働き方改革関連法下での2024年問題

「2024年問題」とは、働き方改革関連法によって、2024年4月1日以降、「自動車運転業務」「建設事業」「医師」等の業種に対し時間外労働の上限規制の5年間猶予が停止され、年間の時間外労働時間の上限が制限されることで発生する諸問題の総称のことです。
働き方改革関連法では、時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時間に制限され、労使間で36協定を結んだとしても、時間外労働は年720時間に制限されていました。以下を内容とする時間外労働の上限規制となっています。
1.原則(一般業務)
(1)認められる時間外労働時間は、原則として月45時間、年360時間
(2)臨時的な特別な事情があり、労使の合意(36協定)がある場合でも、以下の範囲しか認められない
① 時間外労働時間が年720時間
② 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
③ 時間外労働と休日労働の合計の平均が、2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月全て80時間以内
④ 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年に6ヵ月

2.自動車運転業務(トラックやバス、タクシーのドライバー業務)
(1)時間外労働時間の上限が、労使間で36協定が合意された場合、年960時間(休日労働を含まず)
(2)次の規制は適用させません。
①「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」
②「時間外労働と休日労働の合計の平均が、2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月全て80時間以内」

3.建設事業
(1)災害の復旧や復興の事業を除き、上限の原則規制が全て適用される。
(2)災害の復旧や復興の事業に関しては、次の規制は適用させません。
①「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」
②「時間外労働と休日労働の合計の平均が、2ヵ月・3ヵ月・4ヵ月・5ヵ月・6ヵ月全て80時間以内」

4.医師
労働時間の上限規制は、医師の経験年数や医療機関の特性により、3つの水準に分けられて、それぞれ上限が異なります。各水準については、以下の通りです。
(1)A水準:すべての医師
対象は、一般の診療従事勤務医であるすべての医師です。時間外労働の上限は、年間で960時間以下、月間では100時間未満になり、休日労働も含まれます。
(2)B水準:地域医療確保暫定特例水準
対象は、救急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関で、地域医療を確保するために長時間労働が必要な医師です。時間外労働の上限は休日労働を含めて、年間1,860時間以下、月間100時間未満になります。
(3)C水準:集中的技能向上水準
対象は、初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医や高度技能獲得を目指すなど、短期間で集中的に症例経験を積む必要がある医師です。時間外労働の上限は、年間1,860時間以下、月間では100時間未満になり、休日労働も含みます。

時間外労働時間に対する給与の割増率は、以下の様になっています。

区分割増支払条件割増率
時間外
(時間外手当・残業手当)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25%以上
時間外労働時間が限度時間(1か月45時間、1年360時間等)を超えたとき25%以上
時間外労働時間が1か月60時間を超えたとき50%以上
休日(休日手当)法定休日(週1日)に勤務させたとき25%以上
深夜(深夜手当)22時から5時までの間に勤務させたとき35%以上
2023年8月11日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant