新たに第13条の4が新設された公証人法施行規則が平成30年11月30日から施行され、株式会社、一般社団法人及び一般財団法人の定款認証の方式が変わっています。公証人に定款認証を受けるときに、「実質的支配者となるべき者の申告書」を提出し、暴力団員等に該当するか否かを申告しなければならなくなりました。確認の結果、暴力団員等に該当した場合には、原則として、公証人は定款認証を拒むことになります。
1.改正の趣旨
法人の実質的支配者を把握することにより、法人の透明性を高め、暴力団員等による法人の不正使用、マネーロンダリングやテロ資金供与等を防止することを目的とするものであり、国内外からの要請に基づくものです。特に、平成31年に行われるFATF(資金洗浄に関する金融活動作業部会)による第4次対日相互審査に対応するもので、仮に、この改正が行われなければ金融機関間での海外送金が制限される可能性がありました。経済活動に対する国際的な信用を向上させるためにも必要なことでした。
2.施行時期
平成30年11月30日以降の申請からの適用となっています。
3.対象となる法人
株式会社、一般社団法人及び一般財団法人のみが適用対象ですので、特定目的会社や税理士法人等の定款認証手続きは、従来通りです。
4.実質的支配者とは
その法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある者として主務省令で定める者(犯罪による収益の移転防止に関する法律4条1項4号)となっており、株式会社の場合における具体的な該当事由として、認定する手順は次の通りです。
(1)議決権の直接保有及び間接保有が50%超となる自然人となるべき者の存否
直接保有:自然人が発起人となり、出資して株式を保有すること。
間接保有:自然人の支配法人(当該自然人が50%超の議決権を保有する法人)が発起人となり、出資して株式を保有すること。
保有議決権数の認定:直接保有及び間接保有の合計数による。
上場企業等及びその子会社は、自然人とみなされます。
(イ)該当者ありのケース
該当者1名が実質的支配者(1号該当)
但し、この者が事業経営を実質的に支配する意思又は能力(実質支配意思等)がないことが明らかな場合には実質的支配者非該当(その場合には、他の者につき(3)で判定する)
(ロ)該当者なしのケース
下記(2)で認定
(2)上記(1)による実質的支配者が存在しない場合には、
議決権の直接保有及び間接保有が25%超となる自然人となるべき者の存否
(イ)該当者ありのケース
該当者全員が実質的支配者(1号該当)
但し、このうち実質支配意思等がないことが明らかな者は実質的支配者非該当(全員非該当となると(3)で判定する)、また、実質支配意思等のある25%超保有者がいても、他に実質支配意思等がない議決権50%超保有者がいるときは(3)で判定する
(ロ)該当者なしのケース
下記(3)で認定
(3)上記(1)及び(2)のいずれにも該当する者がいない場合には、
出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力を有する自然人となるべき者の存否
(イ)該当者ありのケース
該当者全員が実質的支配者(2号該当)
(ロ)該当者なしのケース
下記(4)で認定
(4)上記(1)、(2)及び(3)のいずれにも該当する者がいない場合には、
設立する株式会社の代表権を持つ取締役が実質的支配者(4号該当)
5.認証手続きの概要
(1)定款認証申請前の手続き
① 定款案の公証人への送付と検討依頼
従来通り、メール、ファックス等で定款案を送付する。
② 「実質的支配者となるべき者の申告書」の送付
「実質的支配者となるべき者の申告書」(日本公証人連合会のホームページから書式をダウンロードできます)を作成し、署名押印又は記名押印を付して、公証人に送付する。当申告書には、次の資料を添付します。
Ⅰ 実質的支配者となるべき者の本人特定事項等が明らかになる資料
* 自然人の場合:運転免許証・旅券・マイナンバーカード・在留カード等の写し等(印鑑証明書もOK)
* 法人の場合:全部事項証明書及び印鑑証明書の原本、又は写し(代表者印を印鑑証明書の欄外等に押捺する)
Ⅱ 実質的支配者該当性の根拠資料
* 定款のみが根拠資料のときは、添付資料不要
* 定款以外の根拠資料があるときは、その原本又は写し
* 根拠資料なしのときは、申告書の実質的支配者該当性の根拠資料欄の「なし」を〇で囲むこと
Ⅲ 申告書及び添付書類の送付方法
公証人への送付は、持参、郵送、ファックス又はメールのいずれの方法で構いません。
以上から、公証人はデータベースより申告書記載の実質的支配者となるべき者が暴力団員等に該当するか否かをチェックし、該当しないと判断された場合には、そのまま認証手続きを行います。逆に、暴力団員等に該当する疑いを払拭できない場合には、必要に応じて関係機関に照会する等の手続きを経て最終結論を出します。その結果、法人の設立行為に違法性があると認められれば、定款認証は拒否されることになります。
(2)定款認証申請時の手続き
従来の申請内容と実質的に変わりはありません。
(3)定款認証文
定款の認証文には、実質的支配者となるべき者の申告があったこと等も記載されることになります。なお、希望があれば「申告受理証明書」が交付手数料なしで交付してもらいます。
以上