国税庁は2019年1月から、スマートフォン(スマホ)を使って確定申告ができるようにする。本人確認に使うマイナンバーカードと、このカードの情報を読み取れる機能がついたスマホの普及を見据え、現在の申告システムを刷新する。
2017年のアーカイブ
年末調整の概要
- 年末調整とは
毎年11月となりますと会社(給与支払者)の給与担当部署は、 「年末調整」の準備・対応という大変忙しい時期を迎え、 勤務者(従業員)はその年末調整の為に必要となる申告書や証明書類等を所定の期限までに会社に提出することが求められます。 会社は、 勤務者から回収した年末調整用の書類の内容を確認しその最終提出情報に基づいて、 暦年の最終給与支払時(通常、 12月給与)に納めるべき年間の所得税及び復興特別所得税(年税額)を算出し、 これまでの給与支給時に源泉徴収された累計税額とを比べその差額となる過不足額を精算(徴収又は還付)します。 その一連の精算手続が年末調整ということになります。 一般的には、 年末調整により還付されるケースが多いかと思います。
- 平成29年度(2017年度)の所得税に係わる改正
平成29年度の年末調整において、税制改正により影響を受ける主な項目は以下の通りです。
(1) 給与所得控除額の上限額引下げ
給与収入1,000万円超から給与所得控除額は220万円が上限となりました。
(2) マイナンバーの記載不要の特例制度
平成28年1月よりマイナンバー制度が導入されましたが、平成29年分以後の扶養控除等(異動)申告書等へのマイナンバーの記載不要の特例制度が創設されました。 その適用要件として、既にマイナンバーの情報が提供されており、 その情報を記載した帳簿を会社が備えているときには記載不要となりました。
マイナンバーの記載不要の特例制度が適用できない方には、以下の対応が必要となります。
「平成29分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出にあたり、 給与所得者本人、 控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の個人番号を記載することになります。 提出にあたり、 給与支払者が給与所得者から個人番号の提供を受ける場合は、 本人確認として、 提供の番号が正しいことの確認(番号確認)と、 番号提供者が真にその番号の持ち主であることの確認(身元確認)を行う必要があります。 なお、 控除対象配偶者、 控除対象扶養親族等の本人確認は、 給与所得者が行うことになっています。
平成28年1月以降の支払に係る給与所得の源泉徴収票には、 上記の個人番号を記載して税務署等の行政機関に提出することになりますので、 「扶養控除等(異動)申告書」に必要なマイナンバーが記載されていない場合には、 源泉徴収票作成までにマイナンバーの提供を受ける必要があります。 なお、 給与所得者への源泉徴収票には、 個人番号は記載されません。
(3) 平成30年1月以後の源泉徴収等に関する改正
平成29年度税制改正におきまして、平成30年1月(平成30年度)より配偶者控除及び配偶者特別控除に改正がありました。その為に、源泉徴収事務においてその対応に注意が必要となります。特に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の記載内容や扶養親族等の数の数え方に関する点です。年末調整時にも影響する内容となっています。これらの内容に関しましては、後日紹介いたします。
- 年末調整の対象者
年末調整の対象者は、 原則として会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人は全員含まれます。 但し、 給与収入額が2千万円を超える人は年末調整を行ないませんので自身の確定申告を通じて年税額の精算をしなければなりません。 通常、 1カ所から給与支給を受けている人は、 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出し年末調整を受けることになります。
次の人は年末調整の対象者にはなりません。
(1) 年中の給与収入額が2千万円を超える人
(2) 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人(年末調整を行うことができませんが、 支払の際の源泉徴収においては乙欄の税額表が適用となります)
(3) 年中に退職(死亡退職した人、 非居住者として国外勤務者となった人、 等を除く)した人
(4) 国内に住所も1年以上の居所を有していない人(非居住者)
(5) 災害免除法の規定により源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人
(6) 日雇労働者等(丙欄の税額表適用者)
年末調整の為に提出が求められる申告書とその中に記載される控除項目は以下のとおりです。 当該控除項目以外に所得から控除可能な項目がある場合にはそれらの項目は確定申告で行うことになります。
申告書の名称 | 控除項目 |
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 配偶者控除、 扶養控除、 障害者控除、 寡婦(夫)控除、 勤労学生控除、 基礎控除 |
給与所得者の配偶者特別控除申告書 | 配偶者特別控除 |
給与所得者の保険料控除申告書 | 生命保険料控除(一般生命・介護医療・個人年金)、 地震保険料控除、 社会保険料控除、 小規模企業共済等掛金控除 |
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 | (特定増改築等)住宅借入金等特別控除(2年目から年末調整の対象で初年度は確定申告が必要) |
