消費税の課税事業者(納税義務者)・免税事業者(納税免除者)の判定

1.課税事業者(納税義務者)とは.

国内取引の納税義務者は「事業者」に限定され、同種の営業行為を反復、継続、独立しておこなう個人事業者や法人(公共・公益法人、人格のない社団等を含む)であり、国内において行った課税資産の譲渡等に伴う取引(国内取引)があった場合です。しかしながら、全ての事業者が必ず消費税の納税者(課税事業者)となるのではなく、中小企業者等の事務負担の軽減や税務執行面に配慮して一定の条件下では、事業者は免税事業者(納税免除者)になることがあります(事業者免税点制度と呼ばれています)。 尚、輸入取引については、事業者だけではなく、個人が輸入する場合にも納税義務者(保税地域から課税貨物を引取る者に課税)となります。

 

(1) 課税事業者・免税事業者判定

消費税の課税事業者と免税事業者の判定が法令の改正が続き複雑になっていますが、次の様になっています。

① 新設法人の場合には資本金で判定(1千万円以上か未満か

(イ)1千万円以上――初年度から課税事業者

(ロ)1千万円未満――免税事業者

但し、1千万円未満でもその新設法人が50%超を直接・間接に所有(各事業年度開始の日時点で判定)され、 かつ、 その親会社の中で基準期間(前々事業年度)の課税売上が5億円超になっている場合には、 課税事業者となります。

② 「基準期間」の課税売上高で判定(前々事業年度の課税売上高1千万円超か以下か)

(イ)1千万円超――課税事業者

(ロ)1千万円以下――免税事業者

法人の場合、基準期間が1年未満(以上も含む)の場合には課税売上高は年換算して判定。

個人事業者の場合、 基準期間が1年未満の場合でも絶対金額で判定(年換算しない)。

③ 「特定期間」の課税売上高及び支払給与額で判定(前事業年度の上半期の6ヶ月間の課税売上高及び支払給与額の双方が1千万円超か又はいずれかが以下か)

(イ)1千万円超――課税事業者

(ロ)1千万円以下――免税事業者

 

(2)免税事業者の課税事業者になることの選択

⓵ 消費税課税事業者選択届出書

上述の様に、課税事業者か否かの判定基準として、「資本金」基準(法人の場合のみ)、「基準期間」基準、及び「特定期間」基準から免税事業者として判定された場合であっても、事業者が選択して課税事業者となることができます。この選択は、消費税の還付を受ける可能性がある場合、例えば高額の固定資産等の購入が予定されるときには、検討されることが望まれます。 手続きとして、「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署に提出しますが、」提出があった日の属する課税期間の翌課税期間以後(設立初年度は除く)の各課税期間に有効となります。

② 消費税課税事業者選択不適用届出書

この消費税課税事業者選択届出書を提出した場合、その後、課税事業者を辞めようとするときは、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を所轄税務署に提出しなければなりませんが、この選択不適用届出は、課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以降に提出可能となります。提出があった日の属する課税期間の翌課税期間から有効になりますので、少なくとも2課税期間は課税事業者として継続することになります(法人の場合、2年間経過後ということから初年度が1年未満事業年度の場合には、3課税期間は課税事業者になります)。この不適用届出書を提出していない限り、再度、基準期間における課税売上高が1千万円以下になる課税期間においても課税事業者として取り扱われます。 又、 新設法人で資本金が1千万円以上の場合には、 2課税期間は強制適用期間として課税事業者になりますが、 3年目において設立初年度(1年目)での課税売上高が1千万円未満(年換算後)であった場合には、 自動的に免税事業者となってしまいます。 3年目以降も課税事業者として継続されたい場合には、 2年目末までに「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署に提出することが必要になります。

③ 消費税課税事業者選択届出後の制約(調整対象固定資産に係わる控除対象仕入税額の調整)

控除対象仕入税額の控除期間の適正化のために、課税事業者として強制される期間内 ((イ) 新設法人で資本金1千万円以上の設立当初の基準期間が無い事業年度、 (ロ) 事業者免税点制度を受けないで課税事業者を選択した強制適用期間)に1個又は1組で100万円以上の固定資産「調整対象固定資産」を購入し、 第3年目末現在も当該調整対象固定資産を保有されている場合、一定の控除税額の調整が必要となるケースがあります。

(a)課税売上割合が著しく変動した場合

3年間の通算課税売上割合に対して、資産仕入時課税期間の売上割合との変動率が50%以上で、かつ両者の差額が5%以上のケース。

(b)転用があった場合

その資産用途が、課税と非課税業務用間での転用のケース

(注)課税事業者を選択した者、又は資本金1,000万円以上の設立後2年以内の新設法人で調整対象固定資産を取得した場合には、取得時に簡易課税制度の適用を除き、その取得期間から原則として3年間は事業者免税点制度の適用はなく、又、簡易課税制度へ変更することもできません。

2016年9月13日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant