平成30年度(2018年度)税制改正大綱: 法人税課税

平成29年12月14日に自民、公明党は2018年度(平成30年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その法人税の改正大綱の概要となります。

法人税課税:
1.所得拡大促進税制の改組(大企業)
既存の所得拡大促進税制の内容が変更となり、大企業において、十分な賃上げや国内設備投資を行った場合には、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができることになります。又、更に人材投資を増加させた企業に対しては、税額控除割合が上乗せとなります。

対象法人・対象期間青色申告の大法人で、平成30年4月1日~平成33年3月31日までの期間に開始する各事業年度
但し、設立初年度は対象外
適用2要件① 賃金要件:(平均給与等支給額 - 比較平均給与等支給額)÷ 比較平均給与等支給額 ≧ 3%
② 投資要件:国内設備投資額 ≧ 減価償却費総額 X 90%
平均給与等支給額及び比較平均与等支給額の範囲当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある継続雇用者等であること(一般被保険者は含まれ、前期に中途入社した者、当期に退職した者、継続雇用制度対象者も含まれません)。
当継続雇用者がいない場合には、①の適用要件を満たさない
国内設備投資額とは国内で当期中取得の減価償却資産で当期末に有する取得価額の合計額をいう
減価償却費総額とは全減価償却資産の損金経理した減価償却費の総額(前期の償却超過額等を除き、特別償却準備金の積立額を含む)をいう
税額控除額イ:適用2要件
給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)x 15% = 税額控除額
ロ:適用3要件
なお、更に、上記適用2要件以外に教育訓練要件を満たせば、
(教育訓練費 - 比較教育訓練費)÷ 比較教育訓練 ≧ 
20%の場合の税額控除額は;
給与等支給額増加額 x 20% = 税額控除額
教育訓練とは国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を取得させ、又は向上させる次の費用(外部支払)をいう。
①法人が教育訓練等を自ら行う場合の外部講師謝金等の費用
②他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合のその委託費
③他の者が行う教育訓練等に参加させる場合のその参加に要する費用
比較教育訓練費とは前期及び前々の教育訓練の年平均額をいう
税額控除額の上限税額控除の上限は、法人税額の20%

2.情報連携投資等の促進税制の創設
「生産性向上の実現のための臨時措置法」の制定を前提に、青色申告法人で「革新的データ活用計画」の認定を受けたものが、同法の施行日から平成33年3月31日までの間に、その革新的データ活用計画に従ってソフトウェアを新設し、又は増設した場合で一定の場合(ソフトウェア・機械装置・器具備品の取得価額の合計額5千万円以上)において、情報連携利活用設備の取得等し事業用に供したときには、その所得価額の30%の特別償却又はその所得価額の5%(賃金要件:平均給与等支給の増加割合が3%未満の場合には3%)の税額控除との選択適用ができます。
なお、税額控除の上限は、法人税額の20%(賃金要件:平均給与等支給の増加割合が3%未満の場合には15%)となります。

3.租税特別措置の適用要件の見直し:大企業
大企業で所得(利益)が増加しているにもかかわらず、賃上げや設備投資を殆ど行っていない場合には、研究開発税制等、生産性の向上に関連する税額控除の適用が出来ません。

対象法人・対象期間大企業で、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの期間に開始する各事業年度に、一定の2要件を満たさない場合には、その事業年度においては、①研究開発税制、②地域未来投資促進税制及び③情報連携投資等の促進税制の税額控除の適用は出来なくなります。但し、その「所得金額」が前期の所得金額以下の一定の事業年度(設立事業年度又は合併等の事業年度を除く)においては、この制限は受けません。
一定の適用2要件②  平均給与等支給額 > 比較平均給与等支給額
①  減価償却費総額 ÷ 国内設備投資額 > 10%
所得金額とは欠損金の繰越控除前の金額とし、必要な調整があります。なお、受取配当等の益金不算入等の調整は行いません。
平均給与等支給額及び比較平均給与等支給額の範囲当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある継続雇用者等であること。
当継続雇用者がいない場合には、①の適用要件を満たすことになります。

4.所得拡大促進税制の改組(中小企業)
既存の所得拡大促進税制の内容が変更となり、中小企業において、十分な賃上げを行った場合には、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができることになります。又、更に人材投資を増加させた企業に対しては、税額控除割合が上乗せとなります。

対象法人・対象期間青色申告の中小企業者等で、平成30年4月1日~平成33年3月31日までの期間に開始する各事業年度
但し、設立初年度は対象外
適用1要件と税額控除額要件:(平均給与等支給額 - 比較平均給与等支給額)÷ 比較平均給与等支給額 ≧ 1.5%
税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)x 15% = 税額控除額
適用2要件と税額控除額要件:
① (平均給与等支給額 - 比較平均給与等支給額)÷ 比較平均給与等支給額 ≧ 2.5%
②  次のいずれかの要件を満たす場合
イ(教育訓練費 - 前期教育訓練費)÷ 前期教育訓練 ≧ 10%の場合、又は
ロ その事業年度終了日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされた場合
税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)x 25% = 税額控除額
平均給与等支給額及び比較平均給与等支給額の範囲当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある継続雇用者等であること。
当継続雇用者がいない場合には、①の適用要件を満たさない
教育訓練とは国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を取得させ、又は向上させる一定の費用(外部支払)をいう
比較教育訓練費とは前期及び前々の教育訓練の年平均額をいう
税額控除額の上限税額控除の上限は、法人税額の20%

5.税務申告書の電子申告による提出義務
資本金1億円超の大法人は、平成32年4月1日以後に開始する事業年度より電子申告による提出が義務化となります。申告書だけでなく、その添付書類も電子申告が義務となります。対象となる大法人が、たとえ書面で申告書を提出したしても、電子申告でない以上は無申告の扱いとなり無申告加算税の対象になるようです。国税及び地方税も同様な取扱いとなります。

6.申告書に代表者及び経理責任者等の自署押印制度の廃止
申告書に代表者及び経理責任者等の自署押印制度がありましたが、廃止となります。国税及び地方税も同様な取扱いとなります。

7.租税特別措置法の延長・廃止
租税特別措置法の延長・廃止がありますが、主なものは次の通りです。

倉庫用建物等の割増償却制度適用期限を2年延長
交際費等の損金不算入制度
接待飲食費に係る損金算入の特例
中小法人に係る損金算入の特例
適用期限を2年延長
中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻還付制度の不適用措置適用期限を2年延長
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例適用期限を2年延長
エネルギー環境負荷低減推進設備等の特別償却又は税額控除制度適用期限の到来時に廃止

8.収益の認識基準
(1)長期割賦販売等における延払基準選択の制度は廃止となります(経過措置あり)。
(2)返品調整引当金制度は廃止となります(経過措置あり)。
(3)その他、収益の認識基準の取扱いが法令上明確化されます。

資産の販売若しくは譲渡原則、その販売若しくは譲渡した資産の「引渡しの時における価額」
役務の提供原則、その提供をした役務につき「通常得べき対価の額」に相当する金額

*貸倒れ又は買戻しの可能性がある場合においても、それらは控除することはできません。
*値引き及び割戻しについて、客観的に見積もられた金額を控除することができます。

9.中小企業の設備投資支援
生産性革命集中投資期間中に限り、地域の中小企業による設備投資の促進に向けて、「生産性向上の実現のための臨時措置法」の規定により市町村が主体的に作成した計画に基づき行われた中小企業の一定の設備投資について、固定資産税を2分1からゼロまで軽減することを可能とする3年間の時限的な特例措置を創設します。

2018年1月6日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant