2026年度(令和8年度)税制改正大綱:所得税、贈与税・相続税、消費税、法人税

2025年(令和7年)12月19日に与党より、2026年度(令和8年度)税制改正大綱を発表され、その改正案は2026年3月31日に成立され、原則、4月1日に施行となる予定のものです。以下は、その改正の概要(所得税、贈与税・相続税、消費税、法人税)となります。

個人所得課税の改正
一 物価上昇局面における基礎控除等の対応
令和8年分以降の所得税について、物価高への対応の観点から、基礎控除(所得税)と給与所得控除の最低保障額が引上げられます。加えて、連動して配偶者・扶養・勤労学生などの「所得要件」も引上げられ、ひとり親控除の控除額も引上げられることになります。

1.基礎控除の引上げ
(1)本則(恒久制度)
令和8年分以降の所得税について、合計所得金額が2,350万円以下の個人の基礎控除額を4万円引上げられます。本人の合計所得金額に応じた控除額は下記の通りですが、個人住民税については、基礎控除額(43万円)の引上げは実施されません。

合計所得金額 現行改正
2,350 万円以下
(給与収入額:2,545万円以下)
58 万円62 万円
2,350 万円超 2,400 万円以下 48 万円
2,400 万円超 2,450 万円以下32 万円
2,450 万円超 2,500 万円以下16 万円
2,500 万円超0(基礎控除の適用なし)

(2)特例(基礎控除額の上乗せ措置:2年間の時限措置)
合計所得金額が655万円以下である場合、令和7年分以降の所得税について基礎控除額の上乗せ措置が講じられましたが、令和8・9年分の加算額が更に引上げられます。本人の合計所得金額に応じた特例の基礎控除額は下記の通りです。現行(令和7年分)は基礎控除額58万円に対してでしたが、改正後は基礎控除額62万円に対して上乗せがなされます。

合計所得金額
(給与収入額)
令和 8 年分令和 9 年分
現行改正現行改正
132 万円以下
(200.4万円未満)

95 万円
(+37 万円)
104 万円
(+42 万円)
95 万円
(+37 万円)
104 万円
(+42 万円)
132 万円超 ~
336 万円以下
(475.2万円未満)
88 万円
(+30 万円)
58 万円
336 万円超 ~
489 万円以下
(約665.6万円未満)

68 万円
(+10 万円)
489 万円超 ~
655 万円以下
(850万円以下)
63 万円
(+5 万円)
63 万円
(+5 万円)
63 万円
(+5 万円)
655 万円超58 万円

なお、令和10年分以降の各年分にあっては、合計所得金額が132万円以下である場合のみ、95 万円(+37 万円)の特例での控除となります。

2.給与所得控除の最低保障額の引上げと特例の創設
令和8年分以降の所得税・個人住民税について、本則で給与所得控除の最低保障額を65万円から4万円引上げられて69万円となります。更に、給与所得控除の最低保障額の特例を創設し、令和8年・9年分の給与所得控除の最低保障額を更に5万円引上げられます。

給与等の収入金額 現行改正(令和 8 ・ 9 年)
190 万円以下
65 万円74 万円
(69 万円+5 万円)
190 万円超~220 万円以下収入金額×30%+8 万円
220 万円超~360 万円以下
360 万円超~660 万円以下収入金額×20%+44 万円
660 万円超~850 万円以下収入金額×10%+110 万円
850 万円超195 万円(上限)

3.合計所得金額要件の判定金額を引上げ
基礎控除の引上げに伴い、控除判定の要件となる合計所得金額等が、以下の様に引上げられます。

項目現行改正
同一生計配偶者及び
扶養親族の合計所得金額
58 万円以下 62 万円以下
ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額58 万円以下 62 万円以下
勤労学生の合計所得金額85 万円以下 89 万円以下
家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例における必要経費の最低保障額65 万円 69 万円

4.ひとり親控除の控除額の引上げ

項目現行 改正
所得税35 万円38 万円
住民税30 万円33 万円

① 基礎控除引上、給与控除引上、合計所得金額引上
令和8年分以後の所得税(令和9年分以後の個人住民税)に適用となります。
なお、改正は令和8年分以後の所得税から適用となりますが、給与・公的年金等の源泉徴収については、令和9年1月1日以後に支払うべき給与・公的年金等から改正(源泉税額の算出率の表)が適用となります。又、令和8年分の年末調整から改正の適用となります。
今後、基礎控除等は、定期的(2年ごと)に見直されます。
② ひとり親控除引上
令和9年分以後の所得税(令和10年分以後の個人住民税)に適用となります。

5.生命保険料控除の拡充
令和8年分の一般生命保険料控除について、23歳未満の扶養親族を有する場合には、控除額が最大2万円増加し、最大6万円とされた改正について、1年延長され令和9年分の所得税に適用となります。

二 住宅ローン控除等の延長と見直し
主な改正概要としては、住宅ローン控除について、以下の措置が講じられます。
① 適用期限を「令和7年12月31日」を「令和12年12月31日」まで5年延長
② 令和8年~令和12年入居分の借入限度額・控除期間・対象住宅要件等を再整理
③ 「特例対象個人」(若年夫婦・子育て等)について、借入限度額の上乗せ枠を設定
④ 省エネ基準適合住宅について、2030(令和12)年以降は新築等が認められなくなる予定であるため、借入限度額を引き下げ、2028(令和10)年以降は、原則、適用対象外とする。
⑤ 災害危険区域等内における新築住宅(従前家屋の建替えを除く)について、2028(令和10)年1月1日以降は、適用対象外とする。
⑥ 個人住民税について、現行制度と同様に、所得税で控除しきれなかった住宅ローン控除額を、翌年度の住民税から減額(最大9.75万円)する措置を講ずる。

1.新築住宅・買取再販を行った場合の住宅ローン控除
令和8年~令和12年までに新築等をして居住の用に供した場合の、借入限度額は次の通りとなります(控除率は0.7%、控除期間は13年)。

区分
現行
(令和6・7 年入居)
改正
(令和8~12 年入居)
認定住宅(長期優良・低炭素等)4,500 万円
ZEH 水準省エネ住宅3,500 万円
省エネ基準適合住宅3,000 万円2,000 万円
(令和8・9 年入居のみ)
省エネ基準適合住宅である
買取再販住宅認定住宅等
2,000 万円
(令和10~12 年入居)
その他の住宅(買取再販住宅)
令和10 年以降の省エネ住宅も含む
2,000 万円
(控除期間 10 年)

2.既存住宅等の場合の住宅ローン控除
令和8年~令和12年までに既存住宅等の購入をして居住の用に供した場合の、借入限度額は次の通りとなります(控除率は0.7%、控除期間は13年)。なお、認定住宅等の控除期間は 10 年から 13 年に延長がされます。

区分
現行
(令和6・7 年入居)
改正
(令和8~12 年入居)
認定住宅(長期優良・低炭素等)3,000 万円
(控除期間 10 年)
3,500 万円
ZEH 水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅2,000 万円
その他の住宅2,000 万円
(控除期間 10 年)

3.特例対象個人の特例
令和7年に特例対象個人が、認定住宅等の新築等をして居住の用に供した場合の借入限度額は次の通りとなります(控除率は0.7%、控除期間は13年)。
(1)新築等の場合

区分
現行
(令和6・7 年入居)
改正
(令和8~12 年入居)
認定住宅(長期優良・低炭素等)5,000 万円
ZEH 水準省エネ住宅4,500 万円
省エネ基準適合住宅4,000 万円3,000 万円
(令和8・9 年入居のみ)
省エネ基準適合住宅である
買取再販住宅認定住宅
3,000 万円
(令和10~12 年入居)

(2)既存住宅の場合

区分 現行
(令和6・7 年入居)
改正
(令和8~12 年入居)
認定住宅(長期優良・低炭素等)3,000 万円4,500 万円
ZEH 水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000 万円

特例対象個人の範囲とは、以下のいずれかに該当することです。
① 自分の年齢が40歳未満で、かつ、配偶者を有する者
② 自分の年齢が40歳以上で、かつ、40歳未満の配偶者を有する者
③ 年齢19歳未満の扶養親族を有する者

4.床面積要件の緩和
建築確認を受けた認定住宅等の新築等については、令和7年より床面積要件が緩和(通常は50㎡以上の床面積要件が、合計所得金額1,000万円以下に限り40㎡以上に緩和)されていましたが、既存住宅を対象に追加した上で令和12年末まで延長となります。なお、この要件緩和は特例対象個人の特例には利用ができません。

5.東日本大震災の被災者等に係る住宅ローン控除の改正
同様に住宅ローン控除に改正が行われています。

三 NISA制度の拡充(未成年対応)
NISAについて、非課税口座の口座開設可能年齢の下限(現行:18歳以上)を撤廃し、あわせて未成年者向けの「未成年者特定累積投資勘定」が創設されます。

(1)口座開設年齢及び投資口座の特性

項目 現行(成人)改正(未成年)
口座開設可能年齢18 歳以上
(口座開設年の 1/1 時点)
下限撤廃
未成年者向けの勘定ジュニア NISA は終了済未成年者特定累積投資勘定を新設(令和 9 年以後の各年に設置)
成長投資枠との同時保有成人は同時保有が可未成年者特定累積投資勘定と
特定非課税管理勘定(成長投資枠)は同時に設けられない

(2)未成年者特定累積投資勘定の概要

項目内容
対象商品未成年者特定累積投資勘定は、
公募等株式投資信託の受益権のうち一定のものに限定
年間投資上限(未成年)年 60 万円上限
(かつ、通算 600 万円が上限)
配当等・譲渡対価等の管理一定年齢まで、特定課税未成年者口座(連動する預貯金口座等)で管理が必要
投信の払出し制限基準年(18 歳になる年)の前年 12/31 まで、原則として非課税口座外へ払出し不可。例外として:
① 3月31日現在で12歳になる年の前年以前に、居住家屋が災害により全壊やその他これに類する事由(税務署長の要確認)の場合での払出し可能。
② 3月31日現在で12歳になる年以降に、①以外に、子どもの同意を得た場合で教育費や生活費(特定事由)として親権者等による払出しが可能となります。
制限に反する払出し等20%(所得税 15%+住民税 5%)で源泉徴収等の措置

注:成人NISAへの移行:
18歳に達した時点で、自動的に通常のNISA(18歳以上向け)の制度へ移行し、非課税枠も成人の枠(年間360万円、最大1,800万円)に統合されます。

四 暗号資産取引に関する課税方法の見直し(分離課税化)
暗号資産取引について、金融商品取引法等の改正を前提に、暗号資産取引業を行う者に対して暗号資産(金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限る。以下「特定暗号資産」 という。)の譲渡等をした場合に、つまり、一定の暗号資産(「特定暗号資産」でかつ「暗号資産取引業者経由」)を対象として、株式等と同様の申告分離課税(20%)が適用されます。併せて、株式等と同様に損失の3年繰越控除が可能となり、取引業者から税務署への報告制度も創設されます。
なお、原則として、暗号資産からの所得は総合課税の対象であり、特定暗号資産等に該当する譲渡において分離課税となるということになります。
(1)特定暗号資産の譲渡等の課税方法見直し

項目 現行 改正
所得区分原則:雑所得特定暗号資産の譲渡等は
「譲渡所得等」を申告分離課税へ
対象範囲 すべての暗号資産取引 「金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等」=特定暗号資産に限定
税率 総合課税(所得税は累進。
住民税と合算で 最高税率55%)
一律 20%
(所得税 15%+住民税 5%)
損益通算 雑所得の損失は他の所得と通算不可(特定暗号資産)同一枠内での損益計算+繰越控除を制度化
損失の繰越雑所得は原則、繰越不可3 年繰越控除可(一定要件)
報告制度無し 取引業者から税務署へ報告書提出(氏名・住所・個人番号など)を義務化(翌年 1/31 提出期限)

(2)特定暗号資産デリバティブ取引(暗号資産の先物・証拠金等)
特定暗号資産デリバティブ取引を、先物取引の課税特例・繰越控除の対象に追加(現行制度では、雑所得で総合課税)となります。

(3)総合課税の譲渡所得に該当する暗号資産の課税方法見直し
暗号資産取引が上記(1)の対象外となり、雑所得に該当することになりますが、譲渡所得に該当することとなった場合にも、通常の雑所得と異なる課税となるような措置が講じられます。具体的には、上記(1)に該当しない暗号資産取引について、譲渡所得に該当したとしても、以下の優遇措置の適用が受けられないことになります。
① 譲渡益から特別控除(最高50万円)を控除
② 所有期間5年超の長期譲渡所得は、課税対象が1/2
③ 他の総合課税の所得との損益通算

適用開始時期について
上記の改正は原則として、金融商品取引法の改正法の施行日の翌年1月1日から適用開始となります。ただし、報告制度についてのみ、他の適用開始日から1年遅れて翌年以降の特定暗号資産の取引について適用となります。
なお、消費税についても「有価証券に類するもの」として、非課税取引の整理がされており、今後は課税売上割合の計算に影響が出るために、会計処理に留意が必要となります(5%を課税売上割合の分母に算入)。

五 高所得者層に対する課税の強化
「特定の基準所得金額の課税の特例」(いわゆる超富裕層ミニマム税)は、高所得者ほど株式譲渡益などの20%分離課税の比率が高くなり、結果として所得が増えるほど所得税の負担率が下がる(いわゆる「一億円の壁」)という状況が見られることを踏まえ、税負担の公平性の観点から、極めて高い所得について最低限の負担水準を確保するために導入されたものです。
基準所得金額が一定額を超える人について、以下の算式で計算した「加算税額」を所得税に上乗せすることになります。
現行の算式:(基準所得金額-3.3億円)×22.5%-基準所得税額
改正の算式:(基準所得金額-1.65億円)×30%-基準所得税額
改正は、令和9年分以降からの適用となります。

項目現行改正
控除額3 億 3,000 万円超1 億 6,500 万円超
税率(上乗せ計算に用いる率)22.5%30%
20%分離課税のみで適用対象になる境目9.9 億円の譲渡益 3.3 億円の譲渡益

なお、本税制の対象となる場合には、実質的には所得控除の適用が受けられなくなります。従って、iDeCo、ふるさと納税、寄付金、医療費等の支出があっても所得控除のメリットを受けることができないため留意が必要です。

六 青色申告特別控除の見直し
会計ソフトの普及や電子申告割合の向上を踏まえ、記帳水準の向上を図るとともに、デジタル時代にふさわしい記帳や申告を一層推進する観点から、令和9年分以降の所得税・住民税について青色申告特別控除について一定の見直しが行われます。
電子対応ができている納税者の控除額は引上げがされるものの、紙対応の納税者には大幅に控除額に制限が入るような措置が取られます。
(1)現行のe-Tax 申告等で65万円控除制度→ e-Tax 等で65万円改正なし
要件追加(65万円):確定申告書・青色申告決算書(貸借対照表及び損益計算書等)を期限内にe-Taxで提出が必要です。
(2)現行の65万円控除制度→ 75万円へ引上げ
上記の要件(e-Tax提出等)を満たしたうえで、仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存法上の一定要件で電磁的に保存している等の一定要件も追加となっています。
(3)書面申告における現行の55万円控除制度→10万円控除引下げ
(4)10万円控除の対象の一部除外→簡易記帳者(不動産所得者又は事業所得者)で前々年の収入金額が1,000万円超の納税者は控除対象外となります。

区分現行 改正
上位控除
(会計帳簿の電子化推進)
65 万円:55 万円要件+下記のいずれか
①優良な電子帳簿保存
②期限内 e-Tax 提出
75 万円へ引き上げ:
期限内 e-Tax 提出 +電子的記録保存(仕訳帳・総勘定元帳)の追加要件(注)
中位控除
(e-Tax 提出)
65 万円:複式簿記
+期限内に申告書等提出
(e-Tax 提出のケース)
65 万円変更なし
期限内 e-Tax 提出が必須
中位控除
(紙提出を減らし、電子申告を推進)
55 万円:複式簿記
+期限内に申告書等提出
(紙提出のケース)
10万円控除へ引下げ
下位控除
(規模が大きい事業者の簡易簿記を制限)
10 万円:簡易記帳(青色申告者)前々年収入 1,000 万円超の不動産/事業は対象外(控除額なし)

注:75万円控除の適用要件
上記(1)の適用要件を満たしたうえで、その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳 簿書類の保存方法等の特例に関する法律に定めるところにより電磁的記録の保存等を行っていること (次のいずれかに該当する場合に限る)。
イ 仕訳帳及び総勘定元帳について、一定の要件を満たす電磁的記録の保存等を行っている場合(優良な電子帳簿)  
ロ 請求書等のデジタルデータ(電子取引データ)を一定の要件を満たして保存を行う場合(請求書データ等との自動連携)

七 ふるさと納税(寄附金税額控除)の見直し
ふるさと納税制度は、所得が高い人ほど税額控除額の限度額が高くなることから高所得者の節税メリット が大きくなっている。また、高所得者ほど高額な返礼品を受け取ることができることになり、公平性の観点から課題がありました。
令和10年度分の住民税において、ふるさと納税について高額層の「特例控除額」の限度額に上限金額を新設し、あわせて自治体の指定基準を「寄附金の使える割合」まで踏み込んでいます。
現行は、住民税の特例分(ほぼ全額控除を完成させる上乗せ部分)の上限が 「住民税所得割額の20%」のみでしだが、これに加えて193万円(都道府県民税と市町村民税の合計)とのいずれか低い金額に制限が入ります。

区分現行 改正
特例控除額
(住民税特例分)の上限
住民税所得割額× 20%住民税所得割額 × 20% と
下記金額のいずれか低い額
金額上限
(都道府県民税)
無し77.2 万円(指定都市に住所を有する場合には 38.6 万円)
金額上限
(市町村民税)
無し115.8 万円(指定都市に住所を有する場合には 154.4 万円)

八 公的年金等に係る雑所得の見直し
令和9年分以降の所得税・住民税について、給与等と公的年金等の両方の収入がある人について、給与所得控除額+公的年金等控除額の合計が280万円を超える場合、その超える部分を公的年金等控除額から控除(=年金側の控除額を減額)することになります。

九 通勤手当の非課税限度額の見直し
片道65km以上の区分について、通勤手当の非課税限度額を段階的に引上げ、さらに、一定要件を満たす駐車場等を利用し料金負担する人は、距離区分の非課税限度額に 月5,000円(上限)を加算できる仕組みが導入されます。

通勤距離(片道)現行改正
55km 以上~65km 未満38,700 円38,700 円
65km 以上~75km 未満45,700 円
75km 以上~85km 未満52,700 円
85km 以上~95km 未満59,600 円
95km 以上66,400 円

なお、駐車場代の加算:上表の非課税限度額に、一定要件の駐車場等料金相当額を 月5,000円上限で加算されます。

十 食事・夜食:非課税枠の引上げ
使用者からの食事の支給により受ける経済的利益について、食事支給の非課税判定に使う「使用者負担額の上限」を月7,500円(現行:3,500円)に引上げられます。また、深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭について所得税が非課税とされる1回の支給額を1回650円(現行:300円)に引上げとなります。
なお、残業または宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても非課税となります。

項目 現行改正
食事支給:使用者負担額の上限(月額)3,500 円7,500 円
深夜勤務:夜食の金銭支給(1 回) 300 円以下650 円以下

十一 防衛特別所得税(仮称)の創設/復興特別所得税の見直し
所得税額に 1%を上乗せする「防衛特別所得税(仮称)」を新設し、2027年(令和9年)分以後に適用した上で、同時に復興特別所得税を1%引下げられます。ただし、復興特別所得税の課税期間を10年延長されます。

項目 現行 改正
上乗せ税の種類復興特別所得税防衛特別所得税(仮称)の創設+復興特別所得税(見直し)
税率(所得税額に対する上乗せ)2.1%(基準所得税額× 2.1%)基準所得税額に対して、防衛:1% + 復興特別:1.1%
(注)復興特別を 1%引下げ 2.1% → 1.1%
適用期間平成25 年 ~ 令和19 年まで防衛:令和 9 年以後「当分の間」
復興特別:課税期間を 10 年延長(=2037 年→ 2047 年に延長)
徴収・申告の考え方所得税と併せて申告・
納付(源泉徴収も同様
の枠組み)
防衛も復興特別所得税と同様の枠組み
(申告・納付、源泉徴収等)

十二 短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例
適用停止措置期限の3年延長となります。

十三 主な適用期限の延長項目

項目延長
低未使用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除3年延長
特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等2年延長
既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除3年延長
既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除 3年延長
認定住宅等の新築等をした場合の所得税額の特別控除 3年延長
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等 2年延長

十四 特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例
廃止となります。

資産課税(贈与税・相続税)の改正
1.教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の終了
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、 令和8年3月31日までとされている教育資金管理契約に基づく信託等可能期間を延長せずに終了することとなります。
なお、同日までに拠出された金銭等については、引き続き本措置が適用できます。

2.事業承継税制の承継計画の提出期限を延長
個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、個人事業承継計画の提出期限を2年6ヵ月延長し、法人版事業承継税制(特例措置)では、特例承継計画の提出期限を1年6ヵ月延長となります。

項目現行 改正
法人版特例承継計画の提出期限 2026 年 3 月末2027 年 9 月末
個人事業承継計画の提出期限2026 年 3 月末2028 年 9 月末

3.相続税等の財産評価の適正化_貸付用不動産の評価見直し
相続税法の時価主義の下で、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額の乖離が問題となっている実態を踏まえ、一定の貸付用不動産について、相続等の課税時期における「通常の取引価額に相当する金額」で評価することになります。
(1)貸付用不動産(一般)の評価方法の見直し
被相続人等が課税時期前5年以内に取得または新築した一定の貸付用不動産は、通常の取引価額相当額(原則として、取得価額を基に算定)で評価をすることになります。通常の取引価額相当額は、課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価変動等を考慮して計算した価額×80%で評価できることになります(注)。

(2)不動産小口化商品の評価方法の見直し
不動産特定共同事業契約又は一定の信託受益権に係る金融商品取引契約に基づく権利の目的となる貸付用不動産(いわゆる小口化貸付用不動産)については、その取得時期を問わず課税時期における通常の取引価額相当額で評価します(注)。
注:課税時期における通常の取引価額相当額については、課税上の弊害が無い限り、事業者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格、買取価格等、事業者等が把握している適正な売買実例価額又は定期報告書等に記載された不動産価格等を参酌した金額によって評価することもできますが、これに該当するものがなければ、上記(1)に準じて評価(取得時期や評価の安全性を考慮)することになります。

適用時期について
原則:令和9年1月1日以後に相続等により取得した貸付用不動産の評価から適用となります。
経過措置:上記(1)の改正については、本改正を通達に定める日までに、被相続人等が同日の5年前から所有している土地に新築した家屋(建築中含む)については適用除外となります。

4.主な適用期限の延長

項目 延長
医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等 3年延長
土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置 3年延長

5.固定資産税・不動産取得税の免税点の見直し
令和9年度以後の年度分の固定資産税・償却資産税から免税点が以下の通り改正されます。不動産取得税についても免税点が改正されますが、改正時期は大綱では未定です(土地の固定資産税は改正なし)。

区分 現行改正
固定資産税の家屋に係る免税点 20 万円30 万円
償却資産の免税点150 万円180 万円
不動産取得税の土地に係る免税点10 万円16 万円
不動産取得税
家屋(建築)の免税点(1 戸あたり)
23 万円66 万円
不動産取得税
家屋(その他)の免税点(1 戸あたり)

12 万円34 万円

消費税の改正
1.国境を越えた電子商取引に係る課税の見直し
国境を越えたEC取引について課税上の課題があり、国外事業者に競争優位性が働いている状況であったため、適正な課税がされるように見直しがされます。
① 現行では、輸入時に課税価格の合計額が1万円以下となる少額貨物について、一定の要件のもと関税が免除され、あわせて輸入消費税も免除される取扱い
② 近年は少額貨物が急増し、通関件数の大宗を占める一方、免税となる少額貨物については基本的に税関側の徴税事務が生じない構造
➂ その結果、海外からの“少額越境EC(1万円以下)”が国内取引より税負担面で有利になり得る(公平性・競争中立性の観点)ため、制度見直しが打ち出された、というのが今回の大枠

項目 現行改正
① 海外から国内向けに発送される1 万円(税抜)以下の物品少額貨物は輸入段階で消費税が免除され得るため、結果として消費税がかからないケースがあり得る「特定少額資産の譲渡(仮称)」として消費税の課税対象に見直し
② 物品販売のプラットフォーム課税(物品については)プラットフォームが当然に納税義務者になる仕組みは限定的一定規模の PF(年 50 億円超)を「第 2 種 PF 事業者(仮称)」として指定し、PF が売手とみなされる取扱いを導入
⇒PF 事業者に課税
※「第 1 種 PF 事業者」は電気通信利用役務の提供に係る PF 事業者
③ 1 万円以下の越境 EC のための売手側の登禄明確な“少額越境 EC 向け”登録枠はなし特定少額資産販売事業者(仮称)の登録制度を創設(免税点制度との関係も整理)
⇒販売事業者に課税

適用時期について
令和10年4月1日以後の取引等から適用

2.適格請求書等保存方式に係る経過措置の見直し
インボイス制度の導入時に経過措置として設けられた2割特例について、経過措置終了後は簡易課税制度へ の移行が予定されているところ、インボイス制度の定着に向けて事務負担への配慮がより必要と考えられる一定の個人事業者については、その納税額を売上税額の3割とすることができる経過措置をさらに2年に延長となります。
又、免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置について、インボイス制度の影響を受ける小規模な国内事業者への配慮として更なる激変緩和を図るとともに、本経過措置が租税回避等にも利用されていることを踏まえ、その防止が図られます。

① 登録した小規模個人事業者向け:令和9年・10年の課税期間に、納付税額を「消費税額の3割」にできる経過措置(控除額を7割)が新設され、2割特例は令和8年(2026年)9月30日で終了となります。
② 免税事業者等からの仕入控除の経過措置:控除可能割合を 70%→50%→30% の3段階に再設計し、さらに適用除外となる高額取引の金額要件を見直となります。
(1)適格請求書発行事業者となる小規模個人事業者:新しい「3割負担」措置

項目改正
対象期間個人事業者である適格請求書発行事業者の令和 9 年・10 年に含まれる課税期間のうち、以下に該当するものに限ります。
① 免税事業者がインボイス登録したこと等で免税点を適用できなくなった課税期間
② 課税事業者選択届出等で免税点を適用できなくなった課税期間
効果課税標準額に対する消費税額から控除する金額を「消費税額×7 割」とし、納税税額を「売上に消費税額の 3 割」で計算できることになります。
手続確定申告書にその旨を付記
簡易課税の特例この適用を受けた事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに選択届出書を提出すれば、その翌課税期間から簡易課税制度の適用が認められます。
(実質 3 割特例と同様のタイミング=申告時に選択ができることになります)

(2)免税事業者等からの課税仕入れ:控除可能割合と上限の見直し
インボイス登録をしていない免税事業者等からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられていますが、一部見直しがあります。

項目現行改正
控除可能期間と控除可能割合 令和5 年 10 月~8 年 9 月:80%
令和8 年 10 月~11 年 9 月:50%
令和11年10月~:0%
令和5 年 10 月~8 年 9 月:80%
令和8 年 10 月~10 年 9 月:70%
令和10 年 10 月~12 年 9 月:50%
令和12 年 10 月~13 年 9 月:30%
令和13年10月~:0%
経過措置の上限一の免税事業者からの課税仕入れの合計が年/事業年度 10 億円超部分は不可一の免税事業者からの課税仕入れの合計が年/事業年度 1 億円超部分は不可

3.暗号資産に係る課税関係の見直し
① 暗号資産の譲渡は、位置づけを「支払手段に類するもの」から「有価証券に類するもの」へ整理しつつ、消費税は引き続き非課税となります。
② 課税売上割合の計算上、暗号資産の譲渡対価は5%相当額だけを「資産の譲渡等の対価の額」に算入します。
③ 更に、暗号資産の貸付けも非課税となります(その他所要の措置)。
④ 金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後の譲渡等から適用となります。

4.輸出の証明”に輸入国側の輸入許可書等を追加
輸出として行う資産の譲渡・貸付けのうち、代金を現金等で受領した輸出取引について、輸出免税の適用を受けるには、現行の証明書類に加え、輸入国における輸入許可書等(電磁的記録含む)を保存しなければならない。

5.非居住者向け“国内不動産役務”を輸出免税から除外
非居住者に対して行う、国内に所在する不動産に係る役務の提供等を、輸出免税の対象から除外となります。令和8年10月1日以後に行う資産の譲渡等から適用となりますが、同年3月31日までに締結した契約に基づき、同年10月1日以後に資産の譲渡等を行う場合は適用対象外となります。

法人課税の改正
1.中小企業者等の少額減価償却資産の特例
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象資産の取得価額を「40万円未満」(現行:30万円未満)へ引上げられます(所得税も同様)。ただし、適用対象者から常時使用する従業員数が400人を超える法人は除外となります。

項目 現行 改正
特例対象となる取得価額 1 組 30 万円未満1 組 40 万円未満
年間上限(合計額) 合計 300 万円まで
適用対象者青色申告を行う中小企業者等で常時使用する従業員数が500人以下青色申告を行う中小企業者等で常時使用する従業員数が400人以下

上記に連動して以下の取得価額要件についても改正が入ります(所得税についても同様)。
中小企業投資促進税制:工具の年度合計の120万円以上である場合の取得価額要件について、1台あたりの取得価額要件を 30 万円以上から40万円以上に引上げられます。
中小企業経営強化税制:工具器具備品の取得価額要件を30万円以上から40万円以上に引上げられます。

2.特定生産性向上設備等投資促進税制の創設
「強い経済」の実現に向けて、国内での大規模・高収益な設備投資を税制で後押しするための、新しい投資減税制度が創設されます。産業競争力強化法の改正を前提としており、詳細な要件は産業競争力強化法の改正を確認する必要があります。
従来の投資減税と比較して、要件のハードルは高いものの、建物を含めた幅広い資産が対象となり、強力な節税効果が見込めます。
(1)適用法人と税務上の取扱い
青色申告法人が、一定の要件を満たす「特定機械装置等」を取得等して国内事業に供した場合、供用年度に次のいずれかを選択できます。
① 即時償却(取得価額までの特別償却)
② 税額控除:取得価額の7%(建物・建物附属設備・構築物は4%)
③ 控除上限:当期法人税額の20%(控除超過額は一定の要件で3年間繰越)
(2)対象となる資産の金額要件
対象資産は「生産等設備(事務用器具備品、本店建物、福利厚生施設等は対象外)」を構成する資産で、一定規模以上に限定となります。
① 機械装置:160万円以上/台
② 工具器具備品:120万円以上/台(40万円以上/台で年度合計120万円以上もOK)
③ 建物:一つ1,000万円以上
④ 建物附属設備:一つ120万円以上(一つ40万円以上で年度合計120万円以上もOK)
⑤ ソフトウェア:一つ70万円以上
(3)「特定生産性向上設備等」の要件(投資計画の骨格)
その投資計画について経済産業大臣の確認を受けたもので、主な要件は以下の通りです。
① 投資計画に記載された設備取得価額合:35億円以上(中小企業者等は5億円以上)
② 年平均の投資利益率:15%以上見込み
③ 資金調達手段の記載
④ 取締役会等の適切な機関で意思決定
⑤ 設備投資を増加させる等の追加要件

適用時期において
① 経産大臣の「確認」:改正法施行日~令和11年3月31日の間に受ける必要あり
② 設備の取得等・供用:確認日から5年以内に取得等して事業供用したものに限定

3.研究開発税制の見直し
(1)改正の概要
今回の主な見直しは以下の5点となります。
① (新設)重点産業技術向けの“上乗せ型”税額控除を創設(40%/50%)
② 一般型の控除率・上限計算を令和9年4月開始事業年度から見直し
③ 中小企業枠に「控除限度超過額の3年繰越」を新設
④ オープンイノベーション型の大学等要件を一部簡素化・置換
⑤ 国外委託R&Dの対象額を類型別に制限
(2)一般型の見直し
令和9年4月1日以後開始事業年度より税額控除率に次の通り見直しを行い、特例の適用期限が3年延長となります。
(イ)増減試験研究費割合が3%以下の場合 
   8.5%+(増減試験研究費割合-3%)×13 分の 8.5
(ロ)増減試験研究費割合が3%超 15%以下の場合
   8.5%+(増減試験研究費割合-3%)×0.25
(ハ)増減試験研究費割合が 15%超である場合
   11.5%+(増減試験研究費割合-15%)×0.375
なお、増減試験研究費割合が4%を超える場合又は増減試験研究費割合がマイナス4%を下回る場合の控除税額の上限の特例について、一定の見直しが行われます。
(3)中小企業枠の見直し
控除率は現行を維持した上で特例の適用期限を3年延長し、新たに控除限度超過額の繰越制度が創設されます。これにより控除限度超過額について3年間の繰越が可能となります。ただし、繰越税額控除の適用を受けようとする事業年度においては、試験研究費の額が比較試験研究費の額を超える場合に限り、適用ができます。
(4)特別試験研究費(大学等への委託等)の見直し
特別試験研究費のうち「大学等との共同研究及び大学等への委託研究に係る試験研究費の額」については、共同研究又は委託研究に要した費用であることにつき、監査を受け、その大学等の確認を受けた金額であることが要件となります。但し、この改正により、一定の要件を満たすことにつき経済産業大臣の指定を受けた大学等については、その大学等の長が認定した金額は要件を満たすことが必要となります。その他一定の見直しを行います。

4.賃上げ促進税制の見直し
物価上昇に対応した賃上げを広く促進するため、賃上げ促進税制を強化してきていました。直近では、賃上げの水準は高い伸びを示している一方、人材確保の観点から中小企業においては、大企業に比べて人手不足感があり、こうした状況を踏まえ、租税特別措置等は真に必要なものに限定する方針の下、賃上げ促進税制についても現状の賃上げ状況を反映した必要な見直しを行っています。
(1)全法人向け(全企業向け)の措置は、令和8年3月31日で廃止。
(2)従業員2,000人以下向け(中堅企業向け)の措置は、適用期限(令和9年3月31日)到来で廃止の方向で、最終年度(令和8年4月1日〜令和9年3月31日に開始する事業年度)だけ要件・上乗せの見直しがあります。
(3)教育訓練費の上乗せは、(従業員2,000人以下向け・中小企業向けともに)廃止。

区分現行改正
全企業向け税額控除は控除対象雇用者給与等支給増加額×10%(上乗せ最大+25%で最大 35%)令和8/3/31 をもって廃止。
中堅企業向け
(従業員 2,000
人以下等)
税額控除は控除対象雇用者給与等支給増加額×10%(上乗せ最大+25%で最大 35%)適用期限(令和9/3/31)到来で廃止
令和8/4/1~9/3/31 開始事業年度:
①原則 の税額控除率10%の適用要件を継続雇用者比較給与等支給額の増加割合 3%以上→4%以上に に引上げ
②上乗せで、継続雇用者比較給与等支給額の増加割合4%以上の場合での税額控除率+15%加算から、5%以上で+5%加算、6%以上で+15%加算 へ
③教育訓練費の上乗せ(10%)は廃止
中小企業向け税額控除率:控除対象雇用者給与等支給増加額×15%
(上乗せで最大 45%)
上限:法人税額の 20%、繰越控除あり(要件あり)
教育訓練費の上乗せ(10%)を廃止

5.大企業の「特定税額控除規定」適用制限の見直し
大企業が、研究開発税制など一定の税額控除(=特定税額控除規定)を使うための「賃上げ・国内投資」要件を引上げつつ、制度の適用期限を令和11年3月31日まで延長となります。
制限対象の税制について
① 研究開発税制(総額型、オープンイノベーション型)
② 地域未来促進税制
③ カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

6.オープンイノベーション促進税制の見直しと延長
オープンイノベーション促進税制について一定の見直しをした上で、その適用期限を2年延長します。オープンイノベーション促進税制とは、青色申告法人が、一定の「特別新事業開拓事業者(スタートアップ等)」の株式を一定の形で取得した場合、取得価額の一定割合を「特別勘定」として経理し、(所得基準額の範囲で)損金算入できる制度です。

7.地方拠点強化税制の見直し
地方拠点強化税制(オフィス減税)について、一定の見直しを行った上で、その適用期限を2年延長するとともに、地方拠点強化税制(雇用促進税制)については適用期限(令和8年3月31日)の到来をもって廃止となります。

8.企業グループ間の取引に係る書類保存の特例の創設
企業グループ内(関連者間)のロイヤルティ、業務委託料、管理費(マネジメントフィー)等の一定取引について、取引関連書類に必要事項が欠ける場合は“補完書類”を作って保存するルールを新設します。企業グループ内の取引は、外形上「請求書だけ」「一式表記だけ」になりやすく、税務上は対価算定の根拠(算定明細)が説明できないことが争点になりがちであるため、この点を正面から是正する目的があると考えられます。
改正の概要について
内国法人が関連者との間で「特定取引」を行った場合、注文書・契約書・請求書・見積書等(電磁的記録含む)の取引関連書類等に、次のような「対価算定に必要な事項」の記載・記録がないときは、その欠けている事項を明らかにする補完書類(電磁的記録を含む)を取得または作成し、保存しなければなりません。
大綱上、「この補完書類の保存が法令の定めに従って行われていないことは、青色申告の承認の取消事由等となる」旨も明記されています。

9.特定の資産の買換えの場合等の課税の特例の見直しと延長
買換え特例の制度について、①一部の対象取引の除外、②繰延べ割合の引下げ、③買換資産の範囲の絞り込み、④港湾作業船の一部除外など一定の見直しを行った上で適用期限を3年延長します。(所得税も同様)。
買換え特例の概要について:
一定の資産を譲渡して、一定期間内に一定の資産へ「買換え(取得等)」を行う場合、譲渡益課税を繰延べできる(課税を将来に回す)仕組みが「買換え特例」です。個人事業のケースでも同様に、要件を満たすと譲渡益の一部を将来に繰延べられる制度として整理されます。

項目 現行 改正
市街地再開発事業による買換え(「特定都市再生緊急整備地域」などの特定の政策区域以外)の繰延べ割合80%60%に引下げ
長期所有(所有期間10年超)の土地・建物等から土地・建物等への買換え(いわゆる9号買換え)買換資産の範囲が比較的広い運用建物・附属設備:特定施設の用に供されるものに限定
構築物:事業遂行上必要なものに限定
2025年12月30日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

2025年(令和7年)分の年末調整について

1.年末調整とは
サラリーマンの方は11月下旬から12月上旬の間に年末調整の書類を整理して会社に提出する時期となります。会社等の給与支払者(源泉徴収義務者)は、給与等の支払時に所定の源泉所得税を徴収しています。この源泉所得税は事前の条件下での計算に基づくものであり、一種の仮計算による前払税金ですので、この仮計算を最終状況に基づいての再計算(年税額を確定する手続)が年末調整です。具体的には、給与支払者は暦年(1月~12月)の総給与額に対して12月の最終給与支払日に最終状況(配偶者・扶養親族、等)に基づいて再計算し、徴収していた総源泉所得税の過不足を調整(精算)します。

2.提出すべき申告書
年末調整の為に提出が求められる申告書とその中に記載される控除項目は以下のとおりです。 当該控除項目以外に所得から控除可能な項目がある場合にはそれらの項目は確定申告で行うことになります。

申告書の名称控除項目
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書源泉控除対象配偶者控除、源泉控除対象親族控除、 障害者控除、 ひとり親控除、寡婦控除、 勤労学生控除、住民税に関する事項
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、特定親族特別控除、所得金額調整控除
給与所得者の保険料控除申告書
(保険料の証明書を要添付)
生命保険料控除(一般生命・介護医療・個人年金)、 地震保険料控除(申告分)、 社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除(申告分)
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(2年目から年末調整の対象で初年度は確定申告が必要)

注:年間の見積もりによる収入金額と所得金額を記載しますが、その金額の違いには注意してください。

3.年末調整の留意事項及び令和8年分扶養控除申告書の記載内容の変更等
12月1日以降から年末調整が行われますが、2025年度税制改正により、合計所得金額に応じて基礎控除額の見直し、給与所得控除額の見直し(最低保障額が55万円から65万円に引上げ)、特定親族特別控除の創設、扶養控除等の所得要件の改正、等がありましたので留意する必要があります。当改正により、年末調整において、以下の対応が必要となります。
(1)所得要件の改正により新たに扶養控除等となった親族等の有無を確認する必要があります。新たな親族等になった場合には、扶養控除等異動申告書の提出(異動月日及び事由欄には、令和7年12月1日改正、等と記載)が必要となります。
(2)新たに特定親族特別控除の適用を受ける対象者(19歳以上23歳未満で合計所得金額58万円超123万円以下<年間給与収入123万円超188万円以下>)は、特定親族特別控除申告書を提出することが必要となります。この対象者は特定親族といいます。
なお、令和7年分年末調整の書類を提出時に、併せて令和8年分扶養控除等申告書も提出する場合には、新たに源泉控除対象親族の記載が必要となります。なお、毎月の給与等の源泉徴収時での「扶養親族等の数」は、源泉控除対象親族と源泉控除対象配偶者(合計所得金額が95万円以下<年間給与収入160万円以下>を基に算定することになります。
源泉控除対象親族とは、
① 控除対象扶養親族(合計所得金額が58万円以下<年間給与収入123万円以下>、又は
② 特定親族のうち、居住者と生計一の親族のうち、19歳以上23歳未満で合計所得金額が58万円超100万円以下<年間給与収入123万円超165万円以下>)の者
源泉控除対象親族は、令和8年分扶養控除等申告書(B欄)の記載対象となります。

2025年11月1日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

令和7年分年末調整の留意事項及び令和8年分扶養控除申告書の記載内容の変更等

12月1日以降から年末調整が行われますが、2025年度税制改正により、合計所得金額に応じて基礎控除額の見直し、給与所得控除額の見直し(最低保障額が55万円から65万円に引上げ)、特定親族特別控除の創設、扶養控除等の所得要件の改正、等がありましたので留意する必要があります。当改正により、年末調整において、以下の対応が必要となります。
(1)所得要件の改正により新たに扶養控除等となった親族等の有無を確認する必要があります。新たな親族等になった場合には、扶養控除等異動申告書の提出(異動月日及び事由欄には、令和7年12月1日改正、等と記載)が必要となります。
(2)新たに特定親族特別控除の適用を受ける対象者(19歳以上23歳未満で合計所得金額58万円超123万円以下<年間給与収入123万円超188万円以下>)は、特定親族特別控除申告書を提出することが必要となります。この対象者は特定親族といいます。

なお、令和7年分年末調整の書類を提出時に、併せて令和8年分扶養控除等申告書も提出する場合には、新たに源泉控除対象親族の記載が必要となります。なお、毎月の給与等の源泉徴収時での「扶養親族等の数」は、源泉控除対象親族と源泉控除対象配偶者(合計所得金額が95万円以下<年間給与収入160万円以下>を基に算定することになります。
源泉控除対象親族とは、
① 控除対象扶養親族(合計所得金額が58万円以下<年間給与収入123万円以下>、又は
② 特定親族のうち、居住者と生計一の親族のうち、19歳以上23歳未満で合計所得金額が58万円超100万円以下<年間給与収入123万円超165万円以下>)の者
源泉控除対象親族は、令和8年分扶養控除等申告書(B欄)の記載対象となります。

2025年10月31日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

基準地価、4年連続上昇 東京けん引 海外マネー流入

国土交通省が16日公表した2025年の基準地価は、住宅地や商業地といった全用途平均の全国の上昇率が1.5%だった。4年連続で上昇した。海外からの投資マネーが流入する東京圏がけん引役となった。
2025年基準地価の変動率(7月1日時点、 前年比%、 ▲は下落):

地域住宅地商業地全用途

2025年前年2025年前年2025年前年
全国平均1.00.92.82.41.51.4
三大都市圏3.23.07.26.24.33.9
東京圏3.93.68.77.05.34.6
大阪圏2.21.76.46.03.42.9
名古屋圏1.72.52.83.82.12.9
地方圏0.10.11.00.90.40.4
中核地方4市4.15.6
7.3
8.7
5.3
6.8

地価が最も高かった地点は20年連続で東京・銀座2丁目の「明治屋銀座ビル」だった。1平方メートル当たりの地価は4,690万円で前年比11.4%伸びた。

公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。

 公示地価基準地価路線価固定資産税評価額
調査主体国土交通省都道府県国税庁市町村
調査地点数約26,000約21,000約320,000多数
調査時点1月1日7月1日1月1日1月1日(原則3年に1回、 次回は2027年)
公開時期3月9月7月又は8月3月
公開サイト国交省(土地総合情報ライブラリー)国交省(土地総合情報ライブラリー)国税庁資産評価システム研究センター
その他調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。調査対象は地方の調査地点が多く、 不動産鑑定士の評価を参考に調査し、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から 相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準
2025年9月17日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

令和7年度からのパート主婦(短時間労働者)の年収の壁

パート主婦(短時間労働者)の中で年間パート給与収入が一定額を超えると税金、社会保険料等の負担増になることから就業調整するケースを聞くことがあります。いわゆる「年収の壁」と言われていますが、税制改正などにより令和7年度から、その年収の壁が多少ですが上昇していますので紹介したいと思います。
以下は、年間給与収入額に対する各種の年収の壁を纏めてみたものです。

(パート年間給与収入額影響する項目影響する人影響する内容
106万円未満
社会保険パート者本人社会保険に加入義務なし
106万円以上社会保険加入従業員数51人以上の企業に勤務しているパート者本人(週の所定労働時間20時間以上等の加入要件対象者)パート者本人が社会保険に加入義務発生。今後、社会保険加入対象者の適用拡大予定(注1参照)
110万円以下住民税パート者本人住民税は非課税内
110万円超住民税パート者本人住民税が発生する
123万円以下夫の配偶者控除夫の配偶者控除(38万円満額控除):但し、夫の給与収入額が10百万以下のケース(注2参照)
123万円超~
160万円以下
夫の配偶者特別控除夫の配偶者特別控除(38万円満額控除)
160万円超~
201.6万円以下
夫の配偶者特別控除夫の配偶者特別控除(収入額の増加に応じて、36万円から減額されていき3万円控除)
201.6万円超夫の配偶者特別控除夫の配偶者特別控除(控除額0円となる)
130万円以下夫の社会保険の被扶養者基準パート者本人(既に、社会保険加入者は除く)夫の社会保険の被扶養者として、パート者本人は第3号被保険者を継続
130万円超夫の社会保険の被扶養者基準パート者本人(既に、社会保険加入者は除く)夫の社会保険の被扶養者基準であり、本人が第3号被保険者から外れ、パート者本人の社会保険料(国民年金・国民健康保険料等)への加入が必要となる
160万円以下所得税課税パート者本人所得税は非課税内
160万円超所得税課税パート者本人所得税が発生する

以上から、今後の適用改正が無い限り、通常、年間パート給与収入は、130万円以下ならば、給与所得課税、社会保険料、配偶者控除・特別控除にも影響しないことになります。

注1:社会保険加入条件
A. 短時間労働者の社会保険加入条件
2025年9月現在、パート・アルバイトなどの短時間労働者が社会保険の加入対象者の加入要件は、以下の5項目の全てを満たす場合となっていました。
短時間労働者の社会保険の加入条件:
①週の所定労働時間が20時間以上(残業時間は含まれません)
②賃金が月額8.8万円以上(年間106万円)(残業代や賞与、通勤手当、臨時の手当は含まれません)
③従業員数51人以上の企業に勤務している
④2カ月を超える雇用の見込みがある
⑤学生でない(学生は加入対象外ですが、休学中や定時制、通信制の学生は加入対象となります)
今回の改正では、②の賃金要件と③の企業規模要件の2つとなっています。
②の賃金要件は、3年以内の政令で定める日で撤廃となります。
③の企業規模要件は、現行の従業員数51人以上から、次の様に段階的に縮小していきます。

施行時期企業規模要件
2027年10月から従業員数 36人以上
2029年10月から従業員数 21人以上
2032年10月から従業員数 11人以上
2035年10月から従業員数 1人以上(全ての企業対象)

上記の短時間労働者の加入要件の見直しのほか「個人事業所の適用対象の拡大」と「新たに加入対象となる短時間労働者および事業主への支援」もおこなわれます。
個人事業所における適用範囲の拡大:
現在、常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所は、法律で定める17業種に当てはまる場合は社会保険に加入しますが、農業、林業、漁業、飲食サービス、宿泊業などの業種は加入対象外となっています。しかし2029年10月から、常時5人以上の従業員を雇用している場合には、全ての業種が加入対象となります。なお、2029年10月時点ですでに存在している事業所は、当分のあいだ対象外となります。
今回の改正法により、新たに社会保険の加入対象となるパート・アルバイトなどの短時間労働者、そして社会保険料を追加負担することとなる事業主に対し、経済的な支援が実施されます。短時間労働者に対しては、3年間事業主が追加負担することで、社会保険料の負担を軽減できる措置が、事業主に対しては追加負担した保険料について、国などが全額を支援します。

B. 通常の常時雇用者の社会保険加入条件:
社会保険に加入するための条件は、主に雇用形態、勤務時間等に基づいていますが、企業で働く従業員は、次のいずれかの条件に該当する場合、健康保険および厚生年金保険(いわゆる社会保険)への加入が義務付けられます。
①常時雇用されている従業員(注)であること
注:「常時雇用」とは、長期的・継続的に雇用されている、またはその見込みがある状態を指します。具体的には、以下のようなケースが該当します。
• 雇用契約に期間の定めがない(無期雇用)
• 有期契約であっても、過去1年以上継続して雇用されている
• 又は、雇用時点で1年以上の継続雇用が見込まれる
②週の所定労働時間および所定労働日数が、正社員の4分の3以上(4分の3基準)
であること

C. 社会保険加入から除外される雇用者:
以下のいずれかに該当する人は、厚生年金保険および健康保険に加入することができません。
厚生年金保険・健康保険共通:
・継続雇用期間が1カ月以内の日雇い労働者
・2カ月以内の期間を定めて使用される人
・所在地が一定しない事業所に使用される人
・雇用期間4カ月以内で、季節的業務に使用される人
・雇用期間6カ月以内で、臨時的事業の事業所に使用される人
・船員保険の被保険者の人
・国民健康保険組合の事業所に使用される人
健康保険のみ:
・75歳以上の後期高齢者医療制度の被保険者の人
厚生年金保険のみ:
・70歳以上の人

注2:配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の変動
配偶者控除及び配偶者特別控除は、配偶者の所得金額の並びに給与所得者(夫)の所得金額に応じて控除金額が決まっています。給与所得者(夫)の所得金額が1,000万円超(給与収入額で1.195万円になりますと、いずれの控除額はゼロとなります。

2025年9月10日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

フリーレントの経理処理

不動産の賃貸借期間で、当初の一定期間(3か月間、等)の賃料が無償とするフリーレントを定める賃貸借契約を締結する場合がありますが、その経理処理は、通常、①賃料の支払日に計上、又は、②賃料総額を賃借期間で案分して計上の2通りがあります。その場合、新リース会計基準の適用との関連から、税務処理を含めて次の様に取扱われることになります。

新リース会計基準の適用対象企業か否か適用する経理処理
適用対象企業(上場企業等)賃料総額を賃貸借期間で按分して、当賃貸借期間中の各事業年度に計上する。
適用対象外企業(中小企業等)新リース会計基準に準じた会計処理を行っている賃料総額を賃貸借期間で按分して、当賃貸借期間中の各事業年度に計上する。
上記以外の会計処理を行っている賃料の支払日に属する各事業年度に計上する。但し、税務上では課税上弊害が無いこと。

上記から、中小企業は、フリーレント期間があっても賃料の支払日に経理処理することで問題はないことになります。なお、税務上は、損金(借手側)・益金(貸手側)経理が適用要件となっており、令和7年4月1日以後の開始事業年度からの適用となっています。

2025年8月10日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

年金制度改正(令和7年6月成立)

ライフスタイルや家族構成等の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再分配機能の強化や私的年金制度の拡充等により高齢期における生活の安定を図るため、①社会保険加入対象者の適用拡大、②在職老齢年金制度の見直し、③遺族年金制度の見直し、④標準報酬月額の上限の段階的引上げ、⑤私的年金制度の見直し、⑥将来の基礎年金の給付水準の底上げ等の措置を講ずることになりました。

(1)社会保険加入対象者の適用拡大

2025年6月現在、パート・アルバイトなどの短時間労働者が社会保険の加入対象者の加入要件は、以下の5項目となっていました。

短時間労働者の社会保険の加入条件:

①週の所定労働時間が20時間以上

②賃金が月額8.8万円以上(年間106万円)

③従業員数51人以上の企業に勤務している

④2カ月を超える雇用の見込みがある

⑤学生でない

今回の改正では、②の賃金要件と③の企業規模要件の2つとなっています。

②の賃金要件は、3年以内の政令で定める日で撤廃となります。

③の企業規模要件は、現行の従業員数51人以上から、次の様に段階的に縮小していきます。

施行時期企業規模要件
2027年10月から従業員数 36人以上
2029年10月から従業員数 21人以上
2032年10月から従業員数 11人以上
2035年10月から従業員数 1人以上(全ての企業対象)

上記の短時間労働者の加入要件の見直しのほか「個人事業所の適用対象の拡大」と「新たに加入対象となる短時間労働者および事業主への支援」もおこなわれます。

個人事業所における適用範囲の拡大:

現在、常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所は、法律で定める17業種に当てはまる場合は社会保険に加入しますが、農業、林業、漁業、飲食サービス、宿泊業などの業種は加入対象外となっています。しかし2029年10月から、常時5人以上の従業員を雇用している場合には、全ての業種が加入対象となります。なお、2029年10月時点ですでに存在している事業所は、当分のあいだ対象外となります。

 

今回の改正法により、新たに社会保険の加入対象となるパート・アルバイトなどの短時間労働者、そして社会保険料を追加負担することとなる事業主に対し、経済的な支援が実施されます。短時間労働者に対しては、3年間事業主が追加負担することで、社会保険料の負担を軽減できる措置が、事業主に対しては追加負担した保険料について、国などが全額を支援します

 

(2)在職老齢年金制度の見直し

年金を受給しながら働く高齢者が、年金を減額されにくくなり、より多く働けるようにする、在職老齢年金の見直しをします。

2026年4月から、減額基準限度額が月額50万円から62万円に引き上げられます。

 

(3)遺族年金制度の見直し

遺族年金を見直し、遺族厚生年金の男女差を解消します。また、こどもが遺族基礎年金を受け取りやすくします。

 

(4)標準報酬月額の上限の段階的引上げ

保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引上げを行い、一定以上の月収のある方に、賃金に応じた保険料を負担いただくことで、現役時代の賃金に見合った年金を受け取りやすくします。 厚生年金等の標準報酬月額の上限が、現行の65万円から次の様に段階的引上げられます。

適用開始時期標準報酬月額の上限
2027年9月から680,000円
2028年9月から710,000円
2029年9月から750,000円

 

(5)私的年金制度の見直し

3年以内に、iDeCoに加入できる年齢の上限を引き上げ、企業型DCの拠出限度額の拡充、企業年金の運用の見える化などを行います。

 

(6)将来の基礎年金の給付水準の底上げ

国会における審議の中で、今後の社会経済情勢を見極めた上で、基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合に、基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドを同時に終了させる措置を講じる旨の規程が追加されました。

2025年7月30日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

防衛特別法人税の2026年4月1日以後の開始事業年度より適用

2025年度の税制改正で防衛力強化のための財源を確保することを目的として、法人税額に対し税率4%の新たな付加税として、防衛特別法人税が創設されています。

(1)税額計算

(基準法人税額(注1)-基礎控除年500万円(注2)×4%=防衛特別法人税額
注1:基準法人税額

基準法人税額は、法人税の計算で通常認められる「所得税額控除、外国税額控除」などを適用しないで算出した法人税額。

注2:基礎控除

年500万円の定額控除。通算法人等の場合は、各社の「基準法人税額」の比率で500万円を按分します。

(2)繰戻還付の計算

法人税の還付金額×4%×(基準法人税額-基礎控除年500万円)÷基準法人税額=防衛特別法人税額に係る還付金額

注:適用開始時期:令和8年4月1日以後(中間申告:令和9年4月1日以後)に開始する事業年度から適用となります。

注:事業年度が1年未満の場合、500万円を12で除し、その事業月数(1月未満は切上げ)を乗じて基礎控除額を計算します。

注:基準法人税額が500万円以下の場合、防衛特別法人税額がゼロであっても当該申告書の提出が必要となります。

2025年6月30日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

令和7年度以降の所得税における基礎控除引上げ

以前に税制改正による基礎控除引上げを記載いたしましたが、基礎控除の上乗せ特例の部分が洩れておりましたので追加記載いたします。

1.基礎控除の通常引上げ

物価上昇への対応として、令和7年分以後の所得税から、合計所得金額が2,350万円以下である個人に関しては、所得税の基礎控除の金額が48万円から58万円に10万円のアップとなります。なお、個人住民税については、基礎控除の控除額(43万円)の引上げは実施されません。

注:改正は、令和7年分以後の所得税について適用(年末調整時)とされますが、給与等及び公的年金等の源泉徴収については、令和8年1月1日以後に支払ものから適用となります。

令和7年以後の所得税の基礎控除額は以下の金額となります。

合計所得金額基礎控除額
現行改正
2,350万円以下480,000円580,000円
2,350万円超 2,400万円以下480,000円
2,400万円超 2,450万円以下320,000円320,000円
2,450万円超 2,500万円以下160,000円160,000円
2,500万円超0円0円

実務上の留意点:

(1)基礎控除について上乗せ特例があります(令和7年分と令和8年分、並びに令和9年分以降の各年分)

(2)令和7年度の年末調整における適用規定

①令和7年12月1日以後に給与支払いによる年末調整を行う場合には、改正後の規定を適用

*従業員に、改正による新たに扶養親族等の対象となった親族等がいる場合には、「扶養親族等(異動)申告書」の提出が必要

*特定親族特別控除の適用を受ける従業員から「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要

②令和7年11月30日以前に給与支払いによる年末調整を行う場合には、改正前の規定を適用

(3)給与所得等の源泉徴収税額表の改正については、令和8年1月1日以後に支払ものから適用

(4)令和7年11月30日以前での死亡や出国等に伴う年末調整、準確定申告等

令和7年11月30日以前には、改正前の制度内容に基づき年末調整事務を行います。この場合、令和7年分の改正制度を適用するには、確定申告を行うことが必要となります。又、準確定申告された場合にも、5年以内の更正の請求で改正制度の適用ができます。

 

1-2. 基礎控除の上乗せ特例

中所得者層を含めた税負担の軽減を行う観点から、所得税の基礎控除の上乗せ特例が創設され課税最低限が、以下の様に給与収入額160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)に引き上げられました。

(1)令和7年分と令和8年分の2年間限定

合計所得金額基礎控除額
現行改正(上乗せ)
132万円以下480,000円950,000円改正(上乗せ)
132万円超 336万円以下880,000円
336万円超 489万円以下680,000円
489万円超 655万円以下630,000円
655万円超 2,350万円以下580,000円
2,350万円超 2,400万円以下480,000円
2,400万円超 2,450万円以下320,000円880,000円320,000円
2,450万円超 2,500万円以下160,000円160,000円
2,500万円超0円0円

(2)令和9年分以後の各年分

合計所得金額が132万円以下である場合のみ上乗せとなります。

合計所得金額
基礎控除額
現行 改正(上乗せ)
132万円以下480,000円950,000円
132万円超 2132万円以下,350万円以下580,000円
2,350万円超 2,400万円以下480,000円
2,400万円超 2,450万円以下320,000円320,000円
2,450万円超 2,500万円以下160,000円160,000円
2,500万円超0円0円

基礎控除の引上げに伴い、令和7年分以後の所得税(年末調整を考慮して、令和7年12月1日から施行)から、控除判定の要件となる合計所得金額等も10万円のアップとなります。

項目現行改正
同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件480,000円以下580,000円以下
ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額の要件480,000円以下580,000円以下
勤労学生の合計所得金額要件750,000円以下850,000円以下
家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例における必要経費の最低保証額550,000円以下650,000円以下

2.給与所得控除の最低保障額の引上げ

物価上昇への対応とともに、就業調整にも対応するという観点から、令和7年分以後の所得税(及び個人住民税)から、給与所得控除額の最低保障額の金額が55万円から65万円に10万円のアップとなります。

改正は、令和7年分以後の所得税について適用(年末調整は、令和7年12月1日以後に支払う給与分から適用となり、その支払いが12月1日前であるものについては、なお従前の取扱いとなります)とされますが、給与所得の源泉徴収税額表の改正については、令和8年1月1日以後に支払ものから適用となります。

 

給与等の収入金額別の給与所得控除額は以下の様になります。

給与等の収入金額給与所得控除額
現行改正
1,625,000円まで550,000円650,000円
1,625,001円~1,800,000円収入金額×40%―100,000円
1,800,001円~1,900,000円収入金額×30%+80,000円
1,900,001円~3,600,000円収入金額×30%+80,000円
3,600,001円~6,600,000円収入金額×20%+440,000円収入金額×20%+440,000円
6,600,001円~8,500,000円収入金額×10%+1,100,000円収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限)1,950,000円(上限)

3.所得税・個人住民税の特定親族特別控除の新設

現下の厳しい人出不足の状況において、特に大学生のアルバイトの就業調整について、税制が一因となっているということから、令和7年分以後の所得税(及び個人住民税)から、扶養親族の合計所得金額が58万円を超えると扶養控除による控除ができないことになりますので、19歳以上23歳未満の同一生計の親族(大学生世代の子ども等)がいる場合において、その親族等(配偶者及び青色事業専従者等を除く)の合計所得金額が123万円以下であるときは、一定の金額を控除(特定親族特別控除額)できることになります。なお、合計所得金額が85万円(給与収入150万円相当)までは、親等が特定扶養控除と同額(63万円)の所得控除が受けられます。

 

親等の特定親族特別控除額は、その親族等(子ども等)の合計所得金額によって、以下のように段階的に変わります。

親族等(19歳以上23歳未満)の合計所得金額特定親族特別控除
所得税控除額(円)住民税控除額(円)
58万円超 85万円以下630,000450,000
85万円超 90万円以下610,000
90万円超 95万円以下510,000
95万円超 100万円以下410,000410,000
100万円超 105万円以下310,000310,000
105万円超 110万円以下210,000210,000
110万円超 115万円以下110,000110,000
115万円超 120万円以下60,00060,000
120万円超 123万円以下30,00030,000
123万円超00
2025年5月30日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

退職所得関連の改正(令和8年1月より適用)

令和7年度税改正により退職所得関連で改正がありました。

(1)退職所得控除額の計算における勤続期間等の重複排除の特例に関する改正
一定期間内に会社の退職金や老齢一時金(確定拠出年金法の老齢給付金として支給される一時金)を複数回受け取った場合において、その勤続期間が重複する時は、退職所得控除の計算において重複する勤続期間の退職所得控除相当額を控除した残額が控除額となる調整規定が適用されます。この調整対象となる期間は通常は5年以内で判定を行うが、後で老齢一時金を受け取る場合には、過去20年間で判定を行うことになっていました。

今回、この取扱いにより老齢一時金を先に受取るか、後で受取るかで控除額計算で有利不利が生じるため、会社の退職金(老齢一時金(確定拠出年金法の老齢給付金として支給される一時金)を除く退職所得手当等)よりも前に老齢一時金を受け取った場合には、その老齢一時金等について、退職所得控除額の計算における勤続期間等の重複排除の特例の対象とされ、前年以前9年以内(現行:4年以内)の老齢一時金を調整対象に含めることに改正されます(令和8年1月1日以降に老齢一時金の支払を受けており、その後に退職手当等について適用)。

退職手当の受取順別の勤続期間等の重複排除期間は以下の様になります。

[table id=341 /

又、老齢一時金に係る退職所得の受給に関する申告書の保存期間が、10年(現行7年)とされます。 この改正は、令和8年1月1日以後に支払いを受けるべき退職手当等について適用されます。

 

(2)職所得等の源泉徴収票・特別徴収票の提出範囲を見直し(居住者の全員)

令和8年1月1日以降に税務署・自治体へ提出すべき退職所得等の源泉徴収票・特別徴収票(記載事項に見直し有り)より、全ての居住者への支払について一律で提出が義務化となります(現行:役員のみ)。この提出は、退職日ベースではなく、支払日ベースで判断することになっています。

2025年4月28日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant