法定調書と給与支払報告書: 提出期限 1月末

1. 法定調書とは
12月の最終給与支給までに、 従業員の年末調整が行なわれ一区切りついたと思っても、 翌1月末までに提出、申告等の対応が必要となるものがあります。 その1つに法定調書作成がありますが、 これは、所得税法、相続税法等の法律の規定により、給与、報酬、家賃等の支払者(提出義務者)が、それらの1年間の支払いに関して、支払先の氏名、住所、支払金額等を記載し所轄税務署に提出が義務付けられている書類(全部で61種類ほど)です。この主目的は、税務署が適正な課税の確保を図ることを目的に支払事実を把握し、受給者が正しく所得を申告していることの確認手段になるものです。 提出すべき法定調書は、 特定項目の一定金額以上のものですが、 源泉徴収の対象になるものとは限っておりませんので留意してください。
なお、 平成28年度分より行政機関への提出にあたり、 マイナンバー(個人番号、等)が必要となっています。

2. 提出する一般的な6種類の法定調書と支払内容

提出する調書支 払 内 容
給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書(注2)俸給、給料、賞与等の支払
退職所得の源泉徴収票と特別徴収票(注2)退職手当(注1)、一時恩給等の支払
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書① 原稿料、印税、講演料、工業所有権の使用料等の支払
② 弁護士、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士、建築士等への報酬、料金の支払
③ 外交員、集金人、電力量計の検針人、モデル、プロ野球の選手、プロボクサー、騎手等への報酬、料金、契約金の支払、芸能人への出演料等の支払
④ バー、キャバレー等のホステス、コンパニオン等への報酬、料金の支払
⑤ 広告宣伝のための賞金、馬主への競馬の賞金の支払
不動産の使用料等の支払調書地代、家賃、権利金、礼金、更新料、承諾料、名義書換料等の支払
不動産等の譲受の対価の支払調書土地、建物等の譲受け(売買、交換、収用等)の代金の支払
不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書土地、建物等の売買や貸付の仲介手数料の支払

注1:死亡退職による退職手当等の場合には、相続税法による「退職手当等受給者別支払調書」を提出することになります。
注2:地方税法で提出が義務付けられています「給与支払報告書」及び「特別徴収票」は、
名称が異なりだけでそれぞれ「給与所得の源泉徴収票」及び「退職所得の源泉徴収票」と記載内容は同じものです。

3. 提出範囲
支払調書は、一定金額以上のもの等(支払金額の提出範囲)に該当するときに提出が必要となります。主な提出範囲は次のとおりです。
(1) 給与所得の源泉徴収票

年末調整受給者区分提出範囲(年間)
年末調整をしたもの法人役員(相談役、顧問など含む)150万円超
弁護士、公認会計士、 税理士等250万円超
上記以外の人(従業員)500万円超
年末調整をしなかったもの給与収入2,000万円超全部
「扶養控除等申告書」を提出した者のうち退職した者等250万円超(法人役員は50万円超)
「扶養控除等申告書」を提出しなかった者50万円超

(2) 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20の規定に基づく報酬 料金等の支払

区 分提出範囲
* 外交員、集金人、検針人、プロボクサー、ホステス等の報酬、料金
* 広告宣伝のための賞金
* 社会保険診療報酬支払基金からの診療報酬
年間50万円超
馬主に支払う競馬の賞金1回75万円超
プロ野球選手等の報酬及び契約金
弁護士、税理士等の報酬
作家、画家などの原稿料、画料
講演料、 その他の報酬、 料金等
年間5万円超

当該支払調書の記載の概要は以下のとおりです。
① 支払を受ける者: 受給者の住所・名称を記入。
② 区分: 例えば、 原稿料、 印税(書きおろし初版印税、 その他の印税、等)、 さし絵料、 翻訳料、 通訳料、 脚本料、 作曲料、 講演料、 教授料、 著作権・工業所有権の使用料、 放送謝金、 映画・演劇の出演料、 弁護士報酬、 税理士報酬、 公認会計士報酬、 外交員報酬、 ホステス等の報酬、 契約金、 広告宣伝のための賞金、 競馬の賞金、 診療報酬、 等と記入。
③ 細目: 上記の区分内容をより詳細化して記入。
④ 支払金額: その年度中に支払の確定した金額を記入。 従って、 未払いのものも含み、 その場合には未払金額を各欄の上段に内書で記入。
提出範囲の金額基準の判定においては、 原則として消費税及び地方消費税(消費税等)の額を含めて行ないます。 但し、 消費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで判定しても構いません。
支払金額の記入にあたっては、 原則として消費税等の額を含めて記入します。 但し、 費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで記入しても構いませんが、 その場合には、 その消費税等の額を摘要欄に記入する必要があります。
⑤ 源泉徴収税額: その年度中の支払の確定した金額に基づく源泉徴収すべき税額を記入。 未払いのものがある場合には、 その未徴収税額を上段に内書で記入。
⑥ (摘要): 必要に応じて記入。
⑦ 支払者: 支払者の住所・名称及び電話番号を記入。

記載上の注意事項:
法人に支払われる報酬、 料金等で源泉徴収の対象とならないもの、 或いは支払金額が源泉徴収の限度額以下であるため源泉徴収していない報酬、 料金等についても、 提出範囲の金額基準以上のものは税務署への支払調書の提出が必要となります。

(3) その他の主な法定調書

法定調書提出範囲
退職所得の源泉徴収票法人役員(相談役、顧問その他これらに類する者も含む)が受給者であるもの
不動産の使用料等の支払調書
注:不動産、 不動産の上に存する権利、 総トン20トン以上の船舶、 航空機に対する対価を受領する法人と不動産業の個人の方が提出義務者となります。
年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。
又、法人に対し賃借料のみを支払っている場合にはその支払調書の提出は不要ですが、支払が権利金、更新料等は提出が必要となります。
不動産等の譲受の対価の支払調書年間100万円超
不動産等の仲介料の支払調書年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。
公的年金等の源泉徴収票「扶養控除等申請書」を
提出した者:60万円超
提出しなかった者:30万円超
配当等の支払調書10万円超(中間配当がある場合は5万円超)
生命保険契約等の一時金の支払調書100万円超
損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書100万円超
株式等の譲渡対価の支払調書同一人に対し100万円超
1回30万円超
国外送金等調書1回200万円超

4. 提出先と提出期限
法定調書の提出期限は、原則として、その年の翌年の1月31日までとなっており、所轄税務署に提出することになります。税務署に提出する場合には、法定調書の合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)と各法定調書(提出範囲のもの)を添付して提出します。
受給者(個人・法人)の全員にも、 翌年の1月31日まで帳票が送付されることになっていますので、 個人では確定申告の作成資料等に使用、 又、 法人では受給金額・内容との照合等に使用することができます。
法定調書の提出方法に関して、基準年(前々年)の提出枚数が1,000枚以上であった法定調書の場合には、光ディスク等又はe-Taxによる提出が義務付けられています。

5. 給与支払報告書(給与所得の源泉徴収票)
サラリーマンの方にはお馴染みの給与所得の源泉徴収票は、 その年の給与所得に関する年末調整後(給与収入が2千万円超の方等は年末調整は行われません)の源泉徴収税額や税額計算情報が集約され記載されています帳票です。 税務署には、 一定金額以上の給与収入の「源泉徴収票」が提出され、 又、 同一内容ですが様式名が異なる給与支払報告書が個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます。
「給与支払報告書」(総括表を添える)提出先は、受給者(全員分)のその年の翌年の1月1日現在の住所地の市区町村となり、 提出期限は翌年の1月31日までとなっています(個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます)。
年度の途中で退職した者に対する給与支払報告書は、 支払額が30万円以下の場合には提出を省略することができます。 なお、退職金の「特別徴収票」の提出は、役員のみであり従業員分は提出する必要はありません。 その提出先は、 受給者の退職日現在の住所地の市区町村となっており、 退職後1ケ月以内の提出となります。
市区町村では、 提出された資料から住民税の税額計算をおこない、 翌年6月から徴収を開始し1年間で納付を行ないます。 なお、 主たる給与所得を基因する住民税の納付方法は、原則として、会社等が所得税と同様に給与より天引きして納付するという特別徴収となっています。

2018年1月6日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成30年度(2018年度)税制改正大綱: 消費税

平成29年12月14日に自民、公明党は2018年度(平成30年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その消費税の改正大綱の概要となります。

消費課税:
1.国際観光旅客税の創設

納税義務者国際船舶等(公用船及び公用機を除く船舶又は航空機)による日本から出国する国際観光旅客等(日本から出国する観光客その他の者等で、船舶又は航空機の乗員等は除く)
非課税対象者① 航空機により入国後24時間以内に出国する乗継旅客
② 天候その他の理由により日本に寄港した国際船舶等に乗船等していた者
③ 2歳未満の者
税率出国1回につき1,000円
適用時期平成31年1月7日以後の出国から適用
(但し、平成31年1月7日前の運送契約締結のものを除く)

2.簡易課税制度における農林水産業の事業区分の見直し
平成31年10月1日を含む課税期間から、簡易課税制度における事業区分に変更があります。

事業内容簡易課税制度の軽減税率 
現行改正
食用の農林水産物を生産する事業第3種事業として70%第2種事業として80%

3.券面のない有価証券等の譲渡に係る内外判定
(1)振替機関又はこれに類する外国の機関が取り扱う券面のない有価証券等については、その機関の所在地で判定する。
(2)上記(1)以外の券面のない有価証券等については、当該有価証券等に係る法人の本店、主たる事務所その他これに準ずるものの所在地で判定する。

2018年1月6日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成30年度(2018年度)税制改正大綱: 法人税課税

平成29年12月14日に自民、公明党は2018年度(平成30年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その法人税の改正大綱の概要となります。

法人税課税:
1.所得拡大促進税制の改組(大企業)
既存の所得拡大促進税制の内容が変更となり、大企業において、十分な賃上げや国内設備投資を行った場合には、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができることになります。又、更に人材投資を増加させた企業に対しては、税額控除割合が上乗せとなります。

対象法人・対象期間青色申告の大法人で、平成30年4月1日~平成33年3月31日までの期間に開始する各事業年度
但し、設立初年度は対象外
適用2要件① 賃金要件:(平均給与等支給額 - 比較平均給与等支給額)÷ 比較平均給与等支給額 ≧ 3%
② 投資要件:国内設備投資額 ≧ 減価償却費総額 X 90%
平均給与等支給額及び比較平均与等支給額の範囲当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある継続雇用者等であること(一般被保険者は含まれ、前期に中途入社した者、当期に退職した者、継続雇用制度対象者も含まれません)。
当継続雇用者がいない場合には、①の適用要件を満たさない
国内設備投資額とは国内で当期中取得の減価償却資産で当期末に有する取得価額の合計額をいう
減価償却費総額とは全減価償却資産の損金経理した減価償却費の総額(前期の償却超過額等を除き、特別償却準備金の積立額を含む)をいう
税額控除額イ:適用2要件
給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)x 15% = 税額控除額
ロ:適用3要件
なお、更に、上記適用2要件以外に教育訓練要件を満たせば、
(教育訓練費 - 比較教育訓練費)÷ 比較教育訓練 ≧ 
20%の場合の税額控除額は;
給与等支給額増加額 x 20% = 税額控除額
教育訓練とは国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を取得させ、又は向上させる次の費用(外部支払)をいう。
①法人が教育訓練等を自ら行う場合の外部講師謝金等の費用
②他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合のその委託費
③他の者が行う教育訓練等に参加させる場合のその参加に要する費用
比較教育訓練費とは前期及び前々の教育訓練の年平均額をいう
税額控除額の上限税額控除の上限は、法人税額の20%

2.情報連携投資等の促進税制の創設
「生産性向上の実現のための臨時措置法」の制定を前提に、青色申告法人で「革新的データ活用計画」の認定を受けたものが、同法の施行日から平成33年3月31日までの間に、その革新的データ活用計画に従ってソフトウェアを新設し、又は増設した場合で一定の場合(ソフトウェア・機械装置・器具備品の取得価額の合計額5千万円以上)において、情報連携利活用設備の取得等し事業用に供したときには、その所得価額の30%の特別償却又はその所得価額の5%(賃金要件:平均給与等支給の増加割合が3%未満の場合には3%)の税額控除との選択適用ができます。
なお、税額控除の上限は、法人税額の20%(賃金要件:平均給与等支給の増加割合が3%未満の場合には15%)となります。

3.租税特別措置の適用要件の見直し:大企業
大企業で所得(利益)が増加しているにもかかわらず、賃上げや設備投資を殆ど行っていない場合には、研究開発税制等、生産性の向上に関連する税額控除の適用が出来ません。

対象法人・対象期間大企業で、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの期間に開始する各事業年度に、一定の2要件を満たさない場合には、その事業年度においては、①研究開発税制、②地域未来投資促進税制及び③情報連携投資等の促進税制の税額控除の適用は出来なくなります。但し、その「所得金額」が前期の所得金額以下の一定の事業年度(設立事業年度又は合併等の事業年度を除く)においては、この制限は受けません。
一定の適用2要件②  平均給与等支給額 > 比較平均給与等支給額
①  減価償却費総額 ÷ 国内設備投資額 > 10%
所得金額とは欠損金の繰越控除前の金額とし、必要な調整があります。なお、受取配当等の益金不算入等の調整は行いません。
平均給与等支給額及び比較平均給与等支給額の範囲当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある継続雇用者等であること。
当継続雇用者がいない場合には、①の適用要件を満たすことになります。

4.所得拡大促進税制の改組(中小企業)
既存の所得拡大促進税制の内容が変更となり、中小企業において、十分な賃上げを行った場合には、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができることになります。又、更に人材投資を増加させた企業に対しては、税額控除割合が上乗せとなります。

対象法人・対象期間青色申告の中小企業者等で、平成30年4月1日~平成33年3月31日までの期間に開始する各事業年度
但し、設立初年度は対象外
適用1要件と税額控除額要件:(平均給与等支給額 - 比較平均給与等支給額)÷ 比較平均給与等支給額 ≧ 1.5%
税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)x 15% = 税額控除額
適用2要件と税額控除額要件:
① (平均給与等支給額 - 比較平均給与等支給額)÷ 比較平均給与等支給額 ≧ 2.5%
②  次のいずれかの要件を満たす場合
イ(教育訓練費 - 前期教育訓練費)÷ 前期教育訓練 ≧ 10%の場合、又は
ロ その事業年度終了日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされた場合
税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)x 25% = 税額控除額
平均給与等支給額及び比較平均給与等支給額の範囲当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある継続雇用者等であること。
当継続雇用者がいない場合には、①の適用要件を満たさない
教育訓練とは国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を取得させ、又は向上させる一定の費用(外部支払)をいう
比較教育訓練費とは前期及び前々の教育訓練の年平均額をいう
税額控除額の上限税額控除の上限は、法人税額の20%

5.税務申告書の電子申告による提出義務
資本金1億円超の大法人は、平成32年4月1日以後に開始する事業年度より電子申告による提出が義務化となります。申告書だけでなく、その添付書類も電子申告が義務となります。対象となる大法人が、たとえ書面で申告書を提出したしても、電子申告でない以上は無申告の扱いとなり無申告加算税の対象になるようです。国税及び地方税も同様な取扱いとなります。

6.申告書に代表者及び経理責任者等の自署押印制度の廃止
申告書に代表者及び経理責任者等の自署押印制度がありましたが、廃止となります。国税及び地方税も同様な取扱いとなります。

7.租税特別措置法の延長・廃止
租税特別措置法の延長・廃止がありますが、主なものは次の通りです。

倉庫用建物等の割増償却制度適用期限を2年延長
交際費等の損金不算入制度
接待飲食費に係る損金算入の特例
中小法人に係る損金算入の特例
適用期限を2年延長
中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻還付制度の不適用措置適用期限を2年延長
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例適用期限を2年延長
エネルギー環境負荷低減推進設備等の特別償却又は税額控除制度適用期限の到来時に廃止

8.収益の認識基準
(1)長期割賦販売等における延払基準選択の制度は廃止となります(経過措置あり)。
(2)返品調整引当金制度は廃止となります(経過措置あり)。
(3)その他、収益の認識基準の取扱いが法令上明確化されます。

資産の販売若しくは譲渡原則、その販売若しくは譲渡した資産の「引渡しの時における価額」
役務の提供原則、その提供をした役務につき「通常得べき対価の額」に相当する金額

*貸倒れ又は買戻しの可能性がある場合においても、それらは控除することはできません。
*値引き及び割戻しについて、客観的に見積もられた金額を控除することができます。

9.中小企業の設備投資支援
生産性革命集中投資期間中に限り、地域の中小企業による設備投資の促進に向けて、「生産性向上の実現のための臨時措置法」の規定により市町村が主体的に作成した計画に基づき行われた中小企業の一定の設備投資について、固定資産税を2分1からゼロまで軽減することを可能とする3年間の時限的な特例措置を創設します。

2018年1月6日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

償却資産の申告(固定資産税): 申告書提出期限1月末

1. 固定資産税とは
固定資産税とは、1月1日現在で国内に土地、家屋又は償却資産(事業用資産)の固定資産を所有している者に対し、当該固定資産の評価額を基に算定された税額を資産の所在する市区町村(東京23区内は特例で区でなく都が課税)が課する地方税をいいます。
課税対象のうち、土地と家屋については登記簿等で市区町村では実在を確認できることになりますが、償却資産は毎年1月1日に所有しているものを申告を通じて、固定資産(償却資産)課税台帳に登録されることになります。

2. 固定資産税(土地・家屋)
土地と家屋については、登記事項のため市区町村は、その登記簿等に基づいて固定資産税を計算し、1月1日現在の所有者に納税通知書と同時に課税明細書が送られてきますので、当所有者は申告等の手続の必要はありません。
税率はいずれも1.4%であり、土地は課税標準額に、家屋は課税台帳に登録されている価格に掛けて税額が算定されます。なお、市区町村内に所有する固定資産の課税標準額が、土地30万円、家屋20万円未満の場合には、固定資産税は課税されません。
納期は年4回(6月、9月、12月、2月:市区町村によっては1ヶ月早まるところもあります)です。土地とは、田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野等です。家屋とは、住宅、店舗、工場、倉庫等です。

3. 固定資産税(償却資産)
償却資産とは、土地と家屋以外の事業用に供している減価償却対象資産のものをいいます。1月1日現在で償却資産を事業用に使用している所有者(法人や個人事業者)は、所定の申告書を作成し、1月31日までに償却資産の所在する市区町村ごとに提出しなければなりません。課税対象が償却資産に対する税金ということで償却資産税とも言われています。

(1)償却資産の対象(課税資産)
法人や個人で事業を行っている方で事業のために使用している減価償却の対象資産のうち、その取得価額が一定金額以上のものについては、償却資産となります。具体的には、以下のようなものが償却資産となっています。
① 構築物
舗装路面、庭園、門・塀・緑化施設等の外構工事、看板(広告塔等)、ゴルフ練習場設備等、並びに建物付属設備(受変電設備、予備電源設備、その他建築設備、内装・内部造作等)
② 機械及び装置
各種製造設備等の機器及び装置、クレーン等建設機械、機械式駐車設備等
③ 船舶
ボート、釣船、漁船、遊覧船等
④ 航空機
飛行機、ヘリコプター、グライダー等
⑤ 車両及び運搬具
大型特殊自動車、構内運搬車,貨車、客車等
⑥ 工具、器具及び備品
パソコン、陳列ケース、看板(ネオンサイン)、医療機器、測定工具、金型、理容及び美容機器、ルームエアコン、自動販売機等
以下の資産も償却資産として申告の対象になります。
・ 建設仮勘定で処理されている資産、簿外資産及び償却済資産であっても、1月1日現在で事業用に供することができる場合
・ 遊休又は未稼働の資産であっても、1月1日現在で事業用に供することが出来る状態にある場合
・ 耐用年数が1年未満又は取得価額が10万円未満の資産であっても、有形固定資産として計上し、減価償却している場合
・ 青色申告の中小企業法人・個人事業者については、取得価額が30万円未満の資産を一時に損金算入する処理がなされていても、この特例は国税(法人税・所得税)に関する制度であり、この地方税の固定資産税には適用されません。従って、この資産は固定資産税の申告対象となります。
その他、 所有権が留保されている資産(賃貸資産、 等)

(2)償却資産の非課税資産
償却資産の対象とならないものは、次のとおりです
(1) 土地や建物(いずれも登記対象資産であることから、 所有者を把握できますので敢えて申告の対象にしていません)
(2) 自動車税・軽自動車税の.課税対象(2重課税の排除)
(3) 無形固定資産(特許権、 営業権、 ソフトウェア等)
(4) 繰延資産
(5) 生物(観賞用、 興行用その他これらに準ずる生物は除く)
(6) 金額的に少額資産と言われる下記の資産:
① 取得価額が10万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたもの
② 取得価額が10万円以上20万円未満の資産で、 税務上、 3年間で一括償却しているもの
注1: 租税特別措置法の規定により、 一定の中小企業に対する特例を適用して、 取得価額が30万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたものでも、償却資産の申告対象になっています。
注2: 上記以外の資産で企業や個人で事業を行なっている方が事業のために用いることができる資産、 即ち、 構築物、 機械及び装置、 船舶、 航空機、車両及び運搬具、 工具・器具及び備品で有形減価償却資産が対象となります。 次のものも償却資産の対象となります。
(1) 建設仮勘定で計上されている資産、 簿外資産及び償却済資産であっても事業用に供することができるもの
(2) 遊休又は未稼働のものであっても事業用に供することができるもの
(3) 改良費(資本的支出)

( 3 )家屋に施した建築設備・造作等のうち、 償却資産として取り扱うもの
建築設備における家屋(建物・建物附属設備)と償却資産とを区分して評価することになります。 家屋と設備の所有者が同一の場合に、 償却資産として取り扱うものは次の要件を満たすものです。
① 構造的に家屋と一体的でないもの (野外給水塔、 独立煙突等)
② 家屋から独立した機械及び装置として性格の強いもの (受・変電設備)
③ 特定の生産又は業務に使用されるもの (動力用配線設備等)
④ 単に移動を防止する程度に家屋に取り付けられたもの (ルームエアコン等)
⑤ 顧客の求めに応ずるサ-ビス設備

4 ) 固定資産税額等の算出方法(資産が所在する所轄の市区町村ごとに行ない、 申告書を作成します)
(1) 評価価額の算出方法
① 取得初年度
評価価額 = 取得価額 X 耐用年数に応ずる減価率 X 1/2(50%)
② 取得後2年目以降
評価価額 = 前年度の評価価額 X 耐用年数に応ずる減価率
(2) 固定資産税額の算出方法
① 課税標準額の集計(1,000円未満切捨て)
各資産の評価価額を集計(合算)した額が課税標準額(決定価格となります)です。
課税標準額が150万円未満の場合には、 固定資産税は課税されません。
② 税額の計算
固定資産税額(100円未満切捨て) = 課税標準額(1,000円未満切捨て) X 税率(1.4%)

( 5)償却資産の申告
所定の償却資産申告書、 種類別明細書、 等の書類を資産の所在する市区町村ごとに作成し、 1月末までに提出(申告)することになります。 申告方式には、 以下の2方法がありますが、通常は一般方式を採用しています。
その方式とは、 前年中(申告対象年度)に増加又は減少した資産内容を申告するのみで、 評価額、 税額等は所管事務所で行う方式です。
注1: 前年中に増加又は減少した資産が無い場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「増減なし」等を付記します。
注2: 事業を行なっていますが、 対象償却資産を所有されていない場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「該当資産なし」を付記します。

2017年12月26日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成30年度(2018年度)税制改正大綱: 贈与税・相続税(資産課税)

1.中小企業の事業承継制度の特例の創設
(1)非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例制度の創設
現在、事業承継税制度が存在していますが、同種の特例制度が創設され、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの10年間に贈与等に取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用されることになりました。
① 「特例後継者」が、「特例認定承継会社」の代表権を有していた者から、贈与又は相続若しくは遺贈(贈与等)がその非上場株式を取得した場合には、その全株の課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、その特例後継者の死亡日等まで納税を猶予されます。納税猶予対象の株式制限(現行:発行済議決権株式総数の3分の2)を撤廃し、納税猶予割合が80%から100%に引上げられます。

「特例後継者」とは特例認定承継会社の「特例承認計画」に記載された代表権を有する後継者(同族関係者と合わせてその総議決権数の過半数を有する者に限る)であって、当該同族関係者のうち、議決権を最も多く所有する者(記載された後継者が2名又は3名以上の場合には、議決権数において、それぞれ上位2名又は3名(但し、議決権数の10%以上を所有する者に限る)をいう。
「特例認定承継会社」とは平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に特例承認計画を都道府県に提出した会社で、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第12条第1項の承認を受けたものをいう。
「特例承認計画」とは認定経営革新支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画で、特例認定承継会社の後継者、承継時までの経営見通し等が記載されたものをいう。

② 特例後継者が特例認定承継会社の代表者以外の者から贈与等により取得する非上場株式についても、特例承認期間(5年)内に贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、本特例の対象となります。
③ 現行の事業承継税制における雇用確保要件(5年間平均で8割以上の雇用確保)を満たさない場合であっても、納付猶予期限は到来しません。但し、その場合には、その満たせない理由を記載した書類(認定経営革新支援機関の意見が記載されているものに限る)を都道府県に提出しなければならない。なお、その理由が、経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められない場合には、特例認定承継会社は、認定経営革新支援機関から指導及び助言を受けて、当該書類にその内容を記載しなければならない。
④ 「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」において、特例承継期間経過後に、特例認定承継会社の非上場株式の譲渡をするとき、合併により消滅するとき、解散をするとき等には、納税猶予税額を免除されます。
株価が下がれば差額が免除される減免制度が創設されます。
⑤ 特例後継者が贈与者の推定相続人以外の者(その年1月1日現在で20歳以上であること)であり、かつ。その贈与者が60歳以上である場合には、相続時精算課税を選択できます。
⑥ その他の適用要件等は、現行の事業承継税制と同様です。
(2)現行の事業承継税制の見直し
代表者以外の複数の贈与者からの贈与等を対象とすることになります。

2.一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し
持分のない一般社団法人又は一般財団法人を利用して財産を移転することによる課税逃れの防止規定が定められました。
(1)一般社団法人等に対して贈与等があった場合の贈与税等の課税の見直し
個人から一般社団法人又は一般財団法人(公益社団法人等、非営利型法人その他の一定の法人は除外)に対して財産の贈与等があった場合の贈与税等の課税は、贈与税等の負担が不当に減少することにならないとされる現行の適用要件(役員等に占める親族等の割合が3分の1以下である旨の定款の定めがあること等)のうちいずれかを満たさない場合に贈与税等が課税されます。
この適用は、平成30年4月1日以後の贈与又は遺贈による贈与税又は相続税について行われます。
(2)特定の一般社団法人等に対する相続税の課税
① 「特定一般社団法人等」の役員(理事に限る)である者(相続開始前5年以内のいずれかの時において特定一般社団法人等の役員も含む)が死亡した場合には、当該法人等の純資産額をその死亡時の「同族役員」(被相続人を含む)の数で割った金額を当該被相続人からのみなし遺贈として、当該法人等に相続税が課されます。
② 上記の相続税が課された場合には、贈与等により贈与税が課されていた時にその贈与税額は相続税額から控除されます。

「特定一般社団法人等」とは、いずれかに該当する場合をいう① 相続開始の直前における同族役員数の総役員数の2分の1超の場合
② 相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数の2分の1超の期間が3年以上であった場合
「同族役員」とは一般社団法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他当該被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)
改正の適用時期平成30年4月1日以後の一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用となります。但し、同日前に設立されている一般社団法人等は平成33年4月1日以後の適用とし、平成30年3月31日以前の期間は、②の2分の1超の期間に該当しないものとなっています。

3.特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度の創設
個人が、一定の美術館と特定美術品の長期寄託契約を締結し、文化財保護法に規定する保存活用計画の文化庁長官の認定を受けてその美術(寄託美術館)にその特定美術品を寄託した場合において、その者が死亡し、その特定美術品を相続又は遺贈により取得した者(寄託相続人)がその長期寄託契約及び保存活用計画に基づき寄託を継続したときは、担保の提供を条件に、その寄託相続人が納付すべき相続税額のうち、その特定美術品の課税価格の80%の相続税を猶予することになります。
寄託相続人が死亡した場合は、猶予税額が免除となります。

4.農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し
(1)一定の貸付された生産緑地についても相続税の納税猶予が適用となります。
(2)三大都市圏の特定市以外の地域内の生産緑地について、営農継続要件を終身(現行:20年)とします。
(3)特例農地等の範囲に、特定生産緑地である農地等及び三大都市圏の特定市の田園居住地域内の農地が加えられます(贈与税の納税猶予も同様)。
(4)特定生産緑地の指定又は指定の期限延長されなかった生産緑地については、現在の納税猶予に限り、その猶予を継続とします(贈与税の納税猶予も同様)。

5.小規模宅地等についての相続税の課税価格計算特例の見直し
小規模宅地等の特例に対し、本来の趣旨を逸脱し節税する課税逃れにメスが入りました。
(1)家なき子(持ち家に居住していない者)に係る特定居住用宅地等の特例対象者の範囲からの除外者
改正は、平成30年4月1日以後の相続又は遺贈による相続税につて適用となります。
① 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係がある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
② 相続開始時において居住用家屋を過去に所有していたことがある者
(2)貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業用の宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者の貸付事業用のものは除く)を適用外とする。但し、平成30年3月31日以前から貸付事業用の宅地には適用されません。
(3)介護医療院に入所したことにより被相続人の居住用に供されなくなった家屋の宅地等について、相続の開始直前まで被相続人の居住用とされていたものとして本特例の適用となります。

6.非居住者の国外財産の非課税範囲の見直し
相続開始又は贈与時に国外に住所を有する日本国籍等を有しない者等が、国内に住所を有しなくなった時以前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年超の被相続人又は贈与者(当該期間中も日本国籍を有していない者で、当該相続開始又は贈与時に国内に住所を有していない者に限る)から、相続若しくは遺贈又は贈与により取得する国外財産については、相続税又は贈与税を課さないことになります。但し、当該贈与者が、国内に住所を有しなくなった日から同日以後2年を経過する日までの間に国外財産を贈与した場合において、同日までに再び国内に住所を有することとなったときにおける当該国外財産に対する贈与税は課税されます。
改正は、平成30年4月1日以後からの相続若しくは遺贈又は贈与から適用となります。

7.相続税の申告書の添付書類範囲の見直し
平成30年4月1日以後に提出する申告書の添付書類から、戸籍謄本の原本ではなく複写でもよいことになります。

2017年12月26日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成30年度(2018年度)税制改正大綱: 個人所得税

平成29年12月14日に自民、公明党は2018年度(平成30年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その個人所得税及び贈与税・相続税(資産課税)の改正大綱の概要となります。

個人所得課税
働き方の多様化を踏まえ「働き方改革」を後押し所得再分配から見直しが図られました。
① 給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替
② 給与所得控除の見直し
③ 公的年金等控除の見直し
④ 基礎控除の見直し
適用は、平成32年分以降の所得税からとなっています。

1.給与所得控除の見直し
イ 給与所得控除額を一律10万円引下げ
ロ 給与所得控除額の上限が、給与等の収入金額850万円で195万円に引下げ

給与等の収入金額給与所得控除額 
現行改正
65万円以下収入金額収入金額-10万円
65万円超 ~ 180万円以下収入金額X40% (65万円に満たない場合は65万円)収入金額X 40%-10万円 (55万円に満たない場合は55万円)
180万円超 ~ 360万円以下収入金額X 30%+18万円収入金額X 30%+8万円
360万円超 ~ 660万円以下収入金額X 20%+54万円収入金額X 20%+44万円
660万円超 ~850万円以下収入金額X10%+120万円収入金額X10%+110万円
850万円超 ~ 1,000万円以下195万円(上限)
1,000万円超220万円(上限)

2.特定支出控除(範囲)の見直し
イ 職務に直接必要な旅費等で通常必要と認められるものを追加
ロ 単身赴任者の帰宅旅費について、帰宅回数(月に4往復内)の制限を撤廃

3.公的年金等控除の見直し
イ 控除額を一律10万円引下げ
ロ 公的年金等の収入金額1千万円超における控除額の上限が1,955千円
ハ 公的年金等の雑所得以外の合計所得金額に対する公的年金等控除額の引下げ

公的年金等の雑所得以外の合計所得金額控除額の引下金額
1千万円以下無し
1千万円超~2千万円以下一律、10万円引下げ
2千万円超一律、20万円引下げ

公的年金等控除額の金額:
公的年金等控除額(① + ②)  公的年金等の雑所得以外の合計所得金額 
1千万円以下1千万円超~2千万円以下2千万円超
① 定額控除40万円30万円20万円
② 定率控除
(50万円控除後の公的年金等の収入金額)
360万円以下の部分25%
360万円超~720万円以下の部分15%
720万円超~950万円以下の部分5%
最低保障額65歳未満60万円50万円40万円
65歳以上110万円100万円90万円

4.基礎控除額の見直し
イ 基礎控除額を一律10万円引上げ
ロ 合計所得金額が2,400万円超から逓減

合計所得金額基礎控除額 
現行改正
2,400万円以下38万円48万円
2,400万円超~2,450万円以下38万円32万円
2,450万円超~2,500万円以下38万円16万円
2,500万円超38万円0

5.所得金額調整控除
以下のいずれかの要件に該当する場合(子育て世帯や介護世帯)には、負担増とならないように一定額を給与所得から控除します(控除額の緩和)。
(1)給与等の収入金額が850万円超の居住者の中で、
① 特別障害者である者
② 年齢23歳未満の扶養親族を有する者
③ 特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する者
給与所得から控除額 =(給与等の収入金額(上限1千万円)- 850万円)X 10%
注:年末調整で適用可
(2)給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額とがある居住者で、その合計額が10万円超の場合には、
給与所得から控除額 =(給与所得控除後の給与等の金額(上限10万円)+ 公的年金等に係る雑所得の金額(上限10万円))- 10万円
注:公的年金等に係る確定申告不要制度において、当所得金額調整控除を給与所得の金額から控除するものとする。

6.青色申告特別控除

適用要件現行改正
正規の簿記原則による記帳に伴う青色申告特別控除額65万円55万円
更に、次のいずれかの適用要件を満たす場合の青色申告特別控除額
① 仕訳帳及び総勘定元帳を電子計算機を使用して電磁的記録及び保存していること
② 確定申告書、BS及びPLの提出をe-Taxを使用して行うこと
65万円

7.各種合計所得金額要件の見直し

項目現行改正
同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件38万円以下48万円以下
源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件85万円以下95万円以下
配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件38万円超~123万円以下48万円超~133万円以下とし、配偶者の合計所得金額の区分を、それぞれ10万円引下げる
勤労学生の合計所得金額要件65万円以下75万円以下
家内労働者等の事業所得等の必要経費算入となる最低保障額65万円55万円
非居住者の公的年金等における分離課税対象となる控除額計算の基礎金額
 65歳未満
 65歳以上


6万円
10万円


5万円
9万5千円

8.居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等
適用期限を2年延長する(平成31年12月31日まで)。

9.特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等
適用期限を2年延長する(平成31年12月31日まで)。

10.森林環境税の創設
平成36年度より、森林環境税として年額1,000円を個人住民税と併せて徴収する。

11.電磁的控除証明書による年末調整手続き
年末調整時に提出する一定の証明書類を平成32年10月1日以後に提出するものから電子化データを受け取り、企業に提出できることになります。対象となる証明書類は以下のものです。
① 生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書
② 住宅ローン控除申告書、住宅ローン控除証明書又は借入金の年末残高証明書

12.支払調書等のe-Tax又は光ディスク等による提出義務制度
平成33年1月1日以後に提出すべき支払調書等は、その年の前々年に枚数100枚以上(現行:1,000枚以上)のものからe-Tax又は光ディスク等による提出が必要となります。

2017年12月25日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

広大地評価の改正に伴う平成29年度内の生前贈与の提案

本年の8月ニュースで広大地評価の改正内容を紹介しましたが、来年(平成30年)1月1日より「地積規模の大きな宅地」として新たな評価方法が適用されます。奥行、不整形地等にかかる補正率を考慮せずに、現行と改正後の減率額比較では、地積の多寡にもよりますが最低でも20%以上の差異があり現行の方が有利となります。その為に、平成29年内に行う相続対策の一つに、減額幅が大きく有利である現行の広大地の適用要件を満たす土地が存在していれば、子や孫に相続時精算課税制度を利用して生前贈与しておくことが賢明なことでありますが、メリットとデメリットもありますので総合的に判断すべきかと思います。
1.広大地評価の概要
(1)現行の評価方法
広大地の価額=正面路線価×広大地補正率×地積
「広大地補正率」(下限0.35) =0.6 - 0.05 X 広大地面積 / 1,000㎡
特質:適用要件が厳しく、判定が難しい反面、非常に大きな減額が可能。
(2)改正の評価方法(平成30年1月1日以降より)
地積規模の大きな宅地の価額=正面路線価×補正率(※1)×規模格差補正率(※2)×地積
※1:形状(不整形・奥行)を考慮した補正率:奥行価格補正、側方路線影響加算等の加算、不整形地補正を行います
※2:規模格差補正率(面積を考慮した補正率)=(A×B+C)/A×0.8
A:地積規模の大きな宅地の地積
B及びC:地区区分と地積に応じた数値が規定されています。
特質:適用要件が緩和され、判定が容易になる反面、減額幅が大幅に縮小。
(3)評価減価率の比較
但し、形状(不整形・奥行)を考慮した補正率は1と仮定する。

三大都市圏に所在する
住宅地の場合で地積
現行の減価率改正減価率差異率
500㎡57.5%80.0%22.5%
1,000㎡55.0%78.0%23.0%
2,000㎡50.0%75.0%25.0%
3,000㎡45.0%74.0%29.0%
4,000㎡40.0%72.5%32.5%
5,000㎡35.0%71.6%36.6%

現行は面積が大きくなるほど減価率は大きくなっていましたが、改正後は面積が大きくなっても減価率はあまり大きくなりません。
2.相続時精算課税制度の概要
60歳以上の祖父母や父母が20歳以上の子や孫に財産を生前に贈与する際には、2,500万円(特別控除額)までは贈与税を課さず、それを超える金額部分には一律20%税率で贈与税が課され申告・納税し、後に相続が発生した際にこの贈与分を遺産に含めて相続税を計算し課税するという制度です。直接節税になるものではありませんが、相続時精算課税を利用することにより土地の評価額を固定することにメリットがあります。
3.相続時精算課税制度で広大地を生前贈与する場合のデメリットとメリット
(1)デメリット
① 相続時精算課税制度の選択届、及び贈与税の申告書を翌年の3月15日までに行う必要があります。一度、相続時精算課税制度を選択すると取消ができなく、暦年課税に戻ることができません。選択後の贈与は、相続時精算課税制度下で金額に関係なく贈与税の申告対象になります。
② 登録免許税(登記費用)の負担
登記時に固定資産税評価額に対して登録免許税が課税されますが、相続に比べて、贈与の方が税率が高くなります。
贈与:20/1000、相続:4/1000
③ 不動産取得税の負担
相続では不動産取得税は非課税ですが、贈与では固定資産税評価額に対して3/100(宅地の場合には、その1/2になる減額有り)の課税があります。
④ 広大地評価の否認リスク
広大地評価の適用要件が厳しく判定が難しいところがある為、課税庁が適用を否認する可能があります。
⑤ 相続時において小規模宅地等の特例を受けることはできません。
⑥ 孫が相続時精算課税により贈与を受けていた場合は、原則として、相続税額は、2割加算が適用されます。
(2)メリット
① 平成29年度中に相続時精算課税制度化での贈与し広大地適用となる土地評価額が低くなる場合には、重要なのはこの制度を用いた場合の相続税計算における贈与財産の評価額があくまで贈与時の評価額となるということです。すなわち、減額幅の大きい現行の広大地評価額が将来の相続税計算に用いられることになるため、相対的に有利となるということです。
② 生前贈与となる為に、相続発生時には共有財産として遺産分割の対象から外れることになります。
4.まとめ
広い地積の土地を保有されている場合、現行の広大地評価と改正の地積規模の大きな宅地評価の金額を試算し、その結果によっては相続時精算課税制度を使用して平成29年度中に生前贈与することで大きな節税になる可能があります。しかしながら、その場合のデメリットとなる側面、例えば、暦年課税に戻れないという以後の生前対策の制約、登録免許税の負担、不動産取得税の負担、広大地評価リスク等を総合的に検討評価し決断すべきです。

2017年12月5日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成29年度税制改正による平成30年度以降の源泉徴収事務等の留意点

1.配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し(平成30年分以後(2018年1月から)
現行では、配偶者の合計所得金額が38万円以下(給与収入では103万円以下)の場合に配偶者控除38万円(老人控除対象配偶者48万円)、 並びに配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満の場合に配偶者特別控除が適用となっていましたが、 改正では、 配偶者控除は世帯主の年収に応じて縮小され、配偶者特別控除は配偶者の年収要件を103万円(合計所得金額では38万円)から150万円(合計所得金額では123万円)に引上げ、 かつ配隅者及び世帯主の年収に応じて控除額が以下の様に9段階で縮小となりました。

配偶者控除及び配偶者特別控除/
配偶者の合計所得金額
900万以下900万超950万以下950万超1,000万以下1,000万超控除区分
38万円以下38万円
「同一生計配偶者」
26万円
「同一生計配偶者」
13万円「同一生計配偶者」0円
「同一生計配偶者」
配偶者
控除(1)
「控除対象配偶者」
「源泉控除対象配偶者」
「控除対象配偶者」「控除対象配偶者」
38万円超 85万円以下38万円
「源泉控除対象配偶者」
26万円13万円0円配偶者
特別控除(2)
85万円超 90万円以下36万円 24万円12万円同上同上
90万円超 95万円以下31万円 21万円11万円同上同上
95万円超 100万円以下26万円 18万円9万円同上同上
100万円超 105万円以下21万円 14万円 7万円同上同上
105万円超 110万円以下16万円 11万円6万円同上同上
110万円超115万円以下11万円 8万円4万円同上同上
115万円超120万円以下6万円4万円2万円同上同上
120万円超123万円以下3万円2万円1万円同上同上
123万円超0円0円0円0円

(1)配偶者控除
合計所得金額が38万円以下である「同一生計配偶者」で、かつ、合計所得金額が1千万円以下(給与等の収入金額では1,220万円以下)である世帯主の配偶者となる「控除対象配偶者」のみが、配偶者控除の対象となります。
*「同一生計配偶者」とは、世帯主と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除く)で、合計所得金額が38万円以下である人をいいます。
*「控除対象配偶者」とは、同一生計配偶者の内、合計所得金額が1千万円以下である世帯主の配偶者をいいます。又、控除対象配偶者の内、年齢が70歳以上の人は「老人控除対象配偶者」となり、控除額が上乗せされています。
*「配偶者」とは、戸籍法で定める婚姻届出をされている配偶者とされますので、内縁関係にある者は配偶者に該当しません。なお、外国人においては、その者の本国法に定める要件を満たすことによって婚姻の成立した配偶者であればよいことになります。配偶者の判定時期は、12月31日(あるいは死亡時又は出国時)の現況によります。年の途中で配偶者と死別し、再婚した場合には、どちらか一人を配偶者とすることができます。
*「合計所得金額」とは、純損失の繰越控除及び雑損失の繰越控除を適用しないで計算した総所得金額、退職所得金額、山林所得金額その他租税特別措置法の規定する申告分離課税の対象とされる所得の金額(例えば、上場株式等の配当所得等の金額)の合計額をいいます。
(2)配偶者特別控除
合計所得金額が38万円超123万円以下の世帯主と生計を一にする配偶者で、かつ、合計所得金額が1千万円以下である世帯主の配偶者に対して、配偶者特別控除の対象となります。
(3)障害者控除
対象者一般障害者特別障害者
同一生計配偶者27万円40万円
世帯主(納税者)27万円40万円
同居同一生計配偶者又は同居扶養親族75万円

2.平成30年1月以降の源泉徴収事務
給与等の源泉徴収税額の計算にあたり、扶養親族等の数や給与所得者の扶養控除等(異動)申告書等の申告書に対して、以下の通り変更があります。
(1)配偶者に係る扶養親族等の数のカウント及び給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記載
控除額38万円の配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けることができる世帯主は、合計所得金額が900万円以下の者に限られることになりました。その為に、源泉徴収における配偶者の「扶養親族等の数」のカウントにも変更があります。これまでは、合計所得金額が38万円以下の配偶者であれば、扶養親族等の数に1人としてカウント出来ましたが、平成30年1月より扶養親族等の数に1名としてカウント出来る配偶者は、生活を一にする配偶者の合計所得金額が85万円以下で、かつ、世帯主の合計所得金額が900万円以下である、「源泉対象配偶者」である場合に限定されました。
*「源泉対象配偶者」とは、世帯主と生活を一にする配偶者(青色事業専従者等を除く)の合計所得金額が85万円以下で、かつ、世帯主の合計所得金額が900万円以下である人をいいます。各合計所得金額は、当年間の見積額により判定することになります。
又、同一生計配偶者が障害者に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を更に加算して計算することになります。
これにより、毎年最初に給与の支払日前に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、該当する場合には、源泉対象配偶者の氏名、個人番号、生年月日、当年間の所得の見積額、及び同一生計配偶者が障害者並びに扶養親族の障害者等に該当の有無等を記載し提出することになりました。
(2)年末調整時の申告書
配偶者控除及び配偶者特別控除の適用について、配偶者の合計所得金額に上限額が設けられた為、年末調整に際して、これまで給与所得者の保険料控除申告書と兼用様式となっていた給与所得者の配偶者特別控除申告書が改正され、単独の「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出し正確な控除を確定することになります。つまり、見積額で源泉控除対象配偶者に該当する場合には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、月々の源泉徴収を行い、年度中に変更等があった時には扶養控除等異動申告書を提出することになります。なお、年度中に源泉控除対象配偶者に該当しなくなった場合でも遡及是正を行う必要はありません。最終的には、年末調整時に「給与所得者の配偶者控除等申告書」で精算することになります。

2017年11月6日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

年末調整の概要

  1. 年末調整とは

毎年11月となりますと会社(給与支払者)の給与担当部署は、 「年末調整」の準備・対応という大変忙しい時期を迎え、 勤務者(従業員)はその年末調整の為に必要となる申告書や証明書類等を所定の期限までに会社に提出することが求められます。 会社は、 勤務者から回収した年末調整用の書類の内容を確認しその最終提出情報に基づいて、 暦年の最終給与支払時(通常、 12月給与)に納めるべき年間の所得税及び復興特別所得税(年税額)を算出し、 これまでの給与支給時に源泉徴収された累計税額とを比べその差額となる過不足額を精算(徴収又は還付)します。 その一連の精算手続が年末調整ということになります。 一般的には、 年末調整により還付されるケースが多いかと思います。

 

  1. 平成29年度(2017年度)の所得税に係わる改正

平成29年度の年末調整において、税制改正により影響を受ける主な項目は以下の通りです。

(1) 給与所得控除額の上限額引下げ

給与収入1,000万円超から給与所得控除額は220万円が上限となりました。

(2) マイナンバーの記載不要の特例制度

平成28年1月よりマイナンバー制度が導入されましたが、平成29年分以後の扶養控除等(異動)申告書等へのマイナンバーの記載不要の特例制度が創設されました。 その適用要件として、既にマイナンバーの情報が提供されており、 その情報を記載した帳簿を会社が備えているときには記載不要となりました。

マイナンバーの記載不要の特例制度が適用できない方には、以下の対応が必要となります。

「平成29分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出にあたり、 給与所得者本人、 控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の個人番号を記載することになります。 提出にあたり、 給与支払者が給与所得者から個人番号の提供を受ける場合は、 本人確認として、 提供の番号が正しいことの確認(番号確認)と、 番号提供者が真にその番号の持ち主であることの確認(身元確認)を行う必要があります。 なお、 控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の本人確認は、 給与所得者が行うことになっています。

平成28年1月以降の支払に係る給与所得の源泉徴収票には、 上記の個人番号を記載して税務署等の行政機関に提出することになりますので、 「扶養控除等(異動)申告書」に必要なマイナンバーが記載されていない場合には、 源泉徴収票作成までにマイナンバーの提供を受ける必要があります。 なお、 給与所得者への源泉徴収票には、 個人番号は記載されません。

(3) 平成301月以後の源泉徴収等に関する改正

平成29年度税制改正におきまして、平成30年1月(平成30年度)より配偶者控除及び配偶者特別控除に改正がありました。その為に、源泉徴収事務においてその対応に注意が必要となります。特に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の記載内容や扶養親族等の数の数え方に関する点です。年末調整時にも影響する内容となっています。これらの内容に関しましては、後日紹介いたします。

 

  1. 年末調整の対象者

年末調整の対象者は、 原則として会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人は全員含まれます。 但し、 給与収入額が2千万円を超える人は年末調整を行ないませんので自身の確定申告を通じて年税額の精算をしなければなりません。 通常、 1カ所から給与支給を受けている人は、 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出し年末調整を受けることになります。

次の人は年末調整の対象者にはなりません。

(1) 年中の給与収入額が2千万円を超える人

(2) 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人(年末調整を行うことができませんが、 支払の際の源泉徴収においては乙欄の税額表が適用となります)

(3) 年中に退職(死亡退職した人、 非居住者として国外勤務者となった人、 等を除く)した人

(4) 国内に住所も1年以上の居所を有していない人(非居住者)

(5) 災害免除法の規定により源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人

(6) 日雇労働者等(丙欄の税額表適用者)

 

年末調整の為に提出が求められる申告書とその中に記載される控除項目は以下のとおりです。 当該控除項目以外に所得から控除可能な項目がある場合にはそれらの項目は確定申告で行うことになります。

申告書の名称 控除項目
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 配偶者控除、 扶養控除、 障害者控除、 寡婦(夫)控除、 勤労学生控除、 基礎控除
給与所得者の配偶者特別控除申告書 配偶者特別控除
給与所得者の保険料控除申告書 生命保険料控除(一般生命・介護医療・個人年金)、 地震保険料控除、 社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除(2年目から年末調整の対象で初年度は確定申告が必要)

申告書記載上の主な注意点は以下のものがあります。

() 1231日時点の現況で記載

その年の12月31日現在の現況を見積もりで記載することになります。 見積記載の内容に修正が生じた場合(例えば、 扶養者数の増減、 等)には、 再年末調整(翌年の1月末までは可能)又は確定申告により適正な精算を行うことになります。

 

() 人的控除項目の判定基準に合計所得金額基準

控除項目の中(控除対象配偶者、 控除対象扶養控除、 配偶者特別控除等の人的控除項目)には、 その控除に該当するかの判定基準にその年度の合計所得金額がありますので留意してください。 多い誤りとしては、 配偶者の合計所得金額が控除対象金額を超えているケースです。

配偶者控除の場合の合計所得金額は、 38万円以下(給与収入額では103万円以下)でなければなりません。 「配偶者」とは、 婚姻の届出をしている配偶者をいい、 内縁関係の人は含まれません。

配偶者特別控除の場合の合計所得金額は、 38万円超~76万円以下でなければなりません。

公的年金等の雑所得だけの方で控除対象扶養者(合計所得金額が38万円以下)になる場合には、 公的年金等の収入金額が158万円以下(年齢65歳未満の人は108万円以下)という条件を満たす人です。

 

「所得金額」として、 税法の規定のなかに「合計所得金額」、 「総所得金額」、 「総所得金額等」の3種類が適用判定基準の中に出てきますが、 それぞれ多少の違いがあります。

(1) 所得金額基準は主にどの適用範囲に出てきているか

所得金額 主な適用範囲
合計所得金額 ●扶養控除対象者: 合計所得金額が38万円以下

●配偶者控除対象者: 合計所得金額が38万円以下

●配偶者特別控除対象者: 合計所得金額が38万円超76万円未満、 並びに申告者本人の控除対象者: 合計所得金額が1,000万円以下

●寡婦(寡夫)控除対象者: 合計所得金額が500万円以下

●勤労学生控除対象者: 合計所得金額が65万円以下

●住宅ローン控除対象者: 合計所得金額が3,000万円以下の年

●居住用財産の買換えの譲渡損失の損益通算・繰越控除の適用対象者: 合計所得金額が3,000万円以下の年

●特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除の適用対象者: 合計所得金額が3,000万円以下の年

●市県民税均等割の非課税判定基準・市県民税の扶養親族や各種控除の判定基準

●直系尊属から住宅取得等資金の受贈与者の非課税対象者: 合計所得金額が2,000万円以下

総所得金額
総所得金額等 ●医療費控除限度額: 総所得金額等の5%

●雑損控除限度額: 損失の金額 - 総所得金額等 X 10%

●寄付金控除限度額: 総所得金額等 X 40% - 2,000円

●寡婦となる要件: 扶養親族その他その人と生計を一にするその年分の総所得金額等が38万円以下の子がいる人

●寡夫となる要件: 生計を一にするその年分の総所得金額等が38万円以下の子がいる人

●市県民税所得割の非課税判定基準

(2) ①合計所得金額、 ②総所得金額、 ③総所得金額等の定義

左から右にみて所得の範囲等がそれぞれ異なっていることがお分りになるかと思います。

所得種類 各種繰越控除の適用(①から控除)
利子所得






通算
 





金額

* 純損失や雑損失の繰越控除

* 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除

* 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除

* 上場株式等の譲渡損失の繰越控除

* 特定中小会社発行株式の譲渡損失の繰越控除

* 先物取引の差金等決済損失の繰越控除

 




金額

 





額等

配当所得
不動産所得
事業所得
給与所得
雑所得
一時所得 2分
の1
総合課税の譲渡所得 長期
短期
分離課税(土地・建物等)の譲渡所得(特別控除適用前) 長期
短期
分離課税の株式等の譲渡所得
分離課税の先物取引の雑所得
退職所得
山林所得

配偶者控除、 扶養者控除等の所得基準額は、 「総所得金額」より範囲が広い「合計所得金額」で判定することになり、 分離課税所得の発生年度には注意が必要となります。

 

() 年齢16歳未満の年少扶養親族

控除対象扶養控除に関して、 平成23年度から年齢16歳未満の年少扶養親族に対する扶養控除が所得税では廃止となっています(年齢16歳未満は所得税における扶養控除対象者ではありません)。 しかし、 住民税の方では控除対象となっていますので住民税に関する欄への記載を忘れないでください。 なお、 年齢16歳未満の年少扶養親族であっても、 障害者又は特別障害者に該当する場合には、 障害者控除を受けることはできます。

平成29年度の年末調整時における年齢16歳未満とは、 平成14年1月2日以後に生まれた人が年少者となります。

 

() 扶養親族

所得者と生計を一にする親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)で、 合計所得金額が38万円以下の人を扶養親族(配偶者、青色事業専従者及び白色事業専従者を除く)といいます。 その中には、 以下のように区分されています。

① 控除対象扶養親族

扶養親族のうち、 年齢16歳以上の人をいいます(平成29年度の年末調整では、 平成14年1月1日以前に生まれた人)。

② 特定扶養親族

扶養親族のうち、 年齢19歳以上23歳未満の人をいいます(平成29年度の年末調整では、 平成7年1月2日から平成11年1月1日までの間に生まれた人)。

③ 老人扶養親族

控除対象扶養親族のうち、 年齢70歳以上の人をいいます(平成28年度の年末調整では、 昭和23年1月1日以前に生まれた人)。

④ 同居老親等

老人扶養親族のうち、 所得者又はその配偶者の直系尊属でいずれかとの同居を常況としている人をいいます。

(注): 国外居住親族に係る扶養控除等の適用時に所定の書類添付等の義務化

非居住者である親族(国外居住親族)に係る扶養控除、 配偶者控除、 障害者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける場合には、 「親族関係書類」及び「送金関係書類」の提出又は提示を受ける必要があります。

具体的な手続きとして、 適用を受ける旨を「扶養控除等(異動)申告書」上の「非居住者である親族」欄に○印を付し、 関係書類の提出等を行います。

 

() 生命保険料控除の改組

平成24年(2012年)1月1日からの契約分(新契約)から一般生命保険に含まれていた「介護医療保険」が独立の控除対象となりました。 平成23年までの契約分(旧契約)については、 昨年までと同様に「一般生命保険」と「個人年金保険」の2つに分けられ最高控除額は、 各5万円です。 新契約は、 「一般生命保険」、 「介護医療保険」と「個人年金保険」の3つに分けられ最高控除額は、 各4万円となります。 なお、 旧契約と新契約が混在するケースも発生することもありますが、 各保険料控除の合計適用限度額が12万円とされています。 従いまして、 支払保険契約が、 旧契約か新契約かを保険会社からの証明書で確認しながら申請書に正しく記載する必要があります。

生命保険契約等により支払われた保険料や掛金は所得者本人が支払ったものに限られています。 又、 保険金、 共済金等の給付金の受取人の全てが所得者本人又は所得者の配偶者や親族となっていることが必要です。

翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 本年中に相当する部分のみが支払保険料の金額となります。

 

() 社会保険料控除

所得者本人と生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料を所得者自身が支払った場合(時限措置により納付可能となった過去分の保険料の支払分も含む)には、 所得者本人の社会保険料として控除できます。

年金から特別徴収された介護保険料や後期高齢者医療保険料については、 支払者が年金受給者自身となることから、 その年金の受給者の社会保険料として控除となります。

翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 前納期間が1年以内の場合には、 その全額を本年の社会保険料として控除することができます。 なお、 国民年金保険料については、 2年分を前納できることになりましたので、 全額控除をするか、 又は期間按分して控除(この場合には、 按分の明細書が要作成)する方法のいずれかを選択することが可能です。

 

() 地震保険料控除

所得者本人と生計を一にする親族が所有して常時居住している家屋や生活に通常必要な家財に対して支払った保険料の内、 一定の金額を地震保険料控除として控除できます。

一つの契約等で、 地震等損害に対する損害保険契約と旧長期損害保険契約のいずれの契約区分にも該当する場合には、 選択によりいずれか一方の契約区分のみが地震保険料控除の控除額となります(有利な方を選択する)。

 

() (特定増改築等)住宅借入金等特別控除

現在、 各種の住宅借入金等特別控除がありますが、 控除を受けようとする初年度分については、 確定申告により控除の適用を受ける必要があります。 2年度以降分については、 年末調整の際に下記のものを給与支払者に提出します。

① 税務署長が発行した「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」。 この証明書の上部に「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」がありますので、 控除金額等の記載を行い提出します。

② 金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」

一般の住宅借入金等特別控除は、 居住者が一定の要件を満たす住宅の取得等して、 その人の居住の用に供した場合(その家屋の取得等の日から6ケ月以内に居住用に供したものに限られています)において、 その住宅の取得等のために一定の住宅借入金(償還期間10年以上等)を有するときには、 居住年以後10年間(平成13年7月1日から平成33年12月31日までの間で居住した場合には、 最長10年間。 それ以前のもは最長15年間)の各年のうち、 合計所得金額が3千万円以下である年について、 住宅借入金等の年末残高を基にした所定額を住宅借入金等特別控除としてその年の所得税額から控除できるというものです。

家屋に入居後、 本年12月31日まで継続して居住用に供していることが控除の適用要件ですので、 年度の途中で海外勤務となり出国している場合には、 この制度の適用はありません。

自己の居住用の家屋が2以上有する場合には、 主として居住用とする1の家屋に限られます。

連帯債務(共有)の場合には、 各年12月31日現在のその住宅借入金等の金額に控除を受ける人の負担割合(持分割合)を加味して控除額を計算します。 その割合は、 小数点以下第4位を切上げ、 90%以上である場合は100%とします。

住宅ローンの借換え: この制度の適用者が、 住宅借入金等の借換えをした場合に一定の要件を満たすときには適用が継続します。 住宅ローン金利が低くいものがあるとローンの借換えを行う場合があります。 一般の住宅ローンの場合の借換えでは、 新たな借入金が当初の借入金を消滅させるもので、 適用対象となっていた家屋の取得等のための資金に充てるものであれば住宅ローン控除の継続適用の対象となります。 その場合の新たな借入金の償還期間も10年以上であることが適用要件となっています。 ローン借換後の借入額が借換前の借入残高以下であれば、 年末借入残高が控除対象額となりますが、 逆に借換後の借入額が借換直前の借入残高を上回る場合、 次の按分計算して控除対象額を導く必要があります。

ローン借換後の借入額の年末残高 X (借換直前の借入残高 ÷ 借換直後の借入額) = 控除対象借入額の年末残高

 

() 給与と徴収税額の集計

年中に支払った給与・賞与が対象になりますが、 本年分の給与で未払いであっても、 本年中に支給日が到来して支払の確定したものについても年末調整の対象になります。

 

以上が年末調整の概要となります。

2017年10月31日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

相続税額計算の基礎

相続税の課税方式は、昭和33年より遺産課税方式をベースに遺産取得課税方式という折衷法(法定相続課税方式)となっています。この法定相続課税方式とは、具体的には、被相続人(亡くなられた方)の遺産総額を、法定相続人の人数と法定相続分によって仮定計算による相続税額を算出し、その相続税額を各相続人が実際に取得した遺産価額の割合で按分し、その後に対象となる税額控除を反映して納税額を算出するというものです。相続税額計算ステップは、以下の様になります。

1.各相続人の遺産額を確定・計算(課税価格計算)

2.各相続人の遺産額の合計(課税価格総額の計算)

3.基礎控除額の計算

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数

4.課税遺産総額の計算

課税価格総額 - 基礎控除額 = 課税遺産総額

5.課税遺産総額に対する各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額の計算

6.各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額に対する相続税額の計算

7.各法定相続人分の税額の合計(相続税総額の計算)

8.相続税総額を各相続人の遺産額により按分計算

9.各相続人の納付税額の計算

各相続人の相続税額 + 2割加算 - 税額控除 = 納付税額

以下に、各計算ステップに対して概要を説明します。

1.各相続人の遺産額を確定・計算(課税価格計算)

取得財産の価格 –  債務・儀式費用 = 純資産の価格= 各人の課税価格
純資産の価格 + 相続開始前3年以内の贈与資産 + 相続税精算課税による贈与財産
本来の相続財産 + みなし相続財産 = 取得財産の価格

(1)相続開始前3年以内の贈与財産加算

原則、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得した場合、その財産価額を相続税の課税価格に加算して相続税を計算しなければなりません。なお、3年以内であっても贈与税の配偶者控除(居住用財産)等は、相続財産の加算対象になりません。(2)相続時精算課税制度の適用による贈与財産加算相続時精算課税制度の適用を受けた年分以降の贈与は、贈与税の申告の有無に係わらず全て相続財産の加算対象です。なお、特別控除枠を超えた贈与があり、その贈与税の申告が行われていない場合には、期限後申告を提出し納税します。

2.各相続人の遺産額の合計(課税価格総額の計算)

各人の課税価格を合計します(相続人分の総計)。

3.基礎控除額の計算

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数 = 基礎控除額

法定相続人に含められる養子の数は制限されています。最大2名(実子がいる場合には1名)まで養子として認められていますが、一定の場合(特別養子縁組により養子、配偶者の実子を養子、実子もしくは養子の死亡により代襲相続等)には、養子の人数制限はありません。

4.課税遺産総額の計算

課税価格総額 - 基礎控除額 = 課税遺産総額

5.課税遺産総額に対する各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額の計算

この分割額は、実際に財産を取得したかに関わりなく、法定相続人が法定相続分で分割したものとして仮定したものです。

6.各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額に対する相続税額の計算

各法定相続人に分割した課税遺産総額に対して、下記の税率を適用して税額を算出します。

相続税の速算表 (A×B-C = 税額)

(A)法定相続分の各人の取得金額 (B)税率  (C)控除額 

1000万円以下                          10%         0万円

1000万円超~3000万円以下     15%    50万円

3000万円超~5000万円以下       20%      200万円

5000万円超~1億円以下            30%      700万円

1億円超~2億円以下                 40%      1,700万円

2億円超~3億円以下                 45%      2,700万円

3億円超~6億円以下                 50%      4,200万円

6億円超~                               55%      7,200万円

課税遺産総額×各法定相続人の法定相続割合分×税率-控除額=各法定相続人分の税額

7.各法定相続人割合分の税額の合計(相続税総額の計算)

各法定相続人分の税額の総額を算出します。

8.相続税総額を各相続人の遺産額により按分計算

相続税の総額 × 各人の課税価格/各人の課税価格の合計額 = 各人の相続税額

9.各相続人の納付税額の計算

各相続人の相続税額 + 相続税額2割加算 - 税額控除 = 各人の納付税額

(1)相続税額2割加算される相続人

2割加算される相続人は、配偶者及び1親等の血族(父母又は子とその代襲相続人及び養子も含む。但し、被相続人の養子の孫は除外)以外となっています。従って、 被相続人の孫や兄弟姉妹は2割加算の対象者です。

2割加算の対象者 孫養子(代襲相続に該当の場合を除く)

兄弟姉妹(代襲相続人を含む)

法定相続人以外の受贈者等

2割加算の非対象者 配偶者

一親等の血族(養子が、相続により被相続人である養親の財産を取得

した場合においては、被相続人の一親等の法定血族となる)

代襲相続人である直系卑属(孫養子を含む)

(2)税額控除

各人の税額から次の該当する税額の控除があります。

① 贈与税額控除

相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けたものは、相続財産に加算されていますので、この部分の贈与税相当額は、控除の対象となります。

② 配偶者の税額軽減

配偶者は被相続人の財産形成に大いに寄与していること、及び将来の生活保障面を考慮して相続税の大幅な軽減を特例として認めています。

軽減額 = iとiiのうち少ない金額/課税価格の合計額 × 相続税の総額

ⅰ 課税価格の合計額×配偶者の法定相続分(1.6億円未満は1.6億円)

ⅱ 配偶者の課税価格

上記の算式を分かり易くすると、 配偶者が取得した遺産額のうち次のいずれか大きい方までは相続税がかからないことになっています。

(イ)総課税価格の金額に対する配偶者の法定相続割合相当額(総課税価格の金額の最低50%~最高100%)

(ロ)1億6千万円

総課税価格の金額が5億円でしたら、 相続人が配偶者と子であった場合には、その50%の2.5億円まで、 なお、 相続人が配偶者のみであった場合には、 その全額(100%)の5億円は配偶者には税額の軽減が図られることになります。

ただし、遺産分割が済んでいない場合には、この特例の適用はありません。なお、 相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が完了すれば、 この税額軽減の特例が受けられます。 この配偶者に対する税額軽減措置は、 非課税ではなく二次相続までの課税の繰延の性格を有しています。 配偶者の固有財産を調査して、 二次相続を想定した遺産分割を行うことが肝要です。

法定相続人と法定相続分の組合せ

法定相続人 第1順位 (子) 第2順位(直系尊属) 第3順位(兄弟姉妹)
 ①  ⑤  ②  ⑥  ③  ⑦  ④
配偶者  1/2  ×  2/3  ×  3/4  × 100%
血族相続人:  -  -  -  -  -  -  -
子(又は孫等)  1/2 100%  ×  ×  ×  ×  ×
直系尊属(親等)  -  -  1/3 100%  ×  ×  ×
兄弟姉妹(又はその子)  -  -  -  -  1/4 100%  ×

×:相続人が死亡(又は不存在)している場合

 

③ 未成年者控除

相続人が20歳未満等に適用があります。

控除額 = (20歳-相続開始時の年齢)× 10万円

④ 障害者控除

相続人が年齢85歳未満等で障害者に適用があります。

控除額 = (85歳-相続開始時の年齢)× 10万円(特別障害者は20万円)

⑤ 相次相続控除

前の相続(1次)から10年以内に今回の相続(2次)が起こった場合、税額から一定額が控除されます。

⑥ 外国税額控除

国外にある財産にその所在する国で課税されていた場合、一定額が控除されます。

 

以上の計算結果で税額控除後で納付税額がマイナスになったときはゼロとし、さらに相続時精算課税に係る贈与財産の価額が存在していた場合には、その課税分の贈与税額を控除します。この控除後の金額が納税額となり、マイナスの場合には還付対象となります。

相続税の申告及び納付は、相続開始日(死亡日)から10ヶ月以内に行わなければなりません。なお、申告期限の延長が認められませんので、遺産分割協議が成立していない場合には、民法での法定相続分に従って仮定計算を行い、申告することになります。このような場合には、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減の特例等の適用は認められません。この申告後に遺産分割が確定し、申告との差額が発生した場合には、修正申告(増税のケース)、又は更正の請求(還付のケース)を行うことになります。

2017年9月29日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant