平成29年度税制改正による平成30年度以降の源泉徴収事務等の留意点

1.配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し(平成30年分以後(2018年1月から)
現行では、配偶者の合計所得金額が38万円以下(給与収入では103万円以下)の場合に配偶者控除38万円(老人控除対象配偶者48万円)、 並びに配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満の場合に配偶者特別控除が適用となっていましたが、 改正では、 配偶者控除は世帯主の年収に応じて縮小され、配偶者特別控除は配偶者の年収要件を103万円(合計所得金額では38万円)から150万円(合計所得金額では123万円)に引上げ、 かつ配隅者及び世帯主の年収に応じて控除額が以下の様に9段階で縮小となりました。

配偶者控除及び配偶者特別控除/
配偶者の合計所得金額
900万以下900万超950万以下950万超1,000万以下1,000万超控除区分
38万円以下38万円
「同一生計配偶者」
26万円
「同一生計配偶者」
13万円「同一生計配偶者」0円
「同一生計配偶者」
配偶者
控除(1)
「控除対象配偶者」
「源泉控除対象配偶者」
「控除対象配偶者」「控除対象配偶者」
38万円超 85万円以下38万円
「源泉控除対象配偶者」
26万円13万円0円配偶者
特別控除(2)
85万円超 90万円以下36万円 24万円12万円同上同上
90万円超 95万円以下31万円 21万円11万円同上同上
95万円超 100万円以下26万円 18万円9万円同上同上
100万円超 105万円以下21万円 14万円 7万円同上同上
105万円超 110万円以下16万円 11万円6万円同上同上
110万円超115万円以下11万円 8万円4万円同上同上
115万円超120万円以下6万円4万円2万円同上同上
120万円超123万円以下3万円2万円1万円同上同上
123万円超0円0円0円0円

(1)配偶者控除
合計所得金額が38万円以下である「同一生計配偶者」で、かつ、合計所得金額が1千万円以下(給与等の収入金額では1,220万円以下)である世帯主の配偶者となる「控除対象配偶者」のみが、配偶者控除の対象となります。
*「同一生計配偶者」とは、世帯主と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除く)で、合計所得金額が38万円以下である人をいいます。
*「控除対象配偶者」とは、同一生計配偶者の内、合計所得金額が1千万円以下である世帯主の配偶者をいいます。又、控除対象配偶者の内、年齢が70歳以上の人は「老人控除対象配偶者」となり、控除額が上乗せされています。
*「配偶者」とは、戸籍法で定める婚姻届出をされている配偶者とされますので、内縁関係にある者は配偶者に該当しません。なお、外国人においては、その者の本国法に定める要件を満たすことによって婚姻の成立した配偶者であればよいことになります。配偶者の判定時期は、12月31日(あるいは死亡時又は出国時)の現況によります。年の途中で配偶者と死別し、再婚した場合には、どちらか一人を配偶者とすることができます。
*「合計所得金額」とは、純損失の繰越控除及び雑損失の繰越控除を適用しないで計算した総所得金額、退職所得金額、山林所得金額その他租税特別措置法の規定する申告分離課税の対象とされる所得の金額(例えば、上場株式等の配当所得等の金額)の合計額をいいます。
(2)配偶者特別控除
合計所得金額が38万円超123万円以下の世帯主と生計を一にする配偶者で、かつ、合計所得金額が1千万円以下である世帯主の配偶者に対して、配偶者特別控除の対象となります。
(3)障害者控除
対象者一般障害者特別障害者
同一生計配偶者27万円40万円
世帯主(納税者)27万円40万円
同居同一生計配偶者又は同居扶養親族75万円

2.平成30年1月以降の源泉徴収事務
給与等の源泉徴収税額の計算にあたり、扶養親族等の数や給与所得者の扶養控除等(異動)申告書等の申告書に対して、以下の通り変更があります。
(1)配偶者に係る扶養親族等の数のカウント及び給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記載
控除額38万円の配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けることができる世帯主は、合計所得金額が900万円以下の者に限られることになりました。その為に、源泉徴収における配偶者の「扶養親族等の数」のカウントにも変更があります。これまでは、合計所得金額が38万円以下の配偶者であれば、扶養親族等の数に1人としてカウント出来ましたが、平成30年1月より扶養親族等の数に1名としてカウント出来る配偶者は、生活を一にする配偶者の合計所得金額が85万円以下で、かつ、世帯主の合計所得金額が900万円以下である、「源泉対象配偶者」である場合に限定されました。
*「源泉対象配偶者」とは、世帯主と生活を一にする配偶者(青色事業専従者等を除く)の合計所得金額が85万円以下で、かつ、世帯主の合計所得金額が900万円以下である人をいいます。各合計所得金額は、当年間の見積額により判定することになります。
又、同一生計配偶者が障害者に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を更に加算して計算することになります。
これにより、毎年最初に給与の支払日前に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、該当する場合には、源泉対象配偶者の氏名、個人番号、生年月日、当年間の所得の見積額、及び同一生計配偶者が障害者並びに扶養親族の障害者等に該当の有無等を記載し提出することになりました。
(2)年末調整時の申告書
配偶者控除及び配偶者特別控除の適用について、配偶者の合計所得金額に上限額が設けられた為、年末調整に際して、これまで給与所得者の保険料控除申告書と兼用様式となっていた給与所得者の配偶者特別控除申告書が改正され、単独の「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出し正確な控除を確定することになります。つまり、見積額で源泉控除対象配偶者に該当する場合には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、月々の源泉徴収を行い、年度中に変更等があった時には扶養控除等異動申告書を提出することになります。なお、年度中に源泉控除対象配偶者に該当しなくなった場合でも遡及是正を行う必要はありません。最終的には、年末調整時に「給与所得者の配偶者控除等申告書」で精算することになります。

2017年11月6日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant