2022年度(令和4年度)税制改正大綱:所得税、贈与税・相続税、消費税

2021年(令和3年)12月10日に自民、公明党の両党は2022年度(令和4年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の概要(所得税、贈与税・相続税、消費税)となります。
改正法案は、2022年(令和4年)3月末には可決・成立となる予定です。

個人所得税の改正
1.住宅ローン控除の見直し
住宅ローン控除の適用期限が令和3年12月31日から令和7年12月31日までの4年延長となりますが、控除率が現行1%から0.7%に引き下げられます。又、適用対象者の所得要件が、令和4年1月1日以降居住の用に供したものから合計所得金額が現行3,000万円から2,000万円に引き下げられます。
住宅ローン控除額等の要件は以下の様になります。
(1)認定住宅等の場合
A 新築の場合

区分 居住年借入限度額 控除率控除期間
認定住宅(注1)令和4年・令和5年5,000万円0.7%13年
令和6年・令和7年4,500万円
ZEH水準省エネ住宅
(注2)
令和4年・令和5年4,500万円
令和6年・令和7年3,500万円
省エネ基準適合住宅令和4年・令和5年4,000万円
令和6年・令和7年3,000万円

注1:認定住宅とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう。
注2:ZEH水準省エネ住宅とは、ZEH(ゼッチ)とはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称です。省エネ性能を上げつつ、エネルギーを「創り出す」ことで消費エネルギー量の収支をプラスマイナスゼロにする住宅(省エネのための設備や太陽光発電システムなどを導入する必要有り)のことを指します。
B 中古と増築の場合
借入限度額は一律3,000万円で、控除率0.7%、控除期間は一律10年間となります。
(2) 認定住宅等以外(一般住宅)の場合
A 新築の場合

区分 居住年借入限度額控除率控除期間
一般住宅令和4年・令和5年
3,000万円0.7%13年
令和6年・令和7年2,000万円10年

B 中古と増築の場合
借入限度額は一律2,000万円で、控除率0.7%、控除期間は一律10年間となります。

項目 内容
所得要件

合計所得金額3,000万円から2,000万円に引き下げ
適用日令和4年1月1日以降居住の用に供したものから適用(令和7年12月31日まで)
床面積基準の緩和床面積50㎡以上を40㎡以上に引き下げられましたが、40㎡以上50㎡未満は、合計所得金額が1,000万円以下の年度のみ適用となります。
又、令和5年12月31日以前に建築確認を受けた新築も同様に緩和の適用対象になります。
既存住宅の要件変更令和4年1月1日以降居住の用に供したものから、新耐震基準に適合している場合には、中古住宅の築年数要件は廃止となります。
確定申告等手続の見直し令和5年1月1日以降居住の用に供したものから、金融機関に住宅ローン控除申請書を提出した場合には、確定申告時に新築工事の請負契約書の写し等、年末借入金残高証明の添付不要となります。事前に、金融機関に「住宅ローン控除申請書」を提出する必要があり、当該申請書は金融機関から所轄税務署長に提出する必要があります。
なお、年末調整の際に特別控除申告書への年末借入金残高証明の添付も不要となります。
この改正は、居住年が令和5年以後である者が、令和6年1月1日以後に行う確定申告及び年末調整について適用となります。

2.居住用財産の買換え等の譲渡損失の繰越控除等の適用期限延長
適用期限が、令和3年12月31日から令和5年12月31日までの2年延長となります。

3.特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限延長
適用期限が、令和3年12月31日から令和5年12月31日までの2年延長となります。

4.既存住宅の耐震改修に伴う特別控除の適用期限延長他
適用期限が、令和3年12月31日から令和5年12月31日までの2年延長となります。なお、耐震改修工事における標準的な工事費用額の控除対象限度額及び控除率は次の様になります。

工事完了年控除対象限度額控除率
令和4年・令和5年250万円10%

5.完全子会社等からの配当に係る源泉所得税の廃止
次の完全子会社等からの配当については、所得税の源泉徴収を行わないことになります。適用時期は、令和5年10月1日以降の支払配当から適用されます。
(1)完全子法人株式等(100%保有の子会社)
(2)配当基準日に置いて直接保有する株式等の保有割合が3分の1超である子会社

6.配当の総合課税とされる大口株主の範囲拡充
現在、上場株式等の配当等については、大口株主が受け取る配当については、非上場株式からの配当と同様の取扱いとして、20.42%の源泉徴収がされたうえで総合課税により確定申告が必要とされています。
この大口株主の範囲として、直接にその会社の発行済株式の3%以上が保有する方が対象となっていましたが、その者が支配関係を持つ同族会社がその会社の株式を持っている場合に、3%の判定基準に含めることになります。この改正適用は、令和5年10月1日以後の支払配当からとなります。

7.納税地の変更・異動に関する届出書
納税地が変更・異動した場合には、変更前の税務署長に届出書を提出する必要がありましたが、令和5年1月1日以後については届出書の提出が不要となります(個人消費税についても同様)。

8.上場株式等の配当所得割に係る課税方式の改正
上場株式等の配当金は、所得税では総合課税や申告分離課税を選択しても、個人住民税においては申告不要制度を選択することが可能でしたが、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式(総合課税方式)を所得税と住民税とを一致させることとなりました。同時に、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除額が所得税と住民税で一致になるような措置を行うことになります。
この改正適用は、令和6年度分以降の個人住民税からとなります。

9.財産債務調書制度等の見直し
現行では、所得2,000万円以下の者は、仮に高額の財産を保有していたとしても、調書の提出義務がありませんでしたが、今後は12月31日現在で10億円以上の財産保有者(居住者)も提出義務者となります。なお、提出期限は翌年の3月15日から6月30日になります。

 現行 改正
財産債務調書の提出義務者下記①及び②を満たす場合
①所得基準:所得2,000万円超
②財産基準:財産の価額の合計額が 3億円以上、又は国外転出特例対象財産の価額の合計額が1億円以上
同左、下記①及び②を満たす場合
①所得基準:所得2,000万円超
②財産基準:財産の価額の合計額が 3億円以上、又は国外転出特例対象財産の価額の合計額が1億円以上
又は、③財産基準:財産の価額の合計額が 10億円以上の場合
財産債務調書及び国外財産調書の提出期限翌年の 3 月15日翌年の 6 月30 日
財産債務調書等の家庭用動産の記載不要基準額取得価額100万円未満の家庭用財産(現金、書画骨 董、貴金属類を除く)は記載不要取得価額300万円未満の家庭用財産(現金、書画骨 董、貴金属類を除く)は記載不要

10.国民健康保険税の課税限度額の引上げ
(1)基礎課税額の課税限度額を現行63万円から65万円に引上げる。
(2)後期高齢者支援金等課税額の課税限度額を現行19万円から20万円に引上げる。

11.隠蔽仮装、無申告への簿外経費の課税強化
税務調査において収入金額が300万円超の事業者が虚偽申告又は無申告の場合、帳簿書類等で取引が明らかなもの以外の簿外経費は必要経費算入とは認められません。
この改正適用は、令和5年度の所得税よりからとなります。

以上

資産課税(贈与税・相続税)の改正
1.直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税制度の改定

2.土地(商業地等)に係る固定資産税・都市計画税の負担調整措置
令和4年度に限り、負担水準が60%未満である商業地等の令和 4年度の固定資産税・都市計画税の課税標準額は、令和 3年度の課税標準額に令和 4年度の固定資産税評価額の2.5%(改正前:5%)を加算した金額となります。

負担水準
(注1)
固定資産税・都市計画税の負担
60%以上令和4年度の固定資産税評価額の60%相当額
60%未満
20%以上
令和3年度の課税標準額プラス令和4年度の固定資産税評価額の2.5%(現行5%)
20%未満令和4年度の固定資産税評価額の20%相当額

注1:負担水準とは、前年度の課税標準額÷当年度の固定資産税評価額の数値

3.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予特例制度の延長
特例承継計画の提出期限が現行は2023年3月末までとなっていますが、1年延長して2024年3月末までとなります。

 現行 改正
特例承継計画の提出期限2023年(令和5年)3⽉31⽇2024年(令和6年)3⽉31⽇
特例制度の適⽤期限2027年(令和9年)12⽉31⽇

4.居住用家屋の所有権保存登記に対する登録免許税の軽減措置等の延長
2022年(令和4年)3月31日までとされていた住宅等に対する登録免許税の軽減措置について、2024年3月31日までの2年適用期限が延長されます。

5.相続税に係る死亡届の情報等の通知義務の見直し
(1)市町村長は、死亡届出を受理したときに死亡者が所有していた土地又は家屋の固定資産課税台帳上の登録事項等を、当該受理日の翌月末日までに所轄税務署長に通知義務があります。
(2)法務大臣は、死亡等の届出書情報を受けたときにその死亡者の戸籍等の副本情報を、当該情報受理日の翌月末日までに国税庁長官に通知義務があります。
この改正適用は、戸籍法の一部改正の施行日以後からとなります。

6.その他
話題になっていました「相続税と贈与税の一体化」については、今回の改正では織り込まれていませんでしたが、引続き検討項目として、税制改正は早くても令和5年4月以降になるかと思われます。

以上

消費税の改正
1.適格請求書等保存方式(インボイス制度)に係る見直し
(1)免税事業者の課税期間の中途における適格請求書発行事業者への登録時期の緩和
免税事業者が、2023年(令和 5年)10 月1日から2029年(令和11年) 9 月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、2023年(令和 5年)10 月1日の属する課税期間を除き、 課税期間の中途から登録を受けることはできませんでしたが、改正後は免税事業者であっても任意のタイミングで適格請求書発行事業者の登録を受けられるようになります。
課税期間の中途における登録の可否

現行改正
原則不可(課税事業者選択届出書を提出し翌課税期間から登録 (注1))令和5年10月1日から 令和11年9月30日 の属する課税期間 (下記除く)可能
経過措置 (令和5年10月1日 の属する課税期間)可能経過措置 (令和5年10月1日 の属する課税期間)可能

注1:課税事業者となる課税期間の初日の前日から起算して1月前の日までに登録申請書の提出が必要

(2)事業者免税点制度の不適用
上記(1)の適用を受けて免税事業者が適格請求書発行事業者になった事業者は、その登録日の属する課税期間の翌課税期間から、その登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度を適用できなくなります(2年間は課税事業者が強制される措置)。

2.適格請求書等保存方式(インボイス制度)における仕入税額控除の見直し
(1)仕入明細書等による仕入税額控除は、その課税仕入が.他の事業者が行う課税資産の譲渡等に該当する場合に限り、行うことができることになります。
(2)区分記載請求書の記載事項に係る電子データの提供を受けた場合、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入の税額控除に関する経過措置の適用を受けることができることになります。
(3)適格請求書発行事業者以外からの課税仕入の税額控除に関する経過措置の適用の対象となる棚卸資産については、その棚卸資産の消費税額の全部を納税義務の免除を受けないこととなった場合、その消費税額を調整措置の対象となります。
これらの改正の適用時期は、令和5年10月1日以後に行う資産譲渡及び課税仕入に適用となります。

3.納税地の変更・異動に関する届出書(個人消費税)
納税地が変更・異動した場合には、従前の税務署長に届出書を提出する必要がありましたが、令和5年1月1日以後については届出書の提出が不要となります。

以上

2021年12月30日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

改正電子帳簿保存制度の概要

2022年(令和4年)1月1日より改正電子帳簿保存法(電帳法)の適用開始となる予定でしたが、2022年度税制改正大綱で2年間の適用猶予期間(2023年12月31日まで)が設定されています。この適用延期は保存義務者の準備不足状況から、所轄税務署長が電子データを保存要件に従って保存をすることが出来ないことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、税務署からの質問検査権に基づき電子データの出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力可能でなければならない)の提示又は提出の求めに応じることができる場合には、当該猶予期間では既存の保存方法で良いということになります(税務署に申請等の手続きは不要)。

この電帳法による電子データ保存の3分類の内の「電子取引」に係るデータ保存制度では、電子で取引した際の電子データは所定の保存要件に基づいて保存しなければならないという保存義務が課されています。その大きな改正点は、電子取引に該当する場合には、これまでの電子データを紙に出力して保存することが認められなくなり、保存要件に従って電子データそのものを保存しなければならなくなっています。
以下、3分類別に電子データの保存要件の概要となります。

1.電子データ保存義務の対象となる電子取引及び取引情報
(1)電子取引
電子取引とは、通信手段を問わず「取引情報」の受け渡しを電子データ(電磁的記録)により行う取引をいいます。以下は電子取引にあたり、書類等の受け渡しが電子データで行うものが含まれます。
① EDI 取引
② インターネット等による取引(クラウドサービスの利用等も含む)
③ 電子メールによる取引情報の受け渡し取引(添付ファイルも含む)
④ インターネット上のサイトで受け渡し取引
注:EDIとは「Electronic Data Interchange」の略称で、日本語では「電子データ交換」を意味します。企業間の商取引で発生する契約書や受発注書、納品書、請求書等といった帳票のやり取りを、専用回線やインターネットを用いて電子的に交換ができるシステム(企業間でやり取りする仕組)のことです。
更に、具体例として、
* 電子メールにより受領した請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)
* インターネットのホームページからダウンロード・スクリンショットした請求書や領収書等のデータ
* 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
* クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、 スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
* 特定の取引に係るEDIシステムを利用
* ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
* 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領
等があります。
(2)取引情報
取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項(取引先・取引日・取引金額等の事項)となります。従って、この様な取引情報が含まれていない電子データの保存義務はありません。

2.電子取引で受け渡しのデータにおける所得税・法人税法と消費税法の違い
(1)所得税(源泉所得税を除く)・法人税法
2022年1月1日以後は授受した電子データを書面等に出力(紙出力)して保存することはできません(記帳管理上、書面等を紙で出力保管することは全く問題ありません)。 全ての電子取引の情報は、電帳法に定められる要件を満たした上で、電子データを保存しなければなりません。 もし、同日以後に行う電子取引の取引情報を書面のみで保存していた場合、青色申告の承認の取消対象となる可能性もあるため注意が必要です(取消等は説明、資料、情報等を総合勘案されますが、書面で取引内容の確認ができ、かつ、申告内容が正しく、書面保存以外の特段の事由がないような場合には、青色申告の取消や費用の経費性が認められないことにはならないとのことです)。
(2)消費税法
電子データを書面等に出力しての保存が可能です。2023年10月から始まるインボイス制度導入後も、書面の保存でも仕入税額控除の適用が受けられます。

3.電子データの保存分類
電子データの保存には、書類・帳簿の内容別に「電子帳簿等保存」、「スキャナ保存」、「電子取引に係るデータ保存」の3種類に分かれています。その種類別に電子データ保存の要件が定められています。重要なことは、電子帳簿等保存とスキャナ保存については企業の任意選択(紙の保存又は電子データの保存の選択でよく、電子データで保存する場合には、所定の保存方法に遵守する必要があるということになります)ですが、電子取引に係るデータ保存内容(紙の出力保存のみでは不可)については、該当する電子データを授受する全ての企業に適用される点が挙げられます。
下記は、対象となる帳簿・書類の内容別に保存方法が3分類されている表です。

(1)電子帳簿等保存とは(自己が最初の記録段階から一貫してデータで作成している場合)

電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿及び書類の保存方法等の特例に関する法律)の概要は次のとおりです。

国税関係帳簿及び書類のうち電子計算機(コンピュータ)を使用して作成している国税関係帳簿及び書類については、一定の要件の下で、電磁的記録等(電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルム(COM))による保存等(国税関係帳簿の場合には備付け及び保存をいいます)が認められます。 なお、手書きで作成された国税関係帳簿については、原本の書面で保存することになります。

電帳法は、納税者の国税関係帳簿及び書類の保存に係る負担の軽減等を図るために、 その電磁的記録等による保存等を容認しようとするものですが、納税者における国税関係帳簿及び書類の保存という行為が申告納税制度の基礎をなすものであることに鑑み、適正公平な課税の確保に必要な一定の要件に従った形で、電磁的記録等の保存等を行うことが条件とされています。 また、所得税法及び法人税法では、取引に関して相手方から受け取った注文書、領収書等や相手方に交付したこれらの書類の写しの保存義務が定められていますが、同様の取引情報を電子取引により授受した場合には、この注文書、領収書等の原始記録の保存が行われない結果となりかねない状況にあったため、電帳法において、新たに電子取引により授受した取引情報として保存義務が設けられています(後述参照)。

市販の会計ソフトを使って経理処理や申告書の作成等を行っている場合には、国税関係帳簿及び書類の電磁的記録等による保存等は認められるかは、市販の会計ソフトを使用して、見読可能装置(ディスプレイ等)やシステムの開発関係書類(システムの概要書等)の備付け等の法令で定められた要件を満たしている場合には、紙による保存等に代えて、電磁的記録等による保存等を行うことが認められます。しかしながら、 この法令で定められた要件を満たせない場合には、会計ソフトを使用して作成した帳簿書類について電磁的記録等による保存等は認められないことから、紙出力して保存等を行うことになります。

なお、優良な電子帳簿の保存要件を満たすことで、過少申告課税の軽減措置(税務署長の事前届出による要承認)と所得税の青色申告特別控除(65万円)の適用を受けることが出来ます。

  • 検索機能の確保の3要件(検索要件の充足方法の原則)

条件① 日付、金額、取引先の 3つの項目で検索ができること。

条件② 日付、金額は範囲を指定して検索ができること。

条件③ 二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて、 検索条件を設定できること。 AND検索でOK、OR検索までは求められない。

検索要件の充足方法の例外:

保存の電子データについて、税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに全てについて応じられる場合、その条件②及び条件③の要件は不要となります。

  • 制度の対象となる帳簿保存要件

訂正削除履歴が残らない帳簿であっても、次の全要件を満たせば電子データ保存が可能です。

① モニター・説明書等を備え付けていること。

② 税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることが出来ること。

(2)スキャナ保存とは( 取引先から受領した領収書や請求書、自己で作成した控え等の書類をスキャナで読み取る場合)

スキャナ保存制度は、取引の相手先から受け取った請求書等及び自己が作成したこれらの写し等の国税関係書類(決算関係書類を除きます。)について、書面による保存に代えて、一定の要件の下で、スキャン文書による保存が認められる制度です。

「スキャナ」とは、書面(紙)の国税関係書類を電磁的記録に変換する入力装置をいい、 いわゆる「スキャナ」や「複合機」として販売されている機器が該当することになります。 また、例えば、スマートフォンやデジタルカメラ等についても、上記の入力装置に該当すれば、「スキャナ」に含まれることになります。

① スキャナ保存の対象書類

スキャナ保存の対象書類とは、国税に関する法律の規定により保存をしなければならないこととされている書類(国税関係書類)のうち、規則第2条第4項に規定する書類を除く全ての書類が対象となります。規則第2条第4項に規定する書類とは、具体的には棚卸表、貸借対照表及び損益計算書などの計算、整理又は決算関係書類であり、これ以外の国税関係書類がスキャナ保存の対象となります。 なお、売上伝票などの伝票類は、所得税法施行規則第63条第1項及び法人税法施行規則第 59条第1項等に規定する保存すべき書類には当たらないことから、法第2条第2号(定義)に 規定する国税関係書類に該当しないので、スキャナ保存の適用はありません。

② スキャナ保存の要件

主なスキャナ保存の要件は以下の通りです。

  • 入力期限

速やかに(7営業日以内)タイムスタンプを付す。なお、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの事務処理規程を定めている場合は、事務処理の経過後速やかに付す(2ヶ月+7営業日以内)。

  • タイムスタンプ付与

入力期間内に、(一財)日本データ通信協会が認定するタイムスタンプを入力単位ごとの電磁的記録の記録事項を付す。なお、入力期間内に、別途記録事項を入力したことを客観的に確認出来る場合には、このタイムスタンプの付与要件に代えることが出来ます。

  • 検索機能の確保の3要件(検索要件の充足方法の原則)

条件① 日付、金額、取引先の 3つの項目で検索ができること。

条件② 日付、金額は範囲を指定して検索ができること。

条件③ 二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて、 検索条件を設定できること。 AND検索でOK、OR検索までは求められない。

検索要件の充足方法の例外:

保存の電子データについて、税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに全てについて応じられる場合、その条件②及び条件③の要件は不要となります。

(3)電子取引に係るデータ保存とは(見積書、契約書、請求書、領収書等の送付・受領を電子データで行った場合)

上記1に記述しました様に、電子取引制度は、所得税(源泉徴収に係る所得税を除きます) 及び法人税の保存義務者が取引情報(注文書、領収書等に通常記載される事項)を電磁的方式により授受する取引(電子取引)を行った場合には、その取引情報を一定の要件の下で電磁的記録により保存しなければならないという制度です。  所得税法及び法人税法では、取引に関して相手方から受け取った注文書、領収書等や相手方に交付したこれらの書類の写しの保存義務が定められていますが、同様の取引情報を電子取引により授受した場合には、この注文書、領収書等の原始記録の保存が行われない結果となりかねない状況にあったため、電帳法において、新たに電子取引により授受した場合には、その取引情報に係る電磁的記録を一定の方法により保存しなければならないこととされています。

  • 電子取引(電子メール)の受信時の保存方法

電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)を行った場合についても電子取引に該当するため、その取引情報に係る電子データ(電磁的記録)の保存が必要となります。具体的に、この電子データの保存とは、電子メール本文に取引情報が記載されている場合は当該電子メールを、電子メールの添付ファイルにより取引情報(領収書等)が授受された場合は当該添付ファイルを、それぞれ、ハードディスク、コンパクト ディスク、DVD、磁気テープ、クラウド(ストレージ)サービス等に記録・保存する状態にすることをいいます。

4.電子取引における改ざん防止措置として取引情報の真実性や可視性を確保するための保存要件(電子取引に係るデータの保存要件)

電子取引に係るデータは書面での保存が不可となるため、真実性や可視性を確保が重要になります。 電子データの必須的保存要件は以下の3要件になります。

(1)電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合)

システムの概要を記載した書類を備え付ける(例:システム基本設計書、システム概要書など)。 画面や書面に速やかに出力できるようになっていれば、 オンラインのマニュアルやヘルプ機能で代えることも可。

(2)見読可能装置(ディスプレイ・プリンター)の備付け

保存しているデータを速やかに出力できるよう、PCとディスプレイを備え付ける(モニターのサイズや台数には要件なし)。

(3)検索機能の確保の3要件(検索要件の充足方法の原則)

条件① 日付、金額、取引先の 3つの項目で検索ができること。

条件② 日付、金額は範囲を指定して検索ができること。

条件③ 二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて、 検索条件を設定できること。 AND検索でOK、OR検索までは求められない。

(3)―1 検索要件の充足方法の例外

例外1 保存の電子データについて、税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに全てについて応じられる場合、その条件②及び条件③の要件は不要となります。
例外2 電子帳簿保存に対応した専用システムを導入しておらず、一般的なパソコンやプリンターを使用している場合でも、以下のいずれかの方法でも検索要件を満たすことで保存要件を満たしたことになります。

① 取引情報のデータを規則的なファイル名により入力しておく方法。

ダウンロード可能な状態にして特定フォルダにファイル名で検索機能を活用する(税務職員の求めに応じて一括ダウンロードできるようにしておき、ファイル名に日付・金額・取引先を入れる)。
② エクセル等の表計算ソフトで索引簿を作成する方法。

範囲指定、および2以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できる機能が備わっているエクセル等の表計算ソフトに、取引データに係る取引年月日、取引金額、取引先の情報を入力して一覧表を作成する。

例外3 以下の全てを満たす場合には、検索要件充足は不要(免除)となります。

① 税務調査の際、税務職員からダウンロードを求められたらデータ提出の求めに応じられる場合

② 個人事業主の場合は2年前、法人の場合は前々年度の売上が 1,000万円以下の場合

 

、選択的保存要件として、次の①から④のいずれかの保存上の措置が必要です。
① タイムスタンプが付された後の取引情報の授受。

② 速やかに(7営業日以内)タイムスタンプを付す。

取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの事務処理規程を定めている場合は、事務処理の経過後(最長2ヶ月以内)、速やか(おおむね7営業日以内)に付す。(2ヶ月+7営業日以内)

③ データの訂正削除を行った場合、その記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用する。

④ 正当な理由がない訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付ける。

一般的な事業者は、この④の対応となるかと思いますが、事務処理規程の例示は、国税庁から「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」として公表されていますので参考にすることができます。

最後に、国税庁HPに電子帳簿保存法Q&A(一問一答)により詳細説明がありますので必要に応じて参照してください。

2021年12月26日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

2022年度税制改正大綱決定

自民、公明両党は10日、2022年度の与党税制改正大綱を決めた。主な税制改正は次の通り。

賃上げ賃上げ率などに応じて大企業は最大30%、中小は最大40%の税額控除減税
5G整備高速通信規格「5G」通信網の整備支援を2024年度まで延長。控除率は段階的に引下げ増税
オープンイノベーション
非上場企業への出資額の25%を課税所得から差し引く措置を2024年3月まで延長。出資要件を緩和減税
住宅ローン控除率を1%から0.7%に引下げ。年収3,000万円以下の所得要件を2,000万円以下に厳格化増税
固定資産税地価が上昇しても税額が増えない新型コロナウイルス対応の特例を縮小。住宅地は終了し、商業地は税額の上昇幅を半分に抑える増税

今回の改正大綱では見新しいものは無く、主要項目は賃上げ減税と住宅ローン控除のように感じられます。詳細に関しましては、別途、紹介いたします。

2021年12月11日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant

法定調書: 申告書提出期限1月末

1. 法定調書とは

12月の最終給与支給までに、 従業員の年末調整が行なわれ一区切りついたと思っても、 翌1月末までに提出、申告等の対応が必要となるものがあります。  その1つに法定調書作成がありますが、 これは、所得税法、相続税法等の法律の規定により、給与、報酬、家賃等の支払者(提出義務者)が、それらの1年間の支払いに関して、支払先の氏名、住所、支払金額等を記載し所轄税務署に提出が義務付けられている書類(全部で60種類ほど)です。この主目的は、税務署が適正な課税の確保を図ることを目的に支払事実を把握し、受給者が正しく所得を申告していることの確認手段になるものです。 提出すべき法定調書は、 特定項目の一定金額以上のものですが、 源泉徴収の対象になるものとは限っておりませんので留意してください。

なお、 2016年度分より行政機関への提出にあたり、 マイナンバー(個人番号、等)が必要となっています。

2. 提出する一般的な6種類の法定調書と支払内容

法定調書と支払内容支 払 内 容
給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書(注2)俸給、給料、賞与等の支払
退職所得の源泉徴収票と特別徴収票(注2)退職手当(注1)、一時恩給等の支払
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書① 原稿料、印税、講演料、工業所有権の使用料等の支払
② 弁護士、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士、建築士等への報酬、料金の支払
③ 外交員、集金人、電力量計の検針人、モデル、プロ野球の選手、プロボクサー、騎手等への報酬、料金、契約金の支払、芸能人への出演料等の支払
④ バー、キャバレー等のホステス、コンパニオン等への報酬、料金の支払
⑤ 広告宣伝のための賞金、馬主への競馬の賞金の支払
不動産の使用料等の支払調書地代、家賃、権利金、礼金、更新料、承諾料、名義書換料等の支払
不動産等の譲受の対価の支払調書土地、建物等の譲受け(売買、交換、収用等)の代金の支払
不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書土地、建物等の売買や貸付の仲介手数料の支払

注1:死亡退職による退職手当等の場合には、相続税法による「退職手当等受給者別支払調書」を提出することになります。

注2:地方税法で提出が義務付けられています「給与支払報告書」及び「特別徴収票」は、

名称が異なりだけで、それぞれ「給与所得の源泉徴収票」及び「退職所得の源泉徴収票」と記載内容は同じものです。

3. 提出範囲

支払調書は、一定金額以上のもの等(支払金額の提出範囲)に該当するときに提出が必要となります。主な提出範囲は次のとおりです。

(1) 給与所得の源泉徴収票

年末調整受給者区分提出範囲(年間)
年末調整をしたもの法人役員(相談役、顧問など含む)150万円超
弁護士、公認会計士、 税理士等250万円超
上記以外の人(従業員)500万円超
年末調整をしなかったもの給与収入2,000万円超全部
「扶養控除等申告書」を提出した者のうち退職した者等250万円超(法人役員は50万円超)
「扶養控除等申告書」を提出しなかった者50万円超

(2)報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20の規定に基づく報酬 料金等の支払

区 分提出範囲
* 外交員、集金人、検針人、プロボクサー、ホステス等の報酬、料金
* 広告宣伝のための賞金
* 社会保険診療報酬支払基金からの診療報酬
年間50万円超
馬主に支払う競馬の賞金1回75万円超
プロ野球選手等の報酬及び契約金
弁護士、税理士等の報酬
作家、画家などの原稿料、画料
講演料、 その他の報酬、 料金等
年間5万円超

(3)その他の法定調書

法定調書提出範囲
退職所得の源泉徴収票法人役員が受給者であるもの
不動産の使用料等の支払調書
注:不動産、 不動産の上に存する権利、 総トン20トン以上の船舶、 航空機に対する対価を受領する法人と不動産業の個人の方が提出義務者となります。
年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方は提出義務はありません。
又、法人に対し賃借料のみを支払っている場合にはその支払調書の提出は不要ですが、支払が権利金、更新料等は提出が必要となります。
不動産管理会社を通じて、オーナーが個人の場合には、個人に支払う使用料等として提出となります。
不動産等の譲受の対価の支払調書年間100万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方は提出義務はありません。
不動産等の仲介料の支払調書年間15万円超
但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方は提出義務はありません。
公的年金等の源泉徴収票「扶養控除等申請書」を
提出した者:60万円超
提出しなかった者:30万円超
配当等の支払調書10万円超(中間配当がある場合は5万円超)
生命保険契約等の一時金の支払調書100万円超
損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書100万円超
株式等の譲渡対価の支払調書同一人に対し100万円超
1回30万円超
国外送金等調書1回100万円超

4.提出先と提出期限
法定調書の提出期限は、原則として、その年の翌年の1月31日までとなっており、所轄税務署に提出することになります。税務署に提出する場合には、法定調書の合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)と各法定調書(提出範囲のもの)を提出します。

支払金額に関係なく受給者(個人・法人)の全員にも、 翌年の1月31日まで帳票が送付され(法的には送付は強制されていませんが、通常は送付しています)、 個人では確定申告の作成資料等に使用、 又、 法人では受給金額・内容との照合等に使用することができます。

法定調書の提出方法に関して、基準年(前々年)の提出枚数が1,000枚以上(なお、令和3年1月1日以後の提出分から、100枚以上)であった法定調書の場合には、光ディスク等又はe-Taxによる提出が義務付けられています。

5.給与所得の源泉徴収票 (給与支払報告書)
サラリーマンの方にはお馴染みの給与所得の源泉徴収票は、 その年の給与所得に関する年末調整後(給与収入が2千万円超の方等は除く)の源泉徴収税額や税額計算情報が集約され記載されています帳票です。 税務署には、 一定金額以上の給与収入の「源泉徴収票」が提出され、 又、 同一内容ですが様式名が異なる給与支払報告書が個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます。
「給与支払報告書」(総括表を添える)提出先は、受給者(全員分)のその年の翌年の1月1日現在の住所地の市区町村となり、 提出期限は翌年の1月31日までとなっています(個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます)。
年度の途中で退職した者に対する給与支払報告書は、 支払額が30万円以下の場合には提出を省略することができます。 退職金の「特別徴収票」の提出先は、 受給者の退職日現在の住所地の市区町村となっており、 退職後1ケ月以内の提出となります。 市区町村では、 提出された資料から住民税の税額計算をおこない、 翌年6月から徴収を開始し1年間で納付が完了となります。

2021年12月5日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant