控除 2,500万円
年齢要件 贈与者 親(年齢制限無し)
受贈者 20歳以上の子及び孫)
適用期間 現行 改正案
平成15年1月1日から
平成31年6月30日まで
平成15年1月1日から
平成33年12月31日まで

 

 

2016年8月21日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

中古減価償却資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費

事業を行っている時に、個人所有の建物、備品、車等のように使用や期間の経過により減価する資産(減価償却資産)を事業用(業務用)に転用することがあります。 この転用時には、それらの減価償却資産を金額評価して業務用資産として記帳することが必要となりますが、金額評価方法はどうなるでしょうか。

1.個人所有から法人事業への転用

原則、転用時の時価相当額で売却(譲渡)することになります。 法人では、中古減価償却資産の購入として取り扱われます。 個人の方では、 売却状況によっては譲渡所得の対象になる場合があります。

2.個人所有から個人事業への転用

資産計上の対象資産評価は、減価償却後の金額で考えなければなりません。

(1)転用時の未償却残高の計算

① 耐用年数の算定

非業務用資産の耐用年数は、その資産と同種の減価償却資産に係る法定耐用年数に1.5を乗じて計算した年数となります。

耐用年数 X 1.5 = 非業務用資産の耐用年数(1年未満の切捨て)

(注) 公表されています法定耐用年数表は、 事業用(業務用)を前提にしていますので、 非業務用は、 その1.5倍として取り扱われます。

② 減価償却累計額の算定

(イ)非業務用資産の経過年数の算定

非業務用資産の購入時から業務用転用時までの経過年数を求める。

業務用転用時の年月(1月未満は1月) - 購入時の年月(1月未満は1月)

= 経過年数(6月以上の端数は1年とし、6月未満は切捨て)

(ロ)減価償却方法と減価償却額の算定

非業務用資産の減価償却計算は、以下の算式で必ず旧定額法によります。

取得価額 X 90% X 非業務用資産の耐用年数に対応する旧定額法の償却率 X 経過年数 = 減価償却累計額

なお、 平成19年3月31日以前に取得した非業務用資産を業務の用に供した場合には、 償却可能限度額 (取得価額の95%相当額) に達した年分の翌年分以後、 その未償却残高 (取得価額の5%) に対して備忘価額1円を残し5年間で均等償却します)。

(取得価額  X  5%償却残存可能価額 - 1円) ÷ 5年 = 償却限度額

③ 未償却残高相当額の算定

取得価額 - 非業務時の減価償却累計額 = 未償却残高相当額(業務転用時の取得価額)

(2)転用後の減価償却費の算定

① 中古資産の改訂耐用年数の算定

中古資産となりますので、その資産の法定耐用年数によらずに、購入した中古資産の取得の時以後の使用可能期間の年数を耐用年数とすることができます。 この場合、今後の使用可能期間の年数を合理的に見積もることが困難なときは、簡便法による年数によることもできます。

(イ)法定耐用年数の一部を経過した資産

(法定耐用年数 - 経過年数) + 経過年数 X 20/100 = 改訂耐用年数

(ロ)法定耐用年数の全部を経過した資産

法定耐用年数 X 20/100 = 改訂耐用年数

(注)  経過年数は、購入から業務用転用時までの期間を年換算して改訂耐用年数までを計算します。 改訂耐用年数は、1年未満の端数は切捨てた年数とし、2年未満の場合は2年とします。

② 減価償却方法

業務用期間における減価償却資産の償却方法は、その資産の当初の購入年月日(非業務用から業務用に転用した日でないことに留意)により、以下の様に異なります。

当初の購入年月日 建物 建物以外の一般的な有形減価償却資産
平成10年3月31日以前 旧定額法 又は 旧定率法 旧定額法又は旧定率法
平成10年4月1日から 平成19年3月31日まで 旧定額法 旧定額法又は旧定率法
平成19年4月1日以後 定額法 定額法又は定率法

③ 初年度の減価償却額の算定

未償却残高相当額(業務転用時の取得価額)X 改訂耐用年数に対応する減価償却方法による償却率 X(事業月数 ÷ 12)= 減価償却額

2016年7月19日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

公的年金(国民年金と厚生年金)はいくらもらえるか

年金(私的・公的)は老後の生活資金としての役割がありますが、その生活資金の満額をカバーできるものではなく、一部に過ぎず不足分は貯蓄から充当するしかないと言われています。 以下に、年金について言及してみたいと思います。

1.日本の年金制度

年金制度には、①全国民共通の「国民年金」、 ②会社員・公務員の「厚生年金」・「共済年金」、 ③会社独自の年金基金制度(確定拠出年金制度、 確定給付年金制度、 等)となる「企業年金」等があります。 その中で公的年金と言われるのが、①と②の年金(国民年金と厚生年金)となっています。

2.国民年金

20歳以上の国民全員が60歳まで加入しなければならない公的な年金(基礎年金)です。 強制加入被保険者以外の方でも、 以下のいずれかに該当すれば被保険者(任意加入被保険者)となることができます。

① 年金給付額を増やしたい60歳~65歳までの方

② 年金の受給資格期間を満たしていない60歳~70歳までの方

③ 国外居住の20歳以上65歳未満の日本人

国民年金(老齢基礎年金)の受給開始は、65歳からとなっています。

3.厚生年金 (社会保険制度)

会社等に雇用中で70歳未満の方が加入するものですので、 70歳になりますと厚生年金の加入資格が無くなり脱退手続きをします。

厚生年金(老齢厚生年金)の受給開始年齢は、現在60歳から段階的に引上げられており最終的には国民年金の支給開始と同様に65歳からとなります。 なお、在職中で社会保険制度に加入しながら老齢厚生年金を受給されている場合、 その年金額の全部又は一部が1カ月間の年金受給額と給与収入の合計額に応じてカット(支給停止)されます。

4.公的年金の受給額

詳細な年金受給額の算定式は省略しますが、給与額(所得額)及び加入期間に応じて受給額が算定されます。

さて、現在の年金受給額の最高額(満額)は、年間いくらになるのでしょうか。 例えば、 加入期間が40年間の場合(40年間の間、 各年において標準報酬月額620,000円、 賞与1,500,000円が年2回)には、

老齢基礎年金: 780,100円

老齢厚生年金:2,288,800円

合計       3,068,900円

注: 賞与に対して、 年金保険料の対象になったのは、 平成15年4月以降の支給分からです。

 

以上のように年間の年金受給額が、 3百万を超える方は殆どいないかと思います。 一般的には、 40年近く加入期間があっても2百万円前後かと思います。

2016年7月19日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

合同会社形態設立の年々増加傾向

法人の形態には各種のものがありますが、2006年5月1日の会社法施行から条件等が緩和され、 例えば資本金が1円でも株式会社を設立することができるようになりました。 又、設立手続・規制が株式会社よりも緩和されています、特に合同会社の設立が年々増加傾向にあることが顕著です。 下記の表は、株式会社と持分会社を纏めたものですが、これ以外に一般社団法人や一般財団法人というものもあります。

(1) 会社の種類と機関

会社の種類(分類) 物的会社

(株式を保有する株主がオーナー)

持分会社

(持分を保有する社員がオーナー)

株式会社 合同会社 合名会社 合資会社
公開性 株式譲渡会社

(公開会社)

株式譲渡制限会社

(非公開会社)

閉鎖会社
最低出資者数 1名(株主) 1名(社員) 2名(無限・有限

責任社員)

出資者の責任 有限責任 有限責任 無限責任 有限・無限責任
最高意思決定機関 株主総会 社員総会
代表者 代表取締役 代表社員
業務執行する役員 取締役 業務執行役員
取締役人数 3名以上 1名以上 規定なし
監査役人数 1名以上 任意 規定なし
役員任期 取締役2年

監査役4年

取締役2年

監査役4年

(最長10年まで延

長可)

規定なし
取締役会設置 必要 任意 規定なし
決算広告 必要 不要
定款認証(公証役場) 必要(手数料5万円、 印紙代4万円) 不要(印紙代4万円)
登記申請(法務局) 必要(登録免許税 最低15万円) 必要(登録免許税 最低6万円)

(2)計算書類

① 作成する計算書類

会社組織 貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書 注記表 附属明細書
株式会社 必要 必要 必要 必要 必要
合同会社 必要 必要 社員資本等変動計算書 必要 義務無し
合名・合資会社 必要 義務無し 義務無し 義務無し 義務無し

計算書類の承認は、株式会社では株主総会となりますが、持分会社にはその様な機関の設置が義務付けられていませんので、原則として、社員の過半数承認をもって決定することになります(株主総会の議事録の代わりとして、社員の同意書等の作成)。

② 純資産の部の表記

株式会社 持分会社
株主資本 社員資本
資本金 資本金
資本剰余金

資本準備金

その他の資本剰余金

資本剰余金

 

利益剰余金

利益準備金

その他の利益剰余金

利益剰余金

 

注:出資時の出資金額の2分の1以上を資本金にする規制は無し

注:

① 決算公告の義務が無く、仮に資本金が5億円以上でも大会社として会計監査人の監査も不要

② 業務執行社員には法人がなることは可能で、その場合には特定の人を選任する必要があります。 その法人に役員給与を支給することができ、所得税の源泉徴収義務はありませんが、消費税の課税仕入の対象と考えられています。

2016年6月16日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例(創設)

平成28年4月1日から、相続又は遺贈(死因贈与を含む)から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、相続人が一定の「被相続人居住用家屋」又はその居住用家屋とともに敷地の土地譲渡、或いは家屋の除却後の土地譲渡の譲渡益から居住用財産の譲渡した場合に該当するものとみなして、3,000万円を控除できる特例が創設されました(本特例の適用対象は、平成25年1月2日以後に開始した相続等からとなっています)。 譲渡が平成28年4月1日から平成31年12月31日までに行われたもので、譲渡金額が1億円以下である空き家の譲渡に限りますが、 その他の適用要件は以下の通りです。

被相続人居住用家屋譲渡の範囲 ①相続開始直前に被相続人の居住用の家屋であったこと

②家屋は、区分所有建築物ではなく昭和56年5月31日以前に建築されたものであること(区分所有建築物、マンション等は除く)

③相続開始直前において被相続人以外に居住していた者がいなかったこと

④相続時から譲渡時までに事業用、貸付用、居住用に使用されていたことがないこと

⑤譲渡時に地震に対する安全性規定又は準ずる基準に適合していること(耐震リフォーム済み)

居住用家屋とともに敷地の土地譲渡の範囲 ①相続時から譲渡時までに事業用、貸付用、居住用に使用されていたことがないこと
家屋除却後 除却家屋の被相続人居住用家屋の範囲 ①相続時から除却時までに事業用、貸付用、居住用に使用されていたことがないこと
家屋除却後の土地譲渡の範囲 ①相続時から譲渡時までに事業用、貸付用、居住用に使用されていたことがないこと

②家屋除却時から譲渡時までに建物又は構築物の敷地用に使用されていたことがないこと

譲渡金額が1億円以下基準 当該譲渡金額は、譲渡から3年を経過する日の属する年の12月31日までに被相続人居住用家屋と一体として使用していた家屋又は土地の譲渡金額の合計額で判定します。具体的には、相続時から譲渡した年の12月31日までに行う収用交換等を除いた対象不動産の譲渡になる「適用前譲渡」と、譲渡した年の翌年1月1日から譲渡から3年を経過する日の属する年の12月31日までに行う対象不動産の譲渡になる「適用後譲渡」との合計額が1億円超の場合には適用対象外となってしまいます。 1億円超になった場合には、譲渡日から4ヵ月以内に所得税の修正申告と納税を行わなければなりません。

なお、この譲渡には、贈与や低額譲渡も含まれます。

確定申告書に証明書の添付 本特定の為に、地方公共団体の長等による上記の家屋又は土地の適用要件を満たすことを確認した証明書等の添付が必要となっています。

具体的には、空き家の所在地の市区町村長から適用要件を充足したことを確認した旨を記載した書類「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受けなければなりません。 この交付申請として提出に必要となる書類には、次のものがあります。

①被相続人の除票住民票の写し

②被相続人居住用家屋の譲渡時(家屋除却後に更地にして譲渡した場合はその敷地の譲渡時)の相続人の住民票の写し

③家屋又は敷地等の売買契約書等の写し等

なお、家屋除却後に更地にして譲渡した場合には、その敷地等の売買契約書の写し等、及び家屋の除却工事に係る請負契約書の写し

④以下の書類のいずれか

*電気若しくはガスの閉栓証明書又は水道の使用廃止届出書

*家屋の媒介契約を締結した宅地建物取引業者が、当該家屋の現況が空き家であることを表示して広告していることを証する書面の写し

*相続から適用要件となる一定時期まで事業用、貸付用、居住用に使用されていたことがないことを、所在市区町村が容易に認めることができる書類

*家屋除却後に更地にして譲渡する場合のみ、追加提出

・家屋除却し土地譲渡までの当該家屋の敷地等の使用状況が分かる写真

・家屋除却し土地譲渡までの当該敷地等における相続人の固定資産台帳の写し又は固定資産税の課税明細の写し

他の特例との適用関係 ①本特例は相続財産に係る譲渡所得の課税特例(取得費加算)との選択適用(重複適用は不可)

②居住用財産の買換え等の特例との重複適用は可

2016年5月15日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

生命保険金・損害保険金の課税関係

保険の種類は数多くありますが、 保険は生活上での不慮の事象・事故に備えた保障・補償の為に安心を求めて保険加入されているかと思います。 保険事故等が発生した場合には、 所定の保険金を受領することになりますが、 契約内容(契約関係者)によりその保険金に対する課税関係が変わってくることになります。 次の表は、 保険契約・被保険者・保険金受取人との課税関係を纏めたものです。

保険契約関係 保険事象・事故区分における受取人に対する課税区分
契約者・保険料負担者 被保険者 保険金受取人 傷害(注1) 満期(注2) 死亡(注3)
非課税 一時所得 相続税
非課税(親族)

一時所得(親族以外)

贈与税 相続税
同上 一時所得 一時所得
同上 贈与税 贈与税
同上 贈与税 相続税
A:1/2

C:1/2

同上 A:一時所得

C:贈与税

A:一時所得

C:贈与税

A:1/2

C:1/2

同上 贈与税 相続税:1/2

贈与税:1/2

注1:非課税となる保険金・給付金

身体の傷害を基因として支払を受ける損害保険金や給付金は、自己の身体の傷害に基づく場合には非課税となります。 身体に傷害を受けた者と保険金等を受取る者が異なる場合には、非課税規定の適用がありませんが、身体に傷害を受けた者の配偶者若しくは直系血族又は生計を一にする親族が支払を受ける者となる時には、非課税所得として取扱われます。

注2:満期保険金・解約返戻金の課税

(1)保険料負担金 = 満期保険金受取人である場合

保険料の負担者が満期保険金や解約返戻金を一括で受領した時には、一時的なもので労働その他の役務及び資産の対価でもありませんので、一時所得となります。 この場合の課税所得の金額は、次のように計算されます。

(保険金の収入金額 - 既支払保険料 - 50万円の特別控除額) X 1/2

= 課税所得金額

なお、受領が年金形式の場合には、その年金の収入は公的年金以外の雑所得となります。 この場合の課税所得の金額は、次のように計算されます。

(保険金の年金収入金額 - 当該年金収入額に対応する既支払保険料)

= 課税所得金額

原則、保険料負担者と保険金受取人とが同一人の場合には、所得税(一時所得または雑所得)が課税されることになります。

(2)保険料負担金 = 満期保険金受取人で無い場合

保険料負担金と満期保険金受取人でが異なる場合には、受取人には贈与税の課税対象となります。 保険料負担金は夫で満期保険金受取人を妻とされている場合には、満期保険金は妻に支払われますので、支払時に夫から妻へ贈与したものと見做され贈与税が課されます。 通常、満期保険金が110万円を超える場合には、超える保険金に対して贈与税の課税が生じます。

原則、被保険者、保険料負担者及び保険金受取人が全て異なる場合には、贈与税が課税されることになります。

注3:死亡保険金に対する課税

(1)相続と遺贈

「相続」とは、何らかの手続きを経ることなく当然に被相続人の財産が相続人(法定相続人)に引継がれることをいいますが、法定相続人は民法で定められており配偶者や子等で相続順位が決められています。 これに対して、「遺贈」とは、遺言によって遺言者の財産の全部または一部を贈与することをいいますが、遺言書で相続人以外の者に遺産を与える場合に「遺贈する」という表現になります。 法定相続人でなない人の場合には、遺言がないと当然に他人の遺産をもらう権利はないということになります。

死亡保険金の受取人は、必ずしも法定相続人となる配偶者や子等である必要はなく、孫を受取人にすることも可能です。 この場合は、遺言書が存在していなくとも相続税法上では遺贈とみなされますので、法定相続人ではなくとも相続税を納めなくてはなりません。孫を保険受取人とした場合には、留意点が二つほどあります。

① 相続税額の2割加算

血縁関係が薄い人や他人等が遺贈で財産を取得した時には、通常の相続税に20%加算した金額の税負担となります。

2割加算される人とは、配偶者及び1親等の血族(父母又は子とその代襲相続人及び養子も含む。 但し、被相続人の養子の孫は除外)以外の人をいいます。

② 受取保険金が非課税となる控除適用外

法定受相続人が受け取る生命保険金は、法定受相続人一人当たり500万円までは非課税となり相続税がかかりません。 しかし、法定受相続人以外の人が受け取る生命保険金は、この一人当たり500万円の生命保険金控除は使えませんので、孫が死亡保険金を受取った場合には、本来法定受相続人であればかからなかった部分まで相続税が課税されることになります。

(2)死亡保険金を年金受給(相続税・贈与税の課税対象)

死亡保険金を年金で受領する場合には、毎年支払を受ける年金に係る所得税(雑所得)については、年金支給初年は全額非課税、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく方法で計算することになります。

2016年4月16日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成28年度(2016度)税制改正大綱:  相続税・贈与税

自民・公明両党の税制調査会は、平成27年12月16日に平成28(2016)年度税制改正大綱を正式に決定した。 相続税・贈与税に関して、 その主要改正項目の概要を以下に紹介します。

 

1.農地等に係る納税猶予制度の見直し

① 贈与税の納税猶予を適用している場合の特定貸付の特例について、農地中間管理事業のために貸し付ける場合には、受贈者の納税猶予の適用期間要件(現行:10年以上(貸付け時において65歳未満の場合には、20年以上))は適用しない(平成28年4月1日以後の貸付けより適用)。

② 贈与税の納税猶予の適用を受けることができる者を認定農業者等に限る。

③ 特例適用農地等に区分地上権が設定された場合においても、農業相続人等がその特例適用農地等の耕作を継続しているときは、納税猶予の期限は確定しないこととする。

2.直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置項目の明確化

薬局に支払われる不妊治療に要する費用が含まれる(平成28年4月1日以後の費用から適用予定)。

3.贈与税の配偶者控除について、確定申告に添付すべき書類の変更

登記事項証明書から居住用不動産を取得したことを証する書類に変更する(平成28年1月1日以後の贈与から適用)。

以上

2016年3月16日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

夫婦間での住宅持分割合の変更

住宅を購入することは、 通常、 一生涯に何回も経験するものではないと思います。 購入時に、 その住宅の所有者が誰かということで、 不動産登記(土地及び建物)で持分割合(所有割合)を必ず明らかにして所有権登記を行います。 夫婦で購入された場合にも、 土地及び建物の別に、 それぞれの持分割合を確定し登記します。 この持分割合を、実際は全額、夫の資金負担(例えば、自己資金10%・住宅ローン資金90%の場合のケースで、以下は同様の設例)にも拘らず、 むやみに土地について、 夫は3/4・妻は1/4、 そして建物については、 夫は1/2・妻は1/2というように購入資金の負担割合を無視して登記しますと、 実際の資金負担割合と乖離していた場合には、 その乖離金額部分が、 たとえ夫婦間であっても税務上は「贈与」があったものとして取扱われます。 不動産を購入しますと、税務署より購入内容、資金の出所、等に関する「お尋ね」の書面が送られてきます。 これは、不動産登記事項より購入されたことを把握し、登記上の持分割合、資金の出所、等から贈与されたものが無いか否かを確認するためのものです。

1.住宅ローンの繰上返済

住宅購入後に余剰資金ができ、住宅ローンの繰上返済を行うことがあります。 この時に、夫の余剰資金を住宅ローンの繰上返済に充当する場合には、特に問題となることはありませんが、妻の預金口座から5百万円で繰上返済した場合には、以下の問題が生じてきます。

 

(1)持分割合の変更無しのケース

5百万円で住宅ローンの繰上返済しても夫の持分割合が変わらず100%のままの場合には、この5百万円は、妻から夫への「贈与」があったものとして税務上は見做されます。

(2)持分割合の変更を行なうケース

持分割合の変更原因には、売買、贈与、相続のいずれかしかありませんので、夫から妻への5百万円相当分の「売買」があったものとして取扱われます。 不動産の時価で5百万円の売買として、その持分割合分が夫から妻に移動しますので、持分の変更登記を行います。 なお、その時価相当額よりも移動した持分割合との間に乖離がある場合には、その乖離金額相当は「贈与」と見做されます。

夫は、不動産売却ということで簿価相当額よりも5百万円の方が大きい場合には、譲渡所得を得ることになりますので確定申告が必要となります。

住宅ローンの設定時に担保設定者が金融機関や信用保証会社である場合には、担保物件の内容変更になりますので、所有権変更登記する前に承認が必要となります。

2.配偶者控除の特例

夫婦間においては、居住用不動産関連の贈与で配偶者控除が以下の一定の条件の下で認められています。

① 贈与税の配偶者控除とは

婚姻期間が20年以上である配偶者から、居住用不動産、または居住用不動産の取得のための金銭を贈与された場合には、その不動産の課税価格から基礎控除のほかに2,000万円が配偶者控除額として控除できるというものです(基礎控除を含めて合計2,110万円)。

② 婚姻期間

婚姻届出日から贈与日までの期間(1年未満は切捨)で20年以上であること。

③ 居住用不動産

贈与日の翌年3月15日までに受贈者の専ら居住用に供し、かつ、その後も継続して居住用の見込みがあること。

④ 居住用不動産の取得用金銭

贈与日の翌年3月15日までに居住用不動産を取得し、かつ、居住用状態は上記の居住用不動産のケースと同じであること。

この控除は一生に一度のみであり、贈与金額が2,000万円未満であっても翌年以後への繰越は認められません。また、この控除の適用を受けるためには、所定の控除明細を作成し、贈与税の申告書を提出する必要があります。 当該配偶者控除に関連して、相続開始前3年以内の贈与財産との関係では、相続開始の前年以前の贈与による特定贈与財産に該当するものについては、相続税の課税価格に加算しないことになっています。

3.参考

(1)相続税における配偶者に対する優遇

① 相続税における配偶者の税額控除

配偶者は被相続人の財産形成に大いに寄与していること、及び将来の生活保障面を考慮して相続税の減額を特例として認めています。 配偶者が取得した遺産額のうち次のいずれか大きい方までは配偶者には相続税がかからないことになっています。

(イ)総課税価格の金額に対する配偶者の法定相続割合相当額

(ロ)1億6千万円

②配偶者の相続権並びに法定相続分

言うまでもなく被相続人の配偶者は相続順位に関係なく常に法定の相続人となっています。 又、 配偶者の法定相続割合(遺留割合を含めて)は、 常に高い割合で貢献分を反映している形になっています。 以下は、 配偶者の法定相続分と遺留分(最低保障の相続分として留保されるべき部分)の相続人との関係を示しています。

相続順位 相続人 法定相続割合 遺留分割合
第1 配偶者 1/2 1/4
1/2 1/4
第2 配偶者 2/3 2/6
直系尊属(父、母等) 1/3 1/6
第3 配偶者 3/4 1/2
兄弟姉妹(又は子) 1/4 無し
第4 配偶者 全部 1/2

(2)贈与税の課税(歴年課税制度)

贈与を受けた場合には、受贈者は通常、歴年課税制度より課税価格がある場合には贈与税の申告を行なわなければなりません。 その歴年課税制度の概要と税率は、次のとおりです。

歴年内(1月1日から12月31日までの1年間)に受けた贈与財産の合計額 - 基礎控除額 110万円 = 課税価格

年間110万円までの贈与を受けても贈与税の課税とはなりません。 年間110万円を超える贈与を受けた場合の贈与税額は、 以下の算式となります。

課税価格 × 税率 - 控除額 = 贈与税額

贈与税の速算表
課税価格 直系尊属からの特定贈与 一般贈与
税率 控除額 税率 控除額
2,000千円以下 10%    - 千円 10%    - 千円
3,000 15%    100千円
4,000 15%    100千円 20% 250
6,000 20% 300 30% 600
10,000 30% 900 40% 1,250
15,000 40% 1,900 45% 1,750
30,000 45% 2,650 50% 2,500
30,000千円超 55% 4,000
45,000千円以下 50% 4,150
45,000千円超 55% 6,400

なお、 同一年中に特定贈与財産と一般贈与財産の両方がある場合には、 その贈与財産合計額から基礎控除額(限度110万円)を控除した総課税価格に各該当税率を乗じて算出された税額に対して、 各贈与財産割合(特定贈与財産額、 又は一般贈与財産額 / 贈与財産合計額)を乗じて贈与税額を導くという調整計算が必要となります。

暦年課税の場合、 原則として相続開始前3年以内の贈与財産は相続財産として加算する必要があります。

2016年3月15日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant