相続税の納税義務者の範囲

相続税の納税義務者は、 無制限納税義務者(居住無制限納税義務者及び非居住無制限納税義務者)及び制限納税義務者に区分され、以下の様に課税されます。
1. 居住無制限納税義務者:国内・国外財産ともに課税
2. 非居住無制限納税義務者:国外財産にも課税(国内・国外財産ともに課税)
3. 制限納税義務者:国内財産のみに課税

課税範囲は、被相続人と相続人の双方の状況により、以下の様になっています。

相続人・受贈者
国内に住所有り
相続人・受贈者
国内に住所無し
日本国籍有り日本国籍無し
一時的住所の
外国人(注1)
10年以内に国内
に住所有り
10年を超えて
国内に住所無し
被相続人・贈与者
国内に住所有り
一時的住所の
外国人(注1)
国内財産国内財産国内財産
被相続人・贈与者
国内に住所無し
10年以内に国内
に住所有り
日本国籍のない
外国人(注2)
国内財産国内財産国内財産
10年を超えて
国内に住所無し
国内財産国内財産国内財産

水色の部分に該当すれば、国内財産のみに課税となります。その他は、国内・国外財産ともに課税となります。

注1(一時的住所の外国人):出入国管理及び難民認定法別表第1の在留資格の者で、過去15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の者
注2(日本国籍のない外国人):相続開始時に、国内に住所を有しなくなった被相続人で、相続開始前10年以内のいずれかの時に住所を有していたことがあるが日本国籍を有していなかった者、又は、相続開始前10年以内のいずれかの時に住所を有していない者である外国人
*「一時居住者」とは、
 相続開始の時において在留資格を有する者であって当該相続の開始前15年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいう。
*「一時居住被相続人」とは、
 相続開始の時において在留資格を有し、かつ、この法律の施行地に住所を有していた当該相続に係る被相続人であって当該相続の開始前15年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいう。
*「非居住被相続人」とは、
 相続開始時に、国内に住所を有しなくなった被相続人で、相続開始前10年以内のいずれかの時に住所を有していたことがあるが日本国籍を有していなかった者、又は、相続開始前10年以内のいずれかの時に住所を有していない者である外国人をいう。

国内住所の有無の判定基準について:
1.「住所とは各人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定する」と定められています。
2.「生活の本拠とは、その者の生活に最も関係の深い一般生活、全生活の中心を指すものであるところ」と判示しています。又、「一定の場所がその者の住所とする意思だけでは足りず、客観的に生活の本拠たる実態を必要とするものと解される」と判示しています。
3.「住所」の推定規定
国内に住所を有するものと推定する場合や、逆に国内に住所を有しない者と推定する場合があります。
イ(国内に住所を有する者と推定する場合)
所得税法施行令:
第14条 国内に居住することとなった個人が次の各号のいずれかに該当する場合には、その者は、国内に住所を有する者と推定する。
一 その者が国内において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。
二 その者が日本の国籍を有し、かつ、その者が国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有することその他国内におけるその者の職業及び資産の有無等の状況に照らし、その者が国内において継続して1年以上居住するものと推測するに足りる事実があること。
2 前項の規定により国内に住所を有する者と推定される個人と生計を一にする配偶者その他その者の扶養する親族が国内に居住する場合には、これらの者も国内に住所を有する者と推定する。
ロ(国内に住所を有しない者と推定する場合)
第15条 国外に居住することとなった個人が次の各号のいずれかに該当する場合には、その者は、国内に住所を有しない者と推定する。
一 その者が国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。
二 その者が外国の国籍を有し又は外国の法令によりその外国に永住する許可を受けており、かつ、その者が国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有しないことその他国内におけるその者の職業及び資産の有無等の状況に照らし、その者が再び国内に帰り、主として国内に居住するものと推測するに足りる事実がないこと。
2 前項の規定により国内に住所を有しない者と推定される個人と生計を一にする配偶者その他その者の扶養する親族が国外に居住する場合には、これらの者も国内に住所を有しない者と推定する。

●原則、被相続人の本籍がある国の法律に基づいて相続手続きを行いますが、国によって多少異なる取扱いもあります。相続税は遺産を受取る相続人に課税されるものであり、被相続人が海外に住んでいても、又外国籍であっても、相続人に日本の相続税が課税される場合があります。
●住所・国籍の有無、 居住期間の計算は、 財産取得した時を基準とします。
●日本国籍と外国国籍とを併有する重国籍者は、 日本国籍を有する個人扱いになります。 但し、 自己の意思(志望)によって外国籍を取得している者である限り、 その取得時点で国籍法第11条の規定によって日本国籍を喪失したことになります。
●制限納税義務者の納税義務の範囲に関して、 日本国内にある財産に限定されることから債務控除の範囲も日本国内にある財産に関連する債務に限定されていますが、 その債務の範囲は5項目の限定列挙となりかなり限定的であることに留意すべきです(相法第13条②)。
●特定納税義務者とは、 被相続人から相続又は遺贈により財産を取得しなかった者のうち、 特定贈与者である被相続人より相続時精算課税の適用を受けていた財産に対して相続税の納税義務(精算の義務)を負うことになる者です。
●国外転出時課税の適用がある場合の納税猶予期限を10年に延長している個人が死亡した場合(被相続人)又は財産の贈与をした場合(贈与者)は、非居住者であっても、相続の開始前又は贈与前の5年以内に相続税法の施行地に住所を有していたものとみなされます。

2018年9月20日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

不動産取引(取得・購入・売却、他)における諸税金知識

土地や建物の不動産を購入、売却等する機会が多くないことから、その事案が起きた時に税金を含む諸費用に関して不安に思うことがあります。以下に、主に税金を中心とした諸費用を検討してみたいと思います。

1.不動産取得
不動産取得には、大別すると購入、贈与、相続の3種類がありますが、通常、負担しなければならない諸費用には、次のものが考えられます。

(1) 仲介(媒介)手数料
不動産業者に仲介して購入する場合には、仲介(媒介)手数料がかかってきます。その手数料(消費税を除く)は、通常、下表の合計額の範囲となるかと思います(法定上の上限はありますが、金額は任意に設定できます)。

売買金額

仲介(媒介)手数料
200万円以下5%
200万円超~400万円以下4%
400万円超3%

(2) 印紙税
不動産売買契約書の売買金額に基づいて印紙を貼付しなければなりません。印紙税法により、下表の印紙代の負担が必要となりますが、平成32年3月31日までは軽減特例の適用となっています。

売買金額印紙税
1万円未満
非課税
1万円超~50万円以下
200円
500万円超~100万円以下
500円
100万円超~500万円以下
1,000円
500万円超~1,000万円以下

5,000円
1,000万円超~5,000万円以下
10,000円
5,000円超~1億円万円以下30,000円
1億円超~5億円万円以下

60,000円
5億円超~10億円万円以下
160,000円
10億円超~50億円万円以下320,000円
50億円超480,000円

(3) 登録免許税
不動産を取得すると所有権を登記所に保存登記や移転登記をすることになりますが、移転登記の場合には、下表の登録免許税を納める必要があります。

 登記内容登録免許税
土地売買固定資産税評価額の2%(本則)
固定資産税評価額の1.5%(平成31年3月31日までの登記には軽減特例の適用)
相続、共有物の分割、法人の合併固定資産税評価額の0.4%
贈与、交換、収用、競売、等固定資産税評価額の2%
建物所有権保存固定資産税評価額の0.4%(本則)
固定資産税評価額の0.15%(平成32年3月31日までの新築の居住用家屋を自己の居住用に供した場合の軽減特例)
所有権移転
売買・競売固定資産税評価額の2%(本則)
固定資産税評価額の0.3%(平成32年3月31日までに取得した居住用家屋を自己の居住用に供した場合の軽減特例)
相続・法人の合併固定資産税評価額の0.4%
贈与、交換、収用、等固定資産税評価額の2%

なお、これらの登記を司法書士等に依頼するときには、報酬料が必要となります(固定資産税評価額が1千万円以下の場合には、5万円前後の報酬料がかかるとみておいたほうがよいでしょう)。

(4) 不動産取得税
不動産を売買、交換、贈与、寄付、建築等により取得すると不動産取得税がかかってきます。なお、相続の場合には、不動産取得税は非課税となっています。
この不動産取得税は、取得後6ヶ月~1年半後に県税事務所から納税通知書が送付されてきます。

不動産不動産取得税
相続以外(所定の各種軽減措置が有り)相続
土地固定資産税評価額の4%(本則)
固定資産税評価額の3%(平成33年3月31日までに住宅及びその敷地として土地を取得した場合の軽減)。
なお、宅地及び宅地並みに評価されている土地を平成33年3月31日までに取得した場合には、課税標準が

固定資産税評価額の50%となる特例(固定資産税評価額×50%×3%)があります。
非課税
建物固定資産税評価額の4%(本則)
固定資産税評価額の3%(平成33年3月31日までに住宅として取得した場合の軽減)
非課税

なお、別途、税額軽減として①新築住宅及びその敷地を取得した場合、②中古住宅及びその敷地を取得した場合、③認定長期優良住宅を取得した場合には適用があります。

(5) 抵当権設定登記
不動産購入時に借入ローンを組んでいる場合には、ローンを担保する抵当権の設定登記する手続きが取られています。

2.不動産売却
不動産の取得時には、上述しましたように様々は経費がかかりますが、不動産売却時にもやはり諸経費がかかります。次のものが考えられます。

(1) 仲介(媒介)手数料
不動産業者に仲介して売却する場合には、仲介(媒介)手数料がかかってきます。その手数料(消費税を除く)は、上述しました不動産の取得時と同様となります。

(2) 印紙税
不動産売買契約書の売買金額に基づいて印紙を貼付しなければなりません。印紙税法により、上述しました不動産の取得時と同様に印紙代の負担が必要となりますが、平成32年3月31日までは軽減特例の適用となっています。

(3) 登録免許税
不動産売却時には、取得者への名義変更(所有権移転登記)に必要となる登録免許税が発生しますが、通常は購入者(取得者)側で所有権移転登記を行いますので、売却者側では登録免許税を負担することはありません。

(4) 抵当権抹消登記
不動産売却時にローン残高があり抵当権設定登記されている場合には、売却代金等でローン完済時に、その抵当権の抹消登記が必要となりますので、登録免許税が必要となります(1物件あたり1千円)。

(5) 譲渡所得税・住民税
不動産売却時に利益が出た場合には、その利益に対する課税譲渡所得に対して所得税(国税)と住民税(地方税)が課せられます。
譲渡価格(売却代金)-(取得費+売却諸経費)- 特別控除 = 課税譲渡所得

所有期間 所得税(国税)住民税(地方税)合計
短期:5年以下30.63%9%39.63%
長期:5年超15.315%5%20.315%
特例軽減税率
土地・建物の所有期間10年超の
居住用不動産の売却の場合:
課税譲渡所得6千万円以下10.21%4%14.21%
6千万円超:
①6千万円以下の部分10.21%4%14.21%
②6千万円超の部分15.315%5%20.315%

なお、居住用不動産(マイホーム)を売却した場合には、課税譲渡所得から3千万円の特別控除があります。
以上になります。

2018年8月16日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

都会の農地 宅地化抑制 貸しても税優遇・面積要件緩和

国や地方自治体は都市部に集まる農地「生産緑地」の宅地への転用が急増しないように対策を急ぐ。2020年に約8割の生産緑地の税優遇が期限切れとなる「22年問題」を放置すれば、宅地供給が急激に膨らみ、住宅市場が混乱しかねないためだ。国は地主に第三者に生産緑地を貸しても税優遇を受けられる法律を9月にも施行。指定基準を緩める自治体も相次ぐ。

2018年8月15日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

軽減税率、悩むスーパー 店内飲食・持ち帰りで違い

2019年10月に予定される消費税率引き上げまで1年余りとなり、小売業界が軽減税率制度への準備を本格化してきた。食料品を持ち帰るか店内で食べるかで顧客が払う消費税率が異なるので、スーパーのレジ精算などに混乱が懸念されます。
軽減税率制度は消費税率が10%になっても食品や新聞などの税率を8%に据え置く低所得者対策だ。食品は8%の軽減税率が適用とされるが、外食は対象外で税率は10%。スーパーで買った食品でも、店内のイートインコーナーなどで食べる場合には外食扱いとなり10%になる。この税率適用は、レジでの顧客の申告に基づくことになります。

2018年8月5日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

相続分野で民法改正

民法の相続分野の規定を約40年ぶりに見直す民法改正が7月6日に成立しました。法改正のポイントは3点で、2020年7月までに順次施行されることになりました。
1.配偶者居住権の創設
残された配偶者の保護を手厚くし、遺産分割の協議が調うなどすれば、残された配偶者は自身が亡くなるまで今の住居に住み続けられる「配偶者居住権」を得られ、住居の所有権を取得する必要がなくなります。それにより、遺産分割では預貯金など他の遺産の取り分を増やし、老後の生活資金にあてることも可能になる。居住権のみなら、所有権を取得する場合よりも評価額が低くなるためだ。又、遺産分割が終わるまで、それまでの住居に無償で住める「短期居住権」も新たに設ける。新たな制度では婚姻期間が20年以上で、配偶者に住居を生前贈与するか遺言で贈与の意思を示せば、その住居は遺産分割の対象にしないという優遇措置が設けられます。
2.自筆証書遺言の利便性と信頼性の向上
これまで生前に被相続人が書く自筆証書遺言は、内容に問題があっても死後まで分からず、信頼性に欠ける等から相続を巡るトラブルも少なくありませんでした。そこで、自筆証書遺言は、今後、公的機関である全国の法務局で形式に関し事前チェック後に保管できるようにして、相続人が遺言があるかを簡単に調べられるようになります。法務局に預けた場合は、家庭裁判所で相続人が立ち会って内容確認する「検認」の手続きを不要とし、又、財産目録はこれまで自筆に限定していたが、パソコンでの作成可能となります。この法務局に預ける場合の手数料も数千円程度に安価を想定しているようです。
なお、遺言者の死亡届が提出された場合、法務局から相続人に通知できるようなシステムも検討されます。
3.相続人以外の人からの介護・看護への寄与分の請求権
被相続人の親族で相続の対象にならない人でも、介護や看病で被相続人の財産の維持などに貢献した場合は、相続人に金銭を請求できる仕組みも取り入れられます。対象は、息子の妻が義父母を介護していたケース等を想定したものです。
その他として、遺産分割の協議中でも、相続した預貯金を葬儀費用や生活費用に充てるため、仮払いを認める制度も設けられます。

2018年7月6日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

直近尊属から住宅取得等資金贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置

特定受贈者(贈与年の1月1日現在20歳以上で合計所得金額2,000万円以下の者)が、 その直系尊属(親、祖父母等)から受ける居住用家屋の新築・取得・増改築等用に住宅取得等資金の贈与については、非課税限度額が定められていますが、消費税率の8%から10%への引上日が平成31年10月1日に予定されています。適用消費税率と住宅取得等の契約日の条件により、その非課税限度額が以下のようになります。特に、契約締結日には留意する必要があります。
⓵住宅用家屋の取得価額に消費税率10%の消費税等が含まれている場合 (消費税率10%で契約した者)

住宅用家屋の取得価額に消費税率良質な住宅用家屋(省エネ等住宅)左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
平成31年4月~平成32年3月3,000万円2,500万円
平成32年4月~平成33年3月1,500万円1,000万円
平成33年4月~平成33年12月1,200万円700万円
なお、 東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、 以下のようになります。
平成31年4月~平成32年3月
平成32年4月~平成33年12月

3,000万円
1,500万円
2,5000万円
1,000万円

⓶上記(1)以外の場合 (消費税率8%で契約した者や個人間売買で中古住宅売買契約した者)

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間良質な住宅用家屋(省エネ等住宅)左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
平成28年1月~ 平成32年3月1,200万円700万円
平成32年4月~平成33年3月1,000万円500万円
平成33年4月~平成33年12月800万円300万円
なお、 東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、 以下のようになります。
平成26年度申告対象分
~ 平成33年12月
1,500万円1,000万円

上記の「良質な住宅用家屋」とは、 省エネルギー対策等級4(平成27年4月以降は断熱等性能等級4)、 又は耐震等級2以上若しくは免震建築物に該当する住宅用家屋のことであり、 所定の証明書が必要となります。
① 「良質な住宅用家屋」の範囲に、 一次エネルギー消費量等級4以上に該当する住宅用家屋及び高齢者等配慮対策等級3以上に該当する住宅用家屋も対象。
② 適用対象となる増改築の範囲に、 一定の省エネ改修工事、 バリアフリー改修工事及び給排水菅又は雨水の侵入を防止する部分に係る工事も対象。

以下の適用要件があります。
① 住宅取得等資金であること
住宅取得等資金とは、住宅の新築、取得または増改築等に充てるための金銭をいいます。尚、住宅の新築に先行して、その敷地用の土地等を取得する場合における取得資金もこの制度の適用対象となっています。金銭の贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、原則として居住することが必要となっていますが、その後に遅滞なく(同年の12月31日までに居住できなかったときには、この非課税制度は認められなく、同日から2ヶ月以内に修正申告をしなければなりません)、居住することが確実に見込まれる場合であれば特定受贈者は所定の計算明細書等を添付して贈与税の申告期限内に提出すれば、この非課税制度の適用を受けることができます。
② 受贈者の非課税の適用要件:
(イ) 贈与時に日本国内に住所がある、 或いは日本国内に住所が無いものの日本国籍を有し、 かつ、 受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所があったことがある。
(ロ) 贈与時に贈与者の直系卑属(子や孫等)である。
(ハ) 贈与時の1月1日現在で20歳以上である。
(ニ) 贈与年の合計所得額が2,000万円以下である。
③ 住宅の新築・取得の適用要件:
日本国内にある家屋で、 受贈者が主として居住用に使用するものであり、 次の要件を満たす必要があります(土地だけの取得では不可)。
(イ) 適用対象となる住宅用家屋の床面積(区分所有の場合には、 その区分所有部分)は、 240㎡以下(東日本大震災の被災者が受贈者の場合には、 240㎡以下の床面積制限無し)。
(ロ) 中古家屋の場合には、 耐火建築物であれば築25年以内 、耐火建築物以外では築20年以内のものであること。 但し、 地震に対する安全基準に適合するものには、 この建築年数制限は無し。
(ハ) 床面積の2分の1以上が専ら居住用に使用されていること。
④ 住宅の増改築等の適用要件:
日本国内にある家屋で、 次の一定の増改築であることが必要です。
(イ) 工事代金が100万円以上で、 かつ、 居住用の工事費が全体の2分の1以上であること。
(ロ) 増改築等の家屋の床面積の2分の1以上が専ら居住用に使用されていること。
(ハ) 増改築等の家屋の床面積が50㎡以上(区分所有の場合には、 その区分所有部分)。
⑤ 相続開始前3年以内贈与の相続財産への加算措置の対象外
⑤ その他の適用要件:
(イ) 受贈者の一定の親族等の特別な関係者との請負契約等により新築若しくは増改築等をする場合、 又はこれらの特別な関係者から取得する場合には、 この特例の適用を受けることはできません。 
(ロ) 贈与税の申告期限内に申告する必要があります。

この非課税適用において、居住時期以外にも次の点に関し、留意すべきです。
 住宅新築(一戸建て)の時期
新築は、資金贈与日の翌年の3月15日までに行わなければなりません。同日までに屋根(その骨組を含む)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以降の状態が必要となります。
 住宅取得(マンション)の時期
売主から住宅の引渡し(通常は鍵の引渡し、 又は少なくとも残代金の支払完了、等)を翌年の3月15日までに受ける必要があります。従って、売買契約の締結等の状態では不十分です。
 住宅の新築、取得または増改築等の取引の相手先
受贈者の一定の親族等特別な関係者との契約に基づくものは適用対象外となります。
 居住用の不動産の贈与
父から居住用の不動産の贈与を受けても、 この非課税制度は家屋に関し金銭による贈与に限定されていますので適用対象外です。

尚、住宅取得等資金の非課税は、下記の特例と併用が可能です(優良住宅のケース)。
① 歴年課税の基礎控除
平成30年度:110万円(基礎)+ 1,200万円 = 1,310万円の非課税
② 相続時精算課税の特別控除
平成30年度:2,500万円(特別)+1,200万円 = 3,700万円の非課税

2018年6月30日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

給与等支給拡大促進税制の改組(所得拡大促進税制)

平成30年度税制改正により、平成30年4月1日以降の開始事業年度より所得拡大促進税制の適用要件が大きく変更になりましたので、その現行制度(平成30年3月31日までに開始する事業年度)との相違を以下に記します。

1. 平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度
青色申告法人が、平成30年3月31日までの間に開始する事業年度において国内雇用者に対する給与等支給額に関して、 その法人の雇用者給与等支給増加額(雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額)が基準雇用者給与等支給額に対し5%以上(中小法人等は3%以上)であり、 かつ、 他の2要件等を満たす場合には、 その雇用者給与等支給増加額の10%(条件により10%以上)の税額控除(但し、 大法人は法人税額の10%(中小法人等は20%)が控除限度)ができることになっています。

適用期間平成29年4月1日~平成30年3月31日の間に開始する事業年度
適用要件次の3要件を全て満たす場合:
(1) 当期の雇用者給与等支給増加額 (雇用者給与等支給額 - 基準雇用者給与等支給額) ÷ 基準雇用者給与等支給額 ≧ 5%
(2) 当期の雇用者給与等支給額 ≧ 前期の雇用者給与等支給額
(3)-1中小企業の場合
当期の継続雇用者平均給与等支給額 > 前期の継続雇用者平均給与等支給額(比較平均給与等支給額)
(3)-2大企業の場合
(平均給与等支給額 - 比較平均給与等支給額)÷ 比較平均給与等支給額 ≧ 2%
(従って、割合が2%未満の場合には、制度の適用がありません)
国内雇用者の範囲国内雇用者とは、 役員、役員の特殊関係者及び使用人兼務役員を除く使用人で国内事業所に勤務し賃金台帳に記載されている雇用者(従って、 雇用保険の一般被保険者でない雇用者も含む)
継続雇用者の範囲継続雇用者とは、適用年度およびその前年度の両方において給与等の支給を受けた国内雇用者であり、継続雇用者に係る金額は、雇用保険法における一般被保険者に該当する者に対して支給したものに限りますが、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する継続雇用制度の対象である者に対して支給したものを除く、ということになっています。
具体的には、 前期の退職者、 当期の新規雇用者、 継続雇用制度に基づき雇用されている高年齢再雇用者(なお、 適用年度に当該継続雇用制度の対象者になった場合には、 制度前の支給額部分は両年度で一般被保険者に該当することからその部分は除かれません) を除きますが、 一定の週20時間以上のパート・アルバイトで雇用保険法の適用要件を満たす一般被保険者は含まれます。
従いまして、 第1に、雇用保険法における一般被保険者に該当する者に対して支給したものに限られますので、
(イ) 正社員、及び
(ロ)パート・アルバイトのうち週所定労働時間が20時間以上で一般被保険者になっている者
ということになりますが、 但し、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」9条1項2号に規定する継続雇用制度の対象である者に対して支給したものを除くとされていますので、定年が65歳未満の会社で、65歳未満で定年退職した者を対象とする継続雇用制度を採用している会社の場合、定年以降の継続雇用制度の対象者に支給した金額は控除しなければなりません(この対象者の定年後の給与額は、 通常引下げられることとなり会社にとって不利とならない配慮により含めない処置となっています)。
給与等の範囲給料、 賃金、 賞与等で賃金台帳に記載された支給額(非課税とされる通勤手当等の額も含む)のみを対象としますが、 合理的な方法により継続して給与等の支給額を計算している場合には、 これも認められます。 退職金等は対象外です。
雇用者給与等支給額適用年度(当期)の損金算入される国内雇用者に対する給与等支給額。 なお、 控除すべきものとして、 国等から支給を受けた助成金や出向先法人から受けた出向者分の給与負担金受給額、 等は控除します。
なお、 出向先法人では、 その賃金台帳に出向者を記載している時には、 その給与負担金は含まれます。
基準雇用者給与等支給額・基準年度平成25年4月1日以後の開始事業年度のうち、 最も古い事業年度の前年度が基準事業年度となり、 その基準年度における損金算入される国内雇用者に対する給与等の支給額。
従いまして、 基準事業年度の例示として、 事業年度末が3月末の場合には、 基準事業年度は平成25年3月31日終了事業年度となり、 9月末の場合には、 平成25年9月30日終了事業年度、 2月末の場合には、 平成26年2月28日終了事業年度となります(つまり、 3月末事業年度以外の場合には、 平成25年4月1日を含む事業年度ということ)。
雇用者給与等支給増加額雇用者給与等支給額 - 基準雇用者給与等支給額 = 雇用者給与等支給増加額
比較雇用者給与等支給額適用前年度(前期)の損金算入される国内雇用者に対する給与等支給額
継続雇用者平均給与等支給額当期の適用年度における損金算入される国内の継続雇用者に対する給与等支給額 ÷ 適用年度における給与等月別継続雇用対象者の人数の述べ人数・合計数) = 継続雇用者平均給与等支給額
対象となる継続雇用者とは、 適用年度及び前年度において給与等の支給を受けた国内雇用者に対する給与等のうち、 雇用保険法の一般被保険者に対する給与等をいう。 従って、 前期の退職者、 当期の新規雇用者、 継続雇用制度に基づき雇用されている高年齢再雇用者を除きますが、 一定の週20時間以上のパート・アルバイトで一般被保険者は含まれます。
継続雇用者比較平均給与等支給額(前期の適用前年度における損金算入される国内の継続雇用者に対する給与等支給額) ÷ 適用年度における給与等月別継続雇用対象者の人数の述べ人数・合計数) = 継続雇用者比較平均給与等支給額
税額控除額・限度額大企業の場合:
雇用者給与等支給増加額 X 10% + (①又は②のいずれかの金額)X 2%
① 雇用者給与等支給増加額 ≧(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額の金額
② 雇用者給与等支給増加額 <(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給増加額の金額
中小企業の場合:
比較平均給与等増加割合が2%以上の場合には、控除税額が増額となります。
雇用者給与等支給増加額 X 10% + (①又は②のいずれかの金額)X 12%
① 雇用者給与等支給増加額 ≧(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額の金額
② 雇用者給与等支給増加額 <(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給増加額の金額

税額控除限度額 = 当期法人税額 X 10%又は20%以内
(但し、 控除限度額は、 大会社等については当期法人税額の10%、 中小企業者等については当期法人税額の20%)
中小企業者等中小企業者等とは、青色申告法人のうち、中小企業者又は農業協同組合等をいいます。
中小企業者とは、次に掲げる法人をいいます。
① 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
 ただし、同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます) に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人、 及び2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人を除きます。
② 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
役員の特殊関係者役員の特殊関係者とは、次に掲げる者をいいます。
① 役員の親族 (配偶者、6親等以内の血族、及び3親等以内の姻族)
② 役員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
③ 上記以外の者で役員から生計の支援を受けているもの
④ 上記の者と生計を一にするこれらの者の親族
その他、 他の税額控除適用との関係3つの適用要件が以下のように異なりまので、 国内雇用者に対する雇用者給与等支給額があれば、 必ず適用要件を全て満たすことになります。
(1) 当期の雇用者給与等支給増加額 (雇用者給与等支給額 - 基準雇用者給与等支給額) ÷ 基準雇用者給与等支給額 ≧ 5%に関して
 雇用者給与等支給額 X 30% ≧ 雇用者給与等支給額 X 3.5%(70% X 5%)
(2) 当期の雇用者給与等支給額 ≧ 前期の雇用者給与等支給額に関して
 雇用者給与等支給額 ≧ 0
(3) 当期の継続雇用者平均給与等支給額 > 前期の継続雇用者平均給与等支給額に関して
 1/1> 0/1
平成25年4月1日以後に設立された法人の場合には、 通常の基準年度がありませんが、 設立事業年度において雇用者に給与等を支給している場合には、 その設立事業年度における雇用者平均給与等支給額の70%相当額が基準雇用者給与等支給額として必ず本制度を適用することができますが、平成29年4月1日以後平成30年3月31日の間で開始する事業年度までに設立した法人は、以下の表1になります。
継続雇用者給与等支給額がゼロの場合の平均給与等支給額の計算① 当期の平均給与等支給額の計算
分子の額(継続雇用者給与等支給額): 1円とする
分母の数(継続雇用者給与等支給額に係る給与等支給数): 1とする
② 前期の平均給与等支給額の計算
分母の数(継続雇用者給与等支給額に係る給与等支給数): 1とする
継続雇用者給与等支給額がゼロの場合であっても、平均給与等支給額の要件は必ず満たされることになる。

表1
基準雇用者給与等支給額
=雇用者給与等支給額X70%
要件満たす 
比較雇用者給与等支給額 = 0要件満たす
平均給与等支給額 = 1/1大企業比較雇用者給与等増加割合が2%以上の要件を満たせず。
税額控除の不適用となる。
比較平均給与等支給額 = 0/1中小企業上乗せの比較平均給与等増加割合が2%以上の要件を満たせず。
12%の上乗せの税額控除のみ不適用となる。

雇用者給与等支給増加割合の要件の開始事業年度別推移:
 平成26年度
平成27年度

平成28年度
平成29年度(注1)

中小企業者等

2%3%
3%
3%
大法人2%3%4%
5%
注1:平成29年度とは、平成29年4月1日~平成30年3月31日の間で開始する事業年度で適用。

2.所得拡大促進税制の改組(大企業):平成30年4月1日以降開始事業年度より
平成30年度税制改正により、大企業において、十分な賃上げや国内設備投資を行った場合には、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができることになります。又、更に人材投資を増加させた企業に対しては、税額控除割合が上乗せとなります。なお、これまでの基準事業年度、継続雇用者の定義及び適用要件が変わった点に留意する必要があります。

対象法人・対象期間青色申告の大法人で、平成30年4月1日~平成33年3月31日までの期間に開始する各事業年度
但し、設立初年度は対象外
適用3要件①賃金要件:
(イ) 雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額
(ロ)(継続雇用者給与等支給額 - 継続雇用者比較給与等支給額)÷ 継続雇用者比較給与等支給額 ≧ 賃上げ率3%
②投資要件:
(ハ) 国内設備投資額 ≧ 減価償却費総額 X 90%
上乗せ要件
(適用4要件)
③教育費要件:
(ニ) (教育訓練費 - 比較教育訓練費)÷ 比較教育訓練 ≧ 
20%
継続雇用給与等支給額及び継続雇用比較給与等支給額の範囲継続雇用者とは、当期(継続雇用給与等支給額)及び前期(継続雇用比較給与等支給額)の全期間の各月において給与等の支給を受けた国内雇用者として一定の雇用者であること(雇用保険法の一般被保険者に該当する者に限られ、前期に中途入社した者、当期に退職した者、継続雇用制度対象者は含まれません)。
当継続雇用者がいない場合には、①の適用要件を満たさない
国内設備投資額とは国内で当期中取得の減価償却資産で当期末に有する取得価額の合計額をいう
減価償却費総額とは全減価償却資産の損金経理した減価償却費の総額(過年度分の減価償却超過額の当期認容額を除き、特別償却準備金の積立額を含む)をいう
税額控除額イ:適用3要件
給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)X 15% = 税額控除額
ロ:適用4要件
なお、更に、上記適用3要件以外に教育訓練要件を満たせば、
(教育訓練費 - 比較教育訓練費)÷ 比較教育訓練 ≧ 
20%の場合の税額控除額は;
給与等支給額増加額 X 20% = 税額控除額
教育訓練とは
国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を取得させ、又は向上させる次の費用(外部支払)をいう。
①法人が教育訓練等を自ら行う場合の社外講師謝金等の費用
②他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合のその委託費
③他の者が行う教育訓練等に参加させる場合のその参加に要する費用(授業料、受講料、受験手数料、等)
比較教育訓練費とは
前期及び前々の教育訓練費の年平均額をいう
税額控除額の上限
税額控除の上限は、法人税額の20%

3.所得拡大促進税制の改組(中小企業):平成30年4月1日以降開始事業年度より
平成30年度税制改正により、中小企業において、十分な賃上げを行った場合には、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができることになります。又、更に人材投資を増加させた企業に対しては、税額控除割合が上乗せとなります。なお、大企業と同様に適用要件等が変更になっています。

対象法人・対象期間青色申告の中小企業者等で、平成30年4月1日~平成33年3月31日までの期間に開始する各事業年度
但し、設立初年度は対象外
適用2要件と税額控除額①賃金要件:
(イ) 雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額
(ロ)(継続雇用者給与等支給額 - 継続雇用者比較給与等支給額)÷ 継続雇用者比較給与等支給額 ≧ 賃上げ率1.5%

税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)X 15% = 税額控除額
上乗せ要件
(適用3要件)と税額控除額
要件:
(ロ)(継続雇用者給与等支給額 - 継続雇用者比較給与等支給額)÷ 継続雇用者比較給与等支給額 ≧ 賃上げ率2.5%
(ハ) 次のいずれかの要件を満たす場合
Ⅰ 教育費要件:
(教育訓練費 - 前期教育訓練費<中小企業比較教育訓練費>)÷ 前期教育訓練費 ≧ 10%の場合、又は
Ⅱ その事業年度終了日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされた場合

税額控除額:給与等支給額増加額(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)X 25% = 税額控除額
継続雇用給与等支給額及び継続雇用比較給与等支給額の範囲継続雇用者とは、当期(継続雇用給与等支給額)及び前期(継続雇用比較給与等支給額)の全期間の各月において給与等の支給を受けた国内雇用者として一定の雇用者であること(雇用保険法の一般被保険者に該当する者に限られ、前期に中途入社した者、当期に退職した者、継続雇用制度対象者は含まれません)。
当継続雇用者がいない場合には、①の適用要件を満たさない
教育訓練とは国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を取得させ、又は向上させる一定の費用(外部支払)をいう
中小企業比較教育訓練費とは
当期開始前の前1年以内に開始した各事業年度の教育訓練費の年平均額(前期の教育訓練)をいう
税額控除額の上限
税額控除の上限は、法人税額の20%

2018年5月31日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

相続時の特定居住用宅地等における「家無き子」適用要件の平成30年度税制改正

相続時の小規模宅地等の特例の中に、特定居住用宅地等の適用要件を満たせば、その宅地の課税評価額が面積330㎡を上限として評価額を80%減額できるというものがあります。その適用要件は、平成30年度税制改正前までは以下のとおりでした。

区分 相続人(取得者) 適用要件
1.被相続人の居住用として使用されていた宅地① 配偶者無し(無条件で適用)
② 同居親族相続開始から相続税の申告期限まで、その家屋に居住し、かつ、所有の継続
③ 3年借家住まいの別居親族(家無き子)配偶者又は同居親族(法定相続人)がいなく相続開始前3年間に本人又は本人の配偶者の持ち家に住んだことがなく、かつ、相続税の申告期限までその家屋を所有
2.被相続人と生計を一にする親族の居住用に使用されていた宅地① 配偶者無し(無条件で適用)
② 生計を一にしていた親族相続開始時から相続税の申告期まで、その家屋を所有し、かつ、相続開始前から申告期限まで所有の継続

●一棟の二世帯住宅で構造上区分されているもので、 被相続人及びその親族が各独立部分に居住していた場合に、 その親族が取得した宅地等のうち、 被相続人及びその親族が居住していた部分も特例の対象となります。 即ち、 区分所有登記された建物を除き、 その親族が自身の居住部分にそのまま居住していれば、 相続開始後に空家になった被相続人の居住部分を申告期限を待たずに、 貸付等に供することが可能です。 仮に、区分登記されている場合には、生前に合併登記の手続きをすれば特例を使うことができます。

●老人ホームに入所したことにより被相続人が居住しなくなった宅地等でも、 次の要件を満たせば居住の継続となります。

(イ) 被相続人に介護が必要なため入所したものであること(相続直前に要介護認定又は要支援認定を受けていること、又は当該認定を受けていなくとも「基本チェックリスト」に該当する第1号被保険者であることが必要)

(ロ) 当該家屋が貸付等の用途に供されていないこと

(ハ) 当該老人ホームは、 その設置が都道府県知事への届出がされていること

●離れ部分の敷地の取扱い

離れ部分の敷地が母屋と一体として利用されていれば、 その離れも含まれることになります。

改正前の「家無き子」規定を以下の様に活用し、本来の趣旨を逸脱し節税する課税逃れにメスが入りました。
所定の条件を満たし、地価の高い都心部の家に一人で暮らすご両親(配偶者は既に死亡)の自宅を相続することを見越して、持ち家(マイホーム)のある相続人が、そのマイホームを長男等で贈与して「家無き子」になり、贈与から3年経過すれば条件を満たすことができ特例の適用対象になることができました。又、持ち家(マイホーム)があっても、マイホームから引っ越し賃貸住宅等に3年間以上住み、相続発生までマイホームに戻らない場合でも条件を満たすことになっていました。

平成30年度税制改正より、平成30年4月1日以後の相続又は遺贈による相続税において、家無き子(持ち家に居住していない者)に係る特定居住用宅地等の特例対象者の範囲から、次の者は除外者となりました。

① 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係がある法人(同族会社)が所有する国内にある家屋に居住したことがある者(国外の家屋は含まれません)

② 相続開始時において居住用家屋を過去に所有していたことがある者

上記以外に、下記の改正も行われています。

(1)貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業用の宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者の貸付事業用のものは除く)を適用外とする。但し、平成30年3月31日以前から貸付事業用の宅地には適用されません。

(2)介護医療院に入所したことにより被相続人の居住用に供されなくなった家屋の宅地等について、相続の開始直前まで被相続人の居住用とされていたものとして本特例の適用となります。

上場株式の配当課税方式の選択(所得税と住民税)

2017年度(平成29年度)の税制改正で上場株式の配当に係る所得税と住民税で、異なる課税方式を選択することを改めて認め、それぞれ有利な課税方式を選択できることになっています。所得税は税務署への確定申告で、住民税は市区町村の税務窓口に届出ることになりますが、有利判定の為に以下の内容が判断材料になります。

1.上場株式の配当・売却益に対する課税方式

課税方式源泉分離課税
(申告不要制度)
申告分離課税
(分離)
総合課税
(総合)
配当金
売却益
所得税と住民税で異なる課税方式を選択できる

2.配当金に係る所得税・住民税の負担合計税率

ケース1ケース2ケース3
課税所得所得税:不要
住民税:不要
所得税:総合
住民税:総合
所得税:総合
住民税:不要
~330万円以下20% 7.2%5%
~695万円以下20% 17.2%15%
~900万円以下20% 20.2%18%
~1,000万円以下20% 30.2%28%
~1,800万円以下20% 36.6%33%

総合課税の場合には、配当控除という負担軽減の措置があります。
住民税の課税所得に社会保険負担が連動していることも考慮する必要があります。

2018年4月23日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成30(2018)年度税制改正: 事業承継税制の特例創設

平成30年度税制改正が、2018年3月29日に成立しました。その中で、中小企業の事業承継税制(代表権と持株の移行)が現行税制の特例としまして、更なる税優遇措置が設けられました。
現在、事業承継制度が存在していますが、同種の特例制度が創設され、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの10年間の特例措置として贈与、相続等で取得する非上場株式に係る贈与税又は相続税について適用されることになります。その概要は、施行日後5年以内(平成30年4月1日から平成35年3月31日までの期間)に承継計画を作成し都道府県に提出し認定を受けた特例承継会社の持株を贈与・相続により特例後継者に事業承継を行う場合、
(1)猶予対象の株式制限(発行済議決権株式総数の3分の2)を撤廃し、納税猶予割合80%を100%に引上げることで、贈与・相続時の納税負担が生じない制度とし、
(2)雇用確保要件を弾力化するとともに
(3)親族以外を含む複数の株主から、2名又は3名の後継者(要代表権)に対する贈与・相続に対象を拡大し、
(4)経営環境の変化に対応した減免制度を創設して将来の税負担に対する不安に対応する等の特別措置が取られています。

主な相違項目現行の事業承継税制 特例の事業承継税制
納税猶予となる対象株式数の上限の撤廃発行済株式数の2/3が上限で、相続時の相続税の猶予割合は80%上限が撤廃され全株が納税猶予の対象となり、相続時の納税猶予割合も100%
税制対象となる贈与者の拡充一人の先代経営者のみ先代経営者に限定せずに、親族以外の第三者を含む複数の株主からの贈与も対象
税制対象となる受贈者の拡充一人の代表権を持つ後継者のみ最大3名まで代表権を持つ後継者(同族関係者を含めて保有割合50%以上であること):
① 後継者一人の場合には、同族関係者を含めて保有割合が最高者であること
② 後継者が複数(3名以下)の場合には、各自の保有割合が10%以上で、かつ、保有割合上位3位までの同族関係者であること
雇用確保要件の緩和承継税制の適用後、5年間で平均8割以上の雇用を継続できない場合には猶予打ち切りとなり、猶予税額の全額と利子税を納付例え、5年間で平均8割以上の雇用要件が未達成の場合でも、納税猶予を継続可能で理由報告が必要(経営悪化が原因であるり場合等には、認定支援機関による指導助言が必要)
経営環境の変化に応じた減免後継者が自主廃業や売却を行う際、経営環境の変化により株価が下落した場合でも、承継時の株価を基に贈与・相続税が課税される廃業時の評価額や売却額を基に納税額を計算し、承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免する
相続時精算課税制度の適用範囲の拡充60歳以上の父母、祖父母等から、20歳以上の子又は孫の直系卑属への贈与のみが対象事業承継税制の適用を受ける場合には、60歳以上の贈与者から、20歳以上の後継者への贈与を対象とすることで適用範囲が拡充

上記と重複しますが、特例事業承継制度のより具体的内容としましては、
① 「特例後継者」が、「特例認定承継会社」の代表権を有していた者から、贈与又は相続若しくは遺贈(贈与等)がその非上場株式を取得した場合には、その全株の課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、その特例後継者の死亡日等まで納税を猶予されます。納税猶予対象の株式制限(現行:発行済議決権株式総数の3分の2)を撤廃し、納税猶予割合が80%から100%に引上げられます。
「特例後継者」とは特例認定承継会社の「特例承認計画」に記載された代表権を有する後継者(同族関係者と合わせてその総議決権数の過半数を有する者に限る)であって、当該同族関係者のうち、議決権を最も多く所有する者(記載された後継者が2名又は3名以上の場合には、議決権数において、それぞれ上位2名又は3名(但し、議決権数の10%以上を所有する者に限る)をいう。
「特例認定承継会社」とは平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に特例承認計画を都道府県に提出した会社で、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第12条第1項の承認を受けたものをいう。
「特例承認計画」とは認定経営革新支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画で、特例認定承継会社の後継者、承継時までの経営見通し等が記載されたものをいう。

② 特例後継者が特例認定承継会社の代表者以外の者から贈与等により取得する非上場株式についても、特例承認期間(5年)内に贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、本特例の対象となります。
③ 現行の事業承継税制における雇用確保要件(5年間平均で8割以上の雇用確保)を満たさない場合であっても、納付猶予期限は到来しません。但し、その場合には、その満たせない理由を記載した書類(認定経営革新支援機関の意見が記載されているものに限る)を都道府県に提出しなければなりません。なお、その理由が、経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められない場合には、特例認定承継会社は、認定経営革新支援機関から指導及び助言を受けて、当該書類にその内容を記載しなければなりません。
④ 「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」において、特例承継期間経過後に、特例認定承継会社の非上場株式の譲渡をするとき、合併により消滅するとき、解散をするとき等には、納税猶予税額を免除されます。
株価が下がれば差額が免除される減免制度が創設されました。
⑤ 特例後継者が贈与者の推定相続人以外の者(その年1月1日現在で20歳以上であること)であり、かつ、その贈与者が60歳以上である場合には、相続時精算課税を選択が拡充されました。
⑥ その他の適用要件等は、現行の事業承継税制と同様です。
例えば、現行の事業承継税制上の贈与税・相続税における納税猶予の適用要件は次のようなものがあります。
* 事前の計画的な取組の存在(確認)
* 被相続人・贈与者の筆頭株主要件(確認時、 代表時、 死亡時)
* 一定の後継者
* 対象会社として一定の中小企業会社
* 申告期限から5年間の事業継続要件
* 申告期限から5年経過後の継続要件

2018年3月31日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

平成29年度(2017年)個人確定申告

個人並びに個人事業者の方の平成29年度確定申告の時期がきました。 以下に、 平成29年度分の確定申告の提出期限及び確定申告の対象となる人(任意ではなく申告しなければならない人)、 等に関しまして概要を纏めてみました。 なお、 確定申告の対象者は前年度と変更はありませんが、 税金の申告は、 本人自ら課税金額や税額を計算し、 その税額を申告納付する制度「申告納税制度」を採用していますので、 期限後申告・納付となりますと延滞税等がかかりますので注意してください。

1. 平成29年度確定申告の提出・納付期限

所得の種類平成29年度申告期間・納付期限口座振替による納税日(振替日)
所得税平成30年2月16日 から3月15日 (還付対象者の方は1月から申告可)4月20日(金)
(新規の利用者の方は「預貯金口座振替依頼書」を申告期限までに要提出)
消費税平成30年1月 から4月2日4月25日(水)
贈与税平成30年2月1日 から3月15日非該当

(1) 申告書の提出方法には、 ①持参(所轄税務署等の所定の提出場所)、 ②郵送、 ③電子申告(e-Tax利用によりデータ送信、この利用には事前準備が必要となりますが、 所得税では一定の第三者作成の提出書類を省略可の恩典があります)、の方法があります。
(2) 納税方法には、 ①持参(所轄税務署)、 ②金融機関から納付書を付けて納付、 ③ダイレクト納付(e-Taxの利用で、 かつ、 事前にダイレクト納付利用届出書の所轄税務署に要提出)、 ④インターネットバンキング・クレジットカードによる電子納税、⑤口座振替(上記を参照) の方法があります。
(3) 平成25年度から25年間には、 復興特別所得税として各年分の所得税額に2.1%の税率を掛けて計算した税額が発生することに留意してください。
(4) 平成28年分以降の確定申告にあたり、 マイナンバー(個人番号)の記載が必要となります。 申告書を提出する際には、 申告者のご本人の本人確認書類(番号確認書類及び身元確認書類)の提示又は写しの添付が必要です。 具体的な本人確認書類とは、
① マイナンバーカード(個人番号カード)
② 通知カード又は個人番号付の住民票の場合には、 身元確認書類として顔写真付きの運転免許証、 等の点、 又は顔写真付きでない場合には、 2点の確認書類(保険証、 年金手帳、 等)

2. 平成29年度確定申告が必要となる対象者の方

A. 所得税
1. 給与所得者(サラリーマンの方)
① 給与の年間収入金額が2,000万円超となる方(年末調整対象外の方)
② 給与(年末調整済)を1箇所から受けていて、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円超となる方 (給与収入額が2,000万円以下で、 給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合には申告の必要はありません)
③ 給与(源泉徴収済)を2箇所以上から受けていて、 年末調整されなかった給与の収入金額と、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円超となる方。
但し、 給与所得の収入金額から、 一定の所得控除の金額(雑損控除、 医療費控除、 寄付金控除及び基礎控除の項目を除く)の差引金額が150万円以下で、 かつ、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下となる方は、 申告不要となります。

2. 上記の給与所得者以外の方、 又は個人事業者で納付税額が発生する方
事業所得や不動産所得等がある方で、 各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方

3. 源泉徴収の適用を受けない給与等の支払を受ける方
① 家事使用人等の方で給与から源泉所得税を徴収されていない方: 常時2人以下の家事使用人だけを雇用している使用人等には源泉徴収の義務が無いことから、 その使用人等から給与を受給されていた方
② 在日外国公館から給与等の支払を受けた方
③ 国外から給与、 退職金等の支払を受けた方

4. 同族会社の役員やその親族等で、 その会社から給与以外に利子、 家賃、 使用料等の支払を受けている方は、 その利子、 家賃、 使用料等は全て申告の対象

5. 災害減免法の適用を受け給与に対して源泉徴収の猶予や源泉徴収税額の還付を受けていた方

6. 上記以外の方で納付税額がある方
各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方

注1: 公的年金等に係る所得の確定申告不要制度
その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、 かつ、 その雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、 所得税の確定申告書の提出は必要ありません(申告されれば還付となる場合もありますので、 その場合には申告される方が有利となる場合もあります)。 なお、国外源泉で国内源泉税の対象とならない国外年金収入等がある場合には、この確定申告不要制度の適用対象外となります。
この所得税の申告不要となる場合であっても、 住民税の申告が必要となることもありますので注意が必要です。
公的年金等の受給者で所得税の申告不要な者でも、住民税の申告が以下のような場合には必要となります(主に住民税の減額になるケース有り)。
① 年金や給与の源泉徴収票に記載されていない所得控除(扶養控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料, 寄附金等)のある方は、住民税の申告で住民税が減少する可能性があります。
② 上記①の控除を追加したい方で、公的年金等が105万円(65歳以上の方は155万円)を超えている場合、或いは、超えていない場合でも公的年金等以外の所得金額がある場合。
③ 日本年金機構等に扶養親族等申告書を提出しているが、その内容に変更がある場合等。

注2: 確定申告不要(任意)となる方で申告すれば税金が戻ってくる方(還付申告者)
確定申告の総件数は2,000万件以上になるようですが、 この内の約半数近くが還付申告のものとなっているようです。 収め過ぎた税金を戻すためには確定申告書の提出が必要となります。 以下の様な場合には、 還付されるかもしれませんので調べてみてはどうでしょうか。

1. サラリーマンで年末調整を受けた方で次の年末調整では取扱わない項目があった方
① 一定金額以上の医療費(医療費控除: 限度額200万円)
生計を一にする家族の支払医療費が、 以下の金額以上になっている場合が対象:
所得が200万円以上: 支払医療費 – 保険給付金等 – 10万円 = 医療費控除額
所得が200万円未満: 支払医療費 – 保険給付金等 – 所得金額 × 5% = 医療費控除額
② 災害(地震、 台風等)や盗難により住宅や家財に被害を受けた場合(雑損控除)
災害の場合には、 災害減免法により所得税の軽減・減免を受けられることもあります。
③ 特定の寄付をされた方(寄付金控除や政党等寄付金特別控除)
④ 初めて住宅ローン控除を受ける方(住宅借入金等特別控除)
⑤ 年末調整時に提出ができなかった、 或いは洩れている控除項目がある方
生命保険料控除、 地震保険料控除、 配偶者特別控除、 各種の扶養者控除等
⑥ 中途退職され再就職しなかった方
退職までの給与収入に対する源泉徴収税額が年税額として過大となっているケースが殆どです。 又、 退職金に対して20%源泉になっている場合も可能性がありますし、退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になっている方。

2. 上場株式等に係る配当所得(申告分離課税選択)と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算

3. 予定納税されたが確定申告不要となった方

4. 所得が少ない状況で配当や原稿料収入等からの源泉徴収税額が、 本来の納付すべき税額よりも多額となっている方

5. 外国税額控除の適用がある方

6. 申告の要件となっている項目がある方
① その年の翌年以降に純損失又は雑損失の繰越控除を受けるため、 ② その年分の純損失の金額について純損失の繰戻しによる還付を受けるため、 ③ 居住用財産の買換又は特定居住用財産の譲渡損失及び繰越控除を受けるため、 等には確定申告の提出が必要となります。

B. 贈与税
ご存知かと思いますが、 下記に示す様に年間に受けた贈与額が110万円以下ならば非課税範囲のために贈与税の申告等は必要ありません。

1. 年間合計で110万円超の財産贈与(個人からの土地、 建物、 現金、 預貯金、 株式、 債権等の財産の贈与)を受けた方(暦年課税で下記の②の選択者を除く)
2. 相続時精算課税制度(60歳以上の父や母の直系卑属からの贈与者ごとに累積で特別控除額2,500万円)の選択者で財産贈与を受けた方(20歳以上の推定相続人の子、 並びに孫に限る)
3. 住宅取得等資金の非課税制度(下記に限度額)を適用し、 父母や祖父母等の直系尊属から自己の居住用家屋の取得等のために住宅資金贈与を受けた方(20歳以上で合計所得金額が2,000万円以下であり、 かつ、 一定の居住条件を満たしている方)

消費税率が8%適用となる取得等の契約を平成33年12月までに締結された場合の非課税限度額は以下のようになります。

所得の種類平成29年度申告期間・納付期限口座振替による納税日(振替日)
所得税平成30年2月16日 から3月15日 (還付対象者の方は1月から申告可)4月20日(金)
(新規の利用者の方は「預貯金口座振替依頼書」を申告期限までに要提出)
消費税平成30年1月 から4月2日4月25日(水)
贈与税平成30年2月1日 から3月15日非該当

4. 配偶者控除の特例(控除額2,000万円)を適用し、 配偶者から居住用不動産又はその取得資金の贈与を受けた方(婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与に限る)
5. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度、等
平成25年4月1日から平成31年3月31日までの期間に直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 この制度適用のためには、 受贈者は教育資金非課税申告書を金融機関等を経由して税務署に提出する必要がありますが、 申込時に対応されていると思いますので特に問題となることはないでしょう。

C. 消費税
個人事業者で下記に該当する方は納税義務者(課税事業者)として申告する必要があります。

1. 基準期間となる前々年度(平成27年度)の課税売上高が1,000万円超の事業者の方

2. 特定期間となる前年(平成28年度)の1月1日から6ケ月間の課税売上高が1,000万円超で、 かつ、 同期間の給与等支払総額が1,000万円超の事業者の方

3. 免税事業者となる方が、 課税事業者となることを選択(消費税課税事業者選択届出書を提出)している方(簡易課税選択者も含む)
納税義務者の判定上の留意事項:
(1) 基準期間の課税売上高は、 消費税込の金額となり、 事業用資産(住宅用として貸付けていた建物等)の譲渡の対価金額も含まれます
(2) 被相続人(亡くなられた方)の事業を相続により承継した相続人には、 被相続人が提出していた各種の届出書の効力は及ばないので、 新たに提出する必要があります。
(3) 新規開業又は相続により事業を承継したときに、 消費税課税事業者選択届出書を提出した場合の適用開始時期は、 当該課税期間か翌課税期間かを選択できます。
(4) 消費税課税事業者選択届出書を提出されている場合には、 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、 その効力が消滅することはありません。

以上が、所得税、贈与税、消費税に関する確定申告の対象者の概要です。

 

 

 

 

2018年2月22日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant