寄附金控除 (法人版)

寄附金は、 その支出に対する見返りがないため費用性に乏しく、 相手方に対する利益分の性格が強いということからその全額を損金算入とすべきではないという考え方があります。 しかし、 寄附金の中には事業との関連性のあるものもあるという考え方(しかし、 一般的に寄附金は事業に直接関係がある支出ではないものです)から、 税務上では寄附の相手先及び内容に応じて、 損金算入限度額等の規定を設けています。 寄附先別における法人税法の取扱いの概略は以下のとおりです。

寄附先別の区分
①指定寄附金等(国・地方公共団体等、 及び財務大臣の指定 ②特定公益増進法人、 認定特定非営利活動法人・特定地域雇用会社・特定地域雇用等促進法人、 又は認定特定公益信託(特増寄附金) ③一般の寄附金 ④完全支配関係がある内国法人 ⑤国外関連者
全額損金算入 特増寄附金の額又は特別損金算入限度額のいずれか少ない金額。

特増寄附金の額 > 特別損金算入限度額の場合には、 その超過部分の金額は 、一般の寄附金の支出額に含めて損金算入限度額の超過計算をおこなう。

損金算入限度額有り 全額損金不算入

(一) 国等に対する寄附金及び指定寄附金

国や地方公共団体に対する寄附金及び指定寄附金は、その支払った全額が損金に算入されます。

(二) 特定公益増進法人等に対する寄附金の特別損金算入限度額

公益の増進に著しく寄与する法人を特定公益増進法人と呼称し、 公益法人等中の公益社団

法人、 公益財団法人、 学校法人、 社会福祉法人、 更生保護法人、 独立行政法人等が対象となります。 また、 認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)も含まれます。

(1) 資本等がある法人(普通法人、 協同組合等及び人格のない社団等) (2) 資本等がない法人
① 資本基準額

(期末資本金額 + 期末資本積立金額) X 当期月数/12 X 0.375%

② 所得基準額

(支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 6.25%

③ (① + ②) X 1/2 = 特別損金算入限度額

所得基準額:

(支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 6.25%

(三) 一般の寄附金の損金算入限度額

(1) 資本等がある法人(普通法人、 協同組合等及び人格のない社団等) (2) 資本等がない法人
① 資本基準額

(期末資本金額 + 期末資本積立金額) X 当期月数/12 X 0.25%

② 所得基準額

(支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 2.5%

③ (① + ②) X 1/4 = 損金算入限度額

所得基準額:

(支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 2.5%

 

公益法人等(非営利型法人等を除く)の場合:

① 公益社団法人・公益財団法人

所得基準額: (支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 50%

なお、 みなし寄附金がある場合には、 別途定めた所得基準額による損金算入限度額を計

算することになります。

② 社会福祉法人、私立学校法人、 社会医療法人、 更生保護法人

所得基準額: (支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 50%

50%相当額が200万円未満である場合には、 損金算入限度額は200万円となります。

③ 上記以外の法人

所得基準額: (支出寄附金総額 + 別表四仮計) X 20%

 

地方創生応援税制(企業版ふるさと納税):法人住民税及び法人事業税における寄附金税額控除

青色申告法人が、改正地域再生法の施行日(平成28年4月1日)から平成32年3月31日までの間に、地方創生推進寄附活用事業(地方公共団体が「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」を地域再生法の認定地域再生計画に基づき国(内閣府)に申請し認定を受けたもの)に関連する寄附金を支出した場合、法人事業税、法人住民税、法人税から一定額を税額控除できます。 但し、次の法人への寄附は対象外となります。

① 法人の本社が立地する地方自治体(都道府県・市町村)の事業への寄附(本社所在の地方公共団体へ最も多額の法人住民税を納めていることから、既に納税という形で貢献しているために対象外)

② 地方交付税の不交付団体(地方公共団体)等への寄附(地方創生事業の財源確保することを目的としていることから、財源超過団体とみなされる東京都等は対象外)

なお、当該寄附の代償としての経済的利益の供与は禁止されています。

 

現行の寄附金の損金算入制度(税額で寄附額の約30%)に加え、以下の税額控除(地方税 + 法人税で寄附額の30%を控除)が可能となります。

寄附による税額減少のイメージ図:

寄附額(100%)
損金算入対応分(約30%)

地方税 + 国税

税額控除(30%)

事業税 +(住民税+法人税)

(10%)   (20%)

実質的な企業負担分

(約40%)

 

税額控除額 控除税額の上限
法人事業税

(注1)

寄附額の10% 法人事業税額の20%
 

法人住民税

(注1)

 

開始事業年度

道府県民税法人税割額 市町村民税法人税割額  

道府県民税法人税割額の20%

 

市町村民税法人税割額の20%

平成29年3月

31日までに開始

寄附額の5% 寄附額の

15%

平成29年4月

1日以後に開始

寄附額の

2.9%

寄附額の

17.1%

法人税 ① 寄附額の20% - 法人住民税からの控除税額

② 寄附額の10%

③ 上記①と②のいずれか少ない金額

法人税額の5%

注1:2以上の自治体に事業所等がある法人における控除税額の按分基準

法人事業税は、課税標準額を基準として按分する。

法人住民税は、従業員数を基準として按分する。

 

所得税(個人)と法人税(法人)の寄附金税制の比較(主なもの)

区分 所得税 法人税
国又は地方公共団体に対する寄附金 特定寄附金として、一定の金額を所得控除 (公益社団法人等、認定NPO法人等又は政党等に対する寄附金で一定のものについては、税額控除を選ぶことができます) 支出額の全額を損金算入
指定寄附金
特定公益増進法人に対する寄附金 一般の寄附金とは別枠で寄附金の額の合計額と特別損金算入限度額とのいずれか少ない金額の範囲内で損金算入
特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
認定NPO法人等に対する寄附金
政治活動に関する寄附金 損金算入限度額の範囲内で損金算入
一般の寄附金(上記以外) 所得控除されない

 

2017年4月27日 | カテゴリー : 税務情報 | 投稿者 : accountant