申告書記載上の主な注意点は以下のものがあります。
(イ) 12月31日時点の現況で記載
その年の12月31日現在の現況を見積もりで記載することになります。 見積記載の内容に修正が生じた場合(例えば、 扶養者数の増減、 等)には、 再年末調整(翌年の1月末までは可能)又は確定申告により適正な精算を行うことになります。
(ロ) 人的控除項目の判定基準に合計所得金額基準
控除項目の中(控除対象配偶者、 控除対象扶養控除、 配偶者特別控除等の人的控除項目)には、 その控除に該当するかの判定基準にその年度の合計所得金額がありますので留意してください。 多い誤りとしては、 配偶者の合計所得金額が控除対象金額を超えているケースです。
配偶者控除の場合の合計所得金額は、 38万円以下(給与収入額では103万円以下)でなければなりません。 「配偶者」とは、 婚姻の届出をしている配偶者をいい、 内縁関係の人は含まれません。
配偶者特別控除の場合の合計所得金額は、 38万円超~76万円以下でなければなりません。
公的年金等の雑所得だけの方で控除対象扶養者(合計所得金額が38万円以下)になる場合には、 公的年金等の収入金額が158万円以下(年齢65歳未満の人は108万円以下)という条件を満たす人です。
「所得金額」として、 税法の規定のなかに「合計所得金額」、 「総所得金額」、 「総所得金額等」の3種類が適用判定基準の中に出てきますが、 それぞれ多少の違いがあります。
(1) 所得金額基準は主にどの適用範囲に出てきているか
所得金額 | 主な適用範囲 |
合計所得金額 | ●扶養控除対象者: 合計所得金額が38万円以下
●配偶者控除対象者: 合計所得金額が38万円以下 ●配偶者特別控除対象者: 合計所得金額が38万円超76万円未満、 並びに申告者本人の控除対象者: 合計所得金額が1,000万円以下 ●寡婦(寡夫)控除対象者: 合計所得金額が500万円以下 ●勤労学生控除対象者: 合計所得金額が65万円以下 ●住宅ローン控除対象者: 合計所得金額が3,000万円以下の年 ●居住用財産の買換えの譲渡損失の損益通算・繰越控除の適用対象者: 合計所得金額が3,000万円以下の年 ●特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除の適用対象者: 合計所得金額が3,000万円以下の年 ●市県民税均等割の非課税判定基準・市県民税の扶養親族や各種控除の判定基準 ●直系尊属から住宅取得等資金の受贈与者の非課税対象者: 合計所得金額が2,000万円以下 |
総所得金額 | |
総所得金額等 | ●医療費控除限度額: 総所得金額等の5%
●雑損控除限度額: 損失の金額 - 総所得金額等 X 10% ●寄付金控除限度額: 総所得金額等 X 40% - 2,000円 ●寡婦となる要件: 扶養親族その他その人と生計を一にするその年分の総所得金額等が38万円以下の子がいる人 ●寡夫となる要件: 生計を一にするその年分の総所得金額等が38万円以下の子がいる人 ●市県民税所得割の非課税判定基準 |
(2) ①合計所得金額、 ②総所得金額、 ③総所得金額等の定義
左から右にみて所得の範囲等がそれぞれ異なっていることがお分りになるかと思います。
所得種類 | ① | 各種繰越控除の適用(①から控除) | ② | ③ | |||
利子所得 | 所 得 金 額 の 損 益 通算 |
合 |
* 純損失や雑損失の繰越控除
* 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除 * 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除 * 上場株式等の譲渡損失の繰越控除 * 特定中小会社発行株式の譲渡損失の繰越控除 * 先物取引の差金等決済損失の繰越控除 |
総 |
総 |
||
配当所得 | |||||||
不動産所得 | |||||||
事業所得 | |||||||
給与所得 | |||||||
雑所得 | |||||||
一時所得 | 2分 の1 |
||||||
総合課税の譲渡所得 | 長期 | ||||||
短期 | |||||||
分離課税(土地・建物等)の譲渡所得(特別控除適用前) | 長期 | ||||||
短期 | |||||||
分離課税の株式等の譲渡所得 | |||||||
分離課税の先物取引の雑所得 | |||||||
退職所得 | |||||||
山林所得 |
配偶者控除、 扶養者控除等の所得基準額は、 「総所得金額」より範囲が広い「合計所得金額」で判定することになり、 分離課税所得の発生年度には注意が必要となります。
(ハ) 年齢16歳未満の年少扶養親族
控除対象扶養控除に関して、 平成23年度から年齢16歳未満の年少扶養親族に対する扶養控除が所得税では廃止となっています(年齢16歳未満は所得税における扶養控除対象者ではありません)。 しかし、 住民税の方では控除対象となっていますので住民税に関する欄への記載を忘れないでください。 なお、 年齢16歳未満の年少扶養親族であっても、 障害者又は特別障害者に該当する場合には、 障害者控除を受けることはできます。
平成29年度の年末調整時における年齢16歳未満とは、 平成14年1月2日以後に生まれた人が年少者となります。
(ニ) 扶養親族
所得者と生計を一にする親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)で、 合計所得金額が38万円以下の人を扶養親族(配偶者、青色事業専従者及び白色事業専従者を除く)といいます。 その中には、 以下のように区分されています。
① 控除対象扶養親族
扶養親族のうち、 年齢16歳以上の人をいいます(平成29年度の年末調整では、 平成14年1月1日以前に生まれた人)。
② 特定扶養親族
扶養親族のうち、 年齢19歳以上23歳未満の人をいいます(平成29年度の年末調整では、 平成7年1月2日から平成11年1月1日までの間に生まれた人)。
③ 老人扶養親族
控除対象扶養親族のうち、 年齢70歳以上の人をいいます(平成28年度の年末調整では、 昭和23年1月1日以前に生まれた人)。
④ 同居老親等
老人扶養親族のうち、 所得者又はその配偶者の直系尊属でいずれかとの同居を常況としている人をいいます。
(注): 国外居住親族に係る扶養控除等の適用時に所定の書類添付等の義務化
非居住者である親族(国外居住親族)に係る扶養控除、 配偶者控除、 障害者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける場合には、 「親族関係書類」及び「送金関係書類」の提出又は提示を受ける必要があります。
具体的な手続きとして、 適用を受ける旨を「扶養控除等(異動)申告書」上の「非居住者である親族」欄に○印を付し、 関係書類の提出等を行います。
(ホ) 生命保険料控除の改組
平成24年(2012年)1月1日からの契約分(新契約)から一般生命保険に含まれていた「介護医療保険」が独立の控除対象となりました。 平成23年までの契約分(旧契約)については、 昨年までと同様に「一般生命保険」と「個人年金保険」の2つに分けられ最高控除額は、 各5万円です。 新契約は、 「一般生命保険」、 「介護医療保険」と「個人年金保険」の3つに分けられ最高控除額は、 各4万円となります。 なお、 旧契約と新契約が混在するケースも発生することもありますが、 各保険料控除の合計適用限度額が12万円とされています。 従いまして、 支払保険契約が、 旧契約か新契約かを保険会社からの証明書で確認しながら申請書に正しく記載する必要があります。
生命保険契約等により支払われた保険料や掛金は所得者本人が支払ったものに限られています。 又、 保険金、 共済金等の給付金の受取人の全てが所得者本人又は所得者の配偶者や親族となっていることが必要です。
翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 本年中に相当する部分のみが支払保険料の金額となります。
(ヘ) 社会保険料控除
所得者本人と生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料を所得者自身が支払った場合(時限措置により納付可能となった過去分の保険料の支払分も含む)には、 所得者本人の社会保険料として控除できます。
年金から特別徴収された介護保険料や後期高齢者医療保険料については、 支払者が年金受給者自身となることから、 その年金の受給者の社会保険料として控除となります。
翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して前納保険料がある場合には、 前納期間が1年以内の場合には、 その全額を本年の社会保険料として控除することができます。 なお、 国民年金保険料については、 2年分を前納できることになりましたので、 全額控除をするか、 又は期間按分して控除(この場合には、 按分の明細書が要作成)する方法のいずれかを選択することが可能です。
(ト) 地震保険料控除
所得者本人と生計を一にする親族が所有して常時居住している家屋や生活に通常必要な家財に対して支払った保険料の内、 一定の金額を地震保険料控除として控除できます。
一つの契約等で、 地震等損害に対する損害保険契約と旧長期損害保険契約のいずれの契約区分にも該当する場合には、 選択によりいずれか一方の契約区分のみが地震保険料控除の控除額となります(有利な方を選択する)。
(チ) (特定増改築等)住宅借入金等特別控除
現在、 各種の住宅借入金等特別控除がありますが、 控除を受けようとする初年度分については、 確定申告により控除の適用を受ける必要があります。 2年度以降分については、 年末調整の際に下記のものを給与支払者に提出します。
① 税務署長が発行した「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」。 この証明書の上部に「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」がありますので、 控除金額等の記載を行い提出します。
② 金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
一般の住宅借入金等特別控除は、 居住者が一定の要件を満たす住宅の取得等して、 その人の居住の用に供した場合(その家屋の取得等の日から6ケ月以内に居住用に供したものに限られています)において、 その住宅の取得等のために一定の住宅借入金(償還期間10年以上等)を有するときには、 居住年以後10年間(平成13年7月1日から平成33年12月31日までの間で居住した場合には、 最長10年間。 それ以前のもは最長15年間)の各年のうち、 合計所得金額が3千万円以下である年について、 住宅借入金等の年末残高を基にした所定額を住宅借入金等特別控除としてその年の所得税額から控除できるというものです。
家屋に入居後、 本年12月31日まで継続して居住用に供していることが控除の適用要件ですので、 年度の途中で海外勤務となり出国している場合には、 この制度の適用はありません。
自己の居住用の家屋が2以上有する場合には、 主として居住用とする1の家屋に限られます。
連帯債務(共有)の場合には、 各年12月31日現在のその住宅借入金等の金額に控除を受ける人の負担割合(持分割合)を加味して控除額を計算します。 その割合は、 小数点以下第4位を切上げ、 90%以上である場合は100%とします。
住宅ローンの借換え: この制度の適用者が、 住宅借入金等の借換えをした場合に一定の要件を満たすときには適用が継続します。 住宅ローン金利が低くいものがあるとローンの借換えを行う場合があります。 一般の住宅ローンの場合の借換えでは、 新たな借入金が当初の借入金を消滅させるもので、 適用対象となっていた家屋の取得等のための資金に充てるものであれば住宅ローン控除の継続適用の対象となります。 その場合の新たな借入金の償還期間も10年以上であることが適用要件となっています。 ローン借換後の借入額が借換前の借入残高以下であれば、 年末借入残高が控除対象額となりますが、 逆に借換後の借入額が借換直前の借入残高を上回る場合、 次の按分計算して控除対象額を導く必要があります。
ローン借換後の借入額の年末残高 X (借換直前の借入残高 ÷ 借換直後の借入額) = 控除対象借入額の年末残高
(リ) 給与と徴収税額の集計
年中に支払った給与・賞与が対象になりますが、 本年分の給与で未払いであっても、 本年中に支給日が到来して支払の確定したものについても年末調整の対象になります。
以上が年末調整の概要となります。
所有者不明の土地調査 法務省、来年度から 相続登記促す
法務省は2018年度から、相続の手続きがされず所有者がわからなくなった土地の本格的な調査に乗り出す。全国の司法書士らに委託し、登記簿などから所有者が生きているかを調べる。既に死亡している場合は法定相続人をたどり相続の登記をするよう促す。
不動産の相続登記が放置されたままだと、子、孫、ひ孫と相続権を持つ人が増え、さらに権利関係が複雑になる。同省は法定相続人に対応を促す必要があると判断した。
相続税額計算の基礎
相続税の課税方式は、昭和33年より遺産課税方式をベースに遺産取得課税方式という折衷法(法定相続課税方式)となっています。この法定相続課税方式とは、具体的には、被相続人(亡くなられた方)の遺産総額を、法定相続人の人数と法定相続分によって仮定計算による相続税額を算出し、その相続税額を各相続人が実際に取得した遺産価額の割合で按分し、その後に対象となる税額控除を反映して納税額を算出するというものです。相続税額計算ステップは、以下の様になります。
1.各相続人の遺産額を確定・計算(課税価格計算)
2.各相続人の遺産額の合計(課税価格総額の計算)
3.基礎控除額の計算
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数
4.課税遺産総額の計算
課税価格総額 - 基礎控除額 = 課税遺産総額
5.課税遺産総額に対する各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額の計算
6.各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額に対する相続税額の計算
7.各法定相続人分の税額の合計(相続税総額の計算)
8.相続税総額を各相続人の遺産額により按分計算
9.各相続人の納付税額の計算
各相続人の相続税額 + 2割加算 - 税額控除 = 納付税額
以下に、各計算ステップに対して概要を説明します。
1.各相続人の遺産額を確定・計算(課税価格計算)
取得財産の価格 – 債務・儀式費用 = 純資産の価格= 各人の課税価格
純資産の価格 + 相続開始前3年以内の贈与資産 + 相続税精算課税による贈与財産
本来の相続財産 + みなし相続財産 = 取得財産の価格
(1)相続開始前3年以内の贈与財産加算
原則、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得した場合、その財産価額を相続税の課税価格に加算して相続税を計算しなければなりません。なお、3年以内であっても贈与税の配偶者控除(居住用財産)等は、相続財産の加算対象になりません。(2)相続時精算課税制度の適用による贈与財産加算相続時精算課税制度の適用を受けた年分以降の贈与は、贈与税の申告の有無に係わらず全て相続財産の加算対象です。なお、特別控除枠を超えた贈与があり、その贈与税の申告が行われていない場合には、期限後申告を提出し納税します。
2.各相続人の遺産額の合計(課税価格総額の計算)
各人の課税価格を合計します(相続人分の総計)。
3.基礎控除額の計算
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数 = 基礎控除額
法定相続人に含められる養子の数は制限されています。最大2名(実子がいる場合には1名)まで養子として認められていますが、一定の場合(特別養子縁組により養子、配偶者の実子を養子、実子もしくは養子の死亡により代襲相続等)には、養子の人数制限はありません。
4.課税遺産総額の計算
課税価格総額 - 基礎控除額 = 課税遺産総額
5.課税遺産総額に対する各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額の計算
この分割額は、実際に財産を取得したかに関わりなく、法定相続人が法定相続分で分割したものとして仮定したものです。
6.各法定相続人の法定相続分に応じた遺産分割額に対する相続税額の計算
各法定相続人に分割した課税遺産総額に対して、下記の税率を適用して税額を算出します。
相続税の速算表 (A×B-C = 税額)
(A)法定相続分の各人の取得金額 (B)税率 (C)控除額
1000万円以下 10% 0万円
1000万円超~3000万円以下 15% 50万円
3000万円超~5000万円以下 20% 200万円
5000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~2億円以下 40% 1,700万円
2億円超~3億円以下 45% 2,700万円
3億円超~6億円以下 50% 4,200万円
6億円超~ 55% 7,200万円
課税遺産総額×各法定相続人の法定相続割合分×税率-控除額=各法定相続人分の税額
7.各法定相続人割合分の税額の合計(相続税総額の計算)
各法定相続人分の税額の総額を算出します。
8.相続税総額を各相続人の遺産額により按分計算
相続税の総額 × 各人の課税価格/各人の課税価格の合計額 = 各人の相続税額
9.各相続人の納付税額の計算
各相続人の相続税額 + 相続税額2割加算 - 税額控除 = 各人の納付税額
(1)相続税額2割加算される相続人
2割加算される相続人は、配偶者及び1親等の血族(父母又は子とその代襲相続人及び養子も含む。但し、被相続人の養子の孫は除外)以外となっています。従って、 被相続人の孫や兄弟姉妹は2割加算の対象者です。
2割加算の対象者 | 孫養子(代襲相続に該当の場合を除く)
兄弟姉妹(代襲相続人を含む) 法定相続人以外の受贈者等 |
||
2割加算の非対象者 | 配偶者
一親等の血族(養子が、相続により被相続人である養親の財産を取得 した場合においては、被相続人の一親等の法定血族となる) 代襲相続人である直系卑属(孫養子を含む) |
(2)税額控除
各人の税額から次の該当する税額の控除があります。
① 贈与税額控除
相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けたものは、相続財産に加算されていますので、この部分の贈与税相当額は、控除の対象となります。
② 配偶者の税額軽減
配偶者は被相続人の財産形成に大いに寄与していること、及び将来の生活保障面を考慮して相続税の大幅な軽減を特例として認めています。
軽減額 = iとiiのうち少ない金額/課税価格の合計額 × 相続税の総額
ⅰ 課税価格の合計額×配偶者の法定相続分(1.6億円未満は1.6億円)
ⅱ 配偶者の課税価格
上記の算式を分かり易くすると、 配偶者が取得した遺産額のうち次のいずれか大きい方までは相続税がかからないことになっています。
(イ)総課税価格の金額に対する配偶者の法定相続割合相当額(総課税価格の金額の最低50%~最高100%)
(ロ)1億6千万円
総課税価格の金額が5億円でしたら、 相続人が配偶者と子であった場合には、その50%の2.5億円まで、 なお、 相続人が配偶者のみであった場合には、 その全額(100%)の5億円は配偶者には税額の軽減が図られることになります。
ただし、遺産分割が済んでいない場合には、この特例の適用はありません。なお、 相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が完了すれば、 この税額軽減の特例が受けられます。 この配偶者に対する税額軽減措置は、 非課税ではなく二次相続までの課税の繰延の性格を有しています。 配偶者の固有財産を調査して、 二次相続を想定した遺産分割を行うことが肝要です。
法定相続人と法定相続分の組合せ
法定相続人 | 第1順位 (子) | 第2順位(直系尊属) | 第3順位(兄弟姉妹) | ||||
① | ⑤ | ② | ⑥ | ③ | ⑦ | ④ | |
配偶者 | 1/2 | × | 2/3 | × | 3/4 | × | 100% |
血族相続人: | - | - | - | - | - | - | - |
子(又は孫等) | 1/2 | 100% | × | × | × | × | × |
直系尊属(親等) | - | - | 1/3 | 100% | × | × | × |
兄弟姉妹(又はその子) | - | - | - | - | 1/4 | 100% | × |
×:相続人が死亡(又は不存在)している場合
③ 未成年者控除
相続人が20歳未満等に適用があります。
控除額 = (20歳-相続開始時の年齢)× 10万円
④ 障害者控除
相続人が年齢85歳未満等で障害者に適用があります。
控除額 = (85歳-相続開始時の年齢)× 10万円(特別障害者は20万円)
⑤ 相次相続控除
前の相続(1次)から10年以内に今回の相続(2次)が起こった場合、税額から一定額が控除されます。
⑥ 外国税額控除
国外にある財産にその所在する国で課税されていた場合、一定額が控除されます。
以上の計算結果で税額控除後で納付税額がマイナスになったときはゼロとし、さらに相続時精算課税に係る贈与財産の価額が存在していた場合には、その課税分の贈与税額を控除します。この控除後の金額が納税額となり、マイナスの場合には還付対象となります。
相続税の申告及び納付は、相続開始日(死亡日)から10ヶ月以内に行わなければなりません。なお、申告期限の延長が認められませんので、遺産分割協議が成立していない場合には、民法での法定相続分に従って仮定計算を行い、申告することになります。このような場合には、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減の特例等の適用は認められません。この申告後に遺産分割が確定し、申告との差額が発生した場合には、修正申告(増税のケース)、又は更正の請求(還付のケース)を行うことになります。
商業地 2年連続上昇 基準地価 訪日客効果一段と
国土交通省が19日発表した2017年7月1日時点の基準地価は、 全国商業地が前年比0.5%上がり、2年連続で上昇した。 2016年7月は前年比0.005%のプラスだった。訪日客の増加に伴い店舗やホテル用の土地が上がり、都市部では再開発がけん引役となった。全用途でみると、三大都市圏は1.2%のプラスで0.2ポイント上昇した。地方圏は0.9%のマイナスだったが、下落率は0.3%縮小した。
2017年基準地価の変動率(7月1日時点、 前年比%、 ▲は下落):
地域 |
住宅地 | 商業地 | 全用途 | |||
2017年 | 前年 | 2017年 | 前年 | 2017年 | 前年 | |
全国平均 | ▲0.6 | ▲0.8 | 0.5 | ▲0.005 | ▲0.3 | ▲0.6 |
三大都市圏 | 0.4 | 0.4 | 3.5 | 2.9 | 1.2 | 1.0 |
東京圏 | 0.6 | 0.5 | 3.3 | 2.7 | 1.3 | 1.1 |
大阪圏 | 0.0 | 0.0 | 4.5 | 3.7 | 1.1 | 0.8 |
名古屋圏 | 0.6 | 0.5 | 2.6 | 2.5 | 1.2 | 1.1 |
地方圏 | ▲1.0 | ▲1.2 | ▲0.6 | ▲1.1 | ▲0.9 | ▲1.2 |
中核地方4市 | 2.8 | 2.5 | 7.9 | 6.7 | 4.6 | 4.0 |
公的機関が公表する土地価格情報には、 以下のものがあります。
公示地価 | 基準地価 | 路線価 | 固定資産税評価額 | |
調査主体 | 国土交通省 | 都道府県 | 国税庁 | 市町村 |
調査地点数 | 約25,300 | 約21,700 | 約336,000 | 多数 |
調査時点 | 1月1日 | 7月1日 | 1月1日 | 1月1日(原則3年に1回、 次回は2018年) |
公開時期 | 3月 | 9月 | 7月又は8月 | 3月 |
公開サイト | 国交省(土地総合情報ライブラリー) | 国交省(土地総合情報ライブラリー) | 国税庁 | 資産評価システム研究センター |
その他 | 調査対象は都市部の比重が高い。 標準地の公示地価は一般の土地取引価格の指標となるだけでなく、 公共事業用地の取得価格算定や、 国土利用計画法に基づく土地取引規制における土地価格審査の基準にも使われる。 | 調査対象は地方の調査地点が多く、 不動産鑑定士の評価を参考に調査し、 一般の土地取引価格の指標となる。 公表は国交省から | 相続税・贈与税の基準となる地価で、 公示地価の8割程度の水準 | 土地に対する固定資産税計算の基準となる地価で、 公示価格の7割程度の水準 |
- 2017年9月13日 消費増税は予定通り 社会保障改革 財源に苦慮
安倍晋三首相は12日の日本経済新聞のインタービューで、社会保障制度の高齢者偏重を是正し、教育無償化や子育て対策などを通じて現役世代への再配分を充実させる考えを強調した。2019年10月の消費税率10%への引き上げを「予定通り実施する」と明言したものの、消費増税分の使途を見直し、教育無償化などの財源に充てることには慎重姿勢を示した。財政健全化を掲げながら新たな財源をどう確保するかで今後、対応に苦慮しそうだ。
消費増税は予定通り 社会保障改革 財源に苦慮
安倍晋三首相は12日の日本経済新聞のインタービューで、社会保障制度の高齢者偏重を是正し、教育無償化や子育て対策などを通じて現役世代への再配分を充実させる考えを強調した。2019年10月の消費税率10%への引き上げを「予定通り実施する」と明言したものの、消費増税分の使途を見直し、教育無償化などの財源に充てることには慎重姿勢を示した。財政健全化を掲げながら新たな財源をどう確保するかで今後、対応に苦慮しそうだ。
都市農地維持へ税優遇 「生産緑地」2022年期限 転用を抑制
農林水産省と国土交通省は、都市部の農地「生産緑地」を維持するための対策に乗り出す。地主の相続税を猶予したり、硬直的な土地の貸し借りの仕組みを柔軟にしたりして、企業やNPOが借りやすくする。市民農園などの形で活用を促す狙いだ。生産緑地の多くは2022年に期間満了を迎え、宅地転用が加速する恐れがある。東京などでは今後、緑地の保全が課題になる。
現在の生産緑地は1992年、都市部に農地を残す目的で導入。地主には30年にわたる税優遇を認めるかわりに、営農を義務付ける。全国には約1万3千ヘクタールあり、2022年には全体の約8割の農地が優遇期間である30年の期限を迎える。期限切れの際、地主は利用を10年延長するか、市区町村に農地の買い取りを求めるか選べるが、営農をあきらめる人が増えれば、一気に宅地化が進む可能性がある。
広大地の評価方法の見直し(平成30年1月1日以後の相続等から)
平成29年度税制改正で広大地の評価方法の見直しがありました。 現行の面積に比例的に減額する評価方式から、各土地の個性に応じて形状、面積に基づき評価する方式に見直すとともに、適用要件を見直すこととされました。呼称も、「広大地の評価」から「地積規模の大きな宅地の評価」に変更になっています。
現行の評価方法では、適用要件が相対的な曖昧さがあり適用にあたり納税者と税務署との間で意見相違があり訴訟等となるケースが少なくありませんでした。又、個別の土地の形状等とは関係なく面積に比例して減額するために、この評価額が実際の取引価額と大きく乖離し下回るケースが生じていました。そこで、改正の評価方法は、
① 適用要件の簡素化
② 個別の土地の形状・面積に基づき評価
ということとなり、新たに広大地となるケースが増える半面、これまでよりも評価減額が縮小される傾向にあります。
1.広大地評価の算式
現行
(評価通達24-4) |
路線価 X 面積 X 広大地補正率 = 評価額
広大地補正率 = 0.6 - 0.05 X 広大地面積 / 1,000㎡ (下限値0.35) |
改正
(評価通達案20-2) |
路線価 X 面積 X 補正率 X 規模格差補正率 = 評価額
補正率 = 形状(不整形・奥行)を考慮した補正率(評基通15~20) 規模格差補正率 = 面積を考慮した補正率 各補正率は全て外部専門業者の実態調査に基づき設定 |
2.平成30年1月1日以後の相続等からの広大地適用要件(改正)
広大地になる要件として、「地積規模の大きな宅地」と「一定の地区」の要件を満たすのであれば広大地の評価が適用されることになり、間口が広がることになります。
(1)「地積規模の大きな宅地」とは
地積が1,000㎡(三大都市圏では500㎡)以上の宅地で、次のいずれかに該当する宅地は除かれます。
① 市街化調整区域(宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域を除く)に所在する宅地
② 工業専用地域(都市計画法8①一)に所在する宅地
③ 容積率が400%(東京都23区においては300%)以上の地域に所在する宅地
市街地の農地・山林・原野も地積規模の大きな宅地の評価対象となります(これらの土地は宅地比準方式により評価します)。
「三大都市圏」とは、
ア 首都圏整備法に規定する既成市街地又は近郊整備地帯
イ 近畿圏整備法に規定する既成都市区域又は近郊整備区域
ウ 中部圏開発整備法に規定する都市整備区域
(2)「一定の地区」とは
財産評価基本通達14-2(地区)の定めにより、適用対象となる地区が普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地区に所在する宅地であること。
(3)広大地の評価額
① 広大地が路線価地域にある場合
財産評価基本通達案(20-2)では、次の様に新設されています。
広大地の評価額 = 路線価 X 地積(面積) X 補正率 X 規模格差補正率(小数点以下第2位未満切捨て)
規模格差補正率 = (地積 X B + C)÷ 地積 X 0.8
(イ)三大都市圏に所在する宅地:
地区区分
記号 地積㎡ |
普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 | |
B | C | |
500以上 1,000未満 | 0.95 | 25 |
1,000以上 3,000未満 | 0.90 | 75 |
3,000以上 5,000未満 | 0.85 | 225 |
5,000以上 | 0.80 | 475 |
(ロ)三大都市圏以外の地域に所在する宅地:
地区区分
記号 地積㎡ |
普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 | |
B | C | |
1,000以上 3,000未満 | 0.90 | 100 |
3,000以上 5,000未満 | 0.85 | 250 |
5,000以上 | 0.80 | 500 |
広大地補正率と規模格差補正率との比較例示:
1,000㎡、三大都市圏 | 5,000㎡、三大都市圏以外 | |||
現行広大地 | 改正広大地 | 現行広大地 | 改正広大地 | |
広大地補正率・
規模格差補正率 |
0.55 |
0.78 |
0.35 |
0.72 |
② 広大地が倍率地域にある場合
本則の倍率方式(その土地の固定資産税評価額X倍率)により算出した価額と、近傍類似の宅地の評価額に倍率を乗じた金額を正面路線価として、そこから「規模格差補正率」を含めた土地の個別的要因の事情補正を行った後の価額とを比較して、いずれか低い方の価額となります。
3.平成29年12月31日以前の相続等までの広大地適用要件(現行)
その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に、 公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものであるが、 大規模工業用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等(いわゆるマンション)の敷地用地に適しているもの(その宅地について、 経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるもの)を除く、 ものをいいます。
(1)著しく地積が広大であるかの判定
各自治体が定める開発許可を要する面積基準以上(開発許可を要するか否かは、各自治体の開発指導課に確認)のものが挙げられ、 原則として、 以下に掲げる面積以上の宅地。
① 市街化区域
(a) 三大都市圏 500㎡以上
(b) それ以外の地域 1,000㎡以上
② 非線引き都市計画地域 3,000㎡以上
③ 用途地域が定められている非線引き都市計画地域: 市街化区域に準じた面積
開発許可を要する面積基準に満たない場合であっても、ミニ開発分譲が多い地域に存する土地について、広大地に該当する場合があります。
(2)都市計画法による開発行為(公共公益的施設用地の必要性)
公共公益的施設用地とは、 都市計画法第14条に規定する道路、 公園等の公共施設の用に供される土地、 及び都市計画法施行令第27条に掲げる教育施設、 医療施設等の公益施設の用に供される土地をいい、 その負担の必要性は経済的に最も合理的に戸建住宅用地の開発を行なった場合の、 その開発区域内での道路等の開設の必要性により判断するとしています。 その際、 セットバックによる道路やゴミ集積所用地等は公共公益的施設用地には該当しないことになります。 評価通達における広大地は、 戸建分譲用地として開発され、 道路等のつぶれ地が生ずる土地を前提としていますので、 以下の状況の土地も広大地の適用はありません。
* 道路に面しており、 間口が広く奥行がそれ程ない土地
* 区画整理地、 大規模開発分譲地等にみられる土地(道路が二方、 三方、 四方にある土地)
* 開発指導等により道路敷きとして一部土地を提供しなければならない状況の土地
* 路地状敷地による開発(路地状開発・旗竿開発)を行うことが合理的と考えられる土地
特に最近では、 この広大地の適用にあたり路地状開発(**)か道路開設開発かの判断で課税庁との間で揉めるケース増えてきています。 「路地状開発を行うことが合理的と認められる」かどうかは次の事項を総合的に勘案して判断するものとされています。
(a) 路地状部分を有する画地を設けることによって、 評価対象地の存する地域における「標準的な宅地の地積」に分割できること
(b) その開発都市計画法、 建築基準法、 都道府県等の条例等の法令に反しないこと
(c) 容積率及び建ぺい率の計算上有利であること
(d) 評価対象地の存する地域において路地状開発による戸建住宅の分譲が一般的に行なわれていること
(**) 路地状開発とは、 路地状部分を有する宅地を組合せ戸建住宅分譲地として開発することです。 旗竿地・敷地延長・路地状敷地は同じ意味の言葉であり、 間口が狭く通路のように長い路地状敷地部分(都市計画地域では、 建物を建てる時に敷地が道路に2m以上接していなければなりませんので、 その間口は2m以上必要となりますが、 通常はその形状敷地は通路や駐車場等として使われています)の奥に建物のスペースとして有効宅地部分がある旗竿形状の土地のことを指します。
広大地に該当しない例
① 有効開発完了地: 既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地
② 現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地(大規模店舗、 ファミリーレストラン等)
③ 原則として、 容積率300%以上の地域に所在する土地
容積率等について、役所の都市計画課で確認、特に前面道路の幅員を調べる必要があります。 それは、前面道路の幅員によって基準容積率が変化(下がる)することがあるからです。
住居系: 幅員 X 4/10 (前面道路が幅員が4mならば、 160%となる)
商業系: 幅員 X 6/10
④ 公共公益的施設用地の負担が殆んど生じないと認められる土地
マンション敵地等の判定
マンション敵地等に該当するものは広大地にはなりません。 この趣旨は、 戸建住宅分譲地として開発した場合に、 道路等のつぶれ地が生じる土地に広大地評価の適用があることを前提としていることから、 マンション等の敷地のように細分化せずに一体として有効利用できる場合には、 地積過大による減価の補正を行う必要はないことからです。 マンション敵地であるかどうかは、 「その地域」の標準的使用の状況を参考にして判断することになりますが、 戸建住宅とマンション等が混在する地域では判断が困難なケースがあります。 その様なケースでは、 専門家の意見も必要になるかもしれません。 形式的基準として容積率300%以上の地域内にあり、 開発面積基準以上の宅地は原則としてマンション適地に該当するものとされています。
原則として、 地上3階以上のマンションが建っている敷地は即、 広大地に該当しないと思われていますが、 判定要素として、 中高層と集合住宅等の2要件以外に、 「最有効使用(経済的に最も合理的である使用)」であるというものも満たす必要があります。
(3)広大地の評価額:
① 広大地が路線価地域にある場合
路線価 X 広大地補正率 X 地積 = 広大地の評価額
広大地補正率 = 0.6 - 0.05 X 広大地の地積 / 1.000㎡
広大地補正率は0.35を下限(広大地の地積は5,000㎡以下)とし、 四捨五入等の端数処理は行ないません。
② 広大地が倍率地域にある場合
通常の評価計算方式ではなく、 広大地を個別に評価することになり路線価方式に準じて評価します。 先ずは、 評価しようとする広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の価額(この価額は、 付近の標準的な画地規模を有する宅地の価額との均衡を考慮して算定する必要があります)を求め、 その価額を路線価方式における路線価とします。
以上から、 現行の広大地判定として少なくとも以下の4項目をクリアーする必要があるということになります。
広大地判定の項目 | 広大地の判定基準 |
大規模工事用地に該当するか | NO |
中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているか | NO |
その地域における標準的な住宅の地積に比して著しく地積が広大か | YES |
開発行為を行うとした場合、 道路や公園等の公共公益的施設用地の負担が必要と認められるか | YES |
改正(通達改正案)では、現行の広大地判定の4項目は、大規模工事用地を除き特に判定基準に影響しないことになりそうですが、今後の最終通達等には注視していく必要があります。
最低賃金25円上昇 今年度平均
2017年度の都道府県別最低賃金の改定額の答申が17日出そろった。時給800円以上の自治体が前年比7割増の15都道府県に上った。全国平均は現在より25円高い848円になった。
一番高いのは東京958円、神奈川県956円、大阪府909円の順で、一番低いところの最低賃金は737円でした。
空き家解消 市町村主導 税も優遇、転用促す
国土交通省は人口減を背景に全国で増える空き家問題への対応で、市町村の役割を強化した新たな制度を導入する。市町村が空き家の情報を積極的に集め、土地や建物の売買のほか公園への転用等の仲介役まで担うようにする。所有者が分からない空き家が多い実情を踏まえ、市町村は個人や世帯の情報をつかみやすいとみて、行政主導で解消につなげる。買い手への税優遇も検討する。
空き家は直近で約820万戸あり、 日本の住居の14%に上る。 賃貸用が429万戸と最多だが、最大の問題は所有者不明や破損等で活用が難しい空き家が272万戸に上ることだ。