2020年度税制改正大綱:法人税、消費税

2020年(令和2年)12月12日に自民、公明党両党は2020年度(令和2年度)の与党税制改正大綱を発表しました。以下は、その改正大綱の概要(法人税、消費税)となります。

法人税課税

1.オープンイノベーションに係る税制措置の創設
青色申告法人で特定事業活動を行うものが、2020年(令和2年)4月1日から2022年(令和4年)3月31日までの間に、一定のベンチャー企業の株式(特定株式)を出資の払込により取得し、かつ、その取得した日の事業年度末まで保有継続している場合において、その特定株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定として経理した金額を限度とし、損金算入できます(但し、事業年度の所得金額を上限とする)。
この特別勘定の金額は、特定株式の譲渡その他取消し事由に該当した場合には、その事由に応じた金額を取崩し益金算入する。但し、特定株式の取得から5年経過した場合は、取崩す必要はありません。

2.給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の税額控除制度の見直し
国内投資設備が当期減価償却総額の割合について、現行の90%以上の要件を95%以上に変更となります。

改正前改正後
国内設備投資額≧当期減価償却費の90%国内設備投資額≧当期減価償却費の95%

3.交際費等の損金不算入制度の延長等
適用期限を2年延長し、2022年(令和4年)3月末までとなります。
接待交際費に係る損金算入の特例(接待飲食費の50%損金算入の特例)の対象法人から、その資本金の額等が100憶円超の法人が場外となります。

4.大企業の研究所税制その他生産性向上に関連する税額控除適用要件の見直し
大企業において、所得要件、賃上げ要件及び設備投資要件のいずれにも該当しない場合には、研究開発税制、地域未来投資促進税制の税額控除ができないとなれていますが、改正で設備投資要件が以下の様になります。

改正前 改正後
当期設備投資額>当期減価償却費の10% 当期設備投資額>当期減価償却費の30%

5.5G(第5世代移動通信システム)投資促進税制の創設
認定特定高度情報通信等システム導入事業者に該当する青色申告法人が、特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の施行日から2022年(令和4年)3月末までの間に、特定高度情報通信用認定等設備の取得等し国内事業用に供した場合には、その取得価額の30%の特別償却又は15%の税額控除との.選択適用が認められます(但し、当期法人税額の20%を上限とする)

6.連結納税制度からグループ通算制度への移行
連結納税制度に代えて、企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行うとともに、損益通算等の調整を行う簡素な仕組みとすることで事務負担の軽減を図りつつ、親法人の欠損金の利用制限等を行うことにより公平公正な税負担の措置を講じた、グループ通算制度へ移行となりました。
手続上の比較は以下の通りです。

項目連結納税制度 グループ通算制度
納税主体親法人が一体申告 企業グループ内の各法人が個別申告
連帯納付有り有り
修正・更正申告結グループ内で再調整を行い、親法人にて修正・更正原則、各法人にて修正・更正
事業年度親会社の事業年度親会社の事業年度
青色申告連結申告法人は制度の対象外各法人の青色申告承認が必要
電子申告任意強制
適用時期2022年(令和4年)4月1日以後の開始事業年度から適用

7.中小企業におけるオープンイノベーションに係る措置の創設
対象となる中小企業者が、2020年(令和2年)4月1日から2022年(令和4年)3月31日までの間に、一定のベンチャー企業の株式(特定株式)を出資の払込(払込金は1千万円以上)により取得した場合において、その特定株式の取得価額の25%の所得控除ができます。
但し、特定株式の譲渡その他取消し事由に該当した場合には、特定株式の取得から5年経過した場合を除き、その事由に応じた金額を益金算入する。

8.中小企業における交際費等の損金不算入制度の延長
適用時期を2年延長し、中小法人に係る損金算入の特例(800万円の定額控除特例)の適用時期も2年延長となります。

9.地方拠点強化税制の見直し
(1)特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の適用時期を2年延長となります。
(2)雇用者数の増加による税額控除制度について、各種の措置を講じて適用期限を2年延長となります。

10.租税特別措置の主な延長等

倉庫用建物等の割増償却制度の適用期限2年延長
海外投資等損失準備金制度の適用期限2年延長
短期の土地譲渡益に対する追加課税制度の適用停止措置の期限3年延長
退職年金等積立金に対する法人税の課税停止措置の適用期限3年延長
障害者雇用する場合の機械等の割増償却制度について、対象資産から工場用の建物等を除外し、機械装置の割増償却率を24%から12%に引下げて、適用期限の延長2年延長
特定資産の買換え等の課税特例について、所要の見直しの上、適用期限の延長3年延長
退職年金等積立金に対する法人税の課税停止措置の適用期限3年延長

11.中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例制度の見直し
適用期限を2年延長し、以下の見直しがあります。
① 対象法人から連結法人が除外となります。
② 対象法人から常時使用従業員数の要件が、1,000人以下から500人以下に引下げられます。

12.過度なM&A絡む節税対策の防止
法人が、特定関係法人(子会社)から株式簿価の1割を超える対象配当金額があれば、税務上は株式簿価をその対象配当金額のうち益金不算入額相当額だけ引下げることを親会社に義務付ける。それにより、子会社の簿価と実際の価値が同じになることから、例え子会社を売却しても、税務上の赤字を意図的に作り出すことができなくなりました。但し、この適用は、過去10年以内に買収した子会社に限定する等の包括的な租税回避防止規定の新ルールを設けることになります。

以上

消費課税

1.法人に係る消費税の申告期限の特例の創設
法人税の確定申告書の提出期限の延長特例適用を受けている法人が、消費税の確定申告書の提出期限延長の届出書を提出した場合には、提出期限を1月延長する。
改正は、2021年(令和3年)3月31日以後に終了する事業年度末日の属する課税期間から適用となります。なお、当該延長された期間分の利子税が課されます。

2.居住用賃貸建物の取得に係る消費税の仕入税額控除制度の見直し
(1)仕入税額控除の制限
① 住宅の貸付用に供しないことが明らかな建物以外の建物で、かつ、高額特定資産(1千万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産(1百万円以上の固定資産)に該当する場合の課税仕入については、仕入税額控除制度の適用が認められなくなります。但し、居住用賃貸建物のうち、住宅貸付用に供しないことが明らかな部分については、引続き仕入税額控除制度の対象です。
 上記①の仕入税額控除制度の適用が認められないこととされた居住用賃貸建物について、その仕入日が属する課税期間の初日から3年間内の間に住宅の貸付用以外に供した場合又は譲渡した場合には、それまでの居住用賃貸建物の貸付及び譲渡対価の額を基礎として計算した額を当該課税期間又は譲渡した課税期間の仕入控除税額に加算して調整する。
改正は、2020年(令和2年)10月1日以後に居住用建物の仕入から適用となりますが、同年3月31日までに締結している契約には適用しません。
② 住宅の貸付契約において貸付に係る用途が明らかにされていない場合であっても、当該貸付用に供する建物の状況等から人の居住用に供することが明らかな貸付については、消費税は非課税となります。
改正は、2020年(令和2年)4月1日以後に行われる貸付から適用となります。
③ 高額特定資産の取得等をした場合の特例措置の見直し
高額特定資産の取得をした場合の事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を制限する措置の対象に、高額特定資産である棚卸資産が納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整措置の適用を受けた場合を加える。
改正は、2020年(令和2年)4月1日以後に棚卸資産の調整措置の適用を受けた場合に適用となります。

以上