広大地の評価方法の見直し(平成30年1月1日以後の相続等から)

平成29年度税制改正で広大地の評価方法の見直しがありました。 現行の面積に比例的に減額する評価方式から、各土地の個性に応じて形状、面積に基づき評価する方式に見直すとともに、適用要件を見直すこととされました。呼称も、「広大地の評価」から「地積規模の大きな宅地の評価」に変更になっています。

現行の評価方法では、適用要件が相対的な曖昧さがあり適用にあたり納税者と税務署との間で意見相違があり訴訟等となるケースが少なくありませんでした。又、個別の土地の形状等とは関係なく面積に比例して減額するために、この評価額が実際の取引価額と大きく乖離し下回るケースが生じていました。そこで、改正の評価方法は、

① 適用要件の簡素化

② 個別の土地の形状・面積に基づき評価

ということとなり、新たに広大地となるケースが増える半面、これまでよりも評価減額が縮小される傾向にあります。

 

1.広大地評価の算式 

現行

(評価通達24-4)

路線価 X 面積 X 広大地補正率 = 評価額

広大地補正率 = 0.6 - 0.05 X 広大地面積 / 1,000㎡

(下限値0.35)

改正

(評価通達案20-2)

路線価 X 面積 X 補正率 X 規模格差補正率 = 評価額

補正率 = 形状(不整形・奥行)を考慮した補正率(評基通15~20)

規模格差補正率 = 面積を考慮した補正率

各補正率は全て外部専門業者の実態調査に基づき設定

 

2.平成30年1月1日以後の相続等からの広大地適用要件(改正)

広大地になる要件として、「地積規模の大きな宅地」と「一定の地区」の要件を満たすのであれば広大地の評価が適用されることになり、間口が広がることになります。

(1)「地積規模の大きな宅地」とは

地積が1,000㎡(三大都市圏では500㎡)以上の宅地で、次のいずれかに該当する宅地は除かれます。

① 市街化調整区域(宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域を除く)に所在する宅地

② 工業専用地域(都市計画法8①一)に所在する宅地

③ 容積率が400%(東京都23区においては300%)以上の地域に所在する宅地

市街地の農地・山林・原野も地積規模の大きな宅地の評価対象となります(これらの土地は宅地比準方式により評価します)。

「三大都市圏」とは、

ア 首都圏整備法に規定する既成市街地又は近郊整備地帯

イ 近畿圏整備法に規定する既成都市区域又は近郊整備区域

ウ 中部圏開発整備法に規定する都市整備区域

 

(2)「一定の地区」とは

財産評価基本通達14-2(地区)の定めにより、適用対象となる地区が普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地区に所在する宅地であること。

 

(3)広大地の評価額

① 広大地が路線価地域にある場合

財産評価基本通達案(20-2)では、次の様に新設されています。

広大地の評価額 = 路線価 X 地積(面積) X 補正率 X 規模格差補正率(小数点以下第2位未満切捨て)

規模格差補正率 = (地積 X B + C)÷ 地積 X 0.8

 

(イ)三大都市圏に所在する宅地:

          地区区分

 

記号

地積㎡

普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
B C
500以上 1,000未満 0.95 25
1,000以上 3,000未満 0.90 75
3,000以上 5,000未満 0.85 225
5,000以上 0.80 475

 

(ロ)三大都市圏以外の地域に所在する宅地:

          地区区分

 

記号

地積㎡

普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
B C
1,000以上 3,000未満 0.90 100
3,000以上 5,000未満 0.85 250
5,000以上 0.80 500

 

広大地補正率と規模格差補正率との比較例示:

  1,000㎡、三大都市圏 5,000㎡、三大都市圏以外
現行広大地 改正広大地 現行広大地 改正広大地
広大地補正率・

規模格差補正率

0.55  

0.78

0.35  

0.72

 

② 広大地が倍率地域にある場合

本則の倍率方式(その土地の固定資産税評価額X倍率)により算出した価額と、近傍類似の宅地の評価額に倍率を乗じた金額を正面路線価として、そこから「規模格差補正率」を含めた土地の個別的要因の事情補正を行った後の価額とを比較して、いずれか低い方の価額となります。

 

3.平成29年12月31日以前の相続等までの広大地適用要件(現行)

その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に、 公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものであるが、 大規模工業用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等(いわゆるマンション)の敷地用地に適しているもの(その宅地について、 経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるもの)を除く、 ものをいいます。

 

(1)著しく地積が広大であるかの判定

各自治体が定める開発許可を要する面積基準以上(開発許可を要するか否かは、各自治体の開発指導課に確認)のものが挙げられ、 原則として、 以下に掲げる面積以上の宅地。

① 市街化区域

(a) 三大都市圏           500㎡以上

(b) それ以外の地域       1,000㎡以上

② 非線引き都市計画地域 3,000㎡以上

③ 用途地域が定められている非線引き都市計画地域: 市街化区域に準じた面積

開発許可を要する面積基準に満たない場合であっても、ミニ開発分譲が多い地域に存する土地について、広大地に該当する場合があります。

 

(2)都市計画法による開発行為(公共公益的施設用地の必要性)

公共公益的施設用地とは、 都市計画法第14条に規定する道路、 公園等の公共施設の用に供される土地、 及び都市計画法施行令第27条に掲げる教育施設、 医療施設等の公益施設の用に供される土地をいい、 その負担の必要性は経済的に最も合理的に戸建住宅用地の開発を行なった場合の、 その開発区域内での道路等の開設の必要性により判断するとしています。 その際、 セットバックによる道路やゴミ集積所用地等は公共公益的施設用地には該当しないことになります。 評価通達における広大地は、 戸建分譲用地として開発され、 道路等のつぶれ地が生ずる土地を前提としていますので、 以下の状況の土地も広大地の適用はありません。

* 道路に面しており、 間口が広く奥行がそれ程ない土地

* 区画整理地、 大規模開発分譲地等にみられる土地(道路が二方、 三方、 四方にある土地)

* 開発指導等により道路敷きとして一部土地を提供しなければならない状況の土地

* 路地状敷地による開発(路地状開発・旗竿開発)を行うことが合理的と考えられる土地

特に最近では、 この広大地の適用にあたり路地状開発(**)か道路開設開発かの判断で課税庁との間で揉めるケース増えてきています。 「路地状開発を行うことが合理的と認められる」かどうかは次の事項を総合的に勘案して判断するものとされています。

(a) 路地状部分を有する画地を設けることによって、 評価対象地の存する地域における「標準的な宅地の地積」に分割できること

(b) その開発都市計画法、 建築基準法、 都道府県等の条例等の法令に反しないこと

(c) 容積率及び建ぺい率の計算上有利であること

(d) 評価対象地の存する地域において路地状開発による戸建住宅の分譲が一般的に行なわれていること

(**) 路地状開発とは、 路地状部分を有する宅地を組合せ戸建住宅分譲地として開発することです。 旗竿地・敷地延長・路地状敷地は同じ意味の言葉であり、 間口が狭く通路のように長い路地状敷地部分(都市計画地域では、 建物を建てる時に敷地が道路に2m以上接していなければなりませんので、 その間口は2m以上必要となりますが、 通常はその形状敷地は通路や駐車場等として使われています)の奥に建物のスペースとして有効宅地部分がある旗竿形状の土地のことを指します。

 

広大地に該当しない例

① 有効開発完了地: 既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地

② 現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地(大規模店舗、 ファミリーレストラン等)

③ 原則として、 容積率300%以上の地域に所在する土地

容積率等について、役所の都市計画課で確認、特に前面道路の幅員を調べる必要があります。 それは、前面道路の幅員によって基準容積率が変化(下がる)することがあるからです。

住居系: 幅員 X 4/10 (前面道路が幅員が4mならば、 160%となる)

商業系: 幅員 X 6/10

④ 公共公益的施設用地の負担が殆んど生じないと認められる土地

 

マンション敵地等の判定

マンション敵地等に該当するものは広大地にはなりません。 この趣旨は、 戸建住宅分譲地として開発した場合に、 道路等のつぶれ地が生じる土地に広大地評価の適用があることを前提としていることから、 マンション等の敷地のように細分化せずに一体として有効利用できる場合には、 地積過大による減価の補正を行う必要はないことからです。 マンション敵地であるかどうかは、 「その地域」の標準的使用の状況を参考にして判断することになりますが、 戸建住宅とマンション等が混在する地域では判断が困難なケースがあります。 その様なケースでは、 専門家の意見も必要になるかもしれません。 形式的基準として容積率300%以上の地域内にあり、 開発面積基準以上の宅地は原則としてマンション適地に該当するものとされています。

原則として、 地上3階以上のマンションが建っている敷地は即、 広大地に該当しないと思われていますが、 判定要素として、 中高層と集合住宅等の2要件以外に、 「最有効使用(経済的に最も合理的である使用)」であるというものも満たす必要があります。

 

(3)広大地の評価額:

① 広大地が路線価地域にある場合

路線価 X 広大地補正率 X 地積 = 広大地の評価額

広大地補正率 = 0.6 - 0.05 X 広大地の地積 / 1.000㎡

広大地補正率は0.35を下限(広大地の地積は5,000㎡以下)とし、 四捨五入等の端数処理は行ないません。

② 広大地が倍率地域にある場合

通常の評価計算方式ではなく、 広大地を個別に評価することになり路線価方式に準じて評価します。 先ずは、 評価しようとする広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の価額(この価額は、 付近の標準的な画地規模を有する宅地の価額との均衡を考慮して算定する必要があります)を求め、 その価額を路線価方式における路線価とします。

 

以上から、 現行の広大地判定として少なくとも以下の4項目をクリアーする必要があるということになります。

広大地判定の項目 広大地の判定基準
大規模工事用地に該当するか NO
中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているか NO
その地域における標準的な住宅の地積に比して著しく地積が広大か YES
開発行為を行うとした場合、 道路や公園等の公共公益的施設用地の負担が必要と認められるか YES

 

改正(通達改正案)では、現行の広大地判定の4項目は、大規模工事用地を除き特に判定基準に影響しないことになりそうですが、今後の最終通達等には注視していく必要があります。

2017年8月20日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

保険契約の法人から個人への名義変更

法人では各種の保険に加入されているかと思いますが、その保険契約を個人に名義変更することがあります。 その場合の会社と個人のそれぞれには、課税上どのような処理になるでしょうか。 保険の種類の中で、「低解約返戻金タイプの生命保険」を例として、検討してみたいと思います。

「低解約返戻金タイプの生命保険」とは、中途での解約時には所定の解約返戻金がありますが、保険契約から初期の段階では低い解約返戻金ですが、年数の経過により増加(急に増加するタイプもあり)し、ある経過年数でピークとなり逓減していくという商品です。俗に「逓増定期保険」と言われる商品も同様です。

法人で保険料を支払いますが、通常、この種の保険では、保険料の半額が経費として損金経理され、残りの半額は保険積立金として資産経理となります。 例えば、解約時の保険返戻率に関して、2年目で2%、3年目で25%、4年目で125%、5年目で115%、以降逓減していく保険契約のケースで、3年目で保険契約者・保険受取人の名義を法人から個人に変更する場合、個人は法人に変更時の解約返戻金を支払うことになります。 そして、個人は4年目に保険料を支払うとその年に保険を解約し解約返戻金を受領した場合の課税は、以下の様に取り扱われます。

1.法人の3年目の事業年度

(1)保険積立金総額(3年間の保険料総額 X 50%) - 解約返戻金相当額(3年間の保険料総額 X 25%)= 解約損失金(経費)

(2)3年目の50%保険料 = 経費

注:2年間の50%保険料総額は経費処理済

2.個人の4年目の申告年度

(1){4年目の解約返戻金(4年間の保険料総額 X 125%) - (3年目の解約返戻金(3年間の保険料総額 X 25%)+ 4年目の保険料)}- 500,000 = 一時所得

(2)上記の一時所得 X 50% = 総合課税所得

上記の例の様な保険契約のケースでは、法人では純保険料負担の100%が経費処理でき、個人では、保険料負担額の倍以上の収入が得られたことになります。

保険会社によっては、個人に名義変更した後に数年間は、契約者貸付(解約返戻金の範囲内で保険料を貸付)を利用して個人の負担なく続けられる保険商品もあります。

 

上記例はかなり特殊な契約内容でありますが、少なくとも保険契約の名義変更を法人から個人に承継させる上で留意すべき事項は次のとおりです。

① 名義変更先が個人の場合は被保険者本人またはその親族(2親等以内)に限られます。

② 個人は法人に名義変更時の解約返戻金相当額を支払う必要があります。

③ 名義変更の事業年度で法人は保険積立金額と個人から受領した解約返戻金相当額との差額が、解約損益金額となります。

④ 個人が保険解約時の解約返戻金は一時所得に該当しますが、その時の計算上、解約返戻金から控除できる保険料は、個人が負担した保険料に限定されます。 一時所得の計算上控除できる「その収入を得るために支出した金額」は、個人が負担して支出したものに限ることが、現行の法令・通達で明確化され、又、最高裁判決でもその様に判示されています。 一時所得の場合には50万円控除があり、更にその50%が課税所得となる扱いになります。

収益力のある法人等においては、検討されてもよいかもしれません。

2017年7月21日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

電子納税しやすく 国税庁 証明書や専用機器不要

国税庁は2019年をめどにインターネット電子申告・納税をしやすくする。 新しい方式では、ICカードリーダーやマイナンバーカードなどの電子証明書が要らなくなる。

まず税務署で申告を始める届出書と免許証など本人確認ができる証明書を提出する。職員が対面で本人確認をしてなりすましなどを防ぐ。そこで受け取ったIDとパスワードを国税庁のサイトで入力するだけでe-Taxを通じて電子申告ができる。2018年分の申告分からが対象で、翌年度以降も同じIDとパスワードを使いネットで申告できる。

路線価とは、 主要な道路に面した土地1平方メートル当たりの標準価格で、 2017年1月1日から12月31日までの間に相続や贈与で土地を取得した場合、 今回公表された路線価を基に税額が算定される。 調査地点は国土交通省が3月に公表した公示地価(2万6千地点)よりも多い約33万地点。 公示地価の8割を目安に売買実例などを参考にして算出するため、 公示地価よりも遅く例年7月に公表される。 路線価の最高は、 お馴染みの東京都中央区銀座5丁目銀座中央通りの1平方メートル当たり40,320千円(前年26.0%上昇)でした。 過去最高だったバブル直後(1992年)の36,500千円を上回った。

2017年7月16日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

路線価2年連続上昇

国税庁は3日、 相続税や贈与税の算定基準となる2017年分の路線価(1月1日現在)を発表した。 全国約32万5千地点の標準宅地は前年比で0.4%のプラスとなり、 2年連続で上昇した(前年度では前年比で0.2%のプラス)。 都道府県別では、東京、 大阪、 愛知など13都道府県が上昇した。 前年の上昇は14都道府県だった。

2015年には相続税の制度が見直され、非課税となる基礎控除が下がり、「3,000万円 + 600万円 X 法定相続人の数」と40%減となった。 国税庁によると、2015年に亡くなった約129万人のうち、財産が相続税の課税対象となったのは、約10万3千人。 2014年比の約1.8倍に増えた。 課税割合は8%と2014年の4.4%を大きく上回った 。

2017年7月3日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

法定相続情報証明制度の開始

法定相続情報証明制度は、法務省において相続登記(土地や建物など不動産の名義変更)を促進するために平成29年5月29日から運用が開始されました。

1.制度創設の背景

土地や建物など不動産の所有者が亡くなられた場合、相続登記(所有権の移転登記)が必要となりますが、未了のまま放置されている不動産が増加し、所有者不明土地問題や空き家問題の一因となっています。 又、各種の相続手続きにあたり、故人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍など複数の種類あります。)や相続人全員の戸籍謄本、住民票などの原本が複数枚必要となり、煩雑な手続上の負担がし得られていました。また相続手続きにおいては、戸籍の原本が還付されない金融機関もあったり、複数の金融機関を同時に進める必要があったり、さらに税務署提出用は原本の還付がされませんので、必要に応じて同じ戸籍を複数部にわたって取得することも必要になりました。

そこで、法定相続情報証明制度は、法務局が戸籍関係書類の内容を確認して、証明文を付して交付するものです。

 

2.制度の概要

1)交付申出

制度の概要として相続人が登記所に対し、被相続人(亡くなられた不動産の所有者)の出生から死亡までの戸籍関係書類等や、法定相続情報一覧図(相関図:相続人関係説明図)を提出する事で、登記官が内容確認後に「認証文付きの法定相続情報一覧図」の写しを交付します。

2)法定相続情報一覧図の作成

相続人が提出する「法定相続情報一覧図」には、被相続人の氏名、最後の住所地、生年月日、死亡年月日、相続人の氏名、住所地、生年月日、被相続人との続柄などを記載する必要があります。

3)認証文付きの法定相続情報一覧図の写しの利用

法定相続情報一覧図の写しが相続登記の申請手続きや、被相続人名義の預金の払い戻し等、相続手続きに利用される事で、相続手続きを行う相続人や手続き先の法務局や銀行等金融機関の窓口の負担が軽減されます。法定相続情報一覧図の写しの発行手数料は無料で、必要な通数が交付されますので、法務局や銀行等金融機関の窓口に個別に戸籍等を提出する手間が省け、相続登記や銀行口座(預金・貯金)の凍結解除(名義変更・解約)などが以前に比べ容易になります。

法定相続情報証明制度は被相続人名義の不動産が無い場合でも利用する事が出来る為、遺産が銀行口座のみという場合でも法定相続情報一覧図の写しを交付してもらう事が可能です。

4)交付申出者の資格

申出をする事が出来るのは被相続人の相続人の他、法定代理人や民法上の親族、資格者代理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士)などが法定相続情報一覧図の写しの交付の申出を行う事が出来ます。

申出が出来る登記所は、被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地を管轄している登記所のいずれかで、郵送で行う事も可能です。

5)相続税申告の利用可能性

相続税法施行規則16条3項で戸籍謄本で被相続人の全ての相続人を明らかにするものを添付することが規定されていることから、この改正が行われない限り「認証文付きの法定相続情報一覧図の写し」は相続税の申告には使用できません。

 

2017年6月25日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

民法の一部改正

約120年ぶりの民法の抜本改正(今回の大部分は債権法の関する改正)が平成29年5月26日に成立しました。 施行期日は公布日から3年以内に政令で定める日とされており、平成32年頃の施行とみられています。 その中でポイントなる主な改正内容は、以下のとおりです。

改正項目 主な改正内容
消滅時効期間の統一

(短期消滅時効の廃止)

改正前 職業別に、 飲み屋さんのツケは1時効消滅、小売商のツケや学習塾の授業料、弁護士報酬債権は2、医師・助産師の診療報酬債権は3で時効消滅と、 短期消滅時効のものがありました。一般的な債権の消滅時効期間が、「権利行使できる時から10年間」と決められていました。
改正後 改正前の様に区別をすることの合理性が疑われてきたため、改正ではこれらの職業別の短期消滅時効が廃止され、これらの債権は他の債権と同様、消滅時効期間は、「権利行使できる時から10年」という従来の一般原則に加えて、「権利行使できると知った時から5年」の時効期間が追加され統一されることになりました。 つまり、時効の完成を主張する側が、権利者が権利行使できると知っていたことを主張・立証できれば、5年で時効完成するということです。
法定利率の引き下げと変動利率の導入 改正前 当事者で定めの無い場合に使用される利率(これを法定利率)であり、年5%となっていました(法律の範囲内であれば利率を当事者間で決めることができる、約定利率とは異なります)。
改正後 利率を現実の利回りに少しでも近づけようとするもので、法定利率を3%に引き下げ、市場金利との乖離を少なくするため、その後3年ごとに1%刻みで見直す変動制への移行となりました。
企業融資で求められる保証人の制限・保護の強化 改正前 企業への融資の場面でも個人が保証人になることには制限がなく自由でした。
改正後 事業資金の借入れについて個人が保証人になるということは、予期しない負担を強いられ過大な負担が生じる危険がありましたので、その保証人の制限・保護が図られる規定となりました。

① 個人根保証は、金額の枠(極度額)を定めないときは無効となります。 ② 事業のための債務についての個人(根)保証は、その締結の前1か月以内に作成された公正証書で保証人となろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ無効となります。

第三者を連帯保証人とする場合は、1か月前以内に公証人役場で、保証債務を履行する意思を表示して記録することが必要というものです。 ③ 事業のための債務についての個人(根)保証は、主たる債務者である団体の取締役等、支配社員等、事業に現に従事する主たる債務者の配偶者に限定されます。

保証人の範囲を制限するもので、これらにあたらない第三者は事業のための融資を受ける際の保証人とはなれない、とする規定です。

敷金は原則返還及び賃借物の現状回復義務 改正前 敷金についての規定がありませんでした。
改正後 過去の裁判例をもとに敷金についての規定が新たに追加となりました。 マンションやアパートを借りる際に払う敷金に関しまして、これまで不明瞭な点も多くトラブルにもなってきましたので、明確な追加規定ができました。

敷金の返還義務及び賃借物の現状回復義務が規定されました。

① 敷金を「賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義し、「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」は、「賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭債務の額を控除した残額を返還しなければならない」

② 更に、「賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に回復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」

定型約款の新設 改正前 約款についての規定がありませんでしたので、当事者の意思を尊重するという観点から、約款に書いてあるからといって必ずしも当事者がそれに拘束されるわけではありませんでした。
改正後 定型約款を定義し、その「定型約款」について、不当条項や、変更の場合の規制が行われようになりました(定型的な取引など一定の場合には約款も契約の内容として効力をもつようになります)。 また、この特定約款の条項については、消費者は、消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効とする規定)のどちらかを選んで主張できるとされました。 どんな内容の約款でも有効というものではなく、相手の権利を制限したり義務を加重する規定の場合、社会通念上の信義に反して相手の利益を一方的に害するものには効力はなく無効とみなすものとなります。
瑕疵担保責任は契約責任説を採用 (購入商品に問題があった場合の責任) 改正前 購入した商品に欠陥があった場合、契約の解除か損害賠償請求についてしか規定がありませんでした。
改正後

 

欠陥商品に対し不都合ということで、更に明文で規定されることになりました。

契約の当事者間で契約の趣旨にあった品質を満たしていなければ、売主は契約上の責任を負い、買主は契約の解除、損害賠償請求に加え、修理や代金減額も請求できることになりました。

商品などに欠陥があることを「瑕疵(かし)」表現されていましたが、改正では瑕疵という言葉はなくなり「不適合(ふてきごう)」と表現されることになりました。

 

2017年6月25日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

中小企業等経営強化法に係る税制措置 (固定資産税特例と中小企業経営強化税制)

平成28年7月1日より施行された中小企業等経営強化法による「経営力向上計画」(人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資等により、事業者の生産性を向上させるための計画であり、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます)の認定を受けた中小企業者等は、一定の要件を満たす場合、以下の税制措置を受けることができます。

平成29年度税制改正により、税制措置として拡充となりました「固定資産税の軽減措置特例」と改組・創設された「中小企業経営強化税制」の2つとなりました。 又、 中小企業に対する他の投資優遇制度(中小企業投資促進税制と特定中小企業者等の経営改善設備投資促進税制)も併せて以下に紹介します。

 

1.固定資産税の軽減措置特例

経営力向上計画に基づき認定された事業者は、平成31年3月31日までに生産性を高める一定の設備を新規取得した場合、その翌年度から3年間の当該固定資産税の課税標準が2分の1に軽減されます。

(1)対象設備

種類 最低取得価額 販売開始要件(*1) 用途・細目 経営力向上要件(*1)
機械装置 1台160万円以上 10年以内 限定なし 旧モデル比で経営力に資するものの指標が年平均1%以上向上
工具 1台30万円以上 5年以内 測定工具及び検査工具に限る
器具備品 1台30万円以上 6年以内 限定なし
建物附属設備 1台60万円以上 14年以内 限定なし

*1: 工業会等による証明書で、販売開始時期と生産性向上に係る要件を確認するために取得する必要があります。

(2)地域・業種の制限

生産性を向上させて賃上げに繋げる必要性の有無が制限に関連しています。 なお、この地域・業種限定の判定は、本社所在地ではなく、設備の設置場所に応じて判定されることになります。

① 最低賃金が全国平均以上の7都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪)の地域

上記記載の機械装置以外の設備を当該7都府県に設置する場合、対象業種によって適用が制限(機械装置は制限無し)されるものがありますので、確認は中小企業庁が公表しています7都府県ごとの業種リストで行う必要があります。

② 最低賃金が全国平均未満の地域

制限なく、全業種が特例の対象となります。

業種の判定は、日本標準産業分類の「中分類」で行われます。

(3)基本的な手続フロー

① 事業者は対象設備の取得を決めたら、設備メーカを通じて工業会発行の証明書を入手

② 上記証明書と投資計画申請書を主務大臣(担当省庁)に提出

③ 主務大臣(担当省庁)は、計画認定書と投資計画申請書(写し)を事業者に交付

④ 事業者は、固定資産税の納税書類と一緒に、投資計画申請書(写し)・計画認定書(写し)・工業会証明書(写し)を自治体に提出

原則、対象設備取得前に計画申請書を主務大臣に提出することになっています。なお、取得後に提出する場合には、取得日から60日以内に計画申請書等の必要書類が受理される必要があります。

 

2.中小企業経営強化税制

青色申告書を提出する中小企業者等で中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものが、平成29年(2017年)4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間に、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、及びソフトウェアで特定経営力向上設備等に該当するもののうち、一定の規模以上のものの取得等をして、その特定経営力向上設備等を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その普通償却限度額との合計で取得価額までの特別償却(即時償却)と、その取得価額の7%(特定中小企業者等では10%)の税額控除(但し、法人税額の20%が限度で、控除限度超過額は1年間繰越可能)との選択適用が認めるというものです。

 

制度の目的 生産性の高い先進的な設備や生産ライン等の改善のための設備投資に対する税制支援(即時償却又は税額控除)を行い、 中小企業者の民間投資を活性化させる。
適用法人 青色申告書を提出する中小企業者等で、経営力向上計画の認定を受けた事業者。

具体的には、資本金1億円以下の企業、もしくは従業員千人以下の事業者、組合等。

適用要件 「生産等設備」を構成する「特定経営力向上設備等」のうち、 一定規模以上のものを取得等し、 その設備を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合。
指定事業 一部の事業は対象外、例えば、金融業、電気業(太陽光発電設備に関し、全量売電の場合には、電気業の用に供する設備として指定事業外となります)、映画業を除く娯楽業、風俗営業等であるが、ほぼ全営業が指定事業の対象とされる。
生産等設備とは 法人の指定事業用に直接供される生産等設備の減価償却資産で構成されるもの。 従って、 本店、 寄宿舎等の建物附属設備、 福利厚生施設等は非該当となります。国内への投資であること。中古資産・貸付資産でないこと等。
特定経営力向上設備等とは 経営力向上設備等(①生産性向上設備と②収益力強化設備)のうち経営力向上に著しく資する一定のもので、その法人の認定を受けた経営力向上計画に記載されたもの。
①生産性向上設備(A類型):個別設備の性能の向上の度合いを確認
種類 最低取得価額 販売開始(*1) 用途・細目 経営力向上要件(*1)
機械装置 1台160万円以上 10年以内 限定なし 旧モデル比で経営力に資するものの指標が年平均1%以上向上

 

 

 

 

工具 1台30万円以上 5年以内 測定工具及び検査工具に限る
器具備品 1台30万円以上 6年以内 限定なし
建物附属設備 1台60万円以上 14年以内 限定なし
ソフトウエア 1台70万円以上 5年以内 稼働状況等を情報収集機能及び分析等するものに限る

 

*1: ソフトウエア及び旧モデルがないもの(*1の販売開始要件を満たすこと)以外は、 同メーカーの旧モデル比で経営力の向上に資するものの指標(生産効率、 エネルギー効率、精度等)が年平均1%以上向上するものであること。

確認者:工業会等による証明書で、販売開始時期と生産性向上に係る要件を確認するために取得する必要があります。

証明書を入手後、経営力向上計画の申請書に当該証明書を添付して事業分野別の主務大臣に申請して認定を受けることになります。

基本的なフロー:

イ 証明書「入手」

ロ 計画「申請」

ハ 計画「受理」

二 計画「認定」

ホ 設備「取得」

へ 設備「事業供用」

②収益力強化設備(B類型):設備投資計画の投資収益力を確認 ① 経済産業局の確認を受けた投資計画に記載された設備(機械装置160万円以上、 工具30万円以上、 器具備品30万円以上、建物附属設備60万円以上、及びソフトウエア70万円以上)。

② 投資利益率が年平均5%以上となることが見込まれる投資計画に係る設備であること。

確認者:確認申請は所轄の経済産業局に対して行いますが、設備投資計画案については、税理士又は公認会計士から事前確認書を得ておくことが必要となります。

経済産業局から確認書を入手後、経営力向上計画の申請書に当該確認書を添付して事業分野別の主務大臣に申請して認定を受けることになります。

基本的なフロー:

イ 投資計画「事前確認」

ロ 投資計画確認書「発行申請」

ハ 確認書「入手」

二 計画「申請」

ホ 計画「受理」

へ 計画「認定」

ト 設備「取得」

チ 設備「事業供用」

特別償却と税額控除との選択適用 その普通償却限7%(資本金3千万円以下の特定中小企業者等では10%)の税額控除(但し、法人税額の20%が限度 (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)で、控除限度超過額は1年間繰越可能)との選択適用が認めるというものです。

中小企業者等 即時償却、又は税額控除(取得価額の7%)
特定中小企業者等 即時償却、又は税額控除(取得価額の10%)
適用時期 同法の施行日(平成29年4月1日)から平成31年3月31日までの間の取得等。

なお、この中小企業経営強化税制に関するQ&A集が、中小企業庁より平成29年4月4日に公表されています。

 

3.経営力向上計画の概要

中小企業等経営強化法による「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資等により、事業者の生産性を向上させるための計画であり、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。また、計画申請においては、経営革新等支援機関(士業等の専門家、商工会議所・商工会、地域金融機関等)のサポートを受けることが可能です。

(1)申請・認定の時期(弾力的な運用可)

原則、経営力向上計画の申請・認定は、設備の取得前に行うことが必要ですが、①取得後60日以内に計画が「受理」され、かつ、②設備の「取得」と計画の「認定」が同一事業年度内であれば、設備の取得後の計画申請・認定も容認されます。

具体的には、中小企業経営強化税制のA類型については、工業会等の証明書の入手の前から設備の取得等が可能となります。 一方で、B類型は、経済局に投資計画の確認書の「発行申請」を行った後に設備の取得等が可能となります。また、固定資産税の軽減と同様に「60日ルール」が課され、設備の取得日から60日以内に経営力向上計画が「受理」されることが必要となります。加えて、A類型、B類型ともに、設備の「取得」と同一事業年度内に計画が「認定」されることも必要となります。

(2)計画認定申請書

計画認定申請書は事業分野別の主務大臣に提出し認定を受けることになります。 記載内容は以下のようになります。

①企業の概要、②現状認識、③経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標、④経営力向上の内容など簡単な計画、等を策定することになります。

 

  1. 中小企業投資促進税制

上述以外に中小企業に対する投資優遇税制の中に、中小企業投資促進税制があり、平成29年度税制改正により、対象資産から器具備品が除外され、 適用期限が2年延長(平成31年3月31日まで延長)となりました。

特別償却の種類 対象法人、 対象設備の範囲等 限度額
特別償却等 税額控除
中小企業者等の機械等(平成10.6.1から31.3.31まで)

(①機械装置で、 1台又は1基で取得価額160万円以上、 ②ソフトウエアで70万円以上、 ③車両総重量3.5トン以上の貨物自動車、 ④内航船舶)

新品を指定事業に供する

中小企業者等(資本金3千万円以下)で大規模法人(資本金1億円超の法人で、 単独所有で50%以上、 又は複数所有で3分の2以上の所有関係。 なお、 所有割合判定では、 親会社の同族関係者の持株等は考慮しません)の所有法人を除き、 常時勤務従業員数が1千人以下等)が新品の一定の機械装置等を取得し事業に供した場合には、特別償却、 又は税額控除の選択可(特別償却の適用要件としては、 資本金1億円以下の中小企業者等) 基準取得価額の30%

(なお、 内航船舶の基準取得価額は、 実際の取得価額の75%相当額)

次の①と②のいずれか少額の金額

①基準取得価額(内航船舶では、取得価額の75%相当額)の7%

②当期法人税額の20% (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)

また、 ①>②のときには、 限度超過額を1年間の繰越控除可

 

  1. 特定中小企業者等の経営改善設備投資促進税制の期限延長

平成29年度税制改正により、特定中小企業者等の経営改善設備投資促進税制の適用期限が2年延長(平成31年3月31日まで延長)となります。 その概要は以下のとおり(商業・サービス業・農林水産業の中小企業等の設備投資促進税制とも呼称されています)。

青色申告法人で指定事業を営む中小企業等が経営改善に関する指導及び助言を受けて行う店舗改修等に伴い器具備品及び建物附属設備の取得等を行なった場合、その取得価額に対して特別償却か税額控除かを選択適用できる制度(所得税についても同様の取扱い)。

適用期間 平成29年4月1日~平成31年3月31日の間に店舗改修等を行なった場合
指定事業 卸売業、 小売業、 サービス業、 農林水産業(性風俗関連特殊営業及び風俗営業を除く)
適用要件 商工会議所、 認定経営革新等支援機関等による法人の経営改善に係る指導及び助言を受けて行う店舗改修等であること
対象設備 ① 器具備品: 1台又は1基の取得価額が30万円以上

② 建物附属設備: 1つの取得価額が60万円以上

特別償却額 対象設備の取得価額 X 30%
税額控除額 対象法人は、 資本金3,000万円以下の中小法人等に限定 (但し、 認定経営革新等支援機関等は対象から除外)

対象設備の取得価額 X 7%

(但し、 控除限度額は当期法人税額の20% (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)であり、 控除限度超過額は1年間の繰越可能)

 

2017年5月31日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

寄附金控除 (法人版)

寄附金は、 その支出に対する見返りがないため費用性に乏しく、 相手方に対する利益分の性格が強いということからその全額を損金算入とすべきではないという考え方があります。 しかし、 寄附金の中には事業との関連性のあるものもあるという考え方(しかし、 一般的に寄附金は事業に直接関係がある支出ではないものです)から、 税務上では寄附の相手先及び内容に応じて、 損金算入限度額等の規定を設けています。 寄附先別における法人税法の取扱いの概略は以下のとおりです。

寄附先別の区分
①指定寄附金等(国・地方公共団体等、 及び財務大臣の指定 ②特定公益増進法人、 認定特定非営利活動法人・特定地域雇用会社・特定地域雇用等促進法人、 又は認定特定公益信託(特増寄附金) ③一般の寄附金 ④完全支配関係がある内国法人 ⑤国外関連者
全額損金算入 特増寄附金の額又は特別損金算入限度額のいずれか少ない金額。

特増寄附金の額 > 特別損金算入限度額の場合には、 その超過部分の金額は 、一般の寄附金の支出額に含めて損金算入限度額の超過計算をおこなう。

損金算入限度額有り 全額損金不算入

(一) 国等に対する寄附金及び指定寄附金

国や地方公共団体に対する寄附金及び指定寄附金は、その支払った全額が損金に算入されます。

(二) 特定公益増進法人等に対する寄附金の特別損金算入限度額

公益の増進に著しく寄与する法人を特定公益増進法人と呼称し、 公益法人等中の公益社団

法人、 公益財団法人、 学校法人、 社会福祉法人、 更生保護法人、 独立行政法人等が対象となります。 また、 認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)も含まれます。

(1) 資本等がある法人(普通法人、 協同組合等及び人格のない社団等) (2) 資本等がない法人
① 資本基準額

(期末資本金額 + 期末資本積立金額) X 当期月数/12 X 0.375%

② 所得基準額

(支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 6.25%

③ (① + ②) X 1/2 = 特別損金算入限度額

所得基準額:

(支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 6.25%

(三) 一般の寄附金の損金算入限度額

(1) 資本等がある法人(普通法人、 協同組合等及び人格のない社団等) (2) 資本等がない法人
① 資本基準額

(期末資本金額 + 期末資本積立金額) X 当期月数/12 X 0.25%

② 所得基準額

(支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 2.5%

③ (① + ②) X 1/4 = 損金算入限度額

所得基準額:

(支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 2.5%

 

公益法人等(非営利型法人等を除く)の場合:

① 公益社団法人・公益財団法人

所得基準額: (支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 50%

なお、 みなし寄附金がある場合には、 別途定めた所得基準額による損金算入限度額を計

算することになります。

② 社会福祉法人、私立学校法人、 社会医療法人、 更生保護法人

所得基準額: (支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 50%

50%相当額が200万円未満である場合には、 損金算入限度額は200万円となります。

③ 上記以外の法人

所得基準額: (支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 20%

 

地方創生応援税制(企業版ふるさと納税):法人住民税及び法人事業税における寄附金税額控除

青色申告法人が、改正地域再生法の施行日(平成28年4月1日)から平成32年3月31日までの間に、地方創生推進寄附活用事業(地方公共団体が「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」を地域再生法の認定地域再生計画に基づき国(内閣府)に申請し認定を受けたもの)に関連する寄附金を支出した場合、法人事業税、法人住民税、法人税から一定額を税額控除できます。 但し、次の法人への寄附は対象外となります。

① 法人の本社が立地する地方自治体(都道府県・市町村)の事業への寄附(本社所在の地方公共団体へ最も多額の法人住民税を納めていることから、既に納税という形で貢献しているために対象外)

② 地方交付税の不交付団体(地方公共団体)等への寄附(地方創生事業の財源確保することを目的としていることから、財源超過団体とみなされる東京都等は対象外)

なお、当該寄附の代償としての経済的利益の供与は禁止されています。

 

現行の寄附金の損金算入制度(税額で寄附額の約30%)に加え、以下の税額控除(地方税 + 法人税で寄附額の30%を控除)が可能となります。

寄附による税額減少のイメージ図:

寄附額(100%)
損金算入対応分(約30%)

地方税 + 国税

税額控除(30%)

事業税 +(住民税+法人税)

(10%)   (20%)

実質的な企業負担分

(約40%)

 

税額控除額 控除税額の上限
法人事業税

(注1)

寄附額の10% 法人事業税額の20%
 

法人住民税

(注1)

 

開始事業年度

道府県民税法人税割額 市町村民税法人税割額  

道府県民税法人税割額の20%

 

市町村民税法人税割額の20%

平成29年3月

31日までに開始

寄附額の5% 寄附額の

15%

平成29年4月

1日以後に開始

寄附額の

2.9%

寄附額の

17.1%

法人税 ① 寄附額の20% - 法人住民税からの控除税額

② 寄附額の10%

③ 上記①と②のいずれか少ない金額

法人税額の5%

注1:2以上の自治体に事業所等がある法人における控除税額の按分基準

法人事業税は、課税標準額を基準として按分する。

法人住民税は、従業員数を基準として按分する。

 

所得税(個人)と法人税(法人)の寄附金税制の比較(主なもの)

区分 所得税 法人税
国又は地方公共団体に対する寄附金 特定寄附金として、一定の金額を所得控除 (公益社団法人等、認定NPO法人等又は政党等に対する寄附金で一定のものについては、税額控除を選ぶことができます) 支出額の全額を損金算入
指定寄附金
特定公益増進法人に対する寄附金 一般の寄附金とは別枠で寄附金の額の合計額と特別損金算入限度額とのいずれか少ない金額の範囲内で損金算入
特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
認定NPO法人等に対する寄附金
政治活動に関する寄附金 損金算入限度額の範囲内で損金算入
一般の寄附金(上記以外) 所得控除されない

 

2017年4月27日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

寄附金控除(個人版)

ふるさと納税を行う人が増えていますが、 これも寄附金ということで税制上では、 税負担の軽減が図られています。 以下では、個人からの寄附行為に対する税務上の取扱いを確認したいと思います。

1.税務上の寄附金控除(所得控除と税額控除)とは

寄附金控除の適用を受けるには、寄附の相手先が「特定寄附金」の対象として認められていることが必要となります。 「特定寄附金」に該当すれば所得から一定の寄附金額を控除できるという「所得控除」が認められ、更にその中で一定の寄附金に該当しますと、所得控除に代えて、税額から一定金額を控除できるという「税額控除」を選択することができます。

2.「特定寄附金」の主な範囲

(1)国又は地方公共団体に対する寄附金

ふるさと納税もここに含まれます。

(2)指定寄附金

公益を目的とする事業法人(公益社団法人、公益財団法人等)、又は一定の要件を満たす団体に寄附するもののうち、財務大臣が指定した緊急性を要するものとした寄附金

(3)政治活動に関する寄附金

(4)特定公益増進法人に対する寄附金

公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、一定の学校法人等

(5)認定特定非営利法人等(認定NPO法人等)に対する寄附金

3.「税額控除」対象の寄附金と税額控除額

税額控除を税務上では「特別控除」という表現で規定しており、以下のものがあります。

① 政党等寄附金特別控除

特定の政治献金のうち、政党や政治資金団体へ寄附された場合の税額控除額

(イ)年間の政党等特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)

(ロ)上記(イ)X 30%

(ハ)所得税額 X 25%

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 政党等寄附金特別控除

② 公益社団法人等寄附金特別控除

一定の要件を満たす公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、学校法人、国立大学法人、公立大学法人等へ寄附をされた場合の税額控除額

(イ)年間の公益社団特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)

(ロ)上記(イ)X 40%

(ハ)所得税額 X 25%(注2)

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 公益社団法人等寄附金特別控除

③ 認定NPO法人等寄附金特別控除

一定の要件を満たす認定NPO法人へ寄附された場合の税額控除額

(イ)年間の認定NPO特定寄附金合計額(注1)又は総所得金額等の40%相当額のいずれか少ない金額 - 2千円(注1)

(ロ)上記(イ)X 40%

(ハ)所得税額 X 25%(注2)

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 認定NPO法人等寄附金特別控除

注1:この控除対象寄附金額(総所得金額等の40%相当額)及び控除適用下限額(2千円)の判定は、 所得控除対象の寄附金額及び税額控除対象の寄附金額と合わせて総合計でおこないます。

注2:この判定は、公益社団法人等寄附金と認定NPO法人等寄附金との合計でおこないます(政党等寄附金は含まず別枠での判定)。

 

上記の①~③の特定寄附金に該当された場合には、当該税額控除と下記の所得控除の有利な方をそれぞれ選択適用することができます。

4.「所得税寄附金控除」の計算

ふるさと納税(税額控除の適用は認められません)等の特定寄附金には寄附金所得控除額が認められていますが、その計算式は次のとおりです。

(イ)年間の特定寄附金合計額(注1)

(ロ)総所得金額等 X 40%

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額

(ニ)上記(ハ)の金額 - 2千円 = 寄附金所得控除額

(ホ)所得税の軽減税額

寄附金所得控除額 X 所得税率 X 1.021%

5.「住民税寄附金税額控除」の計算

上記では、所得税における寄附金の控除についてでしたが、同時に住民税におきましても特定の寄附金に対しては寄附金控除が認められています。 例えば、次の様な寄附金が対象となります。

① 都道府県・市区町村へのふるさと納税

② 住所地の日本赤十字社支部

③ 住所地の都道府県共同募金会

④ 住所地の都道府県が条例で指定する社会福祉法人

⑤ 住所地の都道府県・市区町村ともに条例で指定する認定NPO法人

なお、住民税においての控除方式は、税額控除のみとなっています。 住民税は、都府県民税と市町村民税とに分かれ、寄附金も特定寄附金になるものか否かは条例により異なりますので別々に計算する必要があります。

(1)住民税基本控除分

(イ)年間の都府県、市町村又は特別区等への特定寄附金合計額

(ロ)総所得金額等の30%相当額

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額

(ニ)上記(ハ)の金額 - 2千円

(ホ)上記(ニ)の金額 X 10%(都府県民税4%、市町村民税6%:平成30年度分より2%と8%に標準税率の変更)= 住民税基本控除分

(2)住民税特例控除分

(イ)年間の都府県、市町村又は特別区への特定寄附金合計額 - 2千円

(ロ)上記(イ)の金額 X (90% - 所得税率 X 1.021 X 5/5(都府県民税2/5、市町村民税3/5:平成30年度分より1/5と4/5に変更))

(ハ)住民税所得割額 X 20%相当額

(ニ)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 = 住民税特例控除分

(3)住民税の寄附金税額控除額 = (1)+ (2)

6.寄附金限度額の計算

ふるさと納税でよく言われるのが、寄附金額から2千円控除した金額の全てが税金計算上、控除されることになるということですが、 これは正しいでしょうか。 これまでの寄附金の限度計算では、総所得金額等(注3)の40%或いは30%、又は住民税所得割額(注4)の20%が限度という算式がありましたので、寄附金には所得金額の多寡により一定の寄附金額控除に限度があることが分かります。 上記から、

寄附金限度額 = 個人住民税所得割額X 20%÷(90%-所得税率X1.021) + 2千円

の算式が導かれます。 ご存知の様に所得税率は、累進税率の7段階に分かれていますので、次の表が寄附金限度額の目安となるかと思います(但し、申告分離課税のみの場合ではなく、総合課税と申告分離課税も含む場合の適用時における目安)。

所得税の課税所得額 所得税率 寄附金限度額
195万円未満 5% 個人住民税所得割額 X 23.558% + 2千円
195~330万円未満 10% 個人住民税所得割額 X 25.065% + 2千円
330~695万円未満 20% 個人住民税所得割額 X 28.743% + 2千円
695~900万円未満 23% 個人住民税所得割額 X 30.067% + 2千円
900~1,800万円未満 33% 個人住民税所得割額 X 35.519% + 2千円
1,800~4,000万円未満 40% 個人住民税所得割額 X 40.683% + 2千円
4,000万円以上 45% 個人住民税所得割額 X 45.397% + 2千円

注3:総所得金額等とは

所得税計算での総合課税所得金額及び申告分離課税所得金額を合算し、かつ、各種の繰越損失控除を使用していた場合には、その使用額を加算(控除前に戻す)したところの所得金額。

注4:住民税所得割額とは

住民税計算での課税所得金額に税率を乗じた税額(総合課税に係る税額控除前所得割額と分離課税に係る税額控除前所得割額との合計額)から調整控除額(通常2,500円)を控除した後の税額。

 

例えば、給与所得500万円、社会保険料50万円、基礎控除38万円(住民税では33万円)の場合の人が、ふるさと納税30万円を行った場合と行わなかった場合の所得税及び住民税は以下のようになります。

(1)ふるさと納税30万円を行わなかった場合

① 所得税額

5,000,000 - (500,000 + 380,000) = 4,120,000

(4,120,000 X 20% - 427,500) X 1.021 = 404,826 à 404,800(所得税額)

② 住民税額

5,000,000 - (500,000 + 330,000) = 4,170,000

4,170,000 X 10% = 417,000円(住民税額)

(2)ふるさと納税30万円を行った場合

① 所得税額

(イ)特定寄附金合計額 300,000

(ロ)5,000,000 X 40% = 2,000,000

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額 300,000

(ニ)300,000 - 2,000 = 298,000寄附金所得控除額

(ホ)所得税額

5,000,000 - (500,000 + 298,000 + 380,000) = 3,822,000

(3,822,000 X 20% - 427,500) X 1.021 = 343,974 à 343,900 (所得税額)

(へ)寄附金による所得税額の軽減税額

寄附金所得控除額 X 所得税率 X 1.021 = 298,000 X 20% X 1.021 = 60,900円

② 住民税額

(1)住民税基本控除分

(イ)特定寄附金合計額 300,000

(ロ)5,000,000 X 30% = 1,500,000

(ハ)上記(イ)と(ロ)のいずれか低い金額 300,000

(ニ)300,000 - 2,000 = 298,000

(ホ)298,000 X 10% = 29,800

(2)住民税特例控除分

(イ)特定寄附金合計額300,000 - 2,000 = 298,000

(ロ)298,000 X (90% - 20% X 1.021) X 5/5(都府県民税2/5、市町村民税3/5)= 207,348

(ハ)住民税所得割額 (4,170,000 X 10% - 2,500) X 20% = 82,900

(二)上記(ロ)と(ハ)のいずれか低い金額 82,900

(3)住民税の寄附金税額控除額 = 29,800 + 82,900 = 112,700円

(4)住民税額

5,000,000 - (500,000 + 330,000) = 4,170,000

4,170,000 X 10% - 112,700 = 304,300円(住民税額)

③ 所得税・住民税への軽減税額

所得税60,900 + 住民税112,700 = 173,600円

④ 寄附金限度額

以上の寄附額300,000円の例からは、 制限・上限に該当となるケースでしたが、 該当しない寄附額はいくらであったかは、 以下の計算で算出できます。

個人住民税所得割額X 20% ÷ (90% - 所得税率X 1.021)+ 2,000 = 414,500 X 20% ÷ (90% - 20% X 1.021) + 2,000 = 240,286円

計算結果から、 240,286円相当額が制限・上限に触れることのないレベル、 即ち、寄附金限度額ということになります。

2017年3月26日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成28年度(2016年)個人確定申告について

個人並びに個人事業者の方の平成28年度確定申告の時期がきました。 以下に、 平成28年度分の確定申告の提出期限及び確定申告の対象となる人(任意ではなく申告しなければならない人)、 等に関しまして概要を纏めてみました。 なお、 確定申告の対象者は前年度と変更はありませんが、 税金の申告は、 本人自ら課税金額や税額を計算し、 その税額を申告納付する制度「申告納税制度」を採用していますので、 期限後申告・納付となりますと延滞税等がかかりますので注意してください。

 

  1. 平成28年度確定申告の提出・納付期限
所得の種類 平成28年度申告期間・納付期限 口座振替による納税日(振替日)
所得税 平成28年2月16日 から3月15日 (還付対象者の方は1月から申告可) 4月20日(木)

(新規の利用者の方は「預貯金口座振替依頼書」を申告期限までに要提出)

消費税 平成29年1月 から3月31日 4月25日(火)
贈与税 平成29年2月1日 から3月15日               非該当

(1) 申告書の提出方法には、 ①持参(所轄税務署等の所定の提出場所)、 ②郵送、 ③電子申告(e-Tax利用によりデータ送信。 この利用には事前準備が必要となりますが、 所得税では一定の第三者作成の提出書類を省略可の恩典があります)の方法があります。

(2) 納税方法には、 ①持参(所轄税務署)、 ②金融機関から納付書を付けて納付、 ③ダイレクト納付(e-Taxの利用で、 かつ、 事前にダイレクト納付利用届出書の所轄税務署に要提出)、 ④インターネットバンキング等による電子納税、⑤口座振替(上記を参照) の方法があります。

(3) 平成25年度から25年間には、 復興特別所得税として各年分の所得税額に2.1%の税率を掛けて計算した税額が発生することに留意してください。

(4) 平成28年分の申告書には、 マイナンバー(個人番号)の記載が必要となります。   申告書を提出する際には、 申告者のご本人の本人確認書類(番号確認書類及び身元確認書類)の提示又は写しの添付が必要です。 具体的な本人確認書類とは、

① マイナンバーカード(個人番号カード)

② 通知カード又は個人番号付の住民票の場合には、 身元確認書類として顔写真付きの運転免許証、 等の点、 又は顔写真付きでない場合には、 2点の確認書類(保険証、 年金手帳、 等)

 

  1. 平成28年度確定申告が必要となる対象者の方
  2. 所得税
  3. 給与所得者(サラリーマンの方)

① 給与の年間収入金額が2,000万円超となる方(年末調整対象外の方)

② 給与(年末調整済)を1箇所から受けていて、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円超となる方 (給与収入額が2,000万円以下で、 給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合には申告の必要はありません)

③ 給与(源泉徴収済)を2箇所以上から受けていて、 年末調整されなかった給与の収入金額と、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円超となる方。

但し、 給与所得の収入金額から、 一定の所得控除の金額(雑損控除、 医療費控除、 寄付金控除及び基礎控除の項目を除く)の差引金額が150万円以下で、 かつ、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下となる方は、 申告不要となります。

  1. 上記の給与所得者以外の方、 又は個人事業者で納付税額が発生する方

事業所得や不動産所得等がある方で、 各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方

  1. 源泉徴収の適用を受けない給与等の支払を受ける方

① 家事使用人等の方で給与から源泉所得税を徴収されていない方: 常時2人以下の家事使用人だけを雇用している使用人等には源泉徴収の義務が無いことから、 その使用人等から給与を受給されていた方

② 在日外国公館から給与等の支払を受けた方

③ 国外から給与、 退職金等の支払を受けた方

  1. 同族会社の役員やその親族等で、 その会社から給与以外に利子、 家賃、 使用料等の支払を受けている方は、 その利子、 家賃、 使用料等は全て申告の対象
  2. 災害減免法の適用を受け給与に対して源泉徴収の猶予や源泉徴収税額の還付を受けていた方
  3. 上記以外の方で納付税額がある方

各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方

1: 公的年金等に係る所得の確定申告不要制度

その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、 かつ、 その雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、 所得税の確定申告書の提出は必要ありません(申告されれば還付となる場合もありますので、 その場合には申告される方が有利となる場合もあります)。 なお、国外源泉で国内源泉税の対象とならない国外年金収入等がある場合には、この確定申告不要制度の適用対象外となります。

この所得税の申告不要となる場合であっても、 住民税の申告が必要となることもありますので注意が必要です。

 

公的年金等の受給者で所得税の申告不要な者でも、住民税の申告が以下のような場合には必要となります(主に住民税の減額になるケース有り)。

① 年金や給与の源泉徴収票に記載されていない所得控除(扶養控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料, 寄附金等)のある方は、住民税の申告で住民税が減少する可能性があります。

② 上記①の控除を追加したい方で、公的年金等が105万円(65歳以上の方は155万円)を超えている場合、或いは、超えていない場合でも公的年金等以外の所得金額がある場合。

③ 日本年金機構等に扶養親族等申告書を提出しているが、その内容に変更がある場合等。

 

2: 確定申告不要(任意)となる方で申告すれば税金が戻ってくる方(還付申告者)

確定申告の総件数は2,000万件以上になるようですが、 この内の約半数近くが還付申告のものとなっているようです。 収め過ぎた税金を戻すためには確定申告書の提出が必要となります。 以下の様な場合には、 還付されるかもしれませんので調べてみてはどうでしょうか。

  1. サラリーマンで年末調整を受けた方で次の年末調整では取扱わない項目があった方

① 一定金額以上の医療費(医療費控除: 限度額200万円)

生計を一にする家族の支払医療費が、 以下の金額以上になっている場合が対象:

所得が200万円以上: 支払医療費 – 保険給付金等 – 10万円 = 医療費控除額

所得が200万円未満: 支払医療費 – 保険給付金等 – 所得金額 × 5% = 医療費控除額

② 災害(地震、 台風等)や盗難により住宅や家財に被害を受けた場合(雑損控除)

災害の場合には、 災害減免法により所得税の軽減・減免を受けられることもあります。

③ 特定の寄付をされた方(寄付金控除や政党等寄付金特別控除)

④ 初めて住宅ローン控除を受ける方(住宅借入金等特別控除)

⑤ 年末調整時に提出ができなかった、 或いは洩れている控除項目がある方

生命保険料控除、 地震保険料控除、 配偶者特別控除、 各種の扶養者控除等

⑥ 中途退職され再就職しなかった方

退職までの給与収入に対する源泉徴収税額が年税額として過大となっているケースが殆どです。 又、 退職金に対して20%源泉になっている場合も可能性がありますし、退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になっている方。

  1. 上場株式等に係る配当所得(申告分離課税選択)と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算
  2. 予定納税されたが確定申告不要となった方
  3. 所得が少ない状況で配当や原稿料収入等からの源泉徴収税額が、 本来の納付すべき税額よりも多額となっている方
  4. 外国税額控除の適用がある方
  5. 申告の要件となっている項目がある方

① その年の翌年以降に純損失又は雑損失の繰越控除を受けるため、 ② その年分の純損失の金額について純損失の繰戻しによる還付を受けるため、 ③ 居住用財産の買換又は特定居住用財産の譲渡損失及び繰越控除を受けるため、 等には確定申告の提出が必要となります。

 

 

  1. 贈与税

ご存知かと思いますが、 下記に示す様に年間に受けた贈与額が110万円以下ならば非課税範囲のために贈与税の申告等は必要ありません。

  1. 年間合計で110万円超の財産贈与(個人からの土地、 建物、 現金、 預貯金、 株式、 債権等の財産の贈与)を受けた方(暦年課税で下記の②の選択者を除く)
  2. 相続時精算課税制度(60歳以上の父や母の直系卑属からの贈与者ごとに累積で特別控除額2,500万円)の選択者で財産贈与を受けた方(20歳以上の推定相続人の子、 並びに孫に限る)
  3. 住宅取得等資金の非課税制度(下記に限度額)を適用し、 父母や祖父母等の直系尊属から自己の居住用家屋の取得等のために住宅資金贈与を受けた方(20歳以上で合計所得金額が2,000万円以下であり、 かつ、 一定の居住条件を満たしている方)

 

消費税率が8%適用となる取得等の契約を平成33年12月までに締結された場合の非課税限度額は以下のようになります。

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 良質な住宅用家屋(耐震等住宅) 左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
平成28年1月~平成32年3月 1,200万円 700万円
平成32年4月~平成33年3月 1,000万円 500万円
平成33年4月~平成33年12月 800万円 300万円
なお、 東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、 以下のようになります。

現在~平成33年12月

 

 

1,500万円

 

 

1,000万円

  1. 配偶者控除の特例(控除額2,000万円)を適用し、 配偶者から居住用不動産又はその取得資金の贈与を受けた方(婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与に限る)
  2. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度、等

平成25年4月1日から平成31年3月31日までの期間に直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 この制度適用のためには、 受贈者は教育資金非課税申告書を金融機関等を経由して税務署に提出する必要がありますが、 申込時に対応されていると思いますので特に問題となることはないでしょう。

 

 

  1. 消費税

個人事業者で下記に該当する方は納税義務者(課税事業者)として申告する必要があります。

  1. 基準期間となる前々年度(平成26年度)の課税売上高が1,000万円超の事業者の方
  2. 特定期間となる前年(平成27年度)の1月1日から6ケ月間の課税売上高が1,000万円超で、 かつ、 同期間の給与等支払総額が1,000万円超の事業者の方
  3. 免税事業者となる方が、 課税事業者となることを選択(消費税課税事業者選択届出書を提出)している方(簡易課税選択者も含む)

納税義務者の判定上の留意事項:

(1) 基準期間の課税売上高は、 消費税込の金額となり、 事業用資産(住宅用として貸付けていた建物等)の譲渡の対価金額も含まれます

(2) 被相続人(亡くなられた方)の事業を相続により承継した相続人には、 被相続人が提出していた各種の届出書の効力は及ばないので、 新たに提出する必要があります。

(3) 新規開業又は相続により事業を承継したときに、 消費税課税事業者選択届出書を提出した場合の適用開始時期は、 当該課税期間か翌課税期間かを選択できます。

(4) 消費税課税事業者選択届出書を提出されている場合には、 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、 その効力が消滅することはありません。

 

 

以上が、所得税、贈与税、消費税に関する確定申告の対象者の概要です。

2017年2月19日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant