国税庁は「マンション節税」や「タワマン節税」の防止に向け、実勢価格を反映する新たな計算式を導入した相続税・贈与税の算定ルールの通達案を示しました。マンションの理論的評価額と実勢価格との乖離率をベースに一定の補正率に基づいて評価が行われ、高層階ほど税額が増えることになりそうです。
新たな通達案は、①築年数や階数などに基づいて評価額と実勢価格の乖離の割合(評価乖離率)を計算、②その乖離率が約1.67倍以上(評価水準0.6未満)の場合、
従来の評価額✕評価乖離率✕0.6=課税評価額
となり、一戸建ての平均乖離率(1.66倍)にそろえることになります。
A 現行のマンション一室の評価方法は次のとおり。
建物(区分所有建物)の評価額(固定資産税評価額X1.0)+ 敷地(敷地利用権)の評価額(敷地全体の面積X共有持分(敷地権割合)X平米単価(路線価方式又は倍率方式)=マンション一室の評価額
B 新たなマンション一室の評価方法の見直は次のとおり。
1.評価適用対象物件
区分所有に係る財産の各部分(建物部分及び敷地利用部分。但し、構造上、居住の用途に共することができるものに限ります(マンション一室)。
なお、マンション一室には含まなく評価対象外の物件は以下のとおり。
① 地階を除き総階数2階以下の物件に係る部分
② 区分所有されている居住用部分が3以下であって、かつ、その全てがその区分所有者又はその親族の居住用である物件(いわゆる二世帯住宅等に係る部分は含まない)
③ マンション一棟保有の区分所有者がいない物件
④ 販売用マンション(棚卸商品)
2.マンション一室の評価方法
現行 | 個別通達案(新評価) | |
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マンション一室の相続税評価額 | ①建物の評価額+敷地の評価額=相続税評価額 | |
①区分所有建物の評価額 | 建物の固定資産税評価額(注1)X 1.0 | 建物の固定資産税評価額(注1)X 1.0 X 「一定の補正率」 |
②敷地(土地:敷地利用権)の評価額 | 敷地全体の価額(注2)X共有持分(敷地権割合) | 敷地全体の価額(注2)X共有持分(敷地権割合)X 「一定の補正率」 |
注1:建物の固定資産税評価額(各戸の評価額)=一棟の建物全体の評価額X当該専有面積割合
注2:敷地全体の価額=路線価方式、又は倍率方式による評価額
3.一定の補正率と評価水準との関係
一定の補正率は、「評価水準」値(3区分)によりその適用する補正率が決まります。
評価水準は「1÷評価乖離率」で計算され、マンションの理論的な市場価格が現行の通達評価額と比べ、どのくらいの割合で乖離しているかを示します。
区分 | 評価水準(注3) | 適用する補正率(一定の補正率) |
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1 | 1超(=評価乖離率が1.0未満) | 評価乖離率(注4) |
2 | 0.6以上1以下(=評価乖離率が 約1.67未満) | 適用無し(現行の相続税評価額) |
3 | 0.6未満(=評価乖離率が 約1.67以上) | 評価乖離率(注4) X 0.6 |
注3:評価水準=1÷評価乖離率
注4:評価乖離率は、次のA~Dの要素を数値化したもの
A マンション建物の築年数
B マンション建物の総階数
C マンション建物の所在階
D マンション建物の敷地持分狭小度
4.評価乖離率の算出方法
評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220 =①X△0.033 + ②X0.239 + ③X0.018 + ④X△1.195 + 3.220 |
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A | 一棟の区分所有建物の築年数(注5) X △0.033 注5:築年数=建物の建築時から課税期間までの期間(1年未満は1年とする) |
B | 一棟の区分所有建物の総階数指数(注6) X 0.239=: (小数点以下第4位切捨て) 注6:総階数指数=地階を含まない総階数÷33(但し、1.0を超える場合は1とする) |
C | 一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階(注7)X 0.018 注7:専有部分が地階の場合には、所在階は零階としてCの値は零(0)とする。なお、区分所有建物の複数階にまたがる場合には、低い階数階とする |
C | 一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度(注8)X △1.195=: (小数点以下第4位切上げ) 注8:敷地持分狭小度=一室の区分所有権等に係る敷地利用権の面積÷専有部分の面積 |
注:評価乖離率を求める算式及び一定の補正率の数値0.6については、適時見直しがおこなわれることになっています。例えば、固定資産税の評価見直し時期に併せて、当該時期の直前における一戸建て及びマンション一室の取引事例の取引価格に基づいて見直されることが考えられます。
5.適用時期
令和6年1月1日以後の相続、遺贈又は贈与により取得した財産評価の適用