1. 法定調書とは
12月の最終給与支給までに、 従業員の年末調整が行なわれ一区切りついたと思っても、 翌1月末までに提出、申告等の対応が必要となるものがあります。 その1つに法定調書作成がありますが、 これは、所得税法、相続税法等の法律の規定により、給与、報酬、家賃等の支払者(提出義務者)が、それらの1年間の支払いに関して、支払先の氏名、住所、支払金額等を記載し所轄税務署に提出が義務付けられている書類(全部で60種類ほど)です。この主目的は、税務署が適正な課税の確保を図ることを目的に支払事実を把握し、受給者が正しく所得を申告していることの確認手段になるものです。 提出すべき法定調書は、 特定項目の一定金額以上のものですが、 源泉徴収の対象になるものとは限っておりませんので留意してください。
なお、 2016年度分より行政機関への提出にあたり、 マイナンバー(個人番号、等)が必要となっています。
2. 提出する一般的な6種類の法定調書と支払内容
法定調書と支払内容 | 支 払 内 容 |
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給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書(注2) | 俸給、給料、賞与等の支払 |
退職所得の源泉徴収票と特別徴収票(注2) | 退職手当(注1)、一時恩給等の支払 |
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 | ① 原稿料、印税、講演料、工業所有権の使用料等の支払 ② 弁護士、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士、建築士等への報酬、料金の支払 ③ 外交員、集金人、電力量計の検針人、モデル、プロ野球の選手、プロボクサー、騎手等への報酬、料金、契約金の支払、芸能人への出演料等の支払 ④ バー、キャバレー等のホステス、コンパニオン等への報酬、料金の支払 ⑤ 広告宣伝のための賞金、馬主への競馬の賞金の支払 |
不動産の使用料等の支払調書 | 地代、家賃、権利金、礼金、更新料、承諾料、名義書換料等の支払 |
不動産等の譲受の対価の支払調書 | 土地、建物等の譲受け(売買、交換、収用等)の代金の支払 |
不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書 | 土地、建物等の売買や貸付の仲介手数料の支払 |
注1:死亡退職による退職手当等の場合には、相続税法による「退職手当等受給者別支払調書」を提出することになります。
注2:地方税法で提出が義務付けられています「給与支払報告書」及び「特別徴収票」は、
名称が異なりだけで、それぞれ「給与所得の源泉徴収票」及び「退職所得の源泉徴収票」と記載内容は同じものです。
3. 提出範囲
支払調書は、一定金額以上のもの等(支払金額の提出範囲)に該当するときに提出が必要となります。主な提出範囲は次のとおりです。
(1) 給与所得の源泉徴収票
年末調整 | 受給者区分 | 提出範囲(年間) |
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年末調整をしたもの | 法人役員(相談役、顧問など含む) | 150万円超 |
弁護士、公認会計士、 税理士等 | 250万円超 | |
上記以外の人(従業員) | 500万円超 | |
年末調整をしなかったもの | 給与収入2,000万円超 | 全部 |
「扶養控除等申告書」を提出した者のうち退職した者等 | 250万円超(法人役員は50万円超) | |
「扶養控除等申告書」を提出しなかった者 | 50万円超 |
(2)報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20の規定に基づく報酬 料金等の支払
区 分 | 提出範囲 |
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* 外交員、集金人、検針人、プロボクサー、ホステス等の報酬、料金 * 広告宣伝のための賞金 * 社会保険診療報酬支払基金からの診療報酬 | 年間50万円超 |
馬主に支払う競馬の賞金 | 1回75万円超 |
プロ野球選手等の報酬及び契約金 弁護士、税理士等の報酬 作家、画家などの原稿料、画料 講演料、 その他の報酬、 料金等 | 年間5万円超 |
(3)その他の法定調書
法定調書 | 提出範囲 |
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退職所得の源泉徴収票 | 法人役員が受給者であるもの |
不動産の使用料等の支払調書 注:不動産、 不動産の上に存する権利、 総トン20トン以上の船舶、 航空機に対する対価を受領する法人と不動産業の個人の方が提出義務者となります。 | 年間15万円超 但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方は提出義務はありません。 又、法人に対し賃借料のみを支払っている場合にはその支払調書の提出は不要ですが、支払が権利金、更新料等は提出が必要となります。 不動産管理会社を通じて、オーナーが個人の場合には、個人に支払う使用料等として提出となります。 |
不動産等の譲受の対価の支払調書 | 年間100万円超 但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方は提出義務はありません。 |
不動産等の仲介料の支払調書 | 年間15万円超 但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方は提出義務はありません。 |
公的年金等の源泉徴収票 | 「扶養控除等申請書」を 提出した者:60万円超 提出しなかった者:30万円超 |
配当等の支払調書 | 10万円超(中間配当がある場合は5万円超) |
生命保険契約等の一時金の支払調書 | 100万円超 |
損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書 | 100万円超 |
株式等の譲渡対価の支払調書 | 同一人に対し100万円超 1回30万円超 |
国外送金等調書 | 1回100万円超 |
4.提出先と提出期限
法定調書の提出期限は、原則として、その年の翌年の1月31日までとなっており、所轄税務署に提出することになります。税務署に提出する場合には、法定調書の合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)と各法定調書(提出範囲のもの)を提出します。
支払金額に関係なく受給者(個人・法人)の全員にも、 翌年の1月31日まで帳票が送付され(法的には送付は強制されていませんが、通常は送付しています)、 個人では確定申告の作成資料等に使用、 又、 法人では受給金額・内容との照合等に使用することができます。
法定調書の提出方法に関して、基準年(前々年)の提出枚数が1,000枚以上(なお、令和3年1月1日以後の提出分から、100枚以上)であった法定調書の場合には、光ディスク等又はe-Taxによる提出が義務付けられています。
5.給与所得の源泉徴収票 (給与支払報告書)
サラリーマンの方にはお馴染みの給与所得の源泉徴収票は、 その年の給与所得に関する年末調整後(給与収入が2千万円超の方等は除く)の源泉徴収税額や税額計算情報が集約され記載されています帳票です。 税務署には、 一定金額以上の給与収入の「源泉徴収票」が提出され、 又、 同一内容ですが様式名が異なる給与支払報告書が個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます。
「給与支払報告書」(総括表を添える)提出先は、受給者(全員分)のその年の翌年の1月1日現在の住所地の市区町村となり、 提出期限は翌年の1月31日までとなっています(個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます)。
年度の途中で退職した者に対する給与支払報告書は、 支払額が30万円以下の場合には提出を省略することができます。 退職金の「特別徴収票」の提出先は、 受給者の退職日現在の住所地の市区町村となっており、 退職後1ケ月以内の提出となります。 市区町村では、 提出された資料から住民税の税額計算をおこない、 翌年6月から徴収を開始し1年間で納付が完了となります。