中小企業経営強化税制の見直し

この中小企業経営強化税制の制度は、青色申告書を提出する中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた一定の中小企業者(資本金1憶円以下、等)が平成29年4月1日から令和7年3月31日までの指定期間内に、新品(貸付は除く)の特定経営力向上設備等を取得または製作もしくは建設して、国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その事業年度において、特別償却(即時償却)または税額控除(所得価額の7%<資本金3千万以下は10%>:但し、法人税額の20%を上限)を認めるものです。
令和5年度改正で、特定経営力向上設備等の対象から、本業以外でコインランドリー業と暗号資産マイニング業の機械装置でその管理の概ね全部を他の者に委託するものは適用除外となりました。
特定経営力向上設備等の概要は次のとおり:

類型要件確認者対象設備
生産性向上設備
(A類型)
生産性が旧モデル比1%以上向上する設備工業会等*機械装置(160万円以上)
*工具(30万円以上):A類型の場合には測定工具又は検査工具に限る
*器具備品(30万円以上)
*建物附属設備(60万円以上)
*ソフトウェア(70万円以上):A類型の場合には設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するものに限る
収益力強化設備
(B類型)
投資収益性が年平均5%以上の投資計画に係る設備経済産業局
デジタル化設備
(C類型)
デジタル化設備
(C類型)
経営資源集約化設備(D類型)修正ROA又は有形固定資産回転率が一定割合以上の投資経営に係る設備

デジタル化設備(C類型)の適用要件は、①遠隔操作、②可視化、③自動制御化のいずれかに該当する設備である必要があります(中小企業庁より)。
① 遠隔操作とは
(1)デジタル技術を用いて、遠隔操作をすること
(2)以下のいずれかを目的とすること
(A)事業を非対面で行うことができるようにすること
(B)事業に従事する者が、通常行っている業務を、通常出勤している場所以外の場所で行うことができるようにすること
② 可視化とは
(1)データの集約・分析を、デジタル技術を用いて行うこと
(2)(1)のデータが、現在行っている事業や事業プロセスに関係するものであること
(3)(1)により事業プロセスに関する最新の状況を把握し経営資源等の最適化(※)を行うことができるようにすること
③ 自動制御化とは
(1)デジタル技術を用いて、状況に応じて自動的に指令を行うことができるようにすること
(2)(1)の指令が、現在行っている事業プロセスに関する経営資源等の最適化(※)のためのものであること
( ※):「経営資源等の最適化」とは、「設備、技術、個人の有する知識及び技能等を含む事業活動に活用される資源等の最適な配分等」をいいます。

2023年6月25日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

令和5年10月1日からのインボイス制度の見直し

インボイス制度が令和5年10月1日より導入されることは各種媒体から公表され、関係事業者はその対応・準備に追われているかと思います。特に小規模事業者には、その負担や影響が大きいことは否めません。既にご存知かと思いますが、令和5年度税制改正で多少緩和となる当制度の見直しがありましたので、以下で確認しておきたいと思います。
1. 適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間で免税事業者が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者として課税事業者)になった場合には、その課税期間の消費税の納税額は課税売上の消費税額の20%になるという経過措置です。この適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記する必要があります。
但し、課税期間の特例の適用(課税期間の短縮)を受ける課税期間及び令和5年10月1日前から課税事業者選択届出書の提出により免税事業者ではない日の課税期間には適用がありません。
なお、適用を受けた適格請求書発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を税務署に提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用が認められます(原則は、提出日の翌課税期間から適用)。

2.一定規模以下の事業者は1万円未満の課税仕入れにつき帳簿の保存のみで仕入税額控除可能(課税仕入額10,000円未満の適格請求書(インボイス)の不要特例)
基準期間(2期間前)の課税売上高1億円以下又は特定期間(前期の前半6ヶ月)の課税売上高5,000万円以下の小規模事業者ならば、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入において、支払対価(税込)10,000円未満ならば帳簿記載のみで仕入税額控除が可能となります(インボイスは不要)。

3.税込10,000円未満の売上返還等(値引・返品)における適格返還請求書の交付不要(全事業者対象)
税込10,000円未満の売上返還(値引・返品)に対して、適格返還請求書の発行不要となりますので、振込手数料相当額を控除して入金された場合にも売上返還として処理した場合には適格返還請求書の発行不要となります。銀行の振込手数料は、課税仕入れとして処理するか売上返還等として処理するか選択適用が認められています。支払手数料として課税仕入れとして処理している場合には、原則、金融機関や取引先からの支払手数料に係るインボイスが必要となります。

4.適格請求書発行事業者登録制度の見直し
免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15日前の日(現行: 1月前の日)までに登録申請書の提出義務となります。この場合において、当該課税期間の初日後に登録がされたときでも、同日に登録を受けたものとみなされます。なお、 適格請求書発行事業者が登録の取消しの提出期限も同様の見直しとなります。
又、適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置の適用により、令和5年10月1日後に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、その登録申請書に、提出する日から15日を経過する日以後の日を登録希望日として記載するものとする。この場合において、当該登録希望日後に登録がされたときでも、当該登録希望日に登録を受けたものとみなされます。
(注)上記の改正の趣旨等を踏まえ、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、その申請期限後(令和5年3月31日後)に提出する登録申請書に記載する困難な事情については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする(登録申請が令和5年4月1日以降になっても、困難な事情理由の記載は不要で「困難な事情」とだけ記載すれば登録申請可能となりますが、登録完了に時間がかかるようですので、早目の申請が望まれます)。

2023年5月29日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

令和5年度税制改正における相続時精算課税制度・暦年課税制度の見直し

Ⅰ. 相続時精算課税制度の見直し
1.令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用となる改正です。
相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円(特定贈与者ごとの基礎控除額であるが、同一年に2人以上の特定贈与者からの贈与がある場合には、110万円を各特定贈与者からの贈与額に応じて按分する)を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
つまり、非課税限度額2,500万円とは別枠で年間110万円の控除が可能となります(年間110万円を超えたら贈与税の申告が必要となります。超えなければ申告不要)。
(贈与額-基礎控除110万円-特別控除累計2,500万円)×一律20%=贈与額
この改正により、暦年課税と同額の基礎控除が認められることから、この相続時精算課税制度の活用が促進することが期待されます。

2.令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用となる改正です。
相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害(震災、風水害、火災等)によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする。

3.まとめ

相続時精算課税現行改正
贈与額の計算(贈与額-特別控除累計2,500万円)×一律20%(贈与額-基礎控除110万円-特別控除累計2,500万円)×一律20%
贈与税申告少額の贈与額でも贈与税の申告が必要年間の基礎控除110万円を超えた場合には贈与税の申告が必要
相続財産の加算すべき贈与財産取得した全ての相続時精算課税の財産取得した全ての相続時精算課税の財産(但し、年間の基礎控除110万円内の控除分を除く)
又、贈与財産が災害により一定の被害を受けた土地・建物である場合は相当額の控除可能

参考:相続時精算課税制度とは
この制度は、贈与時の税負担を一時的に軽減させ、相続時に税額を精算(相続時には過去の全ての贈与財産が相続税の課税対象となる)するということから、相続税の仮払的な性格を有するものです。
この制度の適用要件として、贈与した年の1月1日現在で60歳以上の親(特定贈与者)から推定相続人(贈与時に最先順位の相続権を有する者)である、その年の1月1日現在18歳以上の子(推定相続人)及び孫<孫になった時前の贈与は対象外> /代襲相続人を含む)への財産の生前贈与であり、贈与税の申告期限内に選択届出書を選択初年度に所轄税務署に提出する必要があります。 養子も実子扱いで、 その人数の制限はありません。 この選択は、父母ごとに行うことができますが、一度選択後には撤回することはできず、特定贈与者が死亡するまで継続適用しなければなりません(贈与財産の種類、 金額、 贈与回数には制限がありません)。 一端選択すると、 その後はその特定贈与者からの一般贈与(基礎控除110万円)の暦年課税選択をすることができませんし、 改正前では、少額贈与でも相続時精算課税として贈与税の申告をしなければなりませんでした。
受贈財産は物納財産になりませんし、 贈与を受けた土地等が小規模宅地等の特例の適用を受けることもできません。
受贈者が特定贈与者より先に死亡された場合には、 相続時精算課税に係る受贈者の権利と義務は、 受贈者の法定相続人に法定相続分で承継となります。
受贈者が外国に居住している場合や国外財産の贈与でも適用対象となります。
孫への贈与の場合に将来のリスクを十分に検討する必要があります (例えば、 孫は相続税の納税義務者となります。 相続時の納税資金の必要性、 相続税は2割加算、 等)
この改正前の制度での贈与税額は、特定贈与者ごとに累積して2,500万円までの特別控除が利用でき、これを超えた課税価格の部分には一律20%を掛けた金額が贈与税額となります。
歴年内に受けた贈与財産の合計額 - 特別控除額(注) = 課税価格
  課税価格 × 20% = 贈与税額
(注)2,500万円-前年度までに使用した特別控除額 = 当年度の特別控除額(上限額)

2.暦年課税制度における生前贈与の相続財産加算期間延長
令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について、暦年課税における生前贈与の加算期間が3年から7年に延長となります。
相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額:加算不要の100万円は「贈与者ごと」の贈与財産の価額から控除することになります)を相続税の課税価格に加算することとする。
つまり、現行の3年以内のものが、改正により、
3年以内の贈与額全額+(延長した4~7年の贈与額合計-100万円)を相続税の課税価格に加算すことになります。
改正後の相続開始日と加算期間との関係は以下の通りです。

相続開始日加算期間(相続開始日から) 
令和8年12月31日まで3年前改正の影響無し
令和9年度内3年超又は4年前未満1年ずつ段階的に加算期間が延長されていく
令和10年度内4年超又は5年前未満
令和11年度内5年超又は6年前未満
令和12年度内6年超又は7年前未満
令和13年度以降7年前加算期間が7年となる

なお、相続又は遺贈により財産を取得しなかった者、例えば孫が生命保険や死亡退職金等のみなし相続財産を取得する場合には、生前贈与分が加算対象になる点に留意する必要があります。

参考:暦年課税制度とは
歴年内(1月1日から12月31日までの1年間)に受けた贈与財産の合計額 - 基礎控除額 110万円 = 課税価格
年間総額110万円までの贈与を受けても贈与税の課税とはなりません。 年間110万円を超える贈与を受けた場合の贈与税額は、 以下の算式となります。
  課税価格 × 税率(①又は②)- 控除額 = 贈与税額
① 特定贈与:直系尊属(父母・祖父母等)からの特定贈与:受贈者は1月1日現在で18歳以上の卑属(子・孫等)が対象であり、一般贈与よりも税率が軽減されています。
直系尊属(父母・祖父母等)からの特定贈与の場合には、直系尊属関係が確認できる戸籍謄本等を申告時に添付が必要となります(2回目以降は添付不要)。
② 一般贈与:上記の特定贈与以外となる贈与。
なお、 同一年中に特定贈与財産と一般贈与財産の両方がある場合には、 その贈与財産合計額から基礎控除額(限度110万円)を控除した総課税価格に各該当税率を乗じて算出された税額に対して、 各贈与財産割合(特定贈与財産額、 又は一般贈与財産額 / 贈与財産合計額)を乗じて贈与税額を導くという調整計算が必要となります。

暦年課税の場合、 原則として相続開始前3年以内の贈与財産は相続財産として加算する必要がありましたが、改正で7年以内となりした。

通常、贈与を行う場合には贈与契約書の作成をお願いしておりますが、これは贈与の履行時期の証明等の問題を回避する為であり、課税実務上、贈与による財産の取得時期は、原則として、贈与契約書(書面)によるものはその契約の効力が発生した時、贈与契約書(書面)によらないものはその履行の時とされています(相続税基本通達1の3・1の4共・8)。

2023年4月26日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

年収の壁と就業調整

パート主婦の中で給与収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担増になることから就業調整する方がおられます。この問題に関しましては、政府でも対応策を検討すると表明しています。以前にもこの年収の壁を取り上げましたが、再確認してみたいと思います。年間給与収入額からの年収の壁に関して、一般的なケースでは、以下の様に指摘されています。

年間給与収入額影響する基準影響する人影響する内容
103万円超所得税課税パート者本人所得税が発生する
106万円超本人の社会保険の加入基準従業員数101人以上の会社勤務のパート者本人(所定の適用条件を満たす場合)パート者本人の社会保険の加入基準であり、社会保険料(厚生年金・健康保険料)が発生する。将来、厚生年金が受領できます。
130万円超夫の社会保険の被扶養者基準従業員数100人以下の会社勤務のパート者本人夫の社会保険の被扶養者基準であり、本人が被扶養対象外になることから、社会保険料(国民年金・国民健康保険料等)が発生する
150万円超配偶者特別控除夫の配偶者特別控除(最高38万円)が減額となっていく。

なお、被扶養者に関しましては所得税上と社会保険上の取扱いが、以下の様に異なりますので留意する必要があります。
1.所得税上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「所得税の扶養」とは、扶養している親族等の人数に応じて所得の控除を受けることができる制度のことになります。
① 「生計を一にする(家計を共にしていれば同居でなくてもOK)」
② 以下の所得基準(収入金額ではありません)があります。
年間所得金額が48万円以下(給与収入で103万円)であること(いわゆる「103万円の壁」)。なお、70歳以上の老人扶養は、同居での所得で58万円以下(年金収入で168万円・給与収入で113万円)・同居外での所得で48万円以下(年金収入で158万円・給与収入で103万円)であること。
2.社会保険上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「社会保険の扶養」とは、被保険者の扶養している親族等が、自分自身で社会保険料を負担することなく保険の給付を受けられる制度のことになります。
① 「三親等以内の親族は同一の世帯(同居して家計を共にしている)」であること
② 年間の収入金額(所得金額ではありません)が130万円未満(60歳以上は180万円未満)であること、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であること。いわゆる「130万円の壁」と言われるのは、この認定基準があるからです。
③ 75歳未満であること(従って、75歳以上は扶養者になれません。何故ならば、75歳から後期高齢者医療保険制度に移行になりますので、社会保険制度への加入資格はありません)
3.社会保険加入条件とは
なお、社会保険加入で収入金額を「106万円」未満に収めたいと言われることがありますが、いわゆる「106万円の壁」とは、働く方でその方自身が厚生年金保険や健康保険といった社会保険への加入が必要となる収入基準のことです。こちらの保険適用基準は、以下の一定の条件を満たした場合に対象となります。
正社員の場合には、所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上でありますが、パート・アルバイトなどの短時間労働者の場合には、従業員101人以上の企業(特定適用事業所)に勤務している方で、かつ、 
① 週20時間以上働いている
週20時間を算出する際は、残業時間を合算せずに計算します。
② 1年以上継続して勤務する見込み
雇用契約書等に1年以上継続して勤務する見込みがあること。
③ 1カ月の賃金が8.8万円超
1カ月の賃金が8.8万円を超すというもの。1カ月の賃金が8.8万円を超すと、1年の年収が計算上、で106万円以上になります。ここでいう1カ月の賃金とは、雇用契約時の所定内賃金のみで、残業代、各種手当や賞与などは含みません。
④ 学生ではない
の諸条件を満たす場合には社会保険加入となります。なお、2024年10月から社会保険加入条件の従業員数が51人以上に引き下げられます。

2023年3月15日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

2022年度(令和4年度) 個人確定申告

個人並びに個人事業者の方の令和4年度確定申告の時期がきました。 以下に、 令和4年度分の確定申告の提出期限及び確定申告の対象となる人(任意ではなく申告しなければならない人)、 等に関しまして概要を纏めてみました。 なお、 確定申告の対象者は前年度と変更はありませんが、 税金の申告は、 本人自ら課税金額や税額を計算し、 その税額を申告納付する制度「申告納税制度」を採用していますので、 期限後申告・納付となりますと延滞税等がかかります。
下記は、原則の確定申告の提出・納付期限となります。

令和4年度確定申告の提出・納付期限

所得の種類令和元年度申告期間・納付期限口座振替による納税日(振替日)
所得税令和5年2月16日(木)から3月15日(水)
なお、還付申告は令和5年1月から可能
4月24日(月)
(新規の利用者の方は「預貯金口座振替依頼書」を申告期限までに要提出)
消費税令和5年1月 から3月31日(金)4月27(木)
贈与税令和5年2月 から3月15日(水)非該当

(1) 申告書の提出方法には、 ①持参(所轄税務署等の所定の提出場所)、 ②郵送、 ③電子申告(e-Tax利用によりデータ送信、この利用には事前準備が必要となりますが、 所得税では一定の第三者作成の提出書類を省略可の恩典があります)、の方法があります。
(2) 納税方法には、 ①持参(所轄税務署)、 ②金融機関から納付書を付けて納付、 ③ダイレクト納付(e-Taxの利用で、 かつ、 事前にダイレクト納付利用届出書の所轄税務署に要提出)、 ④インターネットバンキング・クレジットカードによる電子納税、⑤口座振替(上記を参照) の方法があります。
(3) 平成25年度から25年間には、 復興特別所得税として各年分の所得税額に2.1%の税率を掛けて計算した税額が発生することに留意してください。
(4) 平成28年分以降の確定申告にあたり、 マイナンバー(個人番号)の記載が必要となります。 申告書を書面提出する際には、 申告者のご本人の本人確認書類(番号確認書類及び身元確認書類)の提示又は写しの添付が必要です。 具体的な本人確認書類とは、
① マイナンバーカード(個人番号カード)
② 通知カード又は個人番号付の住民票の場合には、 身元確認書類として顔写真付きの運転免許証、 等の点、 又は顔写真付きでない場合には、 2点の確認書類(保険証、 年金手帳、 等)

A. 所得税
1. 令和4年度確定申告の主な改正・留意事項
令和2年度には基礎控除等に改正事項がありましたが、令和4年度には特筆すべき事項はありません。なお、申告書様式において、令和3年及び令和4年にいくつかの改訂があります。
(1)申告書Aは廃止され、申告書Bに一本化されます。
(2)納税者の押印欄の廃止
(3)事業収入の区分欄の創設
帳簿記帳方法に関しまして、5区分から該当する数字(1から5)を記入:会計ソフト等での記帳の場合は、数字2
(4)不動産収入の区分欄の創設
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例適用がある場合は、区分1欄に「1」を、区分2欄には上記(3)と同様な5区分から該当数字を記入
(5)雑収入「その他」欄の区分欄の新設
個人年金に係る収入がある場合は「1」、暗号資産取引に係る収入がある場合は「2」、双方の収入がある場合は「3」を区分欄に記載
(6)第1表~第5表の記入欄
① 第1表~第2表:記入欄の新設
② 第3表~第4表:記入欄の見直し
③ 第5表:廃止(修正申告は第1表及び第2表で提出)

2. 令和4年度確定申告が必要となる対象者の方
1. 給与所得者(サラリーマンの方)
① 給与の年間収入金額が2,000万円超となる方(年末調整対象外の方)
② 給与(年末調整済)を1箇所から受けていて、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円超となる方 (給与収入額が2,000万円以下で、 給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合には申告の必要はありません)
③ 給与(源泉徴収済)を2箇所以上から受けていて、 年末調整されなかった給与の収入金額と、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円超となる方。
但し、 給与所得の収入金額から、 一定の所得控除の金額(雑損控除、 医療費控除、 寄付金控除及び基礎控除の項目を除く)の差引金額が150万円以下で、 かつ、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下となる方は、 申告不要となります。
2. 上記の給与所得者以外の方、 又は個人事業者で納付税額が発生する方
事業所得や不動産所得等がある方で、 各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
3. 源泉徴収の適用を受けない給与等の支払を受ける方
① 家事使用人等の方で給与から源泉所得税を徴収されていない方: 常時2人以下の家事使用人だけを雇用している使用人等には源泉徴収の義務が無いことから、 その使用人等から給与を受給されていた方
② 在日外国公館から給与等の支払を受けた方
③ 国外から給与、 退職金等の支払を受けた方
4. 同族会社の役員やその親族等で、 その会社から給与以外に利子、 家賃、 使用料等の支払を受けている方は、 その利子、 家賃、 使用料等は全て申告の対象  
5. 災害減免法の適用を受け給与に対して源泉徴収の猶予や源泉徴収税額の還付を受けていた方
6. 上記以外の方で納付税額がある方
各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
注1: 公的年金等に係る所得の確定申告不要制度
その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、 かつ、 その雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、 所得税の確定申告書の提出は必要ありません(申告されれば還付となる場合もありますので、 その場合には申告される方が有利となる場合もあります)。 なお、国外源泉で国内源泉税の対象とならない国外年金収入等がある場合には、この確定申告不要制度の適用対象外となります。
この所得税の申告不要となる場合であっても、 住民税の申告が必要となることもありますので注意が必要です。

公的年金等の受給者で所得税の申告不要な者でも、住民税の申告が以下のような場合には必要となります(主に住民税の減額になるケース有り)。
① 年金や給与の源泉徴収票に記載されていない所得控除(扶養控除、障害者控除、ひとり親控除、寡婦控除、医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料, 寄附金等)のある方は、住民税の申告で住民税が減少する可能性があります。
② 上記①の控除を追加したい方で、公的年金等収入が105万円(65歳以上の方は155万円)を超えている場合(この場合とは、公的年金等以外の合計所得金額が1千万円以下のケース)、或いは、超えていない場合でも公的年金等以外の所得金額がある場合。
③ 日本年金機構等に扶養親族等申告書を提出しているが、その内容に変更がある場合等。

注2: 確定申告不要(任意)となる方で申告すれば税金が戻ってくる方(還付申告者)
確定申告の総件数は2,000万件以上になるようですが、 この内の約半数近くが還付申告のものとなっているようです。 収め過ぎた税金を戻すためには確定申告書の提出が必要となります。 以下の様な場合には、 還付されるかもしれませんので調べてみてはどうでしょうか。
1. サラリーマンで年末調整を受けた方で次の年末調整では取扱わない項目があった方
① 一定金額以上の医療費(医療費控除: 限度額200万円)
生計を一にする家族の支払医療費が、 以下の金額以上になっている場合が対象:
所得が200万円以上: 支払医療費 – 保険給付金等 – 10万円 = 医療費控除額
所得が200万円未満: 支払医療費 – 保険給付金等 – 所得金額 × 5% = 医療費控除額
② 災害(地震、 台風等)や盗難により住宅や家財に被害を受けた場合(雑損控除)
災害の場合には、 災害減免法により所得税の軽減・減免を受けられることもあります。
③ 特定の寄付をされた方(寄付金控除や政党等寄付金特別控除)
④ 初めて住宅ローン控除を受ける方(住宅借入金等特別控除)
⑤ 年末調整時に提出ができなかった、 或いは洩れている控除項目がある方
生命保険料控除、 地震保険料控除、 配偶者特別控除、 各種の扶養者控除等
⑥ 中途退職され再就職しなかった方
退職までの給与収入に対する源泉徴収税額が年税額として過大となっているケースが殆どです。 又、 退職金に対して20%源泉になっている場合も可能性がありますし、退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になっている方。
2. 上場株式等に係る配当所得(申告分離課税選択)と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算
3. 予定納税されたが確定申告不要となった方
4. 所得が少ない状況で配当や原稿料収入等からの源泉徴収税額が、 本来の納付すべき税額よりも多額となっている方
5. 外国税額控除の適用がある方
6. 申告の要件となっている項目がある方
① その年の翌年以降に純損失又は雑損失の繰越控除を受けるため、 ② その年分の純損失の金額について純損失の繰戻しによる還付を受けるため、 ③ 居住用財産の買換又は特定居住用財産の譲渡損失及び繰越控除を受けるため、 等には確定申告の提出が必要となります。

B. 贈与税
ご存知かと思いますが、 暦年課税制度の場合には、下記に示す様に年間に受けた贈与額が110万円以下ならば非課税範囲のために贈与税の申告等は必要ありません。
1. 年間合計で110万円超の財産贈与(個人からの土地、 建物、 現金、 預貯金、 株式、 債権等の財産の贈与)を受けた方(暦年課税で下記の②の選択者を除く)
2. 相続時精算課税制度(60歳以上の父や母の直系卑属からの贈与者ごとに累積で特別控除額2,500万円)の選択者で財産贈与を受けた方(18歳以上の推定相続人の子、 並びに孫に限る)
3. 直近尊属から住宅取得等資金贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
特定受贈者(贈与年の1月1日現在18歳以上で合計所得金額2,000万円以下の者)が、 その直系尊属(親、祖父母等)から受ける居住用家屋の新築・取得・増改築等用に住宅取得等資金の贈与については、非課税措置の適用期限を令和5年12月31日まで延長し、 非課税限度額は以下のようになります。

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間良質な住宅用家屋(省エネ等住宅)左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅)
平成31年4月~令和2年3月3,000万円2,500万円
令和2年4月~令和3年12月1,500万円1,000万円
令和4年1月~令和5年12月(契約の締結時期を問わない)1,000万円500万円

4. 配偶者控除の特例(控除額2,000万円)を適用し、 配偶者から居住用不動産又はその取得資金の贈与を受けた方(婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与に限る)
5. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度、等
平成25年4月1日から令和5年3月31日までの期間に直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 この制度適用のためには、 受贈者は教育資金非課税申告書を金融機関等を経由して税務署に提出する必要がありますが、 申込時に対応されていると思いますので特に問題となることはないでしょう。

C. 消費税
個人事業者で下記に該当する方は納税義務者(課税事業者)として申告する必要があります。
1. 基準期間となる前々年度(令和2年度)の課税売上高が1,000万円超の事業者の方
2. 特定期間となる前年(令和3年度)の1月1日から6ケ月間の課税売上高が1,000万円超で、 かつ、 同期間の給与等支払総額が1,000万円超の事業者の方
3. 免税事業者となる方が、 課税事業者となることを選択(消費税課税事業者選択届出書を事前に提出)している方(簡易課税選択者も含む)
納税義務者の判定上の留意事項:
(1) 基準期間の課税売上高は、 消費税込の金額となり、 事業用資産(住宅用として貸付けていた建物等)の譲渡の対価金額も含まれます。
(2) 被相続人(亡くなられた方)の事業を相続により承継した相続人には、 被相続人が提出していた各種の届出書の効力は及ばないので、 新たに提出する必要があります。
(3) 新規開業又は相続により事業を承継したときに、 消費税課税事業者選択届出書を提出した場合の適用開始時期は、 当該課税期間か翌課税期間かを選択できます。
(4) 消費税課税事業者選択届出書を提出されている場合には、 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、 その効力が消滅することはありません。

以上が、所得税、贈与税、消費税に関する確定申告の対象者の概要です。 

2023年2月16日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

法定調書: 申告書提出期限1月末

1. 法定調書とは
12月の最終給与支給までに、 従業員の年末調整が行なわれ一区切りついたと思っても、 翌1月末までに提出、申告等の対応が必要となるものがあります。 その1つに法定調書作成がありますが、 これは、所得税法、相続税法等の法律の規定により、給与、報酬、家賃等の支払者(提出義務者)が、それらの1年間の支払いに関して、支払先の氏名、住所、支払金額等を記載し所轄税務署に提出が義務付けられている書類(全部で60種類ほど)です。この主目的は、税務署が適正な課税の確保を図ることを目的に支払事実を把握し、受給者が正しく所得を申告していることの確認手段になるものです。 提出すべき法定調書は、 特定項目の一定金額以上のものですが、 源泉徴収の対象になるものとは限っておりませんので留意してください。
なお、 2016年度分より行政機関への提出にあたり、 マイナンバー(個人番号、等)が必要となっています。

2. 提出する一般的な6種類の法定調書と支払内容

提出する調書支 払 内 容
給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書(注2)俸給、給料、賞与等の支払
退職所得の源泉徴収票と特別徴収票(注2)退職手当(注1)、一時恩給等の支払
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書① 原稿料、印税、講演料、工業所有権の使用料等の支払
② 弁護士、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士、建築士等への報酬、料金の支払
③ 外交員、集金人、電力量計の検針人、モデル、プロ野球の選手、プロボクサー、騎手等への報酬、料金、契約金の支払、芸能人への出演料等の支払
④ バー、キャバレー等のホステス、コンパニオン等への報酬、料金の支払
⑤ 広告宣伝のための賞金、馬主への競馬の賞金の支払
不動産の使用料等の支払調書地代、家賃、権利金、礼金、更新料、承諾料、名義書換料等の支払
不動産等の譲受の対価の支払調書土地、建物等の譲受け(売買、交換、収用等)の代金の支払
不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書土地、建物等の売買や貸付の仲介手数料の支払

注1:死亡退職による退職手当等の場合には、相続税法による「退職手当等受給者別支払調書」を提出することになります。
注2:地方税法で提出が義務付けられています「給与支払報告書」及び「特別徴収票」は、名称が異なるだけで、それぞれ「給与所得の源泉徴収票」及び「退職所得の源泉徴収票」と記載内容は同じものです。

3. 提出範囲
支払調書は、一定金額以上のもの等(支払金額の提出範囲)に該当するときに提出が必要となります。主な提出範囲は次のとおりです。

(1)給与所得の源泉徴収票

年末調整受給者区分提出範囲(年間)
年末調整をしたもの法人役員(相談役、顧問など含む)150万円超
弁護士、公認会計士、 税理士等250万円超
上記以外の人(従業員)500万円超
年末調整をしなかったもの給与収入2,000万円超全部
「扶養控除等申告書」を提出した者のうち退職した者等250万円超(法人役員は50万円超)

(2)報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20の規定に基づく報酬 料金等の支払

区 分提出範囲
* 外交員、集金人、検針人、プロボクサー、ホステス等の報酬、料金
* 広告宣伝のための賞金
* 社会保険診療報酬支払基金からの診療報酬
年間50万円超
馬主に支払う競馬の賞金1回75万円超
プロ野球選手等の報酬及び契約金
弁護士、税理士等の報酬
作家、画家などの原稿料、画料
講演料、 その他の報酬、 料金等
年間5万円超

(3)その他の法定調書

法定調書提出範囲
退職所得の源泉徴収票法人役員が受給者であるもの
不動産の使用料等の支払調書
注:不動産、 不動産の上に存する権利、 総トン20トン以上の船舶、 航空機に対する対価を受領する法人と不動産業の個人の方が提出義務者となります。
年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。
又、法人に対し賃借料のみを支払っている場合にはその支払調書の提出は不要ですが、支払が権利金、更新料等は提出が必要となります。
不動産管理会社を通じて、オーナーが個人の場合には、個人に支払う使用料等として提出となります。
不動産等の譲受の対価の支払調書年間100万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。
不動産等の仲介料の支払調書年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません
公的年金等の源泉徴収票「扶養控除等申請書」を
提出した者:60万円超
提出しなかった者:30万円超
配当等の支払調書10万円超(中間配当がある場合は5万円超)
生命保険契約等の一時金の支払調書100万円超
損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書100万円超
株式等の譲渡対価の支払調書同一人に対し100万円超
1回30万円超
国外送金等調書1回100万円超

4. 提出先と提出期限
法定調書の提出期限は、原則として、その年の翌年の1月31日までとなっており、所轄税務署に提出することになります。税務署に提出する場合には、法定調書の合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)と各法定調書(提出範囲のもの)を提出します。

支払金額に関係なく受給者(個人・法人)の全員にも、 翌年の1月31日まで帳票が送付され(法的には送付は強制されていませんが、通常は送付しています)、 個人では確定申告の作成資料等に使用、 又、 法人では受給金額・内容との照合等に使用することができます。

法定調書の提出方法に関して、基準年(前々年)の提出枚数が100枚以上であった法定調書の場合には、光ディスク等又はe-Taxによる提出が義務付けられています。

5. 給与所得の源泉徴収票 (給与支払報告書)
サラリーマンの方にはお馴染みの給与所得の源泉徴収票は、 その年の給与所得に関する年末調整後(給与収入が2千万円超の方等は除く)の源泉徴収税額や税額計算情報が集約され記載されています帳票です。 税務署には、 一定金額以上の給与収入の「源泉徴収票」が提出され、 又、 同一内容ですが様式名が異なる給与支払報告書が個人の居住する市区町村に金額の制限なく全ての方の分が提出されます。
「給与支払報告書」(総括表を添える)提出先は、受給者(全員分)のその年の翌年の1月1日現在の住所地の市区町村となり、 提出期限は翌年の1月31日までとなっています(個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます)。
年度の途中で退職した者に対する給与支払報告書は、 支払額が30万円以下の場合には提出を省略することができます。 退職金の「特別徴収票」の提出先は、 受給者の退職日現在の住所地の市区町村となっており、 退職後1ケ月以内の提出となります。 市区町村では、 提出された資料から住民税の税額計算をおこない、 翌年6月から徴収を開始し1年間で納付が完了となります。

 2023年1月9日 償却資産の申告(固定資産税): 申告書提出期限1月末
1. 固定資産税とは
固定資産税とは、1月1日現在で国内に土地、家屋又は償却資産(事業用資産)の固定資産を所有している者に対し、当該固定資産の評価額を基に算定された税額を資産の所在する市区町村(東京23区内は特例で区でなく都が課税)が課する地方税をいいます。
課税対象のうち、土地と家屋については登記簿等で市区町村では実在を確認できることになりますが、償却資産は毎年1月1日に所有しているものを自己申告を通じて、固定資産(償却資産)課税台帳に登録され課税されることになります。

2. 固定資産税(土地・家屋)
土地と家屋については、登記事項のため市区町村は、その登記簿等に基づいて固定資産税を計算し、1月1日現在の所有者に納税通知書と同時に課税明細書が5月末前後に送られてきますので、当所有者は申告等の手続の必要はありません。
税率はいずれも1.4%であり、土地は課税標準額に、家屋は課税台帳に登録されている価格に掛けて税額が算定されます。なお、市区町村内に所有する固定資産の課税標準額が、土地30万円、家屋20万円未満の場合には、固定資産税は課税されません。
納期は年4回(6月、9月、12月、2月:市区町村によっては1ヶ月早まるところもあります)です。土地とは、田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野等です。家屋とは、住宅、店舗、工場、倉庫等です。

3. 固定資産税(償却資産)
償却資産とは、土地と家屋以外の事業用に供している減価償却対象資産のものをいいます。1月1日現在で償却資産を事業用に使用している所有者(法人や個人事業者)は、所定の申告書を作成し、1月31日までに償却資産の所在する市区町村ごとに提出しなければなりません。課税対象が償却資産に対する税金ということで償却資産税とも言われています。

(1)償却資産の対象(課税資産)
法人や個人で事業を行っている方で事業のために使用している減価償却の対象資産のうち、その取得価額が一定金額以上のものについては、償却資産となります。具体的には、以下のようなものが償却資産となっています。

① 構築物
舗装路面、庭園、門・塀・緑化施設等の外構工事、看板(広告塔等)、ゴルフ練習場設備等、並びに建物付属設備(受変電設備、予備電源設備、その他建築設備、内装・内部造作等)
② 機械及び装置
各種製造設備等の機器及び装置、クレーン等建設機械、機械式駐車設備等
③ 船舶
ボート、釣船、漁船、遊覧船等
④ 航空機
飛行機、ヘリコプター、グライダー等
⑤ 車両及び運搬具
大型特殊自動車、構内運搬車,貨車、客車等
⑥ 工具、器具及び備品
パソコン、陳列ケース、看板(ネオンサイン)、医療機器、測定工具、金型、理容及び美容機器、ルームエアコン、自動販売機等

以下の資産も償却資産として申告の対象になります。
・ 建設仮勘定で処理されている資産、簿外資産及び償却済資産であっても、1月1日現在で事業用に供することができる場合
・ 遊休又は未稼働の資産であっても、1月1日現在で事業用に供することが出来る状態にある場合
・ 耐用年数が1年未満又は取得価額が10万円未満の資産であっても、有形固定資産として計上し、減価償却している場合
・ 青色申告の中小企業法人・個人事業者については、取得価額が30万円未満の資産を一時に損金算入する処理(少額資産償却特例)がなされていても、この特例は国税(法人税・所得税)に関する制度であり、この地方税の固定資産税には適用されません。従って、この資産は固定資産税の申告対象となります。
その他、 所有権が留保されている資産(賃貸資産、 等)

(2)償却資産の非課税資産
償却資産の対象とならないものは、次のとおりです
(1) 土地や建物(いずれも登記対象資産であることから、 所有者を把握できますので敢えて償却資産として申告の対象にしていません)
(2) 自動車税・軽自動車税の課税対象(2重課税の排除)
(3) 無形固定資産(特許権、 営業権、 ソフトウェア等)
(4) 繰延資産
(5) 生物(観賞用、 興行用その他これらに準ずる生物は除く)
(6) 金額的に少額資産と言われる下記の資産:
① 取得価額が10万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたもの
② 取得価額が10万円以上20万円未満の資産で、 税務上、 3年間で一括償却しているもの
注1: 租税特別措置法の規定により、 一定の中小企業に対する特例を適用して、 取得価額が30万円未満の資産で一時に損金算入、 又は必要経費として処理されたものでも、償却資産の申告対象になっています。
注2: 上記以外の資産で企業や個人で事業を行なっている方が事業のために用いることができる資産、 即ち、 構築物、 機械及び装置、 船舶、 航空機、車両及び運搬具、 工具・器具及び備品で有形減価償却資産が対象となります。 次のものも償却資産の対象となります。
(1) 建設仮勘定で計上されている資産、 簿外資産及び償却済資産であっても事業用に供することができるもの
(2) 遊休又は未稼働のものであっても事業用に供することができるもの
(3) 改良費(資本的支出)
(4) 家屋に施した建築設備・造作等のうち、 償却資産として取り扱うもの
建築設備における家屋(建物・建物附属設備)と償却資産とを区分して評価することになります。 家屋と設備の所有者が同一の場合に、 償却資産として取り扱うものは次の要件を満たすものです。
① 構造的に家屋と一体的でないもの (野外給水塔、 独立煙突等)
② 家屋から独立した機械及び装置として性格の強いもの (受・変電設備)
③ 特定の生産又は業務に使用されるもの (動力用配線設備等)
④ 単に移動を防止する程度に家屋に取り付けられたもの (ルームエアコン等)
⑤ 顧客の求めに応ずるサ-ビス設備

(4)固定資産税額等の算出方法(資産が所在する所轄の市区町村ごとに行ない、 申告書を作成します)
(1) 評価価額の算出方法
① 取得初年度
評価価額 = 取得価額 X 耐用年数に応ずる減価率 X 1/2(50%)
② 取得後2年目以降
評価価額 = 前年度の評価価額 X 耐用年数に応ずる減価率
(2) 固定資産税額の算出方法
① 課税標準額の集計(1,000円未満切捨て)
各資産の評価価額を集計(合算)した額が課税標準額(決定価格となります)です。
課税標準額が150万円未満の場合には、 固定資産税は課税されません。
② 税額の計算
固定資産税額(100円未満切捨て) = 課税標準額(1,000円未満切捨て) X 税率(1.4%)

(5)償却資産の申告
所定の償却資産申告書、 種類別明細書、 等の書類を資産の所在する市区町村ごとに作成し、 1月末までに提出(申告)することになります。 申告方式には、 以下の2方法がありますが、通常は一般方式を採用しています。
その方式とは、 前年中(申告対象年度)に増加又は減少した資産内容を申告するのみで、 評価額、 税額等は所管事務所で行う方式です。
注1: 前年中に増加又は減少した資産が無い場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「増減なし」等を付記します。
注2: 事業を行なっていますが、 対象償却資産を所有されていない場合でも申告は必要です。 その場合には、 申告書上の備考に「該当資産なし」を付記します。

以上

2023年1月10日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

2023年度(令和5年度)税制改正大綱(所得税、贈与税・相続税、法人税、消費税)

2022年(令和4年)12月16日に自民、公明党の両党は2023年度(令和5年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の概要(所得税、贈与税・相続税、法人税、消費税)となります。

個人所得課税の改正
1.非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置の見直し(新NISA)
資産所得倍増プランの実現に向けて「貯蓄から投資へ」と振り向ける為にNISA制度の抜本的拡充し時限措置を恒久化する(新NISA)。
(1)非課税保有期間(積立期間)
積立期間の制限なし(無期限化)
(2)非課税限度額
① つみたて投資枠(一定の公募等株式投資信託)
年間120万円へ拡充(現行年間30万円まで)
② 成長投資枠:従来の一般NISA(上場株式等)
年間240万円へ拡充(現行年間120万円まで)
③ 新たに①と②の併用が可能となり年間投資上限額の合計が360万円となる。
④ 生涯にわたる非課税限度額は、①と②の合計で最大元本1,800万円まで(そのうち成長投資枠は最大1,200万円まで)となる。
新NISAは令和6年1月1日より適用となる。現行の一般NISA及びつみたてNISAについては、令和5年末で終了となりますが、新NISAの非課税限度額の外枠で取扱いが継続となります。

新NISA①つみたて投資枠②成長投資枠
対象者18歳以上
非課税期間無期限
投資可能商品一定の公募等株式投資信託上場株式等
年間投資上限額120万円240万円
投資枠の選択①と②の併用可能(年間投資上限額の合計360万円)
生涯非課税限度額買付残高1800万円(内、成長投資枠1200万円):評価益を含まない

2.未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(ジュニアNISA)
ジュニアNISA(投資可能期間は令和5年12月31日までで終了)について、5年経過後に非課税管理勘定から継続勘定管理勘定に原則として移管されることになりますが、移管しない場合にはその旨等を記載した書類を提出しなければなりません。

3.特定中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例(スタートアップ支援)の創設
保有する株式を売却してスタートアップに再投資する場合の優遇税制を創設し、スタートアップへの資金供給を強化する。その為に、保有株式の譲渡益を元手に創業者が創業した場合やエンジェル投資家が特に資金が集まりにくい創業初期のスタートアップに再投資を行った場合に、再投資分につき株式譲渡益に課税しない優遇制度を創設する。
(1)投資時
一般株式等からの譲渡所得等金額又は上場株式等からの譲渡所得等金額から特定中小会社株式の取得金額(両株式等からの譲渡所得等金額の合計額を限度)を控除後の譲渡益に対して課税する。
(2)譲渡時
特定中小会社株式の取得金額は、上記(1)で控除した金額から20億円を超える部分の金額を控除した金額とする。
(3)投資対象となるスタートアップの特定中小会社とは
 ① 設立1年未満の中小事業者等
 ② 出資金額×30%<販管費
 ③ 特定の株主グループの持株割合が99%以下
 ④ 上場会社ではない等

4.エンジェル税制について、所要の見直しがあります。

5.特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等(ストックオプション税制)
新株予約権の行使はその付与決議の日後2年超かつ10年経過内までに行う要件が、一定の株式会社(設立5年未満で非上場会社等の要件を満たす会社)が付与する新株予約権については、その付与決議の日後2年超かつ15年経過内となります。

6.超富裕層への課税強化
その年分の基準所得金額から3億3,000万円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額がその年分の基準所得税額を超える場合には、その超える金額に相当する所得税が課税されます。
(①基準所得金額-3億3,000万円)×22.5%-②基準所得税額を所得税額に加算
① 基準所得金額とは
 配当及び上場株式譲渡益の申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額(特別控除額の控除後の金額)
なお、合計所得金額には、源泉分離課税の対象となる所得金額を含まない(NISA制度及び特定中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例における非課税のものも含まない)。
② 基準所得税額とは
 基準所得金額に係る所得税額(分配時調整外国税相当額控除及び外国控除の適用前の税額で附帯税を除く)
改正は令和7年度の所得税から適用となる。

7.短期所有土地の譲渡所得の非課税特例の延長
適用停止措置期限の3年延長(令和8年3月31日まで)する。

8.空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例
適用期限を4年延長(令和9年12月31日まで)する。
(1)本特例の適用対象となる相続人が相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(当該相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないものに限る。)の一定の譲渡又は当該被相続人居住用家屋とともにする当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(当該相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないものに限る。)の一定の譲渡をした場合において、当該被相続人居住用家屋が当該譲渡の時から当該譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に次に掲げる場合に該当することとなったときは、本特例を適用することができることとする。
 イ 耐震基準に適合することとなった場合
 ロ その全部の取壊し若しくは除却がされ、又はその全部が滅失をした場合
(2)相続又は遺贈による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人の数が3人以上である場合における特別控除額を2、000万円とする。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡について適用する。

9.低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除
適用期限を3年延長(令和7年12月31日まで)する。
(1)適用対象となる低未利用土地等の譲渡後の利用要件に係る用途から、いわゆるコインパーキングを除外する。
(2)次に掲げる区域内にある低未利用土地等を譲渡する場合における低未利用土地等の譲渡対価に係る要件を800万円以下(現行:500万円以下)に引き上げる。
 イ 市街化区域又は区域区分に関する都市計画が定められていない都市計画区域(用途地域が定められている区域に限る。)
 ロ 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する所有者不明土地対策計画を作成した市町村の区域
上記の改正は、令和5年1月1日以後に行う低未利用土地等の譲渡について適用する。

10.優良住宅の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税特例
適用範囲の見直し、その適用期限を3(令和7年12月31日まで)年延長する。

11.肉用牛の売却による農業所得の課税特例
適用期限を3年延長(令和8年12月31日まで)する。

12.給与所得者の扶養控除等申告書に記載の簡略化
扶養控除等申告書に記載すべき事項がその年の前年の申告内容と異動がない場合には、その記載すべき事項の記載に代えて、その異動がない旨の記載によることができることとする。
上記の改正は、令和7年1月1日以後の申告書について適用する。

13.給与所得者の保険料控除申告書の記載の簡略化
一定の事項(申告者との続柄)の記載を要しないこととする。
上記の改正は、令和6年10月1日以後の提出申告書について適用する。

14.源泉徴収票の提出方法変更
市区町村に給与支払報告書を提出した場合には税務署にも源泉徴収票を提出したとみなすことになります。
上記の改正は、令和9年1月1日以降提出すべき源泉徴収票から適用する。

15.個人事業の各種届出書の見直し及び簡素化
(1)個人事業の開業・廃業等届出書の提出期限は、その事業開始年分の確定申告期限とする(改正は、令和8年1月1日以後の事業開始から)。
(2)青色申告のやめる旨の届出書の提出期限は、その事業開始年分の確定申告期限とする(改正は、令和8年分以後の所得税から)。
(3)次の届出書等の記載事項は簡素化する(改正は、令和9年1月以後から)。
イ 納期の特例に関する承認の申請書
ロ 青色申告承認申請書及び青色専従者給与に関する届出書
ハ 給与等の支払をする事務所の開設等の届出書

16.国民健康保険税の上限額引上等
(1)後期高齢者支援金の課税限度額を22万円へ引上げ(現行20万円)
(2)国民健康保険税の減額対象となる所得金額引上げ
 ① 5割軽減|被保険者の数×29万円(現行28.5万円)
 ② 2割軽減|被保険者の数×53.5万円(現行52万円)

17.所得税額に対して、税率1%の新たな付加税
防衛力強化に係る財源確保の為に、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す。現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下げるとともに、課税期間を延長する。
上記の施行時期は、令和6年以降の適切な時期とする。

18.非居住者のカジノ所得の非課税制度の創設
非居住者の令和9年1月1日から令和13年12月31日までの間のカジノ所得については、所得税を課さない。

以上

資産課税(相続税・贈与税)の改正

1 相続時精算課税制度の見直し
(1)相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
つまり、非課税限度額2,500万円とは別枠で年間110万円の控除が可能となります(年間110万円を超えたら贈与税の申告が必要となります)。
(贈与額-基礎控除110万円-特別控除累計2,500万円)×一律20%=贈与額
上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。
この改正により、暦年課税と同額の基礎控除が認められることから、この相続時精算課税制度の活用が促進することが期待されます。
(2)相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用する。

 現行改正
贈与額の計算(贈与額-特別控除累計2,500万円)×一律20%(贈与額-基礎控除110万円-特別控除累計2,500万円)×一律20%
贈与税申告少額の贈与額でも贈与税の申告が必要年間の基礎控除110万円を超えた場合には贈与税の申告が必要
相続財産の加算すべき贈与財産取得した全ての相続時精算課税の財産取得した全ての相続時精算課税の財産(但し、年間の基礎控除110万円内の控除分を除く)
又、贈与財産が災害により一定の被害を受けた土地・建物である場合は相当額の控除可能

2.暦年課税における生前贈与の相続財産加算期間延長
相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。
つまり、現行の3年以内のものが、改正により、
3年以内の贈与額全額+(延長した4~7年の贈与額合計-100万円)を相続税の課税価格に加算すことになります。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。
改正後の相続開始日と加算期間との関係は以下の通りです。

相続開始日加算期間(相続開始日から) 
令和8年12月31日まで3年前改正の影響無し
令和9年度内3年超又は4年前未満1年ずつ段階的に加算期
間が延長されていく
令和10年度内4年超又は5年前未満
令和11年度内5年超又は6年前未満
令和12年度内6年超又は7年前未満
令和13年度以降7年前加算期間が7年となる

3.直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の見直し
(1)その適用期限を3年延長(令和8年3月31日まで)する。
(2)贈与者が死亡した場合、その相続税の課税価格の合計額が5億円超のときは、例え受贈者が23歳未満であっても、その死亡日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額を、受贈者は贈与者から相続等により取得したものとみなされます(課税対象の拡大)。
(3)受贈者が30歳に達した場合等において、贈与税が課されるときは(非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額)、年齢にかかわらずその残額に一般税率を適用する(現行:受贈者が18歳以上の場合には特例税率の適用)。
上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する相続税又は贈与税に適用する。

4.直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の見直し
受贈者が50歳に達した場合等において、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率(現行:特例税率)を適用することとした上、その適用期限を2年延長(令和8年3月31日まで)する。
上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する贈与税に適用する。

5.医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し
(1)その適用期限を令和8年12月31日までの3年3ヶ月延長する。
(2)当該制度における移行期限を、移行計画の認定日から起算して5年(現行3年)を超えない範囲内とする。

6.土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の延長
適用期限を3年延長(令和8年3月31日まで)する。

7.更正期限前6月以内における相続税の更正請求の見直し
更正をすることができないこととなる日前6月以内に相続税の更正の請求がされた場合において、当該請求に係る更正に伴い当該請求をした者の被相続人から相続等により財産を取得した他の者に係る課税価格等に異動を生ずるとき(当該他の者に係る通常の更正決定等の除斥期間が満了する日以前に当該請求がされた場合に限る。)は、当該他の者の相続税に係る更正若しくは決定又は当該更正若しくは決定等に伴う加算税の賦課決定は、当該請求があった日から6月を経過する日まで行うことができることとするほか、所要の整備を行う。

以上

法人課税の改正
1.中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の適用期限延長
適用期限を2年延長(令和7年3月31日まで)する。

2.中小企業投資促進税制の見直し
対象資産の一部除外(概ね全てを委託する本業以外のコインランドリー業の機械装置)・限定(総トン500トン以上の船舶)して、その適用期限を2年延長する(所得税も同様)。

3.中小企業経営強化税制の見直し
特定経営力向上設備等の対象から、本業以外でコインランドリー業と暗号資産マイニング業の機械装置でその管理の概ね全部を他の者に委託するものは適用除外となり、その適用期限を2年延長(令和7年3月31日まで)する(所得税も同様)。

4.青色申告の承認申請書について、記載事項の簡素化
上記の改正は、令和9年1月1日以後に開始する事業年度から適用

5.青色申告書による申告をやめる旨の届出書の提出期限
やめる旨の届出書の提出期限は、青色申告をやめようとする事業年度の確定申告書の提出期限(現行:その申告をやめようとする事業年度終了の日の翌日から2月以内)とするとともに、記載事項の簡素化を行う。
上記の改正は、令和8年1月1日以後に開始する事業年度から適用

6.退職年金等積立金に対する法人税課税の停止措置の延長
適用期限を3年延長(令和8年3月31日まで)する。

7.医療用機器等の特別償却制度の見直し
対象機器を見直して、その適用期限を2年延長(令和7年3月31日まで)する。

8.特定の資産の買換えの場合等の課税特例の見直し
以下の主な見直し行い、その適用期限を3年延長(令和8年3月31日まで)する。
(1)既成市街地等の内から外への買換えを適用対象から除外する。
(2)長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物等への買換えについて、東京都の特別区の区域から地域再生法の集中地域以外の地域への本店又は主たる事務所の所在地の移転を伴う買換えの課税の繰延べ割合を90%(現行:80%)に引き上げ、同法の集中地域以外の地域から東京都の特別区の区域への本店又は主たる事務所の所在地の移転を伴う買換えの課税の繰延べ割合を60%(現行:70%)に引き下げる。
(3)先行取得の場合、特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例及び特定の資産を交換した場合の課税の特例を除き、譲渡資産を譲渡した日又は買換資産を取得した日のいずれか早い日の属する3月期間の末日の翌日以後2月以内に本特例の適用を受ける旨、適用を受けようとする措置の別、取得予定資産又は譲渡予定資産の種類等を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に届け出ることを適用要件に加える(改正は、令和6年4月1日以後の譲渡・取得の届出に適用)。

9.暗号資産の評価方法等の見直し
(1)法人が事業年度末に保有する暗号資産の時価評価による評価損益対象の範囲から、以下の要件に該当する暗号資産を除外することになります。
① 自己が発行した暗号資産でその発行時から継続保有しているもの
② その暗号資産の発行時から継続して、次のいずれかにより譲渡制限が行われているもの:
(イ)他人に移転できないように技術的措置がとられていること
(ロ)一定の要件を満たす信託財産としていること
(2)自己が発行した暗号資産について、その取得価額を発行に要した費用額とする(所得税も同様)
(3)法人が暗号資産交換業者以外の者から借り入れた暗号資産を譲渡した場合、その譲渡した事業年度末までにその暗号資産と種類を同じくする暗号資産を買戻ししていないときは、その時においてその買戻しをしたものとみなして評価損益を計上する。

10.電子帳簿等保存制度の見直し
(1)国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度について、一定の国税関係帳簿に係る電磁的記録の保存等が、国税の納税義務の適正な履行に資するものとして一定の要件等を満たしている場合におけるその国税関係帳簿(以下「優良な電子帳簿」という。)に係る過少申告加算税の軽減措置の対象となる申告所得税及び法人税に係る優良な電子帳簿の範囲を次のとおりとする。
① 仕訳帳
② 総勘定元帳
③ 一定の事項の記載に係る上記①及び②以外の帳簿
上記の改正は、令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用する。
(2)国税関係書類に係るスキャナ保存制度の見直し
① 国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件を廃止する。
② 相互関連性要件について、相互関連性を求める書類は、契約書・領収書等の重要書類に限定する。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に保存される国税関係書類に適用する。
(3)電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の見直し
① 保存要件の緩和
イ 税務調査等において電子データをダウンロードできる場合には全ての検索要件を不要とされる対象者は次のとおりとなります。
(イ)その判定期間の売上高が5千万以下(現行:1千万以下)の保存事業者
(ロ)その電子データの出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限ります)での提示又は提出の求めに応じられる保存事業者
ロ 電子データの保存者等に関する情報の確認要件は廃止します。
② 保存要件を満たさないことに相当の理由がある場合の取扱い
保存要件を満たさすことができなかったことに相当な理由があると所轄税務署長が認め、かつ、その電子データの出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限ります)での提示又は提出の求めに応じられる場合には、電子データの保存として取扱うこととする。
③ 現行の適用延期は令和5年12月末までとなります。
上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録について適用する。

11.試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)の見直し
研究開発税制では、投資を増加させるインセンティブを更に強化するため、試験研究費の増減率に応じた税額控除率の見直し、増減試験研究費割合によって税額控除の上限も変動させる新たな仕組みも導入されます。
オープンイノベーション型において、研究開発型スタートアップ企業の対象範囲拡大、企業による先導的研究開発人材(博士号取得者や経験を積まれた外部人材)の活用・育成を行った場合の人件費の一部を特別試験研究費の対象とし新たな類型も創設されます。
具体的には、以下の研究開発税制が見直されています。
(1)一般試験研究費の額に係る税額控除制度
(2)中小企業技術基盤強化税制
(3)特別試験研究費の額に係る税額控除制度

12.税率4~4.5%の新たな付加税
防衛力強化に係る財源確保の為に、法人税額に対し、税率4~4.5%の新たな付加税を課す。中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から 500 万円を控除することとする。

13.グローバル・ミニマム課税の導入
内国法人(公共法人を除く)は、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税を納める義務が生じます。つまり、グローバル企業の法人税負担の最低税率を15%とする制度を令和6年度から導入されます。

14.加算税制度の見直し
(1)無申告加算税の割合(現行:15%(納付すべき税額が 50万円を超える部分は20%))について、納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合を30%に引き上げる。 (注1)調査通知以後に、かつ、その調査があることにより更正又は決定があるべきことを予知((2)において「更正予知」という。)する前にされた期限後申告又は修正申告に基づく無申告加算税の割合(現行:10%(納付すべき税額が50万円を超える部分は 15%))については、上記の納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合を25%とする。 (注2)上記の納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合について、納付すべき税額が300万円を超えることにつき納税者の責めに帰すべき事由がない場合の適用に関する所要の措置を講ずる。
(2)過去に無申告加算税又は重加算税が課されたことがある場合に無申告加算税又は重加算税の割合を10%加重する措置の対象に、期限後申告若しくは修正申告(調査通知前に、かつ、更正予知する前にされたものを除く。)又は更正若しくは決定(以下「期限後申告等」という。)があった場合において、その期限後申告等に係る国税の前年度及び前々年度の当該国税の属する税目について、無申告加算税(期限後申告又は修正申告が、調査通知前に、かつ、更正予知する前にされたものであるときに課されたものを除く。)若しくは無申告加算税に代えて課される重加算税((2)において「無申告加算税等」という。)を課されたことがあるとき、又はその無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認めるときに、その期限後申告等に基づき課する無申告加算税等を加える。
 (注)過少申告加算税、源泉徴収等による国税に係る不納付加算税及び重加算税(無申告加算税に代えて課されるものを除く。)については、上記の見直しの対象としない。

以上

消費課税の改正
1. 適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置の見直し
(1) 適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合には、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができることとする。
つまり、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間で免税事業者が適格請求書発行事業者になった場合には、その課税期間の消費税の納税額は課税売上の消費税額×20%になるという経過措置です。
但し、課税期間の特例の適用(課税期間の短縮)を受ける課税期間及び令和5年10月1日前から課税事業者選択届出書の提出により免税事業者ではない日の課税期間には適用がありません。
なお、課税事業者選択届出書の提出により令和5年10月1日の属する課税期間から免税事業者ではなくなる適格請求書発行事業者が、当該課税期間中に課税事業者選択不適用届出書を提出した時には、当該課税期間から課税事業者選択届出書の効力が失われることに留意する必要があります。
(2) 適格請求書発行事業者が上記(1)の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記する必要がものとする。
(3)上記(1)の適用を受けた適格請求書発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を納税地を所轄する税務署長に提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を認められます。

以上は、実質的に簡易課税制度を採用している場合の第二種事業(小売業等)に係る計算と同じです(みなし仕入れ率が80%)。この経過措置は、業種に関係なくどの事業者でも納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができます。事前に届出書の提出が必要なものではなく、申告書に付記することにより経過措置の適用を受けるか否か選択することができますので、従来通りの計算方法による納付税額と経過措置による納付税額のうち有利な方を選択することができることになります。

2.一定規模以下の事業者は1万円未満の課税仕入れにつき帳簿の保存のみで仕入税額控除可能(課税仕入額10,000円未満の適格請求書(インボイス)の不要特例)
基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者(一定の小規模事業者)が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認める経過措置となります。
つまり、基準期間(2期間前)の課税売上高1億円以下又は特定期間(前期の前半6ヶ月)の課税売上高5,000万円以下の小規模事業者ならば、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入において、支払対価(税込み)10,000円未満ならば帳簿記載のみで仕入税額控除が可能となります(インボイス不要)。

3.税込10,000円未満の売上返還等(値引・返品)における適格返還請求書の交付不要
売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されます。
つまり、税込10,000円未満の売上返還(値引・返品)に対して、適格返還請求書の発行不要となりますので、振込手数料相当額を控除して入金された場合にも売上返還として処理した場合には適格返還請求書の発行不要となります。銀行の振込手数料は、課税仕入れとして処理するか売上返還等として処理するか選択適用が認められています。
上記の改正は、令和5年10月1日以後の売上返還からの適用となります。

4.適格請求書発行事業者登録制度の見直し
(1)免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:当該課税期間の初日の前日から起算して1月前の日)までに登録申請書を提出しなければならないこととする。この場合において、当該課税期間の初日後に登録がされたときは、同日に登録を受けたものとみなす。
(2) 適格請求書発行事業者が登録の取消しを求める届出書を提出し、その提出があった課税期間の翌課税期間の初日から登録を取り消そうとする場合には、当該翌課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:その提出があった課税期間の末日から起算して30日前の日の前日)までに届出書を提出しなければならないこととする。
(3)適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置の適用により、令和5年10月1日後に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、その登録申請書に、提出する日から15日を経過する日以後の日を登録希望日として記載するものとする。この場合において、当該登録希望日後に登録がされたときは、当該登録希望日に登録を受けたものとみなす。
(注)上記の改正の趣旨等を踏まえ、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、その申請期限後(令和5年3月31日後)に提出する登録申請書に記載する困難な事情については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする(登録申請が令和5年4月1日以降になっても、困難な事情理由の記載は不要で「困難な事情」とだけ記載すればよい)。

5.免税購入された物品を許可なく譲渡した場合の消費税の連帯納付義務
外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)について、免税購入された物品の税務署長の承認を受けない譲渡又は譲受けがされた場合には、当該物品を譲り受けた者に対して譲り渡した者と連帯してその免除された消費税を納付する義務を課すこととされました。
この改正は、令和5年5月1日以後に行われる課税資産の譲渡等に係る税務署長の承認を受けない譲渡又は譲受けについて適用されます。

以上

2022年12月26日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

事業所得及び雑所得の所得区分

副業収入等を確定申告する時に、その所得区分(事業所得、雑所得、給与所得)に悩むことがあるかと思います。個人で収入を得た場合には、所得税法の所得区分は10種類ありそのいずれかに区分して所得税額等を計算していく必要がありますが、判断に迷うことがあることも事実です。特に、事業所得と雑所得の解釈に疑義が生じることが少なくありませんが、所得税基本通達の改正がありましたのでその内容を含めて確認したいと思います。
1.基本的な定義
(1)事業所得
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業、等から生じる所得ということで、社会通念上事業と判定される基準として、①営利性・有償性の有無、②継続性・反復性の有無、③自己の危険と計算における企画遂行性の有無、④その取引に費やした精神的或いは肉体的労力の程度、⑤人的・物的設備の有無、⑥その者の職歴・社会的地位・生活状況、等を総合勘案するということになっています。
(2)雑所得
他の9種類の所得区分に属さない所得となります。
(3)給与所得
雇用契約に基づいて勤務の対価として受給する給与・賞与からなる所得ということになります。上記2つの所得との大きな違いは、雇用契約の存在ですが、雇用契約と同じく、他人のために活動をする契約として、「請負契約」や「委任契約」というものもあります。雇用契約の場合は、労働者は雇用者の指揮・命令に従って仕事をすることになりますが、請負契約や委任契約では、雇用主の指示ではなく自らの判断で独立して仕事をするという点が異なります。税務上で注意しなければならない点は、契約というよりも業務実態から判定されることになります。
2.事業所得及び雑所得の判定基準
(1)原則
その所得を得る為の活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているか否かでの判定となります。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存があれば概ね事業所得に該当として申告可能となります。
(2)その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合の取扱い
① その所得の収入金額が僅少となっている場合
例年(概ね3年程度の期間)、300万円以下で主たる収入金額に対する割合が10%未満である場合には僅少に該当となります。
② その所得を得る活動に営利性が認められない場合
その所得が例年赤字で、かつ、赤字解消の取組を実施していない場合(収入を増加させる、或いは所得を黒字にする為の営業活動等の実施が無い状況)には、営利性が認められないことになります。
上記に該当する場合には、事業所得ではなく業務に係る雑所得に該当することになります。

以上から、記帳・帳簿書類の保存の有無で所得区分を判定することになり、記帳・帳簿書類を保存していれば、売上300万円以下の副業であっても概ね「事業所得」として申告可能とのことです(ただし、社会通念上の「事業」に該当することが前提)。
事業所得と雑所得の区分:

収入金額他記帳・帳簿書類の保存有り記帳・帳簿書類の保存無し
300万円超社会通念上の事業状況で判定:事業所得社会通念上の事業状況で判定
300万円以下で主たる収入の10%未満、又は例年赤字で営利性無し社会通念上の事業状況で判定:事業所得社会通念上の事業状況で判定
業務に係る雑所得

2022年11月14日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

配偶者及び親族が被扶養者となる適用条件

年末調整の時期が近づいてきていますが、被扶養者になるか否か気になる方も少なくないかもしれません。この被扶養者に関しましては、所得税上と社会保険上の取扱いが、以下の様に異なりますので留意する必要があります。
1.所得税上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「所得税の扶養」とは、扶養している親族等の人数に応じて所得の控除を受けることができる制度のことになります。
① 「生計を一にする(家計を共にしていれば同居でなくてもOK)」
② 以下の所得基準(収入金額ではありません)があります。
年間所得金額が480千円以下(給与収入で1,030千円)であること。なお、70歳以上の老人扶養は、同居での所得で580千円以下(年金収入で1,680千円・給与収入で1,130千円)・同居外での所得で480千円以下(年金収入で1,580千円・給与収入で1,030千円)であること。

2.社会保険上の被扶養者とは(下記の全てを満たすこと)
「社会保険の扶養」とは、被保険者の扶養している親族等が、自分自身で社会保険料を負担することなく保険の給付を受けられる制度のことになります。
① 「三親等以内の親族は同一の世帯(同居して家計を共にしている)」であること
② 年間の収入金額(所得金額ではありません)が1,300千円未満(60歳以上は1,800千円未満)であること、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であること。いわゆる「130万円の壁」と言われるのは、この認定基準があるからです。
③ 75歳未満であること(従って、75歳以上は扶養者になれません。何故ならば、75歳から後期高齢者医療保険制度に移行になりますので、社会保険制度への加入資格はありません)

なお、社会保険加入で収入金額を「106万円」未満に収めたいと言われることがありますが、いわゆる「106万円の壁」とは、働く方でその方自身が厚生年金保険や健康保険といった社会保険への加入が必要となる収入基準のことです。こちらの保険適用基準は、以下の一定の条件を満たした場合に対象となります。
① 週20時間以上働いている
週20時間を算出する際は、残業時間を合算せずに計算します。
② 1年以上継続して勤務する見込み
雇用契約書等に1年以上継続して勤務する見込みがあること。
③ 1カ月の賃金が8.8万円超
1カ月の賃金が8.8万円を超すというもの。1カ月の賃金が8.8万円を超すと、1年の年収が計算上、で106万円以上になります。ここでいう1カ月の賃金とは所定内賃金のみで、各種手当や賞与などは含みません。
④ 学生ではない

2022年10月20日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

雇用保険料率の改正(令和4年10月より)

雇用保険料率が令和4年10月より労働者及び事業主のそれぞれの負担率が、2/1000の増加となります。以下の様に、一般事業会社での労働者負担率が、3/1000から5/1000に上昇します。
(1)令和4年4月1日~9月30日までの期間
①一般の事業    9.5/1000(うち労働者負担 3/1000・事業主負担 6.5/1000)
②農林水産業等   11.5/1000(うち労働者負担 4/1000・事業主負担 7.5/1000)
③建設業      12.5/1000(うち労働者負担 4/1000・事業主負担 8.5/1000)
(2)令和4年10月1日~令和5年3月31日までの期間
①一般の事業    13.5/1000(うち労働者負担 5/1000・事業主負担 8.5/1000)
②農林水産業等   15.5/1000(うち労働者負担 6/1000・事業主負担 9.5/1000)
③建設業      16.5/1000(うち労働者負担 6/1000・事業主負担10.5/1000)

2022年9月20日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant