2017(平成29)年度税制改正大綱:法人税

2016年12月8日に与党が決定しました2017(平成29)年度税制改正大綱に関しまして、法人税に関する主な改正案の概要は、 以下のとおりです。

1.競争力強化のための研究開発税制等の見直し

(1) 試験研究費の範囲の見直し

試験研究費の範囲に、「対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究のために要する一定の費用が追加されます。 この「一定の費用」とは、対価を得て提供する新たな役務(新サービス)の開発を目的として行う業務に要する費用となっています。

(2) 総額型(試験研究費の総額に係る税額控除制度)の見直し

 ① 税額控除率等の見直し

試験研究費の増減割合に応じた税額控除率に変動されます。 現行では試験研究費割合に応じ8%~10%ですが、以下の様に変わります。

改正
区分 税額控除率
5% < 増減割合 9% +(増減割合-5%)x 0.3
-25% ≦ 増減割合 ≦ 5% 9% -(5%-増減割合)x 0.3
増減割合 < -25% 6%

「試験研究費の増減割合」とは、試験研究費増減差額の比較試験研究費に対する割合

「試験研究費増減差額」とは、試験研究費の額から比較試験研究費の額を減算した金額

 ② 税額控除率の上限引上げ(2年間の時限措置)

(イ)総額型の税額控除率の上限は、原則、10%だが、2年間の時限措置として14%に引上げられます。

(ロ)中小企業等技術基盤強化税制による総額型の場合、試験研究費の増加割合が5%を超える場合には次の様になります。

(①)税額控除率 = 12%% +(試験研究費の増加割合-5%)x 0.3}、 但し、税額控除率の上限は17%

(②)税額控除額 = 試験研究費の額 x 税額控除率

税額控除額の上限 = 当期の法人税額 x 25% + 上乗せ部分(当期の法人税額 x 10%)

なお、この適用にあたり、高水準型(平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度)との選択適用となります。

(3) 高水準型(平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度)の時限措置等

① 適用期限が2年延長されます。

② 試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合の上乗せ措置2年間の時限措置)

試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合、「高水準型」の適用に代えて、以下のとおり「総額型」の控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に一定の金額を上乗せできることになります。

参考:高水準型においての税額控除計算

税額控除額 = (当期試験研究費の額 – 平均売上金額 x 10%) x 超過税額控除割合

平均売上金額:当期及び当期前3年以内に開始した各事業年度の売上の平均額

超過税額控除割合:(試験研究費割合 – 10%) X 0.2

税額控除限度額は、 当期法人税額の10%

改正: 上乗せ措置

(①)総額型

当期の法人税額の25% + 上乗せ部分{(当期の法人税額 x(試験研究費割合 -10%)x 2}

(②)総額型(中小企業等技術基盤強化税制による総額型)

当期の法人税額の25% + 上乗せ部分{(当期の法人税額 x(試験研究費割合 -10%)x 2}

なお、この適用にあたり、上述しました総額型との選択適用となります。

(4) 増加型(試験研究費の増加額に係る税額控除制度) 

平成28年度末の期限をもって廃止となります(現行:高水準型との選択適用)。

(5) オープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)

特別試験研究費の対象となる支出費用が限定されていたが、その限定が廃止され、その研究に要した費用となります。

2.所得拡大促進税制の税額控除制度の見直し

(1) 大企業

現行 改正
適用要件 平均給与等支給額 > 比較平均給与等支給額

 

(平均給与等支給額 - 比較平均給与等支給額)÷ 比較平均給与等支給額 ≧ 2%
控除税額 雇用者給与等支給増加額 x 10% 雇用者給与等支給増加額 x 10% +(①又は②のいずれかの金額) x 2%

① 雇用者給与等支給増加額 ≧(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額の金額

② 雇用者給与等支給増加額 <(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給増加額の金額

(2) 中小企業者等

現行 改正
控除税額 雇用者給与等支給増加額 x10% 雇用者給与等支給増加額 x 10% + (①又は②のいずれかの金額)x 12%

① 雇用者給与等支給増加額 ≧(雇用者給与等支給額 - 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給額 – 比較雇用者給与等支給額の金額

② 雇用者給与等支給増加額 <(雇用者給与等支給額 – 比較雇用者給与等支給額)ならば、雇用者給与等支給増加額の金額

3.確定申告書の提出期限の延長の特例

法人が、①会計監査人を置いている場合で、かつ、②定款等の定めにより各事業年度終了から3月以内に決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、4月を超えない範囲内で確定申告書を提出することが税務署長より認められます。

原則、「事業年度終了から2ヵ月以内」から、現行の「1ヵ月の提出期限の延長特例」は存置され、別途、最大で4ヵ月の提出期限の延長」となり、事業年度終了から最大6ヵ月以内の特例が創設されます。 また、法人税事業税についても、同様な取扱いとなります。

4.役員給与関連

(1) 利益連動給与の見直し(平成29年4月1日以後の支給又は交付決議分から適用対象)

算定指標の範囲に、株式の市場価格の状況を示す指標及び売上高の状況を示す一定の指標を加えるとともに、当該事業年度後の事業年度又は将来の所定の時点若しくは期間の指標を用いることができるようになります。

(2) 事前確定届出給与の見直し(平成29年4月1日以後の支給又は交付決議分から適用対象)

① 所定の時期に確定した数の株式を交付する給与が対象に加えられます。

② 所定の時期に確定した数の新株予約権を交付する給与が対象に加えられるとともに一定の新株予約権の給与は事前確定の届出は不要となります。

③ 利益その他の指標を基礎として譲渡制限が解除される数が算定される譲渡制限付株式による給与は対象外となります。

(3) 定期同額給与の範囲の見直し(平成29年4月1日以後の支給又は交付決議分から適用対象)

税及び社会保険料の源泉徴収等の控除後で金額が同額となるものも定期給与に加えられます。

(4) 退職給与の見直し (平成29年10月1日以後の支給又は交付決議分から適用対象)

退職給与で「利益その他の指標(勤務期間及び既に支給した給与を除く)」を基礎に算定されたもののうち、次の①と②の全額が損金不算入となります。

① 利益連動給与の損金算入要件を満たさないもの

② 新株予約権による給与で事前確定届出給与又は利益連動給与の損金算入要件を満たさないもの

(5) 譲渡制限付株式(RS)と新株予約権(SO)を対価とする費用の帰属事業年度の特例の見直し

平成29年10月1日以後の支給又は交付決議分から適用対象)

① 役務提供を受けた法人以外の法人が交付するものも対象に加えられます。

② RSの損金算入時期が、原則、「譲渡制限が解除されることが確定した日の属する事業年度」となります。 現行は、「譲渡制限解除日の属する事業年度」からの見直し。

③ RSやSOが、非居住者に交付された場合、その者が居住者であったとした場合に給与所得等が生じることが確定した日に役務提供を受けたこととなる。

5.組織再編税制等の見直し

多くの見直しが行われますが、特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフ関係の改正事項(分割型分割や現物分配によるスピンオフが行われた場合、適用要件を満たすことでスピンオフを行った会社側への譲渡損益の課税が繰り延べられる)は、平成29年4月1日以後の組織再編成に適用となります。 又、吸収合併・株式交換に係る適格要件の見直しなどといったスピンオフ関係以外の改正事項は、平成29年10月1日以後の組織再編成に適用となります。

6.営業権等の償却方法の見直し

営業権、資産調整勘定及び負債調整勘定の償却方法について、取得年度の償却限度額の計算上、月割計算で行うことになります。

7.地域中核企業向け設備投資促進税制の創設

企業立地促進法の改正を前提に、青色申告法人が同改正法の施行日から平成31年3月31日までの間に、一定の計画(国の確認が必要)に係る一定の地域内で一定の施設等(取得価額の合計が2千万円以上)を新設、又は増設した場合に、その施設等を構成する機械装置、器具備品、建物・建物附属設備・構築物の取得等をして、一定の事業用に供したときは、取得価額(本制度の上限は100億円)の40%(建物・建物附属設備・構築物は20%)の特別償却、又は4%(建物・建物附属設備・構築物は2%)の税額控除(但し、法人税額の20%が限度)との選択適用ができます。

8.中小企業向け設備投資促進税制の拡充

(1) 中小企業経営強化税制への改組(以前の中小企業投資促進税制の上乗せ措置)

青色申告書を提出する中小企業者等で中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものが、平成29年(2017年)4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間に、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、及びソフトウェアで特定経営力向上設備等に該当するもののうち、一定の規模以上のものの取得等をして、その特定経営力向上設備等を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その普通償却限度額との合計で取得価額までの特別償却と、その取得価額の7%(特定中小企業者等では10%)の税額控除(但し、法人税額の20%が限度で、控除限度超過額は1年間繰越可能)との選択適用が認めるというものです。

制度の目的 生産性の高い先進的な設備や生産ライン等の改善のための設備投資に対する税制支援(即時償却又は税額控除)を行い、 中小企業者の民間投資を活性化させる
適用法人 青色申告書を提出する中小企業者等
適用要件 「生産等設備」を構成する「特定経営力向上設備等」のうち、 一定規模以上のものを取得等し、 その設備を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合
生産等設備とは 法人の指定事業用に直接供される減価償却資産で構成されるもの。  従って、 本店、 寄宿舎等の建物附属設備、 福利厚生施設等は非該当
特定経営力向上設備等とは 経営力向上設備等(①生産性向上設備と②収益力強化設備)のうち経営力向上に著しく資する一定のもので、その法人の認定を受けた経営力向上計画に記載されたもの
①生産性向上設備
種類 取得価額(*2) 販売開始(*1) 用途・細目
機械装置 160万円以上 10年以内 限定なし
工具 1台30万円以上 5年以内 測定工具及び検査工具に限る
器具備品 1台30万円以上 6年以内 限定なし
建物附属設備 1台60万円以上 14年以内 限定なし
ソフトウエア 1台70万円以上 5年以内 稼働状況等を情報収集機能及び分析等するものに限る

*1: ソフトウエア及び旧モデルがないもの(*1の販売開始要件を満たすこと)以外は、 同メーカーの旧モデル比で経営力の向上に資するものの指標(生産効率、 エネルギー効率、精度等)が年平均1%以上向上するものであること

②収益力強化設備 経済産業局の確認を受けた投資計画に記載された設備(機械装置、 工具、 器具備品、建物附属設備、及びソフトウエア)で投資利益率が年平均5%以上となることが見込まれるものであること
特別償却と税額控除との選択適用 その普通償却限度額との合計で取得価額までの特別償却と、その取得価額の7%(特定中小企業者等では10%)の税額控除(但し、法人税額の20%が限度 (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)で、控除限度超過額は1年間繰越可能)との選択適用が認めるというものです。
適用時期 同法の施行日(平成29年4月1日)から平成31年3月31日までの間の取得等。

(2) 中小企業投資促進税制

対象資産から器具備品が除外され、 適用期限が2年延長となります。

特別償却の種類 対象法人、 対象設備の範囲等 限度額
特別償却等 税額控除
中小企業者等の機械等(平成10.6.1から31.3.31まで)

(①機械装置で、 1台又は1基で取得価額160万円以上、 ②ソフトウエアで70万円以上、 ③車両総重量3.5トン以上の貨物自動車、 ④内航船舶)

新品を指定事業に供する

中小企業者等(資本金3千万円以下)で大規模法人(資本金1億円超の法人で、 単独所有で50%以上、 又は複数所有で3分の2以上の所有関係。 なお、 所有割合判定では、 親会社の同族関係者の持株等は考慮しません)の所有法人を除き、 常時勤務従業員数が1千人以下等)が新品の一定の機械装置等を取得し事業に供した場合には、特別償却、 又は税額控除の選択可(特別償却の適用要件としては、 資本金1億円以下の中小企業者等) 基準取得価額の30%

(なお、 内航船舶の基準取得価額は、 実際の取得価額の75%相当額)

次の①と②のいずれか少額の金額

①基準取得価額(内航船舶では、取得価額の75%相当額)の7%

②当期法人税額の20% (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)

また、 ①>②のときには、 限度超過額を1年間の繰越控除可

(3) 特定中小企業者等の経営改善設備投資促進税制の期限延長

適用期限が2年延長となります。 その概要は以下のとおり。

(商業・サービス業・農林水産業の中小企業等の設備投資促進税制)

青色申告法人で指定事業を営む中小企業等が経営改善に関する指導及び助言を受けて行う店舗改修等に伴い器具備品及び建物附属設備の取得等を行なった場合、その取得価額に対して特別償却か税額控除かを選択適用できる制度(所得税についても同様の取扱い)。

適用期間 平成29年4月1日~平成31年3月31日の間に店舗改修等を行なった場合
指定事業 卸売業、 小売業、 サービス業、 農林水産業(性風俗関連特殊営業及び風俗営業を除く)
適用要件 商工会議所、 認定経営革新等支援機関等による法人の経営改善に係る指導及び助言を受けて行う店舗改修等であること
対象設備 ① 器具備品: 1台又は1基の取得価額が30万円以上

② 建物附属設備: 1つの取得価額が60万円以上

特別償却額 対象設備の取得価額 X 30%
税額控除額 対象法人は、 資本金3,000万円以下の中小法人等に限定 (但し、 認定経営革新等支援機関等は対象から除外)

対象設備の取得価額 X 7%

(但し、 控除限度額は当期法人税額の20% (20%限度は、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制及び経営改善設備投資促進税制における税額控除額の合計で20%)であり、 控除限度超過額は1年間の繰越可能)

9.中小企業者等に係る法人税の軽減税率の特例の期限延長

中小企業者等に対して、所得800万円以下の部分につき、法人税率15%とする軽減税率の特例の適用期限が2年延長され、平成31年3月31日までの開始事業年度に適用となります。

10.地方拠点強化税制(オフィス減税)の拡充

(1)地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度における税額控除率を引き上げる措置の適用期限を1年延長する。

(2)雇用促進税制の特例について、無期雇用かつフルタイムの新規雇用等に対する税額控除額を上乗せする等の拡充を行う。

11.災害に関する税制上の措置

災害時における税制上の救済措置等が規定されました。

12.法人税の納税地異動における届出書

異動における届出書は、その移動後の納税地の所轄税務署長への届出は不要となります。

13.法人の設立届出書等

法人の設立届出書において、登記事項証明書の添付は不要となります。

14.特定資産の買換特例(9号買換特例)の適用期限の延長等

9号買換特例について、買換資産のうち、鉄道事業用車両運搬具が「貨物鉄道事業用の電気機関車」に限定した上で、適用期限を平成31年度末まで3年延長となります。

15.医療用機器の特別償却制度の用期限の延長等

適用対象機器の見直しを行った上で、適用期限を平成30年度末まで2年延長となります。

16.中小企業向け租税特別措置の適用停止

中小企業向け租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均額)が年15億円を超える事業年度においては、その租税特別措置の適用が停止となります。 適用は、平成31年4月1日以後開始事業年度からとなります。

以上。

2017年1月9日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

法定調書と給与支払報告書: 提出期限 1月末

1. 法定調書とは

12月の最終給与支給までに、 従業員の年末調整が行なわれ一区切りついたと思っても、 翌1月末までに提出、申告等の対応が必要となるものがあります。 その1つに法定調書作成がありますが、 これは、所得税法、相続税法等の法律の規定により、給与、報酬、家賃等の支払者(提出義務者)が、それらの1年間の支払いに関して、支払先の氏名、住所、支払金額等を記載し所轄税務署に提出が義務付けられている書類(全部で61種類ほど)です。この主目的は、税務署が適正な課税の確保を図ることを目的に支払事実を把握し、受給者が正しく所得を申告していることの確認手段になるものです。 提出すべき法定調書は、 特定項目の一定金額以上のものですが、 源泉徴収の対象になるものとは限っておりませんので留意してください。

なお、 平成28年度分の行政機関への提出にあたり、 マイナンバー(個人番号、等)が必要となっています。

2. 提出する一般的な6種類の法定調書と支払内容

提出する調書 支 払 内 容
給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書(注2) 俸給、給料、賞与等の支払
退職所得の源泉徴収票と特別徴収票(注2) 退職手当(注1)、一時恩給等の支払
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 ① 原稿料、印税、講演料、工業所有権の使用料等の支払

② 弁護士、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士、建築士等への報酬、料金の支払

③ 外交員、集金人、電力量計の検針人、モデル、プロ野球の選手、プロボクサー、騎手等への報酬、料金、契約金の支払、芸能人への出演料等の支払

④ バー、キャバレー等のホステス、コンパニオン等への報酬、料金の支払

⑤ 広告宣伝のための賞金、馬主への競馬の賞金の支払

不動産の使用料等の支払調書 地代、家賃、権利金、礼金、更新料、承諾料、名義書換料等の支払
不動産等の譲受の対価の支払調書 土地、建物等の譲受け(売買、交換、収用等)の代金の支払
不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書 土地、建物等の売買や貸付の仲介手数料の支払

注1:死亡退職による退職手当等の場合には、相続税法による「退職手当等受給者別支払調書」を提出することになります。

注2:地方税法で提出が義務付けられています「給与支払報告書」及び「特別徴収票」は、

名称が異なりだけでそれぞれ「給与所得の源泉徴収票」及び「退職所得の源泉徴収票」と記載内容は同じものです。

3. 提出範囲

支払調書は、一定金額以上のもの等(支払金額の提出範囲)に該当するときに提出が必要となります。主な提出範囲は次のとおりです。

(1) 給与所得の源泉徴収票

年末調整 受給者区分 提出範囲(年間)
年末調整をしたもの 法人役員(相談役、顧問など含む) 150万円超
弁護士、公認会計士、 税理士等 250万円超
上記以外の人(従業員) 500万円超
年末調整をしなかったもの 給与収入2,000万円超 全部
「扶養控除等申告書」を提出した者のうち退職した者等 250万円超(法人役員は50万円超)
「扶養控除等申告書」を提出しなかった者 50万円超

(2) 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

  1. 所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20の規定に基づく報酬 料金等の支払
区 分 提出範囲
* 外交員、集金人、検針人、プロボクサー、ホステス等の報酬、料金

* 広告宣伝のための賞金

* 社会保険診療報酬支払基金からの診療報酬

年間50万円超
馬主に支払う競馬の賞金 1回75万円超
プロ野球選手等の報酬及び契約金

弁護士、税理士等の報酬

作家、画家などの原稿料、画料

講演料、 その他の報酬、 料金等

年間5万円超

当該支払調書の記載の概要は以下のとおりです。

① 支払を受ける者: 受給者の住所・名称を記入。

② 区分: 例えば、 原稿料、 印税(書きおろし初版印税、 その他の印税、等)、 さし絵料、 翻訳料、 通訳料、 脚本料、 作曲料、 講演料、 教授料、 著作権・工業所有権の使用料、 放送謝金、 映画・演劇の出演料、 弁護士報酬、 税理士報酬、 公認会計士報酬、 外交員報酬、 ホステス等の報酬、 契約金、 広告宣伝のための賞金、 競馬の賞金、 診療報酬、 等と記入。

③ 細目: 上記の区分内容をより詳細化して記入。

④ 支払金額: その年度中に支払の確定した金額を記入。 従って、 未払いのものも含み、 その場合には未払金額を各欄の上段に内書で記入。

提出範囲の金額基準の判定においては、 原則として消費税及び地方消費税(消費税等)の額を含めて行ないます。 但し、 消費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで判定しても構いません。

支払金額の記入にあたっては、 原則として消費税等の額を含めて記入します。 但し、 費税等の額が明確に区分されている場合には、 その額を含めないで記入しても構いませんが、 その場合には、 その消費税等の額を摘要欄に記入する必要があります。

⑤ 源泉徴収税額: その年度中の支払の確定した金額に基づく源泉徴収すべき税額を記入。 未払いのものがある場合には、 その未徴収税額を上段に内書で記入。

⑥ (摘要): 必要に応じて記入。

⑦ 支払者: 支払者の住所・名称及び電話番号を記入。

記載上の注意事項:

法人に支払われる報酬、 料金等で源泉徴収の対象とならないもの、 或いは支払金額が源泉徴収の限度額以下であるため源泉徴収していない報酬、 料金等についても、 提出範囲の金額基準以上のものは税務署への支払調書の提出が必要となります。

(3) その他の主な法定調書

法定調書 提出範囲
退職所得の源泉徴収票 法人役員(相談役、顧問その他これらに類する者も含む)が受給者であるもの
不動産の使用料等の支払調書

注:不動産、 不動産の上に存する権利、 総トン20トン以上の船舶、 航空機に対する対価を受領する法人と不動産業の個人の方が提出義務者となります。

年間15万円超

但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。

又、法人に対し賃借料のみを支払っている場合にはその支払調書の提出は不要ですが、支払が権利金、更新料等は提出が必要となります。

不動産等の譲受の対価の支払調書 年間100万円超
不動産等の仲介料の支払調書 年間15万円超

但し、不動産業である個人で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業の方には提出義務はありません。

公的年金等の源泉徴収票 「扶養控除等申請書」を

提出した者:60万円超

提出しなかった者:30万円超

配当等の支払調書 10万円超(中間配当がある場合は5万円超)
生命保険契約等の一時金の支払調書 100万円超
損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書 100万円超
株式等の譲渡対価の支払調書 同一人に対し100万円超

1回30万円超

国外送金等調書 1回200万円超

4. 提出先と提出期限

法定調書の提出期限は、原則として、その年の翌年の1月31日までとなっており、所轄税務署に提出することになります。税務署に提出する場合には、法定調書の合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)と各法定調書(提出範囲のもの)を添付して提出します。

受給者(個人・法人)の全員にも、 翌年の1月31日まで帳票が送付されることになっていますので、 個人では確定申告の作成資料等に使用、 又、 法人では受給金額・内容との照合等に使用することができます。

法定調書の提出方法に関して、基準年(前々年)の提出枚数が1,000枚以上であった法定調書の場合には、光ディスク等又はe-Taxによる提出が義務付けられています。

5. 給与支払報告書(給与所得の源泉徴収票)

サラリーマンの方にはお馴染みの給与所得の源泉徴収票は、 その年の給与所得に関する年末調整後(給与収入が2千万円超の方等は年末調整は行われません)の源泉徴収税額や税額計算情報が集約され記載されています帳票です。 税務署には、 一定金額以上の給与収入の「源泉徴収票」が提出され、 又、 同一内容ですが様式名が異なる給与支払報告書が個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます。

「給与支払報告書」(総括表を添える)提出先は、受給者(全員分)のその年の翌年の1月1日現在の住所地の市区町村となり、 提出期限は翌年の1月31日までとなっています(個人の居住する市区町村に金額の制限なく全てが提出されます)。

年度の途中で退職した者に対する給与支払報告書は、 支払額が30万円以下の場合には提出を省略することができます。 なお、退職金の「特別徴収票」の提出は、役員のみであり従業員分は提出する必要はありません。 その提出先は、 受給者の退職日現在の住所地の市区町村となっており、 退職後1ケ月以内の提出となります。

市区町村では、 提出された資料から住民税の税額計算をおこない、 翌年6月から徴収を開始し1年間で納付を行ないます。 なお、給与所得を基因する住民税の納付方法は、原則として、会社等が所得税と同様に給与より天引きして納付するという特別徴収となっています。

2017年1月5日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

2017(平成29)年度税制改正大綱:相続税・贈与税 (資産税)

2016年12月8日に与党が決定しました2017(平成29)年度税制改正大綱に関しまして、資産税 (主に相続税・贈与税) に関する主な改正案の概要は、 以下のとおりです。

 

1.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し

(1)災害時の被災者等が納税猶予制度の適用を受ける場合、適用対象となる会社の認定等の時期に応じて一定の救済措置があります。

(2)納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、相続開始時又は贈与時の常時使用従業員数に80%を乗じて計算した人数の1人未満は切捨てるが、最低1人(現行の端数は切上げ)と計算されます。

(3)相続時精算課税制度に係る贈与を、贈与税の納税猶予制度の適用対象に加えられます。

(4)贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予制度における認定相続承継会社の要件から、中小企業者であること及び当該株式が非上場株式等に該当することとする要件が撤廃されます。

上記の改正は、平成29年1月1日以後の相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税・贈与税について適用とされますが、経過措置も規定されます。

 

2.相続税・贈与税の納税義務者の見直し

(1)国内に住所を有しない者であって日本国籍を有する相続人等に係る相続税の納税義務について、国外財産が相続税の課税対象外とされる要件を、被相続人等及び相続人等が相続開始前10年(現行:5年)以内のいずれの時においても国内に住所を有しないこととなります。

(2)被相続人等及び相続人等が所定の在留資格をもって一時的滞在(国内に住所を有している期間が相続開始前15年以内で合計10年以下の滞在)をしている場合の相続又は遺贈に係る相続税については、国内財産のみが課税対象となります。

(3)国内に住所を有しない者であって日本国籍を有しない相続人等が、国内に住所を有しない者であって相続開始前10年以内に国内に住所を有していた被相続人等(日本国籍を有しない者であって一時的滞在(国内に住所を有している期間が相続開始前15年以内で合計10年以下の滞在)をしていたものを除く)からの相続又は遺贈により取得した国外財産を、相続税の課税対象に加えられます。

上記の改正は、平成29年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税・贈与税について適用とされますが、贈与税の納税義務についても同様な取扱いとなります。

 

現行の納税義務者は、 無制限納税義務者 (居住無制限納税義務者及び非居住無制限納税義務者)、 制限納税義務者ですが、以下の様になっています。

相続人・受贈者

 

 

被相続人・贈与者

国内に住所有り 国内に住所無し  
日本国籍有り 日本国籍無し  
5年以内に国内に住所有り 5年を超えて国内に住所無し  
国内に住所有り 国内・国外財産ともに課税(居住無制限納税義務者) 国外財産にも課税(非居住無制限納税義務者   (

 

国内財産のみに課税(制限納税義務者)
国内に住所無し 5年以内に国内に住所有り(注1)  
5年を超えて国内に住所無し    

 

3.居住用超高層建築物(タワーマンション)に係る課税の見直し

(1)タワーマンションに対する固定資産税(都市計画税も同様)

① 高さ60mを超える超高層建築物のうち、複数の階に住戸があるもの(居住用超高層建築物)については、当該建築物全体に係る固定資産税額を各区分所有者に按分する際に用いる専有部分の床面積を、階層の差による取引単価の変化の傾向を反映する補正率(階層別専有床面積補正率)により補正されます。

② 階層別専有床面積補正は、居住用超高層建築物の1階を100とし、階が一つ増すごとに39分の10を加えた数値とする。例えば、40階だとしますと補正率は110(100 + 10/39 X 39)となります。 つまり、1階ごとに税額が0.25%程度増減することになります。

③ 居住用以外の専有部分がある場合には、全体に係る固定資産税額を、床面積により居住用部分と非居住用部分に按分の上、居住用部分の税額を各区分所有者に按分する場合にのみ階層別専有床面積補正率を適用します。

④ 上記①から③に加え、天井の高さ、附帯設備の程度等について著しい差違がある場合には、その差違に応じた補正が行われます。

⑤ 上記の按分方法にもかかわらず、区分所有者全員による申出があった場合には、当該申出の割合により固定資産税額を按分することも可能となります。

上記の改正は、平成30年度から新たに課税されることとなる居住用超高層建築物(平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものは除かれます)について適用となります。

(2)タワーマンションの専有部分の取得があった場合の不動産取得税

タワーマンションに対する不動産取得税についても、上記の固定資産税課税と同様な取扱いとなります。

 

4.医療法人に対する組織再編に伴う措置

(1)平成18年医療法等改正法に規定する移行計画の認定を受けた医療法人の持分を有する個人がその持分の全部又は一部の放棄により、移行計画上の期限までに持分の定めのない医療法人に移行した場合には、当該医療法人が受けた放棄による経済的利益については贈与税を課さないことになります。

(2)上記(1)の適用を受けた医療法人について、持分の定めのない医療法人への移行後6年経過するまでの間に移行計画の認定要件を満たさなくなった場合には、上記(1)の経済的利益について当該医療法人を個人とみなして、贈与税が課せられます。

(3)医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の適用期限が3年延長となります。

 

5.直系尊属からの教育資金の一括贈与における贈与税の非課税措置

金融機関への領収書等の提出を、平成29年6月1日以後より書面による提出に代えて電磁的方法により提供することが可能となります。

 

6.生産緑地地区内農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の適用

生産緑地法の改正を前提に、面積要件が緩和された改正後の生産緑地地区内農地等については、相続税・贈与税の納税猶予制度の適用上、現行と同様の取扱いとなります。

 

7.山林に係る相続税の納税猶予制度の見直し

納税猶予制度の緩和される見直しがあります。

 

8.土地売買の所有権移転登記等に対する登録免許税税率の軽減措置の延長

適用期限を2年延長となります。

 

9.相続税の物納財産の中に上場株等も第一順位

株式、社債及び証券投資信託等の受益証券のうち金融商品取引所に上場されているもの等を国債及び不動産等と同順位(第一順位)となります。

 

10.相続税等の財産評価の適正化

(1)非上場株式の評価の見直し(平成29年1月1日以後の相続・贈与から適用)

① 類似業種批准方式

(イ)類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均が追加となります。 より平準化された株価を採用できることになります。

  平成28年12月31日までの相続等 平成29年1月1日以後の相続等
右記のいずれか低い株価を選択 * 課税時期の属する月以前3ヵ月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いもの

* 類似業種の前年平均株価

* 課税時期の属する月以前3ヵ月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いもの

* 類似業種の前年平均株価

* 課税時期の属する月以前2年間平均

(ロ)類似業種の上場会社の配当金額、利益金額及び簿価純資産価額について、上場会社単体決算による比准要素から連結決算値を基に算定されることになります。

(ハ)配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、1:3:1から1:1:1とする。

これまでは、比准要素のうち「利益金額」の比重は3倍にして評価されていたが、改正で1倍と平成12年の通達改正前に戻ることになります。

② 評価会社の規模区分の金額等の基準について、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大することになります。

引下げ幅等は検討中ということですが、例えば、大会社では類似業種批准方式を採用できることから、その枠が広がることで、結果として同方式での評価が取りやすくなり株価評価額がこれまでよりも減額となるケースが増えてきます。

 

(2)広大地の評価(平成30年1月1日以後の相続等から適用)

面積が1,000㎡(三大都市圏では500㎡)以上の「広大地」につては、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直し、かつ適用要件を明確化されます。

現行 路線価 X 面積 X 広大地補正率

広大地補正率 = 0.6 - 0.05 X 広大地面積 / 1,000㎡

(下限値0.35)

見直案 路線価 X 面積 X 補正率 X 規模格差補正率

補正率 = 形状(不整形・奥行)を考慮した補正率

規模格差補正率 = 面積を考慮した補正率

各補正率は全て外部専門業者の実態調査に基づき設定

 

(3)株式保有特定会社の判定基準(平成30年1月1日以後の相続等から適用)

評価会社の総資産のうち保有株式が50%以上である場合、「株式保有特定会社」として、原則、純資産価額方式で評価することになっていますが、この判定基準の株式の範囲に、「新株予約権付社債」が追加されることになります。

 

11.災害に関する税制上の措置

災害時における税制上の救済措置等が規定されました。 例えば、以下の取扱い。

(1)直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置

(2)非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度

(3)山林に係る相続税の納税猶予制度

 

以上。

2017年1月5日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant

今年 税・社会保障こうなる 高所得者 負担一段と

2017年は税や社会保障をはじめ、 様々な分野で私たちの負担が変わる。 中でも年収1,000万円を超す会社員は1月から所得税が重くなり、 1,200万円超の場合は6月から地方税も増税になる。 高所得者の多くは給料が増えても「手取り増」を実感できない可能性がある。

「2017年負担こうなる」の内容は以下のとおりです。

時期 内容 対象者 負担
1月 年収1,000万円を超える会社員を対象に、 給与所得控除を縮小し、 所得税増税 高所得者のサラリーマン
約1,500品目の市販薬の購入費用が控除対象に。 所得税など減税 一般家庭
確定拠出年金(DC)を公務員や主婦などに対象拡大 新たに2,600万人が対象
4月 国民年金保険料額が16,490円に (現行16,260円) 主に自営業者全般
雇用保険料率を労使で0.8%から0.6%に引き下げ 企業とサラリーマン全般
ガス販売の自由化でガスの購入先が選べるように。 セット販売などでガス・電気代が割安に? 一般家庭
6月 年収1,200万円を超える会社員を対象に、 給与所得控除を縮小し、 住民税(地方税)増税 高所得者のサラリーマン
はがきを62円に値上げ 一般家庭
8月 70歳以上の医療費自己負担の上限を引き下げ 中高所得の高齢者420万人
介護費自己負担の上限を引き下げ 中所得の高齢者18万人
介護保険料が収入に応じて連動する「総報酬割」を導入 (8月分の保険料から開始) 大企業サラリーマンら1,300万人が負担増 増、又は減
9月 厚生年金保険料率が18.3% (現行18.182%)に 主にサラリーマン全般

 

 

 

(2) 税務情報コーナー

 

  • 2017(平成29)年度税制改正大綱:相続税・贈与税 (資産税)

 

2016年12月8日に与党が決定しました2017(平成29)年度税制改正大綱に関しまして、資産税 (主に相続税・贈与税) に関する主な改正案の概要は、 以下のとおりです。

 

1.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し

(1)災害時の被災者等が納税猶予制度の適用を受ける場合、適用対象となる会社の認定等の時期に応じて一定の救済措置があります。

(2)納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、相続開始時又は贈与時の常時使用従業員数に80%を乗じて計算した人数の1人未満は切捨てるが、最低1人(現行の端数は切上げ)と計算されます。

(3)相続時精算課税制度に係る贈与を、贈与税の納税猶予制度の適用対象に加えられます。

(4)贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予制度における認定相続承継会社の要件から、中小企業者であること及び当該株式が非上場株式等に該当することとする要件が撤廃されます。

上記の改正は、平成29年1月1日以後の相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税・贈与税について適用とされますが、経過措置も規定されます。

 

2.相続税・贈与税の納税義務者の見直し

(1)国内に住所を有しない者であって日本国籍を有する相続人等に係る相続税の納税義務について、国外財産が相続税の課税対象外とされる要件を、被相続人等及び相続人等が相続開始前10年(現行:5年)以内のいずれの時においても国内に住所を有しないこととなります。

(2)被相続人等及び相続人等が所定の在留資格をもって一時的滞在(国内に住所を有している期間が相続開始前15年以内で合計10年以下の滞在)をしている場合の相続又は遺贈に係る相続税については、国内財産のみが課税対象となります。

(3)国内に住所を有しない者であって日本国籍を有しない相続人等が、国内に住所を有しない者であって相続開始前10年以内に国内に住所を有していた被相続人等(日本国籍を有しない者であって一時的滞在(国内に住所を有している期間が相続開始前15年以内で合計10年以下の滞在)をしていたものを除く)からの相続又は遺贈により取得した国外財産を、相続税の課税対象に加えられます。

上記の改正は、平成29年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税・贈与税について適用とされますが、贈与税の納税義務についても同様な取扱いとなります。

 

現行の納税義務者は、 無制限納税義務者 (居住無制限納税義務者及び非居住無制限納税義務者)、 制限納税義務者ですが、以下の様になっています。

相続人・受贈者

 

 

被相続人・贈与者

国内に住所有り 国内に住所無し  
日本国籍有り 日本国籍無し  
5年以内に国内に住所有り 5年を超えて国内に住所無し  
国内に住所有り 国内・国外財産ともに課税(居住無制限納税義務者) 国外財産にも課税(非居住無制限納税義務者   (

 

国内財産のみに課税(制限納税義務者)
国内に住所無し 5年以内に国内に住所有り(注1)  
5年を超えて国内に住所無し    

 

3.居住用超高層建築物(タワーマンション)に係る課税の見直し

(1)タワーマンションに対する固定資産税(都市計画税も同様)

① 高さ60mを超える超高層建築物のうち、複数の階に住戸があるもの(居住用超高層建築物)については、当該建築物全体に係る固定資産税額を各区分所有者に按分する際に用いる専有部分の床面積を、階層の差による取引単価の変化の傾向を反映する補正率(階層別専有床面積補正率)により補正されます。

② 階層別専有床面積補正は、居住用超高層建築物の1階を100とし、階が一つ増すごとに39分の10を加えた数値とする。例えば、40階だとしますと補正率は110(100 + 10/39 X 39)となります。 つまり、1階ごとに税額が0.25%程度増減することになります。

③ 居住用以外の専有部分がある場合には、全体に係る固定資産税額を、床面積により居住用部分と非居住用部分に按分の上、居住用部分の税額を各区分所有者に按分する場合にのみ階層別専有床面積補正率を適用します。

④ 上記①から③に加え、天井の高さ、附帯設備の程度等について著しい差違がある場合には、その差違に応じた補正が行われます。

⑤ 上記の按分方法にもかかわらず、区分所有者全員による申出があった場合には、当該申出の割合により固定資産税額を按分することも可能となります。

上記の改正は、平成30年度から新たに課税されることとなる居住用超高層建築物(平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものは除かれます)について適用となります。

(2)タワーマンションの専有部分の取得があった場合の不動産取得税

タワーマンションに対する不動産取得税についても、上記の固定資産税課税と同様な取扱いとなります。

 

4.医療法人に対する組織再編に伴う措置

(1)平成18年医療法等改正法に規定する移行計画の認定を受けた医療法人の持分を有する個人がその持分の全部又は一部の放棄により、移行計画上の期限までに持分の定めのない医療法人に移行した場合には、当該医療法人が受けた放棄による経済的利益については贈与税を課さないことになります。

(2)上記(1)の適用を受けた医療法人について、持分の定めのない医療法人への移行後6年経過するまでの間に移行計画の認定要件を満たさなくなった場合には、上記(1)の経済的利益について当該医療法人を個人とみなして、贈与税が課せられます。

(3)医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の適用期限が3年延長となります。

 

5.直系尊属からの教育資金の一括贈与における贈与税の非課税措置

金融機関への領収書等の提出を、平成29年6月1日以後より書面による提出に代えて電磁的方法により提供することが可能となります。

 

6.生産緑地地区内農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の適用

生産緑地法の改正を前提に、面積要件が緩和された改正後の生産緑地地区内農地等については、相続税・贈与税の納税猶予制度の適用上、現行と同様の取扱いとなります。

 

7.山林に係る相続税の納税猶予制度の見直し

納税猶予制度の緩和される見直しがあります。

 

8.土地売買の所有権移転登記等に対する登録免許税税率の軽減措置の延長

適用期限を2年延長となります。

 

9.相続税の物納財産の中に上場株等も第一順位

株式、社債及び証券投資信託等の受益証券のうち金融商品取引所に上場されているもの等を国債及び不動産等と同順位(第一順位)となります。

 

10.相続税等の財産評価の適正化

(1)非上場株式の評価の見直し(平成29年1月1日以後の相続・贈与から適用)

① 類似業種批准方式

(イ)類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均が追加となります。 より平準化された株価を採用できることになります。

  平成28年12月31日までの相続等 平成29年1月1日以後の相続等
右記のいずれか低い株価を選択 * 課税時期の属する月以前3ヵ月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いもの

* 類似業種の前年平均株価

* 課税時期の属する月以前3ヵ月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いもの

* 類似業種の前年平均株価

* 課税時期の属する月以前2年間平均

(ロ)類似業種の上場会社の配当金額、利益金額及び簿価純資産価額について、上場会社単体決算による比准要素から連結決算値を基に算定されることになります。

(ハ)配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、1:3:1から1:1:1とする。

これまでは、比准要素のうち「利益金額」の比重は3倍にして評価されていたが、改正で1倍と平成12年の通達改正前に戻ることになります。

② 評価会社の規模区分の金額等の基準について、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大することになります。

引下げ幅等は検討中ということですが、例えば、大会社では類似業種批准方式を採用できることから、その枠が広がることで、結果として同方式での評価が取りやすくなり株価評価額がこれまでよりも減額となるケースが増えてきます。

 

(2)広大地の評価(平成30年1月1日以後の相続等から適用)

面積が1,000㎡(三大都市圏では500㎡)以上の「広大地」につては、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直し、かつ適用要件を明確化されます。

現行 路線価 X 面積 X 広大地補正率

広大地補正率 = 0.6 - 0.05 X 広大地面積 / 1,000㎡

(下限値0.35)

見直案 路線価 X 面積 X 補正率 X 規模格差補正率

補正率 = 形状(不整形・奥行)を考慮した補正率

規模格差補正率 = 面積を考慮した補正率

各補正率は全て外部専門業者の実態調査に基づき設定

 

(3)株式保有特定会社の判定基準(平成30年1月1日以後の相続等から適用)

評価会社の総資産のうち保有株式が50%以上である場合、「株式保有特定会社」として、原則、純資産価額方式で評価することになっていますが、この判定基準の株式の範囲に、「新株予約権付社債」が追加されることになります。

 

11.災害に関する税制上の措置

災害時における税制上の救済措置等が規定されました。 例えば、以下の取扱い。

(1)直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置

(2)非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度

(3)山林に係る相続税の納税猶予制度

 

以上。

2017年1月4日 | カテゴリー : 社会情報 | 投稿者 : accountant