2024年度も地震、台風、豪雨等の災害により住宅家財等(生活の必要となる資産であることから、保養などの目的で保有する別荘などの不動産や、1個または1組が30万円を超える貴金属、絵画、骨董は対象になりません)に大きな損害が生じた方が多いかと思います。その様な損害に対して、確定申告を行うことで一定の雑損控除により税金(所得税・住民税)の還付や軽減される場合があります。
1.雑損控除とは
住宅家財等に災害又は盗難若しくは横領により損失を生じた場合、 又は災害関連支出金額がある場合に所得控除となる一定の雑損控除が認められます。
2.雑損控除金額
次の①と②のいずれか多い金額。
① 損失の金額(注1)―(年間所得金額 X 10%)= ①の金額
② 災害関連支出金額(注3)―補てんされた保険金等― 50,000円 = ②の金額
注1: 損失の金額とは、
(被災直前の時価―被災直後の時価)+災害関連支出金額―補てんされた保険金等 = 損失の金額
雑損控除の対象となる資産損失額の算定方法
従来、 雑損失の対象となる資産損失額は、 その資産の時価(損失が生じた時の直前におけるその資産の価額)を基礎として計算する方法でしたが、 その資産の取得価額に基づく価額(その資産の取得価額から減価償却費累計額相当額を控除した金額の簿価)を基礎に計算する方法も認められることになります。 しかしながら、実際の取得価額情報を確認する資料も無い場合が少なくなく、その場合には、以下の合理的な計算方法による対応も認められています。
(1) 住宅の損害金額
国税庁が地域別、構造別に一律に定めた1㎡の工事費用 X 総床面積 = 取得価額
(取得価額―減価償却累計額)X 被害割合(注2) = 住宅の損害金額
「減価償却費累計額相当額」とは、 非業務用の場合には、 その資産の耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率により、 その資産の取得から譲渡までの期間の年数を乗じて計算された金額となります。
(2) 家財の損害金額
世帯主の年齢別、家族構成別に定めた家財評価額 X 被害割合(注2) = 家財の損害金額
別途、車両も雑損控除の対象となります。
注2:損害割合とは、
100% = 全壊、流出、埋没、倒壊
50% = 半壊
5% = 一部破損
注3:災害関連支出金額とは、
災害で被害を受けた住宅や家財等の取壊し・撤去・修繕のために支出した金額等。
3.損失額の繰越
損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合は、翌年以後3年間を限度に繰り越すことが可能です。
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賃上促進税制(2024年4月1日以降の開始事業年度より)の改正
令和6年度税制改正で物価高に負けない構造的・持続的な賃上げの動きをより多くの国民に拡げ、効果を深めるため、賃上促進税制を強化することになりました。近年では、この種の改正は頻繁に行われていますので、適用要件には注意が必要です。なお、今回の改正の適用期間は、令和6年4月1日~令和9年3月31日の開始事業年度となっていますので、早くとも2025年3月期末の事業年度の企業からとなります。
1. 賃上促進税制(大企業・中堅企業向け、中小企業も適用可)
① 大企業(資本金1憶円超等)向け控除率の改正
適用要件 | 改正前(令和6年3月31日以前の開始事業年度まで適用) | 改正後(令和6年4月1日以降の開始事業年度から適用) | ||
---|---|---|---|---|
増加割合 | 税額控除率 | 増加割合 | 税額控除率 | |
【基本部分】 継続雇用者給与等支給額の増加割合 | 3%以上 | 15% | 3%以上 | 10% |
4%以上 | 25% | 4%以上 | 15% | |
5%以上 | 20% | |||
7%以上 | 25% | |||
【上乗せ①】 教育訓練費の増加割合 | 20%以上 | +5% | 10%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加 | +5% |
【上乗せ②】 (注1) 女性子育て支援 | ― | ― | ― | +5% |
最大控除率 | 30% | 35% |
注1: 「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の厚生労働大臣認定認定)」又は「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の厚生労働大臣認定認定)」を受けている場合
② 大企業のうちの中堅企業向け控除率の改正(従業員数が2000人以下の企業)
新たな位置付けとなる中堅企業は、「中小企業以外の企業」で「従業員数が2000人以下の企業」かつ「グループ全体で1万人を超える企業グループに属さない企業」である中堅企業向けにおける人材促進税制について、次の通りとなります。
適用要件 | 改正前 | 改正後 | ||
---|---|---|---|---|
増加割合 | 税額控除率 | 増加割合 | 税額控除率 | |
【基本部分】 継続雇用者給与等支給額の増加割合 | 3%以上 | 15% | 3%以上 | 10% |
4%以上 | 25% | 4%以上 | 25% | |
【上乗せ①】 教育訓練費の増加割合 | 20%以上 | +5% | 10%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加 | +5% |
【上乗せ②】 (注1) 女性子育て支援 | ― | ― | ― | +5% |
最大控除率 | ― | 30% | ― | 35% |
注1:女性子育て支援上乗せ措置に「3段階目のえるぼし認定を受けている企業」を追加
③ マルチステークホルダー方針を公表しなければならない企業の範囲に従業員数2,000人超の企業を追加
改正前 | 改正後 |
---|---|
資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業のみ | ① 資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業、又は ② 従業員数2,000人を超える企業 |
2.賃上促進税制(中小企業)
中小企業(資本金1億円以下等)の人材促進税制について、次の通り見直しをします。
① 控除率の改正
適用要件 | 改正前 | 改正後 | ||
---|---|---|---|---|
増加割合 | 税額控除率 | 増加割合 | 税額控除率 | |
【基本部分】 雇用者給与等支給額の増加割合 | 1.5%以上 | 15% | 1.5%以上 | 1.5%以上 |
2.5%以上 | 30% | 2.5%以上 | 30% | |
【上乗せ①】 教育訓練費の増加割合 | 10%以上 | +10% | 5%以上、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加 | +10% |
【上乗せ②】 (注1) 女性子育て支援 | ― | ― | ― | +5% |
最大控除率 | ― | 40% | ― | 45% |
注1: 以下のいずれかの認定を受けてる場合
・「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の厚生労働大臣認定)」
・「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の厚生労働大臣認定)」
・2段階目以上の「プラチナくるみん認定」又はプラチナ「えるぼし認定」
② 法人税額から控除がしきれない控除額があるときは、5年間の繰越税額控除制度の追加
中小企業においては、 赤字である場合や控除上限(法人税額の20%)に抵触しても、最大限の控除が取れるように申告することで新たに5年間の繰越税額控除が可能となりました。
なお、この繰越税額控除制度は、持続的な賃上げを実現する観点から、繰越控除事業年度において雇用者給与等支給額(当期)が比較雇用者給与等支給額(前期)を超える場合に限り適用できるものとなっています。具体的な確定申告書への主な添付書類は以下の通りです。
各事業年度 | 確定申告書への主な添付書類 |
---|---|
中小企業向け賃上げ促進税制の適用要件を満たす事業年度(最大限の控除が取れ無い) | 「別表六(26)給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書(現行)」 「繰越税額控除限度超過額の明細書」 |
赤字事業年度(法人税額が無い) | 「繰越税額控除限度超過額の明細書」を添付して申告を継続 |
黒字化して繰越控除をする事業年度(法人税額の発生) | 「控除の対象となる繰越税額控除限度超過額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類」 |
社会保険料の上限と月額給与額と賞与額との関係
社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の負担額は少額ではなく出来れば削減したいところですが、所定の計算方法で計算される為に諦めるしかないところです。当該計算方法を確認することで、何か気付くことがあります。例えば、40歳以上のサラリーマンで東京都内の会社に勤め社会保険は協会けんぽに加入されている場合における社会保険料の計算は以下の様になります(他の地域や他の保険組合などのケースでも大きく変わることはありません)。
社会保険料 | 月額給与 (定期同額給与) | 賞与 (事前確定届出給与) |
||
---|---|---|---|---|
料率 | 上限額 | 料率 | 上限額 | |
健康保険料(40歳~64歳は介護保険料1.60%を含む) | 9.98% (11.58%) | 1,355千円 (年換算額16,260千円) | 9.98% (11.58%) | 年間 5,730千円 |
厚生年金保険料 | 18.30% | 665千円 (年換算額7,980千円) | 18.30% | 月間 1,500千円 |
上記のとおり社会保険料の計算においては、給与額に上限がありますので高額な給与受給者の方、この場合には役員の方が、以下の様な対応がより適用可能性が高いのではないかと思います。
役員報酬の9.98%を健康保険料、18.30%を厚生年金保険料として納付しますが、その金額には上限が設定されています。この上限を超えた役員報酬には社会保険料がかかりません。そして、上限金額は定期同額給与よりも事前確定届出給与の方が低くなっていますので、定期同額給与を少額にして事前確定届出給与を多額にすることで、上限を超えた役員報酬の社会保険料が発生しなくなります。
以上の様に月額給与を少額にして賞与を多額にすることで社会保険料負担にメリットがありますが、その反面、以下の様なデメリットも考えておく必要があります。
①厚生年金受給額の減少
当然のことですが、厚生年金保険料が減少することで、将来受給できる年金が減少するというデメリットがあります。
②役員の退職金計算額の低下
役員の方の退職金計算における上限額は、通常、功績倍法により計算しますが、その時の最終報酬月額は定期同額給与で判定され、事前確定届出給与は含まないとされています。従いまして、定期同額給与を減らすことで役員退職金の上限額が低下してしまうことになります。
③税務上の損金性
現在のところ、極端に事前確定届出給与(賞与)分を多額にされていても税務署や年金事務所から問題視されているという話しを聞いておりませんが、職務内容から事前確定届出給与(賞与)が過大であると費用性が否認されるリスクがゼロでは無いところです。
交際費の損金不算入の1人あたり飲食費の金額基準が1万円以下に引上げ
令和6年度の税制改正により、令和6年4月1日以降の支出飲食費(社内接待費を除く)から交際費の損金不算入の1人あたり金額基準が、5千円以下から1万円以下に引上げられていますので、取扱いに留意が必要です。
ご存知の様に、交際費の損金不算入には、① 飲食費(社内接待費を除く)の50%を損⾦算⼊できる特例措置 〔中⼩企業・⼤企業(資本⾦の額等が100億円以下)〕と② 交際費等を800万円までは全額損⾦算⼊できる特例措置 〔中小企業のみ〕があります(令和9年3月31日までの開始事業年度まで適用)。以下に、資本金別の適用内容を記載します。
資本金の金額 | ||||
---|---|---|---|---|
区分 | 1億円以下の中小企業 | 1置く円超~100億円以下の大企業 | 100置く円超の大企業 | |
飲食費:1万以下 | 損金算入 | 損金算入 | 損金算入 | |
交際費 | 飲食費:1万円超/人 | 800万円まで損金算入(注1) | 50%損金算入 | 損金不算入 |
損金不算入 | ||||
飲食費以外 | 損金不算入 | 損金不算入 |
注1:資本金1億円以下の中小企業においては、接待飲食費の50%損金算入特例との選択適用も可能。
定額減税始まる(月次減税事務から調整給付まで)
令和6年6月1日から既に定額減税の適用が開始されていますが、制度上、迅速な減税付与ということから状況次第では重複して減税の恩恵を受ける方がおられます。減税事務処理では、明らかに重複減税になる場合でも取扱規程に従うことで良いことになります。定額減税の対象者は、給与所得者、年金所得者、事業所得者等となりますが、疑問になりそうな一部事項に関してコメントします。
1. 給与所得者
(1) 扶養内(合計所得金48万円以下)で働くパートやアルバイトをされている配偶者(妻)が基準日在職者(令和6年6月1日現在在職者)である場合には、その配偶者は定額減税の適用対象者であり、又、夫の同一生計配偶者として定額減税の適用対象者になる場合もあります(扶養親族も同様)。
(2) 定額減税適用は個人の選択により行わないことを選択できるものではありません。又、明らかに令和6年度の合計所得金額が1,805万円超になると見込まれている方でも月次減税処理の対象者となります。
(3) 令和6年6月2日以降に入社された方は月次減税で行うことなく、定額減税は年末調整時に行うことになります。
(4) 住民税では令和5年度の合計所得金額が1,805万円超の場合には、住民税からの定額減税1万円の適用対象外となりますので、特別徴収の住民税は、市区町村からの通知内容のとおり、従来同様に6月から12等分で給与天引きとなります(定額減税の適用対象者は7月からの11等分)。
2. 年金所得者
(1) 厚生労働大臣等から公的年金等の支払を受ける方(年金から住民税や所得税の天引きを受けている人)は定額減税の適用を受けます。その減税額は、令和6年分の「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」に記載されている内容から算定されます。
(2) 年金と給与等の所得がある場合、確定申告の対象者の場合には、その定額減税額は当申告書で精算されます。なお、確定申告の対象者でない場合には、その定額減税額の重複控除は認められ返金する必要はありません。
3. 事業所得者(個人事業者)
(1) 予定納税がある方は、本人分の3万円の定額減税額が第1期の納付期限9月30日分に反映されますが、満額減額出来ない金額は、第2期の納付期限12月2日分に控除となります。
(2) なお、予定納税の方で同一生計配偶者と扶養親族の減税額を反映したい場合には、減額申請を第1期は7月31日、第2期は11月15日までに行う必要があります。
(3) 確定申告の対象者は、事業所得、給与所得、年金所得等から定額減税が控除されていた場合には、この申告書内で重複控除が精算されます。なお、令和6年度の合計所得金額が1,805万円超になる方は、定額減税の適用外となります。
4. 定額減税の満額恩典を受けられない方への調整給付
定額減税の満額の控除を受けられない方へは、その不足分を市区町村から調整給付として支給されます。給付単位は1万円単位となります(1万円未満切上げ)。
その支給は、当初給付と不足額確定給付の2段階となります。
(1)当初給付
不足額とは、納税義務者本人及び同一生計配偶者と扶養親族に基づき算定された定額減税可能額が、令和6年分推計所得税額(令和5年度分所得税額を使用)及び令和6年度分個人住民税所得割額(実際は令和5年分所得で確定)を上回る金額となります。市区町村では、令和5年度分の確定所得税及び個人住民税に基づき、定額減税で控除出来ないと見込まれるおおむねの金額を算定し支給(当初給付)します。その当初給付金額は市区町村から令和6年夏以降に支給確認書が送付されますので、振込口座が登録されていない場合には口座情報を記載して返送する必要があります。
(2)不足額確定給付
当初給付は、令和5年度分所得税額により令和6年度分所得税額を推計して行うため、令和6年分の所得税及び定額減税の実績が確定した際に、当初給付が不足する場合に追加で給付(不足額確定給付)します。なお、確定計算の結果、不足でなく過大に給付されていたことが判明しても返金する必要はありません。この不足額確定給付は令和7年以降に実施されます。
以上になりますが、国税庁ホームページで定額減税Q&Aが公開されています。
定額減税(月次減税事務)について
令和6年6月以降支給の給与・賞与からの源泉所得税計算において定額減税の月次減税事務作業が始まることから、その準備が進められているかと思います。従業員ごとに減税対象者数の把握が一番のポイントとなることは言うまでもなく、確認すべき事項は多くはありませんが、各従業員から提出していただく扶養控除等申告書などの記載内容(特に所得金額)が適正であることが前提となります。見込みの年間所得金額が48万円以下であることが、同一生計配偶者と扶養親族に求められるところですが、毎年、パート収入で年間所得を気にしてきている配偶者等においては、今年度は特に気になるところかと思います。現行の定額減税スキームでは、同一生計配偶者と扶養親族に対する一人当たり30千円の定額減税額は、所得金額が48万円以下ならばその従業員の所得税額から減税され、48万円超ならばその従業員からは減税されずに同一生計配偶者と扶養親族の各所得税額から減税されることになります。なお、実減税額が定額減税額に満たない場合には、その差額(1万円単位で)が市区町村から給付金として支給されることになっています。又、年調時・確定申告時に従業員の所得金額が1805万円超の場合には、非居住者の方と同様に定額減税の適用対象外となります。
月次減税事務における定額減税の適用対象者は、整理しますと居住者かつ次の適用要件を満たす必要があります。
1. 従業員本人
(1) 6月1日現在在籍者(基準日対象者)であること
(2) 主たる勤務従事者(甲欄適用者)であること
(3) 扶養控除等申告書などの提出があること(下記、同一生計配偶者及び扶養親族の把握資料)
(4) 所得税の納税義務者(一定以上の所得があり所得税が課税される納税者)であること
上記の適用要件を満たさない場合には、以下を含めて月次減税時の適用対象外となります。
2. 同一生計配偶者
(1) 年間見込給与収入額が103万円以下であること
(2) 事業専従者では無いこと
(3) 年間見込所得金額が48万円以下であること
3. 扶養親族
(1) 年間見込給与収入額が103万円以下であること
(2) 事業専従者では無いこと
(3) 年間見込所得金額が48万円以下であること
以上ですが、減税対象者数の把握が完了すれば、定額減税対応の給与システムを利用されている事業者の事務処理は容易かと思います。
居住用賃貸建物の取得に係る消費税の仕入税額控除制限の確認
消費税において、課税資産等の支払・取得における消費税額に対しては、通常、仕入税額控除の適用があります。例外として、直近では2023年10月から導入されていますインボイス制度におけるインボイス登録事業者以外の者からの消費税額には、経過措置期間がありますが仕入税額控除の適用はありません。その他には、既に2020年10月以後の居住用賃貸建物の取得にも仕入税額控除の適用対象外となっています。以下で居住用賃貸建物の取得に対する消費税の取扱いを再度確認したいと思います。
1.居住用賃貸建物の適用対象とその取扱い
(1)住宅の貸付用に供しないことが明らかな建物以外の建物(即ち、居住用賃貸建物)で、かつ、高額特定資産(1千万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産)又は調整対象自己建設高額資産に該当する場合の課税仕入については、仕入税額控除制度の適用が認められなくなります。但し、居住用賃貸建物のうち、契約内容に関係なく住宅貸付用に供しないことが明らかな部分については、引続き仕入税額控除制度の対象です。
なお、仕入税額控除制度の適用が認められないこととされた居住用賃貸建物について、その仕入日が属する課税期間の初日から3年間内の間に住宅の貸付用以外に供した場合又は譲渡した場合には、それまでの居住用賃貸建物の貸付及び譲渡対価の額を基礎として計算した額を当該課税期間又は譲渡した課税期間の仕入控除税額に加算して調整することができます。
(2)住宅の貸付契約において貸付に係る用途が明らかにされていない場合であっても、当該貸付用に供する建物の状況等から人の居住用に供することが客観的に明らかな貸付については、消費税は非課税となります。判定時期は、課税仕入を行った日の課税期間の末日で行うことができます。
なお、居住用賃貸部分とそれ以外部分(例えば、建物の一部が店舗)に合理的に区分しているときには、居住用賃貸部分のみが仕入税額控除の適用がありません(店舗部分には適用となります)。
2.居住用賃貸建物の取得等に係る消費税額の調整
上述しました様に、居住用賃貸建物に係る課税仕入の消費税額については、仕入税額控除の対象になりません。但し、居住用賃貸建物においても、次の要件を満たす場合には、仕入税額控除ができる調整規定があります。
(1)居住用賃貸以外の部分がある場合
居住用賃貸部分とそれ以外部分(例えば、建物の一部が店舗)に合理的に区分しているときには、居住用賃貸部分のみが仕入税額控除の適用がありませんが、それ以外の部分に係る課税仕入の消費税額については、仕入税額控除の対象となります。
(2)3年間内に住宅の貸付用以外の課税賃貸用に供した場合
当初、居住用賃貸建物として仕入税額控除の不適用対象の賃貸建物を継続保有し、その仕入日が属する課税期間の初日から3年間内の間(調整期間)に住宅の貸付用以外の課税賃貸用に供した場合には、課税賃貸割合分の金額を第3年度の課税期間の仕入税額控除額に加算することができます。
当初購入時の課税仕入税額 X 課税賃貸割合 = 認容仕入税額控除額として加算
課税賃貸割合 =(A)の貸付対価の総金額のうち課税賃貸用に係る貸付対価の金
÷(A):3年間内の間(調整期間)内の居住用賃貸建物の貸付対価の総金額
(3)3年間内に居住用賃貸建物を全部又は一部を第三者に譲渡した場合
居住用賃貸建物を全部又は一部を3年間内の間(調整期間)に第三者に譲渡した場合には、課税譲渡等割合部分の金額を譲渡した課税期間の仕入税額控除額に加算することができます。
当初購入時の課税仕入税額 X 課税譲渡等割合 = 認容仕入税額控除額として加算
課税譲渡等割合 ={(B)のうち課税賃貸用に係る貸付対価の金額 +(C)の金額}
÷ {(B)3年間内の間(調整期間)内の居住用賃貸建物の貸付対価の合計額 +
(C)居住用賃貸建物の譲渡の対価金額}
① 住宅の貸付の非課税範囲につて:
住宅の貸付とは、人の居住用の家屋又は家屋のうち人の居住用とする部分の貸付をいいます(但し、貸付期間が1月未満及び旅館業の施設貸付は除かれます)。
非課税判定は、契約により居住用とすることが明らかな場合や、契約上用途が明らかでない場合でも、貸付等の状況から人の居住用とされていることが明らかな場合には非課税となります。
② 居住用賃貸建物の範囲について:
住宅の貸付用に供しないことが明らかな建物(注1)以外の建物(即ち、居住用賃貸建物)で、かつ、高額特定資産(1千万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産)又は調整対象自己建設高額資産に該当する場合ものをいいます。
注1:住宅の貸付用に供しないことが明らかな建物とは、建物の構造及び設備の状況その他の状況により住宅の貸付用にしないことが客観的に明らかなものであり、その例として、棚卸資産として取得した建物であって、所有している間、住宅の貸付用としないことが明らかなものとなりますので、転売目的で購入したマンション(アパートも含む)は、現に賃借人が存在し家賃収入が生じていることから、居住用賃貸建物に該当します。
社宅の使用料は非課税売上となりますが、その使用料を徴収する場合には居住用賃貸建物に該当しますが、徴収しない場合には賃貸していませんので該当しません。無償で貸付けることが客観的に明らかである場合には、その取得に係る課税仕入税額は、仕入税額控除の対象となります。
③ 調整対象自己建設高額資産について:
建設等のために要した原材料費及び経費に係る課税仕入等の税抜価額の累計額が1,000万円以上のものをいいます(事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受ける課税期間に行った課税仕入等を含む)。なお、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受ける課税期間に行った課税仕入等を含まないものが、自己建設高額特定資産といいます。
自己建設資産については、その建設等に要した課税仕入等の税抜価額の累計額が1,000万円以上となった日において、居住用賃貸建物に該当するかどうかを判定します。その該当の課税期間以後も、その建物に係る課税仕入等の税額については、仕入税額控除の対象になりません。他方、その該当の課税期間以前のその建物に係る課税仕入等の税額については、仕入税額控除の対象となります。
居住用賃貸建物に係る控除対象外消費税額等の処理(税抜経理処理の場合):
(イ)全額損金算入することができる場合
下記のいずれかに該当する場合には、全額損金算入となります。
①その事業年度の課税売上高割合が80%以上であること
②棚卸資産に係る控除対象外消費税額等であること
③特定課税仕入に係る控除対象外消費税額等であること
④一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること
(ロ)繰延消費税額等の償却
上記(イ)以外の場合には、)繰延消費税額等の償却を行うことになります。
①初年度
繰延消費税額等×その事業年度の月数÷60×1/2 = 損金算入限度額
②次年度以降
繰延消費税額等×その事業年度の月数÷60 = 損金算入限度
不動産登記の義務化
2021年(令和3年)4月に民法・不動産登記法等の改正があり、主にこの改正は所有者不明土地問題の解決に資する為のものでした。特に、これまでの相続に関連して発生してきた問題でもあり、その対策として改正された事項には、以下のものがありました。
施行日 | 内容 |
---|---|
2023年4月1日 | 遺産分割協議に期間設定(民法改正) ①施行日以降の相続から、相続開始から10年過ぎると原則、法定相続割合で分割 ②施行日以前の相続の場合には、5年間の猶予期間があり、2028年3月31日が期限(相続から10年後が当該期限後の場合には、相続から原則10年間が期限) |
2023年4月27日 | 相続土地国庫帰属法の施行 国が一定要件を満たす土地を引取る(要件として、①建物が無い、②境界争いが無い等で承認後に、10年分の管理負担金の納付) |
2024年4月1日 | 土地・建物の相続登記を義務化(不動産登記法改正) ①施行日以降の相続から、相続開始から3年以内に相続登記の義務化。正当な理由なく義務違反は10万円以下の過料 ②施行日以前の相続の場合には、2027年3月31日までに要名義変更 |
2024年4月1日 | 相続人申告登記制度の新設 相続登記期限に間に合わない場合、期限内に相続人の申出により、審査後に相続人の氏名、住所等を職権で登記に附記(過料の対象外・登録免許税の非課税) 所有不動産記録証明制度の新設 登記官による登記名義人の全記録(不動産一覧表)を証明(交付請求者は、相続人その他の一般承継人に限定) |
2026年4月1日 | 住所等の変更登記を義務化 ①登記名義人の住所等の変更があった場合、変更日から2年以内に変更登記の義務化。正当な理由なく義務違反は5万円以下の過料 ②施行日以前の相続の場合には、2028年3月31日までに要名義変更 |
所得税・個人住民税の定額減税(特別控除)
物価高を受けた家計支援策の一環の一時的な措置として、令和6年分の所得税と住民税について、定額による特別控除を実施することになります。既に、税務署等から定額減税の案内・パンフレットが出されていますが、その概要は以下の様になるものと理解しております。
(1)対象者の要件
居住者であり令和6年分の所得税・住民税(個人住民税は、令和5年分の合計所得金額)に係る合計所得金額が1,805万円以下(給与収入の場合には2,000万円以下)である者(従って、給与の年収2,000万円超は対象外)。
注:合計所得金額とは、事業所得、不動産所得、給与所得、雑所得等の「総合課税所得」と、土地・建物、有価証券等の譲渡所得等の「分離課税所得」を合わせた金額で、譲渡損失、純損失等の繰越控除適用前の金額を指します(なお、退職所得は計算上加算する必要があります)。
(2)定額減税の額
(所得税):控除される金額は、所得税額を限度
本人分 3万円 + (同一生計配偶者+扶養親族)の人数 × 3万円
(住民税):所得割額を限度
本人分 1万円 + (控除対象配偶者+扶養親族)の人数 × 1万円
注1: 人数のカウントは全て居住者に限定
注2: 配偶者・扶養親族の定義は下記の通り
① 同一生計配偶者:その年の12月31日現在の現況(納税者が死亡した場合には死亡時、又は出国の場合には出国時)で、生計を一にする配偶者で合計所得金額が48 万(給与収入の場合には103万円)円以下(所得金額に関係なく青色・白色の事業専従者の方は該当しない・含まれません)。なお、合計所得金額が48 万円超の配偶者は、配偶者自身の所得税において減額の対象者となります。
② 扶養親族:その年の12月31日現在の現況(納税者が死亡した場合には死亡時、又は出国の場合には出国時)で、生計を一にする配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族、等)で合計所得金額が48 万円以下(所得金額に関係なく青色・白色の事業専従者の方は該当しない・含まれません)。注:所得税法上の控除対象扶養親族だけでなく、16歳未満の扶養親族も含まれます(扶養控除等申告書内の住民税に関する事項の掲載で把握)。
③ 控除対象配偶者:同一生計配偶者に該当し、合計所得金額が納税者本人の合計1,000万円以下の場合
(3)定額減税の実施方法
定額減税は、給与所得者、公的年金受給者、個人事業者、その他者ごとに対応が、以下の様に異なります。
ケース1 給与所得者に係る定額減税額の控除
先ずは、定額減税の控除対象者の確認し把握することが必要であり重要なことになります。
定額減税の控除対象者は、令和6年6月1日現在、令和6年分扶養控除等申告書を提出している給与所得者(いわゆる甲欄適用者)となります(基準日対象者)。従って、その後(令和6年6月2日以降)に雇用され当該申告書を提出された人は対象外となります。
次の人は、基準日対象者に該当しません。
* 令和6年6月2日以後に雇用勤務することになった人(年末調整時に年調減税の適用)
* 令和6年5月31日以前に退職した人
* 令和6年6月1日以後の給与等支払時に乙欄・丙欄が適用される人(扶養控除等申告書の未提出者)
* 令和6年5月31日以前に出国した非居住者
上記の基準日対象者に該当しない人でも定額減税は、確定申告、準確定申告、更正の請求等の提出により適用を受けることができます。
先ずは、同一生計配偶者と扶養親族の人数を把握確認することが重要となります。確認方法は、「扶養控除等申告書」と「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の記載内容で行うことになります。
後述の月次減税と年調減税の対象となる同一生計配偶者・扶養親族の把握方法:
対象者 | 把握方法 | ||
---|---|---|---|
月次減税 | 同一生計配偶者 | 源泉控除対象配偶者に該当する人 | 扶養控除等申告書のA欄 |
源泉控除対象配偶者に該当しない人 | 「令和6年分源泉徴収に係る定額減税のための申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書」を源泉徴収に係る申告書として使用 | ||
扶養親族 | 扶養控除等申告書のB欄、及び住民税に関する事項の「16歳未満の扶養親族」欄 | ||
年調減税 | 同一生計配偶者 | 控除対象配偶者に該当する人 | 「令和6年分給与所得者の配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書(同一生計配偶者に係る申告)」 |
控除対象配偶者に該当しない人 | |||
扶養親族 | 扶養控除等申告書のB欄、及び住民税に関する事項の「16歳未満の扶養親族」欄 |
源泉控除対象配偶者とは、納税者本人の合計所得金額が900万円以下である同一生計配偶者。
控除対象配偶者とは、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下である同一生計配偶者。
月次減税及び年調減税の対象となる同一生計配偶者と扶養親族は、合計所得金額が48万円以下、かつ、居住者であることが要件となっています。
① 毎月の給与からの所得税額の控除(月次減税事務)
基準日在職者が既に提出した扶養控除等申告書、又は源泉徴収に係る定額減税のための申告書の内容に基づいて判定し、対象の配偶者と扶養親族の人数を把握します。
イ 令和6年6月1日以後最初に支払いを受ける令和6年分の6月以降の給与等(賞与含む)につき源泉徴収をされる所得税額から定額減税の額を控除します。
ロ 6月に控除しきれない控除の額がある場合には、それ以降(7月以降)に支払う給与等(同年の最終給与支払を除く)につき源泉徴収をされる所得税額から順次控除をしていきます。従いまして、月次減税事務においては、基準日在職者の各人別の月次減税額と各月の控除額等を管理(各人別控除実績簿の作成)することが必要となります。
ハ 毎月の源泉徴収をされる所得税額から定額減税する場合には、配偶者の情報は、扶養控除等申告書に記載されている「源泉控除対象配偶者」で合計所得金額の見積額が48万円以下である者で算出します。(「源泉控除対象配偶者」とは、同一生計配偶者に該当し、納税者本人の合計所得金額が900万円以下のケース)。
合計所得金額が見積で48万円超の配偶者については、配偶者自身の所得税において定額減税額の控除を受けることなります。
ニ 扶養控除等申告書に記載していない同一生計配偶者・16歳未満扶養親族に係る申告
この申告のケースとしては、控除対象者本人の合計所得金額が900万円を超えると見込まれるため、扶養控除等申告書に源泉控除対象配偶者として記載していない場合(非源泉控除対象同一生計配偶者)を想定しています。記載していない場合には、最初の月次減税事務を行うときまでに、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の提出を求め計算の人数に含めます。
上記ハとニのまとめ:繰返しとなりますが、月次減税事務の対象となる同一生計配偶者を把握する為に確認する申告書
同一生計配偶者の区分 | 確認する申告書 |
---|---|
ハ 基準日在職者の合計所得金額900万円以下として源泉控除対象配偶者に該当し、扶養控除等申告書に記載がある場合 | 扶養控除等申告書(A欄「源泉控除対象配偶者」)で所得の見積額が48万円以下で、かつ、居住者であることを確認する |
ニ 基準日在職者の合計所得金額900万円超として源泉控除対象配偶者に該当しない為、扶養控除等申告書に記載が無い場合 | 「令和6年分源泉徴収に係る定額減税のための申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書」(源泉徴収に係る申告書として使用)の提出を月次減税事務開始前までに受けて確認する |
ホ 令和6年6月1日までに提出した扶養控除申告書に記載した扶養親族等に異動が生じたことにより定額減税の額が変わるときがあっても、月次減税額を再計算することは無く年末調整又は確定申告で調整することになります。
へ 給与明細には、定額減税の額等を記載します。なお、記載するスペースが無い場合には、別の用紙に記載して交付することも問題はありません。
例1:定額減税額(所得税)XXX円
例2:定額減税XXX円
ト 各人別控除実績簿と源泉徴収簿への記入
月次での控除前税額と月次減税額を必要に応じて各人別控除実績簿の作成、又は源泉徴収簿に記載することになります。
チ 納付書の記載と納付
各人毎の控除前税額から月次減税額の控除後の金額を集計し記載・納付します。
*なお、月次減額事務では納税者本人の合計所得金額を勘案しませんので、例え、年収2,000万円を超え年末調整を受けない事や合計所得金額1,805万円を超える事が見込まれている基準日在職者に対しても定額減税を行います(合計所得金額に関係なく、甲欄適用者の全員が月次減税の対象者)。
*この定額減税の適用は給与所得者が選択できるものではなく、基準日対象者の全員が定額減税の適用を受けなければなりません。
*2カ所から給与支払を受けている場合に、従たる給与(乙欄適用者)から定額減税の適用はありません。
*その年の12月31日現在の現況(納税者が死亡した場合には死亡時、又は出国の場合には出国時)で判定しますので、5月末以前に死亡した扶養親族の場合にも月次減税額の計算に含めることになります。
*他の会社で基準日在職者の人が月次減税を受けていて、再就職して来た場合には、月次減額は行わずに年末調整時に年調減税を行います。
各人別控除実績簿のイメージ:
基準日在職者(受給者の氏名) | 月次減税額の計算 | 月次減税――――――> | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
同一生計配偶者と扶養親族の人数① 月次減税額{(受給者本人+①人数)X 30,000円}② 令和6年6月25日給与支給 令和6年7月10日賞与支給 | 同一生計配偶者と扶養親族の人数① 月次減税額{(受給者本人+①人数)X 30,000円}② 令和6年6月25日給与支給 令和6年7月10日賞与支給 | 令和6年6月25日給与支給 | 令和6年7月10日賞与支給 | |||||
控除前税額③ | ②の内③から控除した金額④ | 控除しきれない金額 | 控除前税額⑥ | ⑤の内⑥から控除した金額⑦ | 控除しきれない金額(⑤―⑦)⑧ | |||
山田太郎 | 3 | 120,000 | 11,750給与 | 11,750 | 108,250 | 93,000賞与 | 93,000 | 15,250 |
② 年末調整での所得税額の控除(年調減税事務)
年調減税額の控除対象者は、原則として、年末調整の対象者となりますが、給与所得者以外の所得を含めた合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる人(判定は、基礎控除申告書に記載された合計所得金額)は、年調減税額(定額減税)を控除しないで年末調整を行うことになります。
年調減税事務 | 年末調整で年調減税を受けられない非対象者 |
---|---|
*令和6年6月1日以後の年末調整時に扶養控除等申告書を提出している人 *年の途中で年末調整の対象となる人も含みます(6月1日以後の中途での退職者、非居住者、等) | *年末調整の対象外の人(給与収入額が2,000万円超の人、年末調整時に扶養控除等申告書を提出していない人、等)。なお、2,000万円超の人は年末調整の対象外の為に、確定申告で年間の所得税額とこれまでの月次減税事務での定額減税額との精算を行うことになります。 乙欄・丙欄適用者は給与支払者のもとで定額減税の適用を受けられませんので、確定申告で受けることができます。 *令和6年5月31日以前の中途で年末調整の対象者 *合計所得金額が1,805万円超の人(給与所得以外の所得がある場合、年末調整で年調減税の適用が受けられませんので、年末調整時に月次減税事務での減税額の精算を行うことになります) |
同一生計配偶者と扶養親族の人数の把握は、年末調整時の基礎控除申告書や配偶者控除等申告書(又は年末調整に係る定額減税のための申告書)から行うことになります。
人数に含まれる同一生計配偶者は、次のいずれかに該当する配偶者となります。
* 配偶者控除等申告書に記載された控除対象配偶者
* 合計所得合計が48万円以下の配偶者のうち、年調減税額の計算に含める配偶者として「年末調整に係る定額減税にための申告書」に記載された配偶者
なお、年調減税額の控除は、住宅ローン特別控除後の所得税額(年調所得税額)を限度に行います。又、年調所得税額から年調減税額の控除後の金額に102.1%を乗じて復興特別所得税を含めた年調年税額を計算します。
イ 令和6年分の年末調整の際には、年調所得税額(年税額)から定額減税の額を控除します。年末調整で再度計算をして差額があれば精算されます。
以下の様に計算されることになります。
区分 | 税額 | 税額(年調所得税額から控除できないケース) |
---|---|---|
給与・賞与計① | 204,810 | 204,810 |
算出所得税額(所得控除後の税額)② | 203,600 | 203,600 |
住宅ローン特別控除額③ | 40,000 | 130,000 |
年調所得税額②-③=④ | 163,600 | 73,600 |
年調減税額(定額減税額)⑤ | 120,000 | 120,000 |
年調減税額控除後の年調所得税額④-⑤=⑥ | 43,600 | 0 |
控除外額(定額減税額のうち控除しきれなかった額)⑤-④ | 0 | 46,400 |
年調年税額⑥X102.1%=⑦ | 44,500 | 0 |
差引超過額①-⑦=⑧ | 160,310 | 204,810 |
差引還付する税額⑧ | 160,310 | 204,810 |
ロ 源泉徴収票の摘要欄に控除した額等を記載します。
* 年末調整を行った一般的なケース
源泉徴収時所得減税額控除済額 120,000円、控除外額0円
源泉徴収時所得減税額控除済額 73,600円、控除外額46,400円
* 非控除対象配偶者分(合計所得金額が1千万円超)の定額減税の適用を受けたケース
源泉徴収時所得減税額控除済額 120,000円、控除外額0円
非控除対象配偶者減税有
* 非控除対象配偶者が障害者に該当するケース
源泉徴収時所得減税額控除済額 120,000円、控除外額0円
減税有 氏名XXXX(同配)
なお、年末調整を行っていない源泉徴収票(令和6年分の給与収入2千万円超、退職し再就職していない、等で年末調整の対象外)の摘要欄には、定額減税等を記載する必要はありません。なお、源泉徴収票の源泉徴収税額欄には、控除前税額から月次減税額の控除後の税額を記入することになります。
給与収入2千万円超の人は、確定申告で月次減税額を調整することになります。
なお、令和6年分の年末調整の結果、給与所得者の年調所得税額から控除しきれなかった年調減税額(定額減税額)については、源泉徴収票(給与支払報告書)に年調減税額の控除外額として記載しますが、令和7年1月以降の給与等支給の源泉徴収税額から控除することは出来ません。
退職所得と定額減税について:
退職所得の源泉徴収の際には定額減税は行いませんが、その退職所得を含めた所得に対する所得税について、確定申告により定額減税額の控除を受けることができます。従って、給与等に対する源泉徴収において控除しきれなかった定額減税額がある場合には、確定申告で退職所得を含めた所得に対する所得税から定額減税額を控除することができます。
③ 個人住民税の控除(給与からの特別徴収)
令和6年度分の個人住民税にあっては、納税義務者、控除対象配偶者及 び扶養親族1人につき1万円を乗じた金額を所得割額から控除する。
イ 特別徴収義務者(会社等)は、令和6年6月に支払う給与からの通常行う特別徴収は行いません。
ロ 令和6年分の個人住民税の額から定額減税の額を控除した金額を11分割し(端数調整あり)、令和6年7月~令和7年5月のそれぞれの給与から毎月徴収します。
ハ 上記の計算がされた住民税額(定額減税の額を含む)が各自治体から通知されてきます。
なお、居住者であって控除対象配偶者を除く同一生計配偶者である場合(納税義務者本人の令和5年の合計所得金額が1,000万円を超え、かつ、配偶者の合計所得金額が48万円以下の者)については、令和7年度分の住民税額から1万円を控除します。
ニ 給与支払報告書の摘要の欄に控除した額等を記載します。
※所得税の控除イメージ
※住民税の控除イメージ
出典:総務省「令和6年度地方税制改正(案)について」
ケース2 公的年金等の受給者に係る特別控除の額の控除
イ 令和6年6月以降に支払いを受ける厚生労働大臣等から支払われる公的年金等(確定給付企業年金法に基づく年金等は除く)につき源泉徴収をされる所得税額から定額減税の額を順次控除していきます。
ロ 公的年金等の受給者で、扶養親族に異動が生じたことにより定額減税の額が変わるときは、令和6年分の確定申告により調整します。
ハ 公的年金等のから特別徴収されるべき個人住民税から控除される定額減税の額は所得税と同様な対応となります。
ニ 源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載します。
*なお、主たる給与所得がある場合、給与等と公的年金等とのそれぞれの源泉徴収税額から定額減税を重複して受けることになりますが、この重複した控除については、確定申告で精算することになります。
ケース3 事業所得者等に係る定額減税の額の控除
イ 第1期分予定納税額(7月)から本人分に係る定額減税の額を控除します。
ロ 第1期分予定納税額から控除しきれない部分の金額は、第2期分予定納税額(11月)から控除します。
ハ 予定納税額の減額の承認申請をする場合には、同一生計配偶者・扶養者に係る定額減税の額についても控除を受けることができます。
ニ 令和6年分の期限の延期(令和6年分のみ)
① 第1期分予定納税額の納付期限を7月31日から9月30日に延期
② 予定納税額の減額の承認の申請の期限を7月15日から7月31日に延期
ホ 最終的には確定申告で所得税額から特別控除の額を控除して精算します。控除対象は住宅ローン控除後の所得税額からの控除となります。
ケース4 住民税の普通徴収の場合
イ 第1期分の納付額から定額減税の額を控除し、控除しきれない場合には第2期分以降の納付額から順次控除します。
以上から、給与所得者に係る所得税における定額減税の処理順番は下記の通りです。
① まずは6月以降の給与・賞与から順次控除(月次減税事務)
② その後に給与・賞与の場合は年末調整で計算をして差額があれば調整(年調減税事務)
③ 最後に確定申告におよぶ場合には、その計算をして差額があれば再度調整(確定申告)
出典:「令和5年10月26日 政府与党政策懇談会資料」(首相官邸ホームページ)
ケース5 定額減税しきれないと見込まれる方への給付金(調整給付)の場合
納税額が定額減税額以下で減税の恩恵を十分に受けられない世帯には、給付で差額を1万円単位で賄うことが公表されています。
具体的には、納税者本人と配偶者及び扶養親族の人数から算定される減税額(定額減税可能額)が、定額減税を行う前の所得税額・個人住民税所得割額を上回っており、定額減税しきれないと見込まれる場合は、個人住民税を課税する市区町村が定額減税しきれない差額を給付します。
① 年収270万円~310万円程度
差額分が給付されることになります。
② 年収250万円~270万円程度(住民税は納税しているが所得税は非課税)
1世帯あたり10万円が給付されます。給付は2024年2月~3月から開始。
③ 年収250程度以下(住民税と所得税ともに非課税)
1世帯あたり7万円が給付されます(別途、物価高騰対策として3万円給付が有りますので、合わせて10万円の給付)。給付は2023年内から順次開始。
2023年度(令和5年度) 個人確定申告
個人並びに個人事業者の方の令和5年度確定申告の時期がきました。 以下に、 令和5年度分の確定申告の提出期限及び確定申告の対象となる人(任意ではなく申告しなければならない人)、 等に関しまして概要を纏めてみました。 なお、 確定申告の対象者は前年度と変更はありませんが、 税金の申告は、 本人自ら課税金額や税額を計算し、 その税額を申告納付する制度「申告納税制度」を採用していますので、 期限後申告・納付となりますと延滞税等がかかります。
下記は、原則の確定申告の提出・納付期限となります。
令和5年度確定申告の提出・納付期限
所得の種類 | 令和元年度申告期間・納付期限 | 口座振替による納税日(振替日) |
---|---|---|
所得税 | 令和6年2月16日(金)から3月15日(金) なお、還付申告は令和6年1月から可能 | 4月23日(火) (新規の利用者の方は「預貯金口座振替依頼書」を申告期限までに要提出) |
消費税 | 令和6年1月 から4月1日(月) | 4月30(火) |
贈与税 | 令和6年2月 から3月15日(金) | 非該当 |
(1) 申告書の提出方法には、 ①持参(所轄税務署等の所定の提出場所)、 ②郵送、 ③電子申告(e-Tax利用によりデータ送信、この利用には事前準備が必要となりますが、 所得税では一定の第三者作成の提出書類を省略可の恩典があります)、の方法があります。
(2) 納税方法には、 ①持参(所轄税務署)、 ②金融機関から納付書を付けて納付、 ③ダイレクト納付(e-Taxの利用で、 かつ、 事前にダイレクト納付利用届出書の所轄税務署に要提出)、 ④インターネットバンキング・クレジットカードによる電子納税、⑤口座振替(上記を参照) の方法があります。
(3) 平成25年度から25年間には、 復興特別所得税として各年分の所得税額に2.1%の税率を掛けて計算した税額が発生することに留意してください。
(4) 平成28年分以降の確定申告にあたり、 マイナンバー(個人番号)の記載が必要となります。 申告書を書面提出する際には、 申告者のご本人の本人確認書類(番号確認書類及び身元確認書類)の提示又は写しの添付が必要です。 具体的な本人確認書類とは、
① マイナンバーカード(個人番号カード)
② 通知カード又は個人番号付の住民票の場合には、 身元確認書類として顔写真付きの運転免許証、 等の点、 又は顔写真付きでない場合には、 2点の確認書類(保険証、 年金手帳、 等)
A. 所得税
1. 令和5年度確定申告の主な改正・留意事項
令和2年度には基礎控除等に改正事項がありましたが、令和5年度には特筆すべき事項はありません。なお、申告書様式において、令和3年以降にいくつかの改訂があります。
(1)申告書Aは廃止され、申告書Bに一本化されます。
(2)納税者の押印欄の廃止
(3)国外居住親族の区分欄の創設:令和5年度から
(4)事業収入の区分欄の創設
帳簿記帳方法に関しまして、5区分から該当する数字(1から5)を記入:会計ソフト等での記帳の場合は数字2や簡易記帳の場合は4
(4)不動産収入の区分欄の創設
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例適用がある場合は、区分1欄に「1」を、区分2欄には上記(3)と同様な5区分から該当数字を記入
(5)雑収入「その他」欄の区分欄の新設
個人年金に係る収入がある場合は「1」、暗号資産取引に係る収入がある場合は「2」、双方の収入がある場合は「3」を区分欄に記載
(6)第1表~第5表の記入欄
① 第1表~第2表:記入欄の新設
① 第3表~第4表:記入欄の見直し
② 第5表:廃止(修正申告は第1表及び第2表で提出)
(7)青色申告決算書(一般用)の様式変更:令和5年度から
相手先の名称、所在地、登録番号(又は法人番号)、売上金額(収入)、仕入金額の各明細欄の創設
2. 令和5年度確定申告が必要となる対象者の方
1. 給与所得者(サラリーマンの方)
① 給与の年間収入金額が2,000万円超となる方(年末調整対象外の方)
② 給与(年末調整済)を1箇所から受けていて、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円超となる方 (給与収入額が2,000万円以下で、 給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合には申告の必要はありません)
③ 給与(源泉徴収済)を2箇所以上から受けていて、 年末調整されなかった給与の収入金額と、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円超となる方。
但し、 給与所得の収入金額から、 一定の所得控除の金額(雑損控除、 医療費控除、 寄付金控除及び基礎控除の項目を除く)の差引金額が150万円以下で、 かつ、 給与所得及び退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下となる方は、 申告不要となります。
2. 上記の給与所得者以外の方、 又は個人事業者で納付税額が発生する方
事業所得や不動産所得等がある方で、 各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
3. 源泉徴収の適用を受けない給与等の支払を受ける方
① 家事使用人等の方で給与から源泉所得税を徴収されていない方: 常時2人以下の家事使用人だけを雇用している使用人等には源泉徴収の義務が無いことから、 その使用人等から給与を受給されていた方
② 在日外国公館から給与等の支払を受けた方
③ 国外から給与、 退職金等の支払を受けた方
4. 同族会社の役員やその親族等で、 その会社から給与以外に利子、 家賃、 使用料等の支払を受けている方は、 その利子、 家賃、 使用料等は全て申告の対象
5. 災害減免法の適用を受け給与に対して源泉徴収の猶予や源泉徴収税額の還付を受けていた方
6. 上記以外の方で納付税額がある方
各種の所得金額の合計から各種の所得控除後で計算した税額が、 配当控除よりも多くなる方
注1: 公的年金等に係る所得の確定申告不要制度
その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、 かつ、 その雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には、 所得税の確定申告書の提出は必要ありません(申告されれば還付となる場合もありますので、 その場合には申告される方が有利となる場合もあります)。 なお、国外源泉で国内源泉税の対象とならない国外年金収入等がある場合には、この確定申告不要制度の適用対象外となります。
この所得税の申告不要となる場合であっても、 住民税の申告が必要となることもありますので注意が必要です。
公的年金等の受給者で所得税の申告不要な者でも、住民税の申告が以下のような場合には必要となります(主に住民税の減額になるケース有り)。
① 年金や給与の源泉徴収票に記載されていない所得控除(扶養控除、障害者控除、ひとり親控除、寡婦控除、医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料, 寄附金等)のある方は、住民税の申告で住民税が減少する可能性があります。
② 上記①の控除を追加したい方で、公的年金等収入が105万円(65歳以上の方は155万円)を超えている場合(この場合とは、公的年金等以外の合計所得金額が1千万円以下のケース)、或いは、超えていない場合でも公的年金等以外の所得金額がある場合。
③ 日本年金機構等に扶養親族等申告書を提出しているが、その内容に変更がある場合等。
注2: 確定申告不要(任意)となる方で申告すれば税金が戻ってくる方(還付申告者)
確定申告の総件数は2,000万件以上になるようですが、 この内の約半数近くが還付申告のものとなっているようです。 収め過ぎた税金を戻すためには確定申告書の提出が必要となります。 以下の様な場合には、 還付されるかもしれませんので調べてみてはどうでしょうか。
1. サラリーマンで年末調整を受けた方で次の年末調整では取扱わない項目があった方
① 一定金額以上の医療費(医療費控除: 限度額200万円)
生計を一にする家族の支払医療費が、 以下の金額以上になっている場合が対象:
所得が200万円以上: 支払医療費 – 保険給付金等 – 10万円 = 医療費控除額
所得が200万円未満: 支払医療費 – 保険給付金等 – 所得金額 × 5% = 医療費控除額
② 災害(地震、 台風等)や盗難により住宅や家財に被害を受けた場合(雑損控除)
災害の場合には、 災害減免法により所得税の軽減・減免を受けられることもあります。
③ 特定の寄付をされた方(寄付金控除や政党等寄付金特別控除)
④ 初めて住宅ローン控除を受ける方(住宅借入金等特別控除)
⑤ 年末調整時に提出ができなかった、 或いは洩れている控除項目がある方
生命保険料控除、 地震保険料控除、 配偶者特別控除、 各種の扶養者控除等
⑥ 中途退職され再就職しなかった方
退職までの給与収入に対する源泉徴収税額が年税額として過大となっているケースが殆どです。 又、 退職金に対して20%源泉になっている場合も可能性がありますし、退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になっている方。
2. 上場株式等に係る配当所得(申告分離課税選択)と上場株式等に係る譲渡損失との損益通算
3. 予定納税されたが確定申告不要となった方
4. 所得が少ない状況で配当や原稿料収入等からの源泉徴収税額が、 本来の納付すべき税額よりも多額となっている方
5. 外国税額控除の適用がある方
6. 申告の要件となっている項目がある方
① その年の翌年以降に純損失又は雑損失の繰越控除を受けるため、 ② その年分の純損失の金額について純損失の繰戻しによる還付を受けるため、 ③ 居住用財産の買換又は特定居住用財産の譲渡損失及び繰越控除を受けるため、 等には確定申告の提出が必要となります。
B. 贈与税
税制改正により、令和6年1月から生前贈与(暦年課税及び相続時精算課税)の適用内容に変更がありましたので、今後の適用プランを再検討されても良いかも知れません。
ご存知の様に、 暦年課税制度の場合には、下記に示す様に年間に受けた贈与額が110万円以下ならば非課税範囲のために贈与税の申告等は必要ありません。
1. 年間合計で110万円超の財産贈与(個人からの土地、 建物、 現金、 預貯金、 株式、 債権等の財産の贈与)を受けた方(暦年課税で下記の②の選択者を除く)
2. 相続時精算課税制度(60歳以上の父や母の直系卑属からの贈与者ごとに累積で特別控除額2,500万円)の選択者で財産贈与を受けた方(18歳以上の推定相続人の子、 並びに孫に限る)
3. 直近尊属から住宅取得等資金贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
特定受贈者(贈与年の1月1日現在18歳以上で合計所得金額2,000万円以下の者)が、 その直系尊属(親、祖父母等)から受ける居住用家屋の新築・取得・増改築等用に住宅取得等資金の贈与については、非課税措置の適用期限を令和8年12月31日まで延長し、 非課税限度額は以下のようになります。
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間 | 良質な住宅用家屋(省エネ等住宅) | 左記以外の住宅用家屋(その他の一般住宅) |
---|---|---|
令和2年4月~令和3年12月 | 1,500万円 | 1,000万円 |
令和4年1月~令和8年12月(契約の締結時期を問わない) | 1,000万円 | 500万円 |
4. 配偶者控除の特例(控除額2,000万円)を適用し、 配偶者から居住用不動産又はその取得資金の贈与を受けた方(婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与に限る)
5. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度、等
平成25年4月1日から令和8年3月31日までの期間に直系尊属が30歳未満の子や孫へ教育資金を拠出し、 金融機関(信託会社・信託銀行)、 銀行及び金融商品取引業者に信託等した場合、 受贈者(子・孫)1人当たり1,500万円(学校等以外への支払は500万円)までを非課税とする特例があります。 この制度適用のためには、 受贈者は教育資金非課税申告書を金融機関等の経由で税務署に提出する必要がありますが、 申込時に対応されていると思いますので特に問題となることはないでしょう。
C. 消費税
令和5年10月よりインボイス制度が始まり、これまで免税事業者でしたが、インボイス発行事業者登録された個人事業者の方は、10月から12月の3ヶ月間の課税売上高に対して2割特例等を適用して消費税の申告が必要となります。
通常、個人事業者で下記に該当する方は納税義務者(課税事業者)として申告する必要があります。
1. 基準期間となる前々年度(令和3年度)の課税売上高が1,000万円超の事業者の方
2. 特定期間となる前年(令和4年度)の1月1日から6ケ月間の課税売上高が1,000万円超で、 かつ、 同期間の給与等支払総額が1,000万円超の事業者の方
3. 免税事業者となる方が、 課税事業者となることを選択(消費税課税事業者選択届出書を事前に提出)している方(簡易課税選択者も含む)
納税義務者の判定上の留意事項:
(1) 基準期間の課税売上高は、 消費税込の金額となり、 事業用資産(住宅用として貸付けていた建物等)の譲渡の対価金額も含まれます。
(2) 被相続人(亡くなられた方)の事業を相続により承継した相続人には、 被相続人が提出していた各種の届出書の効力は及ばないので、 新たに提出する必要があります。
(3) 新規開業又は相続により事業を承継したときに、 消費税課税事業者選択届出書を提出した場合の適用開始時期は、 当該課税期間か翌課税期間かを選択できます。
(4) 消費税課税事業者選択届出書を提出されている場合には、 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない限り、 その効力が消滅することはありません。
以上が、所得税、贈与税、消費税に関する確定申告の対象者の概要です。