農地所有適格法人

1.農業法人
農業経営が個人から法人へと移ってきていますが、 これも時代の流れかと思います。 日本の農業経営は、 個人での多くは小規模で、 かつ、 高齢化による後継者問題もあり農業従事者が減少してきています。 逆に、 農業法人という法人組織で農業に参入される件数が増えてきています。 更に、 法人参入を後押しするように、 2015年(平成27年)に農地法が改正され、 2016年4月1日より農業法人の呼称が農業生産法人から「農地所有適格法人」と改称されました。 これは、 農地所有できる法人の要件を緩和化・明確化する為に、 農地法上の法人呼称を変更しています。

2.農業経営に参入できる法人要件
法人が農業経営に参入できる基本的要件(⓵~⓷)は次のとおりです。

①農地の全てを効率的に利用 機械や労働力等を適切に利用するための営農計画を持っていること
②一定の面積を経営 農地取得後の農地面積の合計が、原則50a(北海道は2ha)以上であることが必要(但し、農地面積は、地域実情に応じて市町村の農業委員会が引き下げることが可能)
③周辺の農地利用に支障が無い 水利調整に参加しない、無農薬栽培の取組が行われている地域で農薬を使用するなどの行為をしないこと
農地を所有及び賃借できる法人 上記の基本的要件を満たす「農地所有適格法人」に該当する場合(下記の3.参照)
農地を賃借できる法人 上記の基本的要件を満たす「特定一般法人」に該当する場合(下記の4.参照)

3.農地所有適格法人
この農地所有適格法人の概要は次のとおりです。

法人形態 株式会社(非公開会社<株式の譲渡制限の定めがある会社>に限る)、 持分会社(合名会社、 合資会社又は合同会社)又は農事組合法人(農業協同組合法に準法)
事業要件 売上高の過半数が農業収入(農産物の加工・販売等の関連事業も含む)
構成員(株主、社員、組合員)・議決権要件 農業関係者 * 常時従事者

* 農地の権利を提供した個人

* 農地中間管理機構又は農地利用集積円滑化団体を通じて法人に農地を貸付ている個人

* 基幹的な農作業を委託している個人

* 地方公共団体、 農地中間管理機構、 農業協同組合、農業協同組合連合会

上記農業関係者の議決権が、 総議決権の1/2超

農業関係者以外の構成員 保有できる議決権が、 総議決権の1/2未満
役員要件(取締役、業務執行社員、理事) * 役員の過半数が農業(農産物の加工・販売等の関連事業も含む)の常時従事者(原則年間150日以上)

* 役員又は重要な使用人(農場長等)のうち、 1人以上が農作業に従事(原則年間60日以上)

4.特定一般法人
この特定一般法人の概要(農地を賃借できる適用要件)は次のとおりです。

① 賃借契約に解除条件が付されていること

解除条件の内容:農地を適切に利用しない場合に契約を解除すること

② 地域における適切な役割分担のもとに農業を行うこと

役割分担の内容:集落での話し合いへの参加、農道や水路の維持活動への参画など

③ 業務執行役員又は重要な使用人が1人以上で農業に常時従事すること

農業の内容:農作業に限らず、マーケティング等経営や企画に関するものであっても可

5.法人化のメリットとデメリット
(1)法人化のメリット
制度上のメリットとしては、融資制度や税制上の優遇措置、社会保障制度、農地の取得支援などがあげられ、経営上のメリットとしては経営管理能力や対外的信用力の向上、農業従事者の確保・育成・福利厚生の充実などがあげられます。
(2)法人化のデメリット
法人化に伴う義務としては、納税義務(法人課税が個人課税より有利となるには、一定以上の所得規模が必要)や事業主負担の発生、記帳義務、会計事務に関する経費負担、設立時に資本金や設立登記費用等の経費が必要なことがあげられます。

今後の農業経営を考えた場合、実情から個人経営よりも法人組織下で規模を拡大して運営された方がスケールメリットが取れるものと判断します。

2016年9月13日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant